説明

高ベータ−コングリシニン含量を有する作物学的エリート大豆

本発明は、種子中のGy3およびGy4ヌル表現型ならびに増加したβ-コングリシニン含量を与えるごとき、Gy1、Gy2、Gy3、Gy4およびGy5よりなる群から選択されるグリシニンサブユニットの少なくとも2つの非遺伝子組換え変異を有する作物学的エリート大豆植物を供することにより、当該技術分野の欠損を克服する。また、本発明は、これらの植物の派生物および植物器官ならびにその使用を提供する。また、低下したGy1、Gy2、Gy3、Gy4およびGy5表現型を与える非遺伝子組換え変異を含む大豆品種のマーカー支援選択のための方法は、本発明の一部として提供される。また、さらなるリポキシゲナーゼおよび/またはKunitz型トリプシン阻害因子ヌルであるかかる植物を生産する方法、ならびにそれにより生産された植物が提供される。本発明は、かかる植物からの大豆が好ましい食物添加物であり、重要な健康上の利益を提供するという点で重要である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的に、植物育種および分子生物学の分野に関する。特に、本発明は、増加したベータ-コングリシニン含量を持つ作物学的エリート大豆品種およびかかる植物を作成する材料に関する。
本願は、2005年9月7日付で出願された米国仮出願シリアル番号60/714,779;および2005年9月30日付で出願された米国仮出願シリアル番号60/722,493の優先権を主張する。
【背景技術】
【0002】
グリシニンおよびβ-コングリシニンは、大豆中の2つの主要な貯蔵蛋白質であり、合計蛋白質の約70%または合計種子重量の約40%を占める。グリシニン(11sグロブリン)は、各々、A1aB2、A2B1a、A1bB1b、A5A4B3、A3B4と指定された5つの異なるサブユニットからなる。各サブユニットは、ジスルフィド結合を介して共有結合された2つのポリペプチド、1つの酸性および1つの塩基性のものからなる。その2つのポリペプチド鎖は、前駆体が蛋白粒に入った後に生じる工程のプログリシニン前駆体の翻訳後切断に起因する(Chrispeelsら, 1982)。5つの主働遺伝子は、これらのポリペプチドサブユニットをコードすると同定された。それらは、各々、Gy1、Gy2、Gy3、Gy4およびGy5と指定されている(Nielsenら, 1997)。加えて、偽遺伝子gy6および微動遺伝子Gy7も報告された(Beilinsonら, 2002)。これらの遺伝子の遺伝子マッピングは、様々なグループによって報告されている(Diersら, 1993, ChenおよびShoemaker 1998, Beilinsonら, 2002)。Gy1およびGy2は3kb離れて位置し、連鎖群Nにマップされ(Nielsenら, 1989)、Gy3は連鎖群Lにマップされた(Beilinsonら, 2002)。Gy4およびGy5は、連鎖群OおよびFに各々マップされた。これらの遺伝子の全てはサザンブロット上でRFLPプローブを用いてマップされた。
【0003】
他方、β-コングリシニンは、α(約67kda)、α’(約71kDa)およびβ(約50kDa)サブユニットからなり、各サブユニットは、共翻訳および翻訳後修飾によってプロセッシングされる(Ladinら, 1987; Utsumi, 1992)。β-コングリシニンサブユニットは、遺伝子Cgy1、Cgy2およびCgy3によって各々コードされる。遺伝子解析は、Cgy2がCgy3に緊密に連結され、Cgy1は他の2つと独立して分離することを示した。β-コングリシニン遺伝子ファミリーは、各々、2.5kbおよび1.7kbの胚mRNAをコードする2つの主要な群に分けられた少なくとも15のメンバーを含む(Haradaら, 1989)。
【0004】
増加したβ-コングリシニンレベルおよび減少したグリシニンレベルを有する大豆植物は、実質的な利点を供するであろう。この1つの理由は、β-コングリシニンが可溶性蛋白質であるが、グリシニンがほとんど可溶性ではないということである。また、β-コングリシニン、特にα’サブユニットは、グリシニンと比較して、かなり高い栄養価およびヒト健康に関するポジティブな影響を有することが判明した(Babaら, 2004)。動物モデルを用いる多数の実験は、大豆β−コングリシニンからのα’サブユニットは、血漿トリグリセリドを低下でき、また、血液からのLDL(「悪玉」コレステロール)除去を増加できる(Durantiら, 2004, Moriyamaら, 2004, Adamsら, 2004, Nishiら, 2003)。従って、増加したβ-コングリシニン含量を有する大豆品種は従来品種より高値を有し、栄養飲料および他の食物製品における使用に適しているであろう。
【0005】
興味深いことには、グリシニン遺伝子中の変異は、大豆種子中のβ-コングリシニン含量に直接的な影響を有する。減少したグリシニン含量を有する変異体大豆植物は、β-コングリシニン含量を増加させた。しかしながら、複数のグリシニン対立遺伝子がグリシニンサブユニット生成に関与するので、かかる植物は、商業的に非生存とさせる低収率、過剰なロッジング(lodging)および緑色種子のごとき他の属性を有するために、複数のGyサブユニットからの低下した発現を有する植物の生育は、困難であると分かった。減少したグリシニン含量を生じる変異の遺伝を決定する従前の方法は、作物学的に優れた特徴を導入しつつこれらの表現型につき選択するのに必要な高処理技術を可能にしなかった。例えば、Gy遺伝の従前の評価は、蛋白質発現の分析に依存し、高価で、労働集約的で、劣性変異の遺伝を追跡できない。また、労働にかかわらずかかる植物を生産する可能性は、変異体Gy対立遺伝子を遺伝子移入する試みに関連した連鎖障壁および上位性のごときさらなる厄介な問題により知られていなかった。また、対立遺伝子の組合せは、得られた表現型に関して予測不能である。従って、複数のGyサブユニット蛋白質の発現低下を有する作物学的エリート大豆植物およびかかる植物の生産方法についての当該技術分野における長年であるが満たされない必要性が存在する。
【0006】
リポキシゲナーゼは多価不飽和脂肪酸の二酸素化を触媒する酵素である。大豆種子は3つのリポキシゲナーゼアイソザイム−リポキシゲナーゼ1、2および3を含む。これらのアイソザイムは、大豆種子中の不快な風味の生成の一因となる。この不快な風味は、これらのアイソザイムにおいて欠けている種子、特に、リポキシゲナーゼ-2を欠くものにおいて不存在かまたは余りはっきりとはしない。結果的に、1以上のリポキシゲナーゼ・アイソザイムを欠く大豆種子は、飲料および食物製品の調製における使用に望ましい。リポキシゲナーゼ1、2および3欠損系の遺伝子学研究は、各不存在が各々、単一劣性対立遺伝子−lx1、lx2およびlx3によるものであることを示した。lx1およびlx2によって定義された座は緊密に連結され、lx3に遺伝学的に連結されない(Kitamura, 1984; Kitamuraら, 1985; Hajikaら, 1992; Hildebrandら, 1982)。リポキシゲナーゼ1、2および3をコードする構造遺伝子は、各々クローン化され、Lox1、Lox2およびLox3と指定された(Shibataら, 1987; Shibataら, 1988; Yenofskyら, 1988)。
【0007】
Kunitz型トリプシン阻害因子(KTI)は、ダイエット中に存在する場合の蛋白質の消化および吸収と干渉する大豆における抗栄養性およびアレルゲン性因子である。かくして、KTIヌル変異体形質を有する大豆品種は、従来品種より高い商品価値を有する。大豆系におけるKTI生成の遺伝的および生化学的試験が行われ(例えば、de Moraesら, 2006; Natarajanら, 2006))、3つの関連する遺伝子が、栽培種の大豆遺伝子型(Natarajan、2006年ら)における優性Kunitz型トリプシン阻害因子蛋白質をコードするKTI3で同定された(Natarajanら, 2006)。ある種の大豆系におけるKTI生成の損失に関連したいくつかの特定のDNAマーカーが報告されている(de Moraesら, 2006)。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、一般的に、植物育種および分子生物学の分野に関する。特に、本発明は、増加したベータ-コングリシニン含量を持つ作物学的エリート大豆品種およびかかる植物を作成する材料に関する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、1つの具体例において、Gy3およびGy4ヌル表現型ならびに増加した種子β-コングリシニン含量を与える非遺伝子組換え変異を有する作物学的エリート大豆植物を提供する。かくして、本発明の植物は、1つの態様において、低グリシニン含量および高β-コングリシニン含量を有する種子を含む。ある具体例において、本発明の植物についての種子β-コングリシニン含量は、全蛋白含量の約または少なくとも34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50パーセントまたはこれを超える。いくつかの具体例において、本発明の植物は、合計蛋白質の約15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3、2、1または0パーセント、あるいはそれらのパーセント未満の種子グリシニン含量を有する。いくらかの場合には、本発明の植物は変異体Gy4対立遺伝子を含み得る。例えば、変異体Gy4対立遺伝子は、翻訳開始コドンが抑止されるようにヌクレオチド682での点変異を含み得る。依然としてさらなる具体例において、本発明によって供される植物はGy1およびGy2ヌル対立遺伝子を含み得る。本発明の1つの具体例において、1以上のいずれかのGy1、Gy2、Gy3および/またはGy4対立遺伝子は、系B2G2中のヌル対立遺伝子と同一であり得、その種子の代表的試料は、ATCC受入番号PTA-6893下で寄託されている。
【0010】
本発明のある具体例において、低下したレベルのGy1/Gy2蛋白質を与える変異をさらに含む大豆植物が提供される。本明細書に用いた「低下したレベルのGy1/Gy2蛋白質」は、変異を欠く同一の遺伝的背景を有する植物と比較して、Gy1/Gy2蛋白質レベルを低下した非遺伝子組換え変異を含む植物からの種子を意味する。例えば、低下したGy1/Gy2を与える非遺伝子組換え変異を含む植物は、合計の種子蛋白質の約3.1%未満のGy1/Gy2蛋白質含量を有し得る。ある場合には、低下したGy1/Gy2蛋白質含量を与える変異が非遺伝子組換え変異で有り得る。本発明のいくつかの態様において、本発明の植物は変異体Gy1対立遺伝子を含む。例えば、変異体Gy1対立遺伝子は、上流プロモーター領域、エキソンIおよびイントロンIにわたる欠失を含み得る。
【0011】
ある具体例において、本発明の植物は、低下したGy5蛋白質レベルを与える変異をさらに含み得る。ある場合には、低下したGy5蛋白質含量を与える変異は、非遺伝子組換え変異である。かくして、いくつかの態様において、本発明の植物は、低下したGy1、Gy2、Gy3、Gy4およびGy5蛋白質レベルを与える変異を含む。ある態様において、本発明の植物は、減少したGy1、Gy2 Gy3、Gy4およびGy5表現型を与える非遺伝子組換え変異を含み得る。これらの植物の種子は、合計蛋白質の約15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3、2、1または0パーセント、あるいはそれらのパーセント未満のグリシニン含量を有し得る。かくして、減少したGy1、Gy2、Gy3、Gy4およびGy5表現型を含む本発明の植物は、全蛋白含量の約34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50パーセントまたはこれを超える、あるいは少なくともそれらのパーセントのβ-コングリシニン含量を有する種子を含み得る。
【0012】
ある具体例において、本発明の植物は、lx1、lx2および/またはlx3表現型を与える変異をさらに含み得る。ある場合には、lx1、lx2および/またはlx3表現型を与える変異は、非遺伝子組換え変異である。かくして、いくつかの態様において、本発明の植物は、低下したGy3およびGy4表現型を与える変異、および1以上のlx1、lx2および/またはlx3表現型を与える変異を含む。本発明の1つの具体例において、かかる植物は、低下したGy1、Gy2 Gy3およびGy5表現型を与える変異をさらに含み得る。
【0013】
また、植物器官は本発明により提供される。本発明の植物の器官は、限定されるものではないが、花粉、胚珠、分裂組織、細胞および種子を含む。本発明の細胞は、胚分裂組織細胞、花粉、葉、根、根端および花のごとき再生可能な細胞を含む。かくして、これらの細胞を用いて、本発明の植物を再生できる。
【0014】
また、本発明による植物の種子の器官が本明細書に提供される。かくして、本発明による種子から調製さられた砕かれた種子、およびミールまたは粉末も、本発明の一部として提供される。本発明は、本発明による種子を砕くまたはひくことを含む大豆ミールまたは粉末を調製する方法をさらに含む。本発明による、かかる大豆粉末またはミールは、本発明の植物のゲノム物質を含み得る。1つの具体例において、食物はかかる植物のゲノムを含むと定義し得る。本発明のさらなる具体例において、本発明の大豆ミールまたは粉末は、同一の遺伝的背景を持つ植物から調製した種子から作成されたミールまたは粉末と比較して、増加したβ-コングリシニンおよび減少したグリシニン含量を含むが、非遺伝子組換え変異体Gy3およびGy4ヌル対立遺伝子を含まないと定義し得る。
【0015】
本発明のまださらなる態様において、本発明の植物をそれ自体または第2の大豆植物と交配させることを含む大豆種子を生産する方法が提供される。かくして、この方法は、本発明の植物を第2の区別される大豆植物と交配することにより、ハイブリッド大豆種子を調製することを含み得る。
【0016】
本発明の依然としてまだもう一つの態様は、(a)本発明の植物を得;(b)植物を成熟まで栽培し;次いで、(c)植物からの食品生成物を調製することを含む、ヒトまたは動物消費のための食品生成物を生産する方法である。本発明のある具体例において、食品生成物は、蛋白質濃縮物、蛋白質分離物、ミール、油、粉末または大豆皮で有り得る。いくつかの具体例において、食品生成物は、豆乳および他の栄養飲料のごとき飲料、浸出食物、ソース、調味料、サラダドレッシング、果汁、シロップ、デザート、アイシング(icings)およびフィリング、ソフト冷凍生成物(soft frozen product)、糖菓(confection)または中間食品を含み得る。本発明の植物から生産された食物は、増加したβ-コングリシニン含量を含み、かくして、典型的な大豆品種で作られたより高い栄養価食物のものであり得る。加えて、減少したグリシニン含量を含む本発明の植物は、少量の不溶性蛋白質を必要とする食品成分において用い得る。
【0017】
さらなる具体例において、本発明の植物はさらに導入遺伝子を含み得る。例えば、植物は、除草剤耐性、耐病性、昆虫および病虫害抵抗性を与える導入遺伝子、改変された脂肪酸、蛋白質または炭水化物代謝、穀物収率の増加、改変された植物成熟および/または改変された形態的特徴を含み得る。例えば、除草剤耐性導入遺伝子はグリホサート耐性遺伝子を含み得る。
【0018】
ある具体例において、本発明の植物は、Gy3およびGy4ヌル表現型および増加したβ-コングリシニン含量を与える非遺伝子組換え変異を含む植物は、作物学的エリート特徴を含む植物と交配される方法により調製されると定義し得る。この交配の子孫は作物学的エリート特徴およびGy3およびGy4蛋白質含量、およびこれらの特徴に基づいて選択された子孫植物をアッセイし、それによって、本発明の植物を生成し得る。かくして、ある具体例において、本発明の植物は、選択された出発品種を作物学的エリート特徴を含む第2の大豆植物と交配させることにより生産し得る。いくつかの具体例において、本発明の植物は、lx1、lx2および/またはlx3表現型を与える非遺伝子組換え変異を含む植物を、低下したGy3およびGy4蛋白質含量および増加したβ-コングリシニン含量を含む植物と交配する方法により調製されると定義し得る。
【0019】
また、本発明は、植物を選択し、次いで、植物を第2の大豆植物と交配させて子孫を生成することを含む、Gy1/Gy2およびGy4対立遺伝子に関係する大豆植物ゲノム領域中の多型性の存在につき植物をアッセイする植物育種方法を提供する。いくつかの具体例において、本発明の方法は、減少したGy1/Gy2またはGy4表現型と関連する多型性につき植物をアッセイし、次いで、その植物を第2の大豆植物と交配させて、さらなる子孫植物を生成することによる子孫植物を選択することを含み得る。本発明のある具体例において、第2の大豆植物は作物学的エリート特徴を含み得る。また、本発明の方法は、多型性および作物学的エリート特徴を含む大豆植物を選択することを含み得る。かくして、本発明は、作物学的エリート大豆植物への、Gy1/Gy2および/またはGy4表現型および増加した種子β−コングリシニン含量を与える非遺伝子組換え変異の導入を可能にする。本発明の方法は、所望のように1、2、3、4、5、10、15、20またはこれを超える回数で繰り返して、各工程にてGy1/Gy2および/またはGy4対立遺伝子にて非遺伝子組換え変異を示す多型性を有する作物学的エリートの子孫を選択し得る。本発明のある具体例において、第1の大豆植物は、系B2G2の植物で有り得、その種子の代表的試料は、ATCC受入番号PTA-6893下で寄託されている。さらなる具体例において、本発明の方法は、Gy1/Gy2およびGy4対立遺伝子中の非遺伝子組換え変異を示す多型性を含む植物を選択することをさらに含み得る。
【0020】
いくつかの具体例において、本発明の方法は、低下したGy3および/またはGy5含量を示すマーカーで植物を選択することをさらに含み得る。かくして、本発明によるマーカー支援植物育種方法を用いて、Gy1、Gy2、Gy3、Gy4およびGy5含量を低下させた大豆を育種し得る。
【0021】
