説明

風吹き出し装置を備えた建物

【課題】風の吹き出しに関する構成を良好なものとすることができる風吹き出し装置を備えた建物を提供すること。
【解決手段】内板12と、ガラス窓14の周縁部を構成する額縁23,24とのコーナ部分には、コーナカバー40a,40bが設けられている。コーナカバー40a,40bには通気ダクト55が収容されており、コーナカバー40a,40bに形成されたスリットに対応させて通気ダクト55には通気口が形成されている。そして、この通気ダクト55により上額縁23上に設けられたファンヒータ51からの温風がスリットに導かれ、当該スリットを介してガラス窓14に向けて温風が吹き出される。以上の構成においては、結露防止用の送風装置を室内に設ける必要がないため、結露防止用の風の吹き出しに関する構成を良好なものとすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、窓近傍に風吹き出し装置を備えた建物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
建物において、室内の気温が室外の気温よりも非常に高くなると、外気により低温となった窓とこれに接触する室内空気とに温度差が生じ、窓のガラス面に結露が生じる問題があった。
【0003】
上記問題を解決する手段として、窓枠に断熱サッシを使用したり、複層ガラスを使用する手段が考えられえるが、これら手段においても窓周辺の温度低下は発生し結露が生じてしまう。つまり、窓枠やガラスの工夫のみでは限界がある。
【0004】
これに対して、例えば、特許文献1では、室内暖房用のエアコンを結露防止用の送風装置として兼用し、当該エアコンからの温風を窓に向けて吹き出す構成が開示されている。また、室内に結露防止用の送風装置として専用ファンを設け、当該専用ファンにより天井近くの暖かい空気を窓にあてる構成が開示されている。これらの場合、窓の室内側が直接暖められ、結露を防止することができる。しかしながら、前者の構成においては、エアコンの配置に関して制約が生じてしまう。また、後者の構成においては、室内の外観を損ねてしまうおそれがある。
【特許文献1】特開平10−196985号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、風の吹き出しに関する構成を良好なものとすることができる風吹き出し装置を備えた建物を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以下、上記課題を解決するのに有効な手段等につき、必要に応じて作用、効果等を示しつつ説明する。なお以下では、理解を容易にするため、発明の実施形態において対応する構成例を括弧書き等で適宜示すが、この括弧書き等で示した具体的構成に限定されるものではない。
【0007】
本発明は、風を送り出す送風装置(ファンヒータ51)を設けるとともに、建物の窓(ガラス窓14)近傍の室内壁部(コーナカバー40a〜40c)に、前記風を前記窓に向けて吹き出す吹き出し口(スリット46)を形成したことを特徴とする。
【0008】
この建物によれば、室内壁部に形成された吹き出し口から窓に向けて風を吹き出すことができるため、室内暖房用のエアコンを結露防止用に兼用する必要はなく、また結露防止用の専用ファンを室内に設ける必要もない。よって、風の吹き出しに関する構成を良好なものとすることができる。また、送風装置に温風吹き出し用のヒータを設けることで、窓に向けて温風を吹き出すことができる。これにより、室内の温度低下を招くことなく結露を防止することができ、さらには、いわゆるコールドドラフト現象の発生を防止することができる。
【0009】
吹き出し口を、窓用開口部(窓用開口部13)に形成することが好ましい。これにより、窓に対して近い位置から風を吹き出すことができる。
【0010】
吹き出し口を、前記窓用開口部の複数の辺に沿って形成することが好ましい。これにより、窓に対して一方向から風を吹き出す構成に比べ、窓のより広い領域に風を当てることができ、結露の防止等を効率良く行うことができる。
【0011】
