説明

靴底用防滑材及び防滑靴底

【課題】水が介在する路面、凍結路面、高硬度路面を歩行するための防滑靴底の長期間使用による強度低下の改良、維持により防滑機能の低下の防止、生産性、生産コスト、及びマーチャンダイジングの観点から改良された防滑靴底の提供。
【解決手段】
予め、標準粒径が0.5〜1.0mmのセラミックス粒子の約0.15gを、ココヤシ(Cocos nucifera LIEBM.)の果実の中果皮繊維で製造した厚さ5mmのシートに、シートの1cm当たり、分散して固着させ、次いでこのようにしてセラミックス粒子を固着させたシ−トを靴底モールドに載置し、その上に靴底用ゴム及び/又は熱可塑性合成樹脂配合物を充填し、プレスする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、靴底用防滑材及び防滑靴底に関する。より詳細に述べると、本発明は、ヤシ科植物の果実の中果皮繊維から成るシ−ト、アサ科植物のジン皮繊維から成るシ−ト又はこれらの組合せから成るシ−トに、所定量のセラミックス粒子を任意のパタ−ンで固定した靴底用防滑材及びこのような靴底用防滑材を使用した滑靴底に関する。
【背景技術】
【0002】
雨に濡れた歩道、雪が積もった道路、氷結した道路、或いは舟の甲板、魚市場等濡れた路面を歩く場合、滑らないように、ゴム及び/又は熱可塑性合成樹脂を主成分とする靴底に防滑機能を持たせる各種の方法が採用されてきた。
【0003】
最も古典的な方法は、底を厚くして、深いしぼを形成することである。この従来法の場合、雪が深いしぼの溝の中に入り込み、凍結して、防滑効果が低下するという欠点、或いは氷結した道路で防滑効果が低下するという欠点がある。
【0004】
また、別の従来技術として、靴底にスタッドを埋設する方法がある。この従来技術の場合、雪がない道路や氷結していない舗装道路や鉄板の上を歩く時は、逆に滑りやすいという欠点や、靴全体の質量を増加させるという欠点がある。
【0005】
さらに、別の従来技術として、靴底の踵部分に鋼鉄製のフォーク形状のアンカーを埋め込み、必要に応じて、フォークが路面を咬むようにした方法がある。この従来技術の場合、靴に常時防滑機能が備わっていないので、煩わしいという欠点がある。
【0006】
然しながら、「滑る」という物理現象を理論的に考察すると、雨に濡れた歩道、雪が積もった道路、氷結した道路、或いは舟の甲板、魚市場等濡れた路面を歩行する際に使用するゴム及び/又は熱可塑性合成樹脂を主成分とする靴の底に使用する防滑材が防滑機能を満足に奏功するには、その防滑材に、靴の底と路面との界面の水をよく吸収する性質と、強度を維持するという二律背反する性質を同時に付与しなければならないことが理解される。
【0007】
一般に、2つの物体が接触したまま相対運動をしようとするとき、または相対運動をしつつあるときには、その界面で、運動を阻止しようとする力が接線方向に働く、このために発生する相対運動に対する抵抗を摩擦という。摩擦は、(1)みかけの接触面積の内部の何点かで真の接触が起き、そこで両面が凝着し、(凝着は塑性変形に伴って起き、その付近一帯が塑性変形する)相対運動が常にその凝着部の剪断などを伴う場合、(2)運動に伴って、片方が相手の面の凹凸を上下する際に、力学的エネルギーの一部が熱として失われる場合、(3)片方の面の凸部が相手の面を堀り起こしてゆく仕事がある場合に発生する。
【0008】
歩行する場合、ゴム及び/又は熱可塑性合成樹脂を主成分とする靴の底の面と路面が接触して、路面の凸部が靴の底の面を堀り起こしてゆく仕事をする場合に摩擦が発生し、歩行しても滑らなくなる。逆に、靴の底の面と、路面の堅い面との界面に、靴の底を被うような膜が形成され、路面の凸部が靴の底の面を堀り起こしてゆく仕事ができなくなった場合に、摩擦が発生しなくなり、滑るという現象が発生する。
【0009】
