説明

音響振動板ならびに音響振動板の製造方法ならびにスピーカ、ヘッドホンおよびイヤーホン

【課題】安価に製造でき、軽量でありながら内部損失を大きくすることができる音響振動板を提供する。
【解決手段】音響振動板は、弾性率異方性を有する。音響振動板は、第1の樹脂層と、第2の樹脂層とからなる。第2の樹脂層が、第1の樹脂層の一主面の全面にわたって形成され、その表面に少なくとも一次元方向に延長する複数の構造体を有する。第2の樹脂層の厚さが、全体の厚さの20%以上60%以下であり、複数の構造体のうち、隣接する構造体から形成される凹部の深さまたは構造体の凹部の深さが、第2の樹脂層の厚さの70%以上95%以下である。複数の構造体の配置ピッチが、5μm以上100μm以下である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ヘッドホン等に用いて好適な音響振動板ならびに音響振動板の製造方法ならびにスピーカ、ヘッドホンおよびイヤーホンに関する。特に、安価に製造でき、軽量でありながら内部損失を大きくすることができる音響振動板ならびに音響振動板の製造方法ならびにスピーカ、ヘッドホンおよびイヤーホンに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、デジタル機器の性能の向上、小型化が目覚ましい。特に、小型軽量なデジタルポータブル機器の登場により、屋外においても音楽や語学、映像等のコンテンツを手軽に楽しむことが可能になっている。テレビチューナを内蔵したデジタルオーディオプレーヤやパソコン、携帯電話等は、今後ますます普及していくものと予想される。
【0003】
デジタルポータブル機器を屋外で使用する場合の多くは、個々人の嗜好に合わせて個人で各種コンテンツを楽しむ場合である。したがって、このようなデジタルポータブル機器にヘッドホン等を接続して使用することも多い。このような場合にも、映画や音楽に関するコンテンツに対して、よりよい音質でその内容を楽しみたいという要求がある。
【0004】
コンテンツに記録されている音情報の再現性は、ヘッドホンの性能に左右される。そして、ヘッドホンの性能は、そのヘッドホンに用いられる音響振動板の持つ周波数特性に左右される。
【0005】
音響振動板に対して一般的に要求される性質として、以下のものを挙げることができる。
(1)軽いこと(密度が小さいこと)
(2)弾性率が高いこと(硬いこと)
(3)内部損失が大きいこと(制振性が高いこと)
【0006】
音響振動板を軽くすることにより、音声信号に対する応答性をよくすることができる。また、同じエネルギであっても、音響振動板を大きく振動させることができ、したがって音圧を高くすることができる。携帯して用いるヘッドホンやイヤーホン自体、軽さを要求されることから、それに用いられる音響振動板が軽量であることは重要である。音響振動板の弾性率を高くすることにより、音響振動板のピストン振動帯域を高周波方向に拡大することができる。音響振動板の内部損失を大きくすることにより、音響振動板の共振のピークにおける音圧を低減させることができ、周波数特性を表わす曲線の形状を滑らかにすることができる。
【0007】
再生される音の音質劣化の要因として、音響振動板に発生する定常波による共振がある。定常波の発生による共振は、いわゆる分割振動を引き起こし、このような分割振動は、特に高音域(ここでいう高音域とは、周波数が1kHz以上を指している。)の音の再生で問題となる。分割振動が発生すると、音響振動板の正常なピストンモーションが阻害され、本来の周波数以外の成分が音響振動板の振動に加わる。例えば、円板状の振動膜を振動させた場合、分割振動によって高次の振動が発生する。一般に、この高次の振動は整数次の倍音にはならない。そのため、このような振動成分が「音の濁り」として我々の耳に知覚されることになる。
【0008】
分割振動の影響を抑えるためには、弾性率が高く、内部損失が大きい材料を音響振動板に用いることが有効である。しかしながら、両特性は一般に相矛盾する関係にあり、両者のバランスをとることは困難である。例えば、弾性率の高い材料を用いれば、分割振動の起こる周波数を高域側に移すことができるが、分割振動の影響によるピーク/ディップが鋭いものとなってしまうため、同時に、音響振動板の内部損失を大きくするような工夫が必要となる。
【0009】
下記の特許文献1には、振動板上に繊維層や、塗膜によるエンボスをつけて内部損失を大きくすることが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特許第4153934号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、特許文献1に記載されているような、振動板上に繊維層を付着させる方法は、振動板自体の極端な重量増加を伴い、音の変換効率が悪くなってしまうとともに、軽さが要求されるヘッドホンに不向きである。さらに、別部材を付加することになるので、工程が複雑となり、製造コストの上昇につながってしまう。また、塗膜によるエンボスをつける手法については、繊維層を付加する手法ほどの内部損失を得ることができない。
