説明

養液栽培装置

【課題】液肥装置の簡素化を図る。
【解決手段】液肥装置3は液肥作成装置4と液肥送給装置5とを備え、液肥作成装置4と液肥送給装置5はそれぞれ分離独立して構成されて、高さが異なる圃場2ごとに当該圃場2の広さに応じて1機又は複数機の液肥送給装置5が設置され、複数の圃場2ごとに当該各圃場2に共通の液肥作成源として1機又は(液肥送給装置5よりも少ない)複数機の液肥作成装置4が設置され、これらの液肥送給装置5と液肥作成装置4との間が配管系により接続される。各装置4、5は制御盤により自動運転される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、毛管水耕栽培技術(マット給液)を利用した養液栽培装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従前、この種の養液栽培装置が特許文献1により提案されている。この装置は、植物体に供給する液肥を収容する一対の液肥槽、及び液肥槽に収容された液肥を毛細管現象により汲み上る給液マットとを備え、給液マット上に植物体を少なくとも1列以上並べて配置し、植物体の列の両側に各液肥槽を設置して、一方の液肥槽から液肥を給液マットを通して他方の液肥槽へ移動させることにより、給液マットから植物体の根系に液肥を供給するようになっている。
【0003】
しかしながら、このような毛管水耕栽培では、水の毛細管現象によって吸い上げられ給液マット上を移動する液肥の移動速度は極めて遅く、植物を栽培する給液マット上を液肥が移動している間に、液肥の組成や濃度が変化してしまうため、植物を均一に生育させることが困難であった。この場合、植物体を均一に生育させるには、植物体を給液マット上のどこに置いても植物体の根系に均一に液肥を供給することが必要であるが、上記の装置では、給液マット全体の液肥の状態を同時に一定化することは困難であった。
【0004】
そこで、本願発明者は、このような毛管水耕栽培において、植物が吸収できる液肥の状態を給液マットの上のどこでも均一にし得る、新たな装置を創案し、これを特許文献2により提案した。この装置では、植物体に供給する液肥を収容する一対の液肥槽、及び液肥槽に収容された液肥を毛細管現象により汲み上る給液マットと、液肥槽に液肥を供給する液肥装置とを備え、さらに、両側の液肥槽と液肥装置との間に、各液肥槽の中の液肥に水位差を与えるとともに各液肥槽の水位の高低を交互に切り替える手段を備え、当該手段により、給液マットが、栽培ポットに植生した植物体の列の片側一方から液肥を供給し、その列の片側他方へと液肥を移動させながら植物体の根系に液肥を供給するとともに、この給液マットの液肥の流れを交互に逆方向に切り替えるようになっている。このようにして給液マット上に栽培ポットを配置することにより、給液マットの位置に係わらず、植物体の根系に均一に液肥を供給することができ、植物体を均一に生育することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平05−308864号公報
【特許文献2】特許第4195712号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上記文献2の養液栽培装置を実用化するに当たり、同装置を農業用地や作物栽培工場などの屋内施設に設置することになるが、この場合、給液マットを同じ高さの水平面上に敷設する必要があり、多少の誤差があってもいけないため、この養液栽培装置により圃場となる農業用地が高さの異なる複数の地盤からなっていたり屋内施設が多段式のブロックになっていたりすると、高さの異なる箇所ごとに養液栽培装置を設置し、併せて養液栽培装置ごとに液肥槽に液肥を供給するための液肥装置を設置しなければならない。この場合、液肥装置は液肥を作成する機能と液肥を各液肥槽に送給する機能の2機能を具備する必要があるため、装置は大型化し、また、圃場の数だけ必要になるために、全体として、液肥装置の部品点数及びその組み立て、さらに装置の圃場への設置に必要な工数は増加し、製造及び設置に要するコストは増大せざるを得ず、このため、農業分野で適用できるようなコストを実現することは極めて難しい。また、圃場の数だけ液肥装置を設置して、圃場ごとに液肥を作成するのも非効率であり、この点も検討する必要がある。
また、上記文献2の養液栽培装置を用いて毛管水耕栽培を行うには、栽培に使用する液肥を精度よく作成すること、作成した液肥を所定の方法、すなわち、液肥の排液、供給、循環、休止のサイクルで圃場の栽培物に供給すること、さらに均等な高さの圃場に適用すること、などが求められるが、特に、養液栽培経験が少ない農業従事者、農業への新規参入者、農業に精通していない者にとって、その求めに応じることは極めて困難である。
【0007】
