説明

駆動ユニット

【課題】駆動ユニットにパークロック機構を内蔵させるに当たって、駆動ユニットの軸線方向長大化を避けつつ、パークロック機構の内蔵を可能にする。
【解決手段】電動モータ4の回転はロータ7から入力軸8、遊星歯車組式減速機5、出力軸9を経て車輪10に達する。車輪10のパークロック用にパーキングギア32を入力軸8に固設する。パーキングギア32の下方でその接線方向に延在するパーキングポール33をハウジング本体1に軸35で枢支する。パーキングポール33は背面33bを、パークロックロッド34の円錐カム34bにより押されて揺動するとき、爪33aをパーキングギア32に係合され、車輪10をパークロックする。パークロック機構31を成すパーキングギア32、パーキングポール33およびパークロックロッド34は、電動モータ4のステータ6に対し径方向に重なる軸線方向位置において、ステータ6の内周側に配置し、この重なりにより、駆動ユニットの軸線方向長大化を避けつつ、パークロック機構31の内蔵を可能にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車輪を個々の電動モータにより駆動して走行可能な電気自動車に用いられる、車輪ごとのインホイールモータユニット等として有用な駆動ユニットに関し、特に駆動ユニットの長大化を避けつつ、駆動ユニット内にパークロック機構を収納する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
駆動ユニットにパークロック機構を収納するに際しては、インホイールモータユニットにパークロック機構を収納する構成として従来、例えば特許文献1に記載のような構成を採用することが提案されている。
【0003】
この提案技術は、内周ロータおよび外周ステータの内外同心配置に成る電動モータの内周ロータと共に回転するよう配置したパーキングギアと、このパーキングギアに噛み合って内周ロータを回転拘束するパークロック位置、および、該パーキングギアとの噛み合い状態を解かれたパークロック解除位置間で動作可能なパークロック動作部とより成るパークロック機構を、電動モータに対し軸線方向タンデムに突き合わせて収納するというものである。
【0004】
かかる駆動ユニットにおいては、パークロック動作部が上記のパークロック解除位置にある間、電動モータにより回転体を駆動することができ、パークロック動作部が上記のパークロック位置にある間、内周ロータを回転拘束して上記の回転体をパークロックすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平07−285422号公報(図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし従来は、パークロック動作部は勿論のこと、パーキングギアも電動モータに対し軸線方向タンデムに突き合わせて収納するため、駆動ユニットがパークロック機構の軸線方向寸法分だけ軸線方向に長大化するのを避けられなかった。
ところで、駆動ユニットは設置スペースに制約のある場所で用いることが多く、従来のように軸線方向に長大化した駆動ユニットは、その用途を限られるという問題があった。
【0007】
本発明は、上記の軸線方向長大化に関する問題を回避しつつパークロック機構を内蔵させた駆動ユニットを提案することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的のため、本発明による駆動ユニットは、以下のごとくにこれを構成する。
先ず、本発明の前提となる駆動ユニットを説明するに、これは、
内周ロータおよび外周ステータの内外同心配置に成る電動モータと、上記内周ロータにより回転されるパーキングギアを介し内周ロータを回転拘束可能なパークロック機構とを具備するものである。
【0009】
本発明は、かかる駆動ユニットに上記のパークロック機構を内蔵させるに際し、
そのパーキングギアを、上記外周ステータに対し径方向に重なる軸線方向位置において、この外周ステータの内周側に配置した構成に特徴づけられる。
【発明の効果】
【0010】
かかる本発明の駆動ユニットによれば、
パークロック機構のパーキングギアが、外周ステータに対し径方向に重なる軸線方向位置において、この外周ステータの内周側に配置されているため、
パークロック機構の軸線方向寸法がそのまま駆動ユニットの軸線方向寸法に加算されることがなく、パークロック機構を内蔵した駆動ユニットであっても駆動ユニットを、上記の重なり分だけ軸線方向に小型化することができ、駆動ユニットの軸線方向長大化に関する前記の問題を回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】インホイールモータユニットとして構成した本発明の一実施例になる駆動ユニットの縦断側面図である。