【0012】
特許文献1に記載されているような方法のほかにも、振動板として樹脂フィルムを用いる場合に、樹脂にフィラー等を添加して振動板の内部損失を大きくする工夫がなされてきた。しかしながら、フィラー等の異材質の添加は、材料コストの上昇を招き、さらにはフィルムの成形性を悪化させるなど製造上の問題点を発生させてしまっていた。
【0013】
したがって、この発明の目的は、安価に製造でき、軽量でありながら内部損失を大きくすることができる音響振動板ならびに音響振動板の製造方法ならびにスピーカ、ヘッドホンおよびイヤーホンを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上述した課題を解決するために、この発明は、
第1の樹脂層と、
第2の樹脂層と
からなり、
第2の樹脂層が、第1の樹脂層の一主面の全面にわたって形成されるとともに、その表面に少なくとも一次元方向に延長する複数の構造体を備えるものである
弾性率異方性を有する音響振動板である。
【0015】
この発明は、
第1の樹脂フィルムに第2の樹脂を塗布する工程と、
金型の凹凸形状を第2の樹脂に転写するとともに、第1の樹脂層および第2の樹脂層からなる2層の樹脂フィルムとする工程と、
2層の樹脂フィルムに熱および圧力を加えることにより形状を付与する工程と
を備え、
第2の樹脂層の表面に転写された凹凸形状が、少なくとも一次元方向に延長する複数の構造体からなるものである
弾性率異方性を有する音響振動板の製造方法である。
【0016】
第2の樹脂層の厚さが、全体の厚さの20%以上60%以下であり、複数の構造体のうち、隣接する構造体から形成される凹部の深さまたは構造体の凹部の深さが、第2の樹脂層の厚さの70%以上95%以下である。
複数の構造体の配置ピッチが、5μm以上100μm以下である。
第1の樹脂層を形成する樹脂の弾性率と、第2の樹脂層を形成する樹脂の弾性率とが異なる。
【0017】
第2の樹脂層が、その表面に少なくとも一次元方向に延長する複数の構造体を有することにより、音響振動板が弾性率異方性を有する。ここで、弾性率異方性とは、相異なる方向に対して得られる弾性率が、異なった値を有することをいう。本明細書中において、弾性率異方性を有する、とは、ある方向に対して得られる弾性率と、それと垂直な方向に対して得られる弾性率とが異なることをいうものとする。
【0018】
音響振動板が弾性率異方性を有すると、音響振動板の外縁部で反射された反射波は、駆動波のやってきた方向へ反射しない。したがって、定常波の発生が抑制され、分割振動の発生が抑制される。
【発明の効果】
【0019】
この発明によれば、音響振動板が弾性率異方性を有しているため、定常波の発生が抑制され、分割振動の発生が抑制される。したがって、安価でありながら内部損失の大きい音響振動板ならびに音響振動板の製造方法ならびにスピーカ、ヘッドホンおよびイヤーホンを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】図1Aは、この発明の一実施の形態にかかる音響振動板の構成を説明するための上面模式図である。図1Bは、図1Aに示したこの発明の一実施の形態にかかる音響振動板のA−A断面の一部分を示す拡大模式図である。
【図2】図2Aは、弾性率が異なる第1の樹脂層103および第2の樹脂層105が接合されている積層体101の断面模式図である。図2Bは、積層体101に曲げ変形が加わったときの積層体101の断面模式図である。
【図3】図3は、構造体の断面形状の構成例を示す斜視図である。
【図4】図4は、一般的な音響振動板11の振動状態を説明するための略線図である。
【図5】図5は、この発明の一実施の形態にかかる音響振動板1の振動状態を説明するための略線図である。
【図6】図6は、音響振動板の第2の樹脂層に微細な構造体を形成するための転写装置の一構成例を示す概略図である。
【図7】図7は、樹脂フィルムに形状を付与するための工程の説明に用いる略線図である。
【図8】図8は、樹脂フィルムに形状を付与するための工程の説明に用いる略線図である。
【図9】図9Aは、インパルス入力に対するこの発明の一実施の形態にかかる音響振動板のシミュレーション結果である。図9Bは、インパルス入力に対する一般的な音響振動板のシミュレーション結果である。
【図10】図10は、官能試験に用いた音響振動板の表面を測定したプロファイルを示す略線図である。
【図11】一般的なヘッドホンの構造を説明するための分解図である。
【図12】図12は、スピーカにおける音響振動板の駆動原理を説明するための断面図である。
【図13】図13Aは、一般的な音響振動板の単体を示した上面図である。図13Bは、図13Aに示した一般的な音響振動板のB−B断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、この発明の実施の形態について説明する。なお、説明は、以下の順序で行う。