本発明は、このような従来の問題を解決するものであり、この種の養液栽培装置において、特に液肥装置を簡単な装置構成にして、液肥装置の部品点数及びその組み立て工数、さらに液肥装置の圃場への設置工数を軽減して、装置全体の製造及び設置に要するコストの低減を図ること、また、圃場ごとに液肥装置を設置して液肥を作成することを不要とすること、さらに、養液栽培経験が少ない農業従事者、農業への新規参入者、農業に精通していない者でも特許文献2の発明に基づく毛管水耕栽培の実用化を図ることなど、を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明は、植物体に供給する液肥を収容する一対の液肥槽及び前記液肥槽に収容された液肥を毛細管現象により汲み上る給液マットを有する圃場と、前記液肥槽に液肥を供給する液肥装置とを備え、前記圃場の給液マット上に植物体を少なくとも1列以上並べて配置し、前記植物体の列の両側に前記各液肥槽を設置して、前記一方の液肥槽から液肥を前記給液マットを通して前記他方の液肥槽へ移動させることにより、前記給液マットから前記植物体の根系に液肥を供給する養液栽培装置において、前記液肥装置は、前記液肥を作成する液肥作成装置と、前記液肥作成装置により作成された液肥を前記液肥槽に送給する液肥送給装置とを備え、前記液肥作成装置と前記液肥送給装置はそれぞれ分離独立して構成されて、高さが異なる圃場ごとに当該圃場の広さに応じて1機又は複数機の液肥送給装置が設置され、複数の圃場ごとに当該各圃場共通の液肥作成源として1機又は複数機の液肥作成装置が設置され、前記液肥送給装置と前記液肥作成装置との間が配管系により接続される、ことを要旨とする。
【0009】
また、この養液栽培装置は各部が次のように具体化されることが好ましい。
(1)液肥作成装置は、液肥を作るための原液を作成する手段と、前記原液を貯留する手段と、前記原液から液肥を作成する手段とを有する。
なお、ここで原液とは、高濃度の液肥をいい、粉末状の肥料を水で溶解して作成する。作物栽培に使用する液肥は原液を原水(井戸水、水道水など)で希釈して作成する。
(2)上記(1)の液肥作成装置はまた、原液を計量するための容積計量式の手段を併せて有する。
(3)液肥送給装置は、各液肥槽の中の液肥に水位差を与えるとともに各液肥槽の水位の高低を交互に切り替える手段を有する。
(4)上記(3)の液肥送給装置はまた、液肥槽の中の液肥を攪拌する手段を併せて有する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の養液栽培装置では、上記の構成により、高さが異なる圃場ごとに当該圃場の広さに応じて1機又は複数機の液肥送給装置を設置し、複数の圃場ごとに当該各圃場に共通の液肥作成源として1機又は(液肥送給装置よりも少ない)複数機の液肥作成装置を設置して、これら液肥送給装置と液肥作成装置を配管系により接続するので、特に液肥装置を液肥作成装置を分離した分だけ簡単な装置構成にして、液肥装置の部品点数及びその組み立て工数、さらに液肥装置の圃場への設置工数を軽減することができ、装置全体の製造及び設置に要するコストを大幅に低減して、農業分野で適用し得るコストを実現することができ、さらに、複数の圃場に共通の液肥作成装置で液肥を作成し、当該各圃場の各液肥送給装置を介して液肥槽に送給するので、圃場ごとに液肥作成装置を設置して液肥を作成することを不要として、作業効率の向上を図ることができる、という格別な効果を奏する。
そして、この養液栽培装置では、液肥作成装置により、栽培に使用する液肥を精度よく作成することができ、液肥送給装置により、作成した液肥を所定の方法、すなわち、液肥の排液、供給、循環、休止のサイクルで圃場の栽培物に供給することができ、さらに、1機又は複数機の液肥送給装置と1機又は(液肥送給装置よりも少ない)複数機の液肥作成装置の様々な組み合わせにより、異なる高さの圃場に効率的に適用することができるので、養液栽培経験が少ない農業従事者、農業への新規参入者、農業に精通していない者などでも、特許文献2の発明に基づく毛管水耕栽培の実用化を図ることができる、という格別な効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施の形態における養液栽培装置全体の構成を示す側面図
【図2】(a)同養液栽培装置の特に液肥作成装置の構成を示す拡大平面図(b)同一方の拡大側面図(c)同他方の拡大側面図
【図3】同養液栽培装置の特に液肥作成装置の具体的な構成を拡大して示す図
【図4】同養液栽培装置の特に液肥送給装置の構成を示す拡大側面図
【図5】同養液栽培装置の特に制御盤の動作プログラムの一例(原液タンクのA原液を計量タンクで計量し、液肥作成貯留タンクに投入するまでの流れ)を示す流れ図
【図6】同養液栽培装置の特に制御盤の動作プログラムの一例(液肥作成貯留タンクで液肥を作成し、液肥タンクへ供給するまでの流れ)を示す流れ図
【図7】同養液栽培装置の特に制御盤の動作プログラムの一例(液肥送給ユニットによる液肥の排液、給液、循環、休止のサイクルの流れ)を示す流れ図
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に、この発明を実施するための形態について図を用いて説明する。図1に養液栽培装置全体を示し、図2乃至図4にその要部を示している。図1に示すように、養液栽培装置1は、レタスその他の各種の野菜(植物体)を栽培する複数の圃場2と、これらの圃場2に液肥を供給する液肥装置3とにより構成される。
【0013】
圃場2はそれぞれ、農業用地などに設置される栽培ベッド21と、この栽培ベッド21の両側に設置され、野菜に供給するための液肥を収容する一対の液肥槽22、23と、この栽培ベッド21の上に敷設され、給液側の液肥槽22又は23に収容された液肥を毛細管現象により汲み上げ、野菜に供給するための給液マット24とを備える。
【0014】
