説明

顔領域と通常領域とで処理内容を変えて行う画像処理

【課題】 画像中に含まれる顔の出力結果の品質が高くなるような画像データの処理の技術を提供する。
【解決手段】 まず、第1の画像データの画像中において顔が存在する顔領域の範囲を決定する。そして、第1の画像データを第2の画像データに変換する。顔領域以外の通常領域の第1の画像データの変換を行う際には、通常領域用プロファイルを使用して変換を行う。一方、顔領域の第1の画像データの変換を行う際には、通常領域用プロファイルとは異なる顔領域用プロファイルを使用して変換を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、画像データの処理に関するものであり、さらに詳しくは、画像中に含まれる顔の画像の品質が高くなるような画像データの処理に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、印刷媒体上に画像を表現するために、レッド、グリーン、ブルーの各基準色の階調値で表現された画像データから、シアン、マゼンタ、イエロなどのインク色の階調値で表現された画像データを生成する、いわゆる色変換処理の技術が存在した。
【0003】
一方、特許文献1の技術は、画像中において人物の顔が存在する領域を特定するというものである。
【0004】
【特許文献1】特開2001−309225号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1の技術においては、ある画像データから表色系が異なる他の画像データを生成する際に、顔領域の画像の品質が高くなるように、データ処理を行うことについては考慮されていなかった。このような問題は、一般に、ある表色系で表現された画像データに基づいて、他の表色系で表現された画像データを生成する場合に、同様に存在する。
【0006】
本発明は、上記の課題を取り扱うためになされたものであり、ある画像データから表色系が異なる他の画像データを生成する際に、顔領域の画像の品質が高くなるように、データ処理を行う技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明は、第1の表色系の第1の画像データを、第1の表色系とは異なる第2の表色系の第2の画像データに変換する際に、以下のような処理を行う。まず、第1の画像データの画像中において顔が存在する顔領域の範囲を決定する。そして、第1の画像データを第2の画像データに変換する。
【0008】
顔領域以外の通常領域の第1の画像データの変換を行う際には、通常領域用プロファイルを使用して変換を行う。一方、顔領域の第1の画像データの変換を行う際には、通常領域用プロファイルとは異なる顔領域用プロファイルを使用して変換を行う。
【0009】
このような態様とすれば、顔領域の特性にあった顔領域用プロファイルを用意することで、顔領域については、顔領域に適した変換を行うことができる。よって、顔領域の画像の品質が高くなるように、データ処理を行うことができる。
【0010】
なお、顔領域の範囲を決定する際には、第1の画像データの画像中の特徴点を抽出し、特徴点に基づいて顔領域の範囲を決定することが好ましい。そのような態様とすれば、色に基づいて顔領域の範囲を特定する態様に比べて、肌の色や光源の色の違いによって顔領域を特定する際の精度が低下しにくい。
【0011】
なお、顔領域用プロファイルは、顔領域用プロファイルが有する複数の入力値のうちで、顔領域内で最も頻度が高い色の近傍における入力値の間隔が、通常領域用プロファイルよりも狭く設定されていることが好ましい。
【0012】
このような態様においては、顔領域の変換において高い頻度で使用される色の入力値については、その入力値に値が近い入力値が、顔領域用プロファイルに格納されていることになる。よって、変換の対象である入力値に近い顔領域用プロファイルの入力値を使用して、高精度な色変換を行うことができる。
【0013】
なお、通常領域用プロファイルおよび顔領域用プロファイルは、第1の表色系の各基準色の階調値の組み合わせである第1の階調値セットと、第2の表色系の各基準色の階調値の組み合わせである第2の階調値セットと、を対応づけて、それぞれ複数組ずつ格納している参照用のデータとすることができる。
【0014】
また、通常領域用プロファイルと顔領域用プロファイルとがそれぞれ有する入力値の数は、同じとすることができる。一方、顔領域用プロファイルが、通常領域用プロファイルよりも多くの入力値を有している態様とすることもできる。そのような態様とすれば、顔領域の変換において、格納している入力値が多い顔領域用プロファイルを参照できるため、通常領域に比べて高精度の画像処理を行うことができる。
【0015】
なお、顔領域用プロファイルは、顔領域用プロファイルが有する複数の入力値のうちで、顔領域内で最も頻度が高い色の近傍における入力値の間隔が、他の色の近傍における入力値の間隔よりも狭く設定されていることが好ましい。
【0016】
このような態様においては、顔領域用プロファイルは、顔領域において多く使用される色の入力値の近傍に、他の色の入力値の範囲よりも入力値密に格納している。このため、顔領域において多く使用される入力値については、特に高精度の変換を行うことができる。
【0017】
なお、顔領域用プロファイルは、顔領域の色に基づいて、通常領域用プロファイルから、適応的に生成されることが好ましい。このような態様とすれば、個々の顔領域の画像データに適した顔領域用プロファイルを生成することができる。その結果、顔領域の画像処理をより高精度に行うことができる。
【0018】
また、第1の画像データの変換において、入力された入力値に対応する出力値を決定する際には、通常領域用プロファイルまたは顔領域用プロファイルを参照して、第1の方法で出力値を決定することができる。そして、顔領域用プロファイルの生成生成においては、顔領域用プロファイルが有すべき入力値に対応する出力値を決定する際には、通常領域用プロファイルを参照して、第1の方法よりも精度が高い第2の方法で出力値を決定することが好ましい。
【0019】
このような態様においては、画像データの変換に先だって、あらかじめ高精度な方法で顔領域用プロファイルが生成されている。このため、画像データの変換において、より精度の低い方法で出力値を決定しても、生成される画像データの画像の品質は高い。
【0020】
なお、第1の画像データが、第1の表色系の複数の基準色の階調値で画像を表すデータであるときには、以下のような態様とすることが好ましい。すなわち、顔領域用プロファイルを生成する際には、まず、複数の基準色の複数の階調値について、顔領域の第1の画像データ中の頻度を計算する。そして、複数の基準色の頻度の合計値が高い階調値ほど近傍において顔領域用プロファイルが格納している入力値の間隔が狭くなるように、顔領域用プロファイルを生成する。このような態様とすれば、顔領域内で使用頻度が高い色の階調値について精度の高い画像処理が可能な顔領域用プロファイルを生成することができる。
