説明

駆動回路及びスイッチング電源装置

【課題】レベルシフト回路を低消費電力させ、回路の遅れ時間を短くして高周波化できる駆動回路及びスイッチング電源装置。
【解決手段】直流電源の両端に接続され且つ直列に接続されたローサイドスイッチング素子Q1とハイサイドスイッチング素子Q2とをオンオフ駆動させる駆動回路であって、所定の周波数信号を発生する発振回路11と、ローサイドスイッチング素子とハイサイドスイッチング素子との接続点の基準電位VSが第1電位から第2電位まで変化する場合に基準電位が第1電位以上第2電位未満の期間中に発振回路からの周波数信号に応答してセット信号とリセット信号を出力するパルス作成回路20aと、パルス作成回路からのセット信号とリセット信号とに基づいて周波数信号をレベルシフトした出力信号を出力するレベルシフト部FF1とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駆動回路及び駆動回路を備えるスイッチング電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
フラットパネルディスプレイ等に用いられるスイッチング電源装置は、スイッチング素子を2個用いたハーフブリッジ型で且つスイッチング損失を低減できる電流共振型が使用されることが多い。
【0003】
電流共振型スイッチング電源装置では、ローサイドスイッチング素子、ハイサイドスイッチング素子が用いられ、通常、これらのスイッチング素子にはN型MOSFET等が用いられている。このため、ハイサイドスイッチング素子を駆動するためには、ローサイドの制御信号をハイサイドに伝達して、パワーMOSFETを駆動するハイサイドドライバが用いられる。このハイサイドドライバについて、消費電力の低減と応答速度の改善を行う必要がある。
【0004】
従来のこの種のスイッチング電源装置に用いられるハイサイドドライバとして、特許文献1が知られている。特許文献1を用いたスイッチング電源装置は、図8に示すように構成されている。全波整流回路1は、交流電圧を整流し、平滑コンデンサCaは全波整流回路1で得られた整流電圧を平滑して整流平滑電圧を、MOSFETからなるスイッチング素子Q1とMOSFETからなるスイッチング素子Q2との直列回路の両端に供給する。スイッチング素子Q1とスイッチング素子Q2とは、制御回路11aにより交互にオン/オフ制御される。
【0005】
スイッチング素子Q1のドレイン−ソース間には、電圧共振コンデンサCvが接続されると共に、リアクトルLrとトランスTの一次巻線Pと電流共振コンデンサCiとの直列回路が接続されている。トランスTの二次巻線S1の一端にはダイオードD1のアノードが接続され、二次巻線S2の一端にはダイオードD2のアノードが接続されている。ダイオードD1のカソードとダイオードD2のカソードとはコンデンサCbの一端に接続され、二次巻線S1の他端と二次巻線S2の他端とは、コンデンサCbの他端に接続されている。ダイオードD1,D2及びコンデンサCbとで整流平滑回路を構成している。この整流平滑回路は、トランスTの二次巻線S1,S2に発生した電圧を整流平滑する。
【0006】
コンデンサCbの両端には電圧検出回路3が接続されている。電圧検出回路3は、コンデンサCbの電圧を検出し、検出電圧をフォトカプラPCを介してフィードバック電圧として制御回路11aのFB端子を介して発振回路11に出力する。発振回路11は、フィードバック電圧に応じて発振周波数(スイッチング周波数)を変化させる。即ち、スイッチング周波数を制御することによりコンデンサCbの出力電圧を制御することができる。
【0007】
ダイオードD3とコンデンサCcとは、トランスTの補助巻線Cに発生した電圧を整流平滑して制御回路11aのVcc端子に供給する。また、整流平滑された電圧は、ダイオードD4を介して制御回路11aのVb端子(レベルシフト電源端子)に供給される。スイッチング素子Q1とスイッチング素子Q2との接続点とVb端子との間にはコンデンサCdが接続されている。スイッチング素子Q1とスイッチング素子Q2との接続点の電位は、レベルシフト基準電位VSである。
【0008】
