説明

食品収容部材と食品包装用容器および食品包装体

【課題】容器に収容された食品の取り出しがきわめて容易であり、かつ食べるときに手を汚すこともない、より改良された食品収容部材と、その食品収容部材に収容された食品を包装した食品包装体を提供する。
【解決手段】食品収容部材10Aは、長方形状の下シート部11aと上シート部12aを備え、下シート部11aと上シート部12aの2方向は開放し、他の2方向は側シート部で閉鎖している。下シート部11aの短手方向の辺には舌片14aが形成されている。下シート部11aと上シート部12aの長手方向幅は収容する食品の最大幅とほぼ同じであり、かつ収容する容器(下容器部分)の底板の一辺の長さにほぼ等しい。また、下シート部11aと上シート部12aの短手方向幅は収容する食品の最大幅よりも小さい。そして、舌片14aの長さは、収容する容器(下容器部分)の側壁の高さに等しいかそれよりも長くされている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ファーストフード店において提供されるハンバーガーなどの食品を収容し、また包装するのに適した食品収容部材と食品包装用容器および食品包装体に関する。
【背景技術】
【0002】
ファーストフード店でハンバーガーのようなほぼ円形の食品を提供する場合、下容器部分と上容器部分がヒンジ部を介して開放姿勢と閉鎖姿勢とを選択的に取りうるようにされた箱型容器(クラムシェル型容器)を用いる場合が多い。特許文献1には、クラムシェル型箱形容器の一例が示されており、そこでは、下容器部分と上容器部分の先端側が外側に反転できるようになっている。容器部分の一部を反転させることで、その開放した部分から収容したハンバーガーが露出するようになり、箱を手で持った状態でかつ手を汚すことなくハンバーガーを食べることができる。
【0003】
特許文献2には、下容器部分と上容器部分がヒンジ部を介して開放姿勢と閉鎖姿勢とを選択的に取りうるようにされた容器本体内に、収容したハンバーガーをラッピングすることのできる大きさの包装シートを、予め折り込んだ状態で下容器部分の底部に収容しておき、食べるときに包装シートを引き出しかつ展開して、収容したハンバーガーをラッピングすることで、ハンバーガーを直接手で触ることなく食べ終えることができるようにした食品包装用容器が記載されている。通常、この種の容器において、下容器部分はほぼ正方形の底板を持ち、上容器部分はほぼ正方形の天板を持つ。そして、下容器部分の底板の一辺の長さは、ハンバーガーのようにほぼ円形の食品の直径とほぼ等しくされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−72749号公報
【特許文献2】特開2005−306480号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ファーストフード店側で特許文献1または2に記載される形態の食品包装用容器を用いることにより、購買者はハンバーガーのような食品を直接手で触ることなく食べ終えることができる。また、食品が液状物を含む場合であっても、それを外にこぼれ出すことなく食品を食べ終えることができる。そのことから、この形態の食品包装用容器はきわめて有効性の高い容器である。
【0006】
しかし、特許文献1に記載の包装用容器は、容器の一部にミシン目等で折り曲げ線や易破断線を形成することが必要であり、容器の製造がやや複雑になる。特許文献2に記載の包装用容器は、容器自体の製造に格別の複雑さはないが、食べるときに包装シートを引き出しかつ展開して、収容したハンバーガーをラッピングすることが必要であり、食べるまでの手順がやや複雑となっている。
【0007】
本発明は、上記のような事情に鑑みてなされたものであり、包装用容器には従来知られたものをそのまま用いながら、容器に収容された食品の取り出しがきわめて容易であり、かつ食べるときに手を汚すこともない、より改良された食品収容部材と、その食品収容部材に収容された食品を包装した食品包装用容器、および食品包装体を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明による食品収容部材は、少なくとも食品の一部を包む隣接された2辺が開放された包装部材によって構成された袋状の食品収容部材であって、開放された側の該包装部材には、延出された舌片が設けられていることを特徴とする。
