説明

飲料冷却装置

【課題】撹拌羽根を囲む網状筒部材の外周に設けた冷凍装置の蒸発管の周囲に形成される氷が網状筒部材に接触しないようにする。
【解決手段】ビールディスペンサ10は、冷却水槽20内に設けられて冷却水を撹拌するための撹拌羽根42と、冷却水槽20内で撹拌羽根42を囲うように設けられた網状筒部材43と、網状筒部材43の外周側に螺旋状に巻回して設けられた冷凍装置50の蒸発管51と、蒸発管51の巻線方向の間隔を所定間隔となるように保持するためのホルダ54と、蒸発管51の外周側に設けられた飲料を冷却するための飲料冷却管60とを備え、ホルダ54は熱伝導性の低い樹脂部材よりなり、蒸発管51の網状筒部材43に近接する位置で蒸発管51の網状筒部材43側を覆うように設けている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、飲料を冷却するための飲料冷却装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、冷却水を貯える冷却水槽と、冷却水槽内の中央部に設けられて冷却水を撹拌するための撹拌羽根と、冷却水槽内で撹拌羽根を囲うように設けられた網状筒部材と、冷却水槽内で前記網状筒部材の外周側に螺旋状に巻回して設けられた飲料冷却管と、冷却水槽の内壁面に沿って設けられた冷凍装置の蒸発管とを備えた飲料供給装置が開示されている。この飲料供給装置においては、冷却水槽内の冷却水は冷凍装置の運転により蒸発管の周囲で氷となるように冷却され、飲料冷却管を通過する飲料は撹拌羽根の回転により撹拌される冷却水により冷却される。この飲料供給装置の網状筒部材は撹拌羽根の回転により発生する渦を小さくすることで渦へのエアの巻き込み音を抑制し、蒸発管から剥離した氷が撹拌羽根に接触して破損するのを防ぐためのものである。
【0003】
また、特許文献2には、冷却水を貯える冷却水槽と、冷却水槽内の中央部に設けられて冷却水を撹拌するための撹拌羽根と、冷却水槽内で撹拌羽根を囲うように螺旋状に巻回して設けられた冷凍装置の蒸発管と、蒸発管の外周側で冷却水槽の内周壁に沿って設けられた飲料を冷却するための飲料冷却管とを備えた飲料冷却注出装置が開示されている。この飲料冷却注出装置は、特許文献1と同様に、冷却水槽内の冷却水は冷凍装置の運転により蒸発管の周囲で氷となるように冷却され、飲料冷却管を通過する飲料は撹拌羽根の回転により撹拌される冷却水により冷却される。この特許文献2に記載の飲料冷却注出装置は、飲料冷却管が蒸発管の外周側で冷却水槽の内周壁に沿って設けられているので、装置を小型化するにあたって冷却水槽の容量を小さくしても、飲料を十分に冷却することのできる飲料冷却管の長さを確保できるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−321794号公報
【特許文献2】特開平7−041091号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献2に記載の飲料冷却注出装置の撹拌羽根の周囲に、特許文献1の飲料供給装置の網状筒部材を採用すると、上述したように、撹拌羽根の回転により発生する渦を小さくすることで渦へのエアの巻き込み音を抑制することができ、蒸発管から剥離した氷が撹拌羽根に接触して破損するのを防ぐことができる。しかし、特許文献2に記載の飲料冷却注出装置において、撹拌羽根の周囲で螺旋状に巻回した冷凍装置の蒸発管の内周側に網状筒部材を設けると、蒸発管の周囲に形成される氷が網状筒部材の蒸発管に近接する部分に接触または網状筒部材の内側まで成長するおそれがあった。蒸発管の周囲の氷が網状筒部材に接触して成長すると、網状筒部材が氷により蒸発管に接着し、飲料冷却注出装置のメンテナンスをするときに、網状筒部材を取り外すことができないことがあった。また、蒸発管の周囲の氷が網状筒部材を超えて撹拌羽根まで成長すると、撹拌羽根が氷に当たって破損するおそれがあった。本発明は、このような問題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は上記課題を解決するため、冷却水を貯える冷却水槽と、冷却水槽内に設けられて冷却水を撹拌するための撹拌羽根と、冷却水槽内で撹拌羽根を囲うように設けられた網状筒部材と、冷却水槽内で網状筒部材の外周側に螺旋状に巻回して設けられた冷凍装置の蒸発管と、冷却水槽内に柱状に設けられて蒸発管の巻線方向の間隔を所定間隔となるように保持するためのホルダと、冷却水槽内で蒸発管の外周側に設けられた飲料を冷却するための飲料冷却管とを備えた飲料冷却装置であって、ホルダは熱伝導性の低い樹脂部材よりなり、蒸発管の網状筒部材に近接する位置で蒸発管の網状筒部材側を覆うように設けたことを特徴とする飲料冷却装置を提供するものである。