<1.音響振動板の概要>
[音響振動板の駆動原理]
<2.この発明の一実施の形態>
[音響振動板の構成例]
「第2の樹脂層に形成される微細な構造」
[音響振動板の制振作用]
[音響振動板の製造方法]
[振動減衰性に関するコンピュータシミュレーション]
[再生音質の官能評価]
<3.変形例>
【0022】
なお、以下に説明する実施の形態は、この発明の好適な具体例であり、技術的に好ましい種々の限定が付されているが、この発明の範囲は、以下の説明において、特にこの発明を限定する旨の記載がない限り、以下に示す実施の形態に限定されないものとする。
【0023】
<1.音響振動板の概要>
この発明の一実施の形態にかかる音響振動板の説明の前に、一般的なヘッドホンの構造およびヘッドホンに用いられる音響振動板の駆動原理を説明する。
【0024】
図11は、一般的なヘッドホンの構造を説明するための分解図である。図11には、ハウジング(筺体)内部において、音の発生にかかわる部分を図示しており、イヤーパッドなどは除いて図示してある。図11に示す例では、図の左側を耳に近い側として、左から順に、プロテクタ40、音響振動板11、音響レジスタ41、ポールピース42、マグネット43、フレーム45、端子板46および音響レジスタ47がハウジングの内部に配置されている。これらが音声信号を音圧に変化するスピーカを構成しており、音響振動板11が振動することにより、入力される音声信号に応じた音圧を発生させる。
【0025】
[音響振動板の駆動原理]
図12は、スピーカにおける音響振動板の駆動原理を説明するための断面図である。図13Aは、一般的な音響振動板の単体を示した上面図である。図13Bは、図13Aに示した一般的な音響振動板のB−B断面図である。
【0026】
スピーカ400は、例えばドーム型スピーカであり、音圧の発生を担う音響振動板11は、図13Aおよび図13Bに示すように、中央部が凸とされたドーム部Dmと、その周りを囲むドーナツ状のダンパ部Dpとからなっている。音響振動板11の凸とされた方向が、ヘッドホンの使用者の耳に近い側となる。
【0027】
音響振動板の材質は、PC(Polycarbonate:ポリカーボネート)、PP(Polypropylene:ポリプロピレン)、PE(Polyethylene:ポリエチレン)、PET(Polyethylene Terephthalate:ポリエチレンテレフタラート)、PEN(Polyethylene Naphthalate:ポリエチレンナフタレート)等、一般的な熱可塑性樹脂である。表面が平滑な樹脂フィルムを、例えば圧空成形法により成形することで、上記形状の音響振動板を得ることができる。
【0028】
図12に示すように、音響振動板11は、外周がフレームに固定され(固定端)、さらにドーム部Dmとダンパ部Dpとの境界となる位置で、ドーム部Dmの凸とは逆の側に、コイル48が取り付けられている。このコイル48は、ボイスコイルと呼ばれるものであり、例えば、黄銅製のリングと組み合わされて、音響振動板11と一体的に構成されている。
【0029】
ボイスコイルの内側または外側にはマグネット44が配されており、ボイスコイルは、音響振動板以外の部分には直接触れないように配置される。すなわち、音響振動板11のダンパ部Dpは、片持ちばねの役割を担っている。
【0030】
ボイスコイルに音声信号としての電流を流すと、ボイスコイルに磁力線が発生し、マグネット44の磁力と反発することで、ダンパ部Dpに支持されたコイル48が上下に振動する。したがって、音響振動板11もコイル48とともに振動(ピストンモーション)する。音響振動板11がピストン振動49をすることにより、音声信号に応じた音圧が発生する仕組みとなっている。
【0031】
<2.この発明の一実施の形態>
[音響振動板の構成例]
図1Aおよび図1Bに、この発明の一実施の形態にかかる音響振動板1の一構成例を示す。図1Aは、この発明の一実施の形態にかかる音響振動板の構成を説明するための上面模式図である。図1Bは、図1Aに示したこの発明の一実施の形態にかかる音響振動板のA−A断面の一部分を示す拡大模式図である。
【0032】
図1Bに示すように、この発明の一実施の形態にかかる音響振動板1は、第1の樹脂層3と、第2の樹脂層5とからなっている。第2の樹脂層5は、第1の樹脂層3の全面を覆うように形成されており、第1の樹脂層3とは逆側の表面に、微細な構造体5aの配列からなる微細な構造を有している。
【0033】
樹脂フィルムから構成される音響振動板の厚さとしては、応答性、製造のし易さ、音響振動板の重量等の観点から、20μm以上50μm以下が好ましく、25μm以上40μm以下であることがより好ましい。このことから、音響振動板1の厚さTも、20μm以上50μm以下の範囲にあることが好ましく、25μm以上40μm以下の範囲にあることがより好ましい。
【0034】
第1層の樹脂層3は、例えば、樹脂フィルムである。樹脂フィルムとしては、PCのほか、PP、PE、PET、PEN、PCなどの一般的な熱可塑性樹脂を使用することができる。