【0009】
上記の食品収容部材は、隣接した2辺が開放しており、食品の収容はきわめて容易である。また、食品を収容した状態で食品の一部は露出しており、食品収容部材を手に持った状態でかつ食品に手を触れることなく、収容した食品を食べることができる。さらに、開放された側の包装部材には延出された舌片が設けられており、その舌片によって、開放した1つの辺側の全部または一部を覆うことができるので、食べているときに、食品が手に触れるのをより確実に防ぐことができる。
【0010】
本発明による食品収容部材の一態様において、前記包装部材は、対向する下シート部と上シート部とを有し、対向する下シート部と上シート部とは隣接された2辺が閉じられていることを特徴とする。この態様において、下シート部と上シート部とは一体のものであってもよく、別体のものであってもよい。別体の場合には、隣接する2辺を熱融着等の適宜の手段で接合することにより、前記閉じられた2辺を形成する。
【0011】
この態様の食品収容部材においても、対向する下シート部と上シート部の大きさを、食品を収容した状態で食品の一部が露出する大きさに設定しておくことで、食品収容部材を手に持った状態でかつ食品に手を触れることなく、収容した食品を食べることができる。また、開放した1つの辺側の全部または一部を覆うことができる。
【0012】
本発明による食品収容部材の一態様では、前記包装部材は、対向する下シート部と上シート部と折り畳み自在な側シート部とを有し、対向する下シート部と上シート部とは隣接された2辺において側シート部を介して閉じられていることを特徴とする。
【0013】
この態様では、食品を収容していないときには、側シート部を折りたたんだ姿勢とすることで、より狭い平面積で食品収容部材を扁平な状態とすることができ、ストック時のスペースを小さくすることができる。一方において、食品を収容するときは、下シート部と上シート部を互いに離間する方向に動かすと、折りたたんだ姿勢にあった側シート部が容易に立ち上がった姿勢となり、2辺側が開放し、他辺側は袋状に閉じられた状態の食品収容空間が形成される。そのために、きわめて容易に食品を食品収容部材内に収容することができる。食品収容後には、前記舌片によって、開放した1つの辺側の全部または一部を覆うことで、例えばハンバーガーのような食品の具が外方に飛び出るのを防ぐことができるとともに、食べているときに手に食品が触れるのを一層確実に防ぐことができる。
【0014】
上記した側シート部を有する形態の食品収容部材の好ましい態様では、下シート部と上シート部は長方形であり、前記下シート部と上シート部の長手方向幅は収容する食品の最大幅とほぼ同じであり、少なくとも上シート部の短手方向幅は収容する食品の最大幅よりも小さいことを特徴とする。
【0015】
上記の態様では、下シート部と上シート部を離間することで、直方体状の食品収容空間が形成される。そして、食品は、前記直方体状の食品収容空間内に、一部を長手方向側の開放部から露出させた状態で、安定した状態で収容される。また、ここでも、直方体状の食品収容空間の食品が露出していない側の開放部は、前記した舌片によってその全部または一部を覆うことができる。なお、この態様において、前記舌片の横幅は下シート部の短手方向の幅と同じであることが好ましいが、より狭い幅であってもよい。
【0016】
上記側シート部を有する形態の食品収容部材において、前記上シート部の短手方向幅は収容する食品の最大幅のほぼ1/2から3/4であることが好ましい。また、前記舌片は下シート部の短手方向の辺に形成されていることが好ましい。さらに、前記舌片の延出長さは前記側シート部の縦幅のほぼ1/1〜1/2であることが好ましい。
【0017】
