説明

風況解析のための地図情報データの編集方法、システム及びプログラム

【課題】土地の利用状況が変わったとしても、標高データや土地利用データを簡単に改訂編集することができ、その後の風況解析を的確に行なえるようにする。
【解決手段】風況解析を行う地域について、予め求められている標高データ及び土地の利用状況を数値化した土地利用データを含む地図情報データ画像と、当該地域の航空写真画像とを重畳表示させる。新規埋め立て地など、土地利用状況が変わった領域を編集領域R1、R2として選定する。この編集領域R1、R2に存在するメッシュセルに対して新たな標高データ及び土地利用データを与え、当該編集領域R1、R2単位で標高データ及び土地利用データを更新する。更新された土地利用データは、地表面と風との摩擦の程度を示すパラメータである粗度データに変換される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定地域における風の環境(風況)を解析する際に使用される地図情報データの編集方法、編集システム及び編集プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば風力発電設備の建設が予定されている地域においては、当該地域がどのような風が吹く環境下にあるのかを事前に的確に予測しておくことが肝要となる。このようなミクロ的な風況解析をパソコンレベルで実行可能なシステムとして、LAWEPS(Local Area Wind Energy Prediction System)やMASCOT(Microclimate Analysis System for Complex Terrain)が知られている(例えば非特許文献1参照)。
【0003】
上記のような風況解析システムでは、地表面を流れる風を流体力学の手法を用いて解析することから、地表面と風との摩擦の大きさが風況解析結果に深い影響を与えることとなる。図24は、地表面の状態と風況との関係を模式的に示す図である。図中、符号P1〜P3で示す曲線は、風の鉛直プロファイルを表している。海水面や湖水面のように平坦な地域では、鉛直プロファイルP1で示すように、地表面近くの風速が比較的強くなる。これに対し、野草や作物類が生育している荒地や畑の地域では、地表面近くの風速が比較的弱い鉛直プロファイルP2となる。さらに、森林のように高い木が生い茂っている地域では、地表面近くの風速が一層弱くなる一方で上空へ行くほど急速に風速が強くなる鉛直プロファイルP3となる。このように風況は土地利用区分によって大きく異なることから、上記風況解析システムでは、かかる土地利用区分を地表面と風との摩擦の程度を示すパラメータである粗度データに変換した上で、当該地域の標高データ等を加味して風況解析演算を行っている。
【非特許文献1】財団法人日本気象協会平成15年3月発行「離島用風力発電システム等の技術開発・局所用風況予測モデルの開発」
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記風況解析システムにおいて、土地利用区分に関するデータとしては、国土地理院が発行している100mメッシュ土地利用データが汎用されている。しかし、土地の利用状況は、土地造成や海面埋め立て、或いは道路建設等により経時的に変化する。すなわち、地表面の「粗度」も変化するのであるが、前記土地利用データは土地利用区分の変化に応じて逐次更新される性質のものはないため、現に土地利用区分の変化が生じている地域において従前の土地利用データを用いて風況解析演算を行うと、正確な風況解析結果が得られないという問題があった。標高データも同様である。この場合、メッシュ単位で土地利用データや標高データを修正すれば良いが、これは非常に手間のかかる作業となるため、ユーザーフレンドリーではないという問題があった。
【0005】
本発明は上記問題点に鑑みて為されたもので、土地の利用状況が変わったとしても、標高データや土地利用データを簡単に改訂編集することができ、その後の風況解析を的確に行なわせることができる地図情報データの編集方法、システム及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の請求項1に係る風況解析のための地図情報データの編集方法は、所定範囲の地域について、予め求められている標高データ及び土地の利用状況を数値化した土地利用データを含む地図情報データを所定のデータベースから読み出し、この地図情報データに基づく地図画像を編集元画像として表示させるステップと、前記編集元画像上において、前記標高データ及び土地利用データの改訂を行うべき編集領域を選定するステップと、前記編集領域に対して新たな標高データを与え、当該編集領域の標高データを更新するステップと、前記編集領域に対して新たな土地利用データを与え、当該編集領域の土地利用データを更新するステップと、更新された土地利用データを、地表面と風との摩擦の程度を示すパラメータである粗度データに変換するステップとを含むことを特徴とする。
【0007】
この構成によれば、各々のポイント(メッシュ)における標高データ及び土地利用データを含む地図情報データが読み出され、これが編集元画像として表示される。続いて、標高データ及び土地利用データの改訂を要するポイント(メッシュ)群が、編集領域として編集元画像上で領域指定される。そして、この編集領域単位で、新たな標高データ及び土地利用データが更新されるようになる。なお、標高データの更新と土地利用データの更新とは、別個に行っても良いし、同時に行っても良い。
【0008】
上記構成において、前記編集領域を選定するステップは、前記編集元画像と、前記所定範囲の地域の航空写真に基づき得られた写真画像若しくは土地改良部位が描かれた図面に基づき得られた図面画像とを重畳表示させるステップを含むことが望ましい(請求項2)。
【0009】
この構成によれば、編集元画像に対して写真画像若しくは図面画像を重畳表示させるので、土地造成や埋め立てなどに起因する実際の地形変化若しくは予定される地形変化の部分を地図画像上で正確に把握することができる。従って、ユーザにおいて、簡易且つ適正に編集領域を選定することができるようになる。
【0010】
また、上記構成において、前記標高データを更新するステップとして、平坦な土地を編集領域とし、該編集領域内を同じ標高に改訂する第1フィット処理、及び/又は、法面を編集領域とし、該編集領域内を所定の傾斜条件で傾斜した標高に改訂する第2フィット処理が行われることが望ましい(請求項3)。
【0011】
この構成によれば、埋め立て更地や工場用地などの平坦な土地領域については第1フィット処理により同じ標高に一括改訂され、切り土や盛り土で形成された法面領域については第2フィット処理により傾斜条件に応じた標高に一括改訂される。従って、地形変化が埋め立て更地等の新たな発生である場合は、その全域を編集領域として選定して第1フィット処理を行えば良い。また、地形変化が山間の造成地等の新たな発生である場合は、その平地領域をまず編集領域として選定して第1フィット処理を行い、次に法面を編集領域として選定して第2フィット処理を行えば良い。これにより、簡単な操作で、標高データを更新することができる。
