説明

靴下の製造方法

【課題】 五指の各指袋を足指にぴったりとフィットしあるいは適切な着圧を付与できる靴下を提供する。
【解決手段】 編み糸又は編み糸と弾性糸によって靴下本体及び爪先部分を編成するようにした靴下の製造方法において、爪先部分(20)に五指を入れる5本の各指袋(20A〜20E)を丸編み機によって編成する。その際、編み方向に編針の本数を減少後増加させ又は増加後減少させるパターンを繰り返すことによって5本の各指袋を各足指の平面形状に類似した平面形状に編成する。5本の各指袋を任意の目の粗さでかつ任意の平面形状に編成し、5本の各指袋を足指に任意の着圧を付与する編み組織とすることもできる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は靴下の製造方法に関し、特に五指の各指袋を足指にぴったりとフィットしあるいは適切な着圧を付与できるようにした製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
通常、靴下は足の保護や保温を目的として着用されるが、靴下本体から爪先部分にかけて概ね筒状に編成されているので、隣接する足指の間の湿気が抜け難く、水虫その他の病気が懸念される。
【0003】
これに対し、靴下の爪先部分に五指を各々入れる指袋を形成した靴下(以下、五指袋式靴下という)が提案されている(特許文献1、特許文献2、特許文献3)。しかし、従来の五指袋式靴下では手袋と同様の編み組織によって編成されていたので、五指の各指袋の伸縮性が乏しく、所望の着圧に設定することができない。
【0004】
他方、靴下を編成する際に、丸編み機によって爪先部分に親指を入れる指袋と他の四指を入れる1つの指袋を編成するようにした靴下が提案されている(特許文献4、特許文献5)。
【0005】
【特許文献1】特開平07−100165号公報
【特許文献2】実公昭60−24338号公報
【特許文献3】実公昭59−64904号公報
【特許文献4】特開平11−21703号公報
【特許文献5】特開平11−217703号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、上述の五指袋式靴下についても丸編み機によって爪先部分に五指の指袋を編成することが考えられる。
【0007】
しかし、上記特許文献4、5記載の方法は親指用の指袋と四指用の指袋の各々を厚み方向の寸法が親指側に偏って大きくなるように編成しているので、五指を各々入れる5つの指袋を編成しようとすると、5つの各指袋が先端に向けて次第に細くなった形状となって足指本来の平面形状とは大きく異なってしまい、各指袋を十分な長さにすることができないばかりでなく、適切な着圧を確保できないという問題があった。
【0008】
本発明は、かかる問題点に鑑み、五指の各指袋を足指の平面形状にぴったりとフィットしあるいは適切な着圧を付与するように編成できる靴下の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
そこで、本発明に係る靴下の製造方法は、編み糸又は編み糸と弾性糸によって靴下本体及び爪先部分を編成するようにした靴下の製造方法において、上記爪先部分に五指を入れる5本の各指袋を丸編み機によって編成し、その際に編み方向に編針の本数を減少後増加させ又は増加後減少させるパターンを繰り返すことによって上記5本の各指袋を各足指の平面形状に類似した平面形状に編成するようにしたことを特徴とする。
【0010】
本発明の1つの特徴は丸編み機によって五指袋式靴下を編成する一方、編針の本数を減少又は増加させた後増加又は減少させるパターンを繰り返し、各指袋を足指の平面形状に類似した平面形状に編成するようにした点にある。
【0011】
これにより、靴下の爪先部分に足指を滑らかに差し込むことのできる長さ及び形状の指袋を編成することができる。
【0012】