【0021】
また、画像中において複数の顔領域を決定することも好ましい。そのような態様においては、複数の顔領域にそれぞれ対応する複数の顔領域用プロファイルを生成することができる。そして、複数の顔領域をそれぞれ表す複数の第1のデータの変換を行う際には、複数の顔領域用プロファイルをそれぞれ使用することができる。このような態様とすれば、各顔領域に適した顔領域用プロファイルに基づいて画像処理を行うことができる。
【0022】
また、第1の画像データが、第1の表色系の複数の基準色の階調値で画像を表すデータであって、画像中において複数の顔領域が決定される態様においては、以下のような処理を行うこともできる。すなわち、顔領域用プロファイルを生成する際には、複数の基準色の複数の階調値について、複数の顔領域をそれぞれ表す複数の第1の画像データ中の頻度を計算する。そして、複数の顔領域についての複数の基準色の頻度の合計値が高い階調値ほど近傍における入力値の間隔が狭くなるように、顔領域用プロファイルを生成する。
【0023】
このような態様においては、生成される顔領域用プロファイルが一つであるため、参照されるデータの量を少なくすることができる。
【0024】
なお、本発明は、以下に示すような種々の態様で実現することが可能である。
(1)画像処理装置。印刷装置、印刷制御装置、印刷装置。印刷データ生成装置。
(2)画像処理方法。印刷方法、印刷制御方法。印刷データ生成方法。
(3)上記の装置や方法を実現するためのコンピュータプログラム。
(4)上記の装置や方法を実現するためのコンピュータプログラムを記録した記録媒体。
(5)上記の装置や方法を実現するためのコンピュータプログラムを含み搬送波内に具現化されたデータ信号。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
次に、本発明の実施の形態を実施例に基づいて以下の順序で説明する。
A.第1実施例:
A1.装置構成:
A2.各モジュールにおける処理:
B.第2実施例:
C.変形例:
【0026】
A.第1実施例:
A1.装置構成:
図1は第1実施例の印刷システムのソフトウェアの構成を示すブロック図である。コンピュータ90では、所定のオペレーティングシステムの下で、アプリケーションプログラム95が動作している。オペレーティングシステムには、ビデオドライバ91やプリンタドライバ96が組み込まれており、アプリケーションプログラム95からはこれらのドライバを介してプリンタ22に転送するための初期画像データPIDが出力されることになる。画像のレタッチなどを行うアプリケーションプログラム95は、CD−R140から画像を読み込み、これに対して所定の処理を行いつつビデオドライバ91を介してCRTディスプレイ21に画像を表示している。CD−R140から供給されるデータORGは、レッド(R),グリーン(G),ブルー(B)の3色の色成分からなる原カラー画像データORGである。
【0027】
マウス130やキーボード120からユーザの指示が入力され、アプリケーションプログラム95が印刷命令を発すると、コンピュータ90のプリンタドライバ96が初期画像データPIDをアプリケーションプログラム95から受け取り、これをプリンタ22が処理可能な印刷画像データFNL(ここではシアン、ライトシアン、マゼンダ、ライトマゼンタ、イエロー、ブラックの各色についての多値化された信号)に変換する。
【0028】
図1に示した例では、プリンタドライバ96の内部には、顔認識モジュール101と、解像度変換モジュール97と、色変換モジュール98と、ハーフトーンモジュール99と、並べ替えモジュール100と、が備えられている。プリンタドライバ96の内部には、さらに、通常色変換テーブル104sと、LUT生成モジュール103と、通常ドット分配テーブル105sと、分配テーブル生成モジュール106と、が備えられている。
【0029】
顔認識モジュール101は、アプリケーションプログラム95から受け取った初期画像データPIDの画像の中で人間の顔が存在する部分を特定する。そして、その情報を色変換モジュール98と、ハーフトーンモジュール99と、に送る。
【0030】
解像度変換モジュール97は、アプリケーションプログラム95が扱っている初期画像データPIDの解像度を、印刷の際の解像度に変換する。こうして解像度変換された画像データMID1はまだRGBの3色からなる画像情報である。
【0031】
LUT生成モジュール103は、初期画像データPID中に顔領域が存在する場合に、通常色変換テーブル104sに基づいて、顔用色変換テーブル104fを生成する。図1において、顔用色変換テーブル104fを破線で示す。
【0032】
色変換モジュール98は、RGBの階調値で各画素の色が現されている画像データMID1を、プリンタ22が使用するシアン(C)、ライトシアン(LC)、マゼンダ(M)、ライトマゼンタ(LM)、イエロー(Y)、ブラック(K)の階調値で各画素の色が表された画像データMID2に変換する。色変換モジュール98は、画像データMID1の画像中の顔領域を表すデータを変換する際には、顔用色変換テーブル104fを参照して、画像データMID2を生成する。また、画像データMID1の画像中の他の領域を表すデータを変換する際には、通常色変換テーブル104sを参照して画像データMID2を生成する。こうして色変換された画像データMID2は例えばC、LC、M、LM、Y、Kの各色について256階調等の幅で階調値を有している。この色変換モジュール98と解像度変換モジュール97とが、特許請求の範囲にいう「色変換部」に相当する。
【0033】
分配テーブル生成モジュール106は、初期画像データPID中に顔領域が存在する場合に、通常ドット分配テーブル105sに基づいて、顔用ドット分配テーブル105fを生成する。図1において、顔用ドット分配テーブル105fを破線で示す。
【0034】
ハーフトーンモジュール99は、画像データMID2中の各画素のC、LC、M、LM、Y、Kの各色の階調値を、各色の大ドット、中ドット、小ドットの記録率に変換する。その際、ハーフトーンモジュール99は、画像データMID2の画像中の顔領域を表すデータについては顔用ドット分配テーブル105fを参照して記録率を決定する。そして、画像データMID2の画像中の他の領域を表すデータについては通常ドット分配テーブル105sを参照する。
【0035】