制御回路11aは、発振回路11、デッドタイム生成回路12、レベルシフト回路13、タイミング調整回路14、バッファ15,16を有している。発振回路11は、FB端子からのフィードバック電圧に応じた周波数を持つ周波数信号を発生する。デッドタイム生成回路12は、発振回路11からの周波数信号からローサイド側信号とハイサイド側信号を生成し、スイッチング素子Q1,Q2が同時にオフになる期間(デッドタイム)を付加して、レベルシフト回路13及びタイミング調整回路14に出力する。レベルシフト回路13は、デッドタイム生成回路12からの信号をレベルシフトさせてバッファ16を介してハイサイドのスイッチング素子Q2のゲートに印加する。タイミング調整回路14は、デッドタイム生成回路12からの信号に対してタイミング調整してバッファ15を介してローサイドのスイッチング素子Q1のゲートに印加する。
【0009】
図10に従来のスイッチング電源装置内のレベルシフト回路13の構成を示す。このレベルシフト回路13は、抵抗R1〜R4、パルス作成回路20、トランジスタM1,M2、フリップフロップFF1、インバータIV1〜IV6、コンデンサC1〜C4、バッファ16を備える。
【0010】
抵抗R1は、一端がレベルシフト電源VBに接続され、他端がトランジスタM1のドレインに接続されている。トランジスタM1のソースは、抵抗R3を介してグランドに接続されている。トランジスタM1のドレインとグランドとの間には、寄生容量C1が存在する。トランジスタM1のゲートは、パルス作成回路20に接続されている。抵抗R2は、抵抗R1と同じ抵抗値を有し、一端がレベルシフト電源VBに接続され、他端がトランジスタM2のドレインに接続されている。トランジスタM2のソースが抵抗R4を介してグランドに接続されている。トランジスタM2のドレインとグランドとの間には、寄生容量C2が存在する。トランジスタM2のゲートは、パルス作成回路20に接続されている。
【0011】
パルス作成回路20は、入力信号に基づいてトランジスタM1とトランジスタM2とのオン/オフを制御する。パルス作成回路20は、発振回路11からの入力信号の立ち上がりの際にセットパルス信号をトランジスタM1のゲートに出力し、入力信号の立ち下がりの際にリセットパルス信号をトランジスタM2のゲートに出力する。
【0012】
トランジスタM1のドレインとトランジスタM2のドレインとには、インバータIV1〜IV4とコンデンサC3,C4とからなる誤動作防止フィルタが接続されている。インバータIV3の出力はインバータIV5を介してフリップフロップFF1のリセット端子Rに接続されている。インバータIV4の出力はインバータIV6を介してフリップフロップFF1のセット端子Sに接続されている。フリップフロップFF1の出力端子Qからの電圧は、バッファ16を介してスイッチング素子Q2のゲート電圧VGHとして出力される。
【0013】
また、特許文献2のスイッチング電源装置は、図11に示すように構成されている。このスイッチング電源装置では、dvdt検出回路17がレベルシフト基準電位VSのdvdt(電位VSを時間微分)を検出してその検出出力をデッドタイム生成回路12に出力する。即ち、ローサイドのスイッチング素子Q1とハイサイドのスイッチング素子Q2とを同時にオフさせるデッドタイム期間が、レベルシフト基準電位VSのdvdtにより制御されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開平8−65143号公報
【特許文献2】特開2002−325451号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
しかしながら、特許文献1においては、図9に示すように、セット信号、リセット信号をローサイドからハイサイドに伝達する時に、例えば400Vの高圧のレベルシフト基準電位VSが印加された状態で、セットパルス、リセットパルスがオンして、例えば120nSの期間だけ10mAの電流が流れる。特に、発振周波数が上昇すると、これに伴ってセットパルス、リセットパルスのオンオフ回数が増加するので、消費電力が発振周波数の増大に比例して増大してしまう。このため、民生品用のスイッチング電源装置用制御ICのパッケージでは、発熱の問題から200kHz〜400kHzが上限の発振周波数となる。
【0016】
また、特許文献1では、ローサイドでハイサイドのスイッチング素子Q2のターンオンするタイミング(図9のデッドタイム期間DT1)をデッドタイム生成回路12で決定し、ハイサイドへ信号伝達(レベルシフト)を行う。この場合、回路の遅延や誤動作防止フィルターによりハイサイドのスイッチング素子Q2がターンオンするまでに遅延時間が発生する(図9のセットパルス、リセットパルスのレベルシフトによる遅れ時間ΔT1)。このため、ローサイドとハイサイドのデューティ比を一定とするために、ローサイド制御回路からローサイドのスイッチング素子Q1へ信号伝達を行う場合、タイミング調整回路14により前記遅延時間分だけ遅らせている。このため、例えば過電流検出時にスイッチング素子Q1のターンオフが必要な時に遅れを生じる原因となる。
