説明

養殖池の水処理装置

【課題】 養殖池の中心のデッドスペースを利用して水の汚れを処理する。
【解決手段】 水掻羽根20を設けた回転アーム16を水面に浮かべた耕水機15と、前記壁面部5の内側に設けた炭素繊維濾過材6と、底部5に設けたヘドロ収集用のストレーナ9と、エアーにより流動して表面に多数の突起を有したバイオフィルタ12を内部に収容したタワー槽10と、タワー槽10の内外に配してエアー源からのエアーを噴出するエアー噴出器23,32を池の中心に設置し、表面に多数の小孔を有したガラス発泡濾過材を積層してなる生物濾過材37を収容した補助濾過槽35の下方に、連結管39を介して前記ストレーナに連結した分離室40を設け、該生物濾過材の上部に処理水を前記養殖池に送るエアリフト48を設けてある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、魚や鰻などを養殖する養殖場の汚れた飼育水を閉鎖循環式に処理する水処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の養殖池は、養殖する魚、海老、鰻などに与えた餌の残餌や魚等の糞が水中の微生物によって処理されずに残って嫌気的環境の原因物質となるヘドロとなって、養殖池の底部に堆積する。そのため、空気中の酸素を水中に取り込み、水面に設置した水車を高速で回転させることにより、水面の水を大気中に放散させて大気中の酸素を取り込み、水中の溶存酸素(DO)値を一定値以上に維持する方法が一般的に行われている。
【0003】
図5に示したように、従来の養殖池50の水面に設置した水車51は、モータ52を回転することにより羽根車53,53を高速で回転して、該養殖池の水面を掻き回して波立たせ、水面に円周方向に連続して波立部54,54を形成しながら、大気中の酸素を水中に取り込ませている。さらにまた、汚れた水を奇麗にするためには、養殖池50とは別に汚水を処理する処理槽55を必要とするため、設備投資費用が高くなるという欠点を有していた。
【0004】
水面攪拌用の水車53は、水面に対して垂直方向に高速回転しながら、水面部分の水を上方に掻き上げて空中に放散するため、モータは大きな力が要求され、その結果、モータ音や水を攪拌することによる大きな騒音を発生させると共に、消費電力量が多くなって極めて不経済であるという問題点を有していた。
【0005】
養殖池の水中溶存酸素値を高めるための装置には、水面に設置した羽根車を回転して水を空中に拡散し、大気中の空気を水中に混入するものがある(特許文献1、参照)。さらに、羽根車を池の水面に沿って水平方向に回転させることにより、水面部分の酸素が多く含まれた水を池の中心から遠心方向に押し出し、この水が濾過材を通過する際に、水中に含まれる酸素を濾過材に付着している微生物に供給し、該微生物を活性化して水の汚れを分解するものがある(特許文献2、参照)。しかし、従来の水車は、池の表面部分に対流を起こすことはできても、池の底部に漂う酸素が不足した水を水面に上昇させることは困難であった。
【0006】
さらに、養殖池の水面に設置した羽根車を水面に沿って回転させることにより、池の水面に水流を発生させ、他方、該羽根車が位置した下方の水底部にエアー噴出器を設置し、エアー源からのエアーを水中に噴出して水中に漂う好気性微生物に酸素供給して活性化すると共に、池中心の水底部に上向きの水流を発生させて水処理を行うものもある(特許文献3、参照)。しかし、微生物中の好気性微生物が、エアー噴出部の上方部分に常に集中しているとは限らず、また、エアーが届きにくいところに集まっていたりすると、前記微生物に酸素を供給することが困難であった。
【0007】
飼育水の汚れは、太陽光を当てて光合成させたリ、紫外線によって微生物を殺菌したり、池内に設置した濾過材に付着させたりして、水中に浮遊する好気性微生物に酸素を含む新鮮な水を供給して好気性微生物を活性化することにより行っている。また、池の底部に堆積した有機物、一般にヘドロと呼ばれるものの分解には、バクテリア、原生動物など多くの微生物、即ち好気性微生物が関与することが必要である。そして、酸素が多く存在する環境下において活性化する好気性微生物は、酸素の少ない環境の下に多く存在する嫌気性微生物の100倍以上の分解効率を有しているといわれている。そのため、酸素があれば1日で分解できるヘドロの量も、酸素が足りない場合にはその分解に100日もかかるといわれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特公昭51−46986号公報