この場合、栽培ベッド21はレタスその他の各種の野菜の栽培に適した所定の長さ及び高さを有する長いテーブルになっている。各液肥槽22、23は所定量の液肥を収容可能な樋(横樋)構造の長い容器で、各々、栽培ベッド21の両側に栽培ベッド21の天面と同じ高さに設置される。これらの液肥槽22、23には液肥の水位を感知するための水位センサがそれぞれ配設される。この場合、各液肥槽22、23の奥側の上流側に下限センサが設置され、手前側の下流側に上限センサが設置される。給液マット24は親水性を有する不織布などからなるマットで、栽培ベッド21の天面よりも少し大きく形成され、栽培ベッド21の天面に敷設される。そして、給液マット24の両側が栽培ベッド21両側の各液肥槽22、23に垂らされる。
【0015】
液肥装置3は、液肥を作成する液肥作成装置4と、液肥作成装置4により作成された液肥を液肥槽22又は23に送給する液肥送給装置5とを備え、これら液肥作成装置4と液肥送給装置5はそれぞれ分離独立して構成される。
【0016】
液肥作成装置4は、図2に示すように、液肥を作るための原液を作成する原液作成部41と、原液作成部41により作成された原液を貯留する原液貯留部42と、原液を計量するための原液計量部43と、原液貯留部42に貯留された原液から液肥を作成し貯留する液肥作成部44と、これら各部を接続する複数の配管及び各種の弁、ポンプ及びセンサと、これら各部、各種の弁、ポンプ及びセンサを制御する制御盤48と、を備える。
なお、ここで原液とは、高濃度の液肥をいい、粉末状の肥料を水で溶解して作成する。作物栽培に使用する液肥は原液を原水(井戸水、水道水など)で希釈して作成する。
【0017】
原液作成部41は、図3に示すように、原液を作成するための原液作成タンク410と、このタンク410内に水を注入するための水道設備45とからなる。この場合、原液作成タンク410は上部に水の注入口411を有するタンクで、タンク410の底部に原液の排出口412が形成され、当該排出口412に連結される配管413、及びこの配管413に連結されて原液貯留部42まで延び、タンク410内部の原液を原液貯留部42へ導く配管414と、タンク410の周面上部及び下部に口415、416が形成され、当該各口415、416に連結される各配管417、418と、タンク410に近接して設置され、タンク410内の原液を導出するためのポンプ419と、ポンプ419の吸込側及び吐出側に連結される各配管420、421と、タンク410の底部の各配管413、414とポンプ419の吸込側の配管420とを連結する3方向切替弁422、及びタンク410の周面上部及び下部の各配管417、418とポンプ419の吐出側の配管421とを連結する3方向切替弁423とを有し、タンク410の底部の排出口412に連結される配管413と3方向切替弁422を介して連結される配管414とにより、タンク410内の原液を原液貯留部42へ送り出す原液送出経路が形成され、タンク410の底部の排出口412に連結される配管413、3方向切替弁422、ポンプ419、3方向切替弁423及びタンク410の周面上部及び下部の各口415、416に連結される各配管417、418により、タンク410内の原液(粉末肥料と水)を撹拌する原液撹拌装置が構成される。このようにしてこのタンク410上部の水の注入口411の上方に水道設備45の放水口451が設置される。
【0018】
原液貯留部42は、図3に示すように、複数の原液タンク42A、42B、42Cにより構成される。この場合、複数の原液タンク42A、42B、42Cは3つのタンクからなり、これらのタンク42A、42B、42Cはそれぞれ上部に原液の注入口426を有し、底部に原液の排出口427が形成される。既述の原液作成タンク410の底部の排出口412から延びる配管413、414はこの原液貯留部42で3方向切替弁428により分岐され、一方が原液タンク42Aに上部の注入口426を通して接続され、他方が原液タンク42Bに上部の注入口426を通して接続される。なお、この原液貯留部42では、原液タンク42Cが液肥のペーハを調整するための液肥を貯留するものとして設置されており、このため、この原液タンク42Cと原液作成タンク410が接続されていない状態になっているが、この原液タンク42Cについても必要に応じて他の原液タンク42A、42Bと同様に原液作成タンク410と接続されてもよい。また、これらのタンク42A、42B、42Cの底部の排出口427にそれぞれ配管429が連結され、これらの配管429はそれぞれポンプ430の吸込側に連結される。そしてこれらのポンプ430の吐出側に配管431が連結され、これらの配管431がそれぞれ原液計量部43へ延ばされる。
【0019】
原液計量部43は、図3に示すように、複数の計量タンク43a、43b、43cにより構成される。この場合、複数の計量タンク43a、43b、43cは3つの容積計量式のタンク(例えば、メスシリンダーやメスフラスコなど)からなる。これらの計量タンク43a、43b、43cはそれぞれ、周面上部に原液の流入口436を有し、下部に原液の流出口437が形成される。既述の3つの原液タンク42A、42B、42Cの底部の排出口427から延びる配管431はそれぞれ、あらかじめ決められた原液計量タンク43a、43b、43cに周面上部の注入口436を通して接続される。