【0035】
第2層の樹脂層5は、例えば、一主面に凹凸形状が形成された樹脂である。第2の樹脂層5の材料としては、微細な構造が形成できればよく、光もしくは電子線などにより硬化するエネルギ線硬化型樹脂、または熱で軟化し成形後に冷却固化する熱可塑性樹脂を用いることができる。エネルギ線硬化型樹脂としては、光により硬化する感光性樹脂組成物が好ましく、紫外線により硬化する紫外線硬化型樹脂組成物が最も好ましい。例えば、紫外線硬化型アクリル系樹脂などが好適である。
【0036】
第2の樹脂層の厚さT2は、音響振動板1の厚さTの20%以上60%以下とされる。音響振動板1の厚さTとして好ましいとされる範囲において、Tに対してT2が20%未満であると、第2の樹脂層5に微細な構造体5aおよびB部を形成することが困難となる。一方、Tに対してT2が60%を超えると、音響振動板の重量が増加して応答周波数が低下してしまう。
【0037】
なお、第2の樹脂層5は、第1の樹脂層3とは異なる弾性率を持つ材料から選択されることが好ましい。異種材を組み合わせた積層体とすることにより、この積層体に振動伝播による曲げ変形が加わったときに、接合面にずり変形(せん断変形)を生じさせ、振動板の制振性を高めること(内部損失を大きくすること)ができるからである。
【0038】
図2Aおよび図2Bに、異種材の接合による制振の原理を示す。図2Aは、弾性率が異なる第1の樹脂層303および第2の樹脂層505が接合されている積層体101の断面模式図である。図2Bは、積層体101に曲げ変形が加わったときの積層体101の断面模式図である。
【0039】
図2Bに示すように、この積層体101に振動伝播による曲げ変形が加わったとき、曲げに対する歪み量は、第1の樹脂層303と第2の樹脂層505とで異なる。したがって、接合面Ifにずり変形が生じることになるが、このずり変形は、熱エネルギに変換されて失われるため、曲げによる振動は急速に減衰していく。すなわち、積層体101を音響振動板として用いたとき、音響振動板が第1の樹脂層303と第2の樹脂層505のどちらか1層だけからなる場合と比較して、音響振動板の内部損失を大きくすることができる。第1の樹脂層303および第2の樹脂層505の弾性率差が大きいほど振動減衰性はよくなるが、両者の差があればよく、それぞれの弾性率を限定するものではない。
【0040】
この発明の一実施の形態にかかる音響振動板1は、第2の樹脂層5のB部が第1の樹脂層3の全面を覆うように形成される。そのため、第1の樹脂層3および第2の樹脂層5の接合部では、双方の弾性率の違いによるせん断変形が発生し、音響振動板の制振効果を高めるようになされている。
【0041】
「第2の樹脂層に形成される微細な構造」
次に、この発明の一実施の形態にかかる音響振動板1の表面に形成される微細な構造について説明する。
【0042】
上述したように、第2の樹脂層5は、微細な構造体5aの配列からなる微細な構造を有している。第2の樹脂層5に複数配置される構造体5aは、音響振動板1に弾性率異方性を与える。弾性率の異方性は、分割振動の発生を抑制する制振効果を音響振動板1に与える。なお、本明細書にいう弾性率とは、体積弾性率を指すものとする。
【0043】
図1Bに示すように、第2の樹脂層5は、複数配置される構造体5aと、第1の樹脂層3の全面を覆うように形成されるB部とからなっている。構造体5aは、例えば、一次元方向に延長されたリブ構造である。図1Bの例では、構造体5aとして、断面プリズム形状のリブ構造が配置されている。なお、図1Aにおいて、音響振動板1の全面にひかれた斜線は、この微細な構造体5aの稜線を模式的に直線で表現したものであり、実際の微細な構造をそのまま現したものではない。例えば、構造体の配置ピッチPが15μm、音響振動板の直径を50mmとしたならば、およそ3000本の直線として現されるものである。
【0044】
構造体5aの断面が凸形状の場合、構造体5aの間には、隣接する構造体からなる凹部が形成される。いま、その深さをDとすると、Dは、第2の樹脂層の厚さT2よりも小とされる。すなわち、第2の樹脂層5のB部は、(T2−D)の厚さで第1の樹脂層3の一主面上に形成されている。なお、構造体5aが凹形状である場合には、Dは、構造体5aの凹形状の深さである。
【0045】
より詳細には、凹部の深さDは、第2の樹脂層の厚さT2の70%以上95%以下とされる。T2に対してDが70%未満であると、微細な構造体5aを形成することによる弾性率異方性を得られにくい。一方、T2に対してDが95%を超えると、B部を形成することによる第1の樹脂層3との接合部における制振効果を得られにくい。
【0046】
構造体の配置ピッチPは、5μm以上100μm以下とされることが好ましく、10μm以上50μm以下とされることがより好ましい。配置ピッチPが5μm未満であると、製造工程上、構造体5aの形状を所望のものとすることが困難になる。一方、配置ピッチPが100μmを超えると、構造体を複数配置することによる弾性率異方性が得られにくくなる。
【0047】