【特許文献2】特許第3360075号公報
【特許文献3】特開2010−88315号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明は、池中心に設置したタワー槽の内外に第1,2エアー噴出器をそれぞれ設置し、タワー槽内およびタワー槽外周にそれぞれ設置したエアー噴出器からエアーバブルを噴出すると池の中心に上向きの対流が発生し、且つ、酸素を供給して水を活性化し、回転アームをゆっくり回転して水面を波立たせて大気中の空気を取り込んだ新鮮な水にし、池全体に水平方向および縦方向に大きな水の対流を発生させ、好気性菌を活性化して嫌気性菌の増殖を抑えるとともに太陽光により光合成を行い、また太陽からの紫外線により水中の悪玉菌(病原菌)を殺菌して分解を早めるものである。
【0010】
従来のポンプは、養殖池の水の対流に強いところ(水面部分)と、弱いところ(水底部分)との間に差が生じるという欠点を有していた。しかるに本発明は、モータをゆっくり回転させるため、従来のポンプの約40分の1程度のエネルギーにより、対流の弱い水底部分にエアー噴出器を設置し、強制的にエアーを噴出させて上昇流を発生させ、従来のポンプでは不可能であった水底水に対流を発生させることにより養殖池の水面と水底の水質(DO,PH,BOD)に差を生じないようにして、池の水質を均一化することができた。
【0011】
そのうえ、従来のこの種の装置では、水底に魚の糞や餌の残りが沈殿してヘドロとなって停留していたが、本装置は、養殖池の底部に設置したストレーナと、補助濾過槽とを連結する連結管の自然落差を利用して自動的に養殖池内のヘドロを補助濾過槽に設けた分離室に移動させることにより、養殖池内にヘドロが停留しないようにする。
【0012】
さらに、養殖池の中心のデッドスペースを利用し、該スペースに設置したタワー槽内には、表面に多数の小孔を有した発泡プラスチックなどの小型の軽量素材の表面に多数の微生物が付着して形成した生活膜を有した多数の流動担体濾材を移動可能に収容してある。そして、タワー槽の内側底部に設けた第1エアー噴出器からエアーバブルを噴出させてエアレーションすることにより、タワー槽内を自由に流動する流動担体濾材の表面に付着した好気性微生物に酸素を供給して活性化した後、この処理水はタワー槽から外部に出て池の中心に流入する。
【0013】
養殖池内の底部に設置したストレーナに集められたヘドロは、連結管の自然落差により自動的に補助濾過槽に移動し、この補助濾過槽に設けた分離室内において比重差により水から分離し、定期的に外部に送られ汚泥処理装置によりヘドロを回収して有効に利用する。さらに、補助濾過槽内の生物濾過材により高度生物処理された処理水はエアリフトにより養殖池に戻すものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を達成するために本発明は、放射方向に配した複数のアーム17の先端下部に水掻羽根20を設けた回転アーム16を水面に浮かべて底部に樹立した支柱13に取付けた耕水機15と、壁面部3の内側に間隙部4を存して設けた炭素繊維濾過材6と、底部5に設けたヘドロ収集用のストレーナ9と、壁面部3を具えて中心方向に下り勾配の底部5を有した養殖池の中心に設置して、エアーバブルにより流動するバイオフィルタ11を内部に収容したタワー槽10と、ガラス発泡濾過材を積層してなる生物濾過材37を内部に収容して補助濾過槽35の下方に前記ストレーナと連通する分離室40を設け、生物濾過材で処理した処理水を養殖池に戻すエアリフト48を補助濾過槽の上部に設け、タワー槽10の内外に設置した第1,2エアー噴出器23,32とエアー源26を接続し、分離室40で比重差を利用して水から分離したヘドロをバルブ操作で排水管41を介して汚泥処理装置42に移送してヘドロを除去する。