その後、ハーフトーンモジュール99は、C、LC、M、LM、Y、Kの各色の大中小のドットの記録率で表されたデータに対して、ディザマトリクスDMまたは誤差拡散マトリクスEDMを使用して、各画素における大中小ドットの記録または不記録の決定を行う(図1参照)。その結果、各画素の各色の濃度が各色の階調値で表された画像データMID2は、各色の濃度が各画素における大中小のドットの有無で表される画像データMID3(「印刷データ」または「ドットデータ」とも呼ぶ)に変換される。なお、ディザマトリクスDMおよび誤差拡散マトリクスEDMは、コンピュータ90のメモリ内に格納されている。
【0036】
こうして生成された画像データMID3は、並べ替えモジュール100によりプリンタ22に転送すべきデータ順に並べ替えられて、最終的な印刷画像データFNLとして出力される。プリンタ22は、印刷画像データFNLを受け取って印刷を実行する。
【0037】
プリンタ22は、紙送りモータによって用紙Pを搬送する機構と、キャリッジモータによってキャリッジ31を用紙Pの搬送方向SSと垂直な方向MSに往復動させる機構と、キャリッジ31に搭載されインクの吐出およびドットの形成を行う印刷ヘッド28と、各種の設定データを格納しているP−ROM42と、これらの紙送りモータ,キャリッジモータ,印刷ヘッド28、P−ROM42および操作パネル32を制御するCPU41とから構成されている。なお、本明細書においては、「印刷装置」とは、狭義にはプリンタ22のみをさすが、広義にはコンピュータ90とプリンタ22とを含む印刷システム全体を表す。
【0038】
印刷ヘッド28上には、複数のインクを吐出するための複数のノズル列が設けられている(図示省略)。印刷ヘッド28は、これらの各ノズルから、互いに量が異なる3種類のインク滴を吐出することができる。そして、印刷ヘッド28は、3種類のインク滴をそれぞれ印刷用紙上に着弾させることによって、各インク色について印刷用紙上に大中小の3種類の大きさのドットを形成することができる。
【0039】
A2.各モジュールにおける処理:
(1)顔認識処理:
図2は、初期画像データPID中の顔領域Afを示す図である。顔認識モジュール101は、アプリケーションプログラム95から受け取った初期画像データPIDの画像の中で人間の顔が存在する部分を特定する。
【0040】
より具体的には、顔認識モジュール101は、初期画像データPIDの画像から特徴点pcを抽出する。そして、予め用意したテンプレートを特徴点抽出画像に対して平行移動、拡大・縮小、および回転させて、特徴点抽出画像の各部分とテンプレートとの類似度を計算する。類似度が所定のしきい値を越える部分があった場合には、その部分を含む所定の領域を、「顔領域」と判定する。一方、顔領域以外の領域は、「通常領域」と判定される。
【0041】
画像中の各領域が顔領域Afであるか通常領域Asであるかの情報は、色変換モジュール98およびハーフトーンモジュール99に伝えられる(図1参照)。また、画像中に顔領域が存在するか否かの情報は、LUT生成モジュール103と、分配テーブル生成モジュール106に伝えられる。
【0042】
初期画像データPIDから生成される画像データMID1〜3においても、各画像データが表す画像において顔領域が占める位置は、図2に示した初期画像データPIDの場合と同じである。よって、以下では、初期画像データPIDと、画像データMID1〜3と、を区別することなく、顔領域Af、通常領域Asの用語を用いる。
【0043】
上記のように顔領域を特定することによって、顔認識モジュール101は、人種や光源などによって変化しうる画像の色に左右されずに、顔領域を特定することができる。また、そのために、上記のような手法で特徴点に基づいて特定され顔領域は、個々の顔領域ごとに色の傾向が大きく異なっている可能性がある。よって、以下で説明するように、顔領域を表す画像データに基づいて適応的に顔用色変換テーブル104fを生成し、色変換処理において使用することは、特徴点に基づいて顔領域が特定される場合に特に有効である。なお、「適応的に」とは、個々の画像データに応じて、という意味である。
【0044】
(2)通常色変換テーブル104sと顔用色変換テーブル104f:
図3は、通常色変換テーブル104sを表す図である。通常色変換テーブル104sは、レッド、グリーン、ブルーの階調値の組み合わせ(Vr,Vb,Vg)と、シアン、ライトシアン、マゼンダ、ライトマゼンタ、イエロー、ブラックの階調値の組み合わせ(Vc,Vlc,Vm,Vlm,Vy,Vk)と、を対応づけて格納している。破線は、通常色変換テーブル104sに格納されているレッド、グリーン、ブルーの入力階調値(以下、「サンプル階調値」という)を表している。
【0045】
サンプル階調値は、レッド、グリーン、ブルーそれぞれについて31個存在する。図3では、サンプル階調値を表す破線は模式的に均等の幅で記載されているが、実際には、通常色変換テーブル104sが格納しているレッド、グリーン、ブルーの階調値の幅は均等ではない。通常色変換テーブル104sのサンプル階調値は、一般の多くの画像の印刷結果の品質が高くなるように設定されている。
【0046】
図4は、顔用色変換テーブル104fを表す図である。顔用色変換テーブル104fも、通常色変換テーブル104sと同様に、レッド、グリーン、ブルーの階調値の組み合わせ(Vr,Vb,Vg)と、シアン、ライトシアン、マゼンダ、ライトマゼンタ、イエロー、ブラックの階調値の組み合わせ(Vc,Vlc,Vm,Vlm,Vy,Vk)と、を対応づけて、格納している。図4において、破線は、顔用色変換テーブル104fに格納されているサンプル階調値を表している。顔用色変換テーブル104fにおいても、サンプル階調値は、レッド、グリーン、ブルーそれぞれについて31個存在する。
【0047】
顔用色変換テーブル104fは、次のような性質を備えたルックアップテーブルである。すなわち、顔用色変換テーブル104fは、格納している複数のサンプル階調値のうちで、顔領域Af内で最も頻度が高い色の近傍におけるサンプル階調値の間隔が、他の色の近傍におけるサンプル階調値の間隔よりも狭く設定されている(図4中の範囲R1参照)。
【0048】
また、顔用色変換テーブル104fは、格納している複数のサンプル階調値のうちで、顔領域Af内で最も頻度が高い色の近傍(図3中の範囲R1参照)におけるサンプル階調値の間隔が、通常色変換テーブル104s(図4中の範囲R1参照)よりも狭く設定されている。
【0049】
LUT生成モジュール103(図1参照)は、初期画像データPID中に顔領域が存在する場合に、通常色変換テーブル104sに基づいて顔用色変換テーブル104fを生成する。このため、初期画像データPID中に顔領域が存在しない場合には、コンピュータ90のRAMの領域の一部を顔用色変換テーブル104fが占有することがない。また、あらかじめ顔用色変換テーブル104fを保持している態様とは異なり、顔領域についての処理を行わない状態においてコンピュータ90のハードディスクを顔用色変換テーブル104fで占有することもない。すなわち、上記のような態様とすれば、データ処理に必要となる記憶媒体の量を少なくすることができる。