【0012】
さらに、上記構成において、前記標高データを更新するステップとして、道路に相当する線状領域を編集領域とし、該編集領域内を道路の勾配情報を参照して線状平面の標高に改訂する第3フィット処理と、前記線状平面の標高と、その周辺部位の標高とを参照して、前記線状平面に連接して生成される法面領域を設定し、該法面領域内を所定の傾斜条件で傾斜した標高に改訂する第4フィット処理とが行われることが望ましい(請求項4)。
【0013】
この構成によれば、道路に相当する線状領域については第3フィット処理により道路平面に応じた線状平面の標高に一括改訂され、この線状平面に連接して生成される法面領域については第4フィット処理により傾斜条件に応じた標高に一括改訂される。従って、新たな道路建設により地形変化が発生乃至は予定されている場合に、簡単な操作で、その地形変化に対応した標高データに更新することができる。
【0014】
本発明の他の局面に係る地図情報データの編集システムは、所定範囲の地域について、予め求められている所定のメッシュ単位の標高データ及び土地の利用状況を数値化した土地利用データを含む地図情報データを記憶する第1記憶手段と、前記土地利用データを、地表面と風との摩擦の程度を示すパラメータである粗度データに変換するためのテーブルを記憶する第2記憶手段と、前記地図情報データに基づく地図画像を編集元画像として表示する表示手段と、前記編集元画像上において、前記標高データ及び土地利用データの改訂を行うべき編集領域を選定する操作を受け付け、選定された編集領域についての前記標高データ及び土地利用データを書き換え可能な状態とする領域選定手段と、前記編集領域に対する新たな標高データ及び土地利用データの入力を受け付ける入力手段と、前記入力手段から与えられた新たな標高データに前記編集領域内の標高データを更新すると共に、新たな土地利用データに前記編集領域内の土地利用データを更新し、さらに前記第2記憶手段のテーブルに基づき更新された土地利用データを粗度データに変換する処理を行う編集処理手段とを具備することを特徴とする(請求項5)。
【0015】
上記構成において、前記領域選定手段は、前記所定範囲の地域の航空写真に基づき得られた写真画像データ若しくは土地改良部位が描かれた図面に基づき得られた図面画像データを読み出して記憶する画像データバッファと、前記編集元画像と、前記写真画像データ若しくは図面画像データに基づく更新画像とを位置合わせして重畳表示させる表示制御部と、重畳表示された画像上で編集領域を選定する操作を可能とする操作部とを含むことが望ましい(請求項6)。
【0016】
また、上記構成において、前記編集処理手段は、平坦な土地を編集領域とし、該編集領域内のメッシュ標高データを前記入力手段から入力された単一の標高値に各々改訂する第1フィット処理部と、法面を編集領域とし、該編集領域内のメッシュ標高データを所定の傾斜条件で傾斜した標高値に各々改訂する第2フィット処理部とを含むことが望ましい(請求項7)。
【0017】
さらに、上記構成において、前記編集処理手段は、道路に相当する線状領域を編集領域とし、該編集領域内のメッシュ標高データを、前記入力手段から与えられる道路のポイント標高値から算出した勾配情報に基づき線状平面の標高値に改訂する第3フィット処理部と、前記線状平面の標高値と、その周辺部位の標高値とを参照して、前記線状平面に連接して生成される法面領域を設定し、該法面領域内のメッシュ標高データを、所定の傾斜条件で傾斜した標高値に改訂する第4フィット処理部とを含むことが望ましい(請求項8)。
【0018】
上記いずれかの構成において、前記編集処理手段は、前記第1記憶手段に格納されている土地利用データのメッシュ単位を細分化した上で、土地利用データの更新並びに粗度データへの変換が実行可能とされていることが望ましい(請求項9)。この構成によれば、元データとして存在する土地利用データのメッシュ単位をさらに細分化して、土地利用データの更新並びに粗度データへの変換を行うことができるので、一層細やかな風況解析を行なわせることが可能となる。
【0019】
本発明のさらに他の局面に係る地図情報データの編集プログラムは、画像を表示する表示手段、データを記憶する記憶手段及びデータの編集処理を実行可能な処理手段を含む地図情報データの編集システムのためのプログラムであって、前記処理手段に、所定範囲の地域について、予め求められている標高データ及び土地の利用状況を数値化した土地利用データを含む地図情報データを前記記憶手段から読み出させる処理と、前記地図情報データに基づく地図画像を編集元画像として前記表示手段に表示させる処理と、前記編集元画像上において、前記標高データ及び土地利用データの改訂を行うべき編集領域を選定する操作を受け付け、選定された編集領域についての前記標高データ及び土地利用データを書き換え可能な状態とする処理と、前記編集領域に対する新たな標高データの入力を受け付け、与えられた新たな標高データに前記編集領域内の標高データを更新する処理と、前記編集領域に対する新たな土地利用データの入力を受け付け、与えられた新たな土地利用データに前記編集領域内の土地利用データを更新する処理と、更新された土地利用データを、地表面と風との摩擦の程度を示すパラメータである粗度データに変換する処理とを実行させることを特徴とする(請求項10)。
【0020】
上記構成において、前記編集領域を選定する操作を受け付けるにあたり、前記所定範囲の地域の航空写真に基づき得られた写真画像データ若しくは土地改良部位が描かれた図面に基づき得られた図面画像データを前記記憶手段から読み出す処理と、前記編集元画像と、前記写真画像データ若しくは図面画像データに基づく更新画像とを位置合わせして重畳表示させる処理と、重畳表示された画像上で編集領域を選定する操作を受け付ける処理と
を実行させることが望ましい(請求項11)。
【0021】
また、上記構成において、前記標高データを更新する処理として、平坦な土地を編集領域とし、該編集領域内を同じ標高に改訂する第1フィット処理、及び/又は、法面を編集領域とし、該編集領域内を所定の傾斜条件で傾斜した標高に改訂する第2フィット処理を実行させることが望ましい(請求項12)。
【0022】
さらに、上記構成において、前記標高データを更新する処理として、道路に相当する線状領域を編集領域とし、該編集領域内を道路の勾配情報を参照して線状平面の標高に改訂する第3フィット処理と、前記線状平面の標高と、その周辺部位の標高とを参照して、前記線状平面に連接して生成される法面領域を設定し、該法面領域内を所定の傾斜条件で傾斜した標高に改訂する第4フィット処理とを行わせることが望ましい(請求項13)。
【発明の効果】
【0023】
本発明に係る風況解析のための地図情報データの編集方法、システム及びプログラムによれば、地図画像である編集元画像上で選定される編集領域単位で、新たな標高データ及び土地利用データを更新することができる。従って、土地の利用状況が変わったとしても、標高データや土地利用データを簡単に改訂編集することができ、その後の風況解析を的確に行なわせることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、図面に基づいて本発明の実施形態につき詳細に説明する。