窓用開口部は、当該窓用開口部の周縁部を構成する縁板(額縁23〜25)を備えるとともに、室内の壁面を構成する内板(内板12)と前記縁板とのコーナ部分を覆うコーナカバー(コーナカバー40a〜40c)を備えている。かかる構成において、前記風が通るように前記コーナカバーを中空状に形成するとともに、当該コーナカバーに前記吹き出し口を形成することが好ましい。これにより、送風装置からの風は、コーナカバー内を通って当該コーナカバーに形成された吹き出し口から窓に向けて吹き出される。本構成とすることにより、室内において吹き出し口が目立たなくなり、室内の外観を損なうことなく吹き出し口を設けることができる。なお、コーナカバーにより内板と縁板との隙間を塞ぐ構成とすることが好ましい。これにより、室内の気密性が高められ、さらには室内の気密性を高める機能を有するコーナカバーを有効利用して吹き出し口を設けることができる。
【0012】
前記吹き出し口に前記風を導く通気ダクト(通気ダクト55)を、前記コーナカバー内に収容することが好ましい。これにより、コーナカバーに形成された吹き出し口へ風を確実に導くことができる。また、通気ダクトはコーナカバー内に収容されているので、通気ダクトが室内にて露出することはなく、室内の外観を損なうことなく上記効果を得ることができる。なお、コーナカバーに吹き出し口を複数設けた構成においては、各吹き出し口に対応させて通気ダクトに複数の通気口を形成することが好ましい。これにより、送風装置からの風を各吹き出し口へ確実に導くことができる。
【0013】
所定の奥行き寸法を有するように前記室内壁部を形成し、室外側に偏倚させて前記窓を配置するとともに、室内側に偏倚させて前記吹き出し口を形成することが好ましい。これにより、窓と吹き出し口との間に所定の間隔が生じ、風が窓の広い範囲に当たることで、結露の防止等を効率良く行うことができる。
【0014】
建物に設けられた複数の窓に対応させて前記吹き出し口を形成するとともに、送風装置から各吹き出し口への送風通路(通気ダクト73e,73f)を形成することが好ましい。これにより、複数の窓に対する結露の防止等を低コストで実現することが可能となる。
【0015】
複数の室内空間を一括して換気するセントラル換気装置を備えた建物においては、当該セントラル換気装置の送風部(送風装置72)によって前記送風装置を構成することが好ましい。これにより、セントラル換気と結露の防止とが一の送風装置により果たされ、低コスト化を図りつつ両効果を得ることができる。
【0016】
前記窓に結露が発生するか否かを判定する結露発生判定手段(外側温度センサ61、内側温度センサ62、湿度センサ63、制御装置60)と、当該結露発生判定手段により結露が発生すると判定された場合に前記送風装置をON制御する送風制御手段(制御装置60)とを設けることが好ましい。これにより、結露が発生するおそれがある場合に送風装置がON制御されるため、省エネを図りつつ、結露の防止を行うことができる。
【0017】
また、結露発生判定手段として、室内の水蒸気圧を検出するための水蒸気圧検出手段(内側温度センサ62、湿度センサ63)と、室内における窓周辺の温度を検出する温度検出手段(外側温度センサ61)と、結露が生じる場合の前記水蒸気圧及び前記窓周辺の温度の相関データを記憶したデータ記憶手段(制御装置60)と、前記各種検出手段の検出結果と前記相関データを比較する比較手段(制御装置60)とを備え、前記送風制御手段が、前記比較手段の比較結果に基づいて前記送風装置をON制御する構成とすることで、結露の発生を確実に予測することができ、結露の防止を確実に行うことができる。なお、結露の発生をより確実に予測すべく、温度検出手段により窓における室内側の面(室内側のガラス面)の温度を直接検出する構成とすることが好ましい。
【0018】
複数個の建物ユニットで形成されるユニット建物においては、窓付きの所定の建物ユニットに前記送風装置と前記室内壁部とを予め組み込んでおき、その建物ユニットを含む複数個の建物ユニットを並べて建物を形成することが好ましい。これにより、所定の建物ユニットに風吹き出し装置を予め組み込んでおくことができ、現場での施工が容易になる利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明を具体化した一実施形態を図面に基づいて説明する。先ず、本実施形態の構成を図1〜図3に基づいて説明する。
【0020】
図1に示すように、建物には室内外を仕切る仕切壁10が設けられている。仕切壁10は、室外側壁面を構成する外板11と、室内側壁面を構成する内板12とを備えた壁ユニットとして構成されている。仕切壁10には、窓用開口部13が形成されており、この窓用開口部13にガラス窓14が取り付けられている。
