靴底用中敷
【課題】足裏に対する衝撃の緩和を図ることができるとともに、足裏の土踏まずに対する押圧効果を十分に行わせることができる靴底用中敷を提供する。
【解決手段】靴底に装着可能であるとともに可撓性部材から成る中敷本体と、該中敷本体内に形成され、液体Wを流動可能に封入し得る収容空間と、収容空間を靴底のつま先領域Aa、踵領域C及びそれらの間に位置する中間領域Bに区分けする堰部2a、2b及び3a、3bと、該堰部で区分けされた隣り合う領域間で、液体Wが流動するオリフィス部R1、R2とを備えた靴底用中敷であって、踵領域Cと中間領域Bとを区分けする堰部に形成されたオリフィス部R2は、中敷本体の側縁部5aに向かって開口し、当該踵領域Cから流動する液体Wが当該中間領域Bにて渦流を形成可能としたものである。
【解決手段】靴底に装着可能であるとともに可撓性部材から成る中敷本体と、該中敷本体内に形成され、液体Wを流動可能に封入し得る収容空間と、収容空間を靴底のつま先領域Aa、踵領域C及びそれらの間に位置する中間領域Bに区分けする堰部2a、2b及び3a、3bと、該堰部で区分けされた隣り合う領域間で、液体Wが流動するオリフィス部R1、R2とを備えた靴底用中敷であって、踵領域Cと中間領域Bとを区分けする堰部に形成されたオリフィス部R2は、中敷本体の側縁部5aに向かって開口し、当該踵領域Cから流動する液体Wが当該中間領域Bにて渦流を形成可能としたものである。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、靴底に装着し得る靴底用中敷に関するものである。
【背景技術】
【0002】
靴底に装着して足裏へ付与される衝撃を緩和することを目的とした靴底用中敷(インソール)として、従来、例えば特許文献1にて開示されたものが挙げられる。かかる文献で開示された靴底用中敷は、可撓性を有する被覆材の内部に液体を流動可能に封入したものから成り、衝撃の緩和に加え、液体の流動による被覆材の僅かな膨らみと、それによる押圧効果をも奏するよう構成されていた。
【特許文献1】特開2000−197504号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記従来の靴底用中敷においては、被覆材にて形成された液体の収容空間が当該中敷の略全域に亘って単に1つ形成されているため、歩行時における液体の移動を理想的に設定することが困難となっており、足裏に対する衝撃の緩和効果及び押圧効果が十分でないという問題があった。
【0004】
特に、靴底用中敷と足裏の土踏まずとの間には、通常、隙間が生じるのであるが、従来の靴底用中敷においては、歩行時、内在する液体が踵部からつま先部に亘り素早く流動してしまうため、踵部とつま先部との間に位置する中間部(特に土踏まず部)には当該液体が滞留せず、足裏の土踏まずに対する押圧効果が不十分であるという問題もあった。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、足裏に対する衝撃の緩和を図ることができるとともに、足裏の土踏まずに対する押圧効果を十分に行わせることができる靴底用中敷を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の発明は、靴底に装着可能であるとともに可撓性部材から成る中敷本体と、該中敷本体内に形成され、液体を流動可能に封入し得る収容空間と、前記収容空間を靴底のつま先領域、踵領域及びそれらの間に位置する中間領域に区分けする堰部と、該堰部で区分けされた隣り合う領域間で、前記液体が流動するオリフィス部とを備えた靴底用中敷であって、前記踵領域と中間領域とを区分けする堰部に形成されたオリフィス部は、前記中敷本体の側縁部に向かって開口し、当該踵領域から流動する液体が当該中間領域略全体に亘って渦流を形成可能としたことを特徴とする。
【0007】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の靴底用中敷において、前記踵領域と中間領域とを区分けする堰部に形成されたオリフィス部は、前記中敷本体の側縁部であって当該中敷本体が装着される靴の土踏まず部に相当する位置に向かって開口したことを特徴とする。
【0008】
請求項3記載の発明は、請求項1又は請求項2記載の靴底用中敷において、前記中敷本体は、柔軟な合成樹脂シートから成ることを特徴とする。
【0009】
請求項4記載の発明は、請求項1〜請求項3の何れか1つに記載の靴底用中敷において、前記液体が水又は水と多価アルコールとの混合液であることを特徴とする。
【0010】
請求項5記載の発明は、請求項1〜請求項4の何れか1つに記載の靴底用中敷において、任意位置に立体形状が造り込まれたカップインソールに前記中敷本体を具備させ、靴底に装着可能とされたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1の発明によれば、歩行タイミングに合致して必要な部位への理想的な液体の移動を実現させることができるので、足裏に対する衝撃の緩和を図ることができるとともに、踵領域から流動する液体が中間領域略全域にて渦流を形成させるので、その部位において厚み方向に一層膨らませることができ、足裏の土踏まずに対する押圧効果を十分に行わせることができる。
【0012】
請求項2の発明によれば、踵領域と中間領域とを区分けする堰部に形成されたオリフィス部は、中敷本体の側縁部であって当該中敷本体が装着される靴の土踏まず部に相当する位置に向かって開口しているので、より確実に土踏まずへの押圧効果を行わせることができる。
【0013】
請求項3の発明によれば、中敷本体は、柔軟な合成樹脂シートから成るので、液体の流動に伴って中敷本体の厚さ方向にスムーズに膨らみを持たせ、押圧効果を容易且つ確実に奏することができるとともに、輪郭形状の裁断や堰の形成等を容易に行わせることができる。
【0014】
請求項4の発明によれば、収容空間に封入される液体を水とすれば、より安価に靴底用中敷を製造することができるとともに、収容空間に封入される液体を水と多価アルコールとの混合液とすれば、中敷本体内で液体が凍ってしまうことを回避することができる。また、長期使用しても中敷本体を透過して外部へ発散してしまうのを抑制することができる。
