説明

飲食物携帯用容器

【課題】飲食物携帯用容器の栓キャップ部材を回して栓部材との締結を解除する操作性の低下を避けつつ、栓体側周を成す栓キャップ部材の側周部分の栓部材からの高さ等を低く設けられるようにする。
【解決手段】第1のねじ筒部4及び底壁5をもつ栓部材6と、第2のねじ筒部7及び天井壁8をもつ栓キャップ部材9とを締結して容器1内に位置する内部空間3を形成できる栓体2を、栓部材6の容器側周カバー部10と容器1のねじ部11,12で着脱可能とし、凸面23a,28等が同時期に複数個所で係合することで栓キャップ部材9と栓部材6の締付け回転の限界位置が一箇所に定まり、前記係合よりも手前の時期に凸部22,27の乗り越え合いで回転抵抗が変動し、回転抵抗が軽くなる回転位置で締付け回転の終了位置を設定し、乗り越えの間に橋状部25の撓みによって凸部22が回転中心側に変位するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、飲食物を入れる容器と栓体とを備えた飲食物携帯用容器に関する。
【背景技術】
【0002】
飲料、又は汁物、カレールー、粥等の食物を容器に入れて携帯することができる飲食物携帯用容器には、容器内の水分が外部に漏洩しないよう容器口を閉塞する栓体が着脱可能に備えられている。この種の栓体には、空気断熱室、断熱材の設置空間、茶葉や調味料入れ等の目的で内部空間が設けられている。
【0003】
中でも、第1のねじ筒部及び内部空間の底壁が設けられた栓部材と、第2のねじ筒部及び内部空間の天井壁が設けられた栓キャップ部材とを両ねじ筒部で着脱可能に締結することにより内部空間が形成されるようになった栓体がある(特許文献1、2)。この栓体は、栓部材に第1のねじ筒部と一体に設けられた容器側周カバー部と容器のねじ部により容器に着脱可能とされている。ねじ筒部と両ねじ部は、一般的に馴染まれた操作性を考慮し、右ねじとされている。栓体を容器から外す際、栓部材の容器側周カバー部をねじの軸線方向から掴んで捻り、ねじ部の締結を解除する。栓キャップ部材の側周が栓体の側周を構成していると、容器側周カバー部の側周を掴んだつもりで栓キャップ部材の側周だけを掴み、不意に栓キャップ部材だけを緩めてしまうことが起こり得る。この問題を防止するべく、特許文献1のように、従来、栓部材と栓キャップ部材の締付け力を意図的に大きくし、栓キャップ部材が容易に緩まないようにしたり、栓体の側周を構成する栓キャップ部材の側周部分の外径を小さくしたりすることもある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3144339号公報
【特許文献2】特開2009−67409号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
例えば、容器の容量を大きくすると、栓部材の容器側周カバー部の外径も大きくなり、容器側周カバー部を軸線方向から掴み難くなる。このため、栓キャップ部材の上面を容器側周カバー部よりも軸線方向に低くしたり、栓体の側周を構成する栓キャップ部材の側周部分の容器側周カバー部からの軸線方向の高さを低くしたりすることにより、容器側周カバー部を掴み易くし、栓体を容器から外すときの栓キャップ部材の不意の単独緩めを防止した方がよい。
【0006】
しかしながら、栓キャップ部材の上面を低くすると、栓キャップ部材の外径が小さくなり、指を差し込む凹部を形成することを要する。したがって、栓キャップ部材の掴み径が小さくなる。栓キャップ部材と栓部材の締結においてうっかり強く締め過ぎすると、後で栓キャップ部材を回して栓体を分解するとき、栓キャップ部材を捻ることが特に難しくなる。なお、容量を大きくする場合においては、内部空間の断熱性能を高めたり、収容量を増やしたりするため、内部空間を大きくすることを求められることも多く、凹部を十分に大きく、深くすることができない場合もある。
【0007】