【0021】
窓用開口部13は、外板11に形成された外側開口部21と、内板12に形成された内側開口部22と、窓用開口部13の周縁部を構成する額縁23,24,25とにより形成されている。そして、外側開口部21に取り付けられた窓枠サッシ26に、ガラス窓14がスライド自在に取り付けられている。ガラス窓14は、窓サッシ31にガラス板32が保持されて構成されている。
【0022】
外板11と内板12とは、所定の内部空間が形成されるように離間されている。これにより、窓用開口部13は所定の奥行き寸法を有し、ガラス窓14は内板12に対して室外側に奥まった位置にある。
【0023】
額縁23〜25のうち下額縁25は、内板12よりも室内側に突出するようにして取り付けられている。一方、上額縁23及び上下に延びる縦額縁24は、その室内側端部の位置が内板12よりも室外側となるようにして取り付けられている。内板12と、上額縁23及び各縦額縁24とのコーナ部分には、それぞれ両者の隙間を塞ぐようにして複数(本実施形態では、3個)のコーナカバー40a,40b,40cがネジ等により取り付けられている。
【0024】
各コーナカバー40a〜40cは、アルミ等の金属板を曲げて形成されている。詳細には、各コーナカバー40a〜40cは、内板12に当接する第1当接部41と、額縁23,24に当接する第2当接部42と、両当接部41,42を連結する連結部43とを備えている。第1当接部41及び第2当接部42は共に直角に折り曲げて形成されており、第1当接部41は内板12における室外側を向く板面12a及び内側開口部22の周面22aに当接しており、第2当接部42は額縁23,24にける窓用開口部13外側を向く板面23a,24a及び室内側端面23b,24bに当接している。また、連結部43は、室内側に凸となるよう円弧状に曲げて形成されている。なお、コーナカバー40a〜40cは金属製に限定されることはなく、合成樹脂製としてもよい。
【0025】
コーナカバー40a〜40cが設けられていることにより、内板12と、各額縁23,24との間の隙間が確実に塞がれ、室内の気密性が確保されている。よって、室内外の熱の出入りが抑制されている。なお、図3に示すように、外板11と内板12との間には断熱材15が設けられており、この点からも室内外の熱の出入りが抑制されている。
【0026】
さて、本実施形態では、ガラス窓14の結露防止装置50が設けられている。そこで、かかる結露防止装置50について以下に説明する。
【0027】
図3に示すように、仕切壁10の内部空間であって上額縁23上には、送風装置としてのファンヒータ51が配設されている。ファンヒータ51は、図示しない駆動部により駆動される送風ファン52と、当該送風ファン52により送り出される風を暖めるヒータ53とを備えている。なお、ヒータ53は、自己温度制御機能を有するPTCヒータにより構成されているが、他の汎用ヒータを用いる構成としてもよい。
【0028】
ファンヒータ51からの温風は、通気ダクト55を通じてガラス板32の室内側の面に向けて吹き出される。詳細には、上述したとおり各コーナカバー40a〜40cの連結部43は室内側に凸となるよう円弧状に曲げて形成されており、各コーナカバー40a〜40cには各当接部41,42及び連結部43により区画されるようにして収容部44が形成されている。各収容部44は連通されており、これら収容部44に通気ダクト55が収容されている。通気ダクト55は各コーナカバー40a〜40cの全体に亘って設けられている。
【0029】
各コーナカバー40a〜40cにおける第2当接部42の内外を向く部位42aは額縁23,24よりも窓用開口部13内側に延出しており、その延出部45には内外に貫通したスリット46が形成されている。スリット46は、窓用開口部13の周縁部に沿って等間隔で複数形成されている。
【0030】
これらスリット46に1対1で対応させて、通気ダクト55には通気口56が複数形成されている。各通気口56の開口寸法は、各スリット46の開口寸法と略同一となっている。そして、各コーナカバー40a〜40cの各スリット46には、通気ダクト55の各通気口56が位置合わせされており、ファンヒータ51から吹き出される温風は、通気ダクト55を通り、各通気口56及び各スリット46を介して室内に吹き出される。延出部45はガラス窓14と対峙しているため、上記吹き出された温風はガラス板32の室内側の面に当たる。上記のとおりスリット46及び通気口56が窓用開口部13の周縁部に沿って複数形成されているため、ガラス板32の周縁部に沿った複数の位置から温風を吹き出すことができる。特に、本構成によれば、ガラス板32の上部及び両側部に向けて温風を吹き出すことができる。