[風況解析手順の説明]
本発明の具体的実施形態を説明する前に、本発明に係る地図情報データの編集方法を用いた風況解析の手順を、図1のフローチャートに基づいて説明する。ここでは、上掲のLAWEPSやMASCOT等の風況解析システムを用い、パーソナルコンピュータにて風況解析を行う場合を想定して説明する。
【0025】
まず、例えば風力発電設備の建設候補地のような、ミクロ的な風況解析を行う地域が特定される(ステップ#1)。LAWEPSやMASCOT等では、風況解析を行う地域の正確な標高データ及び粗度データを導出するための土地利用データが必要となるため、当該特定された地域の地形データと共に、標高データ及び土地利用データがパーソナルコンピュータに導入される(ステップ#2)。この標高データ及び土地利用データとしては、国土地理院が提供している50mメッシュ標高データ及び100mメッシュ土地利用データ、若しくは市販の10mメッシュ標高データを用いることができる。なお、メッシュ標高データは、その地点の標高を示した数値データである。また、土地利用データは、「田」、「農用地」、「森林」、「荒地」、「建物用地」、「幹線交通用地」、「河川地及び湖沼」、「海浜」、「海水域」、「ゴルフ場」・・・等の土地利用区分に応じて与えられた所定の数値データである。
【0026】
ここで、当該特定された地域において、導入されたメッシュ標高データ及び土地利用データの計測日以降、土地利用状況に大きな変化が無い場合は、そのままLAWEPSやMASCOT等を実行させればよい。しかし、土地造成や海面埋め立て、或いは道路建設等が行われている場合は、その地形変化後の値にメッシュ標高データ及び土地利用データを改訂しないと、現状に即した風況解析を行うことができない。そこで、土地利用状況の変化に合わせて、標高データ及び土地利用データを編集する作業が行われる(ステップ#3)。かかる作業により、前記特定された地域の新たな標高データ及び土地利用データが生成される(ステップ#4)。
【0027】
従来、上記標高データ及び土地利用データの編集においては、各メッシュの数値を地形変化後の値に逐一手作業で更新する手法が取られていた。しかし、この手法によれば、膨大な量のメッシュデータ更新作業が必要になると共に、データとしてのメッシュ数値マップと実際の地形上のメッシュポイントとの整合が容易ではなく、極めて作業性が悪いという問題があった。かかる問題に鑑み、例えば地形図と航空写真(又は工事図面)とを用いて、標高データ及び土地利用データの編集作業を容易に行うことができる、本発明に係る地図情報データの編集方法が案出されたものである。
【0028】
標高データ及び土地利用データが地形変化後の値に書き換えられたならば、LAWEPSやMASCOT等がパーソナルコンピュータ上でロードされ、その地域のミクロ風況解析の演算が行われる(ステップ#5)。これにより、当該地域の風況予測結果が得られる(ステップ#6)。この風況予測結果は、例えば予測平均風速の強さを、レンジ別に色分けして地形図に重畳表示してなるものであり、当該地域が風力発電設備の建設候補地としての適正を有するか否かの検討資料として利用される。以下、本発明の実施形態に係る地図情報データの編集方法について説明する。
【0029】
[地図情報データの編集方法の説明]
<1.平面フィット処理>
まず、平坦な土地を編集領域とし、該編集領域内を同じ標高に改訂する平面フィット処理(第1フィット処理)について説明する。図2は、風況解析が実行されようとしている地域の地図情報データ画像Mを示している。ここでは、陸11、海12、川13、砂洲14及び埋立地15が存在している地形を例示している。この地図情報データ画像Mには、図中の囲み円Maの部分を下方に拡大して示しているように、例えば10m×10mのメッシュセルMpに区画されて標高データが与えられ、当該地域の地形が表現されている。なお、土地利用データは、100m×100mのメッシュセル程度の分解能で与えられている。ここで、砂洲14は「森林」としての土地利用データが与えられているものとする。
【0030】
一方、図3は、当該地域を上空から撮影した直近の航空写真画像Fを示している。ここでは、図2の地図情報データ画像Mには未だ反映されていない新埋立地16が造成されているケースを例示している。また、砂洲14が、木草が生い茂っている状態から平地に整地されたものとする。すなわち、図2に示す地図情報データ画像Mにおけるメッシュ標高データ及び土地利用データの計測日以降、海12の一部が新埋立地16に、また砂洲14が森林から平地(荒地)に、それぞれ土地利用状況が変化したものとする。
【0031】
上記地図情報データ画像M及び航空写真画像Fが準備されたなら、地図情報データ画像Mを編集元画像とし、航空写真画像Fを参照して、その標高データ及び土地利用データの改訂を行うべき編集領域を選定する作業が行われる。この編集領域の選定のため、地図情報データ画像M上に航空写真画像Fを位置合わせして重畳表示(透視表示)させるようにする。図4は、地図情報データ画像Mと航空写真画像Fとの重畳表示画像MFを示している。これにより、地図情報データ画像Mにおいて新埋立地16の位置が明らかとなる。なお、航空写真画像Fに代えて、工事図面(造成地等が描かれた図面)を、例えばビットマップ形式の画像データとしたものを用いるようにしても良い。
【0032】
続いて、図5に示すように、土地利用状況が変化した領域が重畳表示画像MF上において選定される。ここでは、新埋立地16の輪郭に相当する編集領域R1と、砂洲14の輪郭に相当する編集領域R2が選定されることとなる。実際のパーソナルコンピュータ上では、マウスのクリック操作により編集領域R1、R2のラインを描画し、そのラインで囲まれた領域内のメッシュセルにつき、標高データ及び土地利用データを書き換え可能な状態にする処理が行われる。
【0033】
そして、編集領域R1、R2のメッシュセルに対して新たな標高データと土地利用データとを与え、当該編集領域R1、R2に存在する標高データ及び土地利用データを更新する処理が行われる。ここでは、新埋立地16及び砂洲14の双方が平地(荒地)に土地利用区分が変更されているので、編集領域R1、R2内を全て同じ標高値に変更すると共に、土地利用データを「荒地」と変更する処理が一括して行われる。かかる処理により、図6に示すように、地図情報データ画像Mに備えられていた標高データ及び土地利用データが、土地利用状況が変化に応じて更新されるものである。
【0034】
上記土地利用データは、そのままではLAWEPSやMASCOT等の風況解析システムに用いることができない。そこで、予め準備されている変換テーブルを用い、更新された土地利用データを、地表面と風との摩擦の程度を示すパラメータである粗度データに変換する処理が行われる。以上により、平面フィット処理は終了する。
【0035】
<2.面フィット処理>
次に、法面を編集領域とし、該編集領域内を所定の傾斜条件で傾斜した標高に改訂する面フィット処理(第2フィット処理)について説明する。この面フィット処理は、上記で説明した平地に対する平面フィット処理が実行された後に、異なる標高の平面の境界間に形成されるであろう法面を演算により求め、求められた法面に応じた標高値に、対応するメッシュセルの標高データを書き換える処理である。