また、本発明に係る靴下の製造方法は、編み糸又は編み糸と弾性糸によって靴下本体及び爪先部分を編成するようにした靴下の製造方法において、上記爪先部分に五指を入れる5本の各指袋を丸編み機によって編成し、その際に編み方向に編針の本数を減少後増加させ又は増加後減少させるパターンを繰り返すことによって上記5本の各指袋を任意の目の粗さでかつ任意の平面形状に編成し、上記5本の各指袋を足指に任意の着圧を付与し得る編み組織とするようにしたことを特徴とする。
【0013】
一般的に丸編み機による編み組織の特徴は編み組織の目の粗さを部分的に任意に設定して伸縮性を自由に変更できる点にある。
【0014】
本発明の1つの特徴は丸編みによって五指袋式靴下を編成する一方、編針の本数を減少又は増加させた後増加又は減少させるパターンを繰り返し、各指袋を任意の平面形状で任意の目の粗さに編成し、足指に任意の着圧を付与し得るようにした点にある。
【0015】
これにより、足指に窮屈な締付け感やだぶつき感を感じることがなく、さらには足指の各部を目的に応じた最適な着圧、例えば指の基部を緩くする着圧あるいは締付ける着圧などを付与することができる。
【0016】
通常、靴下は履口部分、レッグ部分、足甲部分、踵部分、足底部分及び爪先部分から構成される。請求の範囲における靴下本体とは爪先部分を除く、履口部分、レッグ部分、足甲部分、踵部分及び足底部分をいう。
【0017】
指袋を編成する場合、編み方向に編針の本数を減少後増加させ又は増加後減少させるパターンを繰り返せばよい。このパターンは減少後増加させ又は増加後減少させるものであればどのようなパターンでもよい。
【0018】
例えば、足指の編成に用いる編針の最大本数を100としたとき、最初の段を100、次の段を98、同様に、96、94と編み方向に減少させた後、96、98と編み方向に増加させ、次は96、94、92と編み方向に減少させた後、94、96と編み方向に増加させるという次第に先細りになるようなパターンを採用することができる。また、逆に、最初の段を80としたとき、編み方向に82、84、86と増加させた後、84、82と減少させ、次に84、86、88と増加させた後、86、84と減少させるという先太りになるようなパターンを採用することもできる。なお、編針の本数を2本ずつ増減させたのは編み組織の両側縁で1本ずつ増減させるためである。さらに、先細りパターンで編成している途中で先太りパターンで編成し、先太りパターンで編成している途中で先細りパターンで編成するなど、任意のパターンを繰り返して指袋を任意の平面形状に編成することもできる。
【0019】
丸編み機によって指袋を編成する場合、指袋の足甲側部分を基部から先端に向けて編成した後、足底側部分を先端から基部に向けて甲側部分と筒状をなすように編成するか、又は逆に指袋の足底側部分を基部から先端に向けて編成した後、足甲側部分を先端から基部に向けて甲側部分と筒状をなすように編成する。そこで、各指袋の足甲側部分又は足底側部分について基部から先端に向けてパターンを繰り返して編成し、足底側部分又は足甲側部分について先端から基部に向けてパターンを繰り返して編成するのがよい。
【0020】
足袋の足底側部分から編成を開始した場合には爪先部分の終端縁は靴下本体の足甲側に位置し、足袋の足甲側部分から編成を開始した場合には爪先部分の終端縁は靴下本体の足底側に位置するので、この靴下本体の足甲側又は足底側に位置する靴下本体の下端縁と爪先部分の終端縁との間を相互にリンキングやロッソなどによって縫製する。
【0021】
また、上述の製造方法によっ編成された靴下も斬新である。即ち、本発明によれば、編み糸又は編み糸と弾性糸によって編成されてなる靴下において、上記爪先部分には五指を入れる5本の各指袋が丸編み機による編み組織に編成されており、上記5本の各指袋は編み方向に編針の本数を減少後増加させ又は増加後減少させるパターンが繰り返され、各足指の平面形状に類似した平面形状に編成されていることを特徴とする靴下を提供することができる。
【0022】
さらに、本発明によれば、編み糸又は編み糸と弾性糸によって編成されてなる靴下において、上記爪先部分には五指を入れる5本の各指袋が丸編み機による編み組織に編成されており、上記5本の各指袋は編み方向に編針の本数を減少後増加させ又は増加後減少させるパターンが繰り返されて、足指に任意の着圧を付与し得るように任意の目の粗さでかつ任意の平面形状に編成されていることを特徴とする靴下を提供することができる。