本発明のいくつかの具体例において、減少したGy1、Gy2またはGy4表現型を与える非遺伝子組換え変異は、Gy1、Gy2、Gy3またはGy4対立遺伝子中の変異を含み得る。ある具体例において、変異体Gy対立遺伝子は、Gy対立遺伝子の50cM内の多型性を含む遺伝子マーカーを用いて検出される。本発明のさらなる態様において、減少したGy1/Gy2表現型を有する植物は変異体Gy1対立遺伝子を含む。いくらかの場合には、変異体Gy1対立遺伝子は、プロモーター領域、エキソンIおよびイントロンIの欠失のごとき欠失を含む。他の具体例において、変異体Gy1対立遺伝子はマーカーNS0199002またはNS0199008を用いて検出できる。本発明のある態様において、2つの遺伝子が緊密に連結されるので、変異体Gy1対立遺伝子はGy2のマーカーで検出し得る。かくして、本発明の他の態様において、変異体Gy2対立遺伝子はGy1に対するマーカーで検出し得る。変異体Gy1,2対立遺伝子を有する植物も減少したGy3表現型を有し得ることが本明細書に示される。かくして、本発明のいくつかの態様において、低下したGy3表現型を含む植物は、これらのマーカーがB2G2派生植物中で低下したGy3表現型と関係することが示されたので、Gy1またはGy2用のマーカーで選択し得る。従って、Gy1またはGy2のマーカー、例えば、NS0199002またはNS0199008を用いて、変異体Gy1、Gy2およびGy3対立遺伝子の存在を決定し得る。本発明のある具体例において、表現型でのGy4ヌル植物は、変異体Gy4対立遺伝子を含む。さらなる具体例において、変異体Gy4対立遺伝子は、翻訳開始コドンを抑止するSNPのごとき点変異を含む。本発明のさらなる態様において、Gy4ヌル対立遺伝子はNS0199003マーカーで検出し得る。SNPマーカーは、例えば、蛍光標識されたオリゴヌクレオチドを用いて検出し得る。
【0022】
いくつかの具体例において、本発明の方法は、低下したリポキシゲナーゼ1、2および/または3含量を示すマーカーで植物を選択することを含み得る。かくして、本発明によるマーカー支援植物育種の方法を用いて、リポキシゲナーゼ1、2および/または3含量を低下させた大豆を生産し得る。
【0023】
本発明の特別の具体例において、lx1、lx2および/またはlx3表現型を与える非遺伝子組換え変異は、Lox1、Lox2および/またはLox3対立遺伝子中の変異を含み得る。本発明の1つの具体例において、lx1、lx2および/またはlx3表現型を与える変異遺伝子は、Lox対立遺伝子の50cM内の多型性を含む遺伝子マーカーを用いて検出される。ある具体例において、lx1対立遺伝子は、表14に後記された1以上のINDEL 178-180、SNP 326、SNP 363、SNP 380、SNP 713、SNP 1196、SNP 1253、SNP 1372、SNP 1388、SNPR 1527、SNP 1554、SNP 2267、SNP 3088、SNP 3125、SNP 3139、INDEL 3832-3905、SNP 4043、SNP 4057、SNP 4193、SNP 4225、SNP 4247、SNP 4267またはSNP 4439用いて検出される。いくつかの具体例において、lx2対立遺伝子は、表15に後記された1以上のSNP 323、SNP 439、SNP 1390、SNP 1431、SNP 1458、INDEL 2486-87またはSNP 2542を用いて検出できる。また、SNP 2542は、NS0203296マーカーという。
【0024】
いくつかの具体例において、本発明の方法は、KTIヌルまたはKTI低下した形質を示すマーカーで植物を選択することをさらに含み得る。かくして、本発明によるマーカー支援植物育種の方法を用いて、低下または検出できないKunitz型トリプシン阻害因子含量を有する大豆を生産し得る。
【0025】
本発明のある具体例において、KTIヌル表現型を与える変異は、KTIをコードする遺伝子中の変異を含み得る。特定の具体例において、KTIヌル表現型を与える変異は、「KTIA」とも命名されたKTI3遺伝子中の変異を含む。本発明の1つの具体例において、KTIヌル表現型を与える変異遺伝子は、KTI対立遺伝子の50cM内の多型性を含む遺伝子マーカーを用いて検出される。ある具体例において、KTI対立遺伝子は、例えば、表18に後記されたKTI3遺伝子内に位置する1以上のINDELまたはSNPを用いて検出される。かくして、かかる選択は、トリプシン活性の酵素的分析またはKTI含量の分析に関してよりもマーカー情報(植物遺伝子型)に基づき得る。
【0026】
本発明の方法および/または組成物の文脈において言及された具体例は、本明細書に記載されたいずれかの他の方法または組成物に関して使用し得る。かくして、1つの方法または組成物に関係する具体例は、本発明の他の方法および組成物に同様に適用し得る。
【0027】
本明細書または特許請求の範囲に用いた「ある」は1以上を意味し得る。「含む」なる語と組み合わせて用いた場合の特許請求の範囲(請求項)に用いた、「ある」なる語は1または1を超えることを意味し得る。本明細書に用いた「もう一つの」は、少なくとも1つの第2またはそれを超えることを意味する。
【0028】
本発明の他の課題、特徴および利点は、以下の詳細な記載から明らかになるであろう。しかしながら、本発明の精神および範囲内の種々の変更および変形が、この詳細な記載から当業者に明白になるので、詳細な記載および特定の実施例は、本発明の好ましい具体例を示しつつ、例示のみにより与えられると理解されるべきである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
(図面の簡単な記載)
以下の図面は本明細書の一部を形成し、さらに本発明のある態様を示すために含まれる。本発明は、本明細書に示された特定の具体例の詳細な記載と組み合わせて1以上のこれらの図面に対する言及によってより理解され得る。
図1:示された大豆品種の種子から抽出された蛋白質は、SDS-PAGEによって分離され、クーマシー染色によって視覚化された。各遺伝子によりコードされた酸性グリシニンサブユニットの移動度が示される。ゲル分離はGy2でコード化されたサブユニット蛋白質からGy1を分離するのに不十分であった。
図2A-B: 変異体Gy1およびGy2対立遺伝子を含む子孫植物は、種子の2つの表現型グループに基づいたGy1およびGy2コード化蛋白質含量中で分配される。図2A.グラフは、Gy1およびGy2コード化酸性蛋白質により構成される合計蛋白質のパーセンテージ(x軸)と比較したF2植物数(y軸)を示す。図2B. F2子孫植物からのデータは、B2G2大豆からの変異体Gy1およびGy2対立遺伝子が、劣性であることを示す。2つのクラス中のGy1およびGy2コード化蛋白質レベルを有する子孫植物数をカイ平方分析に付し、確率値を各ケースで決定した。
【0030】
図3A-B:「11Sヌル」植物の子孫は、Gy3である種子中の合計蛋白質のパーセンテージに基づいて2つの集団へ分配される。図3A. グラフは、Gy3コード化蛋白質(x軸)により構成される合計蛋白質のパーセンテージと比較された、F2植物数(y軸)を示す。図3B.子孫植物からのデータは、B2G2大豆からの変異体Gy3対立遺伝子が劣性であることを示す。2つのクラスにおけるGy3コード化蛋白質レベルを有する子孫植物の数は、カイ平方分析に付し、確率値も各ケースにおいて決定した。
【0031】
図4:Gy3コード化蛋白質の量は、Gy1およびGy2コード化蛋白質の量と正に相関している。図4A.グラフは、Gy3コード化蛋白質の量(y軸)に対するGy1およびGy2コード化酸性蛋白質の観察された量(x軸)をプロットする。図4B.表は、Gy1、Gy2、Gy3、Gy4およびGy5コード化蛋白質の発現レベル間の相関係数を示す。
【0032】
図5:11Sヌル植物の子孫は、Gy4である種子中の合計蛋白質のパーセンテージに基づいて2つの集団へ分配される。図5A.グラフは、Gy4コード化酸性蛋白質により構成される合計蛋白質のパーセンテージ(x軸)と比較されたF2植物数(y軸)を示す。図5B.子孫植物からのデータは、B2G2大豆からの変異体Gy4対立遺伝子が劣性であることを示す。2つのクラスにおけるGy4コード化蛋白質レベルを有する子孫植物数は、カイ平方分析に付され、確率値を各ケースにおいて決定した。
【0033】
図6A-B:大豆種子中のグリシニンの減少した発現は、β-コングリシニンの増加した発現と関連する。図6A.グラフは、Cgy対立遺伝子によりコード化された合計蛋白質のパーセンテージ(y軸)に対するGy対立遺伝子によりコード化された合計蛋白質のパーセンテージ(x軸)をプロットする。図6B.表は、Gyコード化蛋白質の発現およびCgy1-4コード化蛋白質の発現間の相関係数を示す。
【0034】
図7A-B:ゲノムGyマーカーは、高β-コングリシニン発現を有する種子を生産する通常の植物を有効に選択した。図7A.グラフは、合計種子グリシニン含量(x軸)に対する種子のβ-コングリシニン蛋白質含量(y軸)をプロットする。ダイヤモンドは、グリシニンサブユニットの蛋白質分析により選択された植物を示す。図7B.グラフは図7Aと同一であるが、ダイヤモンドは、マーカーNS0199002、NS0199003およびNS0199008により選択された植物を示す。
【0035】
図8:Taqmanアッセイ用のアリログラム(allelogram)は、2542位(マーカーNS0203296)でのSNPのために設計した。図8に示されるように、このマーカーは、lx2変異体からの「A」対立遺伝子および実施例13および表15に記載された野性型からの「T」対立遺伝子間の明確な区別を可能にした。
【0036】
図9:Kunitzヌル変異体系における欠失/挿入を示すKunitz型トリプシン阻害因子用の配列の整列。
【0037】
(例示的な具体例の記載)
本発明は、Gy3およびGy4ヌル表現型、ならびに作物学的エリート特徴を与える非遺伝子組換え変異を含む植物を生産する植物および方法を提供する。これらの変異は、変異体植物の種子に低グリシニンおよび高β-コングリシニン含量を与える。かくして、本発明の植物は、β-コングリシニンが、グリシニンと比較して改善された栄養上の特徴および溶解度を供するので、大いに価値があるであろう。加えて、本明細書に提供された植物は作物学的エリート特徴を含み、高β-コングリシニン、低グリシニン、大豆の商業上有意な収率を可能にする。本発明のある態様において、増加したβ-コングリシニン含量を有する植物は、Gy3および/またはGy4についての非遺伝子組換えヌル対立遺伝子を含み、従って、これらの座で対応する遺伝子組換え対立遺伝子を含む大豆品種と比較して、政府規制の低下というさらなる利点を有する。また、非遺伝子組換えのGy1およびGy2ヌル対立遺伝子をさらに含み、またかかる利点も供する植物が提供される。
【0038】
また、本発明は、リポキシゲナーゼ-2ヌル表現型を与える非遺伝子組換え変異を含む植物および植物を生産する方法を提供する。リポキシゲナーゼ-2ヌルおよびグリシニンヌル表現型の組合せは、高度に機能的でかつ健康的なβ-コングリシニン蛋白質の増加した含量を提供する。特に、β-コングリシニンは、コレステロール低下および重量管理(満腹効果および脂肪蓄積における低下を介する)の利益を担う生物活性ペプチドを含む。
【0039】
本発明によるもう一つの価値のある組合せは、リポキシゲナーゼ-2ヌルおよび中オレイン酸含量(例えば、40-65%オレイン酸)である。この大豆は、脂質酸化(リポキシゲナーゼ-2)の主触媒を欠き、非常に低レベルの基質(リノール酸)を有するので、低レベルの異風味(off-flavor)を生成するであろう。加えて、かかる大豆は、心臓血管健康につき利益である、改善された(より低い)比のオメガ-6−対−オメガ-3脂肪酸を有するであろう。
【0040】
また、減少したGy1、Gy2、Gy3およびGy4表現型を与える非遺伝子組換え変異、および作物学的エリート特徴を含む大豆を生育させる方法が本明細書において提供される。下記に詳述された試験は、減少したGy1、Gy2、Gy3およびGy4蛋白質含量を有する植物を同定するために用いることができる多型性を同定する。本明細書に同定されたマーカーのうちの3つ、NS0199002、NS0199003およびNS0199008を用いて、大豆植物の減少したGy1、Gy2、Gy3およびGy4表現型を正確に予測できる。後記に示されるように、Gy1およびGy2の遺伝は遺伝子的に連結され、かくして、Gy1(NS0199008)またはGy2(NS0199002)のいずれかに対するマーカーを用いて、減少したGy1およびGy2表現型の遺伝を追跡し得る。加えて、図4に示されるように、低下したGy1,2表現型は、減少したGy3表現型と緊密に相関する。かくして、(NS0199008およびNS0199002のごとき)Gy1,2に対するマーカーを用いて、子孫植物の減少したGy3表現型につき選択し得る。また、マーカーを用いて、Gy4コード化蛋白質について表現型上でヌルである植物を同定できることが示される。例えば、そのNS0199003マーカーを試験に用いて、大豆植物のGy4表現型を正確に決定した。かくして、Gy4遺伝子マーカーと組み合わせたGy1,2,3マーカーの使用により、本発明は、減少したGy1、Gy2、Gy3およびGy4表現型および高い種子β-コングリシニン含量を与える非遺伝子組換え変異を有する植物の高処理スクリーニングおよびマーカー支援育種を可能にする。また、配列決定試験が本明細書で行われ、減少したGy5表現型の遺伝を決定し、減少したGy3表現型につき直接的に選択するために用い得るマーカーを同定した。
【0041】
また、減少したリポキシゲナーゼ-2表現型を与える非遺伝子組換え変異を含む大豆植物を生育させる方法が提供される。例えば、下記の試験は、大豆中のリポキシゲナーゼ-2ヌル(lx2)表現型に関連した配列変異を同定した。分子マーカーはlx2表現型につきこれらの配列変異から開発された。リポキシゲナーゼ-2ヌル形質に関連したこれらのマーカーを用いると、育種家はSDS-PAGEによるリポキシゲナーゼ分析よりむしろマーカ情報または遺伝子型に基づいた選択を作成できる。マーカーデータは、より費用有効性、より速く、およびより信頼性があり、より多数をテストし、複数の形質(例えば、リポキシゲナーゼ-2ヌルおよびグリシニンヌル)を持つエリート系を同定するのを可能とする。
【0042】
I.本発明の植物
本発明は、初めて、Gy3およびGy4ヌル表現型および増加したβ-コングリシニン含量を与える非遺伝子組換え変異を作物学的エリート表現型と組み合わせる大豆品種の植物および誘導体を提供する。いくつかの具体例において、かかる植物はさらに非遺伝子組換えGy1およびGy2ヌル対立遺伝子を含み得る。かかる植物は商業上有意な収率を有すると定義でき、例えば、それはチェック系AG2703およびDKB23-51の少なくとも103%の収率と定義される。さらなるある具体例において、非遺伝子組換えGy1-4変異遺伝子ならびに増加したベータ-コングリシニン含量およびこれらの系の少なくとも約90%、94%、98%、100%、105%または約110%の穀物収率を含む植物が提供される。かかる植物は、本発明のある具体例において、少なくとも10の環境に関して1エーカー当たり約35、37、39、41、43または45ブッシェルを超えた収率を有すると定義され得る。ある具体例において、本発明の植物の種子のβ-コングリシニン含量は、約34%、35%、36%、37%、38%、39%、40%、41%、42%、43%、44%、45%、46%、47%、48%、49%または50%を超えてもよく、またはそれから導き出せるいずれかの範囲であり得る。ある具体例において、本発明の植物は、lx1、lx2および/またはlx3表現型を与える変異をさらに含み得る。
【0043】
従って、本発明の1つの態様は、前記の植物およびその器官ならびにこれらの植物および植物器官を用いる方法に指向される。植物器官は、限定されるものではないが、花粉、胚珠および細胞を含む。本発明は、さらにこれらの植物の再生可能な細胞の組織培養物を提供し、その培養物は、出発品種の全ての生理的および形態的な特徴を示すことができる大豆植物を再生する。かかる再生可能な細胞は、胚、分裂組織細胞、花粉、葉、根、根端または花、あるいはそれから誘導される原形質体またはカルスを含み得る。また、かかる組織培養から再生された大豆植物が本発明により提供され、その植物は、再生可能な細胞が得られた出発植物品種の全ての生理的および形態的な特徴を示すことができる。
【0044】
II. 非遺伝子組換え変異体Gy対立遺伝子および作物学的エリート表現型を有する大豆品種の生産のためのマーカー支援選択
本発明は、非遺伝子組換え変異体Gy対立遺伝子の作物学的エリート大豆植物への導入のための遺伝子マーカーおよび方法を提供する。従って、本発明は、初めて、高種子β−コングリシニン含量を与えるこれらの変異体Gy対立遺伝子を、商業上有意な収率および作物学的エリートの遺伝的背景と組み合わせた植物の創成を可能にする。本発明の方法を用いると、例えば、商業上有意な収率および高い種子β-コングリシニン含量を有する新しい品種の生産において、「11Sヌル」表現型を与える座を所望の大豆遺伝的背景に導入し得る。
【0045】
マーカー支援遺伝子移入は、1つの生殖質から第2の生殖質の1以上のマーカーにより定義された染色体領域の転移を含む。そのプロセスにおける最初の工程は、遺伝子マッピングによる形質の局在であり、それは、連鎖解析を通じて他の遺伝子および遺伝子マーカーに関連して遺伝子の位置を決定するプロセスである。連鎖マッピングについての基本原理は、より密接に一緒の2つの遺伝子が染色体上にあることであり、それらは大部分一緒に遺伝されるようである。要約すると、交配は、試験下の形質に対し遺伝学的に互換性であるが多岐にわたる親間で一般的に作成される。次いで、遺伝子マーカーを用いて、交配からの子孫、しばしば、戻し交配(BC1)、F2または組換え同系交配集団における研究下の形質の分離に続く。
【0046】
定量的形質座またはQTLなる用語を用いて、表現型に対して定量的または相加効果を示すゲノム領域を記載する。複数の変異体Gy対立遺伝子の結果、合計の種子グリシニン含量の低下、およびβ-コングリシニン含量における重要な付随する増加が増加するので、Gy座は典型的なQTLを表わす。作物学的に優れた植物での非遺伝子組換え変異体Gy対立遺伝子を含む大豆植物を生育し、変異体Gy対立遺伝子を遺伝した子孫を選択できる大豆の繁殖を可能にする非遺伝子組換え変異体Gy対立遺伝子の遺伝子マーカーが本明細書において同定される。かくして、本発明は、これらのQTLを所望の作物学的特徴と組み合わせる分子ツールの使用を可能とする。
【0047】