【0015】
請求項5の発明によれば、任意位置に立体形状が造り込まれたカップインソールに中敷本体を具備させたので、当該立体形状による任意位置の足裏に対する押圧効果を更に向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら具体的に説明する。
第1の実施形態に係る靴底用中敷は、靴底に装着され得る中敷(インソール)から成るものであり、図1及び図2に示すように、上側中敷本体1a及び下側中敷本体1bを接着して内部に液体としての液体Wを封入して成る中敷本体と、第1堰部2a、2bと、第2堰部3a、3bと、第3堰部4とから主に構成されている。
【0017】
上側中敷本体1a及び下側中敷本体1bは、靴底に装着可能なように当該靴底の形状に略倣った形状とされた2枚の可撓性部材(例えば弾性に富んで柔軟な合成樹脂シート)から成るものであり、それぞれを重ね合わせつつ互いの縁部5を例えば熱溶着にて接着させることにより、内部に液体Wを液密に収容する収容空間が形成されている。尚、上側中敷本体1a及び下側中敷本体1bとしての材質は、所定の耐久性及び可撓性を有していれば、他の材料(種々プラスチックや合成樹脂等)を用いることができる。
【0018】
また、中敷本体内に収容される液体Wは、多価アルコールの水溶液(例えば水とプロピレングリコール等を混合して得られた不凍液等)から成るものであり、当該多価アルコールが5(wt%)〜65(wt%)の水溶液、特に好ましくは30(wt%)〜60(wt%)の水溶液である。多価アルコールの粘度は、常温で1(CP)〜500(CP)の範囲であればよく、1(CP)〜100(CP)程度が好ましく、1(CP)〜60(CP)程度が更に好ましい。尚、中敷本体内に収容される液体を水のみ(微量の添加物を含有するもの含む)或いは多価アルコールのみとしてもよい。
【0019】
第1堰部2a、2b及び第2堰部3a、3bは、2枚の中敷本体の所定部位を例えば熱溶着にて接着させ、当該中敷本体が成す収容空間をつま先領域A、踵領域C及びそれらの間に位置する中間領域Bに区分けするものである。即ち、中敷本体が靴底に装着された際のつま先部に相当する領域がつま先領域A、踵部に相当する領域が踵領域C、それらの中間の領域が中間領域Bとなるよう、第1堰部2a、2b及び第2堰部3a、3bが形成されているのである。
【0020】
これら堰部2a、2b及び3a、3bは、上側中敷本体1a及び下側中敷本体2の接着された縁部5(側縁部5a、5b)からそれぞれ内側に向かって延びるとともに、先端が離間してオリフィス部R1及びR2を構成している。これらオリフィス部R1及びR2は、堰部2a、2b及び3a、3bで区分けされた隣り合う領域間で内在する液体Wが流動するよう離間寸法が設定されており、これにより踵領域Cに荷重が付与された際、オリフィスR2、R1を介して当該踵領域Cの液体Wが中間領域B及びつま先領域Aへ順次流動するとともに、つま先領域Aに荷重が付与された際、オリフィスR1、R2を介して当該つま先領域Aの液体Wが中間領域B及び踵領域Cへ順次流動し得るようになっている。
【0021】
即ち、中敷本体の長手方向に亘って「つま先領域A」「中間領域B」「踵領域C」に区分けしてそれぞれの小室を形成するとともに、隣り合う領域間で内在する水の流動を許容するオリフィス部R1及びR2を形成したことにより、かかる中敷が装着された靴を履いた者が歩行する際、歩行タイミングに応じて水が踵領域Cから中間領域Bへ、且つ、つま先領域Aから中間領域Bへ流動するので、足裏の押圧効果を高めることができる。
【0022】
尚、つま先領域Aの先端側には、靴底のつま先形状に倣った部位(先端領域D)が形成されているが、かかる第2つま先領域Aには液体Wが収容されておらず、且つ、つま先領域Aからの液体Wの流動がなされない。かかる先端領域Dを更に延出して、装着する靴底の大きさに応じてハサミ等で切断し得る部位を設けてもよい。
【0023】
ここで、本実施形態におけるオリフィス部R2は、中敷本体の側縁部(5a、5b)であって当該中敷本体が装着される靴の土踏まず部に相当する位置(即ち、図1中右側の側縁部5a)に向かって開口しており、踵領域Cから流動する液体Wが中間領域Bの略全域に亘って渦流を形成可能とされている。すなわち、オリフィス部R2の開口が中敷本体の長手方向に対して側縁部5a側に偏向していることにより、歩行時に踵領域Cに荷重が付与されると、図1中矢印の如く液体Wが中間領域Bの略全域に亘って大きく渦巻き状に流動し、当該中間領域Bにおいて液体Wが停滞し易くなっているのである。
【0024】
従って、中敷本体の側縁部であって当該中敷本体が装着される靴の土踏まず部に相当する位置に向かってオリフィス部R2が開口しているので、中間領域Bの土踏まず側における厚み方向への膨らみを持たせ、より確実に土踏まずへの押圧効果を行わせることができる。尚、本実施形態においては、オリフィス部R1の開口が側縁部5b側に偏向されており、つま先領域Aに荷重が付加された際、中間領域Bに流動する液体Wが渦流を形成し得るようになっている。
【0025】
然るに、オリフィス部R2を介して踵領域Cから中間領域Bに流動する液体Wは、人の歩行速度に基づき中間領域Bの膨らみをより大きく行わせ得る流量に設定するのが好ましく、例えば特定の歩速(一定の時間)内に踵領域Cから中間領域に向かって当該踵領域Cの液体Wの8割以上が移動するよう構成するのが好ましい。具体的には、液体Wが踵領域Cから中間領域Bに向かって4(ml/秒)〜25(ml/秒)、より好ましくは5(ml/秒)〜15(ml/秒)の流量で移動するようオリフィス部R2を形成するのが好ましい。
【0026】
また、土踏まず部に相当する位置における側縁部5aは、外方(図1中右側)へ略円弧状に膨出して膨出部Baが形成されており、オリフィス部R2を介して流動した液体Wは、当該膨出部Baの膨出形状に倣って流動し中間領域Bに至ることとなる。
【0027】
次に、本実施形態に係る靴底用中敷の作用について説明する。
底に中敷本体が装着された靴を履いて歩行する際、足裏接床時において踵から踵領域Cに圧力付与されると、オリフィス部R2から中間領域Bへ液体Wが流れ渦流を形成するので、その部位(特に土踏まず部に相当する膨出部Ba)における厚さ方向に中敷本体が膨らむ。
【0028】
