説明

飲料容器の内部観察具

【課題】飲料容器の口金部の開口から挿入して飲料容器の内部を容易に観察することができ、構造が簡単で低コストで製造できる飲料容器の内部観察具を提供する。
【解決手段】飲料容器の内部観察具であって、パイプ状の器具本体2と、器具本体の先端部に揺動可能に支持された支持アーム3と、支持アームの揺動先端側に回動可能に支持された鏡4と、器具本体の内部に移動可能に配置され、先端側が器具本体の外部に取り出されて鏡の端部に接続されたワイヤ5とを有し、先端側を口金および支持枠部の開口部から容器内部に挿入する際には、鏡および支持アームの長手方向が器具本体の長手方向とほぼ一致するようにされ、先端側を容器内部に挿入後、ワイヤを器具本体に対して長手方向に移動させることにより、鏡を回動させるとともに支持アームを揺動させて鏡を観察位置に設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ビール樽等の飲料容器の内部を観察するための観察具に関するものであり、さらに詳しくは、飲料容器の口金部の開口から挿入して飲料容器の内部を容易に観察可能とする飲料容器の内部観察具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のビール樽等の飲料容器では、飲料容器に口金が溶接等によって固定されており、その口金にフィッティングがねじ込まれて取り付けられていた。そして、そのフィッティングにディスペンスヘッドが接続される。このディスペンスヘッドを介して飲料容器内に二酸化炭素等の圧力ガスを供給し、飲料容器内の飲料を容器外に注出する。
【0003】
このような構成のフィッティングは、口金にフィッティングがねじ込み固定されているとはいえ、口金とフィッティングとの間に微少な隙間が存在する。その隙間から雨水や生ビールが侵入する。隙間から侵入したそれらの汚水は、パッキンにより飲料容器内への侵入は阻止されるが、口金とフィッティングとの間に長くとどまり、衛生上好ましいものではない。この隙間内の汚水は、飲料容器を炎天下に放置した場合などには、熱膨張して隙間からしみ出てくるおそれがあり、さらには口金内に侵入して飲料を汚染するおそれもある。
【0004】
そこで、本発明の出願人により、下記の特許文献1に記載されたフィッティングが提案されている。特許文献1のフィッティングは、ビール樽の口金とフィッティングが一体に設けられているので、口金およびフィッティングの上面の間隙がなく、その間隙への異物や汚水等の侵入は発生しない。このような一体型フィッティングのガス弁は、傾斜状態では弁座部の中央孔を通過可能であるが、水平状態では弁座部の中央孔を通過不能であり、弁座部の中央孔を通してガス弁を交換することが可能である。
【特許文献1】特開2007−055612号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のようなフィッティングは、取付部材または取付部が口金と一体的に固定または形成されているため、取付部材または取付部を口金から取り外すことはできない。このため、口金の開口部から飲料容器の内部を観察することが難しくなっている。特に、取付部の下面側は口金の開口部から直接観察することはできない。このため、取付部の下面側やその周辺部分、その他の飲料容器の内面の状態を観察し、飲料容器の内部の状態を点検することが困難であるという問題点があった。
【0006】
また、内視鏡やファイバースコープというような機器を使用すれば、口金の開口部から飲料容器の内部を観察することも可能である。しかし、そのような医療用または工業用の機器は、極めて高価であり、また、使用方法も複雑であるため、多数の飲料容器の日常的な観察や点検作業に使用するには不都合である。
【0007】
そこで、本発明は、一体型フィッティングを備えた飲料容器やその他の飲料容器の口金部の開口から挿入して飲料容器の内部を容易に観察することができ、しかも、構造が簡単で低コストで製造できる飲料容器の内部観察具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明の飲料容器の内部観察具は、口金が固定されるとともに口金の下方の容器内部に支持枠部が固定された飲料容器の内部観察具であって、パイプ状の器具本体と、前記器具本体の先端部に揺動可能に支持された支持アームと、前記口金および前記支持枠部の開口部の最小の内径よりも小さな幅を有するとともに、その幅に比べて2倍以上の長さを有し、前記支持アームの揺動先端側に回動可能に支持された鏡と、前記器具本体の内部に移動可能に配置され、先端側が前記器具本体の外部に取り出されて前記鏡の端部に接続されたワイヤとを有する。そして、先端側を前記口金および前記支持枠部の開口部から容器内部に挿入する際には、前記鏡および前記支持アームの長手方向が前記器具本体の長手方向とほぼ一致するような状態とされ、先端側を容器内部に挿入後、前記ワイヤを前記器具本体に対して長手方向に移動させることにより、前記鏡を回動させるとともに前記支持アームを揺動させて前記鏡を観察位置に設定するものである。