なお、上述の構成例では、構造体5aの断面形状を断面プリズム形状としたが、構造体5aの断面形状はこれに限られない。例えば、図3Aに示す台形状、図3Bに示すレンチキュラー形状、またはこれらの反転形状としてもよい。ここで、レンチキュラー形状とは、凸部の稜線に垂直な断面形状が、円弧状もしくはほぼ円弧状、楕円弧状もしくはほぼ楕円弧状、または放物線状もしくはほぼ放物線状の一部となっているものをいう。したがって、シリンドリカル形状もレンチキュラー形状に含まれる。
【0048】
その他にも、構造体5aの断面形状を、トロイダル形状、多角形状、自由曲面状、またはこれらの組み合わせとしてもよい。また、構造体5aの断面形状は対称形状に限られない。例えば、図3Cに示すように、構造体5aの断面において、構造体5aの頂部と構造体5aの底辺の中点とを結ぶ線分Mが、構造体5aの底辺の垂直二等分線に対して傾いているものとしてもよい。
【0049】
[音響振動板の制振作用]
上述したように、第2の樹脂層5に形成される微細な構造は、音響振動板1に弾性率異方性をもたせるために設けられるものである。図4および図5を参照して、この発明の一実施の形態にかかる音響振動板1の制振作用について説明する。
【0050】
図4は、一般的な音響振動板11の振動状態を説明するための略線図である。図5は、この発明の一実施の形態にかかる音響振動板1の振動状態を説明するための略線図である。ここで、図4および図5にそれぞれ示す音響振動板は、音響振動板の外周およびボイスコイルが巻かれるリングCの外形が正円であるとする。
【0051】
図4Bは、図4AのV部を拡大した図である。図12を用いて説明したように、ボイスコイルが上下に振動することにより、音響振動板11もボイスコイルとともに振動し、音響振動板11は音声信号に応じた音圧を発生させる。一般的な音響振動板11の場合、ボイスコイルの上下運動によって、図4BのD点に生じた駆動波は、リングCの外周に対する法線方向、言い換えれば、音響振動板11の半径方向へ伝播する。
【0052】
外周部へ到達した駆動波は、固定端である外周部で反射される。外周部で生じた反射波は、半径方向にそって、駆動波のやってきた方向に向かって進行する。そのため、これら駆動波および反射波の干渉の結果として、半径方向に定常波Swが生じる。このような定常波Swの発生は、音響振動板の振動に分割振動を引き起こし、音響振動板の正常なピストンモーションを阻害する。すなわち、音響振動板から発生する音の音質が低下してしまう。
【0053】
次に、この発明の一実施の形態にかかる音響振動板1の振動状態について説明する。音響振動板1は、第2の樹脂層5に微細な構造体5aを有している。構造体5aとして、第2の樹脂層5の全面に断面プリズム形状の一次元リブ構造が形成されている場合について説明する。
【0054】
図5Bは、図5AのW部を拡大した図である。図5Aおよび図5Bでは、上述のリブ構造の稜線を、模式的に直線で現している。第2の樹脂層5に形成されたリブ構造は、音響振動板1に弾性率異方性を与える。リブ構造の存在により、この発明の一実施の形態にかかる音響振動板1は、リブの稜線方向とそれに垂直な方向とで異なった弾性率を有する。すなわち、図5Bにおいて、リブの稜線方向の弾性率をE1、リブの稜線と垂直な方向の弾性率をE2とすると、E1>E2となっている。
【0055】
次に、音響振動板に弾性率異方性を与えることによる制振の作用について説明する。ボイスコイルの上下運動により、図4Bに示すある点Dで発生した駆動波が、音響振動板に伝搬していくという点は一般的な音響振動板の場合と同様である。この発明の一実施の形態にかかる音響振動板1では、発生した駆動波が、音響振動板1の半径方向とは異なる方向へ伝搬する点で一般的な音響振動板11の場合と異なっている。
【0056】
ここで、物質内を伝播する振動波の速さV(m/s)は、その物質の弾性率E(Pa)および密度ρ(kg/m3)を用いて以下の式(1)で表わされる。
【0057】
【数1】

【0058】
リブの稜線方向に伝わる波の速さをV1とし、リブの稜線と垂直な方向に伝わる波の速さをV2とすると、E1>E2であることから、式(1)により、V1>V2となる。
【0059】
点Dから伝搬する振動波は、リブの稜線方向に伝わる振動波と、リブの稜線に垂直な方向に伝わる振動波の重ね合わせである。したがって、駆動波Awは、図5Bに示すように、音響振動板1の半径方向とずれた方向に伝搬する。
【0060】
リングの外周は固定端であるから、外周部に到達した駆動波Awは、反射の法則に従って反射する。すなわち、反射波Rwは、駆動波Awのやってきた方向とは異なる方向へ進行することになるから、駆動波Awとその反射波Rwによる半径方向における定常波の発生が抑制される。
【0061】
このように、この発明の一実施の形態にかかる音響振動板によれば、音響振動板の半径方向における定常波の発生による分割振動の発生を抑制でき、再生される音の音質低下を抑制することができる。
【0062】
[音響振動板の製造方法]