また、栓キャップ部材の側周部分の容器側周カバー部からの軸線方向の高さを低くすると、栓キャップ部材の掴み径を比較的に大きくすることはできるが、係る側周部分の厚みが少なくなる。したがって、栓体を容器に付けた状態で栓キャップ部材を外すときは、指で側周部分を浅く掴むことになり、栓体を容器から外した状態で栓キャップ部材を外すときは、側周部分の強度が頼りない。したがって、いずれのときでも、栓キャップ部材をうっかり強く締め過ぎると、栓キャップ部材を捻ることが特に難しくなる。
【0008】
そうかといって、栓キャップ部材と栓部材の締結に必要な締付け力を小さく設定すると、不意の単独緩めが生じ易くなるし、うっかり締付け不足になったときは不意に栓キャップ部材が外れ易くなってしまう。
【0009】
そこで、この発明の課題は、栓キャップ部材を回して栓部材との締結を解除する操作性の低下を避けつつ、栓体の側周を構成する栓キャップ部材の側周部分の栓部材の容器側周カバー部からの高さをより低く設け、又は栓キャップ部材の上面を容器側周カバー部よりも低く設けられるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するため、この発明は、飲食物を入れる容器と、この容器に着脱される栓体とを備え、この栓体は、前記容器内に位置する内部空間を有し、第1のねじ筒部及び前記内部空間の底壁が設けられた栓部材と、第2のねじ筒部及び前記内部空間の天井壁が設けられた栓キャップ部材とを両ねじ筒部で着脱可能に締結することにより前記内部空間が形成されるようになっており、前記栓体は、前記栓部材に前記第1のねじ筒部と一体に設けられた容器側周カバー部と前記容器のねじ部により該容器に着脱可能とされている飲食物携帯用容器において、前記栓キャップ部材と前記栓部材の凸面同士の係合により前記締結の締付け回転の限界位置を一箇所に定める回り止め構造と、前記係合よりも手前の時期に両部材の凸部同士が乗り越え合うことにより回転抵抗が重くなってから軽くなる操作負荷変動構造とを備え、前記回転抵抗が軽くなる回転位置で前記締付け回転の終了位置が設定されており、前記両凸部の一方が、橋状部上で径方向に突出し、前記乗り越えの間に該橋状部の撓みによって回転中心側に変位するように設けられている構成を採用した。
【0011】
栓キャップ部材と栓部材の係合により締付け回転の限界位置を一箇所に定める回り止め構造を採用すれば、うっかり強く締め過ぎることはない。両部材の凸部同士が乗り越え合うことにより回転抵抗が重くなってから軽くなる操作負荷変動構造を備え、回転抵抗が軽くなる回転位置で締付け回転の終了位置が設定されていると、締付け回転の終了位置が両部材の締結に要する締付け力で決まる位置であるから、締付け回転の終了位置まで回したことを操作負荷変動構造で操作者に確認させ、うっかり締付け不足になることを防止することができる。すなわち、回り止め構造と操作負荷変動構造とにより、両部材の締結毎に適切な締付け力となるよう締付け操作を制限することができる。
回転抵抗が軽くなる回転位置で締付け回転の終了位置が設定されているため、締付け回転を終えた状態では、橋状部の撓みの弾性回復により操作負荷変動構造が緩み止めになる。したがって、両部材の締結に必要な締付け力のみで栓キャップ部材の不意の単独緩みを防止する必要はなく、締結解除回転のトルクを小さくし、栓キャップ部材を回し易くすることができる。操作負荷変動構造を構成する両凸部の一方が、橋状部上で径方向に突出し、前記乗り越えの間に該橋状部の撓みによって回転中心側に変位するように設けられているので、この間の締付けトルクを回転操作が困難にならないよう抑制することができる。
このように、この発明の構成によれば、両部材の締結毎に適切な締付け力となるよう締付け操作を行わせるようにし、栓キャップ部材を回転操作が困難にならないように回し易くすることが可能なので、栓キャップ部材を回して栓部材との締結を解除する操作性の低下を避けつつ、栓体の側周を構成する栓キャップ部材の側周部分の栓部材の容器側周カバー部からの高さ、又は栓キャップ部材の上面を容器側周カバー部よりも低く設けられるようにすることができる。