この膨らみにより、足裏の土踏まずと膨出部Baとの間の隙間が埋まり、踵領域Cから中間領域に体重移動がなされる際、当該土踏まずにも体重による負荷が分散され、足裏全体で体重を支えることとなる。従って、歩行タイミングに合致して必要な部位への理想的な液体Wの移動を実現させることができるので、足裏に対する衝撃の緩和を図ることができる。同時に、踵領域Cから流動する液体Wが中間領域Bの略全域に亘って渦流を形成させるので、その部位において厚み方向に一層膨らませることができ、足裏の土踏まずに対する押圧効果を十分に行わせることができる。
【0029】
次に、本発明に係る第2の実施形態について説明する。
本実施形態に係る靴底用中敷は、第1の実施形態と同様、靴底に装着され得る中敷(インソール)から成るものであり、図3に示すように、上側中敷本体1a及び下側中敷本体1bを接着して内部に液体としての液体Wを封入して成る中敷本体と、第1堰部2a、2bと、第2堰部3a、3bと、第3堰部4とから主に構成されている。尚、第1の実施形態と同様な構成については、その詳細な説明を省略する。
【0030】
第2堰部のうち、図中左側の第2堰部3aは、右側の第2堰部3b先端との離間に加え、左側の側縁部5bからも離間して形成されており、当該側内部5bとの間でオリフィス部R3が形成されている。然るに、踵領域Cから中間領域Bへの液体Wの流入は、主にオリフィス部R2を介して行われ、オリフィス部R3を介する液体Wの流入は中間領域Bにて形成される渦流をあまり妨げない程度とされる。
【0031】
即ち、踵領域Cに荷重が付与されると、同領域から、オリフィス部R2を介して中間領域Bに液体Wが流入し、第1の実施形態と同様、オリフィス部R2からの流動により当該中間領域Bの略全域に亘って大きな渦流が形成されるとともに、オリフィス部R3からも液体Wが流入して、踵領域Cに付与される荷重に対する衝撃緩和を図り得るようになっている。これにより、足裏に対する衝撃の緩和を図ることができると同時に、足裏の土踏まずに対する押圧効果を十分に行わせることができる。
【0032】
次に、本発明に係る第3の実施形態について説明する。
本実施形態に係る靴底用中敷は、先の実施形態と同様、靴底に装着され得る中敷(インソール)から成るものであり、図4に示すように、上側中敷本体1a及び下側中敷本体1bを接着して内部に液体としての液体Wを封入して成る中敷本体と、第1堰部2a、2bと、第2堰部3a、3bと、第3堰部4とから主に構成されている。尚、第2の実施形態と同様な構成については、その詳細な説明を省略する。
【0033】
第1堰部のうち、図中左側の第1堰部2aは、右側の第1堰部2b先端との離間に加え、左側の側縁部5bからも離間して形成されており、当該側内部5bとの間でオリフィス部R4が形成されている。即ち、つま先領域Aに荷重が付与されると、同領域から、オリフィス部R1及びR4を介して中間領域Bに液体Wが流入し、第1の実施形態と同様、オリフィス部R1からの流動により当該中間領域Bの略全域に亘って大きな渦流が形成されることとなる。
【0034】
次に、本実施形態に係る第4の実施形態について説明する。
本実施形態に係る靴底用中敷は、先の実施形態と同様、靴底に装着され得る中敷(インソール)から成るものであり、図5に示すように、土踏まず部の位置に膨出部を形成しないものである。この靴底用中敷によっても、踵領域Cに負荷を付与すれば、中間領域B略全域において図中矢印の如き大きな渦流が形成され、土踏まずへの押圧効果を向上させることができる。
【0035】
次に、本実施形態に係る第5の実施形態について説明する。
本実施形態に係る靴底用中敷は、先の実施形態と同様、靴底に装着され得る中敷(インソール)から成るものであり、図6に示すように、土踏まず部の位置に膨出部を形成せず、且つ、踵領域Cと中間領域Bとを区分けする堰部のうち左側の堰部3aが右側の堰部3b先端と離間しつつ側縁部5bとも離間し、オリフィス部R2、R3を形成するものである。
【0036】
次に、本発明に係る他の実施形態について説明する。
本実施形態においては、例えば図7及び図9に示すように、立体形状として外輪郭縁から突出した突出縁部6aを有した樹脂成形品から成るカップインソール6に上述した何れかの中敷本体1を具備させ、靴底に装着可能とされたものである。また、他の実施形態に係るカップインソールとして、図8及び図10に示すように、突出縁部6aに加え、中敷本体1側に対して厚み方向に一部突出した盛り上がり部6bが形成された樹脂成形品から成るものであってもよい。この実施形態によれば、特に盛り上がり部6bが形成された任意位置の足裏に対する押圧効果を更に向上させることができる。尚、カップインソール6は、上記の形態の他、図11で示すように、突出縁部6aが形成されつつ上面又は底面が傾斜したもの等としてもよい。また、中敷本体1の上面側を布等で覆い、当該布等と樹脂成形品とで中敷本体1を内在させたものとしてもよい。
【0037】
次に、上記靴底用中敷の効果を実証するための実験結果について説明する。
本実験においては、図12に示すように、床面に硬質樹脂から成るシート材aを載置しておき、その上に比較対象とされる中敷b(素足の実験の場合にはない)、靴底に装着される薄革部材c及び圧力分布を測定するためのセンサシートdを順に積層しておく。そして、第1の実施形態のもの(図1参照)を実施例1、第2の実施形態のもの(図3参照)を実施例2、及び第3の実施形態のもの(図4参照)を実施例3とするとともに、素足のものを比較例1、図13で示す靴底用中敷を比較例2とする。
【0038】
比較例1は、靴底用中敷を設置せず、単に薄革部材c上にセンサシートdが積層されているのみである。また、比較例2の靴底用中敷は、図13に示すように、つま先領域Aと中間領域Bとを区分けする堰部bと、中間領域Bと踵領域Cとを区分けする堰部cと、中間領域Bと膨出部Baとを区分けする堰部dと、つま先領域Aaと第2つま先領域Abとを区分けする堰部aとを有しており、これら堰部a〜dにはオリフィス部Ra〜Rgが形成されている。中敷本体の大きさ、形状及び材質等については、実施例1〜3と同様とする。
【0039】
そして、センサシートd上に足を載せて略均等に体重をかけ、比較例1、2及び実施例1〜3における設置面積(中敷本体と足裏との接触面積)を測定したところ、以下の表1の如き結果が得られた。