図6〜図8を参照して、この発明の一実施の形態にかかる音響振動板1の製造方法について説明する。
【0063】
この発明の一実施の形態にかかる音響振動板1の製造工程は、概略的には、基材となる第1の樹脂層と微細な構造体が形成された第2の樹脂層とを一体的に構成した樹脂フィルムとする工程と、該樹脂フィルムを音響振動板の形状に成形する工程とからなる。
【0064】
図6は、音響振動板の第2の樹脂層に微細な構造体を形成するための転写装置の一構成例を示す概略図である。図6に示すように、転写装置は、樹脂塗布装置31、ニップロール33、ロール金型35、紫外線照射装置37および剥離ロール39を備えている。図中の矢印は、基材フィルム23および積層構造とされた樹脂フィルム21が搬送される方向を示す。
【0065】
ロール金型35には、例えば、バイト加工またはレーザ加工などにより、微細な構造体と同一の凹凸形状を反転した形状が形成されている。ロール金型35の材質としては、ステンレス鋼(SUS)や炭素鋼などの一般的な鉄系材が使用可能である。ロール金型35の表面には、銅や無電解Ni−Pめっきが施され、このめっきを例えば単結晶ダイヤモンド製バイトにて溝加工する。
【0066】
図の左側から基材フィルム23が連続的に供給される。この基材フィルム23は、音響振動板1において、第1の樹脂層3を構成するものである。樹脂塗布装置31から、基材フィルム23の上に、紫外線硬化型樹脂(以下、UV硬化型樹脂と記載する。)25が連続的に塗布される。このUV硬化型樹脂25は、音響振動板1において、第2の樹脂層5を構成するものである。
【0067】
ニップロール33およびロール金型35は、所定の間隔をもって配置されている。UV硬化型樹脂25が塗布された基材フィルム23は、ニップロール33およびロール金型35の間を通される。このようにすることで、ニップロール33により、UV硬化型樹脂25が基材フィルム23を介してロール金型35に押圧される。
【0068】
ここで、基材フィルム23は、UV硬化型樹脂25がロール金型35の周側面に約半周にわたって密着した状態に巻きつくようになされている。この状態で、紫外線照射装置37から紫外線Uが照射される。基材フィルム23に塗布されたUV硬化型樹脂25は、ニップロール33による押圧および紫外線Uの照射により、金型形状を保ったまま硬化する。なお、UV硬化型樹脂25は、基材フィルム23を介して紫外線Uが照射されるため、基材フィルム23が紫外線透過性を有することが望ましい。
【0069】
剥離ロール39により、基材フィルム23およびUV硬化型樹脂25が一体構成とされた樹脂フィルム21をロール金型35から剥離する。このようにして、第1の樹脂層および第2の樹脂層が一体構成とされた樹脂フィルム21を得ることができる。このとき、第2の樹脂層には、微細な構造体が形成された状態となっている。
【0070】
次に、図6に示す樹脂フィルム21に、音響振動板としての形状を付与するための工程について説明する。
【0071】
図7および図8は、樹脂フィルムに形状を付与するための工程の説明に用いる略線図である。図7および図8に示す形状付与の方法は、圧空成形法と呼ばれる。以下に説明するように、圧空成形法によれば、樹脂フィルム21の微細な構造体が形成された側(第2の樹脂層側)に対して、金型等を接触させないため、圧空成形法は、この発明の一実施の形態にかかる音響振動板の製作に適している。
【0072】
図7Aに示すように、圧空ボックス51内に、振動板金型55、外周リングRおよび適当な大きさにカットされた樹脂フィルム21が配置される。外周リングRは、音響振動板の形状維持のほか、音響振動板をスピーカのフレームに確実に固定するためのものである。なお、樹脂フィルム21は、余熱が施されたうえで、圧空ボックス51内に配置される。
【0073】
図7Bに示すように、圧空ボックス51を閉じ、樹脂フィルム21と振動板金型55との間を真空にし、樹脂フィルム21を振動板金型55に密着させる。さらに、樹脂フィルム21に対して数気圧の圧縮空気Caをあて、樹脂フィルム21を振動板金型55の形状に追従させる。
【0074】
図7Cに示すように、振動板金型55に熱Hを加えて熱し、樹脂フィルム21を軟化させ、賦形を促進させる。
【0075】
図8Aに示すように、冷却を行った後、樹脂フィルム21を振動板金型55から離型する。ここまでの工程で、外周リングRが樹脂フィルム21に溶着される。
【0076】
図8Bに示すように、外周をカッター59でトリミングして、この発明の一実施の形態にかかる音響振動板1を得る。
【0077】
このようにして得られた音響振動板1は、巨視的にみれば一般的な音響振動板と変わりはないが、断面を拡大すると、図8Cに示すように微細なリブ構造が形成されたものとなっている。
【実施例】
【0078】
[振動減衰性に関するコンピュータシミュレーション]
以下、この発明の一実施の形態にかかる音響振動板の振動減衰性について、コンピュータシミュレーションの結果を参照しながら説明する。
【0079】