ゴム及び/又は熱可塑性合成樹脂を主成分とする靴の底の面と、路面との界面に形成される膜が形成される原因は水である。従って、滑りを防止するには、(イ)靴の底の面と、路面との界面に在る水を迅速に除去して、路面の凸部が靴の底の面を堀り起こしてゆく仕事ができるようにするか、(ロ)靴の底の面の凸部が、路面を堀り起こしてゆく仕事ができるようにすることである。(イ)のためには、靴の底に、迅速に且つ出来るだけ多くの水を吸収する性質を付与することである。(ロ)のためには、靴の底に、路面の硬度よりも高い高度を与え、路面を確実に咬む性質、即ち投錨効果を付与することである。
【0010】
この滑り理論を考察して、種子の殻、果実の核及び皮革の粉砕物の少なくとも一種をジエン系ゴム100重量部に対して3〜30重量部配合したことを特徴とするゴム及び/又は熱可塑性合成樹脂を主成分とする靴の底用ゴム組成物が提案された(特開平5−154005号公報)。
【0011】
然しながら、この従来技術の場合、長期間使用する間に、吸水性の種子の殻、果実の核及び皮革の粉砕物が膨潤して、強度が低下し、防滑機能が低下するという欠点がある。
【0012】
また、この滑り理論を考察して、ゴムおよび/または樹脂100重量部に対して、クルミ殻またはイネ科の穀物類の殻を平均粒子径1.0mm以下に粉砕した粉砕物を0.05重量部以上2.0重量部以下配合する方法が提案された(特許第3270387号公報)。
【0013】
然しながら、この従来技術の場合も、長期間使用する間に、吸水性の種子の殻の粉砕物が膨潤して、強度が低下し、防滑機能が低下するという欠点がある。
【0014】
上述した滑り理論を考察して提案された従来技術の欠点を改良する方法として、本願出願人は、セラミックス粒子の周囲に、籾殻粒子及び/又は果実の核種子粒子を結合させたゴム及び/又は熱可塑性合成樹脂を主成分とする靴底用防滑材と、この靴底用防滑材の所定量を靴底モールド上に載置し、次いで靴底用ゴム及び/又は熱可塑性合成樹脂配合物を充填し、プレスすることを含む防滑底を製造する方法を提案して特許出願した(特願2004−64744号)。この従来技術で使用する有機物質である籾殻とは稲、大麦、小麦、燕麦、粟、ヒエ、きび等穀物の外皮の粉砕物であり、果実の核種子粒子とはアプリコット、桃、クルミ、梅等果実の核種子の粉砕粒子である。
【0015】
この従来技術は、セラミックスを使用することにより、靴の底に路面の硬度よりも高い高度を与え、路面を確実に咬む性質、即ち投錨効果を付与することができ、靴の底の面の凸部が、路面を堀り起こしてゆく仕事ができるようにしたこと、及び稲、大麦、小麦、燕麦、粟、ヒエ、きび等穀物の外皮の粉砕物或いはアプリコット、桃、クルミ、梅等果実の核種子の粉砕粒子等吸水性粒子を使用することにより、靴の底に、迅速に且つ出来るだけ多くの水を吸収する性質を付与することができるようにしたので、靴の底と路面との界面の水をよく吸収する性質と、強度を維持するという二律背反する性質を同時に付与することができるという点で優れた防滑靴底を提供することができる。
【0016】
この従来技術は、純技術的には優れた防滑靴底を提供することができるが、生産性、生産コスト、及びマーチャンダイジングの観点から改良の余地がある。
【特許文献1】特開平5−154005号公報
【特許文献2】特許第3270387号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明が解決しようとする課題は、雨に濡れた歩道、雪が積もった道路、氷結した道路、或いは舟の甲板、魚市場等濡れた路面を歩行する際に使用するゴム及び/又は熱可塑性合成樹脂を主成分とするゴム及び/又は熱可塑性合成樹脂を主成分とする防滑靴底が、長期間使用する間に膨潤し強度が低下するという欠点を改良し、且つ強度を維持することにより防滑機能の低下を防止すること、並びに生産性、生産コスト、及びマーチャンダイジングの観点から改良された防滑靴底を提供することである。
【0018】
本発明者は、課題を解決する手段を策定するために、前述した防滑る理論、即ち、(イ)靴の底の面と路面との界面に在る水を迅速に除去して、路面の凸部が靴の底の面を堀り起こしてゆく仕事ができるようにするか、(ロ)靴の底の面の凸部が、路面を堀り起こしてゆく仕事ができるようにすることを応用した。
【0019】