【0036】
図7に示すように、ここでは図中一点鎖線で示す山林2が造成され、造成地20が形成されたが、この造成地20の存在がまだ地図情報データに反映されていないケースを想定する。造成地20は、互いに標高が異なる平地21a、21b、21c、21dと、これらの間に形成された法面22a、22b、22cとを含むものとする。
【0037】
この場合、図8に示すように、まず平地21a、21b、21c、21dのエリアを編集領域として、上述の平面フィット処理が実行され、新たな標高値が取得される。平地21a、21b、21c、21dの領域並びに標高値が特定されると、これらの間に存在する法面22a、22b、22cの各々の傾斜を演算により求めることが可能となる。このようにして求められた傾斜に基づき、法面22a、22b、22cの領域に存在するメッシュセルの各標高値が算出される。これが面フィット処理である。
【0038】
従って、例えば図8に示す矩形領域が編集領域として選ばれた場合、先に求められている平地21a、21b、21c、21dの領域並びに標高値を参照して、法面22a、22b、22cの領域の標高値が導出される。比喩的に言うと、編集領域として選定された領域に「膜」を張るような斜面を生成する処理が面フィット処理である。なお、平面フィット処理を前置せず、法面22a、22b、22cの領域のみを編集領域として選定し、法面傾斜角を算出条件として与えることで、各法面22a、22b、22cの領域の標高値を導出するようにしても良い。
【0039】
<3.道路造成処理>
続いて、道路造成処理について説明する。この道路造成処理は、道路に相当する線状領域を編集領域とし、該編集領域内を道路の勾配情報を参照して線状平面の標高に改訂する線フィット処理(第3フィット処理)と、前記線状平面の標高と、その周辺部位の標高とを参照して、前記線状平面に連接して生成される法面領域(切り土又は盛り土の部分)を設定し、該法面領域内を所定の傾斜条件で傾斜した標高に改訂する道路法面フィット処理(第4フィット処理)とからなる。
【0040】
図9及び図10は、地図情報データ画像Mb上で実行される線フィット処理の一例を示す図である。まず、図9に示すように、造成された(造成が予定されている)道路のルートに沿って、マウスのクリック操作等により地図情報データ画像Mb上に道路線形Sを入力する。道路線形Sは道路幅員の中心線に沿って描かれる。なお、図中の丸印は道路曲線の変化点を示しており、道路線形Sはスタート地点から変化点で道路曲線に応じて折曲しながら、エンド地点まで一連のラインとして描かれる。このとき、変化点毎に道路の標高データが与えられる。
【0041】
次に、当該道路の幅員データが与えられ、図10に示すように、道路線形Sを中心線とする線状平面S1が生成される。例えば、幅員データ=6mの情報が与えられた場合、道路線形Sを中心線とした幅員6mの線状平面S1が地図情報データ画像Mb上で生成される。当該線フィット処理においては、この線状平面S1が標高データ及び土地利用データの編集領域として選定された領域となる。
【0042】
この線状平面S1に対応するメッシュセルに、新たな土地利用データが与えられる。この場合、道路面であるので「幹線交通用地」の土地利用データに更新される。一方、標高データについては、道路の変化点毎に与えられた標高データに基づき、変化点間の勾配が演算により求められ、これにより線状平面S1全長の標高データが導出され、当該線状平面S1に該当するメッシュセルの標高データが更新される。
【0043】
続いて、道路法面フィット処理が実行される。この道路法面フィット処理は、図11に示すように、道路に対応する線状平面S1に連接して生成される法面S2を自動的に生成する処理である。ここでは、山林23が造成され(符号231は造成部分を示す)、道路の線状平面S1の両側に切り土により形成された法面S2が設けられている例を示している。
【0044】
道路法面フィット処理に際しては、法面の幅と角度の情報が与えられる。そして、既に導出されている線状平面S1の標高データと、山林23の造成部分231周辺の標高とを参照して、与えられた法面の幅と角度に基づき、法面S2が地図情報データ画像Mb上で生成される。当該道路法面フィット処理においては、この法面S2が標高データ及び土地利用データの編集領域として選定された領域となる。
【0045】
この法面S2に対応するメッシュセルに、新たな土地利用データが与えられる。この場合、「荒地」の土地利用データに更新される。また、与えられた法面の幅と角度に基づき、法面S2の標高データが導出され、当該法面S2に該当するメッシュセルの標高データが更新されるものである。以上が道路造成処理である。
【0046】
[地図情報データの編集システムの説明]
次に、図12〜図20に基づいて、上述の地図情報データの編集方法を実現するための編集システム30の具体例を説明する。図12は、地図情報データの編集システム30のハード構成を示すブロック図である。この編集システム30は、データ入力部31、CPU(Central Processing Unit)32、操作部33、表示部34、ROM(Read Only Memory)35及びRAM(Random Access Memory)36を備えて構成されている。かかる編集システム30としては、マウス及びキーボード(操作部33)、ディスプレイ(表示部34)、データインターフェイス(データ入力部31)を備えるパーソナルコンピュータを好適に用いることができる。
【0047】
データ入力部31は、外部のデータベースやCD−ROMリーダー等から、地形図データ、メッシュ標高データ、メッシュ土地利用データ、航空写真データ或いは工事図面データを、電子データの形態で編集システム30に導入するためのものである。データ入力部31を介して導入された各種データは、RAM36に一時的に格納される。
【0048】
CPU32は、各種の演算処理を行うものであり、ROM35に格納されている動作プログラムを読み出すことにより、地図情報データの編集のための操作受付処理、演算処理、表示処理などを適宜実行する。このCPU32の機能については、図13に基づき後記で詳述する。
【0049】
操作部33は、ユーザからの各種操作情報を受け付けるためのものである。本実施形態において操作部33で受け付けられる操作は、地図情報データ画像Mと航空写真画像Fとの位置合わせ操作(図3参照)、編集領域の選定操作(図4、図8、図9)、新たな標高データ及び土地利用データの入力、道路の幅員データ、法面の幅と角度データの入力などである。
【0050】
表示部34は、地図情報データに基づく地図情報データ画像Mを編集元画像として表示する。この表示部34に表示される編集元画像上で、操作部33からの前記位置合わせ操作、編集領域の選定操作等が受け付けられる。
【0051】
ROM35は、各種の制御プログラムや設定情報の他、地図情報データの編集システム30を動作させるための動作プログラムを格納するものである。RAM36は、各種データを一時的に保管するためのものである。
