説明

面状採暖具。

【課題】 2つの切替えスイッチを用い、2つの発熱体の接続を直列または並列に切替え可能とすると共に、2つの発熱体に流れる電流を逆向きとして各発熱線で生じる電磁波の発生を抑えることができる面状採暖具を提供する。
【解決手段】 第1発熱線6と第2発熱線8よりなる発熱体を商用電源4aにより通電して暖房を行う面状採暖具において、第1発熱線と第2発熱線の接続を直列または並列に切替える直列・並列切替えスイッチ12を設け、第2発熱線と直列・並列切替えスイッチとの接続点と商用電源の一端をバイパス路13を介して直列または並列接続を指定する開閉14とを設け、両スイッチの替えにより消費電力を大小に切替え可能とするとともに、第1発熱線と第2発熱線を互いに電流が逆方向に流れるように接続してなる構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電気カーペット、電気毛布、パネルヒータ等の面状採暖具に係わり、詳しくは2つの発熱体の接続を直列または並列に切替え可能とすると共に、電磁波の発生を抑えた発熱体の接続に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の面状採暖具において、通常の暖房を直列に接続したヒータで行い、外気温が低下した場合等にヒータの昇温速度を高めるべく並列接続にするため、2つの発熱体の接続を直・並列に切替えるものとして、例えば図3に示すようなものが知られている(特許文献1参照)、また、電磁波の発生を低減するものとして、例えば図4に示すようなものが知られている(特許文献2参照)。
【0003】
図3において、(A)は商用電源Eに対して並列接続、(B)は直列接続である。電気カーペットは、カーペット本体1’と制御回路2’とから成り、カーペット本体1’は、A面とB面とに区分し、A面にはヒータ4A ’を、また、B面にはヒータ4B ’を配置し、ヒータ4A ’,4B ’は、同じ発熱容量のものを使用した。また、カーペット温度を検知するセンサー線6’は、A面とB面との両方に跨がって配置し、1本のセンサー線6’で、A面,B面両方の温度を同時に検知するようにした。
【0004】
ヒータ4A ’の回路にヒータ4A ’をオンオフするリレー8A ’を設け、また、ヒータ4B ’の回路にヒータ4B ’をオンオフするリレー8B ’を設けた。直・並切替えリレー10’は、リレー8A ’, 8B ’を接続した側と反対側のヒ−タ4A ’とヒ−タ4B ’との間を短絡して並列に接続するNC端子と、ヒ−タ4A ’をヒータ4B ’のリレー8B ’側に接続してヒータ4A ’, 4B ’を直列に接続するNO端子とに切り替えるように接続した。そして、前記リレー8A ’, 8B ’,10 ’の制御は、すべてマイコン12’によって行い、直・並切替えリレー10’をNO端子側に切替えると、リレー8B ’がオフしたままとなる。したがって、ヒータ4A ’,4B ’を直列接続にする際に、特別のスイッチを用いずに、リレー8B ’を開放することができるので、回路構成の簡素化ができる。
【0005】
また、電気カーペットは、通常の暖房時には、ヒータ4A ’及びヒータ4B ’を直列接続にして暖房し、暖房開始時、及び、例えば外気温度が低くなるなど、昇温速度が鈍る場合には、並列接続にして発熱容量を増強するようにしたものである。このようにすると、簡単な回路構成で昇温速度を通常の暖房の場合より遙に高めることができる。
【0006】
図4において、(A)は並列接続、(B)は直列接続である。図4(A)に示すように、発熱線2’’の一方の結線部2a’’と他方の結線部2b’’を電源7’’の一端と他端に、発熱線6’’の一方の結線部6a’’と他方の結線部6b’’を電源7’’の他端と一端にそれぞれ結線して、電源7’’に対して発熱線2’’,6’’を並列接続することによって、100Vなど低電圧系の仕様にすることができる。
【0007】
また、図4(B)に示すように、発熱線2’’の一方の結線部2a’’と発熱線6’’の一方の結線部6a’’を電源7’’の一端と他端に結線すると共に発熱線2’’の他方の結線部2b’’と発熱線6’’の他方の結線部6b’’を短絡結線して、電源7’’に対して発熱線2’’,6’’を直列接続することによって、200Vなど高電圧系の仕様にすることができる。
【0008】
上記構成において、低電圧系の仕様の場合には上記2組の発熱線を電源に対して並列に、高電圧系の仕様の場合には上記2組の発熱線を電源に対して直列にそれぞれ結線可能にしたので、2組の発熱線のうち一方と他方の発熱線の流れる電流のベクトルをそれぞれ逆向きとして各発熱線で生じる磁界を互いに打ち消し合わせることができ、電磁波の発生を低減することができる。