【0031】
以上の構成により、ガラス板32における結露の発生を防止することができる。特に、温風が吹き出されるため、室内の温度低下を抑制しつつ結露を防止することができる。さらには、ガラス窓14が外気で冷やされると、ガラス窓14の室内側付近に冷気が発生して、この冷気が室内の床に向かって流れるといったコールドドラフト現象が想定されるが、上記のとおりガラス窓14及びその周辺が温風により暖められるため、コールドドラフト現象の発生を抑制することができる。
【0032】
ここで、本実施形態における建物は、複数の建物ユニットを組み合せて構築されるユニット建物であり、上述した各コーナカバー40a〜40cや、結露防止装置50は予め建物ユニットに組み込まれている。また、建物ユニットにおいては、複数のガラス窓14を有するユニットもある。この場合、一のファンヒータ51を各ガラス窓14に対して兼用することで、低コスト化を図りつつ、結露を防止することができる。
【0033】
次に、上記ファンヒータ51のON/OFF制御について説明する。つまり、本実施形態では、ファンヒータ51は常時作動しているのではなく、室内の環境に応じて制御装置60によりON/OFF制御される。
【0034】
制御装置60は、CPUや各種メモリ等を備えた周知のマイクロコンピュータを有してなり、入出力ポートを備えている。制御装置60の入力側には、図3に示すように、外側温度センサ61、内側温度センサ62、及び湿度センサ63が接続されている。外側温度センサ61は、ガラス窓14の室内側周辺の温度を検出するようにして配置されている。内側温度センサ62は、室内の中央寄りの温度を検出するようにして配置されており、湿度センサ63は、室内の中央寄りの湿度を検出するようにして配置されている。制御装置60の出力側には、ファンヒータ51が接続されている。そして、制御装置60がON/OFF制御を実行することにより、ファンヒータ51の電源がON/OFFされる。このON/OFFにより送風ファン52の駆動部及びヒータ53の両方がON/OFFされる。
【0035】
図4は、制御装置60により実行されるON/OFF制御処理を示すフローチャートである。本処理は、所定周期(例えば、1sec)で繰り返し実行される。
【0036】
図4において、先ずステップS11では、外側温度センサ61、内側温度センサ62及び湿度センサ63の検出データを取得する。その後、ステップS12では、取得したデータに基づいて算出処理を実行する。この算出処理では、制御装置60のメモリに記憶された温度と水蒸気圧との関係を示すマップデータに基づいて、室内の水蒸気圧を算出し、さらにはその算出した水蒸気圧に対する結露発生の基準温度を算出する。
【0037】
図5は、かかるマップデータを示す相関図である。このマップデータでは、横軸が温度(℃)、縦軸が水蒸気圧(mmHg)となるように設定されており、さらに各温度に対する飽和水蒸気圧の値が記憶されている(図5における飽和水蒸気圧線)。室内の水蒸気圧を算出する際には、先ず内側温度センサ62の検出結果により室内の温度を把握し、その後、湿度センサ63の検出結果により湿度を把握する。そして、把握した温度の飽和水蒸気圧に対する湿度の積により室内の水蒸気圧を算出する。例えば、把握した温度が25℃の場合には、飽和水蒸気圧が23mmHgであり、この場合の把握した湿度が80%の場合には、室内の水蒸気圧が約18mmHgであると算出する。また、この算出した室内の水蒸気圧が飽和水蒸気圧となる温度をマップデータから算出することで、結露発生の基準温度を算出する。例えば、算出した室内の水蒸気圧が上述した18mmHgである場合には、基準温度は21℃であると算出する。
【0038】
ON/OFF制御処理の説明に戻り、ステップS12にて算出処理を実行した後は、ステップS13にてファンヒータ51の電源がONとなっているか否かを判定する。電源がONとなっていない場合には、ステップS14及びステップS15の開始判定処理を実行し、電源がONとなっている場合には、ステップS16及びステップS17の終了判定処理を実行する。
【0039】