また、前記バイオフィルタ11は、微生物が付着しやすいように表面に多数の突起を有して、小型でプラスチックなどの軽量素材で任意形状に設けた多数の流動担体濾材11aをタワー槽10内に流動可能に収容して形成してある。さらに、前記補助濾過槽35内に収容する生物濾過材37は、水中の微生物が付着できるように夫々表面に多数の小孔を設けて小さな空間を多数有したガラス発泡濾過材を積層してある。さらにまた、前記壁面部3の外周面のナノカーボンヒータ50を装着してある。
【0015】
養殖池の壁面部の内側に炭素繊維濾過材を装着し、水面に浮上させた耕水機の回転アームが回転して池表面の中心から遠心方向に水を押し出し、その分、池の底部から酸素不足の水を上昇させて、水面において大気中の酸素を取り込み、太陽からの紫外線によって汚染物質中の悪玉菌を滅菌する。また、タワー槽内の第1エアー噴出器から噴出するエアーによって流動担体濾材に微生物が付着したバイオフィルタを活性化する。
【0016】
さらに、嫌気性ヘドロの原因となる魚の糞や残餌などが底部に堆積しないよう池の底部に設置したエアー噴出器から噴出するエアーバブルを上方に噴出して酸素不足の水に酸素を供給し、池の中心に上方向への対流を発生させる。また水面上の回転アームはゆっくり回転するため、従来の水車に比べて力の小さいモータを使用でき、そのため消費電力量を少なくし、大きな騒音を発生させることなく静かに運転ですることができる。
【0017】
池の底部に設けたストレーナと、高度生物処理を行う生物濾過材を有した補助濾過槽の底部に設けた分離室とを連結管で連結し、該ストレーナに集まったヘドロは自然落差を利用して分離槽に移送し、比重差を利用して分離したヘドロは分離槽の底部に堆積し、一定量溜まるとバルブは開弁し、ヘドロを含む水を汚泥処理装置に移送し、ヘドロを圧縮、乾燥して植物の肥料などにする。へドロを除去した廃水は、例えば許可されている自治体にあっては、下水道に排水でする。また、許可されていない場合には、必要に応じて処理した後に排水することになる。さらに、」この補助濾過槽内で生物濾過材により高度生物処理された処理水は、エアリフトにより養殖池に戻される。
【発明の効果】
【0018】
本発明は、池の底部中心に設置したタワー槽の内外に設置したエアー噴出口からエアーバブルを噴出して、池中心の上方に水流を発生して水面に放射方向への水流を発生させ、池全体に対流を発生させると共に、水底部に漂う酸素が不足した水に前記エアーバブルから酸素を供給する。さらに、タワー槽内に好気性微生物を表面に付着させた流動担体濾材からなるバイオフィルタを流動可能に収容してエアレーションを行って好気性微生物に酸素を供給し、また、水面に浮かべた回転アームをゆっくり回転させることにより水平方向に水流を発生させ、周縁部の壁面部の内側の取付けた炭素繊維濾過材、好気性菌に酸素を供給して活性化し、該養殖池内に残餌や糞を停留させないようにする。このバイオフィルタはタワー槽内を自由に流動し手いるので汚れることがないため、流動担体濾材を保守点検する必要がない。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】養殖池に設置した水処理装置を縦断面にした模式図である。
【図2】池の底部に設けたストレーナ上に設置したタワー槽の内外に第1,2エアー噴出器を取付けた要部拡大断面図である。
【図3】図2のA−A線拡大断面図である。
【図4】養殖池の水面に設置した耕水機の回転アームが施回して水面に生じる波立部の発生状態を示す平面図である。
【図5】従来の水車2基を養殖池内に設置して回転させている状態の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の実施形態を図面に基づいて説明すると、図1は養殖池に設置した水処理装置を縦断面にした模式図、図2は池の底部に設けたストレーナ上に設置したタワー槽の内外に第1,2エアー噴出器を取付けた要部拡大断面図、図3は図2のA−A線方向の拡大断面図、図4は養殖池の水面に設置した耕水機の回転アームの施回により水面に生じた旋回流の状態を示す平面図である。1は内部に飼育用の水を収容する円形又は略方形など任意形状をした養殖池で、ポリプロピレンなどの安価な合成樹脂材で形成してある。該養殖池の壁面部3の内側に沿って炭素繊維濾過材6を設けてあり、また、池の中心に設置したタワー槽10の内外に、第1,2エアー噴出器23,32を設置してある。
