説明

養殖フグのストレス抑制剤

【課題】 養殖フグのストレスを抑制し噛み傷や共食いを防ぐためγ−オリザノールを配合した養殖魚のストレス抑制剤を提供する。
【解決手段】γ−オリザノールを用いることを特徴とする養殖フグのストレス抑制剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は養殖フグのストレス抑制剤に関し、さらに詳しくはγ−オリザノールを含有する養殖フグのストレス抑制剤に関する。
【背景技術】
【0002】
高級魚であるトラフグは天然魚の漁獲量が年々減少しており、それに伴い養殖魚の需要が高まっている。しかし、トラフグなどのフグ類は他の養殖魚と比較して過密養殖によるストレスを受けやすく、高密度で養殖すると互いに噛み合い、噛み傷からの感染による疾病や共食などによる消耗を引き起こす。このため歩留まりは平均50〜60%程度で、悪い場合にはほとんど残らないこともある。この対策として歯の切除を出荷まで3回ほど行っているが、作業の手間や歯の切除による細菌感染など多くの問題をかかえている(熊井英水編、最新海産魚の養殖、湊文社、2000年、東京)。
【発明の開示】

【発明が解決しようとするための課題】
【0003】
本発明の目的は、養殖フグのストレスを抑制し噛み合いや共食いを防ぐことにある。
【0004】
本発明は、前記の目的を達成するため、種々の天然物質について検討を重ねた結果、米ぬかに含まれるγ−オリザノールが養殖フグのストレスを抑制し、噛み合いや共食いを軽減する効果を持つということを見出し、本発明を完成するに至った。
【課題を解決するための手段】
【0005】
すなわち、γ−オリザノールを養殖フグに与えることで過密養殖によるストレスを軽減し、噛み合いや共食いを抑制でき得るということを見出した。本発明によるγ−オリザノールはドライペレット、モイストペレットをはじめ、自家製飼料などいずれの形態の養魚飼料にも添加することができる。γ−オリザノールは純品もしくはこの化合物を含む米ぬか抽出物を用いることもできる。
【発明の効果】
【0006】
本発明のγ−オリザノールを必須成分とする養殖フグのストレス抑制剤は、養殖用配合飼料とともに使用することにより、養殖フグのストレスを抑制し、噛み合いや共食いを軽減する効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
養魚用配合飼料に添加するγ−オリザノールの量は、適宜調整することができるが、好ましくは0.001−10%の範囲であり、さらに好ましくは0.01−2%である。また、これらの化合物の投与期間も特に限定されるものではないが、養殖の全期間を通じて投与することが好ましい。
【0008】
本発明において用いられるγ−オリザノールは、下記の化1で示される化合物である。
【0009】
【化1】

【0010】
γ−オリザノールはフェルラ酸のエステルで、Rで示されるアルコール部分はステロール、トリテルペンアルコール、高級アルコールなどで構成される化合物である。これらの化合物は、米ぬかをはじめ多くの食物に含まれ、かつヒトが常に摂取しているものであるから、その安全性は確立されている。
【実施例】
【0011】
以下、実施例により本発明を詳述する。なお、本発明はこの実施例のみに限定されるものではない。
トラフグ稚魚での効果試験
動物質性飼料(オキアミミールおよび魚粉)80%、穀類(澱粉)6%、その他(全卵粉末、精製魚油、小麦グルテン、ベタイン、リン酸カルシウム、飼料用酵母、大豆レシチンなど)14%からなる市販の配合飼料をコントロール区の飼料とした。試験区にはこの飼料に、γ−オリザノールをそれぞれ0.2%添加(試験区1)および1%添加(試験区2)した試験飼料を調整した。
【0012】
平均体重2.5g前後のトラフグ稚魚8尾を直径60.5cm、深さ50cmの円筒型水槽に収容して3試験区を設けて30日間飼育試験を行った。飼育期間中は約24℃の海水を水槽の深さ40cm以上を満たすように流した。各試験飼料は1日1回飽食給餌した。
【0013】
飼育成績を表1に示した。コントロール区では8尾のうち3尾が他のフグに噛まれたことにより斃死した。一方、γ−オリザノールを投与した試験区1および2区では噛まれたことが原因の斃死は無かった。魚体の噛み傷もコントロール区に比べγ−オリザノールを投与した試験区1および2区では少なかった。これらの結果、トラフグにγ−オリザノールを投与することで過密養殖のストレスが軽減され噛みつきや共食いを減少することができた。
【0014】
【表1】

【0015】
さらに、飼料効率はコントロール区が75.5%であるのに対して試験区1で98.0%、試験区2で96.2%とγ−オリザノールを投与したことにより約20%向上した。日間成長率もコントロール区が0.73であるのに対して試験区1で0.81、試験区2で0.89と優れていた。γ−オリザノールを投与することによりストレスが軽減された結果、噛みつきや、共食いの軽減のみでなく養殖フグの成長を促進することもできた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
γ−オリザノールを有効成分とする養殖フグのストレス抑制剤。
【請求項2】
請求項1のストレス抑制剤を0.01〜10%混合せしめることを特徴とする養魚用飼料。

【公開番号】特開2007−68527(P2007−68527A)
【公開日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−296915(P2005−296915)
【出願日】平成17年9月8日(2005.9.8)
【出願人】(000002336)財団法人生産開発科学研究所 (10)
【出願人】(598073604)築野ライスファインケミカルズ株式会社 (6)
【Fターム(参考)】