(イ)のために、稲、大麦、小麦、燕麦、粟、ヒエ、きび等穀物の外皮の粉砕物、アプリコット、桃、クルミ、梅等果実の核種子の粉砕粒子に代えてヤシ科植物の果実の中果皮繊維、又はアサ植物から成るシート、或いはこれらの組合せから成るシートを使用すること、及び(ロ)のためにセラミックスを使用することを検討した。
【0020】
本発明においてヤシ科植物の果実の中果皮繊維とは、コモチケンチャヤシ(Actinophleus macarthurii BECC.)、ハリクジャクヤシ(Aiphanes caryotaefolia WENDL.)、ビンロウ(Areca catechu L.)、サトウヤシ(Arenga pinnata MERR.)、ジョオウヤシ(Arecastrum romanzoffianum BECC.)、クモイヤシ(Attalea cohune MART.)、ブラジリゾウゲヤシ(A.funifera MART.)、オウギヤシ(Borrassus flabellifer L.)、ヤタイヤシ(Butia yatai BECC.)、トウ(Calamus L.)、カブダチクジャクヤシ(Caryota mitis LOUR.)、クジャクヤシ(C.urens L.)、グレナダロウヤシ(Ceroxylon andicola HUMB.)、アレカヤシ(Chrysalidocarpus lulescens WENDL.)、テーブルヤシ(Collinis elegans LIEBN.)、ココヤシ(Cocos nucifera L.)、ボタンヤシ(Coleococcus amicarum WARB.)、ブラジルロウヤシ(Copernica cerifera MART.)、タリボットヤシ(Corypha unbraculifera L.)、タダバヤシ(C.utan LAM.)、ショウジョウヤシ(Cyrtostachys renda Bt.)、アメリカアブラヤシ(E.melanococca GAERTN.)、クリヤシ(Guilielma gasipaes L.H.BAILEY)、ケンチャヤシ(Howeia belmoreana BECC.)、キリンケツ(Decemonoropus draco BL.)、トックリヤシモドキ(Hyophorbe verschaffeltii WENDL.)、ドウームヤシ(Hyphaenathebarica MART.)、チリーヤシ(Jubaea spectabilis H.B.KUNTH.)、ベニウチワヤシ(Latania commersonii GMEL.)、ウチワヤシ(Licuala grandis H.WENDL.)、ジャワビロウ(Livistona roundifolia MART.)、ビロウ(L.subglobosa MART.)、オオミヤシ(Lodoicea seyhellarum LABILL.)、トックリヤシ(Mascarena lagenicaulis L.H.BALLEY)、ミリチーヤシ(Mayritia flexuosa L.f.)、トゲナガサゴ(Metroxylonlongispinum BECC.)、トゲサゴ(M.rumphii MArt.)、サゴヤシ(M.sagu ROTTB.)、ニッパヤシ(Nipa fruticans WURMB.)、ニボンヤシ(Oncosperma tigillaria RIDL.)、ババスーヤシ(orbignya martiana BARB.−RODR.)、カナリーヤシ(Phoenix canariensis CHAUB.)、ナツメヤシ(P.dactylifera L.)、ソテツジュロ(P.hanceana NAUD.)、マライテツジュロ(P.paludosa ROXB.)、インチュ(P.pusila GAERTN.)、シンノウヤシ(P.roebelenii O′BRIEN)、サトウナツメヤシ(P.sylvestris ROXB.)、インディ(P.zeylanica TRIN.)、アメリカゾウゲヤシ(Phytelephas macrocarpa RUIZ.)、ラフィヤヤシ(Raphiaruffia MART.)、サケヤシ(R.vinifera BEAUV.)、キャベージヤシ(Roystonea pleracea O.F.COOK)、ダイオウヤシ(R.regia O.F.COOK)、サバンナサバルヤシ(Sabalmauritiiformis GRISER et H.WENDL.)、キリンヤシ(Stevensonia borsigiana DUNG.)、ヒメヤシ(Syagrus ueddeliana BECC.)、オキナヤシ(Aashingtonia filifera WENDL.)、サラカヤシ(Zalacca edulis Bt.)から成る群から選択された少なくとも1種である。