【0012】
例えば、前記橋状部は、前記栓キャップ部材と前記栓部材の対応する方に複数の径方向貫通孔を形成することで設けられており、前記複数の径方向貫通孔は、対応するねじ筒部の先端からの軸線方向高さがねじ山の圧力側フランクの螺合開始端よりも高い位置に形成されている構成を採用することができる。
【0013】
ねじ筒部の先端からの軸線方向高さがねじ山の圧力側フランクの螺合開始端よりも高いねじ筒部分は、ねじ筒部の先端からの軸線方向高さがねじ山よりも低いねじ筒部分と比して、ねじ山の螺旋形成によって剛性が高くなっている。したがって、比較的に低いねじ筒部分に複数の径方向貫通孔の一つを配した場合や、一つの径方向貫通孔を形成してねじ筒部の先端に橋状部を配した場合と比して、栓キャップ部材と栓部材を分離してこれらを洗浄するとき、誤って橋状部やねじ筒部の先端付近を押されても変形し難く、これらの部分の破損や疲労を防止できるので、橋状部の変形による操作負荷変動構造の機能低下やねじ筒部の先端付近の破損による設定締付け力からの狂いを防止することができる。
【0014】
前記橋状部の境界上に前記凸面をもつ係合凸部が一体に成形されている構成を採用することができる。
【0015】
回り止め構造を構成する凸面をもつ係合凸部を橋状部の境界上に一体に成形することにより、係合凸部を利用して橋状部の境界上の強度を高めることができる。
【0016】
前記回り止め構造が、同時期に複数個所で係合するように設けられている構成を採用することができる。
【0017】
同時期に複数個所で係合することにより締付け回転を止めるので、個々の係合箇所の負担を軽減することができる。特に、橋状部の境界上に前記係合凸部を一体に成形するときは、小さな係合凸部にできるので、係合凸部が橋状部に撓み性を与える支障になり難い。
【発明の効果】
【0018】
上述のように、この発明は、前記回り止め構造と前記操作負荷変動構造とにより、両部材の締結毎に適切な締付け力となるよう締付け操作を制限し、前記操作負荷変動構造を設けることにより、栓キャップ部材を回転操作が困難にならないように回し易くすることが可能なので、栓キャップ部材を回して栓部材との締結を解除する操作性の低下を避けつつ、栓体の側周を構成する栓キャップ部材の側周部分の栓部材の容器側周カバー部からの高さ、又は栓キャップ部材の上面を容器側周カバー部よりも低く設けられるようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】(a)は、第1実施形態に係る栓キャップ部材と栓部材を締結する締付け回転の途中の様子を示す断面図、(b)は、前記(a)の要部平面図、(c)は、前記(a)の時期から回転が進み栓キャップ部材の凸部が栓部材の凸部を乗り越える様子を示す部分拡大平面図、(d)は、前記(c)の時期から回転が進み栓キャップ部材の凸面等が栓部材の凸面等に係合した様子を示す断面図、(e)は、前記(d)の要部平面図
【図2】第1実施形態に係る飲食物携帯用容器の全体構成を示す縦断面図
【図3】第1実施形態に係る栓体の分解斜視図
【図4】(a)は、第1実施形態に係る栓キャップ部材の側面図、(b)は、前記(a)の底面図、(c)は、前記(b)中のc−c線の断面図
【図5】第2実施形態に係る飲食物携帯用容器の全体構成を示す縦断面図
【発明を実施するための形態】
【0020】
図2に示すように、この発明の第1実施形態に係る飲食物携帯用容器は、飲食物を入れる容器1と、この容器1に着脱される栓体2とを備える。栓体2は、容器1内に位置する内部空間3を有する。また、栓体2は、第1のねじ筒部4及び内部空間3の底壁5が設けられた栓部材6と、第2のねじ筒部7及び内部空間3の天井壁8が設けられた栓キャップ部材9とを両ねじ筒部4,7で着脱可能に締結することにより内部空間3が形成されるようになっている。栓体2は、栓部材6に第1のねじ筒部4と一体に設けられた容器側周カバー部10と容器1のねじ部11,12により容器1に着脱可能とされている。