【図2】図1に示したインホイールモータユニット内におけるパークロック機構の収納箇所を拡大して示す要部拡大詳細断面図である。
【図3】図1に示したインホイールモータユニット内におけるパークロック機構の収納箇所を、ハウジングのリヤカバーが除去された状態で示す端面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を、図面に示す実施例に基づき詳細に説明する。
<構成>
図1〜3は、本発明の一実施例になる駆動ユニットを示し、図1はその縦断側面図、図2は要部拡大詳細断面図、図3はハウジングリヤカバーの除去によってパークロック機構を明示した駆動ユニットの端面図である。
本実施例においてはこの駆動ユニットを、各輪個別駆動式電気自動車に用いる、車輪ごとのインホイールモータユニットとして構成する。
【0013】
図1において、1は、インホイールモータユニットのハウジング本体、2は、該ハウジング本体1のリヤカバーをそれぞれ示し、
これらハウジング本体1およびリヤカバー2でインホイールモータユニットのハウジング3を構成する。
【0014】
図1に示すインホイールモータユニットは、ハウジング3内に電動モータ4および遊星歯車組式減速機5(以下、単に「減速機」と言う)を収納して具え、これら電動モータ4および減速機5を同軸に対向配置する。
【0015】
電動モータ4は、ハウジング本体1の内周に嵌合して固設した円環状の外周ステータ6と、かかる円環状外周ステータ6(以下、単に「ステータ」と言う)の内周にラジアルギャップを持たせて同心に配した内周ロータ7(以下、単に「ロータ」と言う)とで構成する。
なおステータ6は、ステータコア6aにステータコイル6bを巻装して、全体的に上記の円環状に構成し、ロータ7は、円環状に配置した永久磁石を主たる構成要素とするものである。
【0016】
減速機5は、同軸に対向させて突き合わせ配置した入力軸8および出力軸9と、サンギヤ11と、このサンギヤ11に対し軸線方向へずらせて同心配置したリングギヤ12と、これらサンギヤ11およびリングギヤ12に噛合する段付きプラネタリピニオン13と、かかる段付きプラネタリピニオン13を回転自在に支持するキャリア14とにより構成する。
【0017】
入力軸8は、上記のサンギヤ11を一体成形して具え、この入力軸8をサンギヤ11からリヤカバー2に向かう後方へ延在させる。
出力軸9は、減速機5から反対方向(前方)に延在させて、ハウジング本体1の前端(図の右側)開口より突出させ、この突出箇所において出力軸9に後述のごとく車輪10を結合する。
【0018】
ハウジング本体1の前端開口内に上記のリングギヤ12を回転止め、且つ抜け止めして固設する。
プラネタリピニオン13は、サンギヤ11に噛合する大径ギヤ部13a、およびリングギヤ12に噛合する小径ギヤ部13bを一体に有した段付きピニオンとする。
【0019】
段付きプラネタリピニオン13を、図1,2では1個のみを図示したが、実際は3個一組として円周方向等間隔に配置し、
この円周方向等間隔配置を保って段付きプラネタリピニオン13を共通なキャリア14により回転自在に支持する。
ここでキャリア14は、入力軸8に近い出力軸9の内端に設けてこれに一体化させ、減速機5の出力回転メンバとする。
【0020】
上記のごとくキャリア14を一体化させた出力軸9の内端部に、ベアリング15を介し入力軸8の突き合わせ端部を相対回転可能に軸受して貫入させる。
かくして入出力軸8,9は、相対回転可能な軸ユニットを構成し、この軸ユニットは同時に前記したキャリア14および段付きプラネタリピニオン13をも、同一ユニットとして具える。
【0021】
上記のようにユニット化させた入出力軸8,9の軸ユニットをハウジング3に対し回転自在に支承するに際しては、軸線方向に離間した2箇所でベアリング17,18により当該支承を行う。
これらベアリング17,18のうち、電動モータ側のベアリング17は、リヤカバー2と略同じ軸線方向位置において当該リヤカバー2の中心孔内周と入力軸8の対応端部外周との間に介在させ、また、
車輪側のベアリング18は、ハウジング本体1の前端開口を塞ぐ端蓋19の内周と、ハウジング本体1の前端開口から突出する出力軸9の突出部に嵌着したホイールハブ22の外周との間に介在させる。
【0022】
ここで電動モータ4の結合要領を説明する。
電動モータ4のロータ7は、電動モータ結合部材23を介して入力軸8に結合し、この結合位置を、減速機5とベアリング17との間における軸線方向位置とする。
【0023】
次に、出力軸9に対する車輪10の結合要領を詳述する。