【0050】
図5は、顔用色変換テーブル104fを生成する手順を示すフローチャートである。ステップS110では、LUT生成モジュール103は、顔領域Afのデータ中の各画素におけるレッド、グリーン、ブルーの頻度N(vr)、N(vg)、N(vb)を計算する。
【0051】
図6は、顔領域Afのデータ中の各画素におけるレッドの階調値Vr(0〜255)の頻度N(vr)を表すヒストグラムである。図7は、顔領域Afのデータ中の各画素におけるグリーンの階調値Vg(0〜255)の頻度N(vg)を表すヒストグラムである。図8は、顔領域Afのデータ中の各画素におけるレッドの階調値Vb(0〜255)の頻度N(vb)を表すヒストグラムである。なお、図6〜図8の各図の各ヒストグラムの形状は、実際のデータの値を反映するものではない。
【0052】
図9は、顔領域Afのデータ中のレッド、グリーン、ブルーの合計の頻度SN(v)を表すヒストグラムである。LUT生成モジュール103は、その後、ステップS120で、同じ階調値ごとにレッドの頻度N(vr)と、グリーンの頻度N(vg)と、ブルーの頻度N(vb)と、を合計して、合計の頻度SN(v)を求める。そして、最も合計の頻度SN(v)が高い最多階調値Vpを求める。最多階調値Vpの頻度をSNmaxとする。なお、合計の頻度SN(v)に付された(v)は、SNがインク色の階調値に応じて定められる数であることを示す。
【0053】
なお、図6〜図9において、Vrpは、レッドの階調値のうち顔領域Afにおいて最も頻度が高い階調値である。Vgpは、グリーンの階調値のうち顔領域Afにおいて最も頻度が高い階調値である。Vbpは、ブルーの階調値のうち顔領域Afにおいて最も頻度が高い階調値である。この例では、Vgpは、最多階調値Vpと一致している(図9参照)。
【0054】
ステップS130では、LUT生成モジュール103は、顔用色変換テーブル104fが保持するサンプル階調値を定める。具体的には、まず、下記の式(1)にしたがって、各階調値の頻度SN(v)と(SNmax+1)との差D(v)を求める。
【0055】
D(v)=(SNmax+1)−SN(v) ・・・ (1)
【0056】
図10は、各階調値の頻度SN(v)と(SNmax+1)との差D(v)を表すヒストグラムである。式(1)より、最多階調値VpのD(v)は、すべての階調値のD(v)の中で最小となり、1である。
【0057】
上記のようにして、0〜255までの各階調値に対するD(v)が得られると、LUT生成モジュール103は、D(v)を、vの小さい順に端から8個ずつグループ化する。そのようにしてD(v)のグループを32個作り、各グループのD(v)の合計値であるSD(i)を求める(i=1〜32)。なお、グループの数は、決定しようとするサンプル階調値の数よりも1多い数である。
【0058】
図11は、31個のサンプル階調値Vs(1)〜Vs(31)とSD(i)の関係を示す図である。なお、引き出し線を付されて示されるSD(1),SD(i),SD(32)は、SD(i)とVs(i)の対応関係を示すものであり、引き出し線の先の間隔がそれぞれSD(1),SD(i),SD(32)であることを示すものではない。LUT生成モジュール103は、以下の式(2)に基づいて、SD(i)からサンプル階調値Vs(i)を求める。ここで、Vmaxは階調値の最大値であり、255である。
【0059】
【数1】

【0060】
式(2)に基づいてサンプル階調値Vs(i)を定めるにあたって、1以下の少数は適宜調整される。式(2)に基づいてサンプル階調値Vs(i)を定めると、サンプル階調値同士の間隔[Vs(i)−Vs(i−1)]は、Vmax×SD(i)/ΣSDと一致することとなる。ここで、ΣSDは、SD(k)のk=1〜32の合計値である。
【0061】
このようにサンプル階調値Vs(i)を定めることとすれば、図11に示されるように、最多階調値Vpの近傍の範囲R1に、同じ幅を有する階調値0の近傍の範囲R2、および階調値255の近傍の範囲R3よりも多数のサンプル階調値が存在するように、サンプル階調値Vs(i)を定めることができる。
【0062】
なお、図11には、レッド、グリーン、ブルーの階調値のうちそれぞれ最も頻度が高い階調値Vrp,Vgp,Vbpを示している。図11からも分かるように、Vrp,Vgp,Vbpの近傍の範囲R1には、同じ幅を有する階調値0の近傍の範囲R2、階調値255の近傍の範囲R3よりも多数のサンプル階調値が存在する。
【0063】
また、上記の範囲R1を図3および図4に示している。上記のように、サンプル階調値の総数を変えずに、最多階調値Vpの近傍に多数のサンプル階調値を決定することで、最多階調値Vpの近傍の所定の範囲R1内のサンプル階調値の数が通常色変換テーブル104sよりも多い顔用色変換テーブル104fを生成することができる。
【0064】
このようにしてサンプル階調値が決定された顔用色変換テーブル104fは、実質的に次のような性質を備える。すなわち、顔用色変換テーブル104fは、顔領域Af内で最も頻度が高い色の近傍におけるサンプル階調値の間隔が、他の色の近傍におけるサンプル階調値の間隔よりも狭い。そして、顔用色変換テーブル104fは、顔領域Af内で最も頻度が高い色の近傍におけるサンプル階調値の間隔が、通常色変換テーブル104sよりも狭い。
【0065】
その後、LUT生成モジュール103は、図5のステップS140で、通常色変換テーブル104sが格納している出力階調値に基づいて、顔用色変換テーブル104fのサンプル階調値の組み合わせに対する出力階調値を計算する。
【0066】
図12は、通常色変換テーブル104sが格納している出力階調値に基づいて、顔用色変換テーブル104fのサンプル階調値の組み合わせに対する出力階調値を計算する方法を示す図である。顔用色変換テーブル104fのサンプル階調値の組み合わせに対する出力階調値は、四面体補間により計算される。
【0067】
レッド、グリーン、ブルーの入力階調値によって構成される3次元空間における、出力階調値を計算しようとするサンプル階調値の組み合わせに対応する点を、対象グリッドGtとする。対象グリッドGtの出力階調値を計算する際には、まず、通常色変換テーブル104sが有するサンプル階調値の組み合わせのグリッドの中で、対象グリッドGtに最も近いグリッドを求める。図12では、グリッドG5である。そして、グリッドG5とともに対象グリッドGtを内部に含む最も小さい四面体を構成する他の3個のグリッドを特定する。ここでは、グリッドG1,G6,G8である。