【0021】
ねじ筒部4,7、及びねじ部11,12は、それぞれ水平面に対して垂直な同心のねじの軸線をもつ。ねじの左右方向は、右ねじとされている。以下、水平面上に容器1を立てた状態における垂直方向を上下方向といい、ねじの軸線回りの円周方向を周方向といい、あるものの側面を成し周方向全周に亘る部分を側周という。
【0022】
容器1は、上面に容器口が開放されている。例えば、容器1として、適宜の断熱容器を用いることができる。図示例では、真空二重容器とされている。
【0023】
栓体2の内部空間3と容器1内間を仕切る栓部材6の底壁5に、逆止弁13が設けられている。逆止弁13は、内部空間3を通じて外気を導入可能とし、容器1内の負圧を解消することができる。
【0024】
図2,図3に示すように、栓部材6は、第1のねじ筒部4及び内部空間3の底壁5が一体に成形された底部材14と、容器側周カバー部10及び容器1の容器口縁を上方から跨ぐ上面部15が一体に成形されたリング部材16とを結合した構造になっている。これにより、栓部材6に容器側周カバー部10が一体に設けられている。結合構造は、特に限定されないが、図示例では、凹凸形状で回り止めを図った強制嵌合とされている。
【0025】
第1のねじ筒部4、容器側周カバー部10は、それぞれ雌ねじになっている。
【0026】
容器側周カバー部10の側周に部分的に凹んだ指添え面17が周方向の複数個所に形成されている。指添え面17は、栓体2を容器1に着脱するときに指を掛ける正規の部分に定められている。指添え面17は省略することもできる。
【0027】
栓キャップ部材9は、第2のねじ筒部7と、天井壁8と、栓部材6の上面部15と上下に重なる部分をもち栓体2の側周を構成する外フランジ部18とが一体に成形されている。天井壁8の上面は、他の容器19を載せることが可能になっている。
【0028】
外フランジ部18は、第1のねじ筒部4と、第2のねじ筒部7とを締結する締付け回転により、底部材6の上面部15に接し、ねじ頭として機能する。
【0029】
栓キャップ部材9,底部材14、リング部材16のそれぞれは、合成樹脂の射出成形により形成されている。両部材14,16の形状が複雑なため、流動性、コストを考慮し、合成樹脂として非繊維強化のものが採用されている。
【0030】
容器1は、飲食物携帯用であり、これは、飲料携帯専用、食料携帯専用、飲食料携帯兼用のいずれでもよいことを意味する。図示例では、飲食料携帯兼用にする容量を二重断熱容器で確保するため、容器1の側周胴部の外径D1は、85mmを超えている。容器1の容器側周カバー部10と底カバー部材19との間の側周胴部を転倒時に打ち難くするため、容器側周カバー部10の外径D2は、外径D1よりも大きく設けられている。外径D1,外径D2の大きさを考慮し、飲食容器1に正規に螺着された状態で、栓体2の側周を構成する栓キャップ部材9の側周部分の上下方向幅tは、5mm以下とされている。なお、外径D1,外径D2、上下方向幅tのそれぞれは、一例であり、外径D1,外径D2を小さくすれば、上下方向幅tを5mmを超える値にすることも可能である。外径D2を85mm以下にするときでも、栓キャップ部材9のみを緩めないようにするには、上下方向幅tをできるだけ小さくする方がよい。
【0031】
図3,図4に示すように、栓キャップ部材9は、雄ねじとされた第2のねじ筒部7の側周にねじ山20が形成されている。ねじ山20の圧力側フランク21の螺旋形状は、螺合開始端から終端まで一連性をもつ。第2のねじ筒部7には、意図的に解除回転トルクを大きくする部分が特に設けられていない。
【0032】
第2のねじ筒部7の側周に、凸部22と、凸面23aをもった係合凸部23とが成形されている。凸部22,係合凸部23のそれぞれは、第1のねじ筒部4との締結の支障にならないようにするため、ねじ山20の圧力側フランク21の螺旋形状に沿った延長上の位置で、ねじ山20の山径以下で谷径から外径側に突出している。