【0021】
壁面部3に連続した底部5を備えた養殖池1は、該養殖池の中心に向かって下り勾配に形成し、水底近辺に漂う魚の残餌や糞などの浮遊物は、水の移動と共に徐々に傾斜下部に集まる。底部5の中心の深い部分には、浮遊物などの水底に堆積したヘドロを養殖池の外部に移送するための取出口8を設けてあり、池内の魚などが侵入しないよう網目壁9aを具えたストレーナ9を前記取出ロ8に連通して設置してある。ストレーナ9は、養殖池の大きさ又は形状などによっては池の底部5に複数設けてもよい。
【0022】
養殖池1の水面1aに設置した回転アーム16は、水面に浮かべるため浮力を有した3本のアームを放射状に等間隔に連結し、各先端下部に水掻羽根20を取付け、該回転アームの中心部分にモータ15を設置して耕水機15を形成してある。このモータ15に連結した回転アーム16は、例えば1分間に3〜10回、好ましくは5〜6回位のゆっくりした速さで回転するのでモータは小型にして、消費電力が少ないという特徴を有している。
【0023】
回転アーム16の回転により、養殖池の中心から周縁部に向かってゆっくり押し出され、水面に設けた波立部21は、水面を旋回しながら放射方向に流動し、大気中の酸素を水中に取り込むと共に、太陽からの紫外線で悪玉菌を滅菌し、光合成により好気性微生物を増殖して活性化する。回転アーム16を構成する各アーム17の先端下部に、それぞれ水掻羽根20,20を垂設してあり、効率よく水を放射状に押し出して水面に波立部21を効果的に形成することができる。ここで、酸素が多く存在する環境下で活性化する好気性菌(バクテリア)は、酸素の少ない環境下で活性化する嫌気性菌の100倍以上の分解効率を有している。
【0024】
壁面部3の内側に間隙部4を設け、全周あるいは一定又は任意間隔毎に固定式の濾過材6を設置し、間隙部を通って濾過材6の裏面側への水の流れは良好となり、水中に漂う好気性微生物を増殖して活性化する。この炭素繊維濾過材6は、大きな表面積と生物膜を設けており、具有するその高い弾力性は長期間にわたって繊維と繊維との間に空間を保持するため、安定して微生物の付着と水の流通を確保することができる。この濾過材6は、水中に浮遊したゴミなどを除去する汚濁物質補足能力をも有している。
【0025】
13は長尺な支柱で、上部に耕水機15を取付けて養殖池の中央に設置するもので、該支柱の下部を、十宇状又は三方状に形成して中央部分を高く持ち上げ、底部5との間に間隔を有した支持脚片14の中央上面に固定し、支持脚片14の中央部を持ち上げて形成したことにより、支柱13の下端で取出口8を閉鎖することがない。
【0026】
10は、養殖池中心のデッドスペースに設置した略円筒状のタワー槽で、上下面に夫々多数の小孔を有した孔あき蓋板10aと孔あき底板10bを有しており、タワー層の内外に池の水が流出入することができる構成をしており、さらにまた、該タワー槽の内側底部には環状、U字状、渦巻き状など任意形状に形成したパイプの表面に多数の小孔を有した第1エアー噴出器23を設置してある(図3は環状に形成したものであるが、この形に限るものではない。)。このエアー噴出器23は、第1のパイプ24を介してコンプレッサー、ブロワーなどのエアー源26に接続してある。
【0027】
タワー槽10内にはエアー噴出器から噴出するエアーバブルにより自由に流動するバイオフィルタ11を多数収容してある。このバイオフィルタ11は、軽量な発泡プラスチックなどの軽量素材を用いて小型で任意形状に形成した流動担体濾材11aの表面に多数の突起を設けて比表面積を大きくしたもので、表面に多数の水中微生物が付着して形成した生活膜をなす生物を利用して水の汚れを浄化する。流動担体濾材11aはエアーバブルによりタワー槽12内を自由に流動するため、残餌や糞などが詰まっても作動中は常に流動しているので、一時的なゴミ詰まりなどは流動しながら自動的に解消するため、メンテナンスが不要であるという利点がある。