図9Aおよび図9Bは、音響振動板の表面に発生した振動の減衰の様子をコンピュータシミュレーションした結果を示す略線図である。このコンピュータシミュレーションは、音響振動板の中心にインパルス振動を加えたときの音響振動板の振動減衰性を示したものである。図9Aおよび図9Bにおいて、縦軸を振幅に比例した強度(dB IL)とし、横軸を時間(秒)としている。以下、この発明の一実施の形態にかかる音響振動板のシミュレーション結果を試験例1とし、一般的な音響振動板のシミュレーション結果を比較例1とする。
【0080】
(試験例1)
図9Aは、インパルス入力に対するこの発明の一実施の形態にかかる音響振動板のシミュレーション結果である。
(比較例1)
図9Bは、インパルス入力に対する一般的な音響振動板のシミュレーション結果である。
【0081】
以下に、これらのシミュレーションに用いた設定を示す。
加振箇所:リングCにあたる円形部位
入力:0.1Nのインパルス入力
解析時間:加振入力から0.01秒間
【0082】
(試験例1)
第1の樹脂層:PETフィルム、T=23μm
第2の樹脂層:紫外線硬化性アクリル系樹脂、B部厚さ:2μm
微細なリブ構造:断面プリズム形状(頂角90°)、D=7.5μm、P=15μm
(比較例1)
単層のPETフィルム、T=23μm
【0083】
図9Aおよび図9Bに示すように、この発明の一実施の形態にかかる音響振動板は、加振入力から0.01秒でほぼ減衰しているのに比べ、一般的な音響振動板は、その時点では振幅が1/5程度まで減衰しているものの、依然として振動が残存している。以上の結果より、この発明の一実施の形態にかかる音響振動板は、一般的な音響振動板と比較して振動減衰性に優れていることがわかる。
【0084】
以下、この発明の一実施の形態にかかる音響振動板および一般的な音響振動板に対する再生音質の官能評価結果を参照しながら説明する。
【0085】
[再生音質の官能評価]
市販されているステレオヘッドホン(ソニー株式会社製)に、この発明の一実施の形態にかかる音響振動板1および一般的な音響振動板11を組み込み、それぞれをヘッドホンA(実施例1)、ヘッドホンB(比較例2)とした。上記ヘッドホンAおよびヘッドホンBを用い、ジャズ、女性ボーカルおよびクラシックの各ジャンルを計10名の被験者に試聴してもらい、下記の評価項目について、各々よいと思われるほうに票を投じてもらった。評価試験は、被験者にヘッドホンAおよびヘッドホンBのどちらを使用しているのかを伏せたブラインドテストの形式とした。なお、この評価において、高音域には中高音を含むものとしている。
【0086】
評価項目:
「低音域の再現性」、「高音域の再現性」および「音の奥行き感」
【0087】
(実施例1)
上述した方法により、この発明の一実施の形態にかかる音響振動板を製作した。このときの製造条件を以下に示す。
第1の樹脂層(基材フィルム):PET(厚さ:23μm、弾性率:4.0MPa)
第2の樹脂層:紫外線硬化アクリル系樹脂(弾性率:7.7MPa)
微細構造:断面プリズム形状(B部厚さ:2μm、T2:7.5μm、P:15μm)
微細形状の転写方法:UV転写法
音響振動板形状への成形方法:圧空成形法
(圧縮空気圧:6atm、金型温度:200℃、成形後50℃まで冷却、剥離)
【0088】
図10に、このときに得られた音響振動板の表面を測定したプロファイルを示す。図10Bは、図10AのS部を拡大した図である。図10Bから、音響振動板の巨視的な形状に沿って、構造体が形成されていることがわかる。このとき、D=6.3μm、P=15.5μmという値を得た。
(比較例2)
PETの単一層を用い、かつ一表面に微細構造を形成しないことを除いては、実施例と同様の製造条件により、一般的な音響振動板を製作した。
【0089】
表1に、この試験の評価結果を示す。
「低音域の再現性」では両者で差が見られなかったが、「高音域の再現性」と「音の奥行き感」では、実施例1の音響振動板を使用したヘッドホンがよいとする判定結果が得られた。
【0090】
【表1】

【0091】
表1において、高音域の再現性に差が現れたのは、実施例2の音響振動板については、高音域で問題となる分割振動の発生が抑制されているためであると推測することができる。すなわち、少なくとも一次元方向に延長する複数の構造体を音響振動板の表面に設けることによる制振作用を確認することができた。
【0092】
<3.変形例>
以上、この発明の一実施形態について具体的に説明したが、この発明は、上述の一実施形態に限定されるものではなく、この発明の技術的思想に基づく各種の変形が可能である。
【0093】
例えば、この発明の実施の形態にかかる音響振動板の適用範囲はヘッドホン、イヤーホンに限られない。スピーカにも適用することができ、したがって、オーディオ、ラジオ、テレビ、パソコン、携帯電話、スマートフォン等に適用してもよい。
【0094】
スピーカの種類もドーム型に限られず、コーン型、ホーン型、静電型、リボン型等、種々のものに適用できる。また、フルレンジスピーカのみでなく、スピーカシステムにも適用できる。
【0095】