【0040】
【表1】
【0041】
上記表1からも分かるように、実施例1〜3のものは、何れも比較例1、2のものよりも接地面積が広く、体重を略均等に分散させて足裏に対する衝撃の緩和を図り得ることが分かる。また、特に土踏まずに対して接地面積が増加しており、かかる土踏まずの位置においては、別途の実験により、その圧力が0.2×104〜0.8×104(kgw/m2)となっていることから、適度な刺激で土踏まずを押圧していると認められる。従って、実施例1〜3によれば、特に土踏まずへの押圧機能を高めたことが分かる。
【0042】
更に、上記比較例1、2及び実施例1〜3に加え、第4の実施形態のもの(図5参照)を実施例4、第5の実施形態のもの(図6参照)を実施例5として実験対象に加え、それぞれの圧力分布について測定した。その得られた測定結果を図14〜図20に示す。尚、図14は比較例1、図15は比較例2、図16は実施例1、図17は実施例2、図18は実施例3、図19は実施例4及び図20は実施例5の圧力分布である。これら圧力分布を示す図からも分かるように、実施例のものは比較例のものと比べて、土踏まずの部分で接地面積が増大している分、体重を略均等に分散させて足裏に対する衝撃の緩和を図っているのが分かる。
【0043】
以上、本実施形態に係る靴底用中敷について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば図5に示すように、土踏まず部の位置に膨出部を形成しないものとしてもよい。かかる靴底用中敷は、つま先部Aよりも先端側に液体Wを収容しない先端領域Dが形成されており、装着する靴底の大きさに応じてハサミ等で切断して用いるよう構成されている。
【0044】
この靴底用中敷によっても、踵領域Cに負荷を付与すれば、中間領域B略全域において図中矢印の如き大きな渦流が形成され、土踏まずへの押圧効果を向上させることができる。尚、例えば図6に示すように、踵領域Cと中間領域Bとを区分けする堰部のうち左側の堰部3aが右側の堰部3b先端と離間しつつ側縁部5bとも離間し、オリフィス部R2、R3を形成するものとしてもよい。
【0045】
以上、本実施形態に係る靴底用中敷について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、中敷本体内に収容される液体Wに代えて他の液体(例えば所定の粘性を持ったオイル状のもの等)を用いることができる。但し、水を中敷本体に封入する構成とすれば、靴底用中敷の製造コストを低減することができる。また更に、中敷本体を柔軟な合成樹脂シートに代えて、他の可撓性部材から成るものとしてもよい。但し、中敷本体を柔軟な合成樹脂シートで構成すれば、液体の流動に伴って中敷本体の厚さ方向にスムーズに膨らみを持たせ、押圧効果を容易且つ確実に奏することができるとともに、輪郭形状の裁断や堰の形成等を容易に行わせることができる。
【産業上の利用可能性】
【0046】
踵領域と中間領域とを区分けする堰部に形成されたオリフィス部は、中敷本体の側縁部に向かって開口し、当該踵領域から流動する液体が当該中間領域略全域に亘って渦流を形成可能とした靴底用中敷であれば、外観形状が異なるもの或いは他の機能が付加されたものにも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る靴底用中敷を示す平面図
【図2】図1におけるII−II線断面図
【図3】本発明の第2の実施形態に係る靴底用中敷を示す平面図
【図4】本発明の第3の実施形態に係る靴底用中敷を示す平面図
【図5】本発明の他の実施形態に係る靴底用中敷を示す平面図
【図6】本発明の更に他の実施形態に係る靴底用中敷を示す平面図
【図7】本発明のカップインソールを用いた実施形態を示す斜視図
【図8】本発明のカップインソールを用いた他の実施形態を示す平面模式図
【図9】図7中IX−IX線断面模式図
【図10】図8中X−X線断面模式図
【図11】本発明のカップインソールを用いた更に他の実施形態を示す断面模式図
【図12】本発明の実施形態の靴底用中敷の効果を実証するための実験態様を示す模式図
【図13】同実験における比較例2に係る靴底用中敷を示す模式図
【図14】同実験における比較例1に係る圧力分布を示す模式図
【図15】同実験における比較例2に係る圧力分布を示す模式図
【図16】同実験における実施例1に係る圧力分布を示す模式図
【図17】同実験における実施例2に係る圧力分布を示す模式図
【図18】同実験における実施例3に係る圧力分布を示す模式図
【図19】同実験における実施例4に係る圧力分布を示す模式図
【図20】同実験における実施例5に係る圧力分布を示す模式図
【符号の説明】
【0048】
1a 上側中敷本体
1b 下側中敷本体
2a、2b 第1堰部
3a、3b 第2堰部
4 第3堰部
5 縁部
5a 側縁部(土踏まず側)
5b 側縁部
6 カップインソール
6a、6b 立体形状
A つま先領域
B 中間領域
C 踵領域
D 先端領域
R1〜R4 オリフィス部
W 液体
【技術分野】
【0001】
本発明は、靴底に装着し得る靴底用中敷に関するものである。
【背景技術】
【0002】
靴底に装着して足裏へ付与される衝撃を緩和することを目的とした靴底用中敷(インソール)として、従来、例えば特許文献1にて開示されたものが挙げられる。かかる文献で開示された靴底用中敷は、可撓性を有する被覆材の内部に液体を流動可能に封入したものから成り、衝撃の緩和に加え、液体の流動による被覆材の僅かな膨らみと、それによる押圧効果をも奏するよう構成されていた。
【特許文献1】特開2000−197504号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記従来の靴底用中敷においては、被覆材にて形成された液体の収容空間が当該中敷の略全域に亘って単に1つ形成されているため、歩行時における液体の移動を理想的に設定することが困難となっており、足裏に対する衝撃の緩和効果及び押圧効果が十分でないという問題があった。
【0004】