【0009】
また、上記の飲料容器の内部観察具において、前記器具本体および前記ワイヤは、ステンレス鋼からなるものであることが好ましい。
【0010】
また、上記の飲料容器の内部観察具において、前記鏡は略90度回動可能に前記支持アームに支持されており、前記支持アームは略120度揺動可能に前記器具本体に支持されていることが好ましい。
【0011】
また、上記の飲料容器の内部観察具において、前記鏡は、その幅に比べて3倍以上の長さを有するものであることが好ましい。
【0012】
また、上記の飲料容器の内部観察具において、前記鏡は、前記支持枠部の下面および側面を観察可能な位置に設定できるものであることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、以上のように構成されているので、以下のような効果を奏する。
【0014】
本発明の内部観察具によれば、飲料容器の内部の状態の観察および点検を簡単な操作で容易に実施することができる。内部観察具の操作方法も簡単であり、非熟練者でも容易に観察および点検を行うことができる。また、内部観察具は、鏡を観察位置にセットするための機構も簡素であり、構造が簡単で低コストにて提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。図1は、本発明の内部観察具1の全体構成を示す図である。この内部観察具1は、飲料容器の内部を容易に観察するための器具である。例えば、飲料としては生ビール、飲料容器としてはビール樽に適用でき、ビール樽の内部を容易に観察することができ、その内部の状態を点検することができる。この内部観察具1によって内部を観察する対象物としてのビール樽9は、例えば、図4に断面図で示すような構造である。
【0016】
内部観察具1は、図1から図3によってその構造を図示している。図1は、内部観察具1を正面から見た全体構成を示す図である。図2は、内部観察具1を側面側から見た図である。また、図3は、内部観察具1の観察時の状態を示す図である。内部観察具1の本体部は、ステンレス鋼からなるパイプ状の器具本体2である。器具本体2は内部が中空の円筒パイプからなり、器具本体2の内部にはステンレス鋼からなるワイヤ5が軸方向に移動可能に挿入されている。
【0017】
器具本体2の先端側には、支持アーム3が揺動可能に支持されている。支持アーム3は、図2に示すような器具本体2の中心軸線を延長した方向にある位置から、図3に示す120度回動した位置まで揺動させることができる。このように、支持アーム3の根元部は器具本体2の先端部に軸支されているが、その支持アーム3の先端部には鏡4が回動可能に軸支されている。鏡4は、細長い長方形の形状であり、長さに比べて幅が狭くなっている。これは、鏡4がビール樽9(図4参照)の口金91および支持枠部92の中央孔を通過できるようにするためである。
【0018】
すなわち、鏡4の幅は口金91および支持枠部92の開口部(中央孔)の最小の内径よりも小さな寸法とされている。また、観察視野の関係から、鏡4の長さは幅の2倍以上の寸法とされている。鏡4の長さは、さらに長い方が望ましく、幅の3倍以上が望ましい。ここでは、鏡4の長さは幅のほぼ4倍となっている。なお、支持アーム3および鏡4もステンレス鋼によって形成されている。
【0019】
鏡4は、図1に示すように90度回動可能に支持されている。鏡4の長さ方向が、支持アーム3の中心軸方向に向く位置から、中心軸方向と直交する位置まで回動可能である。なお、支持アーム3の器具本体2に対する支持軸(回動軸)の方向は、器具本体2の中心軸方向に対して垂直方向である。また、鏡4の支持アーム3に対する支持軸(回動軸)の方向は、支持アーム3の中心軸方向に対して垂直方向である。そして、鏡4の支持アーム3に対する支持軸の方向と支持アーム3の器具本体2に対する支持軸の方向も互いに垂直の関係にある。
【0020】