【0017】
また、図10に示すように、トランジスタM1,M2には寄生容量C1,C2がある。ハイサイド部に早いdvdtが印加された時に、コンデンサC1,C2に充電する電流により抵抗R1,R2に電圧降下が生じて、これによりフリップフリップFF1のS端子またはR端子に意図しない信号が入る場合がある。それを防ぐためにインバータIV1〜IV4、及びコンデンサC1〜C4からなるdvdtフィルターを用いたり、抵抗R1,R2の抵抗値を下げる等の対策を行う。しかし、dvdtフィルターは、コンデンサC3、C4への充電により、信号伝達に遅延時間を生じる。
【0018】
また、特許文献2では、ローサイドでdvdt検出回路17によりレベルシフト基準電位VSをdvdt検出して、ハイサイドへ信号伝達を行うため、ハイサイドのスイッチング素子Q2のターンオンタイミングは、遅延時間を生じる。このため、図示しないがレベルシフト回路13による遅延時間ΔT1とdvdt検出回路17による遅延時間とが加算されて、さらに遅延時間が大きくなる。このため、電流共振ICでは、スイッチングロスを低減するための共振条件が狭くなり、また、ハイサイドのスイッチング素子Q2がオンしている時間が短くなるため、高周波化を妨げる原因となる。
【0019】
本発明は、レベルシフト回路を低消費電力させ、回路の遅れ時間を短くして高周波化することができる駆動回路及びスイッチング電源装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0020】
前記課題を解決するために、本発明は、直流電源の両端に接続され且つ直列に接続されたローサイドスイッチング素子とハイサイドスイッチング素子とをオンオフ駆動させる駆動回路であって、所定の周波数信号を発生する発振回路と、前記ローサイドスイッチング素子とハイサイドスイッチング素子との接続点の基準電位が第1電位から第2電位まで変化する場合に前記基準電位が前記第1電位以上前記第2電位未満の期間中に前記発振回路からの周波数信号に応答してセット信号とリセット信号とを出力するパルス作成回路と、前記パルス作成回路からのセット信号とリセット信号とに基づいて前記周波数信号をレベルシフトした出力信号を出力するレベルシフト部とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、パルス作成回路は、基準電位が第1電位以上第2電位未満の期間中に発振回路からの周波数信号に応答してセット信号を出力するので、レベルシフト回路を低消費電力させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】実施例1のスイッチング電源装置の構成を示す回路図である。
【図2】実施例1のスイッチング電源装置の動作を示す各部のタイミングチャートである。
【図3】実施例1のスイッチング電源装置内のレベルシフト回路の構成を示す回路図である。
【図4】実施例2のスイッチング電源装置の構成を示す回路図である。
【図5】実施例2のスイッチング電源装置の動作を示す各部のタイミングチャートである。
【図6】実施例2のスイッチング電源装置内のレベルシフト回路の構成を示す回路図である。
【図7】実施例2のレベルシフト回路の各部のタイミングチャートである。
【図8】従来のスイッチング電源装置の一例の構成を示す回路図である。
【図9】図8に示す従来のスイッチング電源装置の動作を示す各部のタイミングチャートである。
【図10】図8に示す従来のスイッチング電源装置内のレベルシフト回路の構成を示す回路図である。
【図11】従来のスイッチング電源装置の他の一例の構成を示す回路図である。
【図12】図11に示す従来のスイッチング電源装置の動作を示す各部のタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の駆動回路及びスイッチング電源装置の実施の形態を図面を参照しながら詳細に説明する。
【0024】
(実施例1)
まず、従来のレベルシフト回路の信号伝達は、ハイサイドに例えば400Vの高圧が印加された状態で行われていた。
【0025】
これに対して、実施例1のスイッチング電源装置では、発振回路11の周波数信号が反転した時刻に同期して信号伝達を行うことを特徴とする。また、レベルシフト基準電位VSは、例えば0V(第1電位)〜400V(第2電位)の範囲で変化するようになっていて、セット信号は0V以上400V未満の期間に出力されるようになっている。