また、非遺伝子組換え変異体lx1およびlx2対立遺伝子の一方または双方を含む大豆植物を生育でき、変異体lx対立遺伝子または対立遺伝子を遺伝した子孫を選択できる非遺伝子組換え変異体lx1およびlx2対立遺伝子についての遺伝子マーカーが同定される。リポキシゲナーゼを低下した大豆植物は、それ自体で有用であり、他の作物学的特徴と組み合わせて有用である。例えば、低下したリポキシゲナーゼおよび低下したグリシニンは有益な形質の組合せである。もう一つの有益な組合せは、低下したリポキシゲナーゼおよび中オレイン酸含量(例えば、オレイン酸の40-65%)である。かくして、本発明は、lx対立遺伝子を、例えば、前記のごとき作物学的に優れた植物中の変異体Gy対立遺伝子と組み合わせる分子ツールの使用を可能とする。
【0048】
A.リンクした遺伝子マーカーの開発および使用
試料の第1の植物集団は、遺伝した遺伝子マーカーにつき遺伝子型を同定して、遺伝子型データベースを形成し得る。本明細書に用いた「遺伝した遺伝子マーカー」は、単一の座での対立遺伝子である。座は染色体上の位置であり、対立遺伝子とは遺伝子の条件;すなわち、それらの座での異なるヌクレオチド配列をいう。各座のマーカー対立遺伝子の組成物は、同型接合性または異型接合性のいずれでも有り得る。情報が交配における遺伝子マーカーから獲得されるために、マーカーは多型性でなければならない;すなわち、突然変異遺伝子を運ぶ染色体が、運ぶマーカーの形態により通常の遺伝子を有する染色体から区別できるように、それは異なる形態で存在しなければならない。
【0049】
表現型データベースの形成は、試料植物の人工または天然の自家受粉に由来した子孫の1以上の形質の直接的観察をすることより、または試料植物の組合せ能力を定量的に評価することにより行うことができる。一例として、植物系を1以上のテスターにまたはテスターにより交配し得る。テスターは同系交配系、単一、二重または複数交配雑種、あるいは制御されたもしくは自由な交配により生成または維持された植物の他の集団、またはそのいずれかの組合せであり得る。いくつかの自家受粉する植物については、子孫テストなくして直接的な評価が好ましい。
【0050】
マーカー遺伝子型は、テスト交配生成において決定され、マーカー座をマッピングし得る。リンケージアプローチにより特定の形質をマッピングするために、形質の遺伝との特定の染色体の座の遺伝における正の相関を確立することが必要である。特にグリシニン含量および収率を含めた定量的形質でのごとき複雑な遺伝の場合には、連鎖は一般的に同定するのが非常により難しくなる。この場合において、統計的処理は表現型および遺伝子型間の相関性を確立するために必要とされ得る。これは、個々の座が全体的な表現型に対して小さな貢献を有し得るので、特定の交配からの多数の結果の検討をさらに必要とし得る。
【0051】
特定の形質およびマーカーの共遺伝または遺伝連鎖は、それらが染色体上で一緒に物理的に接近していることを示唆する。リンケージは、交配における遺伝子およびマーカーの遺伝のパターンを分析することにより決定される。遺伝地図距離の単位はセンチモーガン(cM)であり、それは組換えの増加で増加する。2つのマーカーは、それらがそのように行わなければならない100回の機会ごとに約1回で減数分裂(meiosis)において再結合するならば、別々に1センチモーガンである。センチモーガンは遺伝子の尺度であり、物理的なものではない。第2の座から50cM未満に位置したそれらのマーカーは、それらが互いに独立して遺伝されないので、遺伝学的に連結されると言われる。かくして、1生成当たりの座間で観察された組換えのパーセントは、50%未満になるであろう。本発明の特定の具体例において、用いたマーカーは、座から離れて約45、35、25、15、10、5、4、3、2または1未満、またはそれ未満のcMで位置すると定義し得る。本発明のある具体例において、マーカーは、例えば、Gy1、Gy2、Gy3、Gy3、Gy4またはGy5コード配列または調節エレメント内の変異を含む、それ自体の寄与する座内およびかくして座に各々0cMで位置する多型性の検出のために用い得る。
【0052】
減数分裂中に、相同染色体の対は一緒になり、組換えと呼ばれるプロセスでセグメントを交換する。そのさらなるマーカーはある遺伝子からのものであり、そこでのより多くの機会はその遺伝子およびマーカー間で組換えがあることであろう。連鎖解析において、特定の交配において、マーカーおよび遺伝子または形質の共遺伝に続く。それらの観察された遺伝パターンが偶然に単独で生じる、すなわち、それらが完全にリンクしない可能性が計算される。次いで、その計算は特定の程度の連鎖を仮定して繰り返され、2つの可能性(連鎖なし−対−指定された程度の連鎖)の比が決定される。この比率は、リンケージのその程度について(およびその程度に対する)見込みを示し、比率の対数が用いられるため、見込みの対数、例えば、lodスコアとして知られている。3に等しいまたはそれ以上のlodスコアは、例えば、遺伝子およびマーカーが連結されることを確認するために得られる。これは、2つの座が連結される1000:1の見込みを表わす。連鎖の計算は、プログラムを使用する統計分析の使用により非常に促進される。
【0053】
マーカー分子の遺伝連鎖は、限定なくして、LanderおよびBotstein (1989)により報告されたフランキングマーカーモデル、LanderおよびBotstein (1989)により記載された最尤法に基づいた、およびソフトウェアパッケージMAPMAKER/QTLにおいて実行される間隔マッピングのごとき遺伝子マッピングモデルにより確立できる。さらなるソフトウェアは、Qgene, Version 2.23 (1996) (Department of Plant Breeding and Biometry, 266 Emerson Hall, Cornell University, Ithaca, NY)を含む。
【0054】
B.遺伝マーカー
遺伝子マーカーは、2以上の植物により運ばれた遺伝子情報中の検出された差(多型性)を含む。遺伝子マーカーでの座の遺伝子マッピングは典型的には2つの基本的成分:検出可能な多型性対立遺伝子およびそれらの対立遺伝子の組換えまたは分離を必要とする。植物において、測定された組換えは、事実上常に減数分裂であり、従って、植物遺伝子マッピングの2つの固有の必要条件は、多型遺伝子マーカー、ならびにそれらの対立遺伝子が分離している1以上の植物である。
【0055】
二倍体の座での双方の対立遺伝子の存在が容易に検出できるように、マーカーは共優性の様式で好ましくは遺伝され、それらは環境変異がなく、すなわち、それらの遺伝率は1である。マーカー遺伝子型は、大豆のごとき二倍体生物中の各座で典型的には2つのマーカー対立遺伝子を含む。各座のマーカー対立遺伝子の組成物は、同型接合性または異型接合性であり得る。同型接合性は、座での双方の対立遺伝子が同じヌクレオチド配列により特徴付けられる状態である。異型接合性は、座での遺伝子の異なる状態をいう。
【0056】
多数の異なるマーカータイプが遺伝子マッピングにおける使用に利用可能である。本発明での使用のための典型的な遺伝子マーカータイプは、限定されるものではないが、制限酵素断片長多型(RFLP)、単純配列長多型(SSLP)、増幅断片長多型(AFLP)、一塩基多型(SNP)、ヌクレオチド挿入および/または欠失(INDEL)ならびにアイソザイムを含む。単一ヌクレオチド変化ほど小さいものを含む多型性は、多数の方法でアッセイできる。例えば、検出は、単鎖立体構造多型性(Oritaら, 1989)、変性勾配ゲル電気泳動(Myersら, 1985)または切断断片長多型性(Life Technologies, Inc., Gathersberg, MD 20877)を含めた電気泳動技術によりなすことができるが、DNA配列決定機の広範囲の有用性は、増幅された生成物を正に直接的に配列決定するのをしばしば容易にする。一旦多型性配列の差が知られれば、迅速アッセイを、典型的には特定の対立遺伝子のPCR増幅のいくつかのバージョン(PASA, Sommerら, 1992)、または多数の特定の対立遺伝子のPCR増幅(PAMSA, DuttonおよびSommer, 1991)を含めて子孫テストのために設計できる。
【0057】
DNA試料中のSNPの検出のための1つの方法は、ここに出典明示して本明細書の一部とみなすLivakら, 1995および米国特許第5,604,099号に記載された多型性用蛍光プローブと組み合わせたPCRの使用によるものである。略言すると、一方がSNP部位にアニーリングし、他方が野生型配列にアニーリングする2つのプローブオリゴヌクレオチドが合成される。SNPの部位がプローブオリゴヌクレオチドの5'終端に近いことが好ましい。次いで、各標識は、各々、背景蛍光を低下させ、オリゴヌクレオチドのTmを低下させる非蛍光性消光剤およびマイナー溝結合部分で3’末端で標識される。各プローブの5’末端は異なる蛍光色素で標識され、ここに、蛍光はプローブから切断される色素に依存する。かかる色素のいくつかの非限定の例はVICTMおよび6-FAMTMを含む。次いで、所与のSNPを含むことが疑われるDNAを、5’-3’エキソヌクレアーゼ活性を持つポリメラーゼおよびフランキングプライマーを用いてPCRに付す。PCRは双方のプローブオリゴヌクレオチドの存在下で行なう。プローブがテストDNA中の相補配列に結合するならば、ポリメラーゼのエキソヌクレアーゼ活性は、その蛍光活性を活性化する蛍光性標識を遊離する。従って、単に野性型配列を含むテストDNAは、野性型プローブ上の標識に関連した蛍光を示すであろう。他方、SNP配列だけを含むDNAは、SNPプローブ上の標識からの蛍光性活性を有するであろう。しかしながら、DNAが異種の源からのものであるという場合には、双方の標識のかなりの蛍光が観察されるであろう。公知のSNP部位でのこの種の間接的遺伝子型決定は、DNA試料の高処理の安価なスクリーニングを可能にする。かくして、かかる系は、変異体Gy対立遺伝子を含む子孫大豆植物の同定に理想的である。
【0058】
制限酵素断片長多型(RFLP)は、DNAの制限酵素消化後に、アガロースゲル電気泳動により典型的に明らかにされたDNA断片長により検出できる遺伝子の差である。それらのヌクレオチド切断部位およびそれらの源、例えば、EcoRIにより特徴付けされた利用可能な多数の制限酵素がある。RFLPは、制限部位配列内の単一−bpの多型性および所与の制限フラグメント内の測定可能な挿入または欠失の双方に起因する。RFLPは、生成するのに簡単で比較的安価であり(DNAを必要とするが、配列を要求しない)、共優性である。RFLPはタイピングステージにおいて労働集約型であるという不都合があるが、これはブロットの多数のタスクおよび再利用を多重化することによりある程度まで緩和できる。大部分のRFLPは2対立遺伝子であり、微小サテライトより少ない多型性含量のものである。これらの理由のために、植物遺伝マップ中のRFLPの使用は減少した。
【0059】
当業者は、多数のタイプの分子マーカーが遺伝承継をモニターするツールとして有用でり、それらがRFLP、SSRおよびSNPに限定されるものではないことを認識し、また、当業者は、種々の検出方法が種々の分子マーカーを追跡するために使用し得ることを理解するであろう。また、当業者は、異なるタイプのマーカーがマッピングに用いることができ、特に技術が発展し、新しいタイプのマーカーおよび同定のための手段が同定される。
【0060】
便宜の目的のために、遺伝したマーカー遺伝子型は数値スコアに変換でき、例えば、特定の酵素を用いて特定の座にて2形態のSNPまたは他のマーカー、指定されたAおよびBであるならば、二倍体相補体は数値スコアに変換でき、AA=2、AB=1およびBB=0;またはAA=1、AB=0およびBB=-1である。スコアの絶対値は重要ではない。重要なことは数値指定の付加的な性質である。上記のスコアは共優性マーカーに関する。優性マーカーと一致している同様のスコアリングシステムを与えることができる。
【0061】
C.マーカー支援選択
本発明は、商業上有意な収率および作物学的エリート特徴と組み合わせた増加したβ-コングリシニン含量を有する大豆植物を提供する。かかる植物は、非遺伝子組換え変異体Gy1、Gy2、Gy3、Gy4またはGy5対立遺伝子に遺伝学的に連結されたマーカーの存在につきゲノムDNAをその全ての組合せを含めてアッセイすることを含むマーカー支援選択方法により本発明に従って生産し得る。また、本発明は、低下したリポキシゲナーゼ含量を有する大豆植物を提供する。かかる植物は、非遺伝子組換え変異体Lox1、Lox2またはLox3対立遺伝子に遺伝学的に連結されるマーカーの存在につきゲノムDNAをそのすべての組合せを含めてアッセイすることを含むマーカー支援選択方法により本発明に従って生産し得る。
【0062】
本発明のある具体例において、Gy対立遺伝子に連結されたさらなるマーカーを得ることが望ましいかもしれない。これは、例えば、その1つが減少したグリシニン含量を与える変異体Gy対立遺伝子を含む同系交配の品種だけを交配することにより生産されたF1雑種を自配することにより最初にF2集団を調製することにより行い得る。次いで、組換え同系交配系(RIL)(遺伝学的に関連する系;通常>F5、同型接合性へ連続的に自配F2系から開発した)を調製でき、マッピング集団として用いることができる。優性マーカーから得られた情報は、すべての座が同型接合体である、またはほとんどそうであるため、RILを用いることにより最大化できる。また、Lox対立遺伝子に連結されたさらなるマーカーを得ることが望ましいかもしれない。これは、例えば、その1つが減少したリポキシゲナーゼ含量を与える変異体Lox対立遺伝子を含む、同系交配の品種だけを交配することによりF1雑種を自配により最初にF2集団を調製することにより行い得る。前記のように、次いで、組換え同系交配系を調製し、マッピング集団として使用でき、優性マーカーから得られた情報を、すべての座が同型接合体である、またはほとんどそうであるため、RILを用いることにより最大化できる。
【0063】
また、本発明は、マーカー支援選択により得られ、商業上有意な収率および作物学的エリート特徴と組み合わせて供し得るKTIヌル形質のごときKTIの低下した含量を有する大豆植物を提供する。かかる植物は、本発明のある具体例において、少なくとも10の環境に関する1エーカー当たり約35、37、39、41、43または45ブッシェルを超えた収率を有すると定義し得る。本発明のある具体例において、かかるマーカー支援選択に用いたマーカーはSNPまたはINDELを含み得る。本発明の特定の具体例において、1以上のINDELはKunitz型トリプシン阻害因子をコードする遺伝子に見出すことができる。本発明の1つの具体例において、マーカーは、図9に示されるようなKunitz型トリプシン阻害因子をコードする遺伝子 (配列番号: 167)中の622-623位での欠失および/または664位での挿入を含むことができ、植物は、かかるマーカーの存在につきゲノムDNAをアッセイすることを含むマーカー支援選択方法により本発明に従って生産し得る。
【0064】
また、戻し交配集団(例えば、望ましい品種(反復親)および前者に存在しない形質を運ぶもう一つの品種(ドナー親)間の交配から生成された)は、マッピング集団として利用できる。反復親への一連の戻し交配は、大部分のその望ましい形質を回復するようになすことができる。かくして、反復親に類似する個体からなるが、各個体はドナー親からのゲノム領域の量を変化して運ぶ集団が創製される。戻し交配集団は、反復親におけるすべての座が同型接合体であり、ドナーおよび反復親が対照的な多型性のマーカー対立遺伝子を有するならば、優性マーカーをマッピングするのに有用で有り得る(Reiterら, 1992)。
【0065】
目的をマッピングするために有用な集団は準同質遺伝子系統(NIL)である。マッピング集団として使用できる所望の形質またはゲノム領域を除いて遺伝組成においてほとんど同一である多数の個体を生産するために、NILは多数の戻し交配により創製される。NILでのマッピングにおいて、多型性の座の一部分だけが、選択された部位へマッピングすると予想される。また、マッピングは、形質転換された植物系に対して行うこともできる。
【0066】
D.植物育種方法
本発明のある態様は、非遺伝子組換えの変異体Gy対立遺伝子の異種大豆遺伝的背景への導入を可能にする植物のマーカー支援育種のための方法を提供する。また、本発明のある態様は、非遺伝子組換えの変異体Lox対立遺伝子の異種大豆遺伝的背景への導入を可能にする植物のマーカー支援育種のための方法を提供する。一般的に、育種技術は、受粉の植物方法を駆使する。以下の受粉の2つの一般的方法:1つの花からの花粉が同じ植物の同一またはもう一つの花に移るならば生じる自家受粉、ならびに花粉が異なる植物上の花からそれに達するならば生じる他家受粉がある。自家受粉され、多数の世代にわたるタイプにつき選択された植物は、ほとんどすべての遺伝子座で同型接合体になり、純粋品種子孫、同型接合体の植物の均一な集団を生産する。
【0067】
適当な品種の開発において、系統育種を用い得る。特定の形質のための系統育種方法は2つの遺伝子型を交配することを含む。各遺伝子型は他方において欠けている1以上の望ましい特徴を有することができ;または、各遺伝子型は他方を補足できる。2つのオリジナルの親の遺伝子型がすべての所望の特徴を提供しないならば、他の遺伝子型は育種集団に含むことができる。これらの交配の生成物である優れた植物は自配され、連続的な各生成に再度進められる。続く各生成は、自家受粉および選択の結果としてより均質になる。典型的には、この方法の繁殖は、5世代以上の自配および選択: S1→S2; S2→S3; S3→S4; S4→S5等を含む。自配された世代(S)はあるタイプの雑種世代(F)であると考えることもでき、Fと命名し得る。少なくとも5世代後、同系交配植物は遺伝学的に純粋と考えられる。
【0068】
各育種プログラムは、育種手順の効率の周期的な目的評価を含むべきである。評価基準は目的および対象に依存して変化する。高度な育種系の保証は、一般的に3年以上の間、商業的上の標的地域(群)を示す環境において十分にテストされ、適当な標準に比較される。遺伝学的に優れた個体の同定は、遺伝子型値が植物形質または環境要因の混同によりマスクされかねないので、困難である。優れた植物を同定するための1つの方法は、他の実験の植物および1種以上の広範囲に成長した標準品種に対してその効率を観察することである。単一の観察は決定的でないかもしれないが、反復した観察は遺伝的価値のより良好な評価を提供する。
【0069】