【0068】
対象グリッドGtの出力階調値は、グリッドG1,G5,G6,G8がそれぞれ有する出力階調値の重み付け和によって得られる。あるグリッドの出力階調値に付される重みは、「対象グリッドGtを挟んでそのグリッドの反対側にある四面体の堆積」を「グリッドGt,G1,G6,G8が構成する正四面体の堆積」で割った値である。たとえば、グリッドG5の出力階調値に付される重みは、(グリッドGt,G1,G6,G8が構成する正四面体の堆積)/(グリッドGt,G1,G6,G8が構成する正四面体の堆積)である。
【0069】
以上のようにして、サンプル階調値の組み合わせと、それに対応する出力階調値の組み合わせと、が計算され、顔用色変換テーブル104fが生成される。
【0070】
LUT生成モジュール103(図1参照)は、初期画像データPIDの顔領域のデータに基づいて、顔用色変換テーブル104fを生成する。このため、顔用色変換テーブル104fは、処理の対象とするデータの特性を反映して生成される(図6〜図11参照)。よって、本実施例の印刷システムによれば、一般的に顔の画像処理に適するように生成された顔用色変換テーブルが予め用意されている態様に比べて、処理対象である個々の顔領域の印刷結果の品質が高くなるように、画像処理を行うことができる。
【0071】
(3)色変換処理:
色変換モジュール98は、RGBの階調値で各画素の色が現されている画像データMID1を、シアン(C)、ライトシアン(LC)、マゼンダ(M)、ライトマゼンタ(LM)、イエロー(Y)、ブラック(K)の階調値で各画素の色が表された画像データMID2に変換する。
【0072】
前述のとおり、通常色変換テーブル104sおよび顔用色変換テーブル104fは、レッド、グリーン、ブルーの0〜255までの階調値のすべての組み合わせについて出力階調値を有しているわけではない。すなわち、通常色変換テーブル104sおよび顔用色変換テーブル104fは、レッド、グリーン、ブルーそれぞれ31個の階調値の組み合わせについて出力階調値を有している。このため、色変換モジュール98は、参照している色変換テーブルが出力階調値を有していない入力階調値の組み合わせについて、色変換を行う際には、以下のような処理を行う。なお、以下の処理は、通常色変換テーブル104sを参照する場合も、顔用色変換テーブル104fを参照する場合も同様である。よって、以下では、通常色変換テーブル104sと顔用色変換テーブル104fとをまとめて「色変換テーブル」と記載する。
【0073】
図13は、色変換モジュール98が出力階調値を決定する際の方法を示す説明図である。レッド、グリーン、ブルーのある入力階調値の組み合わせ(Vrt,Vgt,Vbt)から出力階調値を得る場合を考える。レッド、グリーン、ブルーの入力階調値によって構成される3次元空間における、サンプル階調値の組み合わせ(Vrt,Vgt,Vbt)に対応する点を、対象グリッドGtとする。そして、入力階調値Vrt,Vgt,Vbtは、色変換テーブルに格納されていない入力階調値であるものとする。
【0074】
色変換テーブルが格納しているレッドの入力階調値であって、Vrtよりも小さくVrtに最も近い入力階調値をVr6とする。そして、同じく色変換テーブルが格納しているレッドの入力階調値であって、Vrtよりも大きくVrtに最も近い入力階調値をVr7とする。図13の例では、Vr6は、グリッドG6のレッドのサンプル階調値である。Vr7は、グリッドG7のレッドのサンプル階調値である。
【0075】
色変換モジュール98は、入力階調値Vrtが入力されると、これをVr6またはVr7に置き換える。その際、いずれに置き換えられるかについては、乱数を使用して確率的に決定される。また、決定に際しては、VrtとVr6の差の大きさ、およびVrtとVr7の差の大きさが考慮される。グリーンの入力階調値Vgt、ブルーの入力階調値Vbtについても同様の処理が行われる。
【0076】
その結果、色変換テーブルに格納されていない入力階調値の組み合わせGt(Vrt,Vgt,Vbt)は、色変換テーブルにおいてGt(Vrt,Vgt,Vbt)を囲む最小の直方体を構成する入力階調値の組み合わせG1〜G8のいずれかに、確率的に置き換えられる。その後、色変換モジュール98は、置き換えられた入力階調値の組み合わせに対応する出力階調値が、Gt(Vrt,Vgt,Vbt)の出力階調値として出力される。
【0077】
このような方法においては、画像データMID1の個々の画素の色は、画像データMID2中の対応する画素において正確には再現されない。しかし、一定の色を有する所定の領域において確率的にグリッドG1〜G8に対応する出力階調値が出力されることで、そのような領域全体としては、画像データMID1において対応する領域の色が再現されることとなる。ただし、四面体補間などの補間演算を行う場合に比べて、個々の画素の色の再現精度は低い。一方で、上記のような方法は出力階調値を求める際の負荷が低い。このため、色変換テーブルを参照して色変換処理を行う際に要する時間を短くすることができる。
【0078】
色変換モジュール98は、以上のような処理で、限られたサンプル階調値の組み合わせについてのみ出力階調値を有している色変換テーブルに基づいて、0〜255のすべての階調値の組み合わせについて色変換を行う。
【0079】
図14は、色変換処理の手順を示すフローチャートである。色変換モジュール98は、まず、顔認識モジュール101から受け取った情報に基づいて、処理の対象である画像部分が顔領域であるか否かの判定を行う(ステップS310)。この判定を行う色変換モジュール98の機能部を、顔領域決定モジュール98aとして図1に示す。
【0080】
処理の対象である画像部分が顔領域である場合には、色変換モジュール98は、顔用色変換テーブル104fを参照して色変換処理を行う(ステップS320)。そして、処理の対象である画像部分が顔領域ではない場合は、色変換モジュール98は、通常色変換テーブル104sを参照して、色変換処理を行う(ステップS330)。
【0081】
顔用色変換テーブル104fは、顔領域において使用される頻度が高い階調値の近傍においてサンプル階調値の間隔が狭いテーブルである(図4参照)。このため、顔領域において多く使用される階調値については、入力階調値を確率的に他の階調値に置き換える際の(図13参照)、置き換えの前後の入力階調値の差が小さくなる。
【0082】
また、通常色変換テーブル104sに基づいて顔用色変換テーブル104fが生成される際には、四面体補間が行われる(図12参照)。すなわち、本実施例においては、確率的な手法で変換テーブルを使用するのに先立って、変換テーブルを使用する際よりも精度が高い方法で、顔用色変換テーブル104fに格納される各グリッドの出力階調値が計算される。