器具本体2の内部にはワイヤ5が軸方向に移動可能に挿入されているが、ワイヤ5の先端側は器具本体2の側面に設けられた側面孔から外側に取り出されている。ワイヤ5の後端部は器具本体2の後端から突出されている。ワイヤ5の後端部には摘み51が固定されており、摘み51を手で持って後方に引っ張ることにより、ワイヤ5を後方に移動させることができる。ワイヤ5の先端部は鏡4の先端角部に接続されている。鏡4の支持軸の位置は、鏡4の長さ方向の中心からは偏った位置に設定される。ワイヤ5が接続された先端側の長さが後方側の長さよりも長くされている。
【0021】
器具本体2の先端には、先端部材6が固定されている。先端部材6は、支持アーム3の揺動を上方で停止させるためのストッパとして機能するものである。器具本体2の中ほどには係止部7が設けられている。係止部7は、口金91の上端部と当接して、内部観察具1を観察に適する位置に係止するためのものである。係止部7は、器具本体2上を摺動および固定可能であり、観察位置を調整可能であることが望ましい。
【0022】
ビール樽9に挿入するときには、内部観察具1はほぼ鉛直方向に向けられる。そのため、重力によって、鏡4はワイヤ5が接続された先端側が下方になるように回動し、支持アーム3も鉛直方向に向く。すなわち、支持アーム3と鏡4は、図1の実線で示すような状態になる。このため、内部観察具1は横幅の寸法が小さい状態となり、口金91および支持枠部92の中央孔を通過して、ビール樽9の内部に挿入できるのである。
【0023】
内部観察具1の鏡4および支持アーム3をビール樽9の内部に挿入したら、摘み51を後方に引っ張ることにより、ワイヤ5を介して鏡4を90度回動させる。図1では鏡4を90度回動させた状態を二点鎖線で示している。また、鏡4が90度回動した状態でそれ以上の回動を止めるためのストッパ(図示せず)が設けられている。次に、摘み51をさらに後方に引っ張ると、鏡4はそれ以上回動しないので、鏡4と支持アーム3が上方に引き上げられ、120度揺動して先端部材6に当接する位置に設定される。これは図3に示す状態である。
【0024】
図4は、内部観察具1によって内部を観察する飲料容器の例としてのビール樽9の構成を示す断面図である。ビール樽9には、本体の破損を防止するための上部プロテクタ93と下部プロテクタ94が固定されている。ビール樽9の上部には口金91が溶接等により固定されている。この口金91はフィッティングと一体構造のものであり、口金91の内周面側にはガス弁に対する弁座部が設けられている。また、口金91の下方側には、ダウンチューブなどを支持する支持枠部92が一体的に設けられている。この支持枠部92も口金91とともにビール樽9に固定されている。
【0025】
口金91の中央部はビールを注出するために孔となっている。支持枠部92の中央部もダウンチューブを挿入するための孔が設けられている。支持枠部92の側面側には加圧された二酸化炭素ガスをビール樽9内部に送るための窓が形成されている。支持枠部92の下部は比較的細い3本の接続部により上方の口金91と接続されており、3本の接続部の間が3つの窓になっている。このように、ビール樽9に固定された口金91および支持枠部92の下面側の状態を、内部観察具1によって観察し点検を行うのである。
【0026】
図5は、内部観察具1をビール樽9内に挿入した状態を示す図である。内部観察具1は正面側から見た図である。また、図6は、このときの内部観察具1を側面側から見た図である。図5の破線で表示した鏡4aで示すように、鏡4はワイヤ5が接続された先端側が重力によって下方になるように回動し、長さ方向が鉛直方向に向いた状態でビール樽9の内部に挿入される。支持アーム3も鉛直方向に向いている。
【0027】
次に、ワイヤ後端(上端)の摘み51を後方(上方)に引っ張ることにより、ワイヤ5を介して鏡4を90度回動させる。この状態は破線で表示した鏡4bで示されている。摘み51をさらに後方に引っ張ると、鏡4と支持アーム3が上方に引き上げられ、鉛直方向から120度揺動した位置で係止される。この鏡4と支持アーム3の位置が観察位置となる。
【0028】
図6に示すように、観察位置の鏡4により、口金91の中央孔と支持枠部92の側面の窓を通して、支持枠部92の下面側および口金91の溶接部内面側の観察を行うことができる。なお、内面観察のための光量が不足する場合は、白色発光ダイオード等の光源素子を支持アーム3や器具本体2下部の適宜位置に設けることが望ましい。また、光源は内部観察具1とは別にビール樽9内に設置するようにしてもよい。
【0029】