ホイールハブ22に同心に、ブレーキディスク24を一体結合して設け、これらホイールハブ22およびブレーキディスク24を貫通して軸線方向に突出するよう複数個のホイールボルト25を植設する。
車輪10の取り付けに当たっては、そのホイールディスクに穿ったボルト孔にホイールボルト25が貫通するようホイールディスクをブレーキディスク24の側面に密接させ、
この密接状態でホイールボルト25にホイールナット26を緊締螺合させることにより、出力軸9に対する車輪10の取り付けを行う。
【0024】
ブレーキディスク24の外周を部分的に跨ぐよう配してブレーキキャリパ27を設け、このブレーキキャリパ27をハウジング本体1に固設する。
ブレーキキャリパ27は、両端に対向ピストン27a,27bを摺動自在に嵌合して具え、これら対向ピストン27a,27bとブレーキディスク24との間にそれぞれブレーキパッド28を介在させ、
これらブレーキディスク24と、ブレーキキャリパ27と、ブレーキパッド28とでディスクブレーキを構成する。
【0025】
ところでインホイールモータユニットにあっては、車両の駐車時に車輪10を回転拘束しておくためのパークロック機構31が必要であり、
本実施例においては、このパークロック機構31を以下のごとくハウジング3内に収納して設ける。
【0026】
パークロック機構31は、図2,3に明示するごとくパーキングギア32と、パークロック動作部を成すパーキングポール33およびパークロッド34とを主たる構成要素とする。
パーキングギア32は入力軸8に嵌着して、電動モータ結合部材23を介し図1に示すロータ7と共に回転可能にする。
パーキングポール33は、図3に示すごとく枢軸35を介してハウジング本体1に対し揺動可能に枢支する。
【0027】
この枢支に当たっては、枢軸35をパーキングギア32の回転軸線、つまり電動モータ4の軸線に対し平行な方向へ延在させ、これによりパーキングポール33を、パーキングギア32に対し接線方向に延在するよう配置する。
これによりパーキングポール33は、パーキングギア32の回転軸線(電動モータ4の軸線)を横切る面内で、枢軸35の周りに揺動することとなる。
そして特に、パーキングポール33の上記揺動が、インホイールモータユニットの図3に示す実用状態で上下方向に行われるよう、パーキングポール33をパーキングギア32の下方に配置する。
【0028】
かくてパーキングポール33は、枢軸35の周りで図3の上方へ揺動して、同図に実線で示すパークロック位置になるとき、パーキングポール先端爪33aがパーキングギア32に噛み合ってこれを回転拘束し、
結果的に入力軸8および電動モータ結合部材23を介し電動モータ4のロータ7(図1参照)を回転拘束して、車輪10をパークロックすることができる。
【0029】
他方でパーキングポール33は、枢軸35の周りで図3の下方へ揺動して、ストッパ36と衝接した同図に二点鎖線で示すパークロック解除位置になるとき、パーキングポール先端爪33aがパーキングギア32との噛み合い状態を解かれてこれを回転可能にし、
結果的にロータ7(図1参照)の上記回転拘束を解除して、車輪10をパークロック解除することができる。
【0030】
パークロッド34は、図3に明示するごとくパーキングポール33の先端部近傍から枢軸35と反対の方向へ延在するよう配置されて、パーキングポール33を上記したように図3の実線で示すパークロック位置と、同図に二点鎖線で示すパークロック解除位置との間で揺動させるためのものである。
そのため、上記のごとくに延在するよう配置したパークロッド34は、図3に示すごとくその基端34aを、実線矢印方向および二点鎖線矢印方向へ回動可能なレバー37に連節して、当該レバー37の回動により長手方向へストローク可能にする。
【0031】
レバー37は、図1,2に示すごとくリヤカバー2に取り付けて設けたパークロックアクチュエータ38の回転軸38aに結合し、
このパークロックアクチュエータ38によりレバー37を、図3の実線矢印方向および二点鎖線矢印方向へ回動可能となす。
【0032】
パークロッド34の基端34aから遠い先端には円錐カム34bを固設し、この円錐カム34bはパークロッド34の上記した長手方向ストロークにより、パーキングポール33の爪33aが設けられているとは反対側の背面33bと、これに対向するようハウジング本体1に固設した反力受け部材39との間に進退可能とする。
そして円錐カム34bは、その小径端が大径端よりも、パークロッド34の基端34aから遠い位置となるよう指向させて、パークロッド34の先端に固設する。
【0033】
かくて、レバー37が図3の実線矢印方向へ回動してパークロッド34を進出ストロークさせるとき、