開始判定処理では、先ずステップS14にて、外側温度センサ61の検出結果により把握した温度が開始基準温度であるか否かを判定する。詳細には、算出処理にて算出した基準温度に対して1℃加算した温度を開始基準温度とする。そして、把握した温度が開始基準温度以下の場合には、ステップS14にて肯定判定をし、開始基準温度を超えている場合には、ステップS14にて否定判定をする。肯定判定をした場合には、ステップS15にてファンヒータ51の電源をON制御した後に開始判定処理を終了し、否定判定をした場合には、そのまま開始判定処理を終了する。このように、基準温度に対してプラス1℃した温度を開始基準温度とすることで、結露の発生を予防することができる。
【0040】
終了判定処理では、先ずステップS16にて、外側温度センサ61の検出結果により把握した温度が終了基準温度であるか否かを判定する。詳細には、算出処理にて算出した基準温度に対して2℃加算した温度を終了基準温度とする。そして、把握した温度が終了基準温度を超えた場合には、ステップS16にて肯定判定をし、終了基準温度以下の場合には、ステップS16にて否定判定をする。肯定判定をした場合には、ステップS17にてファンヒータ51の電源をOFF制御した後に終了判定処理を終了し、否定判定をした場合には、そのまま終了判定処理を終了する。この場合に、開始基準温度に対して終了基準温度の方を高く設定しておくことで、ファンヒータ51のON/OFFが繰り返されることが防止される。
【0041】
以上詳述した本実施形態によれば、以下の優れた効果が得られる。
【0042】
内板12と各額縁23,24との隙間を塞ぐようにして設けられたコーナカバー40a〜40cに吹き出し口としてのスリット46を形成し、当該スリット46を介して結露防止用の風を吹き出すようにしたことにより、送風装置としてのファンヒータ51を室内に設ける必要はなく、結露防止用の風の吹き出しに関する構成を良好なものとすることができる。また、気密性を高めるためのコーナカバー40a〜40cを有効利用しつつ、上記効果を得ることができる。さらには、室内において吹き出し口が目立たなくなり、室内の外観を損なうことなく上記効果を得ることができる。
【0043】
ガラス窓14の周縁に沿った複数の方向から結露防止用の風を吹き出すことで、ガラス窓14に対して一方向から結露防止用の風が吹き出される構成に比べガラス窓14のより広い領域に風を当てることができ、結露の防止を効率良く行うことができる。
【0044】
ファンヒータ51からの風をスリット46に導く通気ダクト55を設けたことにより、ファンヒータ51からの風をスリット46へ確実に導くことができる。特に、スリット46が複数形成されているので、それらスリット46に対応させて通気ダクト55に通気口56を形成することで、ファンヒータ51からの風を各スリット46へ確実に導くことができる。また、通気ダクト55をコーナカバー40a〜40cの収容部44に収容させたことにより、通気ダクト55が室内にて露出することはなく室内の外観を損なうことはない。
【0045】
ガラス窓14に対して室内側に離間させてスリット46を形成したことにより、スリット46から吹き出される風がガラス窓14の広い範囲に当たり、結露の防止を効率良く行うことができる。
【0046】
制御装置60を設け、結露が発生するおそれがある場合にファンヒータ51をON制御するようにしたことで、省エネを図りつつ、結露の防止を行うことができる。また、外側温度センサ61、内側温度センサ62、及び湿度センサ63を設け、さらに温度と水蒸気圧との関係を示すマップデータを制御装置60に記憶させたことにより、結露の発生を確実に予測することができ、結露の防止を確実に行うことができる。
【0047】
なお、本発明は上記実施形態の記載内容に限定されず、例えば次のように実施しても良い。
【0048】
図6に示す建物70においては、複数の部屋R1〜R4を一括して換気するセントラル換気装置が設けられている。詳細には、屋根裏71には送風装置72が設けられており、当該送風装置72から各部屋R1〜R4に向けて通気ダクト73a,73b,73c,73dが延びている。これら通気ダクト73a〜73dにより、送風装置72からの風が各部屋R1〜R4に導かれ、各部屋R1〜R4が一括して換気される。この場合に、建物70には、複数のガラス窓W1,W2が設けられており、当該ガラス窓W1,W2の上側周縁部に向けて延びるように通気ダクト73e,73fが設けられている。そして、通気ダクト73e,73fにより導かれる風がガラス窓W1,W2に向けて吹き出され、結露が防止される。つまり、本構成によれば、セントラル換気装置の送風装置72が結露防止装置の送風装置として兼用されており、セントラル換気と結露の防止とが一の送風装置72により果たされ、低コスト化を図りつつ、両効果を得ることができる。また、複数のガラス窓W1,W2に対して一の送風装置72が兼用され、かかる点からも低コスト化を図ることができる。