観察および点検が終了したら、後方に引っ張っている摘み51を放すと、重力により、支持アーム3が鉛直方向に垂下し、鏡4はワイヤ5が接続された先端側が下方に回動し長さ方向が鉛直方向を向くようになる。ワイヤ5も下降する。この状態になれば、内部観察具1をビール樽9から引き抜くことができる。
【0030】
このようにして、ビール樽9の内面の観察および点検を容易に実施することができる。内部観察具1の操作方法も簡単であり、非熟練者でも容易に観察および点検を行うことができる。また、内部観察具1は、鏡を観察位置にセットするための機構も簡素であり、構造が簡単で低コストにて提供することができる。
【0031】
なお、以上の実施の形態では、飲料として生ビール、飲料容器としてビール樽を例に挙げて説明したが、それ以外の任意の飲料と飲料容器にも適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明によれば、飲料容器の内部の状態を容易に観察・点検することができる。また、そのための内部観察具を低コストで製造し提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の内部観察具1の全体構成を示す正面図である。
【図2】内部観察具1を側面側から見た図である。
【図3】内部観察具1の観察時の状態を示す図である。
【図4】飲料容器の例としてのビール樽9の構成を示す断面図である。
【図5】内部観察具1をビール樽9内に挿入した状態を示す図である。
【図6】ビール樽9内の内部観察具1を側面側から見た図である。
【符号の説明】
【0034】
1 内部観察具
2 器具本体
3 支持アーム
4 鏡
5 ワイヤ
6 先端部材
7 係止部
9 ビール樽
51 摘み
91 口金
92 支持枠部
93 上部プロテクタ
94 下部プロテクタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
口金(91)が固定されるとともに口金の下方の容器内部に支持枠部(92)が固定された飲料容器(9)の内部観察具であって、
パイプ状の器具本体(2)と、
前記器具本体(2)の先端部に揺動可能に支持された支持アーム(3)と、
前記口金(91)および前記支持枠部(92)の開口部の最小の内径よりも小さな幅を有するとともに、その幅に比べて2倍以上の長さを有し、前記支持アーム(3)の揺動先端側に回動可能に支持された鏡(4)と、
前記器具本体(2)の内部に移動可能に配置され、先端側が前記器具本体(2)の外部に取り出されて前記鏡(4)の端部に接続されたワイヤ(5)とを有し、
先端側を前記口金(91)および前記支持枠部(92)の開口部から容器内部に挿入する際には、前記鏡(4)および前記支持アーム(3)の長手方向が前記器具本体(2)の長手方向とほぼ一致するような状態とされ、
先端側を容器内部に挿入後、前記ワイヤ(5)を前記器具本体(2)に対して長手方向に移動させることにより、前記鏡(4)を回動させるとともに前記支持アーム(3)を揺動させて前記鏡(4)を観察位置に設定するものである飲料容器の内部観察具。
【請求項2】
請求項1に記載した飲料容器の内部観察具であって、
前記器具本体(2)および前記ワイヤ(5)は、ステンレス鋼からなるものである飲料容器の内部観察具。
【請求項3】
請求項1,2のいずれか1項に記載した飲料容器の内部観察具であって、
前記鏡(4)は略90度回動可能に前記支持アーム(3)に支持されており、
前記支持アーム(3)は略120度揺動可能に前記器具本体(4)に支持されている飲料容器の内部観察具。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載した飲料容器の内部観察具であって、
前記鏡(4)は、その幅に比べて3倍以上の長さを有するものである飲料容器の内部観察具。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載した飲料容器の内部観察具であって、
前記鏡(4)は、前記支持枠部(92)の下面および側面を観察可能な位置に設定できるものである飲料容器の内部観察具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−44148(P2010−44148A)
【公開日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−206759(P2008−206759)
【出願日】平成20年8月11日(2008.8.11)
【出願人】(000000055)アサヒビール株式会社 (535)
【出願人】(591036996)フジテクノ株式会社 (31)
【Fターム(参考)】