【0083】
このため、(1)置き換えによって生じる入力階調値の差が小さいこと、(2)置き換え後の入力階調値に対応する出力階調値は、通常ドット分配テーブル105sの出力階調値に基づいて、精度が高い方法(補間演算)で計算されていること、の二点より、本実施例において色変換処理で得られる出力階調値が再現する色は、置き換えられる前の入力階調値が表す色に近い色となる。よって、本実施例によれば、色変換後の画像データMID2の顔領域において再現される画像の質が高くなる。
【0084】
なお、出力階調値を決定する方法の「精度が高い」とは、以下のような意味である。出力階調値を決定すべき入力階調値が与えられたときに、その入力階調値に対して決定される出力階調値の変動範囲を考える。図13の例では、入力階調値Vrtの変動幅は、Vr6からVr7までである。補間演算が行われる場合は、与えられた入力階調値に対して常に同じ出力階調値が決定されるため、変動範囲は一つの数値である。第1の方法における変動範囲が、第2の方法における変動範囲を内部に含むとき、第2の方法は第1の方法よりも精度が高い。
【0085】
一方、色変換モジュール98は、画像データMID1の画像中の顔領域以外の領域については通常色変換テーブル104sを参照する(ステップS330参照)。通常色変換テーブル104sは、顔用色変換テーブル104fのように顔領域において多く使用される階調値の近傍にサンプル階調値が集中し、他の領域においてサンプル階調値の密度が低くなっているわけではない。そして、通常色変換テーブル104sのサンプル階調値は、一般の多くの画像の印刷結果の品質が高くなるように設定されている。このため、図14の様な処理を行うことで、すべての領域の色変換処理において顔領域用に調整された顔用色変換テーブル104fを参照する態様に比べて、空や海など顔領域以外の印刷結果の品質が高くすることができる。
【0086】
以上で説明した第1実施例の印刷システムは、顔領域と、顔領域以外の通常領域とで、画像データに対して異なる処理を行う。このような処理を行うことで、顔が存在する顔領域については、顔領域の特質に焦点を合わせた処理を行うことができる。よって、印刷物中で人の注意が注がれる顔について、高品質な印刷結果が得られる。一方、印刷物中の他の通常領域については、顔領域とは異なる処理が行われる。このため、通常領域について顔領域の特質に合わせた処理が行われることによって印刷結果の品質が低下することはない。
【0087】
B.第2実施例:
図15は、第2実施例の顔用色変換テーブル104f2を表す図である。第2実施例は、顔用色変換テーブルの構成および生成方法が第1実施例とは異なる。他の点は、第1実施例と同じである。
【0088】
第2実施例においては、レッドとグリーンとブルーのサンプル階調値は、それぞれ独立に選択される。レッドのサンプル階調値は、初期画像データPID中の顔領域において頻度が最も大きいレッドの階調値Vrp(図6参照)近傍Rrにおいて、通常色変換テーブル104sよりもサンプル階調値の間隔が狭くなるように決定される。また、グリーンのサンプル階調値は、顔領域において頻度が最も大きいグリーンの階調値Vgp(図7参照)近傍Rgにおいて、通常色変換テーブル104sよりもサンプル階調値の間隔が狭くなるように決定される。さらに、ブルーのサンプル階調値は、顔領域において頻度が最も大きいブルーの階調値Vbp(図8参照)近傍Rbにおいて、通常色変換テーブル104sよりもサンプル階調値の間隔が狭くなるように決定される。
【0089】
レッド、グリーン、ブルーについての具体的なサンプル階調値の決定方法は、第1実施例においてレッド、グリーン、ブルーの階調値の頻度の合計に基づいてサンプル階調値を決定した際と同じである(図9〜図11参照)。
【0090】
このような顔用色変換テーブル104f2を使用して色変換処理を行えば、初期画像データPID中の顔領域において、レッド、グリーン、ブルーの階調値の分布(図6〜図8参照)が互いに大きく異なる場合にも、変換後の画像の品質が高い色変換処理を行うことができる。
【0091】
C.変形例:
なお、この発明は上記の実施例や実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
【0092】
C1.変形例1:
上記実施例では、初期画像データPIDデータ中に顔領域Afが一つだけある例について説明した(図2参照)。しかし、初期画像データPIDデータ中に顔領域Afが複数ある場合についても同様の処理を行うことができる。すなわち、複数の顔領域のデータに対して、1または2以上の顔用色変換テーブル104fを参照して画像処理を行うことができる。
【0093】
なお、顔領域が複数存在する場合は、顔用色変換テーブルを各顔領域のデータに基づいて複数生成し、対応する顔領域の色変換処理においてそれぞれ参照してもよい。そのような態様とすれば、それぞれの顔領域の特性を反映した顔用色変換テーブルを生成して、それぞれの顔領域の特性に合った画像処理を行うことができる。
【0094】
また、各顔領域のデータに基づいて一つの顔用色変換テーブルを生成し、複数の顔領域のデータの色変換に際して、同一の顔用色変換テーブルを参照してもよい。そのような態様においては、複数の顔領域における色の階調値の合計の頻度が高いほど、その階調値の近傍に存在するサンプル階調値が多くなるように、顔用変換テーブルを生成することが好ましい。このような態様とすれば、コンピュータのハードディスクやRAM内において顔用色変換テーブルが占有する領域を少なくすることができる。
【0095】
C2.変形例2:
上記実施例では、顔認識モジュール101は、初期画像データPIDを解析して顔領域Afを決定していた。しかし、顔領域の決定は、初期画像データPIDを解析して行う態様の他、解像度変換後の画像データMID1を解析して行う態様とすることができる。すなわち、顔領域の決定は、色変換前の表色系で表された画像データを解析して行うものであればよい。
【0096】
C3.変形例3:
上記実施例では、通常色変換テーブル104sと顔用色変換テーブル104fとは、ともにレッド、グリーン、ブルーの31個のサンプル階調値の組み合わせ、すなわち、31×31×31個のグリッドを格納していた。しかし、通常色変換テーブル104sと顔用色変換テーブル104fとは、RGBそれぞれについて17個のサンプル階調値の組み合わせなど、より少数のグリッドを格納していてもよいし、また、より多数のグリッドを格納していてもよい。さらに、通常色変換テーブル104sと顔用色変換テーブル104fとが格納しているサンプル階調値の組み合わせの数は異なっていてもよい。
【0097】