【0052】
図13は、CPU32及びRAM36の機能構成を示す機能ブロック図である。RAM36は、機能的に、地図データ記憶部361(第1記憶手段)、粗度変換テーブル記憶部362(第2記憶手段)及び画像データバッファ363を備えている。また、CPU32は、ROM35に格納されている動作プログラムを読み出して実行することにより、領域選定処理部41、表示制御部42及び編集処理部43を有するように機能する。
【0053】
地図データ記憶部361は、データ入力部31を介して外部のデータベースやCD−ROMリーダー等から導入された、編集を行うべき所定範囲の地域の地形図データ、メッシュ標高データ及びメッシュ土地利用データを一時的に記憶するものである。
【0054】
図14は、この地図データ記憶部361に格納されるメッシュ標高データの一例を示す図である。このように、メッシュ標高データは、例えば10m×10mのメッシュ毎にその標高を示す10cm単位の数値が与えられた数値マップ形式のデータである。メッシュ土地利用データも同様であり、土地の利用状況を数値化した数値マップ形式のデータとして地図データ記憶部361に格納される。
【0055】
粗度変換テーブル記憶部362は、土地利用データを、地表面と風との摩擦の程度を示すパラメータである粗度データに変換するためのテーブルを記憶する。上述の通り、風況解析システムでは、地表面を流れる風を流体力学の手法を用いて解析することから、地表面の粗度が重要なパラメータとなる。しかし、汎用データとして入手できるものは現状では土地利用データであるので、この土地利用データを粗度データに変換する必要がある。そこで、粗度変換テーブル記憶部362に、各カテゴリの土地利用データの数値を粗度を示す数値に変換するための変換テーブルを記憶させるようにし、編集処理部43にて更新された土地利用データを粗度データに変換可能としている。
【0056】
画像データバッファ363は、データ入力部31を介して導入された、対象地域の航空写真画像データ若しくは土地改良部位が描かれた図面に基づき得られた図面画像データを一時的に記憶する。画像データバッファ363に格納された画像データは、編集領域の選定の際に読み出される。
【0057】
領域選定処理部41は、地図データ記憶部361から地図情報データを読み出し、その地図情報データ画像を編集元画像として表示部34に表示させ、標高データ及び土地利用データの改訂を行うべき編集領域を選定する操作を操作部33から受け付ける。そして、操作部33により選定された編集領域についての前記標高データ及び土地利用データを、書き換え可能な状態とする処理を行う。
【0058】
表示制御部42は、操作部33による編集領域の選定を行わせるために、画像データバッファ363から航空写真画像データ若しくは図面画像データを読み出し、編集元画像と、航空写真画像データ若しくは図面画像データに基づく更新画像とを位置合わせ可能に表示部34へ重畳表示させる制御を行う。
【0059】
図15は、このような画像の位置合わせの際に表示制御部42によって表示部34へ表示される画像の一例を示している。図15において、左側は地図データ記憶部361から読み出された地形図データに基づく地形画像51(編集元画像)、右側は画像データバッファ363から読み出されたビットマップ形式の工事図面画像52である。位置合わせは、両画像51、52の特徴点を2点以上一致させて重ね合わせ表示させることで達成できる。図15の拡大画像51a、52aに示しているように、例えば街路の交差点を目標物(特徴点)とすることができる。このような特徴点を少なくとももう一点探すようにする。
【0060】
これら複数の特徴点が重なり合うように、地形画像51上へ工事図面画像52重ね合わせることで、図16に示すように、地形画像51の所定部位に工事図面画像52が嵌め込まれた重畳表示画像を得ることができる。この重畳表示画像は、先に図4に示した重畳表示画像MFに相当するものである。なお、工事図面画像52の嵌め込み位置の微調整を、マウスのドラッグ操作で行えるようにすることが望ましい。
【0061】
図17は、操作部33による編集領域の選定作業の一例を示す図である。図17(a)に示すように、前記重畳表示画像で判明した土地利用状況が変化した領域の輪郭に沿うように、マウスのクリック操作によりライン53を描画する。ここでは、略五角形の領域を選定する例を示している。上述した平面フィット処理の場合は、造成された平地を囲むようにライン53を描画する。面フィット処理の場合は、複数の平地及びこれら平地間の地域を囲むようにライン53を描画する。一方、道路造成処理における線フィット処理の場合は、道路のルートに沿ったライン53を描画する(図9参照)。
【0062】
このようなライン53が描画されると、図17(b)に示すように、該ライン53により囲まれた領域に存在するメッシュセル群54がアクティブ化される。すなわち、これらメッシュセル群54についての標高データ及び土地利用データが書き換え可能な状態とされ、編集領域が選定されるものである。
【0063】
編集処理部43は、操作部33から与えられる新たな標高データ及び土地利用データに、編集領域内(メッシュセル群54)の標高データ及び土地利用データを更新する。さらに編集処理部43は、粗度変換テーブル記憶部362の変換テーブルに基づき更新された土地利用データを粗度データに変換する処理を行う。この編集処理部43は、図13に示すように、平面フィット処理部431(第1フィット処理部)、面フィット処理部432(第2フィット処理部)、線フィット処理部433(第3フィット処理部)、道路法面フィット処理部434(第4フィット処理部)及びデータ書換処理部435を備えている。
【0064】
平面フィット処理部431は、上記平面フィット処理を実行するためのもので、平坦な土地を編集領域とし、該編集領域内に存在するメッシュ標高データ及び土地利用データを、操作部33から入力される単一の標高値、土地利用値に各々改訂する処理を行う。
【0065】
図18は、メッシュ標高データ及び土地利用データの入力を受け付ける入力画面55の一例である。この入力画面55には、標高値を数値として入力する標高値入力部551と、土地利用区分をプルダウン表示の中から選択して入力する土地利用区分入力部552と、入力されたデータに元データを更新する処理を実行させるための更新実行ボタン553とを備えている。例えば図17(b)に示すメッシュセル群54が編集領域として選定されている状態において図18のような入力が行われた場合、メッシュセル群54の標高値は一律「20m」に更新されると共に、土地利用区分は「荒地」に更新されることとなる。
【0066】
面フィット処理部432は、上記面フィット処理を実行するためのもので、法面を編集領域とし、該編集領域内のメッシュ標高データを所定の傾斜条件で傾斜した標高値に各々改訂する処理を行う。面フィット処理部432は、編集領域内において、平面フィット処理部431による平面フィット処理で得られた複数の平地の標高データを参照して、平地の境界間に形成される法面を演算により求める。そして、求められた法面に応じた標高値に、対応するメッシュセルの標高データを更新する。また、面フィット処理部432は、当該法面の土地利用データの入力を受け付け、操作部33から入力された土地利用区分に当該法面に対応するメッシュセルの土地利用データを更新する。