【0049】
図7に示す建物80においては、複数の部屋R1〜R4を一括して暖める床暖房装置が設けられている。詳細には、室外には温水発生機81が設けられており、さらに各部屋R1〜R4の床下領域82を通るようにして温水発生機81からの温水を通す温水用ダクト83が設けられている。この温水用ダクト83に温水を通すことにより、各部屋R1〜R4の床が一括して暖められる。この場合に、建物80には、複数のガラス窓W1,W2が設けられており、当該ガラス窓W1,W2の下側周縁部に向けて延びるように温水用ダクト84,85が形成されている。そして、これら温水用ダクト84,85により導かれた温水が各ガラス窓W1,W2の周縁部に設けられた結露防止装置のヒータとして機能し、当該ガラス窓W1,W2に向けて温風が吹き出され、結露が防止される。つまり、本構成によれば、床暖房装置の温水用ダクト84,85が結露防止装置のヒータとして兼用され、低コスト化を図りつつ、床暖房と結露の防止とを両立することができる。
【0050】
なお、セントラル換気装置と床暖房装置とが共に設けられた建物においては、セントラル換気装置の送風装置を結露防止装置の送風装置として兼用し、床暖房装置の温水用ダクトを結露防止装置のヒータとして兼用する構成が考えられる。
【0051】
コーナカバー40a〜40cに吹き出し口(上記実施形態ではスリット46)を形成する構成としたが、これに代えて、額縁23〜25に吹き出し口を設けてもよい。
【0052】
コーナカバー40a〜40cを筒状に形成することで、通気ダクト55を介することなく風の吹き出しを行う構成としてもよい。この場合、構成の簡素化を図ることができる。
【0053】
内板12と下額縁25との間にコーナカバーを設けてもよい。そして、当該コーナカバーにもスリットを形成し、さらに通気ダクトを設置する。これにより、ガラス窓14の周縁の全方向から風が吹き出され、結露の防止をより効率良く行うことができる。
【0054】
コーナカバー40a〜40cにより内板12と額縁23,24との隙間を塞ぐのではなく、両者のコーナ部分を単に覆う構成としてもよい。この場合であっても、室内においてスリット46を目立たないようにすることができる。
【0055】
ファンヒータ51の配置位置は上記実施形態における位置に限定されることはなく、例えば、室外にファンヒータ51を設ける構成としてもよい。
【0056】
送風装置にヒータを設けるか否かは任意である。但し、送風装置にヒータを設けることで、上述したとおりコールドドラフト現象の発生を防止することができる。
【0057】
外側温度センサ61によりガラス板32における室内側の面の温度を直接検出する構成としてもよい。この場合、結露発生の予測をより確実に行うことができる。また、上記実施形態ではファンヒータ51のON/OFF制御処理を実行するために、ガラス窓14の室内側周辺の温度、室内の温度、及び室内の湿度を検出する構成としたが、これに代えて、ガラス板32における室内側の面に結露センサを取り付け、結露の発生を直接検出してファンヒータ51のON/OFF制御処理を実行する構成としてもよい。
【0058】
制御装置60において、送風ファン52のON/OFF制御と、ヒータ53のON/OFF制御とを別々に行う構成としてもよい。この場合、設定温度に達するまでに所定の時間を要するヒータ53のON制御を先んじて行い、その後、送風ファン52のON制御を行うようにすることができる。また、制御装置60を設けずに、ファンヒータ51のON/OFFを切り換え操作可能とするスイッチ装置を設けてもよい。
【0059】
仕切壁10は、屋内外を仕切るもの以外にも、部屋と廊下とを仕切る等、屋内空間を仕切るものであってもよい。また、本発明は、ユニット建物以外の建物にも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】仕切壁に設けたガラス窓周辺の構成を示す斜視図。
【図2】結露防止用の風の吹き出し口に関する構成を説明するための説明図。