ただし、顔用色変換テーブル104fは、顔領域において多く使用される階調値の近傍の範囲に、通常色変換テーブル104sよりも多数のサンプル階調値を有していることが好ましい。そして、顔領域において多く使用される階調値の近傍の範囲に、階調値の他の範囲よりも多数のサンプル階調値を有していることがより好ましい。
【0098】
C4.変形例4:
上記実施例では、色変換処理は、通常色変換テーブル104sおよび顔用色変換テーブル104fを参照しつつ行われた。しかし、色変換処理において参照されるプロファイルは、テーブル以外の形式を有していてもよい。たとえば、色変換処理において参照されるプロファイルは、入力階調値から出力階調値を計算しうる関数であってもよい。すなわち、色変換の際に参照されるプロファイルは、入力階調値から出力階調値を特定することができる情報を表す様々な形式のものとすることができる。
【0099】
C5.変形例5:
上記実施例では、色変換処理については、RGB表色系からC、LC、M、LM、Y、Kの各色による表色系の色変換について説明した。しかし、色変換はこれに限らず、たとえば、RGB表色系からシアン、マゼンタ、イエロ、ブラック、レッド、バイオレット等の他の表色系の階調値への色変換であってもよい。すなわち、所定の第1の表色系による画像データを、第1の表色系とは異なる第2の表色系による画像データに変換するものであればよい。
【0100】
C6.変形例6:
上記実施例においては、顔用色変換テーブル104fのサンプル階調値は、初期画像データPIDの顔領域Af全体のデータ中の階調値の頻度に基づいて決定されていた。しかし、顔用色変換テーブルは、初期画像データPIDの顔領域Afの一部を表すデータに基づいて生成されてもよい。すなわち、顔領域用プロファイル(顔用色変換テーブル104f)は、顔領域の少なくとも一部を表すデータに基づいて、通常領域用プロファイル(通常色変換テーブル104s)から生成することができる。
【0101】
C7.変形例7:
上記実施例においては、顔用色変換テーブル104fは、通常色変換テーブル104sに基づいて生成されていた。しかし、顔用色変換テーブル104fは、あらかじめ格納されていてもよい。
【0102】
すなわち、本発明の実施態様として行われる画像処理は、以下のようなものであればよい。第1の画像データに含まれ顔領域以外の通常領域の少なくとも一部を表す通常領域データを、第2の画像データの一部に変換する際には、通常領域用プロファイルを参照しつつ変換する。そして、第1の画像データに含まれ顔領域の少なくとも一部を表すデータを、第2の画像データの他の一部に変換する際には、通常領域用プロファイルとは異なる顔領域用プロファイルを参照しつつ変換する。
【0103】
C8.変形例8:
上記実施例において、ハードウェアによって実現されていた構成の一部をソフトウェアに置き換えるようにしてもよく、逆に、ソフトウェアによって実現されていた構成の一部をハードウェアに置き換えるようにしてもよい。例えば、プリンタドライバ96(図1参照)の機能の一部をプリンタのCPU41が実行するようにすることもできる。
【0104】
このような機能を実現するコンピュータプログラムは、フロッピディスクやCD−ROM等の、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録された形態で提供される。ホストコンピュータは、その記録媒体からコンピュータプログラムを読み取って内部記憶装置または外部記憶装置に転送する。あるいは、通信経路を介してプログラム供給装置からホストコンピュータにコンピュータプログラムを供給するようにしてもよい。コンピュータプログラムの機能を実現する時には、内部記憶装置に格納されたコンピュータプログラムがホストコンピュータのマイクロプロセッサによって実行される。また、記録媒体に記録されたコンピュータプログラムをホストコンピュータが直接実行するようにしてもよい。
【0105】
この明細書において、コンピュータとは、ハードウェア装置とオペレーションシステムとを含む概念であり、オペレーションシステムの制御の下で動作するハードウェア装置を意味している。コンピュータプログラムは、このようなコンピュータに、上述の各部の機能を実現させる。なお、上述の機能の一部は、アプリケーションプログラムでなく、オペレーションシステムによって実現されていても良い。
【0106】
なお、この発明において、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスクやCD−ROMのような携帯型の記録媒体に限らず、各種のRAMやROM等のコンピュータ内の内部記憶装置や、ハードディスク等のコンピュータに固定されている外部記憶装置も含んでいる。
【図面の簡単な説明】
【0107】
【図1】第1実施例の印刷システムのソフトウェアの構成を示すブロック図。
【図2】初期画像データPID中の顔領域Afを示す図。
【図3】通常色変換テーブル104sを表す図。
【図4】顔用色変換テーブル104fを表す図。
【図5】顔用色変換テーブル104fを生成する手順を示すフローチャート。
【図6】顔領域Afのデータ中の各画素におけるレッドの階調値Vr(0〜255)の頻度N(vr)を表すヒストグラム。
【図7】顔領域Afのデータ中の各画素におけるグリーンの階調値Vg(0〜255)の頻度N(vg)を表すヒストグラム。
【図8】顔領域Afのデータ中の各画素におけるレッドの階調値Vb(0〜255)の頻度N(vb)を表すヒストグラム。
【図9】顔領域Afのデータ中のレッド、グリーン、ブルーの合計の頻度SN(v)を表すヒストグラム。
【図10】各階調値の頻度SN(v)と(SNmax+1)との差D(v)を表すヒストグラム。
【図11】31個のサンプル階調値Vs(1)〜Vs(31)とSD(i)の関係を示す図。
【図12】通常色変換テーブル104sが格納している出力階調値に基づいて、顔用色変換テーブル104fのサンプル階調値の組み合わせに対する出力階調値を計算する方法を示す図。
【図13】色変換モジュール98が出力階調値を決定する際の方法を示す説明図。
【図14】色変換処理の手順を示すフローチャート。
【図15】第2実施例の顔用色変換テーブル104f2を表す図。
【符号の説明】
【0108】
21…CRTディスプレイ
22…プリンタ
28…印刷ヘッド
31…キャリッジ
32…操作パネル
41…CPU
42…ROM
90…コンピュータ
91…ビデオドライバ
95…アプリケーションプログラム
96…プリンタドライバ
97…解像度変換モジュール
98…色変換モジュール
99…ハーフトーンモジュール
100…モジュール
101…顔認識モジュール
103…LUT生成モジュール
104f…顔用色変換テーブル
104s…通常色変換テーブル
105f…顔用ドット分配テーブル
105s…通常ドット分配テーブル