本発明において、上記した食品収容部材内に収容した食品を食べようとする者は、食品収容部材を手で持つことで、食品に触れることなく食品を口元まで運ぶことができ、その状態で食品収容部材から露出している食品の部分を食べることができる。また、好ましい態様において、前記下シート部と上シート部の長手方向幅は収容する食品の最大幅とほぼ同じとされており、食べるときに食品収容部材が邪魔になることはない。
【0018】
本発明による食品収容部材において、食べている途中で、包装部材の開放側を側方に広げることで、また、対向する下シート部と上シート部とを有する態様の場合には、上シート部あるいは下シート部のいずれか一方または双方の開放している側をほぼ対角線に沿って外側に折り曲げることで、食品の露出領域をさらに広げることができ、一層食べやすくなる。この場合でも、指が食品に触れることなく食品収容部材とともに食品を手で持っていることができる。食品が液状物を含んでいても、食品収容部材の袋状に閉じられ側を下にして食品を食べ続けることで、液状物が外に漏れ出るのも回避できる。
【0019】
側シート部を有する場合、該側シート部の縦幅は収容する食品の最大高さにほぼ等しいことが好ましい。この態様では、材料無駄のない状態で食品収容部材を作ることができ、かつ無理なく食品を食品収容部材内に収容することができる。
【0020】
対向する下シート部と上シート部を有する態様において、下シート部の短手方向幅は任意であってよいが、上シート部と同じにすることにより、収容した食品より食べやすくなる。上シート部の短手方向の幅が1/2よりも狭いと、食品を収容した後の食品収容部材を持ちづらくなり、3/4よりも広いと、収容した食品の露出部分が小さくなり、食べ難さが生じる恐れがある。
【0021】
また、側シート部を備える態様において、前記舌片の延出長さが側シート部の縦幅の1/1より長いと、食べるときに延長部が邪魔になり、1/2より短いと収容した食品に手の指や手のひらが触れる恐れがある。
【0022】
本発明は、また、下容器部分と上容器部分がヒンジ部を介して開放姿勢と閉鎖姿勢とを選択的に取りうるようにされた容器本体と、上記した食品収容部材との組み合わせからなる食品包装用容器であって、食品収容部材の前記舌片の長さは前記下容器部分の側壁の高さとほぼ等しいかそれよりも長いことを特徴とする食品包装用容器を開示する。
【0023】
さらに、下容器部分と上容器部分がヒンジ部を介して開放姿勢と閉鎖姿勢とを選択的に取りうるようにされた容器本体と、対向する下シート部と上シート部とを有する食品収容部材との組み合わせからなる食品包装用容器であって、食品収容部材の前記下シート部と上シート部の長さは前記容器本体の下容器部分の底板の一辺の長さとほぼ同じであり、前記舌片の長さは前記下容器部分の側壁の高さとほぼ等しいかまたはそれよりも長いことを特徴とする食品包装用容器をも開示する。
【0024】
さらに、本発明は、上記の食品包装用容器を用いて食品を収容した食品包装体であって、食品を収容した前記食品収容部材が前記舌片が設けられた側を下容器部分の底板側として、かつ舌片を側壁に沿わせて容器本体内に収容されていることを特徴とする食品包装体をも開示する。
【0025】
上記の食品包装用容器を用いて上記の食品包装体とするに際しては、最初に、前記容器本体を開放した姿勢としておく。そして、作業者は、扁平姿勢にある一枚の食品収容部材を手に持ち、開放された2辺側を開いて食品収容空間を形成する。対向する下シート部と上シート部を有する態様の場合には、下シート部と上シート部を離間する方向に引き離す。それにより、下シート部と上シート部の間に食品収容空間が形成される。
【0026】
その状態の食品収容部材をその開放した側を外側に向けて一方の手に持ち、他方の手に持った食品を前記した食品収容空間内に入れる。そして、食品を収容した食品収容部材を、舌片を有する側を下容器部分の底板側とし、かつ舌片を側壁に沿わせた姿勢で、下容器部分内に収容する。その後、ヒンジ部を利用して上容器部分を回動させて下容器部分に重ね合わせ、容器本体を閉鎖姿勢とすることにより、本発明による食品包装体は完成する。そして、その状態で、購買者に提供される。
【0027】