【0009】
しかしながら、前記図3の場合は、2つの発熱体の接続を直・並列に切替えるものだが、2つの発熱体に流れる電流は同方向であり、電磁波の防止は考慮されてない。また、前記図4の場合は、2つの発熱体の接続を直・並列に切替えるものはなく、直・並列個別の回路で電磁波の発生を低減するものである。そこで、直・並列の切替えと、電磁波の発生防止を1つの回路構成で行うものが望まれている。
【特許文献1】特開平6−60962号公報(2〜6頁、第1〜2図)
【特許文献2】特開平11−185943号公報(4〜6頁、第2〜4図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は上記の問題点に鑑み、面状採暖具において、2つの切替えスイッチを用い、2つの発熱体の接続を直列または並列に切替え可能とすると共に、2つの発熱体に流れる電流を逆向きとして各発熱線で生じる電磁波の発生を抑えることができる面状採暖具を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は上述の課題を解決するため、第1発熱線と第2発熱線よりなる発熱体を商用電源により通電して暖房を行う面状採暖具において、
前記第1発熱線と第2発熱線の接続を直列または並列に切替える直列・並列切替えスイッチを設け、前記第2発熱線と前記直列・並列切替えスイッチとの接続線と前記商用電源と前記第1発熱線との接続線とを繋ぐバイパス路を設け、同バイパス路に開閉スイッチを設け、前記直列・並列切替えスイッチにより前記第1発熱線と前記第2発熱線とを直列に接続するときは、前記開閉スイッチを開き、前記第1発熱線と前記第2発熱線とを並列に接続するときは、前記開閉スイッチを閉じ、前記第1発熱線と第2発熱線にそれぞれ通電することにより発生する磁界を互いに打ち消すようにした構成となっている。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、第1発熱線と第2発熱線を並列接続とした場合、消費電力が2倍,直列接続とした場合1/2となり、発熱量を可変することができ、例えば、通常の暖房時には、直列接続にして暖房し、暖房開始時、及び外気温度が低くなるなど、昇温速度を速めたい場合には、並列接続にして発熱量を増強するすることができ、簡単な回路構成で昇温速度を通常の暖房の場合より遙に高めることができる。また、各々の発熱線から発生する磁力線どうしが互いに打ち消し合うことにより、面状採暖具本体の表面からの電磁波の放射を防止することができる面状採暖具となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の面状採暖具の実施の形態を実施例に基づき添付図面を参照して詳細に説明する。図1(A)は本発明における電気カーペット等面状採暖具の外観概略図、図1(B)は本発明の一実施例による発熱体の拡大構造図、図2は本発明による要部回路図で、(A)は直列接続、(B)は並列接続の場合である。
【実施例1】
【0014】
図1(A)において、面状採暖具の基本的な構成は、通電により発熱する発熱体2を内蔵した本体1と、その発熱体2への通電量を制御して本体1の温度を制御する制御回路や安全保護装置等を含めた制御部3とからなっている。
【0015】
本体1には繊維布からなる表地と裏地の間に発熱体2を蛇行状に配設してあり、発熱体2の端末部分は電気的に制御部3にまとめて接続されており、制御部3には商用電源4aへの給電用のプラグ4が接続してある。
【0016】
図1(B)において、前記発熱体2は、ポリエステル等からなる芯材5に銅合金でなる第1発熱線6を螺旋状に巻回し、前記第1発熱線6をポリイミド等の耐熱絶縁体7で被覆し、前記耐熱絶縁体7に第1発熱線6と同様の第2発熱線8を螺旋状に巻回し、前記第2発熱線8を異常な温度上昇による過熱が生じた場合に融解する融解層9で被覆し、前記融解層9に、同融解層9の融解により前記第2発熱線8と短絡して安全装置を動作させる短絡検知線10を螺旋状に巻回し、前記短絡検知線10を耐熱塩ビ等からなる外被絶縁層11で被覆した構成となっている。
【0017】
但し、前記発熱体2は上記構成に限定されるものではなく、前記第2発熱線8を前記芯材5に螺旋状に巻回し、前記第1発熱線6を前記耐熱絶縁体7に螺旋状に巻回してもよい。
【0018】