【0007】
上記のように構成した飲料冷却装置においては、ホルダは熱伝導性の低い樹脂部材よりなり、蒸発管の網状筒部材に近接する位置で蒸発管の網状筒部材側を覆うように設けたので、蒸発管の網状筒部材に近接する部分は網状筒部材側に熱伝導性の低い樹脂部材よりなるホルダが覆うように設けられていることにより氷の成長が抑制され、蒸発管の周囲に形成される氷は網状筒部材に接触しにくくなる。これにより、網状筒部材が氷により蒸発管に接着されにくくなり、飲料冷却装置のメンテナンスをするときに、網状筒部材が氷により取外せなくなるおそれが減少する。また、蒸発管の周囲の氷が網状筒部材を超えにくくなるので、撹拌羽根が氷に当たって破損するおそれが減少する。
【0008】
上記のように構成した飲料冷却装置においては、撹拌羽根を回転させる撹拌モータは冷却水槽の上側に設けられた支持板により支持され、ホルダの上端部は支持板に当接するようにするのが好ましく、このようにしたときには、撹拌モータから発生する熱が支持板を介してホルダに伝達されるので、蒸発管の網状筒部材に近接する部分の氷の成長がさらに抑制されて、上記の効果をより確実に得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明による飲料冷却装置の一実施形態を示す斜視図である。
【図2】図1のA−A線における断面図である。
【図3】図1のB−B線における断面図(ハウジングの上側のみを示す)である。
【図4】冷凍装置の蒸発管をホルダにより固定した状態を示す斜視図である。
【図5】蓋及び電装部品収容箱を取り外したときの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明による飲料冷却装置の一実施形態であるビールディスペンサを図面を参照して説明する。本発明に係るビールディスペンサ10は、冷却水を貯える冷却水槽20と、冷却水槽20内に設けられて冷却水を撹拌するための撹拌羽根42と、冷却水槽20内で撹拌羽根42を囲うように設けられた網状筒部材43と、冷却水槽20内で網状筒部材43の外周側に螺旋状に巻回して設けられた冷凍装置50の蒸発管51と、冷却水槽20内に柱状に設けられて蒸発管51の巻線方向の間隔を所定間隔となるように保持するためのホルダ54と、冷却水槽20内で蒸発管51の外周側に設けられたビール等の飲料を冷却するための飲料冷却管60とを備えている。本発明に係るビールディスペンサ10は、装置を小型化するにあたって冷却水槽20の容量を小さくしても、飲料冷却管60を蒸発管51の外側で冷却水槽20の内周壁に沿って螺旋状に巻回させることで、ビール等の飲料を十分に冷却することのできる飲料冷却管60の長さを確保できようにしたものである。而して、このビールディスペンサ10においては、ホルダ54は熱伝導性の低い樹脂部材よりなり、蒸発管51の網状筒部材43に近接する位置で蒸発管51の網状筒部材43側を覆うように設けている。以下に、このビールディスペンサ10について詳述する。
【0011】
図1及び図2に示すように、ビールディスペンサ10は、ハウジング11の上側に冷却水を貯える冷却水槽20と、ハウジング11内の下側の機械室に蒸発管51を除く冷凍装置50とを備え、ハウジング11の上面開口が蓋12により覆われている。また、ビールディスペンサ10は、ハウジング11の前壁上部に飲料を注出するための2つの注出コック13を備えている。
【0012】
図2、図3及び図5に示すように、冷却水槽20はビール等の飲料を冷却するための冷却水を貯えるためのものであり、上面が開口して前後方向の幅が左右方向の幅より長い略直方体形状をしている。図2に示すように、冷却水槽20の上面開口の後部には、冷凍装置50等の作動を制御する制御基板等の電装部品を収容する電装部品収容箱30が設けられている。電装部品収容箱30は、冷却水槽20の後壁上端と左右両側壁の上端後部に支持されている。電装部品収容箱30には、撹拌モータ40を支持するため支持板部31が一体的に形成されている。支持板部31は、電装部品収容箱30の前側周壁下端部から冷却水槽20の上側中央部に向けて水平方向に延出している。支持板部31の上面には撹拌モータ40がボルトにより固定されている。撹拌モータ40の回転軸41は、支持板部31を貫通して冷却水槽20の下部位置まで延びている。回転軸41の下端には、冷却水槽20内の冷却水を撹拌する撹拌羽根42が取り付けられている。