特に、靴底用中敷と足裏の土踏まずとの間には、通常、隙間が生じるのであるが、従来の靴底用中敷においては、歩行時、内在する液体が踵部からつま先部に亘り素早く流動してしまうため、踵部とつま先部との間に位置する中間部(特に土踏まず部)には当該液体が滞留せず、足裏の土踏まずに対する押圧効果が不十分であるという問題もあった。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、足裏に対する衝撃の緩和を図ることができるとともに、足裏の土踏まずに対する押圧効果を十分に行わせることができる靴底用中敷を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の発明は、靴底に装着可能であるとともに可撓性部材から成る中敷本体と、該中敷本体内に形成され、液体を流動可能に封入し得る収容空間と、前記収容空間を靴底のつま先領域、踵領域及びそれらの間に位置する中間領域に区分けする堰部と、該堰部で区分けされた隣り合う領域間で、前記液体が流動するオリフィス部とを備えた靴底用中敷であって、前記踵領域と中間領域とを区分けする堰部に形成されたオリフィス部は、前記中敷本体の側縁部に向かって開口し、当該踵領域から流動する液体が当該中間領域略全体に亘って渦流を形成可能としたことを特徴とする。
【0007】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の靴底用中敷において、前記踵領域と中間領域とを区分けする堰部に形成されたオリフィス部は、前記中敷本体の側縁部であって当該中敷本体が装着される靴の土踏まず部に相当する位置に向かって開口したことを特徴とする。
【0008】
請求項3記載の発明は、請求項1又は請求項2記載の靴底用中敷において、前記中敷本体は、柔軟な合成樹脂シートから成ることを特徴とする。
【0009】
請求項4記載の発明は、請求項1〜請求項3の何れか1つに記載の靴底用中敷において、前記液体が水又は水と多価アルコールとの混合液であることを特徴とする。
【0010】
請求項5記載の発明は、請求項1〜請求項4の何れか1つに記載の靴底用中敷において、任意位置に立体形状が造り込まれたカップインソールに前記中敷本体を具備させ、靴底に装着可能とされたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1の発明によれば、歩行タイミングに合致して必要な部位への理想的な液体の移動を実現させることができるので、足裏に対する衝撃の緩和を図ることができるとともに、踵領域から流動する液体が中間領域略全域にて渦流を形成させるので、その部位において厚み方向に一層膨らませることができ、足裏の土踏まずに対する押圧効果を十分に行わせることができる。
【0012】
請求項2の発明によれば、踵領域と中間領域とを区分けする堰部に形成されたオリフィス部は、中敷本体の側縁部であって当該中敷本体が装着される靴の土踏まず部に相当する位置に向かって開口しているので、より確実に土踏まずへの押圧効果を行わせることができる。
【0013】
請求項3の発明によれば、中敷本体は、柔軟な合成樹脂シートから成るので、液体の流動に伴って中敷本体の厚さ方向にスムーズに膨らみを持たせ、押圧効果を容易且つ確実に奏することができるとともに、輪郭形状の裁断や堰の形成等を容易に行わせることができる。
【0014】
請求項4の発明によれば、収容空間に封入される液体を水とすれば、より安価に靴底用中敷を製造することができるとともに、収容空間に封入される液体を水と多価アルコールとの混合液とすれば、中敷本体内で液体が凍ってしまうことを回避することができる。また、長期使用しても中敷本体を透過して外部へ発散してしまうのを抑制することができる。
【0015】
請求項5の発明によれば、任意位置に立体形状が造り込まれたカップインソールに中敷本体を具備させたので、当該立体形状による任意位置の足裏に対する押圧効果を更に向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら具体的に説明する。
第1の実施形態に係る靴底用中敷は、靴底に装着され得る中敷(インソール)から成るものであり、図1及び図2に示すように、上側中敷本体1a及び下側中敷本体1bを接着して内部に液体としての液体Wを封入して成る中敷本体と、第1堰部2a、2bと、第2堰部3a、3bと、第3堰部4とから主に構成されている。
【0017】
上側中敷本体1a及び下側中敷本体1bは、靴底に装着可能なように当該靴底の形状に略倣った形状とされた2枚の可撓性部材(例えば弾性に富んで柔軟な合成樹脂シート)から成るものであり、それぞれを重ね合わせつつ互いの縁部5を例えば熱溶着にて接着させることにより、内部に液体Wを液密に収容する収容空間が形成されている。尚、上側中敷本体1a及び下側中敷本体1bとしての材質は、所定の耐久性及び可撓性を有していれば、他の材料(種々プラスチックや合成樹脂等)を用いることができる。
【0018】
また、中敷本体内に収容される液体Wは、多価アルコールの水溶液(例えば水とプロピレングリコール等を混合して得られた不凍液等)から成るものであり、当該多価アルコールが5(wt%)〜65(wt%)の水溶液、特に好ましくは30(wt%)〜60(wt%)の水溶液である。多価アルコールの粘度は、常温で1(CP)〜500(CP)の範囲であればよく、1(CP)〜100(CP)程度が好ましく、1(CP)〜60(CP)程度が更に好ましい。尚、中敷本体内に収容される液体を水のみ(微量の添加物を含有するもの含む)或いは多価アルコールのみとしてもよい。
【0019】
第1堰部2a、2b及び第2堰部3a、3bは、2枚の中敷本体の所定部位を例えば熱溶着にて接着させ、当該中敷本体が成す収容空間をつま先領域A、踵領域C及びそれらの間に位置する中間領域Bに区分けするものである。即ち、中敷本体が靴底に装着された際のつま先部に相当する領域がつま先領域A、踵部に相当する領域が踵領域C、それらの中間の領域が中間領域Bとなるよう、第1堰部2a、2b及び第2堰部3a、3bが形成されているのである。
【0020】
これら堰部2a、2b及び3a、3bは、上側中敷本体1a及び下側中敷本体2の接着された縁部5(側縁部5a、5b)からそれぞれ内側に向かって延びるとともに、先端が離間してオリフィス部R1及びR2を構成している。これらオリフィス部R1及びR2は、堰部2a、2b及び3a、3bで区分けされた隣り合う領域間で内在する液体Wが流動するよう離間寸法が設定されており、これにより踵領域Cに荷重が付与された際、オリフィスR2、R1を介して当該踵領域Cの液体Wが中間領域B及びつま先領域Aへ順次流動するとともに、つま先領域Aに荷重が付与された際、オリフィスR1、R2を介して当該つま先領域Aの液体Wが中間領域B及び踵領域Cへ順次流動し得るようになっている。