図2(A)は前記第1発熱線6と前記第2発熱線8を直列接続した場合の要部回路図である。図において、前記第1発熱線6と前記商用電源4aを接続するNC端子と、前記第1発熱線6と前記第2発熱線8を接続するNO端子を備え、前記商用電源4aに対し、前記第1発熱線6と第2発熱線8の接続を直列(NO端子側)または並列(NC端子側)に切替える直列・並列切替えスイッチ12を設ける。
【0019】
また、前記第2発熱線8と前記直列・並列切替えスイッチ12のNO端子との接続線と前記商用電源4aと前記第1発熱線6との接続線とを繋ぐバイパス路13を設けると共に、同バイパス路13に開閉スイッチ14を設け、前記直列・並列切替えスイッチ12により前記第1発熱線6と前記第2発熱線8とを直列に接続するときは、前記直列・並列切替えスイッチ12をNO端子側に接続すると同時に、前記開閉スイッチ14を開くようにした構成となっている。
【0020】
そして、電流の流れ方向が図2(A)の矢印で示すように、第1発熱線6と第2発熱線8とでは逆方向なり、電流位相は互いに180度ズレた逆位相関係となる。これにより、各々の発熱線から発生する磁力線どうしが互いに打ち消し合うことになり、面状採暖具本体1の表面からの電磁波の放射を防止することができる。
【0021】
図2(B)は前記第1発熱線6と前記第2発熱線8を並列接続した場合の要部回路図である。図において、直列・並列切替えスイッチ12をNC端子側に接続すると同時に、前記開閉スイッチ14を閉じることにより、並列接続することができる。また、上記と同様に面状採暖具本体1の表面からの電磁波の放射を防止することができる。
【0022】
上記構成において、前記第1発熱線6と前記第2発熱線8を並列接続とした場合、消費電力が2倍,直列接続とした場合1/2となり、発熱量を可変することができる。例えば前記制御部3により手動または自動で制御して、図2(C)に示すように、通常の暖房時には直列・並列切替えスイッチ12をNO端子側に接続し、開閉スイッチ14を開き直列接続にして暖房し、暖房開始時、及び外気温度が低くなるなど、昇温速度を速める場合には、直列・並列切替えスイッチ12をNC端子側に接続し、開閉スイッチ14を閉じ並列接続にして発熱量を増強するすることができ、簡単な回路構成で昇温速度を通常の暖房の場合より遙に高めることができる。また、各々の発熱線から発生する磁力線どうしが互いに打ち消し合うことにより、面状採暖具本体1の表面からの電磁波の放射を防止することができる面状採暖具となる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】(A)は本発明における電気カーペット等面状採暖具の外観概略図、図1(B)は本発明の一実施例による発熱体の拡大構造図である。
【図2】本発明による要部回路図で、(A)は直列接続、(B)は並列接続の場合である。
【図3】従来例における要部回路図で、(A)は並列接続、(B)は直列接続の場合である。
【図4】従来例における他の要部回路図で、(A)は並列接続、(B)は直列接続の場合である。
【符号の説明】
【0024】
1 本体
2 発熱体
3 制御部
4 プラグ
4a 商用電源
5 芯材
6 第1発熱線
7 耐熱絶縁体
8 第2発熱線
9 融解層
10 短絡検知線
11 外被絶縁層
12 直列・並列切替えスイッチ
13 バイパス路
14 開閉スイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1発熱線と第2発熱線よりなる発熱体を商用電源により通電して暖房を行う面状採暖具において、
前記第1発熱線と第2発熱線の接続を直列または並列に切替える直列・並列切替えスイッチを設け、前記第2発熱線と前記直列・並列切替えスイッチとの接続線と前記商用電源と前記第1発熱線との接続線とを繋ぐバイパス路を設け、同バイパス路に開閉スイッチを設け、前記直列・並列切替えスイッチにより前記第1発熱線と前記第2発熱線とを直列に接続するときは、前記開閉スイッチを開き、前記第1発熱線と前記第2発熱線とを並列に接続するときは、前記開閉スイッチを閉じ、前記第1発熱線と第2発熱線にそれぞれ通電により発生する磁界を互いに打ち消すようにしたことを特徴とする面状採暖具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−181824(P2008−181824A)
【公開日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−15721(P2007−15721)
【出願日】平成19年1月26日(2007.1.26)
【出願人】(000006611)株式会社富士通ゼネラル (1,266)
【Fターム(参考)】