量および反復選択を用いて、自家受粉または他家受粉の作物のいずれかの集団を改善できる。異型接合性の個体の遺伝学的な可変集団は、いくつかの異なる親を交雑させることにより同定または創製される。最良の植物は、個々の優位性、顕著な子孫または優れた組合せ能力に基づいて選択される。選択された植物を交雑させて、選択のさらなるサイクルを続ける新しい集団を生産する。異なる形質および作物に一般的に用いられる他の育種方法の記載は、いくつかの参考図書のうちの1つに見出すことができる(例えば、Allard, 1960; Simmonds, 1979; Sneepら, 1979; Fehr, 1987a,b)。
【0070】
育種プログラムにおける注目する形質(例えば、高収率、耐病性、脂肪酸プロフィール)を有する遺伝子型についての選択する有効性は、1) 集団における個々の植物の注目する形質における変異性が遺伝因子の結果であり、かくして、選択された遺伝子型の子孫に伝達される範囲;および2) 植物中の注目する形質における変異性が、異なる遺伝子型が成長している環境にどの程度起因するか、に依存するであろう。形質の遺伝は、その発現が環境により影響されない1つの主要な遺伝子(すなわち、定性的形質)によるコントロールから、その効果が環境により非常に影響される多数の遺伝子(すなわち、定量的形質)によるコントロールまでの範囲にある。収率のごとき定量的形質についての生育は、さらに、1) 各遺伝子の効果に起因する差が小さいか、またはそれを個々に同定するのを困難または不可能とする;2) キャラクターに寄与する遺伝子数は多く、その結果、もしかつて得られたならば、区別される分離比はほとんどない;および3)遺伝子の効果は環境変異に基づいた異なる方法において発現し得るという事実により特徴付けられる。従って、注目する形質を有する超越分裂系または優れた遺伝子型の正確な同定は非常に困難であり、その成功は、集団における定量的形質の発現に影響する環境変異を最小化する植物育種家の能力に依存する。
【0071】
1つの遺伝子型に組み合わせた形質数が増加すると、超越分離体を同定する可能性が大幅に低下する。例えば、交配が収率、β-コングリシニン含量および少なくとも第1の作物学的形質のごとき3つの複雑な形質において異なる栽培品種間で作成されるならば、3つの各形質についての好ましい遺伝子の最大数を組換えにより同時に1つの遺伝子型に収容することは分子ツールなくしては非常に困難である。結果的に、育種家は一般的に望むことができるすべては、選択された遺伝子に加えて1つの遺伝子型への第2のキャラクターについて遺伝子の好ましい組合せと組み合わせた第1の複雑なキャラクターについての遺伝子の好ましい組合せを得ることである。
【0072】
戻し交配は、特定の望ましい形質を移す効率的な方法である。これは、例えば、優れた同系交配品種 (A)(反復親)を、質問の形質ための適当な遺伝子(群)を運ぶ同系交配ドナー(一回親)にまず交配させることにより達成できる(Fehr, 1987)。次いで、この交配の子孫は、優れた反復親(A)に戻し交配させて、一回親から転移すべき所望の形質につつき得られた子孫において選択する。後記されるように、かかる選択は遺伝アッセイに基づくことができるか、あるいは、子孫植物の表現型に基づくことができる。所望の形質についての選択での5以上の戻し交配世代後、子孫は転移されるべき特徴をコントロールする座につき異型接合性であるが、他の遺伝子の大部分またはほとんどすべてにつき優れた親に同様である。戻し交配の最後の世代は自配または兄弟(sibbed)とされて、転移されるべき遺伝子につき純粋な育種子孫を与え、例えば、座は、植物に減少した種子グリシニン含量を提供する。
【0073】
本発明の1つの具体例において、戻し交配変換のプロセスは:
(a) 減少した種子グリシニン含量に関係する変異体Gy1、Gy2、Gy3、Gy4、および/またはGy5対立遺伝子のごとき1以上の所望の遺伝子、DNA配列またはエレメントを含む第1の遺伝子型の植物を、所望の遺伝子、DNA配列またはエレメントを欠く第2の遺伝子型の植物に交配させ;
(b) 所望の遺伝子、DNA配列またはエレメントを含む1以上の子孫植物を選択し;
(c) その子孫植物を第2の遺伝子型の植物に交配し;次いで
(d) 該所望の遺伝子、DNA配列またはエレメンを第1の遺伝子型の植物から第2の遺伝子型の植物に移すために工程(b)および(c)を繰り返す工程を含むプロセスと定義し得る。
【0074】
特定のDNAエレメントまたはエレメントのセットの植物遺伝子型への遺伝子移入は、戻し交配変換のプロセスの結果と定義される。DNA配列が遺伝子移入された植物遺伝子型とは、戻し交配変換された遺伝子型、系、同系交配、または雑種ということができる。同様に、所望のDNA配列を欠く植物遺伝子型とは、変換されていない遺伝子型、系、同系交配、または雑種ということができる。生育中に、減少したグリシニン含量にリンクした遺伝子マーカーを用いて、減少したグリシニン含量、好ましくは増加したβ-コングリシニン含量を有する大豆植物を生産する目的で生育において援助し得る。特に、戻し交配およびマーカー支援選択を本発明で用いて、関連した非遺伝子組換え変異体Gy1、Gy2、Gy3、Gy4および/またはGy5対立遺伝子を持つその品種の変換により、本発明による減少したグリシニン含量形質をいずれの品種にも導入できる。
【0075】
適当な反復親の選択は、成功した戻し交配手順についての重要な工程である。戻し交配プロトコールのゴールは、オリジナルの同系交配体における形質または特徴を変更または置換することである。これを遂行するために、反復性同系交配体の1以上の座は、後の所望の遺伝のすべて、従って、オリジナル同系交配体の生理的でかつ形態学的な構成を本質的に保持しつつ、一回親から所望の遺伝子で修飾または置換される。特定の非反復親の選定は、戻し交配の目的に依存し、本発明の場合には減少したグリシニン含量を与える1以上の対立遺伝子(群)を加える得る。正確な戻し交配プロトコールは、改変されるべきる特徴または形質に依存して、適当なテスト用プロトコールを決定するであろう。移すべき特徴が優性対立遺伝子である場合、戻し交配方法は単純化されるが、劣性対立遺伝子も移され得る。この例において、所望の特徴が成功裡に移されたかを決定するために子孫のテストを導入することが必要かもしれない。本発明の場合には、例えば、SDS-PAGE/クーマシー染色、ならびに視覚的な形質よりむしろマーカーに基づき、系を選択するために本明細書に記載されたマーカー系を用いることにより、戻し交配プログラム中に生成された子孫系のグリシニン含量をテストし得る。
【0076】
大豆植物(Glycine max L.)は自然または機械技術のいずれかにより交配できる(例えば、Fehr, 1980参照)。自然受粉は、自家受粉または自然の交配受粉のいずれかにより大豆に生じ、それは生物への授粉により典型的に援助される。自然または人工的な交配のいずれにおいても、開花および開花期は重要な考慮事項である。大豆は短日植物であるが、光周期に対する感受性につきかなりの遺伝変異がある(Hamner, 1969; CriswellおよびHume, 1972)。開花につき非常に重要な日照時間は、熱帯地方に適した遺伝子型についての約13時間から、より高緯度で生育した光周期−非感受性の遺伝子型についての24時間の範囲にある(Shiblesら, 1975)。大豆は出芽後9日間日照時間に非感受性のようである。非常に重要な日照時間より短い光周期は、開花誘導を完了するために7〜26日間必要である(BorthwickおよびParker, 1938; ShanmugasundaramおよびTsou, 1978)。
【0077】
雌花の去勢の有無で、雄親の花からピンセットで雄しべおよび雌しべを取り除き、次いで、雌花のスチグマに対して葯を穏やかにブラッシングすることにより手受粉を行うことができる。雄しべへのアクセスは、正面のがく片および竜骨弁を取り出すか、または閉じたピンセットでその竜骨を貫通して、それらが花弁を離れて押すように開くことを可能にすることにより達成できる。スチグマ上の葯のブラッシングはそれらを破裂させ、花粉がスチグマ上ではっきり可視できる場合、最高のパーセンテージの交配の成功が得られる。落とされた(shed)花粉は、スチグマをブラッシング前に葯を引き出すことによりチェックできる。いくつかの雄花を用いて、条件が不利な場合に落とされた適当な花粉を得なければないかもしれず、または同一の雄花を用いて、落とされた良好な花粉でいくつかの花を受粉し得る。
【0078】
遺伝的雄性不稔性は大豆において利用可能であり、特に、反復選択プログラムにつき本発明の文脈においてハイブリダイゼーションを促すのに有用であり得る(BrimおよびStuber, 1973)。交配ブロックの完全な隔離に必要な距離は明らかではない;しかしながら、雄性不稔性植物が外来性花粉源から12m以上である場合、異系交配は0.5%未満である(BoermaおよびMoradshahi, 1975)。交配ブロックの境界上の植物は、恐らく外来性花粉を有する最多の異系交配を保持し、収穫にて除去して、汚染を最小化できる。
【0079】
一旦収穫されたならば、種子が13%またはそれ未満の水分を含むまで鞘は38℃以下で典型的に空気乾燥され、次いで、種子は手により取り出される。種子は、相対湿度が50%以下であるならば、1年間まで約25℃にて十分に保存できる。湿潤気候において、種子が7%水分まで乾燥され、室温にて気密容器に保存されない限りは、発芽パーセンテージは、急速に減少する。いずれかの気候における長期貯蔵は、7%水分まで種子を乾燥させ、50%の相対湿度で維持された部屋または気密容器中で10℃以下でそれを保存することにより最良に達成される。
【0080】
III.大豆品種の改変および改良のための形質
ある具体例において、本発明により提供される大豆植物は、1以上の導入遺伝子を含み得る。かかる導入遺伝子の1つの例は除草剤抵抗性を与える。共通の除草剤抵抗性遺伝子は、グリホサート抵抗性を与えるEPSPS遺伝子;カナマイシンに対する抵抗性を与えるネオマイシン・ホスホトランスフェラーゼII(nptII)遺伝子(Fraleyら, 1983)、抗菌剤ヒグロマイシンに対する抵抗性を与えるヒグロマイシン・ホスホトランスフェラーゼ遺伝子(Vanden Elzenら, 1985)、ジヒドロ葉酸還元酵素およびアセト乳酸合成酵素(Eichholtzら, 1987, Shahら, 1986, Charestら, 1990)のごときグルホシネートまたはブロキシニル(broxynil)に対する抵抗性を与える遺伝子(Comaiら, 1985; Gordon-Kammら, 1990; Stalkerら, 1988)を含む。さらなる例は、イミダザソリノンまたはスルホニル尿素に対する抵抗性を与えるALSおよびAHAS酵素 (Leeら, 1988; Mikiら, 1990)、ホスフィノチリシン(phosphinothricin)抵抗性を与えるホスフィノチリシン-アセチル-トランスフェラーゼ遺伝子(欧州出願第0 242 246号)、セトキシジム(sethoxydim)およびハロキシホプ(haloxyfop)のごときフェノキシプロプリオン酸およびシクロシェノキソン(cycloshexone)に対する抵抗性を与える遺伝子(Marshallら, 1992);ならびにトリアジン(psbAおよびgs+遺伝子)およびベンゾニトリル(ニトリラーゼ遺伝子)に対する抵抗性を与える遺伝子(Przibilaら, 1991)を含む。
【0081】
また、本発明の植物は、昆虫、害虫、ウイルスまたは細菌の攻撃に対する抵抗性を与える遺伝子を含み得る。例えば、大豆シストセンチュウのごとき害虫に対する抵抗性を与える遺伝子は、PCT出願WO96/30517およびPCT出願WO93/19181に記載された。Jonesら, (1994)は、Cladosporium fulvumに対する抵抗性のためのトマトCf-9遺伝子のクローニングを記載し; Martinら, (1993)は、Pseudomonas syringae pv.に対する抵抗性のためのトマトPto遺伝子を記載し、また、Mindrinosら、(1994)は、Pseudomonas syringaeに対する抵抗のためのArabidopsis RSP2遺伝子を記載する。また、Bacillus thuringiensis内毒素を耐虫性に用い得る。(例えば、Geiserら, (1986)参照。また、アビジンのごときビタミン結合蛋白質は、幼虫駆除剤として用い得る(PCT出願US93/06487)。
【0082】
形質転換された植物細胞中のウイルス被覆蛋白質の使用の用途は、コート蛋白質遺伝子が誘導されたウイルスならびに関連したウイルスにより影響されるウイルス感染および/または疾病発生に対する抵抗性を与えることが知られている。(Beachyら, 1990参照)。被覆蛋白質媒介抵抗性は、アルファルファ-モザイクウイルス、キュウリモザイクウイルス、タバコストリークウイルス、ジャガイモウイルスX、ジャガイモウイルスY、タバコ腐食(etch)ウイルス、タバコラットルウイルスおよびタバコモザイクウイルスに対する形質転換された植物で与えられた。同上。病原体または寄生虫により自然界において生成される発育阻止蛋白質も用い得る。例えば、Logemannら、(1992)は、大麦のリボソーム不活性化遺伝子を発現する遺伝子組換え植物が菌類病に対する抵抗性の増加を有することを示した。
【0083】
また、増加した栄養価またはもう一つの付加価値のある形質を与える導入遺伝子を用い得る。一例は、例えば、ステアロイル-ACPデサチュラーゼのアンチセンス遺伝子で植物を形質転換して、植物のステアリン酸含量を増加させることによる改変された脂肪酸代謝である。(Knutzonら, 1992参照)。また、センスデサチュラーゼ遺伝子を導入して、脂肪酸含量を改変し得る。フィチン酸塩含量は、フィチン酸塩コード遺伝子の導入により改変して、フィチン酸塩の分解を増強し、より多くの遊離リン酸塩を形質転換された植物に加え得る。また、改変された炭水化物組成物は、例えば、デンプンの分岐パターンを変更する酵素をコードする遺伝子で植物を形質転換することにより影響し得る。 (Shirozaらを参照、1988) ( Streptococcus mutans フルクトシルトランスフェラーゼ遺伝子のヌクレオチド配列); Steinmetzら, (1985) (Bacillus subtilisレバンスクラーゼ遺伝子のヌクレオチド配列); Penら, (1992) (Bacillus licheniformis α-アミラーゼを発現する遺伝子組換え植物の生産); Elliotら, (1993) (トマト・インベルターゼ遺伝子のヌクレオチド配列); Sogaardら, (1993) (大麦α-アミラーゼ遺伝子の部位特異的変異誘発)およびFisherら, (1993) (トウモロコシ内乳デンプン分枝酵素II)。
【0084】
また、導入遺伝子を用いて、蛋白質代謝を改変し得る。例えば、米国特許第5,545,545号は、リジン非感受性トウモロコシ・ジヒドロジピコリン酸シンターゼ(DHPS)を記載し、それは、天然のDHPSの活性を抑制するL-リジンの濃縮に実質的に抵抗性である。同様に、EP 0640141は、トレオニンの通常より高生産を引き起こすことができるリジン非感受性アスパルトキナーゼ(AK)をコードする配列、ならびにリジンを増加させるためのアンチセンスリジン・ケトグルタール酸還元酵素をコードするサブフラグメントを記載する。
【0085】
もう一つの具体例において、植物炭水化物代謝を改変する導入遺伝子を使用し得る。例えば、フルクトキナーゼ遺伝子は、遺伝子組換え植物およびそれらの果実中のフルクトキナーゼ遺伝子発現の代謝的設計における使用につき知られている(米国特許第6,031,154号参照)。用い得る導入遺伝子のさらなる例は、穀物収率を改変する遺伝子である。例えば、米国特許第6,486,383号は、アデノシンジホスホグルコースピロホスホリラーゼ(「ADPG PPase」)のサブユニット蛋白質での遺伝子組換え植物におけるデンプン含量の改変を記載する。EP0797673において、特定のDNA分子の導入および発現の結果、液胞の外側に容易に動員されたリン酸塩プールを形成し、バイオマス生産を増強する、および/または開花行動を改変する遺伝子組換え植物が言及されている。依然としてさらに、植物成熟を改変する遺伝子が知られている。米国特許第6,774,284号は、植物リパーゼをコードするDNA、および植物中の老化を制御するその使用方法を記載する。米国特許第6,140,085号は開花特性、特に、開花のタイミングを改変するためのFCA遺伝子を言及する。米国特許第5,637,785号は、早期の花芽分裂組織発生を有し、LEAFY蛋白質をコードする構造遺伝子をそのゲノム中に含むような花発生を変調した遺伝子的に改変された植物を言及する。
【0086】
また、植物の形態的特徴を改変するための遺伝子が知られ、本発明により用いることもできる。米国特許第6,184,440号は、細胞壁変調導入遺伝子の発現の結果として改変された構造または形態学を示す遺伝子的に設計された植物を言及する。細胞壁変調導入遺伝子の例は、セルロース結合ドメイン、セルロース結合蛋白質、あるいはエンドキシログルカントランスフェラーゼ、キシログルカンエンド-トランスグリコシラーゼ、エクスパンシン、セルロース合成酵素または新規な単離エンド-1,4-β-グルカナーゼごとき細胞壁改変蛋白質もしくは酵素を含む。
導入遺伝子の導入方法は当該技術分野においてよく知られ、生物学的および物理的な植物形質転換プロトコールを含む。例えば、Mikiら (1993)参照。
【0087】
一旦導入遺伝子が品種に導入されれば、それは交配により容易に転移し得る。戻し交配を用いると、品種の所望の形態学的および生理学的な特性の本質的にすべてが、戻し交配技術を介してその品種に転移された座に加えて回復される。戻し交配方法を本発明と共に用いて、特徴を改善するまたは特徴を植物に導入できる(Poehlmanら, 1995; Fehr, 1987a,b)。
【0088】
IV.大豆植物の細胞培養およびin vitro再生
本発明のさらなる態様は、本発明の大豆品種の組織培養に関する。本明細書に用いた「組織培養(物)」なる用語は、同一または異なるタイプの単離された細胞を含む組成物、または植物の器官へ組織されるかかる細胞の収集を示す。典型的なタイプの組織培養(物)は、植物または胚、花粉、花、葉、根、根端、葯等のごとき植物の器官において無傷である原形質体、カルスおよび植物細胞である。好ましい具体例において、組織培養(物)は、胚、原形質体、分裂組織細胞、花粉、葉または葯を含む。
【0089】