【0067】
線フィット処理部433は、上記道路造成処理の面フィット処理を実行するためのものである。具体的には線フィット処理部433は、操作部33から与えられる道路の幅員データと道路線形S(図9参照)、さらに道路の変化点毎に与えられた標高データから、線状平面S1(図10参照)全長の標高データを求める処理を行う。そして線状平面S1に該当するメッシュセルの標高データを更新する。また、線フィット処理部433は、操作部33から線状平面S1の土地利用データの入力を受け付け、操作部33から入力された土地利用区分に当該線状平面S1に対応するメッシュセルの土地利用データを更新する。
【0068】
図19は、線フィット処理部433に対する入力を受け付ける入力画面57の一例である。この入力画面57には、道路幅員を数値として入力する道路幅員入力部571と、土地利用区分をプルダウン表示の中から選択して入力する土地利用区分入力部572と、入力されたデータに基づき線フィット処理部433に上述の演算処理を実行させるための更新実行ボタン573とを備えている。
【0069】
道路法面フィット処理部434は、上記道路法面フィット処理を実行するためのものである。道路法面フィット処理部434は、線フィット処理部433により道路に相当する線状平面S1全長の標高データが求められた後に、操作部33から与えられる法面の幅と角度の情報と、道路部位の標高値とを参照して、線状平面S1に連接する法面領域S2(図11参照)を設定し、該法面の傾斜に応じた標高値を演算により求める処理を行う。そして法面領域S2に該当するメッシュセルの標高データを更新する。また、道路法面フィット処理部434は、操作部33から法面領域S2の土地利用データの入力を受け付け、操作部33から入力された土地利用区分に当該法面領域S2に対応するメッシュセルの土地利用データを更新する。
【0070】
図20は、道路法面フィット処理部434に対する入力を受け付ける入力画面58の一例である。この入力画面58には、法面の幅を数値として入力する法面幅入力部581と、法面の角度を切り土又は盛り土の別に数値として入力する法面角度入力部582と、土地利用区分をプルダウン表示の中から選択して入力する土地利用区分入力部583と、入力されたデータに基づき道路法面フィット処理部434に上述の演算処理を実行させるための更新実行ボタン584とを備えている。
【0071】
データ書換処理部435は、地図データ記憶部361に格納されている標高データ及び土地利用データを、上述の平面フィット処理部431、面フィット処理部432、線フィット処理部433及び道路法面フィット処理部434により得られた新たな標高データ及び土地利用データに書き換える処理を行う。また、データ書換処理部435は、新たな土地利用データを、粗度変換テーブル記憶部362を参照して粗度データに変換し、該粗度データを地図データ記憶部361に書き込む処理を行う。
【0072】
以上の通り構成された編集システム30によれば、地図画像である編集元画像上で選定される編集領域単位で、新たな標高データ及び土地利用データを更新することができ、メッシュセル単位でのデータ更新は不要となる。従って、土地の利用状況が変わったとしても、標高データや土地利用データを簡単に改訂編集することができ、その後の風況解析を的確に行なわせることができる。なお、風況解析に際しては、地図データ記憶部361に格納されている更新後の標高データ及び土地利用データが読み出され、風況解析に供される。ここで、ROM35にLAWEPSやMASCOT等の風況解析実行プログラムを格納しておけば、この編集システム30において風況解析まで実行させることができる。
【0073】
[動作フローの説明]
続いて、上記編集システム30の動作フローについて、図21〜図23のフローチャートに基づき説明する。ここでは、データ入力部31(図12)を介して、地形図データ、メッシュ標高データ、メッシュ土地利用データ、航空写真データ或いは工事図面データが既に編集システム30へ導入されているものとする。
【0074】
処理が開始されると、先ず地図データ記憶部361から、メッシュ標高データ及びメッシュ土地利用データを含む地図情報データが、領域選定処理部41により読み出される(ステップS11)。また、画像データバッファ363から、対象地域の航空写真画像データ(若しくは工事図面画像データ)が読み出される(ステップS12)。そして、表示制御部42により、地図情報データ(編集元画像)と航空写真画像データとが、表示部34に重畳表示される(ステップS13)。
【0075】
次いで、操作部33により「平面フィット処理」の実行が選択されているか否かが確認され(ステップS14)、これが選択されている場合は(ステップS14でYES)、図17に示したように、領域選定処理部41は操作部33から新たに造成された平地を編集元画像上で囲む描画操作を受け付け、編集領域を特定させる(ステップS15)。そして、平面フィット処理部431は、図18に示したような入力画面55をユーザに提示して、操作部33から標高値及び土地利用区分の入力を受け付ける(ステップS16)。
【0076】
その後、「面フィット処理」の実行が選択されているか否かが確認される(ステップS17)。これが選択されていない場合(ステップS17でNO)、平面フィット処理部431は、データ書換処理部435にデータ更新の指示を与える。これを受けてデータ書換処理部435は、新たに与えられた土地利用データを、粗度変換テーブル記憶部362を参照して粗度データに変換する(ステップS18)。その上でデータ書換処理部435は、地図データ記憶部361に格納されている標高データ及び土地利用データを書き換えると共に、粗度データも書き換える(ステップS19)。なお、「面フィット処理」の実行が選択されている場合は(ステップS17でYES)、面フィット処理(ステップS20)を実行した上でステップS18が実行される。
【0077】
図21は、面フィット処理の詳細を示すフローチャートである。先ず、領域選定処理部41により、複数の平地及びこれら平地間の地域(法面)を囲むような編集領域の選定操作が受け付けられる(ステップS21)。そして、面フィット処理部432により法面の土地利用データの入力が受け付けられる(ステップS22)。また、面フィット処理部432は、前記平面フィット処理で得られた複数の平地の標高データを参照して、平地の境界間に形成される法面を演算により求め(ステップS23)、当該法面の標高値を導出する(ステップS24)。
【0078】
操作部33により「平面フィット処理」の実行が選択されていない場合(ステップS14でNO)、次に「道路造成フィット処理」の実行が選択されているか否かが確認される(ステップS141)。これが選択されていない場合(ステップS141でNO)、処理が終了される。一方、「道路造成フィット処理」の実行が選択されている場合は(ステップS141でYES)、道路造成フィット処理(ステップS30)を実行した上でステップS18が実行される。