【0028】
また、前記タワー槽の周囲の池の底部に、環状に形成したパイプの表面に多数の小孔を有してエアーバブルを発生する第2エアー噴出器32を設置し、該エアー噴出器は第2のパイプ31を介してエアー源26に接続している。
【0029】
35は、内部に生物濾過材37を収容した補助濾過槽で、該補助濾過槽の下部に水とヘドロの比重差を利用してヘドロを水から分離させる分離室40を設けてあり、該分離室に連結した排水管41を汚泥処理装置42に連結してある。
【0030】
生物濾過材37は、表面に多数の小孔を設けたガラス発泡濾過材から成り、各部材表面にはそれぞれ水中微生物を付着して形成した生活膜をなす生物である微生物、特に、好気性微生物に酸素を供給して高度生物処理を行うことにより該好気性菌を増殖して活性化することにより水を浄化する。
【0031】
養殖池内に設置したストレーナ9と分離室40とを連結管39で連結してあり、自然落差を利用してストレーナ9から分離室40に自動的に移送される。この分離室内のヘドロが一定量に達すると、分離室内に設けたセンサー41bが感知して排水管41に設けたバルブ41aを開いて汚泥処理装置42に移送し、汚泥処理装置42に設けてある圧縮機、乾燥機などにより汚水からヘドロを回収して除去し、繰り返し圧縮を行った後に乾燥させてクレソンなどの植物の肥料に加工する。
【0032】
補助濾過槽35内の上方に設置した有底筒45は、その上端を上面板36aよりやや上方に位置して取付け、さらに、前記養殖池の水面より上方に一端を位置させて略水平に配した送水パイプ46の他端を下方に折曲げてなる縦パイプ46aの下端は、前記有底筒内の略中間部に位置している。また、前記エアー源26に連なる第1のパイプ24の第2分岐部24cに第2のバルブ25aを介して連結した送気パイプ25の下端は、前記縦パイプ46a内の中間部又は下端近辺に位置させてなるエアリフト48により、前記補助濾過槽35の上部に溜まった処理水1bは養殖池1に戻される。
【0033】
次に、本実施形態の作用について説明すると、多数の魚類を収容した養殖池1の水面に設置した耕水機18とエアー源26を外部電力に接続して耕水機の回転アーム16を回転させ、エアー源26からのエアーを、パイプ24,31を介して養殖池の中心に設けたタワー槽10の内外に設置した第1,2エアー噴出器23,32から夫々水中にエアーバブルを噴出させるものである。
【0034】
第1エアー噴出器23からタワー槽10内にエアーバブルを噴出してエアーレーションを行う。このタワー槽内に移動可能に収容されたバイオフィルタ11を構成する多数の流動担体濾材11aに噴出したエアーバブルによって生じた水流により、流動担体濾材を自由に流動させ、該流動担体濾材の表面に付着して形成した生活膜にエアーバブルに含まれる酸素を供給する。エアーバブルから酸素を供給すると、好気性微生物が増殖して活性化する。
【0035】
タワー槽10内に移動可能に収容した多数の流動担体濾材11aの表面に多数の突起を設けて比表面積は拡大し、該表面に微生物が付着した生活膜を有するバイオフィルタ11は、前記濾過材6のように一定位置で作用させるのではなく、水流によってタワー槽内を自由に流動しながら、バイオフィルタに付着したバクテリア、原生動物などの微生物、特に、好気性微生物に酸素を供給して増殖させて活性化する。
【0036】
水底近辺に漂う酸素が不足した水は、嫌気性微生物を多く含んでおり、タワー槽10内に流入して第1エアー噴出器23から噴出するエアーバブルの酸素が供給されると、流動するバイオフィルタ11の表面に付着した好気性微生物に酸素が供給されて活性化し、活性化した水はタワー槽外の池中心の水面に流入する。
【0037】
また、タワー槽10の外側に設置した第2エアー噴出器32から噴出したエアーバブルは、底部近辺の魚の汚物、残餌等のヘドロが漂って酸素不足の水に、酸素を供給すると共に、エアーバブルの噴出により対流のほとんどない池中心部分に上向きの水流を発生させ、それによって壁面部の水底近辺に漂っている濾過未処理水を池の中心方向に呼び込む作用が発生する。