【0021】
本発明において最も好ましいヤシ科植物の果実の中果皮繊維とは、ココヤシの果実の中果皮繊維である。ココヤシの果実は、卵形または楕円形で長さ25〜30cm、基部には緑色で肥大化した萼片がついていて、表皮は薄く、その内側には厚く褐色を帯びた繊維質の中果皮に包まれて、ほぼ球形で堅く黒く、厚さ3〜5mmで基部に3個の凹点のある核、即ち内果皮がある。中果皮の繊維層(ココナッツファイバー、コイア)は、腐化法によって繊維質のみを残し、槌で打って梳り、縄索、たわし、刷毛、敷物、甲板洗用の箒、詰め物等に使用されている。特に、この繊維は、水中での耐久力が強い。
【0022】
本発明では、ヤシ科植物の果実の中果皮繊維で加工したシートを使用する。シートの厚さは1〜10mmの範囲が好ましい。シートの厚さが1mm以下の場合、セラミックス粒子の粒径及び取り込み量が限定され、防滑効果が弱化するので好ましくない。逆に、シートの厚さが10mm以上になると、セラミックス粒子の粒径の範囲は拡大し、且つその取り込み量も大きくなるが、履用時に不安定になり、また防滑効果の点からも過剰物性であり、徒にコストを引き上げることになるので好ましくない。
【0023】
本発明において最も好ましいアサ科植物のジン皮繊維から成るシ−トは、ジュート(Corchorus capsularis L.)から製造されたシートである。
【0024】
本発明で使用する用語「セラミックス」は、「高温で焼結または溶融して製造された主要構成物質が無機・非金属である固体材料」と定義する。
【0025】
本発明で使用されるセラミックスの例としては、酸化物セラミックスがある。酸化物セラミックスには、アルミナ(酸化アルミニウム)、アルミネイト、ムライト、亜鉛酸化物、希土類酸化物、クロム酸化物、コバルト酸化物、シリカ、ジルコニア、スズ酸化物、タングステン酸化物、ジルコン酸塩等が例示される。
【0026】
本発明で使用されるセラミックスの別の例としては、非酸化物セラミックスがある。非酸化物セラミックスには、窒化物(Si3N4、AlN、BN、TiN等)、炭化物(SiC、TiC、B4C、WC等)、硼化物(LaB6、TiB2、ZrB2等)、硫化物(CdS、MoS2等)、けい化物(MoSi2等)が例示される。
【0027】
本発明では、さらにセラミックスをマトリックスとするセラミックス複合材料、セラミックス中に繊維を配合することによって強度又は靱性を強化した繊維強化セラミックス、セラミックス中に母材と異なる材質の粒子を分散させて強度又は靱性を強化した粒子分散セラミックス、セラミックスと金属との複合材料であるサ−メットも使用することができる。
【0028】
本発明で使用される好ましいセラミックスは、酸化物のアルミナと非酸化物である炭化チタンから成る緻密でビッカース硬さが2000と大きな炭化チタン分散アルミナ、或いはジルコニア微粒子を添加したジルコニア添加アルミナ、部分安定化ジルコニアなどにアルミナを分散させてジルコニアの粒成長を抑制し、強度や靱性を更に改善したアルミナ分散ジルコニア、炭化チタン、炭化タングステン、窒化チタン、硼化チタン、硼化ジルコニウム等である。
【0029】
本発明で使用するセラミックス粒子は、それ自体が在る程度の吸水性能を有していることが好ましい。そのためには、セラミックス粒子の表面に気孔を形成することが好ましい。気孔は、連続気孔より独立気孔の方は好ましい。ただし、100%連続気孔、或いは100%独立気孔の形成は難しく、それぞれが混在している場合が殆どである。気孔を形成するのは、セラミックス製造時に、籾殻や有機繊維を混合して焼成する方法が一般的で、ガラス質が形成されるような温度でこれらがガス化する際、閉気孔をもつ多孔体が製造される。