ここでは、原液タンク42Aの底部の流出口427から延びる配管431は計量弁438を介して原液計量タンク43aに周面上部の流入口436を通して接続され、原液タンク42Bの底部の流出口427から延びる配管431は計量弁438を介して原液計量タンク43bに周面上部の流入口436を通して接続され、原液タンク42Cの底部の流出口427から延びる配管431は計量弁438を介して原液計量タンク43cに周面上部の流入口436を通して接続される。そして、これら計量タンク43a、43b、43cの下部の流出口437にそれぞれ投入弁439を介して配管440が連結され、これらの配管440がそれぞれ液肥作成部44へ延ばされる。また、これらの計量タンク43a、43b、43cには、原液の容積計量を行うために、センサ46が併せて使用される。このセンサ46は原液の液面を検出する形式のもので、計量タンク43a、43b、43cの外部にセンサ46の位置を表示する表示板47が設置されて、このセンサ46の位置により計量タンク43a、43b、43c内の原液の容量が分かるようになっている。
【0020】
液肥作成部44は、図3に示すように、液肥を作成し貯留するための液肥作成貯留タンク441と、このタンク441内に水を注入するための水道設備45とからなる。この場合、液肥作成貯留タンク441は上部に水の注入口442を有するタンクで、タンク441外又はタンク441内に設置され、タンク441内で液肥を撹拌(水と原液を混合)するための混合ポンプ443と、タンク441の底部に液肥の排出口444が形成され、当該排出口444に連結される配管445、及びこの配管445に送水ポンプ446を介して連結されて圃場2へ延び、タンク441内部の液肥を圃場2へ導く配管447と、を有する。また、この液肥作成貯留タンク441は、液肥の容積計量を行うために、容積計量式のタンクになっていて、センサ448が併せて使用される。この場合、センサ448は液肥の液面の下限を感知する下限検知センサと液面の上限を感知する上限感知センサが使用され、それぞれ液肥作成貯留タンク441内に設置される。なお、本装置のスタート時点(すなわち、液肥作成貯留タンク441が空の状態)と通常時(すなわち、液肥の液面が下限感知センサで感知される状態)のそれぞれから所定の水量を計量する必要があるため、上限感知センサは2点設置される。このようにしてこのタンク441上部の水の注入口442の上方に水道設備45の放水口452が設置される。
【0021】
制御盤置48(図2参照)は液肥作成装置4全体をコントロールする装置で、タイマを用いた所定の動作プログラムにより、液肥作成装置4の各センサの各タンクにおける液面の感知に基づいて、各タンク又は各タンク間の各弁の開閉動作及び各ポンプの駆動を制御する。なお、この制御盤の動作プログラムの一例を図5及び図6に示している。図5は原液タンクのA原液を計量タンクで計量し、液肥作成貯留タンクに投入するまでの流れであり、図6は液肥作成貯留タンクで液肥を作成し、液肥タンクへ供給するまでの流れである。
【0022】
液肥送給装置5は、図4に示すように、液肥作成装置4で作成された液肥を貯留する液肥貯留部6と、液肥貯留部6により貯留された液肥を圃場2(の液肥槽22又は23)に送給する液肥送給部7と、これら各部を制御する制御盤8と、を備える。
【0023】
液肥貯留部6は、液肥作成装置4で作成、貯留された液肥を貯留するための液肥タンク61からなる。この場合、液肥タンク61は容積計量式のタンクで、周面上部に液肥の注入口611を有し、底部に液肥の排出口612を有し、タンク61内に液肥の液面を検出するセンサ62が設置される。そして、既述の液肥作成貯留タンク441の底部の排出口444から延びる配管445、447がこの液肥タンク61に上部の注入口611を通して接続され、また、この液肥タンク61の底部の排出口612に配管613が連結され、これが液肥送給部7に連結される。
【0024】
液肥送給部7は、液肥を貯留するタンク701と、タンク701内の液肥を送り出す送出口となる配管702と、タンク701に液肥を送り入れるための3つのポンプ703、704、705と、これらのポンプ703、704、705とタンク701とを連結する配管系とを有し、これらがボックス71内に組み立てられて、液肥を給液側の液肥槽22又は23へ送る液肥送出機能部72、排液側の液肥槽23又は22から液肥を排出する液肥排出機能部73、給液側の液肥槽22又は23の液肥を循環する液肥循環機能部74などを有する液肥の供給管理装置として構成される(以下、この液肥送給部7を液肥送給ユニットという。)。この場合、タンク701は所定量の液肥を貯留可能で、ボックス71の上部に設置される。なお、このタンク701は、液肥を液肥槽22又は23に送る場合に、液肥の供給量の関係で、液肥が液肥槽22又は23から溢れることがないように、液肥を一時貯留するために用いられる。このタンク701の底部に配管702が連結され、これがボックス71の一側面から外部に取り出されて、この配管702の外部端に3方向切替弁706が取り付けられる。この切替弁706に2本の配管707、708が連結され、これらの配管707、708がそれぞれ各液肥槽22、23の奥側端の底部に連結される(図1参照)。また、このタンク701の周面上部に3つの連結口709、710、711が設けられて、これらの連結口709、710、711がボックス71の他側面から外部に突出される。3つのポンプ703、704、705はボックス71の下部に並列に設置されて、それぞれの吐出口に開閉弁を介して配管712、713、714が連結され、これらの配管712、713、714がボックス71上部のタンク701の各連結口709、710、711に連結され、それぞれの吸込口はボックス71の一側面の外部に並列に配置される。そして、一つのポンプ703の吸込口に配管613が連結され、この配管613が既述の液肥タンク61の底部の排出口612に連結されて、これが液肥を給液側の液肥槽22又は23へ送る液肥送出機能部72として構成される。また、他の二つのポンプ704、705の吸込口にそれぞれ配管715、716が連結され、これらの配管715、716が各液肥槽22、23の手前側端の底部に連結されて、これが排液側の液肥槽23又は22から液肥を排出する液肥排出機能部73、及び給液側の液肥槽22又は23の液肥を循環する液肥循環機能部74として構成される。