【0023】
ここで、編み糸の材質については特に限定されず、綿糸、綿アクリル混紡糸、毛糸、毛アクリル混紡糸、絹糸、絹アクリル混紡糸、麻糸、麻アクリル混紡糸、ナイロン糸等、靴下に採用される編み糸を用いることができる。弾性糸にはゴム糸、ナイロン糸、ポリエステル糸、ポリウレタンカバードヤーン、コアヤーンを用いることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明を図面に示す具体例に基づいて詳細に説明する。図1ないし図4は本発明に係る靴下の製造方法の好ましい実施形態を示す。靴下は靴下本体10と爪先部分20とから構成され、靴下本体10は履口部分11、レッグ部分12、足甲部分13、足底部分14及び踵部分15からなっている。
【0025】
靴下本体10及び爪先部分20が丸編み機を用いて編成され、靴下本体10は履口部分11から足甲部分13及び足底部分14の先端側に向けて筒状に編成され、又爪先部分20には5本の指袋20A〜20Eが編成され、爪先部分20の終端縁と靴下本体10の先端縁との間の開口はリンキング又はロッソなどによって縫製されている(図1中、16が縫製箇所である)。
【0026】
指袋20A〜20Eは編み方向に編針の本数を減少後増加させるパターンを繰り返すことによって各足指の平面形状に類似した平面形状に編成されている。
【0027】
次に、製造方法について説明する。丸編み機には図4に示される針釜30が設けられ、針釜30の周囲には多数の編針31、例えば220本の編針31が上下動自在に支持されており、針釜30が正方向に回転され逆方向に回転され、所定の回転位置で編針31が持ち上げられ、編み糸を引っ掛けて編成するようになっている。
【0028】
丸編み機によって本例の靴下を製造する場合、まず履口部分11から爪先部分29に向けて靴下本体10が筒状に編成された後、靴下本体10の足底部分から親指その他の四指の指袋20A〜20Eが編成される。このとき、針釜30全周の編針31を220本とすると、指袋20A〜20Eの編成に関与する編針31の本数は110であり、親指の指袋20Aには28本、次の指袋20Bには24本、指袋20Cには22本、指袋20Dには20本、指袋20Eには16本というように編針31を割り当てる。
【0029】
例えば,親指の指袋20Aを編成する場合、靴下本体10の足底側の部分、つまり基部側から先端側に向けて編み始め、針釜30を正逆方向に回転させ、編針31を減少後増加させるパターンを繰り返しながら編成する。このパターンには例えば編み始めは28本の編針31を、次は26本、24本、22本と減少させた後、24本、26本と増加させ、次に24本、22本、20本と減少させた後、22本、24本と増加させるというパターンを採用することができる。なお、2本ずつ増加減少させたのは足袋20Aの両側縁で1本ずつ編針31を増減させるためである。
【0030】
指袋20Aの足底側部分を先端まで編成すると、今度は指袋20Aの足甲側部分を先端から基部に向けて編み始め、針釜30を正逆方向に回転させ、編針31を増加後減少させるパターン、つまり足底側部分のパターンとは逆のパターンを繰り返しながら、足底側部分の両縁が足甲側部分の両縁と連続されるように筒状に編成する。
【0031】
同様にして指袋20B〜20Eを順次編成すると、爪先部分20に5本の指袋20A〜20Eが編成され、爪先部分20の終端縁と靴下本体10の先端縁との間には開口が残るので、最後に縫製すると、本例の靴下が製造される。
【0032】
以上のように、丸編み機を用い、編針31の本数を減少又は増加後に増加又は減少させるパターンを繰り返して指袋20A〜20Eを編成するようにしたので、指袋20A〜20Eを足指の平面形状に類似した平面形状に編成することができる。その結果、靴下の爪先部分20に足指を滑らかに差し込むことのできる長さ及び形状の指袋20A〜20Eを編成することができる。