【0030】
本発明で使用するセラミックス粒子の平均粒径は65〜1000μm、好ましくは500〜1000μmである。セラミックス粒子の平均粒径が65μm以下になると、微細な粉体となり、防滑効果が低減するので好ましくない。逆に、セラミックス粒子の平均粒径が1000μm(1mm)以上になると、ヤシ科植物の果実の中果皮繊維で加工したシートとの契合力が弱化し、脱落しやすくなるので好ましくない。
【0031】
本発明において、ヤシ科植物の果実の中果皮繊維で加工したシートに塗布するセラミックス粒子の量は、シート1cm当たり0.1〜0.2g程度が好ましい。セラミックス粒子の量が、0.1g/cm以下の場合、防滑効果が低減するので好ましくない。逆に、セラミックス粒子の量が、0.2g/cm以上になると、防滑効果の点で過剰物性になり、徒にコストを引き上げることになるので好ましくない。
【0032】
本発明の防滑靴底は、靴底モールドにヤシ科植物の果実の中果皮繊維から成るシートを載置し、その上に所定量のセラミックス粒子を任意のパタ−ンで分散させ、次いで靴底用ゴム及び/又は熱可塑性合成樹脂配合物を充填し、プレスすることにより製造される。この製法の利点は、比較的少ないセラミックスの量で防滑靴底の作成が可能となる点である。
【0033】
本発明の防滑靴底に使用する主材は、ゴム又は熱可塑性合成樹脂、或いはゴムと熱可塑性合成樹脂との混合物であり、特段に限定されない。ただし、本発明の防滑靴底に使用する主材としてゴムを使用した場合、比較的柔らかいゴム(硬度45〜70°)であれば、ゴム配合はあまり関係なく製造できる。
【課題を解決する手段】
【0034】
従って、本発明によると、上記課題は次ぎのようにして解決される。
(1)ヤシ科植物の果実の中果皮繊維から成るシ−ト、アサ植物のジン皮繊維から成るシ−ト又はこれらの組合せから成るシ−トに、所定量のセラミックス粒子を任意のパタ−ンで固定した靴底用防滑材。
【0035】
(2)上記(1)項の靴底用防滑材において、ヤシ科植物の果実の中果皮繊維をココヤシ(Cocos nucifera LIEBM.)の果実の中果皮繊維とすること。
【0036】
(3)上記(1)項の靴底用防滑材において、アサ科植物が、ジュート(Corchoruscapsularis L.)とすること。
【0037】
(4)上記(1)〜(3)のいずれか1項に記載の靴底用防滑材において、ヤシ科植物の果実の中果皮繊維から成るシート又はアサ科植物のジン皮繊維から成るシ−ト又はこれらの組合せから成るシートの厚さが1〜10mmとすること。
【0038】
(5)上記(1)〜(4)のいずれか1項に記載の靴底用防滑材において、セラミックス粒子の粒径を65〜1000μmとすること。
【0039】
(6)所定量のセラミックス粒子を予め任意のパタ−ンで分散させたヤシ科植物の果実の中果皮繊維から成るシ−ト、アサ科植物のジン皮繊維から成るシ−ト又はこれらの組合せから成るシ−トを靴底モールドに載置し、その上に靴底用ゴム及び/又は熱可塑性合成樹脂配合物を充填し、プレスして製造された防滑靴底。
【0040】
(7)上記(6)項に記載の防滑靴底において、ヤシ科植物の果実の中果皮繊維を、ココヤシ(Cocos nucifera LIEBM.)の果実の中果皮繊維とすること。
【0041】
(8)上記(6)項に記載の防滑靴底において、アサ科植物を、ジュート(Corchoruscapsularis L.)とすること。
【0042】
(9)上記(6)〜(8)項のいずれか1項に記載の防滑靴底において、ヤシ科植物の果実の中果皮繊維から成るシート又はアサ科植物のジン皮繊維から成るシ−ト又はこれらの組合せから成るシートの厚さを1〜10mmとすること。
【0043】
(10)上記(6)〜(9)項のいずれか1項に記載の防滑靴底において、セラミックス粒子の粒径を65〜1000μmとすること。
【発明の効果】
【0044】