【0025】
制御盤8(図4参照)は、液肥送給装置5全体をコントロールする装置で、タイマを用いた所定の動作プログラムにより、各部のセンサの感知に基づいて、各部の弁の開閉動作及びポンプの駆動を制御する。なお、図7はこの制御盤8の動作プログラムの一例で、液肥送給ユニットの運転(排液、給液、循環、休止)のサイクルの流れを示している。
【0026】
養液栽培装置1はこのような構成を備え、図1に例示するように、圃場2への据え付けに当たり、高さが異なる圃場2ごとに栽培ベッド21が設置されて栽培ベッド21の両側に液肥槽22、23が取り付けられるとともに栽培ベッド21の天面に給液マット24が敷設され、そして、高さが異なる圃場2ごとに当該圃場2の広さに応じて1機又は複数機の液肥送給装置5が設置され、複数の圃場2ごとに当該各圃場2共通の液肥作成源として1機又は(液肥送給装置5よりも少ない数の)複数機の液肥作成装置4が設置され、液肥送給装置5と液肥作成装置4との間が配管系により接続される。図1では、高さが異なる全3箇所の圃場2を例示し、これら3箇所の圃場2にそれぞれ、栽培ベッド21が設置されて栽培ベッド21の両側に液肥槽22、23が取り付けられるとともに栽培ベッド21の天面に給液マット24が敷設され、そして、高さの異なる圃場2ごとに当該圃場2の広さに応じて液肥送給装置5が1機ずつ、合計3機設置され、これら3箇所の圃場2で共通の液肥作成装置4が1機所定の場所に設置されて、液肥作成装置4(の液肥作成貯留タンク441)と各液肥送給装置5(の液肥タンク61)との間が共通の配管51により接続される。
【0027】
このようにして養液栽培装置1が複数の圃場2に亘って据え付けられ、各圃場2では、栽培ベッド21上の給液マット24の水平部分の上にロックウールなどの培地に野菜を植生した栽培ポットあるいは野菜が直接載せられて、この養液栽培装置1の運転により次のような毛管水耕栽培が行われる。以下、この養液栽培装置1を用いた毛管水耕栽培について図1、図3及び図4を参照しながら説明する。
【0028】
図1において、液肥作成装置4では、制御盤48の動作プログラムに基づいて、液肥が作成、貯留される。
図3に示すように、この液肥作成装置4では、最初に、原液作成タンク410内で原液Aが作成される。この場合、まず、原液作成タンク410内に水道設備45の放水口451から水が所定量注入される。そして、この水の中に所定量の粉末肥料が投入されて、この水と粉末肥料が原液撹拌装置により撹拌される。すなわち、各3方向切替弁422、423及びポンプ419の制御(各3方向切替弁422、423を原液を循環する方向に切り替え、ポンプ419を駆動)により、原液作成タンク410内の水、粉末肥料が底部の排出口412から流出され、これが配管413、422、421、417又は418を通じて、周面上部又は下部の各口415、416から原液作成タンク410内に流入する循環運動が適宜繰り返される。このようにして水と粉末肥料が撹拌され、原液Aが作成される。そして、各3方向切替弁422、423及びポンプ419の制御(各3方向切替弁422、423を原液Aを原液貯留部42へ送り出す方向に切り替え、ポンプ419を駆動)により、原液Aが配管413、414を通じて原液貯留部42へ送り出され、原液タンク42A内に注入されて、原液Aが原液タンク42Aにストックされる。続いて、同様にして原液作成タンク410で原液Bが作成され、原液タンク42Bにストックされる。なお、原液タンク42Cには、既述のとおり、液肥のペーハを調整するための液肥Cがストックされる。
次いで、各圃場2で栽培する野菜に応じた液肥が作成される。この場合、まず、液肥作成貯留タンク441内に水道設備45の放水口452から水が所定量注入される。一方、各原液タンク42A、42B、42Cにストックされた各原液A、B、Cは、各計量弁438、各投入弁439及び各ポンプ430の制御(各計量弁438を開、各投入弁439を閉とし、各ポンプ430を駆動)により、各計量タンク43a、43b、43cに送られ、ここで容積計量される。なお、定常時、各計量タンク43a、43b、43cは、常に原液を計量する仕組みであり、各計量タンク43a、43b、43c内で原液が蒸発などで減少した場合は、原液A、B、Cの追加計量が行われ、各計量タンク43a、43b、43cに常に所定量の原液A、B、Cが計量されるようになっている。そして、液肥作成貯留タンク441に所定量の水が注入され、これがセンサ448により感知されると、各計量タンク43a、43b、43cの投入弁439が順次開き、各原液A、B、Cが配管440を通じて液肥作成貯留タンク441に投入され、液肥作成貯留タンク441の混合ポンプ443により混合される。