【0079】
図22は、道路造成フィット処理の詳細を示すフローチャートである。先ず、領域選定処理部41により、操作部33から道路の線形の入力(ステップS31)、道路の幅員の入力(ステップS32)が受け付けられ、編集領域としての線状平面S1(図10参照)が特定される。
【0080】
続いて、線フィット処理部433により、道路曲線の変化点(図9参照)毎の標高データ、土地利用データの入力が受け付けられる(ステップS33)。そして線フィット処理部433により、道路の幅員データと道路線形、さらに道路の変化点毎に与えられた標高データから、前記線状平面S1全長の標高データを求める演算が実行され(ステップS34)、当該線状平面S1の標高値が取得される(ステップS35)。
【0081】
その後、道路法面フィット処理部434により、図20に示すような入力画面58がユーザに提示され、法面の幅と角度に関する数値データの入力が受け付けられる(ステップS36)。道路法面フィット処理部434は、法面の幅と角度の情報と、道路部位の標高値とを参照して、線状平面S1に連接する法面領域S2(図11参照)を設定する演算を行い(ステップS37)、該法面の傾斜に応じた標高値を取得する(ステップS38)。以後、ステップS18に戻り、データの更新処理が行われる。
【0082】
[変形実施形態の説明]
以上、本発明の実施形態につき説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば下記[1]〜[3]の変形実施形態を取ることができる。
【0083】
[1]上述したように、標高データについては10mメッシュ程度の分解能のデータが現状でも容易に入手できる。しかし、土地利用データについては100mメッシュ程度の粗い分解能のデータである。そこで、編集処理部43に、地図データ記憶部361に格納されている土地利用データのメッシュ単位を100mメッシュから10mメッシュ程度に細分化した上で、土地利用データの更新並びに粗度データへ変換させる機能を具備させることが望ましい。これにより、一層細やかな風況解析を行なわせることが可能となる。
【0084】
[2]上述した実施形態では、編集領域をマウスのクリック操作で多角形的に選定する例を示した。これに加えて、メッシュセル単位での選定、拡縮自在な定型の矩形領域単位で編集領域を選定できるようにすることが望ましい。
【0085】
[3]本発明にかかる実施品の提供形態として、上述の編集システム30としてではなく、該これらのシステムが行う処理を実行する動作プログラムとして提供することもできる。このようなプログラムは、コンピュータに付属するフレキシブルディスク、CD−ROM、ROM、RAMおよびメモリカードなどのコンピュータ読取り可能な記録媒体にて記録させて、プログラム製品として提供することもできる。若しくは、図12に示すROM35に記録させて、プログラムを提供することもできる。また、ネットワークを介したダウンロードによって、プログラムを提供することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0086】
【図1】本発明に係る地図情報データの編集方法を用いた風況解析の手順を示すフローチャートである。
【図2】風況解析が実行されようとしている地域の地図情報データ画像Mを示す平面図である。
【図3】上記地域を上空から撮影した直近の航空写真画像Fを示す平面図である。
【図4】地図情報データ画像Mと航空写真画像Fとの重畳表示画像MFを示す平面図である。
【図5】重畳表示画像MF上での編集領域の選定作業を説明するための平面図である。
【図6】編集完了後の地図情報データ画像Mを示す平面図である。
【図7】面フィット処理の手法を説明するための断面説明図である。
【図8】面フィット処理の手法を説明するための平面説明図である。
【図9】地図情報データ画像Mb上で実行される線フィット処理の一例を示す平面図である。
【図10】地図情報データ画像Mb上で実行される線フィット処理の一例を示す平面図である。
【図11】道路法面フィット処理の一例を示す平面図である。
【図12】本発明の実施形態に係る地図情報データの編集システムのハード構成を示すブロック図である。
【図13】CPU32及びRAM36の機能構成を示す機能ブロック図である。
【図14】地図データ記憶部361に格納されるメッシュ標高データの一例を示す説明図である。
【図15】画像の位置合わせの際に表示部へ表示される画像の一例を示す平面図である。
【図16】地形画像51の所定部位に工事図面画像52が嵌め込まれた重畳表示画像の一例を示す平面図である。
【図17】操作部による編集領域の選定作業の一例を示す図である。
【図18】メッシュ標高データ及び土地利用データの入力を受け付ける入力画面の一例を示す平面図である。
【図19】線フィット処理部に対する入力を受け付ける入力画面の一例を示す平面図である。
【図20】道路法面フィット処理部に対する入力を受け付ける入力画面の一例を示す平面図である。
【図21】本発明の実施形態に係る地図情報データの編集システムの全体的な動作フローを示すフローチャートである。
【図22】面フィット処理フローを示すフローチャートである。
【図23】道路造成処理フローを示すフローチャートである。
【図24】地表面の状態と風況との関係を模式的に示す図である。
【符号の説明】
【0087】
30 編集システム
31 データ入力部
32 CPU
33 操作部(入力手段)
34 表示部(表示手段)
35 ROM
36 RAM
361 地図データ記憶部(第1記憶手段)
362 粗度変換テーブル記憶部
363 画像データバッファ(第2記憶手段)
41 領域選定処理部(領域選定手段)
42 表示制御部
43 編集処理部(編集処理手段)
431 平面フィット処理部(第1フィット処理部)
432 面フィット処理部(第2フィット処理部)
433 線フィット処理部(第3フィット処理部)
434 道路法面フィット処理部(第4フィット処理部)
435 データ書換処理部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定範囲の地域について、予め求められている標高データ及び土地の利用状況を数値化した土地利用データを含む地図情報データを所定のデータベースから読み出し、この地図情報データに基づく地図画像を編集元画像として表示させるステップと、
前記編集元画像上において、前記標高データ及び土地利用データの改訂を行うべき編集領域を選定するステップと、
前記編集領域に対して新たな標高データを与え、当該編集領域の標高データを更新するステップと、
前記編集領域に対して新たな土地利用データを与え、当該編集領域の土地利用データを更新するステップと、
更新された土地利用データを、地表面と風との摩擦の程度を示すパラメータである粗度データに変換するステップと
を含むことを特徴とする風況解析のための地図情報データの編集方法。
【請求項2】
前記編集領域を選定するステップは、