購買者が食品を食べるときは、上容器部分を開いて容器本体を開放姿勢とし、下容器部分から食品収容部材に収容された食品を取り出すこととなるが、前記舌片を指で摘まんでわずかに引き上げることで、食品収容部材全体が食品とともに浮き上がった状態とすることができるので、食品を食品収容部材とともに容易に下容器部分から取り出すことができる。また、そのときに指先が食品に触れるのも回避できる。取り出した後の食品の食べ方はすでに記載したとおりであり、手を汚すことなく、食品のすべてを食べ終えることができる。
【0028】
なお、本発明において、容器本体は従来知られたいわゆるクラムシェル型の箱形容器であってよく、例えば前記特許文献1または特許文献2に記載されるような包装用容器を用いることができる。ただし、本発明では、前記した食品収容部材を併せて用いることから、下容器部分と上容器部分の先端側が外側に反転可能となる構成は不要であり、単に、下容器部分と上容器部分がヒンジ部を介して開放姿勢と閉鎖姿勢とを選択的に取りうるようにされていればよい。
【0029】
また、本発明において、食品収容部材には、食品に無害であることを条件に適宜の材料を用いることができ、紙、紙とポリエチレンフィルムなどの樹脂フィルムを積層したラミネート紙などが好適であり、ラミネート紙の場合には、樹脂フィルム側が食品側となるようにして用いられる。紙単体の場合には、食品との接触面に耐油剤や食品が付着しないような樹脂をコーティングすることが望ましい。さらに、口に接する紙の切り口は、一線切りよりも山切りであることが好ましく、それにより、皮膚に傷が付くのを防止できる。また、紙の坪量は10g/m〜100g/m程度が好適である。
【発明の効果】
【0030】
本発明による食品収容部材を用いることにより、食品収容部材内への食品の収容は容易となり、かつ手を汚すことなく収容した食品を食べ終えることができる。また、本発明による食品包装用容器を用いた食品包装体では、容器本体から容易にかつ手を汚さずに食品を取り出すことができ、かつ取り出した食品を手を汚すことなく食べ終えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明で用いる容器本体の一例を示し、図1(a)は開いた状態(開放姿勢)を、図1(b)は閉じた状態(閉鎖姿勢)を示す。
【図2】本発明による食品収容部材の一例を示し、図2(a)は展開図を、図2(b)は組み立て後の状態を示す。
【図3】図3(a)は図2に示す食品収容部材に食品の例であるハンバーガーを収容した図であり、図3(b)はそれを容器本体の下容器部分に収容した状態を示す図。
【図4】本発明による食品収容部材の他の例を示す展開図。
【図5】図5(a)は図4に示す食品収容部材を組み立てた状態を示し、図5(b)は食品収容部材に食品の例であるハンバーガーを収容して容器本体の下容器部分に収容した状態を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、図面を参照しながら本発明を説明する。
【0033】
図1は本発明で用いる容器本体の一例を示している。図1に示す容器本体1は、前記特許文献1に記載されるような紙を素材とする全体として箱形の容器であり、下容器部分2と上容器部分3がヒンジ部4を介して開放姿勢と閉鎖姿勢とを選択的に取りうるようになっている。図1(b)に示す閉鎖姿勢にあるときに、下容器部分2に形成した突片5、5と上容器部分3に形成した係止片6、6とが係合して、蓋をなす上容器部分3が自由に開放するのを阻止している。下容器部分2の底板7は、横幅W1、縦幅L1の矩形状をなしている。また、図示のものでは、下容器部分2の4つの側壁8の高さは、ヒンジ部4側の側壁8aがもっとも高くなっており、他の3つの側壁8の高さはそれよりも低くなっている。
【0034】
なお、本発明において、図1に示す形状の容器本体1は一つの例であって、その材質や形状、大きさ等は任意である。特に、下容器部分2の4つの側壁8の高さはすべて等しくされていてもよい。以下では、この包装用容器1に食品として高さhであり直径dであるほぼ円柱形のハンバーガー50を収容する場合を例として、本発明を説明する。また、この例では、収容するハンバーガー50がほぼ円柱形であることから、下容器部分2の底板7が正方形、すなわち横幅W1=縦幅L1の容器本体1が用いられる。