【0026】
図1は、実施例1のスイッチング電源装置の構成を示す回路図である。図1に示す制御回路10は、発振回路11、デッドタイム生成回路12a,21、レベルシフト回路13a、バッファ15,16を有している。発振回路11は、FB端子からのフィードバック電圧に応じた周波数を持つ周波数信号を発生する。レベルシフト回路13aは、発振回路11からの周波数信号の立ち上がり及び立ち下がりに同期させてセット信号及びリセット信号を出力し周波数信号をレベルシフトさせてデッドタイム生成回路21に出力する。
【0027】
デッドタイム生成回路12aは、発振回路11からの周波数信号に所定のデッドタイム期間を加えてバッファ15を介してローサイドのスイッチング素子Q1のゲートに印加する。デッドタイム生成回路21は、レベルシフト回路13aからのレベルシフトされた信号に所定のデッドタイム期間を加えてバッファ16を介してハイサイドのスイッチング素子Q2のゲートに印加する。
【0028】
図1に示すその他の構成は、図8に示す構成と同一であるので、その説明は省略する。
【0029】
図3は、実施例1のスイッチング電源装置内のレベルシフト回路の構成を示す回路図である。図3に示すパルス作成回路20aに発振回路11からの周波数信号が入力される。パルス作成回路20aは、発振回路11からの周波数信号の立ち上がりに同期してセット信号を生成し、セット信号をトランジスタM1に出力する。パルス作成回路20aは、発振回路11からの周波数信号の立ち下がりに同期してリセット信号を生成し、リセット信号をトランジスタM2に出力する。
【0030】
デッドタイム生成回路21(本発明のデッドタイム生成回路に対応)は、フリップフロップFF1(本発明のレベルシフト部に対応)とバッファ16との間に設けられ、フリップフロップFF1からの信号に所定のデッドタイム期間を加えたデッドタイム信号を生成し該デッドタイム信号によりスイッチング素子Q2をターンオンさせる。
【0031】
次にこのように構成された実施例1のスイッチング電源装置の動作を図2に示すタイミングチャートを参照しながら説明する。
【0032】
発振回路11からの周波数信号がレベルシフト回路13aのパルス作成回路20aに入力される。このため、時刻t0において、発振回路11からの周波数信号が立ち上がると、この周波数信号の立ち上がりに同期して、パルス作成回路20aからセットパルス(セット信号)が時刻t0〜t1においてトランジスタM1に出力される。即ち、発振回路11からの周波数信号が反転した瞬間(時刻t0)であれば、レベルシフト基準電位VSがゼロボルト付近であり、レベルシフト電源VBが10V程度とすれば、この部分の消費電力は、図8に示す従来回路の消費電力に比較して、約1/40に低減することができる。即ち、レベルシフト回路を低消費電力することができる。また、発熱を減少させることができるので、高周波化に対応できる。
【0033】
なお、パワーMOSFETからなるスイッチング素子Q1,Q2は、ゲートの充放電に一定時間が必要である。このため、図1では発振回路11の周波数信号が反転してからレベルシフト基準電位VSが上昇しているが、実際には発振回路11の周波数信号が反転した時刻から100nS〜500nS程度の時間はレベルシフト基準電位VSは上昇しない。このため、実質的にレベルシフト基準電位VSがゼロボルト付近で信号伝達(レベルシフト)を行うことができる。
【0034】
この信号伝達は、ハイサイドの制御回路10に対してスイッチング素子Q2のターンオンを許可する信号(ハイサイドターンオン許可信号、即ち、セットパルス)を与えるものであり、ターンオン動作は行わない。実際には、ハイサイドターンオン許可信号によりトランジスタM1がオンして、その許可信号はフィルタを介してフリップフロップFF1のセット端子に入力され、フリップフロップFF1からの信号はデットタイム生成回路21により所定のデッドタイムDT1を加えて、時刻t2において、デットタイム生成回路21で生成されたゲート電圧信号VGHによりスイッチング素子Q2をターンオンさせる。即ち、ハイサイドターンオン許可信号があるときのみ、スイッチング素子Q2をターンオンさせる。このように、ハイサイドでスイッチング素子Q2のターンオンするタイミングを決定するので、従来よりも回路の遅れ時間が短くなるので、高周波化に対応できる。
【0035】