パークロッド34の先端に設けた円錐カム34bは図3に実線で示すごとく、円錐テーパ面によるカム作用でパーキングポール33の背面33bと反力受け部材39との間に進入しつつ、パーキングポール33を図3に実線で示すパークロック位置に揺動させることができる。
このとき、パーキングポール先端爪33aがパーキングギア32に噛み合ってこれを回転拘束し、入力軸8および電動モータ結合部材23を介し電動モータ4のロータ7(図1参照)を回転拘束して、車輪10をパークロックすることができる。
【0034】
他方で、レバー37が図3の二点鎖線矢印方向へ回動してパークロッド34を上記と逆に後退ストロークさせるとき、
パークロッド34の先端に設けた円錐カム34bは図3に二点鎖線で示すごとく、パーキングポール33の背面33bと反力受け部材39との間における位置から後退する。
かかる円錐カム34bの後退により、パーキングポール33は図示せざるリターンスプリングのバネ力により、図3に二点鎖線で示すごとくストッパ36と衝接したパークロック解除位置に揺動される。
このとき、パーキングポール先端爪33aがパーキングギア32との噛み合いを解かれてこれを回転可能となし、ロータ7(図1参照)の回転拘束を解除して、車輪10をパークロック解除することができる。
【0035】
ところで上記したパークロック機構31をインホイールモータユニットのハウジング3内に収納するに際し、本実施例ではこの収納を特に以下のごとくに行う。
その説明に先立って、先ず、電動モータ4の駆動制御に必要なロータ7の回転位置(電動モータ4の回転位相)を検出する回転検出器(レゾルバ)41の設置要領を、図1,2に基づき以下に説明する。
【0036】
この回転検出器(レゾルバ)41は、ロータ7の回転位置を検出する必要があることから、ロータ7の直近に位置させるが、この際特に、電動モータ結合部材23の中心ボス部における板厚Dを強度上の要求が満足される範囲内で可能な限り薄くする。
これにより発生したロータ7の内周部空間内に回転検出器(レゾルバ)41を配置することで、回転検出器(レゾルバ)41をロータ7に対し径方向に重なる軸線方向位置において、ロータ7の内周側に配置する。
このように配置した回転検出器(レゾルバ)41は、図1のごとくロータ7に対し軸線方向に対向するハウジング本体1の面1aにボルト42で取着する。
【0037】
ハウジング本体1には図1〜3に示すごとく、上記した回転検出器(レゾルバ)41の取り付け面1aを、ロータ7から遠ざかる軸線方向に切り欠いて形成した凹部1bを設け、
この凹部1b内に、パーキングギア32と、パークロック動作部を構成するパーキングポール33、パークロッド34および反力受け部材39とから成るパークロック機構31を収納する。
このとき本実施例においては特にパーキングギア32を、パーキングポール33、パークロッド34および反力受け部材39と共に、図1,2に示すごとく、ステータ6に対し少なくとも一部が径方向に重なる軸線方向位置において、ステータ6の内周側に配置する。
【0038】
<作用効果>
車両の駐車時以外は、パークロックアクチュエータ38によりレバー37を図3の二点鎖線矢印方向に回動させておく。
このときパークロッド34は、その先端における円錐カム34bを図3に二点鎖線で示すごとくパーキングポール33の背面33bと反力受け部材39との間における位置から後退させるよう、ストロークする。
【0039】
かかる円錐カム34bの後退により、パーキングポール33は図示せざるリターンスプリングにより、図3に二点鎖線で示すごとくストッパ36と衝接したパークロック解除位置に揺動される。
このとき、パーキングポール先端爪33aがパーキングギア32との噛み合いを解かれてこれを回転可能にし、ロータ7(図1参照)の回転拘束を解除して、車輪10のパークロックを解くことができる。
【0040】
このパークロック解除状態で電動モータ4のステータコイル6bに通電すると、ステータ6からの電磁力で電動モータ4のロータ7が回転駆動され、この回転は電動モータ結合部材23および入力軸8を介して減速機5のサンギヤ11に伝達される。
これによりサンギヤ11は、大径ギヤ部13aを介して段付きプラネタリピニオン13を回転させるが、このとき固定のリングギヤ12が反力受けとして機能するため、段付きプラネタリピニオン13は小径ギヤ部13bがリングギヤ12に沿って転動するような遊星運動を行う。
かかる段付きプラネタリピニオン13の遊星運動はキャリア14を介して出力軸9に伝達され、出力軸9を入力軸8と同方向に回転させる。
【0041】
上記の伝動作用により減速機5は、電動モータ4から入力軸8への回転を、サンギヤ11の歯数およびリングギヤ12の歯数により決まる比で減速して出力軸9に伝達する。
出力軸9への回転は、これに結合したホイールハブ22およびホイールボルト25を介して車輪10に伝達され、車両を走行させることができる。