再生可能な大豆細胞の組織培養(物)を調製し、大豆植物をそこから再生するための典型的な手順は、米国特許第4,992,375号;米国特許第5,015,580号;米国特許第5,024,944号および米国特許第5,416,011号に開示され、その各開示をここに出典明示してそのすべてを特に本明細書の一部とみなす。
【0090】
組織培養(物)の重要な能力は、稔性植物を再生する能力である。これは、例えば、組織培養細胞の形質転換に続いての遺伝子組換え植物の再生を可能にする。形質転換が効率的でかつ成功するために、DNAを植物または生殖細胞系組織を生起させる細胞に導入しなければならない。
【0091】
大豆は、2つの区別されるプロセス;苗条形態形成および体細胞胚形成を介して典型的に再生される(Finer, 1996)。苗条形態形成は苗条分裂組織の構成および発生のプロセスである。苗条は、源組織から外に成長し、切り取り、根付かせ、無傷の植物を得る。体細胞胚形成中に、苗条および根軸の双方を含む胚(接合子胚に類似する)は、体植物組織から形成される。根付いた苗条よりむしろ無傷の植物は、体細胞胚の発芽に起因する。
【0092】
苗条形態形成および体細胞胚形成は異なるプロセスであり、特定のルートの再生は、組織培養操作に用いた外植片源および培地に主として依存する。系は異なるが、双方の系は、いくつかの系が他のものより組織培養操作により応答性である場合に品種特異的な応答を示す。苗条形態形成に高度に応答性である系は、多数の体細胞胚を生成しないかもしれない。「誘導」工程中に多数の胚を生成する系は、急速に成長する増殖性培養(物)を生じさせないかもしれない。従って、各大豆系についての組織培養条件を最適化することが望ましいかもしれない。これらの最適化は、小規模培養試験による組織培養(物)の当業者により容易に行い得る。系特異的な応答に加えて、増殖性培養物は苗条形態形成および体細胞胚形成の双方で観察できる。増殖が、単一の形質転換細胞が生殖細胞系列組織に寄与する点まで増加するのを可能とするので、増殖は両系につき有益である。
【0093】
苗条形態形成は、苗条が大豆実生の子葉結節から新たに得られた系としてWrightら (1986)により最初に報告された。苗条分裂組織は表皮下で形成され、形態形成組織はベンジルアデニン(BA)を含有する培地で増殖できた。この系は、表皮下の多細胞の起源の苗条が認識され、増殖性培養(物)が利用されるならば、形質転換に用いることができる。そのアイデアは、新しい苗条を生じさせて、それらの細胞を増殖して、キメラ現象に関連した問題を減少させるであろう組織を標的とする。分裂組織中の単一細胞だけの形質転換に起因するキメラの形成は、形質転換細胞が十分に増殖されず、生殖細胞系組織を生じさせないならば、問題である。一旦その系が十分に理解され再生されれば、それを大豆形質転換のための1つの標的組織として用いることができる。
【0094】
大豆における体細胞胚形成は、胚形成組織が接合子の胚軸から最初に得られた系としてChristiansonら (1983)により最初に報告された。これらの胚形成培養物は増殖性であるが、系の反復性は低く、胚の起源は報告されなかった。異なる増殖性胚形成大豆培養の後の組織学的研究は、増殖性胚が胚形成に寄与する少数の細胞を有する先端または表面起源のものであることを示した。1次胚(初期の外植片に由来した第1の胚)の起源は、外植片組織および誘導培地中のオーキシンレベルに依存する(Hartweckら, 1988)。増殖性胚の培養で、「より古い」体細胞胚の表面細胞の単一細胞または小集団は、「より新しい」胚を形成する。
【0095】
また、胚の起源が認識され、増殖性胚形成培養の生物学的な制限が理解されるならば、胚形成培養は、遺伝子組換え植物の再生を含めた再生に成功裡に用いることができる。生物学的制限は、増殖性胚形成培養物の発生、および長期的な増殖性胚形成培養物から再生された植物に関連した低下した稔性問題(培養由来の変異)における困難性を含む。これらの問題のいくつかは、延長培養中に強調される。より最近の培養細胞の使用は、かかる問題を減少または消失させ得る。
【0096】
V. 大豆植物の利用
本発明により提供される大豆植物は、有益と判断されるいずれの目的にも用い得る。共通の使用は、ヒト消費のための食物、非ヒト動物消費のための食餌の調製およびの産業用途を含む。本明細書に用いた「産業用途」または「産業使用」は、大豆または大豆ベースの生成物についての非食物および非食物使用をいう。
【0097】
大豆は、2つの一次製品の大豆蛋白質(ミール)および粗製ダイズ油に一般的に処理される。これらの生成物の双方は、特定の使用のためにさらに精製される。精製油生成物はグリセロール、脂肪酸およびステロールに分解できる。これらは、食物、食餌または産業用途向けで有り得る。食用食品生成物の使用例は、コーヒークリーマー、マーガリン、マヨネーズ、医薬、サラダドレッシング、ショートニング、ベーカリー製品およびチョコレートコーティングを含む。
【0098】
大豆蛋白生成物(例えば、ミール)を、食物/食餌および産業用途の双方を有する大豆粉末の濃縮物および分離物に分割できる。大豆粉末およびグリットは、肉増量剤および類似物、ペット食品、ベーキング成分および他の食物製品の製造にしばしば使用される。大豆粉末および単離物から調製された食物製品は、ベビーフード、キャンディー製品、シリアル、食物飲料、ヌードル、イスート、ビール、エール等を含む。特に大豆ミールは、家畜飼養、主としてブタおよび家禽における蛋白質源として一般的に用いられる。かくして、食物使用は、限定されるものではないが、水産養殖飼料、ハチ飼料、代用子牛飼料、魚飼料、家畜飼料、家禽飼料、ペット飼料等を含む。
【0099】
また、全体の大豆生成物を食物または飼料として使用できる。一般的な食物使用法は、大豆バター、大豆コーヒー、および東洋食物の他の大豆誘導物のごとき生成物として用いた焼き炒られた大豆の種々の製品に用いる種子、豆もやし、焼いた大豆、全脂大豆粉末のごとき生成物を含む。飼料使用については、外皮は大豆から一般的に取り除かれ、飼料として用いられる。
【0100】
大豆はさらに多数の産業用途を有する。大豆についての1つの共通の産業用途は、混合物を製造するのに用いることができる結合剤の調製物である。例えば、材複合物は、改変された大豆蛋白、加水分解された大豆蛋白およびPF樹脂の混合物、粉末樹脂を含有する大豆粉末、および泡状接着剤を含有する大豆蛋白を用いて生成し得る。大豆ベースの結合剤を用いて、70年間を超えて合板のごとき一般的な木材製品が製造されている。尿素ホルムアルデヒドおよびフェノール-ホルムアルデヒド樹脂の導入が木材製品における大豆ベースの接着剤の使用を減少させたが、再生可能な提供原料から調製された接着剤についての環境問題および消費者嗜好は、木材複合産業のための新しい大豆ベースの生成物の開発における注目する再起を引き起こした。
【0101】
接着剤の調製は、大豆についてのもう一つの一般的な産業用途を表わす。大豆接着剤の例は大豆加水分解物接着剤および大豆粉末接着剤を含む。大豆加水分解物は、加熱(120℃)および圧力(30 psig)下で5パーセントの水酸化ナトリウム溶液中で大豆蛋白単離物を反応させることにより調製された無色水溶液である。得られた分解した大豆蛋白溶液は、室温にて塩基性(pH 11)で、かつ流動性を有する(およそ500cps)。大豆粉末は大豆から調製された微細に挽かれ、除脂肪のミールである。種々の粘着性処方は、大豆粉末から調製でき、第1工程は、水酸化ナトリウム溶液中に粉末を溶かすことを一般的に必要とする。得られた処方の強度および他の特性は、その処方中の添加物に依存して変化するであろう。また、大豆粉末接着剤は、潜在的に他の市販の樹脂剤と組み合わせることもできる。
【0102】
ダイズ油は、多数の産業用途に適用を見出し得る。ダイズ油は、最も容易に利用可能であり、世界で最も低コストの植物油の1つである。ダイズ油についての一般的な産業用途は、静電防止剤、コーキングコンパウンド、消毒剤、殺真菌剤、インク、塗料、プロテクティブコーティング、壁張り用材、泡止め剤、アルコール、マーガリン、ペイント、インク、ゴム、ショートニング、化粧品等の成分としての使用を含む。また、ダイズ油は、長年アルキド樹脂中の主要成分であり、それは油性ペンキを調製するために担体溶媒に溶解される。加熱および圧力下で植物油をアルキド樹脂に変換するための基礎的な化学は、当業者によく理解されている。
【0103】
商業上利用可能な微細にされていないかまたは微細にされた食用等級の状態におけるダイズ油は、かなり安定で遅乾性の油である。また、ダイズ油を改変して、周囲条件下、または種々の形態におけるエネルギーの入力でその反応性を増強でき、油を共重合または乾燥フィルムまで保存処理させる。これらの形態の改変のいくつかは、エポキシ化、アルコール分解、エステル転移反応、直接的エステル化、複分解、異性化、モノマー修飾、および熱ボディング(bodying)を含む種々の形態を含んでいた。その二重結合を有するダイズ油の反応性リノール酸成分は、多数の産業用途につき優位性のオレイン酸およびリノール酸成分より有用で有り得る。
【0104】
また、溶媒は、大豆ベースの成分を用いて調製できる。例えば、ダイズ油ベースのメチルエステルのメチルソイエートは、パーツ・クリーニングおよび脱脂、ペイントおよびインク除去、および油流出汚染除去のごとき適用に代替的な優れた溶媒置換物としての市場支持を得ている。また、それは、ハンドクリーナー、カーワックスおよび落書き除去剤を含めた多数の処方化された消費者製品において市場に出されている。メチルソイエートは、ダイズ油のメタノールとのエステル転移反応により生産される。それは多数の製造者および供給者から商業上入手可能である。溶媒としてのメチルソイエートは、それを産業上の適用につき魅力的にする環境および安全性関連の重要な特性を有する。それは大部分の他の溶媒より毒性においてより低く、容易に生物分解でき、非常に高い引火点および低レベルの揮発性有機化合物(VOC)を有する。メチルソイエートの適合性は、金属、プラスチック、大部分のエラストマーおよび他の有機溶媒で優れている。メチルソイエートの現在の使用は、クリーナー、ペンキ剥離剤、油流出クリーンアップおよびバイオレメディエーション、殺虫剤アジュバント、防食剤およびバイオディーゼル燃料添加物を含む。
【0105】
VI.寄託情報
本明細書に開示した大豆系B2G2および系統3の少なくとも2500粒の種子の寄託は、2005年7月28日付けでAmerican Type Culture Collection (ATCC), 10801 University Boulevard, Manassas, Va. 20110-2209 USAでなされた。その寄託は、各々、ATCC受入番号PTA-6893およびPTA-6892が割当てられた。その種子はATCCで寄託された。この寄託へのアクセスは、ブダペスト条約に従い出願係属中に利用可能になるであろう。寄託は、公的な受託者であるATCC受託者に、30年の期間、または最新の請求後5年、または特許の法的強制力のある寿命の間のより長いいずれかの間で維持され、それがその期間中に生育不能になるならば交換されるであろう。
【0106】
VII.キット
本明細書に記載されたいずれの組成物もキットに含まれ得る。非限定の実施例において、本明細書に記載された多型性検出用の組成物および/またはさらなる剤は、キットに含まれ得る。かくして、キットは、適当な包装容器手段において、多型性検出用のプローブもしくはプライマーおよび/または本発明のさらなる剤を含み得る。特定の具体例において、キットは、例えば、かかる対立遺伝子、および/またはその対立遺伝子(群)を有する連鎖不平衡における多型性の検出により、少なくとも1つの非遺伝子組換えGyヌル対立遺伝子の検出を可能にし、リポキシゲナーゼおよび/またはKTIヌル対立遺伝子の検出をさらに提供し得る。
【0107】
キットは、かかる対立遺伝子を検出するために所望のいずれかのアッセイ形式のために標識または標識されていなくてのいずれでも、本発明の適当に等分された作用物質組成物を含み得る。キットの成分は、水性溶媒または凍結乾燥形態のいずれでも包装され得る。キットの容器手段は、一般的に少なくとも1つのバイアル、試験管、フラスコ、ボトル、注射器または他の容器手段を含み、その中に成分を入れ、好ましくは、適当に等分され得る。また、キット中の1を超える成分がある場合、キットは一般的に第2、第3、またはさらなる容器を含み、その中に、さらなる成分を別々に入れることもできる。しかしながら、成分の種々の組合せがバイアルに含まれ得る。また、本発明のキットは、典型的には、検出組成物を含む手段および商業販売のための厳重な封入におけるいずれかの他の試薬容器を含むであろう。かかる容器は、その中に所望のバイアルが保持される注射または中空成形プラスチック容器を含み得る。
【0108】
キットの成分が1および/またはそれを超える液体の溶液中で提供される場合、液体溶液は水溶液で有り得、無菌水溶液が特に好ましい。しかしながら、キットの成分は乾燥粉末(群)として提供され得る。試薬および/または成分が乾燥粉末として提供される場合、粉末は、適当な溶媒の添加により再生できる。溶媒は、もう一つの容器手段中で提供され得ることも想定される。容器手段は、一般的に少なくとも1つのバイアル、試験管、フラスコ、ボトル、注射器および/または他の容器手段を含み、その中のヌル対立遺伝子を検出するための組成物を入れ、好ましくは、適当に配置されるであろう。また、キットは、無菌の緩衝剤および/または他の希釈剤を含む第2の容器手段を含み得る。
【0109】
また、本発明のキットは、例えば、その中に所望のバイアルが保持される注射および/または中空成形プラスチック容器のごとき商業販売のための厳重な封入におけるバイアルを含む手段を典型的に含むであろう。また、容器の数および/またはタイプに関係なく、本発明のキットは、検出組成物の使用を支援する手段を含み、および/またはその手段で包装し得る。
【0110】
VIII.定義
以下の記載および表において、多数の用語が用いられる。本願明細書および特許請求の範囲の明瞭で一貫した理解を提供するために、以下の定義が提供される:
ある(a): 特許請求の範囲における「含む」または他のオープン言語と組み合わせて使用する場合、「ある(a)」および「ある(an)」は1以上を示す。
作物学的エリート:本明細書に用いた作物学的エリートは、生産者が商業上重要な生成物を収穫することを可能にする種子収率、出芽、成長力、植物性成長力、耐病性、種子セット、耐倒伏性、および脱粒性のごとき多数の区別可能な形質の頂点を有する遺伝子型を意味する。
対立遺伝子: いずれかの1以上の代替形態の遺伝子座、そのすべての対立遺伝子は形質または特徴に関連する。二倍体細胞または生物において、所与の遺伝子の2つの対立遺伝子は、1組の相同染色体上の対応する座を占める。
戻し交配: 育種家がハイブリッド子孫の親のうちの1つに、ハイブリッド子孫、例えば、第一世代雑種(F1)を繰り返し交配させるプロセス。戻し交配を用いて、1以上の単一の座転換を1つの遺伝的背景からもう一つのものへ導入できる。
商業上有意な収率:同一条件下で成長する場合のチェック系AG2703およびDKB23-51の少なくとも95%の実際の穀物収率により表わされる、栽培者に対して商業的意義を有する穀物の収率。
【0111】
交配:2つの親株の交配。
他家受粉:異なる植物からの2つの配偶子の結合による受精。
下方調節変異:この出願の目的では、下方調節変異は、所与の遺伝子からの蛋白質の発現レベルを低下させる変異と定義される。かくして、下方調節変異はヌル変異を含む。
F1雑種:2つの非同質遺伝子の植物の交配の第一世代子孫。
遺伝子型:細胞または生物の遺伝素質。
INDEL:ヌクレオチド配列の挿入または欠失に起因する遺伝子変異。
産業用途: 大豆植物についての非食料および非飼料使用。「大豆植物」なる用語は、大豆植物の植物器官および派生物を含む。
連鎖:同一染色体上の対立遺伝子が、それらの伝達が独立した機会により期待されたより高頻度で一緒になり分離する傾向がある現象。
マーカー:環境変動成分なくして、すなわち、1の遺伝率で共優性様式において好ましくは遺伝した容易に検出可能な表現型(二倍体異型接合体中の双方の座の対立遺伝子は容易に検出できる)。
非遺伝子組換え変異:組換DNA技術を用いて作成された変異を含まずに、自然発生または従来方法 (例えば、放射線または変異原性物質に対する植物の曝露)により引き起こされる変異。
ヌル表現型:本明細書に用いたヌル表現型は、所与の蛋白質が検出できるレベルにて発現されないことを意味する。Gyサブユニットの場合には、発現レベルはSDS-PAGEおよびクーマシー染色により決定される。
表現型:細胞または生物の検出可能な特徴、その特徴は形質発現の明示である。
定量的形質座(QTL):定量的形質座(QTL)は、通常連続的に分配される数的に発現可能な形質をある程度コントロールする遺伝子座をいう。
SNP:2つの同族の配列を比較する場合、一塩基多型、または単一ヌクレオチド変異をいう。
ストリンジェント条件:5X SSC、50%ホルムアミドおよび42℃の核酸ハイブリダイゼーション条件をいう。
実質的に等価:比較される場合、平均から統計的有意差(例えば、p=0.05)を示さない特徴。
組織培養(物):同一または異なるタイプの単離細胞を含む組成物あるいは植物の器官に組織されたかかる細胞の収集。
導入遺伝子:形質転換により大豆植物のゲノムへ導入された配列を含む遺伝子座。
【0112】
IX.実施例
以下の実施例は本発明の好ましい具体例を示すために含まれる。以下の実施例に開示された技術が本発明の実施において良好に機能するように本発明者により見出された技術を表わし、かくして、その実施につき好ましい様式を構成すると考えることができることは当業者により認められるであろう。しかしながら、当業者は、本開示に徴して、多数の変更が、本発明の精神および範囲から逸脱せずに、開示された特定の具体例においてなすことができ、同様または類似する結果を依然として得るることを認めるであろう。
【0113】
実施例1
試験に用いた大豆品種
B2G2または「11Sヌル」大豆品種は、高レベルのβ-コングリシニンおよび少量のグリシニンを含むユニークな種子組成物を有する。しかしながら、B2G2品種は、低い収率、過度の倒伏および緑色種子のごとき作物学的に劣性の特徴を示す。多数の育種系が開発され、それはB2G2系中に存在する変異のすべてまたは一部分を運ぶ。B2G2系と一緒にかかる15の系を再配列パネル中に変異系として用いた。8つの野性型をこの試験における比較に用いた。表1は、その配列パネル中で用いたすべての系をリストする。
【0114】
【表1】