【0021】
即ち、中敷本体の長手方向に亘って「つま先領域A」「中間領域B」「踵領域C」に区分けしてそれぞれの小室を形成するとともに、隣り合う領域間で内在する水の流動を許容するオリフィス部R1及びR2を形成したことにより、かかる中敷が装着された靴を履いた者が歩行する際、歩行タイミングに応じて水が踵領域Cから中間領域Bへ、且つ、つま先領域Aから中間領域Bへ流動するので、足裏の押圧効果を高めることができる。
【0022】
尚、つま先領域Aの先端側には、靴底のつま先形状に倣った部位(先端領域D)が形成されているが、かかる第2つま先領域Aには液体Wが収容されておらず、且つ、つま先領域Aからの液体Wの流動がなされない。かかる先端領域Dを更に延出して、装着する靴底の大きさに応じてハサミ等で切断し得る部位を設けてもよい。
【0023】
ここで、本実施形態におけるオリフィス部R2は、中敷本体の側縁部(5a、5b)であって当該中敷本体が装着される靴の土踏まず部に相当する位置(即ち、図1中右側の側縁部5a)に向かって開口しており、踵領域Cから流動する液体Wが中間領域Bの略全域に亘って渦流を形成可能とされている。すなわち、オリフィス部R2の開口が中敷本体の長手方向に対して側縁部5a側に偏向していることにより、歩行時に踵領域Cに荷重が付与されると、図1中矢印の如く液体Wが中間領域Bの略全域に亘って大きく渦巻き状に流動し、当該中間領域Bにおいて液体Wが停滞し易くなっているのである。
【0024】
従って、中敷本体の側縁部であって当該中敷本体が装着される靴の土踏まず部に相当する位置に向かってオリフィス部R2が開口しているので、中間領域Bの土踏まず側における厚み方向への膨らみを持たせ、より確実に土踏まずへの押圧効果を行わせることができる。尚、本実施形態においては、オリフィス部R1の開口が側縁部5b側に偏向されており、つま先領域Aに荷重が付加された際、中間領域Bに流動する液体Wが渦流を形成し得るようになっている。
【0025】
然るに、オリフィス部R2を介して踵領域Cから中間領域Bに流動する液体Wは、人の歩行速度に基づき中間領域Bの膨らみをより大きく行わせ得る流量に設定するのが好ましく、例えば特定の歩速(一定の時間)内に踵領域Cから中間領域に向かって当該踵領域Cの液体Wの8割以上が移動するよう構成するのが好ましい。具体的には、液体Wが踵領域Cから中間領域Bに向かって4(ml/秒)〜25(ml/秒)、より好ましくは5(ml/秒)〜15(ml/秒)の流量で移動するようオリフィス部R2を形成するのが好ましい。
【0026】
また、土踏まず部に相当する位置における側縁部5aは、外方(図1中右側)へ略円弧状に膨出して膨出部Baが形成されており、オリフィス部R2を介して流動した液体Wは、当該膨出部Baの膨出形状に倣って流動し中間領域Bに至ることとなる。
【0027】
次に、本実施形態に係る靴底用中敷の作用について説明する。
底に中敷本体が装着された靴を履いて歩行する際、足裏接床時において踵から踵領域Cに圧力付与されると、オリフィス部R2から中間領域Bへ液体Wが流れ渦流を形成するので、その部位(特に土踏まず部に相当する膨出部Ba)における厚さ方向に中敷本体が膨らむ。
【0028】
この膨らみにより、足裏の土踏まずと膨出部Baとの間の隙間が埋まり、踵領域Cから中間領域に体重移動がなされる際、当該土踏まずにも体重による負荷が分散され、足裏全体で体重を支えることとなる。従って、歩行タイミングに合致して必要な部位への理想的な液体Wの移動を実現させることができるので、足裏に対する衝撃の緩和を図ることができる。同時に、踵領域Cから流動する液体Wが中間領域Bの略全域に亘って渦流を形成させるので、その部位において厚み方向に一層膨らませることができ、足裏の土踏まずに対する押圧効果を十分に行わせることができる。
【0029】
次に、本発明に係る第2の実施形態について説明する。
本実施形態に係る靴底用中敷は、第1の実施形態と同様、靴底に装着され得る中敷(インソール)から成るものであり、図3に示すように、上側中敷本体1a及び下側中敷本体1bを接着して内部に液体としての液体Wを封入して成る中敷本体と、第1堰部2a、2bと、第2堰部3a、3bと、第3堰部4とから主に構成されている。尚、第1の実施形態と同様な構成については、その詳細な説明を省略する。
【0030】
第2堰部のうち、図中左側の第2堰部3aは、右側の第2堰部3b先端との離間に加え、左側の側縁部5bからも離間して形成されており、当該側内部5bとの間でオリフィス部R3が形成されている。然るに、踵領域Cから中間領域Bへの液体Wの流入は、主にオリフィス部R2を介して行われ、オリフィス部R3を介する液体Wの流入は中間領域Bにて形成される渦流をあまり妨げない程度とされる。
【0031】
即ち、踵領域Cに荷重が付与されると、同領域から、オリフィス部R2を介して中間領域Bに液体Wが流入し、第1の実施形態と同様、オリフィス部R2からの流動により当該中間領域Bの略全域に亘って大きな渦流が形成されるとともに、オリフィス部R3からも液体Wが流入して、踵領域Cに付与される荷重に対する衝撃緩和を図り得るようになっている。これにより、足裏に対する衝撃の緩和を図ることができると同時に、足裏の土踏まずに対する押圧効果を十分に行わせることができる。
【0032】
次に、本発明に係る第3の実施形態について説明する。
本実施形態に係る靴底用中敷は、先の実施形態と同様、靴底に装着され得る中敷(インソール)から成るものであり、図4に示すように、上側中敷本体1a及び下側中敷本体1bを接着して内部に液体としての液体Wを封入して成る中敷本体と、第1堰部2a、2bと、第2堰部3a、3bと、第3堰部4とから主に構成されている。尚、第2の実施形態と同様な構成については、その詳細な説明を省略する。
【0033】