音響振動板の製作は、ロールtoロール方式による一貫工程としてもよい。第2の樹脂層としてUV硬化型樹脂を使用する例を示したが、その他のエネルギ線硬化型樹脂を用いてもよい。この場合においては、紫外線照射装置をエネルギ線硬化型樹脂の種類に合わせて適宜変更すればよい。
【0096】
音響振動板の表面に形成する微細な構造体の形成には、エネルギ線を照射して硬化させる方法のほか、樹脂に熱や圧力を加え、形状を転写する方法または樹脂フィルムをロールから供給し、熱を加えながら型の形状を転写する方法(ラミネート転写法)を適用してもよい。
【0097】
樹脂フィルムに音響振動板の形状を付与する方法としては、圧空成形法のほか、真空成形、フィルムインサート成形、3次元ラミネート成形などが適用できる。
【0098】
音響振動板の表面に形成する微細な構造体の配置は、周期的でなくともよい。複数の配置ピッチを設定してもよいし、配置ピッチが非周期的であってもよい。配置ピッチが非周期的である場合には、各構造体間の配置ピッチのうちの最小値、平均値、中央値などからPの値を選択する。
【0099】
また、本説明では、構造体は音響振動板の表面のみに形成される例を示したが、構造体は、音響振動板の裏面または両面に形成してもよい。
【0100】
音響振動板の材質として樹脂を使用する例を示したが、樹脂に各種フィラーを添加する手法と組み合わせてもよい。また、2層構造に限らず、3層、4層とさらに積層された構造としてもよい。
【0101】
なお、この発明は、表面に微細な構造体を形成できる限り、音響振動板を構成する材料としてその他の材料を使用してもよい。例えば、樹脂のほか、金属材料、鉱物、セラミック、ガラス、植物材料またはこれらの複合材を使用してもよい。
【0102】
金属材料としては、アルミニウム、チタニウム、ベリリウム、マグネシウム、ボロン化チタン、ジュラルミン等が使用でき、音響振動板形状の形成には、温間プレス、蒸着法等が適用できる。微細な構造体の形成には、放電加工やレーザ加工、研削加工等が適用できる。
【符号の説明】
【0103】
1 ・・・音響振動板
3 ・・・第1の樹脂層
5 ・・・第2の樹脂層
5a・・・構造体
21・・・積層構造とされた樹脂フィルム
23・・・基材フィルム
25・・・紫外線硬化型樹脂
31・・・樹脂塗布装置
33・・・ニップロール
35・・・ロール金型
37・・・紫外線照射装置
39・・・剥離ロール
51・・・圧空ボックス
55・・・振動板金型
59・・・カッター

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の樹脂層と、
第2の樹脂層と
からなり、
上記第2の樹脂層が、上記第1の樹脂層の一主面の全面にわたって形成されるとともに、その表面に少なくとも一次元方向に延長する複数の構造体を備えるものである
弾性率異方性を有する音響振動板。
【請求項2】
上記第2の樹脂層の厚さが、全体の厚さの20%以上60%以下であり、
上記複数の構造体のうち、隣接する構造体から形成される凹部の深さまたは構造体の凹部の深さが、上記第2の樹脂層の厚さの70%以上95%以下である請求項1に記載の音響振動板。
【請求項3】
上記複数の構造体の配置ピッチが、5μm以上100μm以下である請求項1または2に記載の音響振動板。
【請求項4】
上記第1の樹脂層を形成する樹脂の弾性率と、上記第2の樹脂層を形成する樹脂の弾性率とが異なる請求項1〜3のいずれか1項に記載の音響振動板。
【請求項5】
上記一次元方向に垂直な方向における上記構造体の断面形状が、台形状、多角形状、レンチキュラー形状またはこれらの反転形状である請求項1〜4のいずれか1項に記載の音響振動板。
【請求項6】
上記構造体の断面において、上記構造体の頂部と上記構造体の底辺の中点とを結ぶ線分が、上記構造体の底辺の垂直二等分線に対して傾いている請求項5に記載の音響振動板。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の音響振動板を備えるスピーカ。
【請求項8】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の音響振動板を備えるヘッドホン。
【請求項9】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の音響振動板を備えるイヤーホン。
【請求項10】
第1の樹脂フィルムに第2の樹脂を塗布する工程と、
金型の凹凸形状を上記第2の樹脂に転写するとともに、第1の樹脂層および第2の樹脂層からなる2層の樹脂フィルムとする工程と、
上記2層の樹脂フィルムに熱および圧力を加えることにより形状を付与する工程と
を備え、
上記第2の樹脂層の表面に転写された凹凸形状が、少なくとも一次元方向に延長する複数の構造体からなるものである
弾性率異方性を有する音響振動板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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