106…分配テーブル生成モジュール
120…キーボード
130…マウス
Ad…すでに色変換処理およびハーフトーン処理が行われた領域
Af…顔領域
Af0…原顔領域
As…通常領域
Ay…まだ色変換処理およびハーフトーン処理が行われていない領域
D(v)…各階調値の頻度SN(v)と(SNmax+1)との差
DM…ディザマトリクス
Ddl,Ddr1,Ddr2,Dh1,Dh2,Dv1…誤差拡散マトリクス中の要素
EDM…誤差拡散マトリクス
FNL…印刷画像データ
G1〜G8…RGBの入力階調値によって構成される3次元空間中のグリッド
Gt…RGBの入力階調値によって構成される3次元空間中の対象グリッド
LLs(i)…色変換処理とハーフトーン処理が行われる対象ラスタライン
MID1…印刷用の解像度に変換された画像データ
MID2…インク色の階調値で画像が表された画像データ
MID3…ドットの有無で画像が表された画像データ
MS…主走査方向
N(vr)、N(vg)、N(vb)…レッド、グリーン、ブルーの頻度
ORG…原カラー画像データ
P…印刷用紙
PID…初期画像データ
SN(v)…RGBの各階調値の頻度の合計値
SS…印刷用紙の搬送方向
pc…特徴点

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の表色系の第1の画像データを、前記第1の表色系とは異なる第2の表色系の第2の画像データに変換する画像処理装置であって、
前記第1の画像データの画像中において顔が存在する顔領域の範囲を決定する顔領域決定部と、
前記第1の画像データを前記第2の画像データに変換する色変換部と、を備え、
前記色変換部は、
前記顔領域以外の通常領域の前記第1の画像データの前記変換を行う際には、通常領域用プロファイルを使用して前記変換を行い、
前記顔領域の前記第1の画像データの前記変換を行う際には、前記通常領域用プロファイルとは異なる顔領域用プロファイルを使用して前記変換を行う、画像処理装置。
【請求項2】
請求項1記載の装置であって、
前記顔領域決定部は、前記第1の画像データの画像中の特徴点を抽出し、前記特徴点に基づいて前記顔領域の範囲を決定する、画像処理装置。
【請求項3】
請求項1記載の画像処理装置であって、
前記顔領域用プロファイルは、前記顔領域用プロファイルが有する複数の入力値のうちで、前記顔領域内で最も頻度が高い色の近傍における入力値の間隔が、前記通常領域用プロファイルよりも狭く設定されている、画像処理装置。
【請求項4】
請求項3記載の画像処理装置であって、
前記通常領域用プロファイルと前記顔領域用プロファイルとがそれぞれ有する前記入力値の数は、同じである、画像処理装置。
【請求項5】
請求項3記載の画像処理装置であって、
前記顔領域用プロファイルは、前記通常領域用プロファイルよりも多くの前記入力値を有している、画像処理装置。
【請求項6】
請求項5に記載の画像処理装置であって、
前記顔領域用プロファイルは、前記顔領域用プロファイルが有する前記複数の入力値のうちで、前記顔領域内で最も頻度が高い色の近傍における入力値の間隔が、他の色の近傍における入力値の間隔よりも狭く設定されている、画像処理装置。
【請求項7】
請求項3記載の画像処理装置であって、さらに、
前記顔領域の色に基づいて、前記通常領域用プロファイルから前記顔領域用プロファイルを適応的に生成する顔領域用プロファイル生成部を備える、画像処理装置。
【請求項8】
請求項7記載の画像処理装置であって、
前記色変換部は、
前記変換において、入力された入力値に対応する出力値を決定する際には、前記通常領域用プロファイルまたは前記顔領域用プロファイルを参照して、第1の方法で前記出力値を決定し、
前記顔領域用プロファイル生成部は、
前記顔領域用プロファイルが有すべき入力値に対応する出力値を決定する際には、前記通常領域用プロファイルを参照して、前記第1の方法よりも精度が高い第2の方法で前記出力値を決定する、画像処理装置。
【請求項9】
請求項7記載の画像処理装置であって、
前記第1の画像データは、前記第1の表色系の複数の基準色の階調値で画像を表すデータであり、
前記顔領域用プロファイル生成部は、
前記複数の基準色の複数の階調値について、前記顔領域の前記第1の画像データ中の頻度を計算し、
前記複数の基準色の前記頻度の合計値が高い階調値ほど近傍において前記顔領域用プロファイルが格納している前記入力値の間隔が狭くなるように、前記顔領域用プロファイルを生成する、画像処理装置。
【請求項10】
請求項7記載の装置であって、
前記顔領域決定部は、前記画像中において複数の前記顔領域を決定することができ、
前記顔領域用プロファイル生成部は、前記複数の顔領域にそれぞれ対応する複数の前記顔領域用プロファイルを生成することができ、
前記色変換部は、前記複数の顔領域をそれぞれ表す複数の前記第1のデータの前記変換を行う際には、前記複数の顔領域用プロファイルをそれぞれ使用する、画像処理装置。
【請求項11】
請求項7記載の装置であって、
前記顔領域決定部は、前記画像中において複数の前記顔領域を決定することができ、
前記第1の画像データは、前記第1の表色系の複数の基準色の階調値で画像を表すデータであり、
前記顔領域用プロファイル生成部は、
前記複数の基準色の複数の階調値について、前記複数の顔領域をそれぞれ表す複数の前記第1の画像データ中の頻度を計算し、
前記複数の顔領域についての前記複数の基準色の前記頻度の合計値が高い階調値ほど近傍における前記入力値の間隔が狭くなるように、前記顔領域用プロファイルを生成する、画像処理装置。
【請求項12】
第1の表色系の第1の画像データを、前記第1の表色系とは異なる第2の表色系の第2の画像データに変換する方法であって、
(a)前記第1の画像データの画像中において顔が存在する顔領域の範囲を決定する工程と、
(b)前記第1の画像データを前記第2の画像データに変換する工程と、を備え、
前記工程(b)は、
(b1)通常領域用プロファイルを使用して、前記顔領域以外の通常領域の前記第1の画像データの前記変換を行う工程と、
(b2)前記通常領域用プロファイルとは異なる顔領域用プロファイルを使用して、前記顔領域の前記第1の画像データの前記変換を行う工程と、を備える、方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2006−268216(P2006−268216A)
【公開日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−83042(P2005−83042)
【出願日】平成17年3月23日(2005.3.23)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】