なお車両の制動に際しては、ブレーキディスク24の外周部をキャリパ27の対向ピストン27a,27bによりブレーキパッド28間に挟圧することで所期の目的を達成し得る。
【0042】
車両の駐車に際し、車輪10をパークロックするに当たっては、パークロックアクチュエータ38によりレバー37を図3の実線矢印方向に回動させる。
これによりパークロッド34は、その先端における円錐カム34bを図3の二点鎖線位置から実線位置へと進出させるよう、ストロークする。
【0043】
円錐カム34bはかかる進出ストローク中、円錐テーパ面によるカム作用でパーキングポール33の背面33bと反力受け部材39との間に進入しつつ、パーキングポール33を図3に二点鎖線で示すパークロック解除位置から実線で示すパークロック位置に揺動させる。
このとき、パーキングポール33の先端爪33aがパーキングギア32に噛み合ってこれを回転拘束し、ロータ7(図1参照)の回転拘束により車輪10をパークロックして駐車状態を得ることができる。
【0044】
ところで本実施例においては、パークロック機構31をインホイールモータユニットのハウジング3内へ収納するに際し、そのパーキングギア32を、パーキングポール33、パークロッド34および反力受け部材39と共に、図1,2に示すごとく、ステータ6に対し少なくとも一部が径方向に重なる軸線方向位置において、このステータ3の内周側に配置したことから、
パークロック機構31の軸線方向寸法がそのままインホイールモータユニットの軸線方向寸法に加算されることがなく、パークロック機構31を内蔵したインホイールモータユニットであっても、このインホイールモータユニットを、上記の重なり分だけ軸線方向に小型化することができ、インホイールモータユニットの軸線方向長大化を回避することができる。
【0045】
また、ロータ7の回転位置(電動モータ4の回転位相)を検出する回転検出器(レゾルバ)41を、パーキングギア32よりも内周ロータ7に近い軸線方向位置に配置し、更にこのとき回転検出器(レゾルバ)41を、ロータ7に対し径方向に重なる軸線方向位置において、該ロータ7の内周側に配置したため、
電動モータ4の制御に不可欠な回転検出器(レゾルバ)41の設置によりインホイールモータユニットの軸線方向寸法が大きくなるのを抑制することができ、この点でもインホイールモータユニットの長大化を回避可能である。
【0046】
なお回転検出器(レゾルバ)41の軸線方向寸法は、パーキングギア32と、パーキングポール33およびパークロッド34より成るパークロック動作部とで構成されるパークロック機構31の軸線方向寸法よりも小さい。
そのため本実施例のごとく回転検出器(レゾルバ)41を、パーキングギア32よりもロータ7に近い軸線方向位置に配置し、更にこのとき回転検出器(レゾルバ)41を、ロータ7に対し径方向に重なる軸線方向位置において、該ロータ7の内周側に配置する場合、
ロータ7の内周部における電動モータ結合部材23の中心ボス部板厚Dを強度上の要求が満足される範囲内で可能な限り薄くすることにより得られたロータ7の内周部空間内に回転検出器(レゾルバ)41を配置することで、必要なロータ強度を確保しつつインホイールモータユニットの軸線方向寸法を限界まで短縮することができる。
【0047】
更に本実施例によれば、ロータ7に対し軸線方向に対面する回転検出器(レゾルバ)41用の取り付け面1aを切り欠いて凹部1bを設定し、この凹部1b内に、パークロック機構31のパーキングギア32と、パーキングポール33およびパークロッド34より成るパークロック動作部とを収納するため、
面1aに取り付けた回転検出器(レゾルバ)41と、パーキングギア32、パーキングポール33およびパークロッド34より構成されるパークロック機構31とを、インホイールモータユニットの軸線方向に限界まで接近させることができ、この点でもインホイールモータユニットの軸線方向寸法を大いに短縮することができる。
【0048】
また本実施例においては、パークロック動作部であるパーキングポール33を、パーキングギアに対し接線方向に延在するよう配置して、電動モータ4の軸線を横切る面内で揺動するようにしたため、
パーキングポール33の大きな揺動ストロークが、比較的大きな余裕スペースが存在するロータ7の側面に沿った空間で行われることとなり、パーキングポール33の大きな揺動ストロークがインホイールモータユニットを大型化させる原因になるのを回避することができる。
【0049】
なおパーキングポール33のかかる配置に際し、パーキングポール33を、上記パークロック位置とパークロック解除位置との間での揺動が、インホイールモータユニットの図3に示す実用状態で上下方向に行われるよう、パーキングギア32の下方に配置したため、