この場合、3種類の原液A、B、Cは、まず原液Aが投入されて混合され、続いて原液Bが投入されて混合され、そして原液Cが投入されて混合され、この順序で投入、混合される。なお、この原液A、B、Cの投入で計量ポンプ43a、43b、43cが空になると、計量ポンプ43a、43b、43cでは、既述のとおり、原液A、B、Cの計量が繰り返し行われる。このようにして液肥作成貯留タンク441で液肥が作成され、この作成された液肥は液肥作成貯留タンク441の底部の液肥の排出口444から送水ポンプ446の駆動により配管445、447を通じて圃場2の液肥タンク61へ送り出され、液肥タンク61内に貯留される。そして、液肥作成貯留タンク441では、同様にして液肥が繰り返し作成されて、各圃場2の液肥タンク61へ送り出され、各液肥タンク61で貯留される。また、各液肥タンク61に一定量の液肥が貯留されている場合、つまり、満タンになると、液肥作成貯留タンク441内で作成された液肥は液肥作成貯留タンク441内に一時貯留され、各液肥タンク61の一定量の液肥が減少するごとに各液肥タンク61に送り出される。このように液肥作成貯留タンク441では液肥の作成、貯留が繰り返されて、各液肥タンク61に流され、各液肥タンク61では常に一定量の液肥がストックされる。
【0029】
図1において、各圃場2では、既述のとおり、栽培ベッド21上の給液マット24の水平部分の上にロックウールなどの培地に野菜を植生した栽培ポットあるいは野菜が直接載せられて、各液肥送給ユニット7が制御盤8の動作プログラムに基づいて運転され、排液側の液肥槽23又は22から液肥を排出する排液運転、液肥を給液側の液肥槽22又は23へ供給する給液運転、給液側の液肥槽22又は23で液肥を循環する循環運転、運転休止が順次行われて、給液マット24を通して給液側の液肥槽22又は23から排液側の液肥槽23又は22に向かって、液肥が絶えず移動し続けられ、野菜の根系に液肥を供給しながら野菜を栽培する。
まず、排液運転では、各液肥送給ユニット7のポンプ704又は705(図4参照)が駆動され、排液側の液肥槽23又は22が排出される。なお、スタート時の運転では、排液側の液肥槽23又は22は空で、これが水位センサ(下限センサ)により感知されるので、排液は行われず、すぐに次の給液(運転)に移行する。また、スタート時の運転(排液→給液→循環→休止)の1サイクルが終了した後の通常の運転(排液→給液→循環→休止)に入ると、この液肥槽23又は22から排出された液肥はタンク701に戻され、このタンク701を通じて、給液側の液肥槽22又は23に送られることになる。この排液の流れについては後述する排液運転の説明の中であらためて説明することにする。
続く給液運転では、各液肥送給ユニット7のポンプ703(図4参照)が駆動され、各液肥タンク61から液肥がタンク701へ導入される。このとき、タンク701の底部側の3方向切替弁706は(制御盤8のコントロールにより)給液側の液肥槽22又は23側に切り替えられており、液肥はタンク701に送られると同時にこの3方向切替弁706を通じて自然落下され、栽培ベッド21の給液側の液肥槽22又は23へ送られる。この給液は給液側の液肥槽22又は23の水位センサ(上限センサ)に感知されるまで行われる。この給液運転により、給液側の液肥槽22又は23と排液側の液肥槽23又は22との間に、一定の水位差が生じ、各圃場2では、既述のとおり、給液マット24が栽培ベッド21の上に置かれ、その両側が2つの液肥槽22、23に垂らされて、給液マット24の片側一方が液肥に浸漬されるので、水の毛細管現象によって、液肥は給液側の液肥槽22又は23から給液マット24によって栽培ベッド21上を移動して、給液マット24の片側他方から垂下されて排液側の液肥槽23又は22に溜められる。このようにして栽培ベッド21上の給液マット24を通して給液側の液肥槽22又は23から排液側の液肥槽23又は22に向けて、一定速度の液肥の流れが生じ、給液マット24上の野菜の根系に液肥を供給する。
続いて、循環運転では、各液肥送給ユニット7のポンプ705又は704が駆動され、給液側の液肥槽22又は23の液肥が排出されて、各液肥送給ユニット7のタンク701に戻され、液肥は同様にタンク701から3方向切替弁706を通じて自然落下されて、栽培ベッド21の給液側の液肥槽22又は23へ送られ、液肥が循環される。
そして、この液肥の循環運転後、所定の時間まで、運転が休止される(休止)。
このようにして給液側の液肥槽22又は23と排液側の液肥槽23又は22との間には、常に一定の水位差が生じ、これにより、給液マット24上に給液側の液肥槽22又は23から排液側の液肥槽23又は22に向けて常に一定速度の液肥の流れが生じる。
この運転が所定時間休止された後、各液肥送給ユニット7の運転が開始される。この場合、各液肥送給ユニット7の動作が反転され、給液側の液肥槽22又は23と排液側の液肥槽23又は22が反対になって、栽培ベッド24上の液肥の流れが反転される。
すなわち、反転後の排液運転では、各液肥送給ユニット7のポンプ705又は704(図4参照)が駆動され、排液側となる液肥槽22又は23から液肥が排出される。排液側になる液肥槽22又は23は、それまでの給液により液肥が水位センサ(下限センサ)のレベル以上に溜まっており、この液肥が下限センサに感知されるまで排出され(排液運転)、タンク701に戻されて、このタンク701を通じて、給液側の液肥槽23又は22に送られる。これにより、液肥が回収、再利用される。