【0035】
図2は、上記の容器本体1とともに用いる食品収容部材の一例を示す。この食品収容部材10は、薄手の折りたたみ可能な材料、好ましくは紙とポリエチレンフィルムなどの樹脂フィルムを積層した材料で作られており、図2(a)にその展開図を示すように、矩形状の下シート部11と、その側方に連続する下シート部11と同じ形状の上シート部12とからなる包装部材を有し、該包装部材の前記下シート部11の下辺13側には所定幅と長さの舌片14が設けられている。下シート部11と上シート部12の境目15から折り返して、上シート部12を下シート部11の上に重畳し、各シートの上辺16側のみを熱シール等で一体に接合することで、図2(b)に平面図と示すような食品収容部材10とされる。
【0036】
すなわち、食品収容部材10は、対向する下シート部11と上シート部12を備え、交差する2つの辺13、17側は開放可能であり、他の2つの辺15、16側は袋状に閉じられている形状をなしており、下シート部11の開放側の1辺13には閉じられている側の辺16とは反対側に延出する舌片14が設けられている。そして、食品を収容しない状態では、下シート部11と上シート部12とが重畳した扁平な姿勢となっている。
【0037】
図示しないが、前記舌片14を有する下シート部11と上シート部12とを別体のものとして用意し、交差する2つの辺15、16側を熱シール等で一体に接合することでも、図2(b)に平面図と示す形状の食品収容部材10を得ることができる。
【0038】
図3(a)は、上記の食品収容部材10を、下シート部11と上シート部12を隔離した状態とし、それにより形成された食品収容空間P内に、平面視でほぼ円形のハンバーガー50を収容した状態を示している。図示されるように、この形態の食品収容部材10では、下シート部11と上シート部12を上下方向に隔離することで、下シート部11と上シート部12の閉じられている側の2つの辺15、16に近接している領域は、立ち上がった姿勢となり、離間距離に応じた側壁部20が形成される。そして、下シート部11と上シート部12の残りの部分と前記側壁部20とによって、食品収容空間Pが形成される。そして、下シート部11と上シート部12の離間距離に応じて、食品収容空間Pの形状も変化する。
【0039】
実際に食品収容部材10を作るに当たっては、収容しようとする食品、すなわちハンバーガー50の高さhと直径d、および前記した容器本体1における下容器部分2の底部7の寸法と側壁8の高さを考慮して、下シート部11と上シート部12および舌片14の大きさが設定される。
【0040】
すなわち、高さhのハンバーガー50を収容することを前提とする場合、ほぼ高さhの前記側壁部20が形成される距離だけ下シート部11と上シート部12とを離間させることが必要となるが、その状態で、下シート部11と上シート部12の長辺方向の長さが、下容器部分2の底板7の横幅W1または縦幅L1のいずれか一方、より好ましくはその長い方の長さにほぼ一致するように、また下シート部11と上シート部12の短辺方向の長さが、収容するハンバーガー50の直径dよりも短くなるように、好ましくは直径dの1/2〜3/5程度のなるように、下シート部11と上シート部12の寸法を設定する。
【0041】
また、前記舌片14の長さは、ハンバーガー50を収容した食品収容部材10をその下シート部11側が下容器部分2の底板7に面するようにして下容器部分2に収容したときに、前記舌片14が対向することとなる側壁8b(図3(b)参照)の高さと等しいかそれよりも長いように設定する。舌片14の横幅は、そのときの前記側壁部20となっている部分を除いた下シート部11の部分の横幅と同じに設定することが望ましいが、それより狭くてもよい。なお、図1に示す下容器部分2のように、一部の側壁8の頂部が傾斜している場合には、その平均高さを下容器部分2の側壁の高さと考える。
【0042】
