説明

食品の加熱保温方法

【課題】調理済の食品を包装した状態で加熱するに際し、蒸発した水分を吸収し、これを直接食品と接触させないようにして袋内を適度な湿度に保つようにすること
【解決手段】重合させた親水性の不織布と疎水性の不織布とを装入した袋体を使用し、疎水性の不織布の上に位置させた状態で加熱器内に収容する
【図面】 図1

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、調理済の食品を加熱器内に収容して加熱保温する方法に関するもので、とりわけスーパーマーケット、コンビニエンスストアー、小売店の店頭などに設置した加熱保温器を使用して、いわゆるホットメニューを提供する場合に使用される。
【背景技術】
【0002】
フライドチキン、コロッケ、串カツ、アメリカンドッグ、たこ焼き、たい焼き、フライドポテト、豚串や焼きとりなどの串焼類など、調理済の食品が加熱器内に収容されて加熱保温状態で店頭販売されている。
これらの食品は、包装しない状態、フィルムや紙で包装された状態あるいは紙容器などに入れた状態で加熱器に収容されている。
【0003】
これらの食品は、60〜70℃の温度で1〜6時間収容されることになるのが通例であるから、食品は長時間加熱状態におかれることによって水分を蒸発させてしまい、食品自体が固くなると共にカスカスの食感を招来してしまうことになる。また、フライドチキン、コロッケなどのような揚げ物、豚串や焼き鳥などの動物性脂肪を多く含んだ素材を使用した焼き物では、油や脂肪分が食品内を流動して下部側に滞留させたり、食品を変性させたりするおそれがある。
【0004】
加熱された食品を包装する資材として、親油性の不織布を内装させた防水性のシートからなる袋体に多数の小孔を穿設させたものが知られている(特許文献1参照)。加熱された食品から滲出する油分は不織布に吸収され、蒸発する湯気はシートに穿設された小孔から袋外へ排出させて食品の風味を損なわない状態に仕上げられるようにしている。
しかしながら、この包装資材は、加熱された食品を包装した後短時間で喫食されることを想定している。それゆえ、この包装資材を揚げ物以外の食品に使用して加熱保温器に食品を収容しておくと、水分が食品の裏側に滞留してその部分をベタ付かせてしまう不都合がある。
【特許文献1】実用新案登録第2560866 号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、調理済の食品を包装した状態で加熱するに際し、蒸発した水分を吸収し、これを直接食品と接触させないようにして袋内を適度な湿度に保つようにすることを課題としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この技術的課題を解決するための技術的手段は、(イ)重合させた親水性の不織布と疎水性の不織布とを装入した袋体を使用し、(ロ)疎水性の不織布の上に位置させて包装した状態で加熱器内に収容すること、である。
【0007】
食品は、疎水性の不織布上に置かれて包装された状態で加熱保温器内に収容されているから、加熱によって蒸発させられ袋内を移動する水分は疎水性の不織布には吸収されず、繊維の間を通過してその下(外)側に位置する親水性の不織布に吸収されることになる。この不織布に吸収された水分は疎水且つ親油性の不織布によって食品と隔絶されることになるから、直接食品と接触することはなく、袋体の外へ排出されることもないから、袋体の中は適度の湿度が維持され、食品から水分を過分に蒸発させてしまうことはない。
この方法は、おにぎり、たい焼きなどの油分をほとんど含んでいない食品を加熱保温するのに最適である。
【0008】
疎水性の不織布としては、ポリプロピレンやポリエチレンなどの繊維からなる不織布を好適に使用することができる。
親水性の不織布は、水のみを吸収するものの他、油を吸収するより水を吸収する能力の高い不織布を含み、レーヨンやパルプなどの水を吸収し易い繊維から成るものを好適に使用することができる。また、この不織布は、親水化処理、すなわち、疎水且つ親油性の樹脂にポリビニールアルコールなどの親水化剤を混入させたり、プラズマ処理を行なったり、あるいは物理的に微孔を設けるなどの処理をした繊維を使用して形成したものであってもよい。
【0009】
積層させた親水性の不織布と疎水性の不織布とをエンボス加工やニードルパンチを施したり接着するなどして一体化しておくと、不織布の取扱や袋体への食品の出し入れが容易となる。
また、袋体としては、プラスチックフィルム製のものや表面に耐水処理を施した紙製のものを好適に使用することができる。
【0010】
疎水性の不織布として、親油性のものを使用すると、油で揚げた食品や動物性脂肪を含んだ食品が加熱によって油を流下させても、油分は疎水且つ親油性不織布に吸収されるから、食品の下部に滞留することはない。
この不織布を使用した方法は、フライドチキン、コロッケ、アメリカンドッグ、フライドポテトなどの揚げ物、豚串や焼き鳥などの脂肪分の多い焼き物を加熱保温するのに最適である。
揚げ物を加熱保温する場合には、食品の上に位置する袋面の周部内側に小孔を穿設しておくと、食品がベタつくことがない。小孔が食品とほとんど接触しない袋面の周部内側に穿設されているために、袋面が食品と接触することがあってもこの部分から油分が滲みでることもない。