【0115】
実施例2
Gy対立遺伝子用マーカーの設計
全グリシニン遺伝子用DNA配列はGenBank(NCBI)において利用可能である。これらの配列はモンサント配列データベースに対してブラストするための質問として用いた。「blastn」プログラムを用いて、多数の高スコアヒットを得た。blast検索から得られた配列を整列させて、プライマー設計に用いる高品質コンセンサス配列を提供した。ネスティッドプライマーは、各座で完全に全遺伝子をカバーするように設計し、アンプリコン群を異なる系から生成した。これらのアンプリコン群の配列を整列させて、高β-コングリシニン表現型に関連したSNPおよびINDELを同定した。最初に、Gy1のために10対、Gy2およびGy3のために各7対、Gy4のために14対、Gy5のために10対およびGy7のために11対のプライマーを設計した。一旦それらの配列がこの試験から分かったならば、さらなるプライマーを設計した。表2は、試験に用いたプライマーをリストする。
【0116】
DNAはQiagen Plant DNAキットで単離し、PCRはKODプロトコール(EMD Biosciences, Inc, Madison, WI)で行った。反応ミックスは、3.4μl 5Mベタイン、2μl 10 x KOD緩衝剤、2μlの2mM dNTPs、0.8μl 25mM MgSO4、0.2μl KOD酵素(1U/μl)、1.6μlプライマー(5μM)および10μl DNAテンプレート(2ng/μl)を含んだ。PCRサイクルは以下のとおりであった:94℃ 5分間;8サイクルの94℃ 40秒間、62℃ 40秒間、72℃ 1分間、94℃ 40秒間、60℃ 40秒間、72℃ 1分間、94℃ 40秒間、58℃ 40秒間、72℃ 1分間、94℃ 40秒間、56℃ 40秒間、72℃ 1分間; 3サイクルの94℃ 40秒間、55’C 40秒間、72℃ 1分間; 72℃で7分間保持する。PCR生成物は1%アガロースゲル中の電気泳動により分析した。配列決定については、5μl PCR生成物を新しいチューブおよび1μlエキソヌクレアーゼI (1:10 希釈)および1 μl エビアルカリホスファターゼ(1:100 希釈)に移した。その混合物を37℃にて20分間、次いで、80℃にて20分間インキュベートして、酵素を不活性化した。40μl H2Oを添加して、6μlをテンプレートとして用い、1μlを配列決定用プライマーとした。配列決定はCapillary Sequencer ABI3730を用いて行なった。DNAStarTM (LaserGene)のSeqMan IIプログラムを用いて、配列を組み立て整列させた。
【0117】
そのSNP配列に基づいて、Applied Biosystemsにより設計および製造されたエンドポイントSNP/TaqmanRアッセイを、それらに供した。SNP検出は、供給された使用説明書(Applied Biosystems)により行った。TaqmanRアッセイまたはReal Time PCRは、増幅反応中に二重標識された蛍光発生プローブのハイブリダイゼーションおよび切断により特定のPCR生成物の蓄積を検出する。Taqmanアッセイは4つのオリゴヌクレオチドを含み、そのうち2つはPCRプライマーとして機能し、検出すべき多型性を包含するPCR生成物を生成する。他の2つは対立遺伝子特異的蛍光共鳴エネルギー転移(FRET)プローブであり;各プローブは、Taq DNAポリメラーゼによりプローブ分解に際して遊離されるユニークなフルオロフォアを有し、試料中に存在する各対立遺伝子の量を有効に示す。
【0118】
【表2−1】