上記のようにして設計した食品収容部材10内に高さhであり直径dであるハンバーガー50を収容したものを、図1に示した容器本体1の下容器部分2に、その下シート部11側が下容器部分2の底板7に面するようにし、かつ舌片14を側壁8のいずれかに沿わせた姿勢で収容する。図3(b)には、下シート部11に形成した舌片14が、下容器部分2の左右の傾斜した側壁8bの一方に沿うようにして収容した状態が示されるが、これに限らない。図3(b)に示す状態で、舌片14の一部は側壁8bの頂部から飛び出た状態となっている。図に示す下容器部分2のように側壁の高さが異なっている場合には、舌片14の長さを最も高い高さの側壁(この例では側壁8a)よりも長くしておくことにより、食品収容部材10の向きを考慮することなく、ハンバーガー50を収容した食品収容部材10を下容器部分2内に収容できるようになる。
【0043】
下容器部分2からハンバーガー50を取りだそうとする者(購買者)は、最初に舌片14を摘み、わずかに引き上げる。それにより、ハンバーガー50を収容した食品収容部材10はわずかに持ち上げられ、下容器部分2と底板7との間に、指を差し入れるだけの隙間が生じる。それにより、購買者は、指先をハンバーガー50に触れることなく、ハンバーガー50を食品収容部材10とともに、容易に下容器部分2から取り出すことができる。
【0044】
取り出した後、食品収容部材10を手で持った姿勢で、ハンバーガー50の食品収容部材10から飛び出ている部分を食べる。さらに、下シート部11と上シート部12を外側に向けて広げることで、ハンバーガー50の露出する領域は次第に広がっていくので、食品収容部材10を手で持った姿勢を維持した状態で、ハンバーガー50のすべてを食べ終えることができる。その間、指等がハンバーガー50に触れることもない。また、食べているときに、食品収容空間Pの短手方向の開放部を舌片14で覆うことにより、ハンバーガー50が手に触れるのを、一層確実に防止できる。
【0045】
なお、上記の例では、下シート部11と上シート部12の短手方向の幅は等しいものとしたが、上シート部12の短手方向の幅を下シート部11のそれよりも狭く設定してもよい。また、閉じている2つの辺15、16は直交しているものを図示したが、閉じている辺側は、コーナー部が円や楕円をなす形状であってもよい。
【0046】
図4は、食品収容部材の他の例の展開図を示している。この食品収容部材10Aは、前記した側壁部20を側シート部26、27(図5(b)参照)として予め有している点で、上記した食品収容部材10と相違する。なお、図4では、高さhが60mm程度、直径dが100mm程度のほぼ円柱形をなすハンバーガー50を収容する食品収容部材10Aであることを前提として、食品収容部材10Aの展開図に寸法を付しているが、これはあくまでも例示であって、これに限られない。
【0047】
展開図において、11aで示す長方形の領域は下シート部に相当する部分であり、図で前記領域11aの長辺に平行な直線Lを挟んで対象の位置は、やはり長方形をなす上シート部に相当する領域12aが存在する。また、領域11aの一方の短辺側に延在する領域14aは前記した舌片に相当する部分である。
【0048】
この例で、下シート部11aと上シート部12aは横幅98mm×高さ63mmの大きさの長方形、舌片14aは横幅40mm×高さ63mmの大きさの長方形である。下シート部11aにおける前記舌片14aと反対側(図で右側)には横幅52mm×高さ63mmである第1延長部21が延在し、上シート部12aの図で右側には横幅42mm×高さ63mmの第2延長部22が延在する。
【0049】
下シート部11aと上シート部12aとの間には、横幅98mm×高さ64mmの繋ぎ領域23が位置しており、該繋ぎ領域23の図で右側には横幅42mm×高さ64mmの第3延長部24が延在する。第3延長部24は前記第1および第2の延長部21、22にも連続している。従って、第1の延長部21は、その右側端に、第2の延長部21および第3延長部24よりもさらに右側に張り出す、横幅10mm×高さ63mmの張り出し部25を有しており、前記した直線Lは、繋ぎ領域23および第3延長部24の中央部を走る場所に位置している。
【0050】