【0033】
また、第2のねじ筒部7に、複数の径方向貫通孔24を形成することで橋状部25が設けられている。橋状部25がねじの軸線である回転中心側に撓むことにより、凸部22も同側に変位する。
【0034】
複数の径方向貫通孔24は、第2のねじ筒部7の先端からの軸線方向高さがねじ山20の圧力側フランク21の螺合開始端よりも高い位置に形成されている。したがって、栓キャップ部材9の洗浄時、ねじ筒部7が掴まれたり、スポンジや布で擦られたりしても、凸部22や橋状部25が押され難い。
【0035】
係合凸部23は、橋状部25の境界上に一体に成形されている。橋状部25の境界とは、橋幅を取れる部分のうち、最も緩み回転方向に寄った位置をいう。係合凸部23により境界付近の合成樹脂の肉厚が増すため、係合凸部23を利用して橋状部25の境界上の強度を高めることができる。係合凸部23は、橋状部25の前記撓みが所望に得られる限り、適宜の周方向長さ、配置にすることができる。
【0036】
図3に示すように、雌ねじである第1のねじ筒部4の側周に、ねじ山26と、凸部27と、凸面28と、係合突部29とが成形されている。凸部27,凸面28,係合突部29のそれぞれは、第2のねじ筒部との締結の支障にならないようにするため、ねじ山26の圧力側フランクの螺旋形状に沿った延長上の位置で、ねじ山26の山径以下で谷径から外径側に突出している。凸面28は、凸部27に形成されている。
【0037】
図1(a)に、栓キャップ部材9と栓部材6を締結する途中の様子を、栓キャップ部材9の第2のねじ筒部7のねじ山20が見えるように栓部材6の第1のねじ筒部4の半分を切り欠いた断面で示し、ねじ山20に螺合する第1のねじ筒部4のねじ山26を図中に2点鎖線で示す。図1(b)に、図1(a)における栓部材6の上面部15、第2のねじ筒部7のねじ山20を上方から見える断面で示す。図1(a),(b)における栓キャップ部材9の締付け回転(矢線方向)の時期において、栓キャップ部材9の凸部22,凸面23a,係合凸部23、栓部材6の凸部27,凸面28,係合突部29は、特に機能しないまま、締付け回転が進行する。
【0038】
やがて、図1(c)に示すように、凸部22,27同士が乗り始め、回転抵抗が乗り始め直前と比して重くなる。図1(c)からさらに締付け回転が進むと、図1(d),(e)に示すように、凸部22,27同士が互いの頂上を過ぎ、頂上同士が接する時期と比して回転抵抗が軽くなる。これにより、凸部22,27同士が乗り越え合った状態となる。なお、図1(c),(e)は、それぞれ図1(b)と同じ切欠き図示面とし、図1(d)は図1(a)と同じ切欠き図示面としている。
【0039】
前記の乗り越えの間に、図1(c)に示すように、凸部22は、橋状部25の撓みによって回転中心側に変位する。凸部22の変位により、この間の締付けトルクの大化を抑制することができる。これにより、図1(d),(e)に示すように乗り越え合った状態になるまで、栓キャップ部材9の薄い合成樹脂製の側周部分を掴んだ操作であっても締付け回転させることが格別の困難とならないようにしている。
【0040】
凸部22,27同士が乗り越え合った状態になると間もなく、栓キャップ部材9の凸部23に形成された凸面23aが、栓部材6の凸部27に形成された凸面28に突き当たり、栓キャップ部材9と栓部材6が締付け回転方向に係合する。前記回転抵抗が軽くなる回転位置、すなわち、頂上を過ぎてから凸面23aが凸面28に突き当たるまでの回転位置で、締付け回転の終了位置が設定されている。すなわち、係る回転位置では、栓キャップ部材9と栓部材6の締結に必要な締付け力が確保されるように設定されている。栓キャップ部材9と栓部材6の凸面23a,28同士の係合により、締付け回転を毎回、特定の一箇所の回転位置で止めることができる。すなわち、両ねじ筒部4,7による締結の締付け回転の限界位置を一箇所に定めることができる。