第1堰部のうち、図中左側の第1堰部2aは、右側の第1堰部2b先端との離間に加え、左側の側縁部5bからも離間して形成されており、当該側内部5bとの間でオリフィス部R4が形成されている。即ち、つま先領域Aに荷重が付与されると、同領域から、オリフィス部R1及びR4を介して中間領域Bに液体Wが流入し、第1の実施形態と同様、オリフィス部R1からの流動により当該中間領域Bの略全域に亘って大きな渦流が形成されることとなる。
【0034】
次に、本実施形態に係る第4の実施形態について説明する。
本実施形態に係る靴底用中敷は、先の実施形態と同様、靴底に装着され得る中敷(インソール)から成るものであり、図5に示すように、土踏まず部の位置に膨出部を形成しないものである。この靴底用中敷によっても、踵領域Cに負荷を付与すれば、中間領域B略全域において図中矢印の如き大きな渦流が形成され、土踏まずへの押圧効果を向上させることができる。
【0035】
次に、本実施形態に係る第5の実施形態について説明する。
本実施形態に係る靴底用中敷は、先の実施形態と同様、靴底に装着され得る中敷(インソール)から成るものであり、図6に示すように、土踏まず部の位置に膨出部を形成せず、且つ、踵領域Cと中間領域Bとを区分けする堰部のうち左側の堰部3aが右側の堰部3b先端と離間しつつ側縁部5bとも離間し、オリフィス部R2、R3を形成するものである。
【0036】
次に、本発明に係る他の実施形態について説明する。
本実施形態においては、例えば図7及び図9に示すように、立体形状として外輪郭縁から突出した突出縁部6aを有した樹脂成形品から成るカップインソール6に上述した何れかの中敷本体1を具備させ、靴底に装着可能とされたものである。また、他の実施形態に係るカップインソールとして、図8及び図10に示すように、突出縁部6aに加え、中敷本体1側に対して厚み方向に一部突出した盛り上がり部6bが形成された樹脂成形品から成るものであってもよい。この実施形態によれば、特に盛り上がり部6bが形成された任意位置の足裏に対する押圧効果を更に向上させることができる。尚、カップインソール6は、上記の形態の他、図11で示すように、突出縁部6aが形成されつつ上面又は底面が傾斜したもの等としてもよい。また、中敷本体1の上面側を布等で覆い、当該布等と樹脂成形品とで中敷本体1を内在させたものとしてもよい。
【0037】
次に、上記靴底用中敷の効果を実証するための実験結果について説明する。
本実験においては、図12に示すように、床面に硬質樹脂から成るシート材aを載置しておき、その上に比較対象とされる中敷b(素足の実験の場合にはない)、靴底に装着される薄革部材c及び圧力分布を測定するためのセンサシートdを順に積層しておく。そして、第1の実施形態のもの(図1参照)を実施例1、第2の実施形態のもの(図3参照)を実施例2、及び第3の実施形態のもの(図4参照)を実施例3とするとともに、素足のものを比較例1、図13で示す靴底用中敷を比較例2とする。
【0038】
比較例1は、靴底用中敷を設置せず、単に薄革部材c上にセンサシートdが積層されているのみである。また、比較例2の靴底用中敷は、図13に示すように、つま先領域Aと中間領域Bとを区分けする堰部bと、中間領域Bと踵領域Cとを区分けする堰部cと、中間領域Bと膨出部Baとを区分けする堰部dと、つま先領域Aaと第2つま先領域Abとを区分けする堰部aとを有しており、これら堰部a〜dにはオリフィス部Ra〜Rgが形成されている。中敷本体の大きさ、形状及び材質等については、実施例1〜3と同様とする。
【0039】
そして、センサシートd上に足を載せて略均等に体重をかけ、比較例1、2及び実施例1〜3における設置面積(中敷本体と足裏との接触面積)を測定したところ、以下の表1の如き結果が得られた。
【0040】
【表1】
【0041】
上記表1からも分かるように、実施例1〜3のものは、何れも比較例1、2のものよりも接地面積が広く、体重を略均等に分散させて足裏に対する衝撃の緩和を図り得ることが分かる。また、特に土踏まずに対して接地面積が増加しており、かかる土踏まずの位置においては、別途の実験により、その圧力が0.2×104〜0.8×104(kgw/m2)となっていることから、適度な刺激で土踏まずを押圧していると認められる。従って、実施例1〜3によれば、特に土踏まずへの押圧機能を高めたことが分かる。
【0042】
更に、上記比較例1、2及び実施例1〜3に加え、第4の実施形態のもの(図5参照)を実施例4、第5の実施形態のもの(図6参照)を実施例5として実験対象に加え、それぞれの圧力分布について測定した。その得られた測定結果を図14〜図20に示す。尚、図14は比較例1、図15は比較例2、図16は実施例1、図17は実施例2、図18は実施例3、図19は実施例4及び図20は実施例5の圧力分布である。これら圧力分布を示す図からも分かるように、実施例のものは比較例のものと比べて、土踏まずの部分で接地面積が増大している分、体重を略均等に分散させて足裏に対する衝撃の緩和を図っているのが分かる。
【0043】
以上、本実施形態に係る靴底用中敷について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば図5に示すように、土踏まず部の位置に膨出部を形成しないものとしてもよい。かかる靴底用中敷は、つま先部Aよりも先端側に液体Wを収容しない先端領域Dが形成されており、装着する靴底の大きさに応じてハサミ等で切断して用いるよう構成されている。
【0044】
この靴底用中敷によっても、踵領域Cに負荷を付与すれば、中間領域B略全域において図中矢印の如き大きな渦流が形成され、土踏まずへの押圧効果を向上させることができる。尚、例えば図6に示すように、踵領域Cと中間領域Bとを区分けする堰部のうち左側の堰部3aが右側の堰部3b先端と離間しつつ側縁部5bとも離間し、オリフィス部R2、R3を形成するものとしてもよい。
【0045】
以上、本実施形態に係る靴底用中敷について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、中敷本体内に収容される液体Wに代えて他の液体(例えば所定の粘性を持ったオイル状のもの等)を用いることができる。但し、水を中敷本体に封入する構成とすれば、靴底用中敷の製造コストを低減することができる。また更に、中敷本体を柔軟な合成樹脂シートに代えて、他の可撓性部材から成るものとしてもよい。但し、中敷本体を柔軟な合成樹脂シートで構成すれば、液体の流動に伴って中敷本体の厚さ方向にスムーズに膨らみを持たせ、押圧効果を容易且つ確実に奏することができるとともに、輪郭形状の裁断や堰の形成等を容易に行わせることができる。