食品収容部材10Aを形成するに当たっては、最初に、前記直線Lを山折りする。次に、下シート部11aと繋ぎ領域23の境界線を谷折りし、また、上シート部12aと繋ぎ領域23の境界線を谷折りする。それにより、下シート部11aを含む長方形領域と上シート部12aを含む長方形領域との間に、2つ折りされた繋ぎ領域23を含む長方形領域が挟まれている扁平な長方形体が形成される。その長方形体において、前記した舌片14aは他と重なることなく下シート部11aの図で左方に延在しており、前記張り出し部25も他と重なることなく下シート部11aの図で右方に延在している。
【0051】
次に、前記張り出し部25に接着剤を塗布した後、重ね合っている全体を右端から少し入った位置(例えば、直線Lcの位置)で谷折りし、張り出し部25を第2の延長部22の裏面に接着することで、扁平な姿勢であり、かつ交差する2辺側が開放し他の2辺側は閉じられている食品収容部材食品収容部材10Aが完成する。この状態の食品収容部材10Aは非使用状態であり、多段に積み上げられて搬送され、あるいはストックされる。
【0052】
使用に当たっては、下シート部11aと上シート部12aとを開放している2辺側から次第に離間させる。それにより、2つ折りされていた繋ぎ領域23と第3延長部24は次第に立ち上がっていき、繋ぎ領域23はほぼ完全に立ち上がった姿勢となる。2つ折りされた第3延長部24は、その右方端側が前記直線Lcの位置で折り曲げられることで立ち上がり不能となっているので、繋ぎ領域23がほぼ完全に立ち上がった状態では、第3延長部24は、図で直線Ld、Ldの位置で山折りされた状態で折り重ねられた状態となり、かつ前記した立ち上がっている繋ぎ領域23と直交した姿勢で立ち上がる。また、その状態では、前記第1および第2の延長部21、22も前記立ち上がった繋ぎ領域23と直交した姿勢で立ち上がった状態となる。
【0053】
図5(a)は、そのときの食品収容部材10Aの状態を示している。図示のように、立ち上がった繋ぎ領域23は、対向する下シート部11aと上シート部12aの閉じられている長辺側での側シート部(側壁部)26となり、直線Ld、Ldの位置で山折りされた状態の第3延長部24と第1および第2の延長部21、22は閉じられている短辺側での側シート部27(側壁部)となっている。それにより、食品収容部材10Aには、ほぼ直方体状の食品収容空間Pが形成される。
【0054】
使用に当たっては、前記した扁平な姿勢にある食品収容部材10Aを下シート部11aと上シート部12aとを上下方向に隔離することで図5(a)に示す開いた姿勢とする。そして、前記した食品収容部材10のときと同様にして、直方体状の食品収容空間P内にハンバーガー50を収容する。前記した寸法関係にあることから、ハンバーガー50は一部を食品収容空間Pの長手方向の開口側から露出させた状態で収容される。
【0055】
図5(b)は、ハンバーガー50を収容した食品収容部材10Aを、図1に示した容器本体1の下容器部分2に、その下シート部11a側が下容器部分2の底板7に面するようにして収容したときの状態を示している。この場合も、下シート部11aに形成した舌片14aの一部が、下容器部分2の左右の傾斜した側壁頂部からわずかに飛び出た状態となっているので、前記した食品収容部材10の場合と同様、指先をハンバーガー50に触れることなく、容易にハンバーガー50を食品収容部材10Aとともに、下容器部分2から取り出すことができる。
【0056】
また、取り出した後でのハンバーガー50の食べ方も食品収容部材10とときの同様であり、指等がハンバーガー50に触れることなく、食べることができる。途中で、下シート部11aと上シート部12aとを、図4、図5(a)に示す対角線28、29の箇所で外側に向けて折り曲げることで、さらにハンバーガー50の露出した部分を広げることもできる。また、食べているときに、直方体状の食品収容空間Pの短手方向の開放部を舌片14aで覆うこともできるので、ハンバーガー50の具が外方に飛び出るのを防止できると共に、ハンバーガー50が手に触れるのを、一層確実に防止できる。
【0057】
なお、図示しないが、食品収容部材10Aにおいても、上シート部12aの短手方向の幅を下シート部11aのそれよりも狭く設定することが可能もある。