【0119】
【表2−2】

【表2−3】

【表2−4】

【0120】
実施例3
Gy発現分析方法
Gyマーカーの遺伝子配座は、AAH3504T0C/AH0209439-130およびAAH2104J0C/AH0209439-130間の交配から誘導した、各々、JB0305602およびJB0305605と指定された2つのF2集団において行った。400のF2の個々の植物をサンプリングし、372の植物をSNPマーカーで遺伝子型を同定した。
【0121】
蛋白質分析は以下のように行った:8粒の大豆種子をプールし、CAT Mega-Grinder (SOP Asci-01-0002)を用いて挽いた。ブラウンド試料を4℃で貯蔵した。分析について、各々からの約30 mgの粉末を、96ウェルの2mlタイタープレートの1ウェルで秤量した。蛋白質を、還元剤として0.1Mジチオスレイトール(DTT)を含有する1.0mlの1X Laemmli SDS緩衝液pH 6.8中で振盪しつつ1時間抽出した。遠心後、各抽出物の一部分をSDS緩衝剤中でさらに希釈して、0.2-0.5μg/μl合計蛋白質を得、90−100℃に10分間加熱し、冷却した。各試料について、1-2μgの合計蛋白質を、26レーンの15%T勾配トリス/HCl Criterionゲル上に12チャネルピペットを用いて負荷した。分子量標準および親対照を各ゲル中のレーンのうちの2つに含ませた。ゲルを、追跡用色素が底に達する約1.2時間まで電気泳動し、次いで、Colloidal Coomassie Blue G-250中で一晩染色し、DI水中で脱染し、次いで、GS800 Calibrated Densitometerを用いて画像化した。染色したゲルの例示的画像を図1に示し、Gy対立遺伝子に関連した蛋白質バンドを図の左に示す。定量はBio-Rad Quantity OneTM Softwareを用いて行った。そのソフトウェアを用いて、試料レーン中の各バンドの相対的な量を決定した。パーセント酸性グリシニンおよびパーセントβ-コングリシニン蛋白質サブユニットバンドを、レーン中の合計蛋白質の相対的なパーセントとして報告する。試料の同一性および重量をMaster LIMSTMを用いて追跡する。
【0122】
実施例4
Gy1およびGy2における変異
F2子孫植物をGy1およびGy2コード化蛋白質の合計含量につき分析した。図2に示すように、その植物は、2つの表現型の群に分配し、一方は3%未満のGy1,2コード化蛋白質を有し、他方は3.1%を超えるGy1,2コード化蛋白質を有した。カイ平方分析(図2B)は劣性形質としてのその連結した変異体Gy1,2対立遺伝子と一致した。
【0123】
良好な配列包括度を大部分のGy1遺伝子で得た。2つの小さなギャップが2つのプライマー対の失敗により存在する。コンセンサス配列を配列番号:163としてリストする。Gy1中のいくつかの選択されたヌクレオチド位置での対立形質スコアを表3に与える。JB7/JB8および他の系間の643、835および839位に3つのSNPがある。これらの位置のB2G2系から回収された配列がなかったため、SNPがB2G2変異体系から遺伝されたかは決定しなかった。Gy1遺伝子の5’端のアンプリコンも配列も、変異体系における可能な配列欠失を示す変異系B2G2およびその派生系統JB3、JB4、JB13、JB14およびJB15から得られなかった。さらなるPCR反応は、第1の3対のプライマーで行い、一貫した結果を得た。これは変異体系における欠失を確認した。欠失は上流のプロモーター領域、エキソンIおよびイントロンIにわたる。欠失の結合はまだ正確には決定されていない。優性マーカーはGy1座用診断マーカーとして用いるための欠失に対して設計した。
【0124】
Gy2遺伝子の配列決定は、わずか3つの同定可能なSNPしか示さず、そのまれな対立遺伝子はすべてJB7系に由来した。他のすべての系を同定した。Gy1、Gy2およびGy3中の高い配列相同性のために、時々の交配汚染が座特異的プライマーでさえ生じ、かくして、同定されなかった他の変異が存在し得る。
【0125】
【表3】