【産業上の利用可能性】
【0046】
踵領域と中間領域とを区分けする堰部に形成されたオリフィス部は、中敷本体の側縁部に向かって開口し、当該踵領域から流動する液体が当該中間領域略全域に亘って渦流を形成可能とした靴底用中敷であれば、外観形状が異なるもの或いは他の機能が付加されたものにも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る靴底用中敷を示す平面図
【図2】図1におけるII−II線断面図
【図3】本発明の第2の実施形態に係る靴底用中敷を示す平面図
【図4】本発明の第3の実施形態に係る靴底用中敷を示す平面図
【図5】本発明の他の実施形態に係る靴底用中敷を示す平面図
【図6】本発明の更に他の実施形態に係る靴底用中敷を示す平面図
【図7】本発明のカップインソールを用いた実施形態を示す斜視図
【図8】本発明のカップインソールを用いた他の実施形態を示す平面模式図
【図9】図7中IX−IX線断面模式図
【図10】図8中X−X線断面模式図
【図11】本発明のカップインソールを用いた更に他の実施形態を示す断面模式図
【図12】本発明の実施形態の靴底用中敷の効果を実証するための実験態様を示す模式図
【図13】同実験における比較例2に係る靴底用中敷を示す模式図
【図14】同実験における比較例1に係る圧力分布を示す模式図
【図15】同実験における比較例2に係る圧力分布を示す模式図
【図16】同実験における実施例1に係る圧力分布を示す模式図
【図17】同実験における実施例2に係る圧力分布を示す模式図
【図18】同実験における実施例3に係る圧力分布を示す模式図
【図19】同実験における実施例4に係る圧力分布を示す模式図
【図20】同実験における実施例5に係る圧力分布を示す模式図
【符号の説明】
【0048】
1a 上側中敷本体
1b 下側中敷本体
2a、2b 第1堰部
3a、3b 第2堰部
4 第3堰部
5 縁部
5a 側縁部(土踏まず側)
5b 側縁部
6 カップインソール
6a、6b 立体形状
A つま先領域
B 中間領域
C 踵領域
D 先端領域
R1〜R4 オリフィス部
W 液体
【特許請求の範囲】
【請求項1】
靴底に装着可能であるとともに可撓性部材から成る中敷本体と、
該中敷本体内に形成され、液体を流動可能に封入し得る収容空間と、
前記収容空間を靴底のつま先領域、踵領域及びそれらの間に位置する中間領域に区分けする堰部と、
該堰部で区分けされた隣り合う領域間で、前記液体が流動するオリフィス部と、
を備えた靴底用中敷であって、
前記踵領域と中間領域とを区分けする堰部に形成されたオリフィス部は、前記中敷本体の側縁部に向かって開口し、当該踵領域から流動する液体が当該中間領域略全体に亘って渦流を形成可能としたことを特徴とする靴底用中敷。
【請求項2】
前記踵領域と中間領域とを区分けする堰部に形成されたオリフィス部は、前記中敷本体の側縁部であって当該中敷本体が装着される靴の土踏まず部に相当する位置に向かって開口したことを特徴とする請求項1記載の靴底用中敷。
【請求項3】
前記中敷本体は、柔軟な合成樹脂シートから成ることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の靴底用中敷。
【請求項4】
前記液体が水又は水と多価アルコールとの混合液であることを特徴とする請求項1〜請求項3の何れか1つに記載の靴底用中敷。
【請求項5】
任意位置に立体形状が造り込まれたカップインソールに前記中敷本体を具備させ、靴底に装着可能とされたことを特徴とする請求項1〜請求項4の何れか1つに記載の靴底用中敷。
【請求項1】
靴底に装着可能であるとともに可撓性部材から成る中敷本体と、
該中敷本体内に形成され、液体を流動可能に封入し得る収容空間と、
前記収容空間を靴底のつま先領域、踵領域及びそれらの間に位置する中間領域に区分けする堰部と、
該堰部で区分けされた隣り合う領域間で、前記液体が流動するオリフィス部と、
を備えた靴底用中敷であって、
前記踵領域と中間領域とを区分けする堰部に形成されたオリフィス部は、前記中敷本体の側縁部に向かって開口し、当該踵領域から流動する液体が当該中間領域略全体に亘って渦流を形成可能としたことを特徴とする靴底用中敷。
【請求項2】
前記踵領域と中間領域とを区分けする堰部に形成されたオリフィス部は、前記中敷本体の側縁部であって当該中敷本体が装着される靴の土踏まず部に相当する位置に向かって開口したことを特徴とする請求項1記載の靴底用中敷。
【請求項3】
前記中敷本体は、柔軟な合成樹脂シートから成ることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の靴底用中敷。
【請求項4】
前記液体が水又は水と多価アルコールとの混合液であることを特徴とする請求項1〜請求項3の何れか1つに記載の靴底用中敷。
【請求項5】
任意位置に立体形状が造り込まれたカップインソールに前記中敷本体を具備させ、靴底に装着可能とされたことを特徴とする請求項1〜請求項4の何れか1つに記載の靴底用中敷。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【公開番号】特開2007−301275(P2007−301275A)
【公開日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−134853(P2006−134853)
【出願日】平成18年5月15日(2006.5.15)
【出願人】(802000020)財団法人浜松科学技術研究振興会 (63)
【出願人】(506164006)有限会社ウォーキングDAY (6)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年5月15日(2006.5.15)
【出願人】(802000020)財団法人浜松科学技術研究振興会 (63)
【出願人】(506164006)有限会社ウォーキングDAY (6)
【Fターム(参考)】
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