続く給液運転では、給液側の液肥槽23又は22の液肥が不足する場合に、各液肥送給ユニット7のポンプ703(図4参照)が駆動され、各液肥タンク61から液肥がタンク701へ導入される。すなわち、前段の排液運転で排液側となる液肥槽22又は23の液肥が野菜による液肥の吸収などによって減少し、給液側の液肥槽23又は22で液肥(回収、再利用される液肥)の水位が水位センサ(上限センサ)に感知されるレベルに達していない場合に、液肥送給ユニット7のポンプ703(図4参照)が駆動され、各液肥タンク61から新たな液肥がタンク701へ導入され、この新たな液肥がタンク701から3方向切替弁706を通じて自然落下されて、給液側の液肥槽23又は22へ送られ、給液側の液肥槽23又は22の水位センサ(上限センサ)に感知されるレベルまで、補給される。
続いて、循環運転では、各液肥送給ユニット7のポンプ704又は705が駆動され、給液側の液肥槽23又は22の液肥が排出されて、各液肥送給ユニット7のタンク701に戻され、この液肥がタンク701から3方向切替弁706を通じて自然落下され、給液側の液肥槽23又は22へ送られて、液肥が循環される。
そして、この液肥の循環運転後、所定の時間まで、運転が休止される(休止)。
このようにして給液側の液肥槽23又は22と排液側の液肥槽22又は23との間には、常に一定の水位差が生じ、これにより、給液マット24上に給液側の液肥槽23又は22から排液側の液肥槽22又は23に向けて常に一定速度の液肥の流れが生じる。
以降、各液肥送給ユニット7の動作(反転後の排液、給液、循環、休止)が交互に反転され、給液側の液肥槽23又は22と排液側の液肥槽22又は23が交互に反対になって、排液、給液、循環、休止のサイクルが繰り返し行われ、栽培ベッド24上の液肥の流れが交互に反転される。このようにして一方の液肥槽22又は23と他方の液肥槽23又は22の水位差はほぼ一定に保たれ、給液側の液肥槽22又は23の液肥の濃度や組成が均一な状態に保たれて、最適な状態の液肥が栽培ベッド24全体に常に一定の速度で流される。
【0030】
以上説明したように、この養液栽培装置1では、特に、液肥装置3を、液肥を作成する液肥作成装置4と、液肥作成装置4により作成された液肥を圃場2の液肥槽22又は23に送給する液肥送給装置5とに分割し、高さが異なる圃場2ごとに当該圃場2の広さに応じて1機又は複数機の液肥送給装置5を設置し、複数の圃場2ごとに当該各圃場2に共通の液肥作成源として1機又は(液肥送給装置5よりも少ない)複数機の液肥作成装置4を設置して、これら液肥送給装置5と液肥作成装置4を配管系により接続するので、この場合、液肥作成装置4を3つの圃場2全体で1機の簡単な装置構成にして、液肥作成装置4の数を可及的に少なくすることができる。したがって、液肥装置3の部品点数及びその組み立て工数を削減し、さらに液肥装置3(特に液肥作成装置4)の圃場への設置工数を軽減して、装置1全体の製造及び設置に要するコストの低減を図ることができ、農業分野で適用し得るコストを実現することができる。また、3つの圃場2に共通の液肥作成装置4で液肥を作成し、当該各圃場2の各液肥送給装置5を介して液肥槽22又は23に送給するので、各圃場2ごとに液肥を作成することを不要として、作業効率の大幅な向上を図ることができる。さらに、1機又は複数機の液肥送給装置5と、1機又は(液肥送給装置5よりも少ない)複数機の液肥作成装置4の様々な組み合わせが可能で、高さの異なる地盤に設置された圃場や作物栽培工場の多段式ブロックなど、高さの異なる各種の圃場で毛管水耕栽培を効率良く行うことができる。
【0031】
また、この養液栽培装置1では、液肥作成装置4を、液肥を作るための原液を作成する原液作成部41と、原液作成部41により作成された原液を貯留する原液貯留部42と、原液を計量するための原液計量部43と、原液貯留部42に貯留された原液から液肥を作成し貯留する液肥作成部44と、これら各部を接続する複数の配管及び各種の弁、ポンプ及びセンサとにより構成し、各部の各種の弁、ポンプ及びセンサを制御盤48のタイマを用いた動作プログラムにより制御して自動運転するので、栽培に使用する液肥を精度よく作成することができる。特に、この液肥作成装置4の場合、原液をメスシリンダーやメスフラスコなどを用いて容積計量し、液肥作成貯留タンク441に投入して水と混合させるので、原液の計量(値)を高価な流量センサなどを用いることなしに、液肥の一定の濃度を精度よく正確に出すことができ、流量センサなどを使用しない分だけコストを大幅に削減することができる。また、この場合、原液の計量と投入の各動作を連続して行わず、原液が投入された後、計量タンクが空になってから、次の計量を行い、常に原液が計量された状態になっているので、液肥作成貯留タンク441で原水が容積計量された後、計量タンク42a、42b、42cから原液を投入するだけで、簡単かつ短時間に精度のよい液肥を作成することができる。
【0032】
さらに、この養液栽培装置1では、液肥送給装置5を、液肥を貯留する液肥貯留部6と、液肥貯留部6により貯留された液肥を圃場2(の液肥槽22又は23)に送給する液肥送給部7と、各部の各種の弁、ポンプ、及びセンサとにより構成し、各部の各種の弁、ポンプ及びセンサを制御盤8のタイマを用いた動作プログラムにより制御して、液肥の排液、供給(補給)、循環、休止のサイクルで自動運転するので、野菜に液肥の養分を与える量や濃度を均一化して、液肥の効率的な施用を可能とし、また、液肥槽22又は23内の液肥を定期的に撹拌したり給液マット24上の液肥の流れを定期的に反転させたりすることによって、給液マット24上の液肥の状態の均一性を高めることができ、したがって、水の毛細管現象を利用した養液栽培装置を用いた栽培での、作物の生育の揃いを良好にすることができる。