【0013】
図2、図3及び図5に示すように、冷却水槽20内には、撹拌羽根42を囲うように円筒形の網状筒部材43が設けられている。網状筒部材43は、撹拌羽根42の回転により発生する渦を小さくすることで渦へのエアの巻き込み音を抑制するとともに、蒸発管51から剥離した氷が撹拌羽根42に接触して、撹拌羽根42が破損するのを防ぐためのものである。網状筒部材43は、冷却水槽20の底面に設けられた4つの支持突部20aに支持されている。網状筒部材43は、4つの支持突部20aに支持されることで、撹拌羽根42に接触しない位置に位置決めされている。また、網状筒部材43は、4つの支持突部20aに支持されることで、冷却水槽20の底面との間に所定の隙間が設けられている。
【0014】
図2、図3及び図5に示すように、冷却水槽20には、網状筒部材43の外周側に冷凍装置50の蒸発管51が螺旋状に巻回されている。冷凍装置50は、圧縮機52により圧縮した冷媒ガスを凝縮器により冷却して液化させ、この液化冷媒を膨張弁を通して冷却水槽20内の蒸発管51に導き、蒸発管51で気化させ冷却水槽20内の冷却水を冷却する。このとき、冷却水槽20内の冷却水は蒸発管51の周囲で一部が凍結して氷となる。螺旋状の蒸発管51は、図4及び図5に示すように、前後方向の幅が左右方向の幅より長く上側から見たときの形状が小判形に巻回されている。蒸発管51の下端部は、冷却水槽20の底面に設けられた6つの支持突部20bにより支持されている。各支持突部20bは、螺旋状に巻回された蒸発管51の下端の高さに応じた高さとなっている。また、蒸発管51の外周側には、蒸発管51の周囲の氷の厚さを検知し、氷を所定の厚さに維持するための氷センサ53が取り付けられている。
【0015】
蒸発管51は、巻き線方向の間隔を所定間隔で一定に保つように保持する2本のホルダ54を介して冷却水槽20に取り付けられている。各ホルダ54は、熱伝導性の低い樹脂部材よりなり、上側から見た形状が略十字形をして冷却水槽20内に柱状に立設している。各ホルダ54には、螺旋状の蒸発管51の巻き線方向の間隔を所定間隔に保つように保持する略C字形をした8つの保持部54aが上下方向に所定間隔に形成されており、各保持部54aは、蒸発管51の内周側から係合している。各ホルダ54は、冷却水槽20の底面の前後方向の略中間部の少し後ろ側に設けられた一対の円柱状の位置決め突部20cに係止して前後及び左右方向に位置決めされている。この実施形態では、上側から見た形状が小判形をした螺旋状の蒸発管51は、図5に示すように、長手方向の中心より少し後ろ側の部分が網状筒部材43に最も近接する部分となっており、2本のホルダ54は、この蒸発管51の網状筒部材43に最も近接する位置で、蒸発管51の網状筒部材43側を覆うように設けられている。また、各ホルダ54は、撹拌モータ40を支持する支持板部31の下面と冷却水槽20の底面とにより挟持されて上下方向に位置決めされている。
【0016】
図2、図3及び図5に示すように、冷却水槽20内には、螺旋状の蒸発管51の外周側で冷却水槽の内周壁に沿ってビール等の飲料を冷却するための飲料冷却管60が螺旋状に巻回されている。この実施形態においては、2つの注出コック13に対応するように、2つの飲料冷却管60が同心的に2重の螺旋状に配置されている。飲料冷却管60の流入端部はハウジング11の右側壁上部に設けられた継手部によりビール樽から導出されるビールホースと接続可能となっており、飲料冷却管60の流出端部はハウジング11の前壁上部の注出コック13に接続されている。
【0017】