【0038】
耕水機の回転アーム16は、水面に浮上しながら比較的ゆっくり回転し、水面の水を放射方向に押し出して発生させた波立部21は、大気中の酸素を水中に取り込むと共に、太陽光中の紫外線によって水中の悪玉菌を滅菌する。この回転アームの回転により池中心の水は遠心方向に押し出される。回転アーム16により放射方向に押し出された水は、壁面部3の内側に設けた濾過材3に新鮮な水を供給し、該濾過材に付着している好気性微生物に酸素を供給して活性化する。この濾過材6は、炭素繊維のためその高い弾力性は長期間にわたって繊維と繊維との間に空間を保持するため、安定して微生物の付着と水の流れを確保することができる。
【0039】
さらに、エアー源26から供給される一方のエアーは、分岐部24bを介して第1パイプ24を通ってタワー槽10内の底部に設置した第1エアー噴出器23から水中にエアーバブルを噴出し、該タワー槽内に収容して表面に微生物を多数付着させた流動担体濾材11aからなるバイオフィルタ11を流動させる。また、エアー源26から供給される他方のエアーバルブは、第2パイプ31を通って養殖池の底部に位置した前記タワー槽10の外側に設置した第2エアー噴出器32から水中にエアーバブルを噴出して、池の中心に上向きの水流を発生させ、また、底部近辺に漂う酸素不足の水を池中心に呼び込んで酸素を供給し、該水に含まれる好気性微生物を増殖して活性化した水を水面に上昇させる。
【0040】
養殖池の水面における水の対流により、飼育魚の残餌や糞などの浮遊物は経時的に降下し、底部5の斜面に沿って池の中心底部に移動し、網目壁9aからストレーナ9内に集められる。ストレーナ9内に集まった浮遊物などのヘドロは連結管39の自然落差を利用して自動で分離室40内に移動する。時間の経過により分離室内には、水から分離したヘドロが溜まるとセンサー40aが感知し、排水管41に設けたバルブ41aを開弁してヘドロを含む水を汚泥処理装置42に送る。該汚泥処理装置42は、水中に含まれるゴミを取り除くフィルタ手段とヘドロを絞って水分を除去し、さらにヘドロを圧縮手段により圧縮して水分を絞って乾燥させた後、粉状、穎粒状など任意の形状に形成し、クレソン等の植物の肥料に利用する。
【0041】
この分離室40内の水は、補助濾過槽35内に設けてある生物濾過材37によって高度生物処理されて活性化し、該補助濾過槽の上方に送られた処理水1bの水位が有底筒45の上端を超えると有底筒内に送られる。この有底筒内には、先端を養殖池の上部に位置した送水パイプ46の他端に連続して設けた縦パイプ46aと、エアー源26に連なる第1パイプ24に分岐部を介して連なる第2送気パイプ25とにより構成したエアリフト48により、エアー源26から供給されるエアーによって、該有底筒内の縦パイプ46a内の処理水は、送気パイプ25の先端から噴出するエアーにより有底筒内の処理水を縦パイプ内に上昇させ、送水パイプ46の先端から養殖池1内に戻すことができる。
【0042】
回転アーム16が回転すると、池の表層水はアームに設けた水掻羽根20によって回転アームの中心から放射方向に弧状に押し出しながら水面部分に波立部21を形成し、この波立部近辺の水に空気中の酸素を取り込んで溶存酸素(DO)値を高めると共に、太陽光線によって光合成を促進し、さらに、紫外線により水中に含まれる浮遊物中の雑菌を滅菌する。このように、水中に含まれる微生物の好気性バクテリアに酸素を供給して増殖させることにより活性化し、ヘドロの原因となる残餌や糞などの浮遊物を好気性微生物の作用により減少させ、好気性微生物を増殖して活性化する。
【0043】