【0033】
そして、この養液栽培装置1では、液肥作成装置4により、栽培に使用する液肥を精度よく作成することができ、液肥送給装置5により、この液肥を排液、供給、循環、休止のサイクルで圃場2の栽培物に供給することができるなど、すべての作業を自動化することができ、さらに、1機又は複数機の液肥送給装置5と1機又は(液肥送給装置5よりも少ない)複数機の液肥作成装置4の様々な組み合わせにより、異なる高さの圃場2に効率的に適用することができるので、養液栽培経験が少ない農業従事者、農業への新規参入者、農業に精通していない者などでも、特許文献2の発明に基づく毛管水耕栽培の実用化を図ることができる。
【0034】
そしてさらに、この養液栽培装置1では、複数の液肥作成装置4と複数の液肥送給装置5の多様な組み合わせが可能で、例えば、液肥成分の異なる液肥を作成する複数の液肥作成装置と、複数の液肥送給装置とを組み合わせることで、多種類の野菜を同一の圃場で栽培することができる、という利点もある。
【符号の説明】
【0035】
1 養液栽培装置
2 圃場
21 栽培ベッド
22、23 液肥槽
24 給液マット
3 液肥装置
4 液肥作成装置
41 原液作成部
410 原液作成タンク
411 水の注入口
412 原液の排出口
413、414 配管
415、416 口
417、418 配管
419 ポンプ
420、421 配管
422、423 3方向切替弁
42 原液貯留部
42A、42B、42C 原液タンク
426 原液の注入口
427 原液の排出口
428 3方向切替弁
429 配管
430 ポンプ
431 配管
43 原液計量部
43a、43b、43c 計量タンク
436 原液の流入口
437 原液の流出口
438 計量弁
439 投入弁
440 配管
44 液肥作成部
441 液肥作成貯留タンク
442 水の注入口
443 混合ポンプ
444 液肥の排出口
445 配管
446 送水ポンプ
447 配管
448 センサ
45 水道設備
451 放水口
452 放水口
46 センサ
47 表示板
48 制御盤
5 液肥送給装置
51 共通の配管
6 液肥貯留部
61 液肥タンク
611 液肥の注入口
612 液肥の排出口
613 配管
62 センサ
7 液肥送給部(液肥送給ユニット)
71 ボックス
72 液肥送出機能部
73 液肥排出機能部
74 液肥循環機能部
701 タンク
702 配管
703、704、705 ポンプ
706 3方向切替弁
707、708 配管
709、710、711 連結口
712、713、714 配管
715、716 配管
8 制御盤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物体に供給する液肥を収容する一対の液肥槽及び前記液肥槽に収容された液肥を毛細管現象により汲み上る給液マットを有する圃場と、前記液肥槽に液肥を供給する液肥装置とを備え、前記圃場の給液マット上に植物体を少なくとも1列以上並べて配置し、前記植物体の列の両側に前記各液肥槽を設置して、前記一方の液肥槽から液肥を前記給液マットを通して前記他方の液肥槽へ移動させることにより、前記給液マットから前記植物体の根系に液肥を供給する養液栽培装置において、
前記液肥装置は、
前記液肥を作成する液肥作成装置と、
前記液肥作成装置により作成された液肥を前記液肥槽に送給する液肥送給装置と、
を備え、
前記液肥作成装置と前記液肥送給装置はそれぞれ分離独立して構成されて、
高さが異なる圃場ごとに当該圃場の広さに応じて1機又は複数機の液肥送給装置が設置され、
複数の圃場ごとに当該各圃場共通の液肥作成源として1機又は複数機の液肥作成装置が設置され、
前記液肥送給装置と前記液肥作成装置との間が配管系により接続される、
ことを特徴とする養液栽培装置。
【請求項2】
液肥作成装置は、液肥を作るための原液を作成する手段と、前記原液を貯留する手段と、前記原液から液肥を作成する手段とを有する請求項1に記載の養液栽培装置。
【請求項3】
液肥作成装置は原液を計量するための容積計量式の手段を併せて有する請求項2に記載の養液栽培装置。
【請求項4】
液肥送給装置は、各液肥槽の中の液肥に水位差を与えるとともに各液肥槽の水位の高低を交互に切り替える手段を有する請求項1乃至3のいずれかに記載の養液栽培装置。
【請求項5】
液肥送給装置は液肥槽の中の液肥を攪拌する手段を併せて有する請求項4に記載の養液栽培装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−160702(P2011−160702A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−25610(P2010−25610)
【出願日】平成22年2月8日(2010.2.8)
【出願人】(303057365)株式会社間組 (138)
【出願人】(591106462)茨城県 (45)
【出願人】(000001878)三菱農機株式会社 (1,502)
【Fターム(参考)】