前記編集元画像と、前記所定範囲の地域の航空写真に基づき得られた写真画像若しくは土地改良部位が描かれた図面に基づき得られた図面画像とを重畳表示させるステップを含むことを特徴とする請求項1に記載の風況解析のための地図情報データの編集方法。
【請求項3】
前記標高データを更新するステップとして、
平坦な土地を編集領域とし、該編集領域内を同じ標高に改訂する第1フィット処理、及び/又は、
法面を編集領域とし、該編集領域内を所定の傾斜条件で傾斜した標高に改訂する第2フィット処理が行われることを特徴とする請求項1に記載の風況解析のための地図情報データの編集方法。
【請求項4】
前記標高データを更新するステップとして、
道路に相当する線状領域を編集領域とし、該編集領域内を道路の勾配情報を参照して線状平面の標高に改訂する第3フィット処理と、
前記線状平面の標高と、その周辺部位の標高とを参照して、前記線状平面に連接して生成される法面領域を設定し、該法面領域内を所定の傾斜条件で傾斜した標高に改訂する第4フィット処理とが行われることを特徴とする請求項1に記載の風況解析のための地図情報データの編集方法。
【請求項5】
所定範囲の地域について、予め求められている所定のメッシュ単位の標高データ及び土地の利用状況を数値化した土地利用データを含む地図情報データを記憶する第1記憶手段と、
前記土地利用データを、地表面と風との摩擦の程度を示すパラメータである粗度データに変換するためのテーブルを記憶する第2記憶手段と、
前記地図情報データに基づく地図画像を編集元画像として表示する表示手段と、
前記編集元画像上において、前記標高データ及び土地利用データの改訂を行うべき編集領域を選定する操作を受け付け、選定された編集領域についての前記標高データ及び土地利用データを書き換え可能な状態とする領域選定手段と、
前記編集領域に対する新たな標高データ及び土地利用データの入力を受け付ける入力手段と、
前記入力手段から与えられた新たな標高データに前記編集領域内の標高データを更新すると共に、新たな土地利用データに前記編集領域内の土地利用データを更新し、さらに前記第2記憶手段のテーブルに基づき更新された土地利用データを粗度データに変換する処理を行う編集処理手段とを具備することを特徴とする地図情報データの編集システム。
【請求項6】
前記領域選定手段は、
前記所定範囲の地域の航空写真に基づき得られた写真画像データ若しくは土地改良部位が描かれた図面に基づき得られた図面画像データを読み出して記憶する画像データバッファと、
前記編集元画像と、前記写真画像データ若しくは図面画像データに基づく更新画像とを位置合わせして重畳表示させる表示制御部と、
重畳表示された画像上で編集領域を選定する操作を可能とする操作部と
を含むことを特徴とする請求項5に記載の地図情報データの編集システム。
【請求項7】
前記編集処理手段は、
平坦な土地を編集領域とし、該編集領域内のメッシュ標高データを前記入力手段から入力された単一の標高値に各々改訂する第1フィット処理部と、
法面を編集領域とし、該編集領域内のメッシュ標高データを所定の傾斜条件で傾斜した標高値に各々改訂する第2フィット処理部と
を含むことを特徴とする請求項5に記載の地図情報データの編集システム。
【請求項8】
前記編集処理手段は、
道路に相当する線状領域を編集領域とし、該編集領域内のメッシュ標高データを、前記入力手段から与えられる道路のポイント標高値から算出した勾配情報に基づき線状平面の標高値に改訂する第3フィット処理部と、
前記線状平面の標高値と、その周辺部位の標高値とを参照して、前記線状平面に連接して生成される法面領域を設定し、該法面領域内のメッシュ標高データを、所定の傾斜条件で傾斜した標高値に改訂する第4フィット処理部と
を含むことを特徴とする請求項5に記載の地図情報データの編集システム。
【請求項9】
前記編集処理手段は、
前記第1記憶手段に格納されている土地利用データのメッシュ単位を細分化した上で、土地利用データの更新並びに粗度データへの変換が実行可能とされていることを特徴とする請求項5〜8のいずれかに記載の地図情報データの編集システム。
【請求項10】
画像を表示する表示手段、データを記憶する記憶手段及びデータの編集処理を実行可能な処理手段を含む地図情報データの編集システムのためのプログラムであって、
前記処理手段に、
所定範囲の地域について、予め求められている標高データ及び土地の利用状況を数値化した土地利用データを含む地図情報データを前記記憶手段から読み出させる処理と、
前記地図情報データに基づく地図画像を編集元画像として前記表示手段に表示させる処理と、
前記編集元画像上において、前記標高データ及び土地利用データの改訂を行うべき編集領域を選定する操作を受け付け、選定された編集領域についての前記標高データ及び土地利用データを書き換え可能な状態とする処理と、
前記編集領域に対する新たな標高データの入力を受け付け、与えられた新たな標高データに前記編集領域内の標高データを更新する処理と、
前記編集領域に対する新たな土地利用データの入力を受け付け、与えられた新たな土地利用データに前記編集領域内の土地利用データを更新する処理と、
更新された土地利用データを、地表面と風との摩擦の程度を示すパラメータである粗度データに変換する処理と
を実行させることを特徴とする地図情報データの編集プログラム。
【請求項11】
前記編集領域を選定する操作を受け付けるにあたり、
前記所定範囲の地域の航空写真に基づき得られた写真画像データ若しくは土地改良部位が描かれた図面に基づき得られた図面画像データを前記記憶手段から読み出す処理と、
前記編集元画像と、前記写真画像データ若しくは図面画像データに基づく更新画像とを位置合わせして重畳表示させる処理と、
重畳表示された画像上で編集領域を選定する操作を受け付ける処理と
を実行させることを特徴とする請求項10に記載の地図情報データの編集プログラム。
【請求項12】
前記標高データを更新する処理として、
平坦な土地を編集領域とし、該編集領域内を同じ標高に改訂する第1フィット処理、及び/又は、法面を編集領域とし、該編集領域内を所定の傾斜条件で傾斜した標高に改訂する第2フィット処理を実行させることを特徴とする請求項10に記載の地図情報データの編集プログラム。
【請求項13】
前記標高データを更新する処理として、
道路に相当する線状領域を編集領域とし、該編集領域内を道路の勾配情報を参照して線状平面の標高に改訂する第3フィット処理と、
前記線状平面の標高と、その周辺部位の標高とを参照して、前記線状平面に連接して生成される法面領域を設定し、該法面領域内を所定の傾斜条件で傾斜した標高に改訂する第4フィット処理とを行わせることを特徴とする請求項10に記載の地図情報データの編集プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2008−164979(P2008−164979A)
【公開日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−354978(P2006−354978)
【出願日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【出願人】(000156938)関西電力株式会社 (1,442)
【Fターム(参考)】