【0041】
また、凸面23a,28同士が突き当たるのと同時期に、栓キャップ部材9のねじ山20の螺旋方向先端部20aが、栓部材6の係合突部29に締付け回転方向に突き当たり、栓キャップ部材9と栓部材6が締付け回転方向に係合する。個々の係合箇所(凸面23a,28、ねじ山20の先端部20a,係合突部29)の負担を軽減することができる。橋状部25の境界上に係合凸部23を小さく成形できるので、係合凸部23が橋状部25に撓み性を与える支障になり難い。これらの中の一箇所の係合だけでも締付け回転を止めることができるようにし、耐故障性を高めている。
【0042】
上述のような第1実施形態は、栓キャップ部材9と栓部材6の凸面23a,28、ねじ山20の先端部20a,係合突部29同士の係合により両ねじ筒部4,7による締結の締付け回転の限界位置を一箇所に定める回り止め構造と、凸面23a,28同士等の係合よりも手前の時期に両部材9,6の凸部22,27同士が乗り越え合うことにより回転抵抗が重くなってから軽くなる操作負荷変動構造とを備え、回転抵抗が軽くなる回転位置で締付け回転の終了位置が設定され、凸部22が橋状部25上で径方向に突出し、前記乗り越えの間に橋状部25の撓みによって回転中心側に変位するように設けられているので、回り止め構造を成す凸面23a,28等により、うっかり強く締め過ぎることを無くし、操作負荷変動構造により、操作者を締付け回転の終了位置まで回したことを確認させ、うっかり締付け不足になることを無くすことができる。したがって、第1実施形態は、両部材9,6の締結毎に適切な締付け力となるよう締付け操作を構造的に制限することができる。
【0043】
第1実施形態は、回転抵抗が軽くなる回転位置で締付け回転の終了位置が設定されているため、締付け回転を終えた状態では、橋状部25の撓みの弾性回復により、操作負荷変動構造を成す凸部22が凸部27を解除回転方向に乗り越える抵抗が緩み止めになる。したがって、第1実施形態は、両部材9,6の締結に必要な締付け力のみで栓キャップ部材9の不意の単独緩みを防止する必要はなく、締結解除回転のトルクを小さくし、栓キャップ部材9を回し易くすることができる。
【0044】
第1実施形態は、操作負荷変動構造を構成する両凸部22,27の一方が、橋状部25上で径方向に突出し、前記乗り越えの間に橋状部25の撓みによって回転中心側に変位するように設けられているので、この間の締付けトルクを回転操作が困難にならないよう抑制することができる。
【0045】
上述のように、第1実施形態は、両部材9,6の締結毎に適切な締付け力となるよう締付け操作を行わせるようにし、栓キャップ部材9を回転操作が困難にならないように回し易くすることが可能なので、栓キャップ部材9を回して栓部材6との締結を解除する操作性の低下を避けつつ、図2に示すように、栓体2の側周を構成する栓キャップ部材9の側周部分の容器側周カバー部10からの高さをより低く設けられるようにすることができる。
【0046】
この発明が特に有益な飲食物携帯用容器として、栓体2を容器1から外すときの上方からの掴み難さから、容器側周カバー部10の外径D2が85mmを超えること、前記の掴み難さを緩和する目的から、栓体2の側周を構成する栓キャップ部材9の側周部分の上下方向幅tが5mm以下であり、容器側周カバー部10の外径D2以下の外径であること、及び、係る栓キャップ部材9の側周部分の把持に対する強度を材料で確保できる限界から、栓キャップ部材9が上述の合成樹脂で成形されていることを兼ね備えたものが挙げられる。
【0047】
なお、凸部22,27、係合凸部23,係合突部29,ねじ山20の先端部20aに代わる栓キャップ部材9側の係合突部,凸面23a,28等は、締結の支障にならない限り、栓キャップ部材9、栓部材6の適宜の位置に設けることができる。第1のねじ筒部4と第2のねじ筒部7の雄ねじと雌ねじの関係を逆にし、これに応じて凸部22,27等の関係を逆転させることもできる。第1のねじ筒部4と第2のねじ筒部7のねじ方向、図2に示す栓体2と容器1のねじ方向は、右ねじに限定されず、左ねじにすることもできる。凸部22が凸部27を乗り越えたときにクリック音が生じるようにし、確認を回転抵抗の変化だけでなく音でも確認させるようにすることもできる。