【0033】
図3は丸編み機によって編成した編み組織の1例を示す。この編み組織では編み目の粗さを小さくする、つまり編み目の高さT及び/又は幅Wを小さくすると、編み組織の伸縮を制限することができる。
【0034】
上述の指袋20A〜20Eを編成する際に、編み目の粗さを小さくすると、指袋20A〜20Eによる足指への着圧を自由に設定できる。例えば、親指の一部分だけの着圧を強くするといった編み組織を得ることができる。
【0035】
そこで、指袋20A〜20Eを編成する際に、第1の実施形態と同様に編み方向に編針の本数を減少後増加させ又は増加後減少させるパターンを繰り返すが、5本の各指袋20A〜20Eを任意の目の粗さでかつ任意の平面形状に編成する。
【0036】
これによって5本の各指袋20A〜20Eを足指に任意の着圧を付与し得る編み組織に編成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明に係る製造方法の好ましい実施形態によって製造された靴下の1例を示す図である。
【図2】図1の要部拡大平面図である。
【図3】編み組織の例を示す図である。
【図4】丸編み機における針釜の1例を示すである。
【符号の説明】
【0038】
10 靴下本体
20 爪先部分
20A〜20E 指袋
30 針釜
31 編針

【特許請求の範囲】
【請求項1】
編み糸又は編み糸と弾性糸によって靴下本体及び爪先部分を編成するようにした靴下の製造方法において、
上記爪先部分に五指を入れる5本の各指袋を丸編み機によって編成し、
その際に編み方向に編針の本数を減少後増加させ又は増加後減少させるパターンを繰り返すことによって上記5本の各指袋を各足指の平面形状に類似した平面形状に編成するようにしたことを特徴とする靴下の製造方法。
【請求項2】
編み糸又は編み糸と弾性糸によって靴下本体及び爪先部分を編成するようにした靴下の製造方法において、
上記爪先部分に五指を入れる5本の各指袋を丸編み機によって編成し、
その際に編み方向に編針の本数を減少後増加させ又は増加後減少させるパターンを繰り返すことによって上記5本の各指袋を任意の目の粗さでかつ任意の平面形状に編成し、上記5本の各指袋を足指に任意の着圧を付与し得る編み組織とするようにしたことを特徴とする靴下の製造方法。
【請求項3】
上記各指袋の足甲側部分又は足底側部分について基部から先端に向けて上記パターンを繰り返して編成し、足底側部分又は足甲側部分について先端から基部に向けて上記パターンを繰り返して編成するようにした請求項1又は2記載の靴下の製造方法。
【請求項4】
上記靴下本体の下端縁と爪先部分の終端縁との間が靴下の足甲側又は足底側に位置し、相互に縫製されている請求項1又は2記載の靴下の製造方法。
【請求項5】
編み糸又は編み糸と弾性糸によって編成されてなる靴下において、
上記爪先部分には五指を入れる5本の各指袋が丸編み機による編み組織に編成されており、
上記5本の各指袋は編み方向に編針の本数を減少後増加させ又は増加後減少させるパターンが繰り返され、各足指の平面形状に類似した平面形状に編成されていることを特徴とする靴下。
【請求項6】
編み糸又は編み糸と弾性糸によって編成されてなる靴下において、
上記爪先部分には五指を入れる5本の各指袋が丸編み機による編み組織に編成されており、
上記5本の各指袋は編み方向に編針の本数を減少後増加させ又は増加後減少させるパターンが繰り返され、足指に任意の着圧を付与し得るように任意の目の粗さでかつ任意の平面形状に編成されていることを特徴とする靴下。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−2362(P2007−2362A)
【公開日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−184263(P2005−184263)
【出願日】平成17年6月24日(2005.6.24)
【出願人】(505239622)田中繊維株式会社 (2)
【Fターム(参考)】