【図3】ガラス窓周辺の縦断面図。
【図4】制御装置において実行されるON/OFF制御処理を示すフローチャート。
【図5】制御装置に記憶されたマップデータを示す相関図。
【図6】別の実施形態における結露防止装置を説明するための概略図。
【図7】別の実施形態における結露防止装置を説明するための概略図。
【符号の説明】
【0061】
10…仕切壁、11…外板、12…内板、13…窓用開口部、14…ガラス窓、23,24,25…額縁、40a〜40c…コーナカバー、44…収容部、46…吹き出し口としてのスリット、50…結露防止装置、51…送風装置としてのファンヒータ、55…通気ダクト、60…結露発生判定手段及び送風制御手段を構成する制御装置、61…結露発生判定手段を構成する外側温度センサ、62…結露発生判定手段を構成する内側温度センサ、63…結露発生判定手段を構成する湿度センサ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
風を送り出す送風装置を設けるとともに、
建物の窓近傍の室内壁部に、前記風を前記窓に向けて吹き出す吹き出し口を形成したことを特徴とする建物。
【請求項2】
前記吹き出し口を、窓用開口部に形成したことを特徴とする請求項1に記載の建物。
【請求項3】
前記吹き出し口を、前記窓用開口部の複数の辺に沿って形成したことを特徴とする請求項2に記載の建物。
【請求項4】
前記窓用開口部は、当該窓用開口部の周縁部を構成する縁板を備えるとともに、室内の壁面を構成する内板と前記縁板とのコーナ部分を覆うコーナカバーを備え、
前記風が通るように前記コーナカバーを中空状に形成するとともに、当該コーナカバーに前記吹き出し口を形成したことを特徴とする請求項2又は3に記載の建物。
【請求項5】
前記風を前記吹き出し口に導く通気ダクトを、前記コーナカバー内に収容したことを特徴とする請求項4に記載の建物。
【請求項6】
所定の奥行き寸法を有するように前記室内壁部を形成し、
室外側に偏倚させて前記窓を配置するとともに、室内側に偏倚させて前記吹き出し口を形成したことを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の建物。
【請求項7】
建物に設けられた複数の窓に対応させて前記吹き出し口を形成するとともに、送風装置から各吹き出し口への送風通路を形成したことを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の建物。
【請求項8】
複数の室内空間を一括して換気するセントラル換気装置を備えた建物であって、当該セントラル換気装置の送風部によって前記送風装置を構成したことを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の建物。
【請求項9】
前記窓に結露が発生するか否かを判定する結露発生判定手段と、当該結露発生判定手段により結露が発生すると判定された場合に前記送風装置をON制御する送風制御手段とを備えたことを特徴とする請求項1乃至8のいずれかに記載の建物。
【請求項10】
前記結露発生判定手段は、室内の水蒸気圧を検出するための水蒸気圧検出手段と、室内における窓周辺の温度を検出する温度検出手段と、結露が生じる場合の前記水蒸気圧及び前記窓周辺の温度の相関データを記憶したデータ記憶手段と、前記各種検出手段の検出結果と前記相関データを比較する比較手段とを備え、
前記送風制御手段は、前記比較手段の比較結果に基づいて前記送風装置をON制御することを特徴とする請求項9に記載の建物。
【請求項11】
複数個の建物ユニットで形成されるユニット建物であって、窓付きの所定の建物ユニットには前記送風装置及び前記室内壁部が予め組み込まれ、その建物ユニットを含む複数個の建物ユニットを並べて形成したことを特徴とする請求項1乃至10のいずれかに記載の建物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−291669(P2007−291669A)
【公開日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−119000(P2006−119000)
【出願日】平成18年4月24日(2006.4.24)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】