池の底部に漂う酸素が不足した水は、エアー噴出器から噴出するエアーバブルによって池中心を上昇し、その間に酸素の不足した水は、水中でエアーバブルから酸素を取り込み、また、水面で酸素を取り込むと同時に太陽光線により水中のプランクトンの光合成が活性化し、さらに紫外線による殺菌効果が得られる。溶存酸素(DO)を十分に含んだ水は池底に淀んでいる嫌気的環境の原因となるヘドロの原因となる魚の糞や残餌に接触して嫌気性菌に代わって好気性微生物、即ち、有効微生物を増殖させることにより水質が改善する。このように溶存酸素の豊富な表層水は、酸素が不足する水底に送り込まれて池中の水が循環することにより水質が均一化し、酸素を含んだ水を底部にも供給して好気性菌の活性化によりヘドロの発生を防ぐことができる。このエアー源26と耕水機の回転アーム18は一日中作動する。
【0044】
ヘドロを分離室40から汚泥処理装置42に排出するためのバルブを作動するセンサーの代わりに、一定時間毎に作動するようにタイマーを設けて作用させてもよいのはもちろんである。さらに、ポリプロピレンで製造した養殖池の壁面部に、ナノカーボンヒータ50を装着したことにより、室内でも光合成をしながら遠赤外線を発生させて魚の成長を一段と促進させることができる。その上、従来設備の10分の一くらいで、養殖密度は3〜5倍位となり、養殖効率が一段と向上する作用を有する。その上、本装置に対するメンテナンスに要する費用を一段と軽減することができるという特徴を有する。
【符号の説明】
【0045】
1 養殖池
3 壁面部
4 間隙部
5 底部
6 濾過材
9 ストレーナ
10 タワー槽
11 バイオフィルタ
11a 流動担体濾材
13 支柱
16 回転アーム
18 耕水機
20 水掻羽根
23 第1エアー噴出器
24 第1のパイプ
25 第2送気パイプ
26 エアー源
31 第2のパイプ
32 第2エアー噴出器
35 補助濾過槽
37 生物濾過材
39 連結管
40 分離室
41 排水管
42 汚泥処理装置
48 エアリフト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のアームの先端下部に水掻羽根(20)を設けて放射方向に配した回転アーム(16)を水面に浮かべて底部に樹立した支柱(13)に取付けてなる耕水機(18)と、壁面部(3)の内側に間隙部(4)を存して設けた炭素繊維濾過材(6)と、底部(5)に設けたヘドロ収集用のストレーナ(9)と、壁面部(3)を具えて中心方向に下り勾配の底部(5)を有した養殖池の中心に設置してエアーにより流動するバイオフィルタ(11)を内部に収容したタワー槽(10)と、ガラス発泡濾過材を積層してなる生物濾過材(37)を内部に収容した補助濾過槽(35)の下方に前記ストレーナと連通する分離室(40)を設け、生物濾過材(37)で処理した処理水を養殖池に戻すエアリフト(48)を補助濾過槽(35)の上部に設け、タワー槽(10)の内外に設置した第1,2エアー噴出器(23,32)とエアー源(26)とを接続し、連結管(39)を介して前記ストレーナ(9)に連結した分離室(40)において比重差を利用して水から分離したヘドロを、排水管(41)を介して汚泥処理装置(42)に移送することを特徴とする養殖池の水処理装置。
【請求項2】
前記バイオフィルタ(11)は、微生物が付着しやすいように表面に多数の突起を有して、小型でプラスチックなどの軽量素材で任意形状に形成した多数の流動担体濾材(11a)を、タワー槽(10)内に流動可能に収容してなることを特徴とする請求項1記載の養殖池の水処理装置。
【請求項3】
前記補助濾過槽(35)内に収容する生物濾過材(37)は、水中の微生物が付着できるように夫々表面に多数の小孔を設けたガラス発泡濾過材を積層してなることを特徴とする請求項1記載の養殖池の水処理装置。
【請求項4】
前記壁面部(3)の外周面に、ナノカーボンヒータ(50)を装着してなることを特徴とする請求項1記載の養殖池の水処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−239414(P2012−239414A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−111991(P2011−111991)
【出願日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【出願人】(502328282)株式会社アクアテックジャパン (2)
【Fターム(参考)】