【0048】
この発明の第2実施形態を図5に基いて説明する。以下、第1実施形態と同じに考えられる構成要素の説明を省略し、相違点を中心に述べる。第2実施形態は、前記回り止め構造と前記操作負荷変動構造を備えることにより、栓体30を構成する栓部材31の容器側周カバー部10よりも栓キャップ部材32の上面を上下方向に低く設けられるようにし、内部空間33の容量を確保し易くしたものである。栓キャップ部材32と栓部材31の締結・締結解除時に栓キャップ部材32を回すため、栓キャップ部材32の天井壁34には、指を差し込んで捻ることができるように複数の凹部35が形成されている。上述のように、栓キャップ部材32を回転操作が困難にならないように回し易くすることが可能なので、凹部35が深く、径方向に大きくなることを避け、内部空間33の容量の減少を抑えることができる。
【符号の説明】
【0049】
1 容器
2,30 栓体
3,33 内部空間
4 第1のねじ筒部
5 底壁
6,31 栓部材
7 第2のねじ筒部
8,34 天井壁
9,32 栓キャップ部材
10 容器側周カバー部
11,12 ねじ部
20 ねじ山
20a 螺旋方向先端部
21 圧力側フランク
22,27 凸部
23a,28 凸面
23 係合凸部
24 径方向貫通孔
25 橋状部
29 係合突部
35 凹部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
飲食物を入れる容器と、この容器に着脱される栓体とを備え、この栓体は、前記容器内に位置する内部空間を有し、第1のねじ筒部及び前記内部空間の底壁が設けられた栓部材と、第2のねじ筒部及び前記内部空間の天井壁が設けられた栓キャップ部材とを両ねじ筒部で着脱可能に締結することにより前記内部空間が形成されるようになっており、前記栓体は、前記栓部材に前記第1のねじ筒部と一体に設けられた容器側周カバー部と前記容器のねじ部により該容器に着脱可能とされている飲食物携帯用容器において、前記栓キャップ部材と前記栓部材の凸面同士の係合により前記締結の締付け回転の限界位置を一箇所に定める回り止め構造と、前記係合よりも手前の時期に両部材の凸部同士が乗り越え合うことにより回転抵抗が重くなってから軽くなる操作負荷変動構造とを備え、前記回転抵抗が軽くなる回転位置で前記締付け回転の終了位置が設定されており、前記両凸部の一方が、橋状部上で径方向に突出し、前記乗り越えの間に該橋状部の撓みによって回転中心側に変位するように設けられていることを特徴とする飲食物携帯用容器。
【請求項2】
前記橋状部は、前記栓キャップ部材と前記栓部材の対応する方に複数の径方向貫通孔を形成することで設けられており、前記複数の径方向貫通孔は、対応するねじ筒部の先端からの軸線方向高さが圧力側フランクの螺合開始端よりも高い位置に形成されている請求項1に記載の飲食物携帯用容器。
【請求項3】
前記橋状部の境界上に前記凸面をもつ係合凸部が一体に成形されている請求項1又は2に記載の飲食物携帯用容器。
【請求項4】
前記回り止め構造が、同時期に複数個所で係合するように設けられている請求項1から3のいずれか1項に記載の飲食物携帯用容器。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2011−98761(P2011−98761A)
【公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−254997(P2009−254997)
【出願日】平成21年11月6日(2009.11.6)
【出願人】(000002473)象印マホービン株式会社 (440)
【Fターム(参考)】