上記のように構成したビールディスペンサ10の作動について説明する。ビールディスペンサ10の電源をオンにすると、撹拌羽根42が撹拌モータ40により回転して、冷却水槽20内の冷却水が撹拌される。また、冷凍装置50が作動して、圧縮機52により圧縮された冷媒ガスが凝縮器により冷却されて液化し、この液化冷媒が膨張弁を通って冷却水槽内20の蒸発管51に導かれ、冷却水槽20内の冷却水が蒸発管51で気化する液化冷媒により冷却される。このとき、冷却水槽20内の冷却水は蒸発管51の周囲で徐々に冷却されて凍結して氷Iとなる。冷却水槽20内の冷却水が十分に冷却された状態で、注出コック13のレバーを傾動させると、図示しないビール樽から圧送されるビールが飲料冷却管60を通過するときに冷却水と熱交換により冷却されて注出コック13から注ぎ出される。
【0018】
冷却水槽20の蒸発管51の周囲に成長する氷(図5の2点鎖線で示すI)は、螺旋状の蒸発管51の内周側及び外周側に徐々に成長していく。このとき、蒸発管51の網状筒部材43に近接する部分は、網状筒部材43側に熱伝導性の低い樹脂部材よりなるホルダ54が蒸発管51を覆うようにして設けられているので、蒸発管51の網状筒部材43に近接する部分に成長する氷はホルダ54により抑制されて網状筒部材43に接触しにくくなる。これにより、網状筒部材43が氷により蒸発管51に接着されにくくなり、ビールディスペンサ10をメンテナンスをするときに、蓋12、電装部品収容箱30及び撹拌モータ40等を取り外した後で、網状筒部材43を取り外せないおそれが減少する。また、蒸発管51の周囲の氷が網状筒部材43を超えて成長しにくくなるので、撹拌羽根42が氷にぶつかって破損するおそれが減少する。
【0019】
また、ホルダ54の上端は撹拌モータ40を支持する支持板部31の下面に当接しているので、撹拌モータ40から発生する熱が支持板部31を介してホルダ54に伝達される。これにより、蒸発管51の網状筒部材43に近接する部分の氷の成長がさらに抑制されて、上記の効果をより確実に得ることができる。
【0020】
上記の実施形態においては、蒸発管51を保持するホルダ54は2本であるが、本発明はこれに限られるものでなく、例えば、網状筒部材43が冷却水槽20内で図6に示す位置より少し後側に配置されて螺旋状の蒸発管51の後部に近接していれば、螺旋状の蒸発管51の内周側後部にホルダ54をさらに追加してホルダ54を3本またはそれ以上にすれば、上記と同様の作用効果を確実に得ることができる。
【0021】
上記の実施形態においては、上側から見た蒸発管51の形状が小判形をして螺旋状に巻回しているが、上面から見た蒸発管51の形状を他の形状としたときに、蒸発管51の網状筒部材43に近接する部分をホルダ54で覆うように設けたときでも同様の作用効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0022】
10…飲料冷却装置(ビールディスペンサ)、20…冷却水槽、31…支持板(支持板部)、40…撹拌モータ、42…撹拌羽根、43…網状筒部材、50…冷凍装置、51…蒸発管、54…ホルダ、60…飲料冷却管。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷却水を貯える冷却水槽と、
前記冷却水槽内に設けられて冷却水を撹拌するための撹拌羽根と、
前記冷却水槽内で前記撹拌羽根を囲うように設けられた網状筒部材と、
前記冷却水槽内で前記網状筒部材の外周側に螺旋状に巻回して設けられた冷凍装置の蒸発管と、
前記冷却水槽内に柱状に設けられて前記蒸発管の巻線方向の間隔を所定間隔となるように保持するためのホルダと、
前記冷却水槽内で前記蒸発管の外周側に設けられた飲料を冷却するための飲料冷却管とを備えた飲料冷却装置であって、
前記ホルダは熱伝導性の低い樹脂部材よりなり、前記蒸発管の前記網状筒部材に近接する位置で前記蒸発管の前記網状筒部材側を覆うように設けたことを特徴とする飲料冷却装置。
【請求項2】
請求項1に記載の飲料冷却装置において、
前記撹拌羽根を回転させる撹拌モータは前記冷却水槽の上側に設けられた支持板により支持され、
前記ホルダの上端部は前記支持板に当接するようにしたことを特徴とする飲料冷却装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−169566(P2011−169566A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−36514(P2010−36514)
【出願日】平成22年2月22日(2010.2.22)
【出願人】(000194893)ホシザキ電機株式会社 (989)
【Fターム(参考)】