請求項1に記載した発明により、硬度よりも吸水率が優位のヤシ科植物の果実の中果皮繊維、及び/又はアサ科植物のジン皮繊維自体、又は繊維と繊維の間に、吸水率よりも硬度が優位のセラミックス粒子が分散固定されているので、靴底面と、路面との界面に在る水を迅速に除去して、路面の凸部が靴の底の面を堀り起こしてゆく仕事ができるようにし、且つ路面の硬度よりも高い硬度を有するセラミックス粒子が路面を確実に咬む、即ち投錨効果を奏功するので、防滑効果が長期間にわたって発揮される靴底用防滑材が提供される。
【0045】
請求項2に記載した発明により、ヤシ科植物の中でも、中果皮繊維を特に豊富に含有しているココヤシ(Cocos nucifera LIEBM.)の果実の中果皮繊維を効率よく利用することができる。
【0046】
請求項3に記載した発明により、アサ科植物の中でも、特に強靱なジュート(Corchoruscapsularis L.)のジン皮繊維を効率よく利用することができる。
【0047】
請求項4に記載した発明により、ヤシ科植物の果実の中果皮繊維から成るシート又はアサ科植物のジン皮繊維から成るシート又はこれらの組合せから成るシートの厚さを1〜10mmとしたので、セラミックス粒子の粒径及び取り込み量も限定されずに防滑効果が奏功され、履用時に安定感をもたせることができる。
【0048】
請求項5に記載した発明により、セラミックス粒子の粒径を65〜1000μmとしたので、防滑効果が低減することなく、ヤシ科植物の果実の中果皮繊維及び/又はアサ科植物のジン皮繊維で加工したシートとの契合力が安定し、脱落しない。
【0049】
請求項6に記載した発明により、硬度よりも吸水率が優位のヤシ科植物の果実の中果皮繊維、及び/又はアサ科植物のジン皮繊維自体、又は繊維と繊維の間に、吸水率よりも硬度が優位のセラミックス粒子が分散固定されているので、靴底面と、路面との界面に在る水を迅速に除去して、路面の凸部が靴の底の面を堀り起こしてゆく仕事ができるようにし、且つ路面の硬度よりも高い硬度を有するセラミックス粒子が路面を確実に咬む、即ち投錨効果を奏功するので、防滑効果が長期間にわたって発揮される防滑靴底が提供される。
【0050】
請求項7に記載した発明により、ヤシ科植物の果実の中果皮繊維の中でも特に水中での耐久力が強いココヤシ(Cocos nucifera LIEBM.)の果実の中果皮繊維を使用するので、防滑効果と耐水性が長期間にわたって発揮される防滑靴底が提供される。
【0051】
請求項8に記載した発明により、アサ科植物の中でも、特に強靱なジュート(Corchoruscapsularis L.)のジン皮繊維を使用するので、防滑効果と耐水性が長期間にわたって発揮される防滑靴底が提供される。
【0052】
請求項9に記載した発明により、ヤシ科植物の果実の中果皮繊維から成るシート又はアサ科植物のジン皮繊維から成るシ−ト又はこれらの組合せから成るシートの厚さを1〜10mmとしたので、セラミックス粒子の粒径及び取り込み量も限定されずに防滑効果が奏功され、履用時に安定感をもたせた防滑靴底が提供される。
【0053】
請求項10に記載した発明により、セラミックス粒子の粒径を65〜1000μmとしたので、ヤシ科植物の果実の中果皮繊維及び/又はアサ科植物のジン皮繊維で加工したシートとの契合力が安定し、脱落しないで、防滑効果が低減することなく、長期間にわたって発揮される防滑靴底が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
以下、発明を実施するための最良の形態を実施例、試験例を参照して具体的に説明する。
【0054】
[実施例1]
セラミックス粒子として、美州興産株式会社製の舗装用骨材である「シノパール(SYNOPAL)(登録商標)」を使用した。このセラミックス粒子の見掛け比重は1.99,吸水率は1.2%、硬度(旧モース硬度)は7〜8である。標準粒径は、0.5〜1.0mmの範囲である。
【0055】
ヤシ科植物の果実の中果皮繊維として、ココヤシ(Cocos nucifera LIEBM.)の果実の中果皮繊維で、厚さ5mmのシートを製造した。
【0056】
下記の配合で靴底用ゴム配合物を製造した。