なお、この親油性を備えた不織布は、油のみを吸収するものの他、水を吸収するより油を吸収する能力の高い不織布を含むものである。
【0011】
不織布を袋体に固定させたものを使用すると、食品を出し入れする作業を一層円滑に行うことができる。例えば、裏面フィルム、親水性の不織布、疎水性の不織布及び表面フィルムを順次積層させ、開口部を除く周縁を溶着させて袋体を形成し、疎水性の不織布と表面フィルムとの間に食品を収納させて使用することができる。
勿論、不織布周縁や中心部を点状に裏面側のフィルムと溶着させるようにして固定するようにしてもよい。
これらの場合、フィルム及び不織布の双方を同じ樹脂、例えばポリプロピレン樹脂で形成しておくと、溶着を確実に行うことができる。
また、食品の上に位置するフィルムに防曇機能を備えたものを使用すると、水蒸気が付着しないため常時食品の状態を確認できる利点がある。
【0012】
なお、食品の上下に疎水性の不織布が位置するように不織布の積層体を配置しておくと、蒸発した水分をそのまま外側の不織布が吸収し、袋内の湿気を食品の上下から調整することができる。
【発明の効果】
【0013】
蒸発した水分を吸収し、これを直接食品と接触させないようにして袋内を適度な湿度に保てる結果、食品の硬化を防止することができ、食品の表面に過度の水分が付着してしまわない利点がある。したがって、従来ホットメニューとして利用されていなかった、例えばおにぎりなどをホットメニューとして提供することも可能となる。
また、疎水且つ親油性の不織布を使用した場合には、油分の偏在に基因する食品の変性を防止することもできる。
【実施例1】
【0014】
図1は、本発明を実施する際に使用する包装袋1の要部断面図である。
この袋1は、ポリプロピレン製の裏面フィルム2上にポリプロピレン樹脂に親水化剤としてポリビニルアルコール樹脂を混入させて形成した繊維からなる親水性の不織布4、ポリプロピレン樹脂製の繊維からなる疎水且つ親油性の不織布3、坊曇機能を備えた
ロピレン製の表面フィルム1を積層し、縁部5を溶着すると同時に切断して形成したものである。
この袋1では、表面を無色透明のフィルム1で形成する一方、裏面を着色フィルム4で形成した。
【0015】
表面フィルム1と疎水且つ親油性の不織布3とで形成される空間6におにぎりを収納し、開口部7を折り返して固定させ、そのまま加熱保温器に65℃で3時間加熱保温させた後喫食したところ、おにぎりにベタつきが生じなかったし、ご飯表面が乾燥することもなく、風味食感共に良好な状態でおにぎりを喫食することができた。
なお、不織布へのご飯粒の付着は認められなかった。
【実施例2】
【0016】
図2は、実施例1の袋の表面フィルム1の周部内側に4個の小孔11、11を穿設した袋を使用し、鳥のから揚げ12を収納して袋の開口部7を折り返して固定させ、実施例1と同様の条件で加熱保温を行って喫食したところ、から揚げ12がベタついたり、乾燥したりすることはなく、味食感共に良好な状態で喫食することができた。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】包装袋の要部断面図
【図2】鳥のから揚げを包装した状態の袋体の平面図
【符号の説明】
【0018】
1表面フィルム、 2裏面フィルム、 3疎水且つ親油性の不織布、 4親水性の不織布、 5溶着切断部、 6おにぎり収納部、 7袋の開口部、 11小孔、 12鳥のから揚げ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
重合させた親水性の不織布と疎水性の不織布とを装入した袋体を使用し、疎水性の不織布上に食品を位置させて包装した状態で加熱器内に収容する食品の加熱保温方法。
【請求項2】
重合させた親水性の不織布と疎水性の不織布とが表裏一体に構成してあるものを使用する請求項1に記載の食品の加熱保温方法。
【請求項3】
プラスチックフィルムで形成した袋体を使用する請求項1又は2に記載の食品の加熱保温方法。
【請求項4】
袋体に不織布を固定させたものを使用する請求項1、2又は3に記載の食品の加熱保温方法。
【請求項5】
親油性を備えた疎水性の不織布を有する使用する請求項1、2、3又は4に記載の食品の加熱保温方法。
【請求項6】
食品の上に位置する袋面の周部内側に小孔を穿設した袋を使用する請求項5に記載の揚げ物食品の加熱保温方法。
【請求項7】
裏面フィルム、親水性の不織布、疎水性の不織布及び表面フィルムを順次積層させた状態で開口部を除く周縁を溶着させた袋体を使用する請求項1乃至6のいずれかに記載の食品の加熱保温方法。
【請求項8】
袋体及び不織布がポリプロピレン樹脂で構成してある請求項7に記載の食品の加熱保温方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−151495(P2006−151495A)
【公開日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−348218(P2004−348218)
【出願日】平成16年12月1日(2004.12.1)
【出願人】(592119465)青戸製袋株式会社 (2)
【Fターム(参考)】