また、時刻t3において、発振回路11からの周波数信号の立下りに同期して、パルス作成回路20aからリセットパルスがトランジスタM2に出力される。トランジスタM2がオンして、その許可信号はフィルタを介してフリップフロップFF1のリセット端子に入力され、リセット信号はデットタイム生成回路21を介して時刻t4において、デットタイム生成回路21で生成されたゲート電圧VGHによりスイッチング素子Q2をターンオフさせる。
【0036】
(実施例2)
図4は、実施例2のスイッチング電源装置の構成を示す回路図である。図4に示す実施例2のスイッチング電源装置は、図1に示す実施例1のスイッチング電源装置に対して、さらに、dvdt検出回路17a(本発明のdvdt検出回路に対応)を追加したことを特徴とする。
【0037】
dvdt検出回路17aは、レベルシフト基準電位VSの時間変化を検出し、即ち、セット信号が出力された時刻から基準電位VSの時間変化が検出された時刻までの時間だけ、フリップフロップFF1でレベルシフトされた信号を遅延させた遅延信号を生成し該遅延信号をローサイド側のデッドタイム生成回路12aとハイサイド側のデッドタイム生成回路12bに出力する。
【0038】
なお、dvdt検出は、dvdtの立ち上がり(+)検出と立ち下がり(−)検出とに分ける。立ち上がり(+)検出ではスイッチング素子Q2のゲート電圧VGHがターンオンするタイミングを決定し、立ち下がり(−)検出ではスイッチング素子Q1のゲート電圧VGLがターンオンするタイミングを決定する。
【0039】
本発明では、ハイサイド側スイッチング素子Q2のゲート電圧VGHに関するものであり、dvdtの立ち上がり(+)検出並びにデッドタイム生成回路12bについて説明する。
【0040】
図6は実施例2のスイッチング電源装置内のレベルシフト回路の構成を示す回路図である。図6に示すレベルシフト回路にはdvdt検出回路17aが追加されることを特徴とする。レベルシフト電源VBとレベルシフト基準電位VSとの間には抵抗R5とコンデンサC5との直列回路が接続されている。抵抗R5とコンデンサC5との接続点にはデッドタイム生成回路12bのインバータIV7の入力端子が接続され、インバータIV7の出力端子にはインバータIV8の入力端子が接続されている。インバータIV8の出力端子にはデッドタイム生成回路12bのアップエッジワンショット回路UESの入力端子が接続されている。
【0041】
アップエッジワンショット回路UESの出力端子にはフリップフロップFF2のセット端子Sが接続され、フリップフロップFF2のリセット端子RはインバータIV5の出力端子に接続されている。フリップフロップFF2の出力端子Qは、アンド回路AND1の一方の入力端子に接続され、フリップフロップFF1の出力端子Qは、アンド回路AND1の他方の入力端子に接続されている。アンド回路AND1の出力端子は、バッファ16の入力端子に接続されている。
【0042】
次にこのように構成された実施例2のスイッチング電源装置の動作を図5及び図7のタイミングチャートを参照しながら説明する。
【0043】
まず、発振回路11からの周波数信号がレベルシフト回路13aのパルス作成回路20aに入力される。このため、時刻t0において、発振回路11からの周波数信号が立ち上がると、この周波数信号の立ち上がりに同期して、パルス作成回路20aからセットパルスが時刻t0〜t1においてトランジスタM1に出力される。即ち、発振回路11からの周波数信号が反転した瞬間(時刻t0)であれば、レベルシフト基準電位VSがゼロボルト付近であり、レベルシフト電源VBが10V程度とすれば、この部分の消費電力は、図8に示す従来回路の消費電力に比較して、約1/40に低減することができる。即ち、レベルシフト回路を低消費電力することができる。また、発熱を減少させることができるので、高周波化に対応できる。
【0044】
また、図6に示すレベルシフト回路においては、時刻t0においてセットパルスによりトランジスタM1がオンすると、信号はフィルタにより僅かに遅延してフリップフロップFF1の出力端子QからセットパルスFF1QがHレベルで出力される。
【0045】
また、時刻t0においてレベルシフト基準電位VSが時間変化するので、レベルシフト電源VBも時間変化して、インバータIV8の出力IV8OUTはHレベルからLレベルになり、時刻t2において、レベルシフト基準電位VSが時間変化するので、レベルシフト電源VBも時間変化して、インバータIV8の出力IV8OUTはLレベルからHレベルになる。アップエッジワンショット回路UESは、時刻t2において、dvdt検出回路17aのインバータIV8の出力DHのアップエッジを検出して短いパルスをフリップフロップFF2のセット端子Sに出力する。フリップフロップFF2は、出力端子からHレベルを出力する。