成分 質量部
天然ゴム 100
イソプレンラバー 150
シリカ 25
加硫促進剤M 5.5
加硫促進剤TS 0.7
ステアリン酸 2.5
酸化亜鉛 12.5
硫黄 6
【0057】
前記ココヤシ(Cocos nucifera LIEBM.)の果実の中果皮繊維の厚さ5mmのシートに、前記セラミックス粒子をシート1cm当たり約0.15gを固着させ、次いで靴底モールドに載置した。次いで後に上記のゴム配合物100gを充填し従来法により成形して靴底を製造した。
【0058】
[効果確認試験例1]
本発明の防滑材入り靴底の鉄板上の防滑性能を、対照1(防滑材無添加ゴム)及び対照2(セラミックス添加ゴム)のそれと比較して表−1に示す。
【0059】
【表−1】

【0060】
[効果確認試験例2]
鉄板の上に水を散布して、本発明の防滑材入り靴底の鉄板上の防滑性能を、対照1(防滑材無添加ゴム)及び対照2(セラミックス添加ゴム)のそれと比較して表−2に示す。
【0067】
【表−2】

【産業上の利用可能性】
【0068】
雨に濡れた歩道、雪が積もった道路、氷結した道路、或いは舟の甲板、魚市場等濡れた路面を歩行する際に使用するゴム及び/又は熱可塑性合成樹脂を主成分とするゴム及び/又は熱可塑性合成樹脂を主成分とする防滑靴底が、長期間使用する間に膨潤し強度が低下するという欠点を改良し、且つ強度を維持することにより防滑機能の低下を防止し、生産性、生産コスト、及びマーチャンダイジングの観点から改良された靴底用防滑材及び防滑靴底を提供し、且つヤシ科植物の果実の中果皮繊維から成るシ−ト、アサ科植物のジン皮繊維から成るシ−ト又はこれらの組合せから成るシ−トの用途を拡大する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヤシ科植物の果実の中果皮繊維から成るシ−ト、アサ科植物のジン皮繊維から成るシ−ト又はこれらの組合せから成るシ−トに、所定量のセラミックス粒子を任意のパタ−ンで固定した靴底用防滑材。
【請求項2】
ヤシ科植物の果実の中果皮繊維が、ココヤシ(Cocos nucifera LIEBM.)の果実の中果皮繊維である請求項1に記載の靴底用防滑材。
【請求項3】
アサ科植物が、ジュート(Corchorus capsularis L.)である請求項1に記載の靴底用防滑材。
【請求項4】
ヤシ科植物の果実の中果皮繊維から成るシート又はアサ科植物のジン皮繊維から成るシート又はこれらの組合せから成るシートの厚さが1〜10mmである請求項1〜3のいずれか1項に記載の靴底用防滑材。
【請求項5】
セラミックス粒子の粒径が65〜1000μmである請求項1〜4のいずれか1項に記載の靴底用防滑材。
【請求項6】
所定量のセラミックス粒子を予め任意のパタ−ンで分散させたヤシ科植物の果実の中果皮繊維から成るシ−ト、アサ科植物のジン皮繊維から成るシ−ト又はこれらの組合せから成るシ−トを靴底モ−ルドに載置し、その上に靴底用ゴム及び/又は熱可塑性合成樹脂配合物を充填し、プレスして製造された防滑靴底。
【請求項7】
ヤシ科植物の果実の中果皮繊維が、ココヤシ(Cocos nucifera LIEBM.)の果実の中果皮繊維である請求項6に記載の防滑靴底。
【請求項8】
アサ科植物が、ジュート(Corchorus capsularis L.)である請求項6に記載の防滑靴底。
【請求項9】
ヤシ科植物の果実の中果皮繊維から成るシート又はアサ科植物のジン皮繊維から成るシート又はこれらの組合せから成るシートの厚さが1〜10mmである請求項6〜8のいずれか1項に記載の防滑靴底。
【請求項10】
セラミックス粒子の粒径が65〜1000μmである請求項6〜9のいずれか1項に記載の防滑靴底。

【公開番号】特開2006−230979(P2006−230979A)
【公開日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−82571(P2005−82571)
【出願日】平成17年2月21日(2005.2.21)
【出願人】(000167820)広島化成株式会社 (65)
【Fターム(参考)】