パーキングポール33が上方への揺動によりパークロックを行い、下方への揺動によりパークロック解除を行うこととなり、パーキングポール33が悪路走行中の上向き力により誤ってパークロックを行うのを、大きなリターンスプリング力に頼ることなく回避することができる。
そのため、このリターンスプリング力に抗して行う必要があるパーキングポール33のパークロック位置への揺動に際し大きな操作力が必要でなくなり、パークロックアクチュエータ38をその分だけ小型化することができ、この点でもインホイールモータユニットを小型化することができる。
【0050】
<その他の実施例>
なお、図示例では駆動ユニットをインホイールモータユニットとして構成する場合について述べたが、本発明の駆動ユニットはこのインホイールモータユニットに限定されるものでなく、
電動モータ4およびパークロック機構31を同じハウジング3内に収納して具えた駆動ユニットの全てに対し本発明の前記着想は適用可能である。
【符号の説明】
【0051】
1 ハウジング本体
1a 回転検出器(レゾルバ)取り付け面
1b 切り欠き凹部
2 リヤカバー
3 インホイールモータユニット(駆動ユニット)のハウジング
4 電動モータ
5 遊星歯車組式減速機
6 外周ステータ
6a ステータコア
6b ステータコイル
7 内周ロータ
8 入力軸
9 出力軸
10 車輪
11 サンギヤ
12 リングギヤ
13 段付きプライマリピニオン
14 キャリア
19 端蓋
22 ホイールハブ
23 電動モータ結合部材
24 ブレーキディスク
25 ホイールボルト
26 ホイールナット
27 ブレーキキャリパ
28 ブレーキパッド
31 パークロック機構
32 パーキングギア
33 パーキングポール(パークロック動作部)
33a パーキングポール先端爪
33b パーキングポール背面
34 パークロッド(パークロック動作部)
34b 円錐カム
35 枢軸
36 ストッパ
37 レバー
38 パークロックアクチュエータ
39 反力受け部材
41 レゾルバ(回転検出器)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内周ロータおよび外周ステータの内外同心配置に成る電動モータと、前記内周ロータにより回転されるパーキングギアを介し内周ロータを回転拘束可能なパークロック機構とを具えた駆動ユニットにおいて、
前記パーキングギアを、前記外周ステータに対し径方向に重なる軸線方向位置において、この外周ステータの内周側に配置したことを特徴とする駆動ユニット。
【請求項2】
前記内周ロータの回転位置から前記電動モータの回転位相を検出する回転検出器を具えた、請求項1に記載の駆動ユニットにおいて、
前記回転検出器を、前記パーキングギアよりも前記内周ロータに近く、且つこの内周ロータに対し径方向に重なる軸線方向位置において、該内周ロータの内周側に配置したことを特徴とする駆動ユニット。
【請求項3】
前記パークロック機構が、前記パーキングギアに噛み合って前記内周ロータを回転拘束するパークロック位置と、該パーキングギアとの噛み合い状態を解かれたパークロック解除位置との間で動作可能なパークロック動作部を有するものである、請求項2に記載の駆動ユニットにおいて、
前記内周ロータに対し軸線方向に対面する前記回転検出器用の取り付け面を切り欠いて凹部を設定し、この凹部内に、前記パークロック動作部を収納したことを特徴とする駆動ユニット。
【請求項4】
前記パークロック動作部が、前記パーキングギアに噛み合って前記内周ロータを回転拘束するパークロック位置と、該パーキングギアとの噛み合い状態を解かれたパークロック解除位置との間で揺動可能なパーキングポールを有するものである、請求項3に記載の駆動ユニットにおいて、
前記パーキングポールを、前記パーキングギアに対し接線方向に延在するよう配置して、前記揺動が前記電動モータの軸線を横切る面内で行われるよう構成したことを特徴とする駆動ユニット。
【請求項5】
請求項4に記載の駆動ユニットにおいて、
前記パーキングポールを、前記揺動が、駆動ユニットの実用状態で上下方向に行われるよう、前記パーキングギアの下方に配置したことを特徴とする駆動ユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−57011(P2011−57011A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−206762(P2009−206762)
【出願日】平成21年9月8日(2009.9.8)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】