【符号の説明】
【0058】
1…容器本体、
2…下容器部分、
3…上容器部分、
7…下容器部分の底板、
8…下容器部分の側壁、
50…食品として円柱形のハンバーガー、
10、10A…食品収容部材、
11、11a…下シート部、
12、12a…上シート部、
14、14a…舌片、
13、17…開放している側の辺、
15、16…閉じられている側の辺、
20…側壁部、
26、27…側壁部に相当する側シート部、
21…第1延長部(側シート部を構成する)、
22…第2延長部(側シート部を構成する)、
23…繋ぎ領域(側シート部を構成する)、
24…第3延長部(側シート部を構成する)、
25…張り出し部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも食品の一部を包む隣接された2辺が開放された包装部材によって構成された袋状の食品収容部材であって、
開放された側の該包装部材には、延出された舌片が設けられていることを特徴とする食品収容部材。
【請求項2】
請求項1に記載の食品収容部材であって、前記包装部材は、対向する下シート部と上シート部とを有し、対向する下シート部と上シート部とは隣接された2辺が閉じられていることを特徴とする食品収容部材。
【請求項3】
請求項1に記載の食品収容部材であって、前記包装部材は、対向する下シート部と上シート部と折り畳み自在な側シート部とを有し、対向する下シート部と上シート部とは隣接された2辺において側シート部を介して閉じられていることを特徴とする食品収容部材。
【請求項4】
請求項3に記載の食品収容部材であって、下シート部と上シート部は長方形であり、前記下シート部と上シート部の長手方向幅は収容する食品の最大幅とほぼ同じであり、少なくとも上シート部の短手方向幅は収容する食品の最大幅よりも小さいことを特徴とする食品収容部材。
【請求項5】
請求項3または4に記載の食品収容部材であって、前記上シート部の短手方向幅は収容する食品の最大幅のほぼ1/2から3/4であることを特徴とする食品収容部材。
【請求項6】
請求項3から5のいずれか一項に記載の食品収容部材であって、前記舌片の延出長さは前記側シート部の縦幅のほぼ1/1〜1/2であることを特徴とする食品収容部材。
【請求項7】
請求項2から6のいずれか一項に記載の食品収容部材であって、前記舌片は下シート部の短手方向の辺に形成されていることを特徴とする食品収容部材。
【請求項8】
下容器部分と上容器部分がヒンジ部を介して開放姿勢と閉鎖姿勢とを選択的に取りうるようにされた容器本体と、請求項1に記載の食品収容部材との組み合わせからなる食品包装用容器であって、食品収容部材の前記舌片の長さは前記下容器部分の側壁の高さとほぼ等しいかそれよりも長いことを特徴とする食品包装用容器。
【請求項9】
下容器部分と上容器部分がヒンジ部を介して開放姿勢と閉鎖姿勢とを選択的に取りうるようにされた容器本体と、請求項2から7のいずれか一項に記載の食品収容部材との組み合わせからなる食品包装用容器であって、食品収容部材の前記下シート部と上シート部の長さは前記容器本体の下容器部分の底板の一辺の長さとほぼ同じであり、前記舌片の長さは前記下容器部分の側壁の高さとほぼ等しいかまたはそれよりも長いことを特徴とする食品包装用容器。
【請求項10】
請求項8または9に記載の食品包装用容器を用いて食品を収容した食品包装体であって、食品を収容した前記食品収容部材が前記舌片が設けられた側を下容器部分の底板側として、かつ舌片を側壁に沿わせて容器本体内に収容されていることを特徴とする食品包装体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−46222(P2012−46222A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−190643(P2010−190643)
【出願日】平成22年8月27日(2010.8.27)
【出願人】(000002440)積水化成品工業株式会社 (1,335)
【Fターム(参考)】