【0046】
アンド回路AND1は、時刻t2以降において、フリップフロップFF1からのHレベルとフリップフロップFF2からのHレベルとのアンドをとりHレベルをバッファ16を介してスイッチング素子Q2のゲート電圧VGHとして出力する。即ち、dvdt検出回路17aによりデッドタイム生成回路12bがデッドタイム時間DTを生成して、デッドタイム時間後にスイッチング素子Q2のゲート電圧VGHとして出力される。
【0047】
このように、実施例2のスイッチング電源装置によれば、ハイサイド許可信号(セットパルス)を得た後、ハイサイドに設けたdvdt検出回路17aによりレベルシフト基準電位VSの時間変化(dvdt)を検出し、スイッチング素子Q2のターンオンさせる。即ち、ハイサイドターンオン許可信号があるときのみスイッチング素子Q2のターンオンさせる。
【0048】
また、ハイサイドの遅れ時間がないことから、ローサイドのタイミング調整回路14が不要となる。これにより、ローサイドでdvdtを検出してからレベルシフト回路を駆動する従来の回路よりも遅れ時間を短くすることができる。
【符号の説明】
【0049】
1 全波整流回路
3 電圧検出回路
10,11a,11b 制御回路
11 発振回路
12,12a,12b,21 デッドタイム生成回路
13,13a レベルシフト回路
15,16 バッファ
17,17a dvdt検出回路
20,20a パルス作成回路
T トランス
PC フォトカプラ
D1〜D4 ダイオード
Lr リアクトル
Ca〜Cd,C1〜C5 コンデンサ
Q1,Q2 スイッチング素子
P 一次巻線
S1,S2 二次巻線
R1〜R5 抵抗
FF1,FF2 フリップフロップ
IV1〜IV8 インバータ
M1,M2 トランジスタ
AND1 アンド回路
UES アップエッジワンショット回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流電源の両端に接続され且つ直列に接続されたローサイドスイッチング素子とハイサイドスイッチング素子とをオンオフ駆動させる駆動回路であって、
所定の周波数信号を発生する発振回路と、
前記ローサイドスイッチング素子とハイサイドスイッチング素子との接続点の基準電位が第1電位から第2電位まで変化する場合に前記基準電位が前記第1電位以上前記第2電位未満の期間中に前記発振回路からの周波数信号に応答してセット信号とリセット信号を出力するパルス作成回路と、
前記パルス作成回路からのセット信号とリセット信号とに基づいて前記周波数信号をレベルシフトした出力信号を出力するレベルシフト部と、
を備えることを特徴とする駆動回路。
【請求項2】
前記レベルシフト部でレベルシフトされた出力信号に所定のデッドタイム期間を加えたデッドタイム信号を生成し該デッドタイム信号により前記ハイサイドスイッチング素子をターンオンさせるデッドタイム生成回路を備えることを特徴とする請求項1記載の駆動回路。
【請求項3】
前記基準電位の時間変化を検出し、前記基準電位の時間変化が検出された時間だけ、前記レベルシフト部でレベルシフトされた出力信号を遅延させた遅延信号を生成し該遅延信号により前記ハイサイドスイッチング素子をターンオンさせるdvdt検出回路を備えることを特徴とする請求項1記載の駆動回路。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項記載の駆動回路と、
前記ローサイドスイッチング素子の両端又は前記ハイサイドスイッチング素子の両端に一次巻線が接続されたトランスと、
前記トランスの二次巻線に発生する電圧を整流平滑する整流平滑回路と、
前記整流平滑回路の電圧に応じて前記駆動回路内の前記発振回路の周波数信号の周波数を制御する制御回路と、
を備えることを特徴とするスイッチング電源装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2013−63001(P2013−63001A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−201569(P2011−201569)
【出願日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【出願人】(000106276)サンケン電気株式会社 (982)
【Fターム(参考)】