【0126】
実施例5
Gy3における変異
F2子孫植物を、Gy3コード化蛋白質の合計含量につき分析した。図3に示すように、植物を2つの表現型群に分配し、一方は1%未満のGy3コード化蛋白質を有し、他方は1.1%以上のGy3コード化蛋白質を有した。カイ平方分析(図3B)は劣性形質として低下したGy3発現と一致した。
【0127】
Gy1,2およびGy3サブユニットの発現レベルを比較する場合(図4)、Gy1,2コード化蛋白質の発現はGy3コード化蛋白質の発現と正に相関し、0.88の相関係数であることが判明した、図4B参照。このデータは、低いGy3コード化蛋白質レベルの発現をGy1および/またはGy2遺伝子型に基づいて、決定できることを示した。
【0128】
Gy3座のDNA配列変異を複合系に対する全遺伝子を再配列決定することにより決定した。得られたコンセンサス配列を配列番号:164としてリストする。この座での多型性の対立形質スコアを表4に与える。5つのSNPおよび2つのINDELを変異体および野性型中で検出した。オリジナルの変異体系B2G2は848-851位で挿入(TGAT)を運び、一方、他のすべての系はこの位置での欠失を運んだ。また、B2G2は、1083、1120および1866位での3つのSNPに対するまれな対立遺伝子を運び、一方、他のすべての系は豊富な対立遺伝子を運んだ。データは、これらのSNPおよびINDELがGy3コード化蛋白質の低発現での連鎖不平衡(LD)にあることを示した。それは、遺伝子の3'末端での3つの配列変異、2504-2505、2574および3189位は、Gy3コード化蛋白質の低発現を有するLDにあるようではなかった。というのは、まれな対立遺伝子はB2G2だけでなく野性型AG2703およびDKB19-51にも検出されたためである。この試験に用いたB2G2派生系統にはGy3座でB2G2対立遺伝子を遺伝するものはなかった。
【0129】
【表4】

【0130】
実施例6
Gy4における変異
子孫植物を蛋白質分析に付して、発現されるGy4コード化ポリペプチドの量を決定した。図5に示すように、植物を2つの表現型の群の、Gy4につきヌルであった群、およびGy4コード化ポリペプチドの発現を決定したもう一つの群に分配した。カイ平方分析(図5B)は劣性形質としてGy4ヌル対立遺伝子と一致していた。
【0131】
Gy4対立遺伝子の配列解析は、変異系B2G2およびその派生系統(表5、682位、配列番号: 165)における翻訳開始コドンでの変異を明らかにした。その変異はATGをATAに変更する。翻訳開始コドンが失われたので、この遺伝子によりコードされたペプチドサブユニットは恐らく翻訳できない。このSNPはGy4損失を示す分子マーカーとしての使用に理想的である。得られた配列を用いて、NS0199003というこのマーカーの検出用プライマーを設計した(表8参照)。
【0132】
また、1620および1632位でのさらなる多型性をB2G2およびある子孫系からのいくつかの配列読取りにおいて観察したが、これらはGy4コード化サブユニット蛋白質の損失と関連しなかった。かくして、これらの矛盾はこの領域のプライマーでの非特異的増幅により引き起こされかねない。
【0133】
【表5】

【0134】
実施例7
Gy5における変異
Gy5対立遺伝子の配列解析は、他の親品種と比較して、2つのSNP(配列番号: 166上の363および612位)および2つのINDEL(447-453および519-524位)がB2G2植物にあることを示した(表6)。加えて、SNPは、セリンからアスパラギンにアミノ酸残基を変更するエキソンIIにおける752位で同定した。5つのすべてのSNPまたはINDELはテストされた系における2つのハプロタイプに形成する。変異系B2G2およびその派生系統JB1、JB5およびJB8は1つのハプロタイプを共有するが、他の系はもう一つのハプロタイプを共有する。これらのSNP/INDELは、連鎖不平衡にあるようであり、「11sヌル」表現型に関係している。これらのSNPまたはINDELが図1に示されたB2G2中のA3サブユニットの損失を実際に引き起こしたことはまだ知られていない。そのコード領域中で検出されたすべての配列変異があるので、蛋白質ゲル上で見られたA3バンドの損失を引き起こしたプロモーター領域に存在する他のいくつかの変異が有り得る。
【0135】
【表6】

【0136】
実施例8
Gy変異マーカーの開発
TaqmanRアッセイのごときPCR分析を、前記の同定されたSNPまたはINDELにつき設計した。表7は、各アッセイのプライマーおよびプローブの配列ならびに各マーカーに割り当てられたマーカー名をリストする。2つのアッセイは、異なる位置でSNPを用いて、各々Gy1およびGy3につき設計した。これらのアッセイを、まず、この試験における再配列決定に用い、次いで、分離集団において用いた標準パネル上で試行した。
【0137】
【表7−1】

【0138】
【表7−2】

【0139】
実施例9
Gyマーカーおよび蛋白質サブユニット間の高度の対応
F1子孫植物を分析して、グリシニンおよびベータ-コングリシニン蛋白質の合計含量を決定した。図6A中のグラフは各植物についての合計のグリシニン蛋白質−対−合計ベータ-コングリシニン蛋白質を示す。データは、グリシニンの低発現が、ベータ-コングリシニン(Cgy)サブユニットの高発現と関連することを示す(図6B)。
【0140】
分子マーカーおよびそれらの対応するグリシニンサブユニット間の遺伝相関を2つのF2分離集団、JB0305602およびJB0305605において行った。どの遺伝子マーカーが変異体Gy対立遺伝子を示すかを確立するために、2つの集団のすべての個体をSDS-PAGE上で蛋白質含量につき分析し、ゲノムの全体にわたって選択した多数のマーカーと一緒にこの試験において開発したSNPマーカーで遺伝子型を同定した。前記および図1に示すように、Gy1およびGy2についての蛋白質バンドを一緒にクラスターし、かくして、それらは1単位として測定した。表8は、合計蛋白質のパーセンテージとして表現した蛋白質バンドの分離がSNPマーカーと高度に関連することを示す。例えば、Gy1での変異遺伝子を有する植物は、常に双方の集団において、より低いグリシニンA1a、A1bおよびA2サブユニットを2.5および2.4%各々含み、一方、「TT」対立遺伝子を有するものはより高いグリシニンA1a、A1bおよびA2サブユニットを各々、7.6および8.1%含む。その相関性は高度に重要であり(各々、1.7x10-55および4.1x10-62のP値)、同様の相関性はGy2の場合に観察した。Gy4座にて、「AA」対立遺伝子を運ぶ個体は、それらの各々の集団において、より低いグリシニンサブユニットA4B3A5を、0.6%および0.1%含み、一方、異型接合体(「AG」)は双方の集団において1.8%含み、「GG」を有するものはそれらの各々の集団に最高のグリシニンサブユニットA4B3A5を2.9%および3.3%含む。相関性は高度に有意であり、各々、2.3x10-40および2.3x10-69のP値であった。データは、NS0199008、NS0199002およびNS0199003マーカーが示されたグリシニンサブユニットの低下した発現と特によく相関し、それを用いて、低下したグリシニン表現型を予測できることを示した。
【0141】
【表8】

【0142】
実施例10
Gy3およびGy4ヌル大豆植物中の蛋白質発現における変異
ヌルGy3およびGy4表現型ならびに低下したGy1/Gy2表現型を与える作物学的エリート大豆を、種々のグリシニンおよびβ-コングリシニンサブユニットの合計含量につき分析した。区別される3つの系、系統1 (AH_DAK2301A1R/((A3244/(B2G2/A1923:.077.):0001.0097.0015.)/DJW2500C0R:@.0013.):@.0114.0008.@); 系統2 (AH_DAK2301A1R/((A3244/(B2G2/A1923:.077.):0001.0097.0015.)/DJW2500C0R:@.0013.):@.0096.0007.@);および系統3 (AH_DAK2301A1R/((A3244/(B2G2/A1923:.077.):0001.0097.0015.)/DJW2500C0R:@.0013.):@.0105.0006.@) (ATCC受入番号 PTA-6892として寄託)を試験し、各データを各々、表9、10および11に示す。
【0143】
各系の場合には、2004-2005シーズン中に種々の位置において生育させた植物を分析した。これらの表に示したデータは、合計種子蛋白質含量のパーセンテージとしてGy1/Gy2、Gy5、α’BC、αBCおよびβBC蛋白質サブユニットの合計含量を示す。また、酸性グリシニンサブユニットの合計含量および合計β-コングリシニン含量を示す。3つの各系統について、平均データ(Avg.)および平均からの標準偏差(St. Dev.)を、各表の最後の2行に示す。値は、実施例3において、前記の方法を用いて計算した。検出可能なGy3またはGy4コード化蛋白質は決して観察されなかった。
【0144】
表9-11に概説した試験は、種々のグリシニンおよびベータ-コングリシニンサブユニット蛋白質の含量の双方が、テストした3つの植物系間(例えば、異なるゲノム背景からの効果)および(異なる位置での)異なる環境条件で生育された植物において変化することを示した。これらのマーカーの検出がゲノム背景および環境条件に基づいて可変性に付されないので、これらのデータは使用多型性マーカーによるGy変異体植物の選択の利点を強調する。
【0145】
【表9】

【0146】
【表10】

【0147】
【表11】

【0148】
実施例11
Gyゲノムマーカーは、低グリシニン大豆植物を選択するために使用できる
Gy1(NS0199008)、Gy2(NS0199002)およびGy4(NS0199003)マーカーの分離を、2つのF2集団に対して分析した。表9に示すように、Gy1およびGy2の双方は優性マーカーであり、各々は3:1の比で分離する。Gy4は共優性マーカーである。
【0149】
3つの同定されたマーカーを用いて、低グリシニンおよび高β-コングリシニン種子含量を有する植物を同定できる。図7は、F2植物のグリシニンおよびβ-コングリシニン含量を示す。植物は、サブユニット発現(図7A)の蛋白質分析、または3つの変異体Gyマーカー(図7B)の使用のいずれかに基づいて選択した。そのデータは、マーカーに基づいた選択が1%(7/754)未満のF2植物を誤認したことを示す。
【0150】
実施例12
生産された低グリシニン大豆植物の大豆種子の色分析
緑色の種子色は、大豆農場主および消費者により余り望ましくないものとして、しばしば考えられる。従って、緑色の種子色の系の除去は望ましいであろう。分析は、本明細書に記載されるように生産された低グリシニン大豆に関して行い、緑色の種子色が除去された範囲を分析した。色分析は、ColorFlexTM 反射率分光光度計(モデル45/0)を用いて、全体の大豆に関して行った。分光計は黒色ガラスおよび白色タイルを用いて標準化した。標準化は、製造者Hunter Associates Laboratory, Inc. (Reston, VA, USA)により保証されたカラー値を有する緑色タイルを用いてチェックした。
【0151】
分光光度計はCIE三刺激値色尺度値X、YおよびZを測定し、これらの値から、CIELAB色尺度値L*、a*およびb*を計算する。CIELAB色スケールは、立方体中にCIELAB色空間を組織する三次元空間(CIE, Colorimetry, Publication 15.2, Second Edition, Vienna, 1986)に関して色知覚の指定を可能にする。L*軸は頂部から底部まで試行され、0(黒)〜100(白)に広がる明度値として知られている。そのa*およびb*軸は特定の数限定を有さない。座標a*は、正の場合赤色、ゼロの場合は灰色、負の場合は緑色を表す。座標b*は、正の場合黄色、ゼロの場合は灰色、負の場合は青色を表す。
【0152】
全体の大豆の多層は、読取り表面を保護するために皿の底に蓋がある35×10mmスタイルのポリスチレン組織培養皿を満たした。分光光度計ポートに配置する前に、蓋を組織培養皿の底から取り除いた。全体の大豆を含む組織培養皿を、ポート方向に測定される側を有する分光計ポート上に配置した。光トラップをいずれの外部光干渉も制限するために試料に上に配置した。
【0153】
CIE三刺激値色スケール・スクリーンをColorFlexに表示した。読取りキーを押し、CIE三刺激値色スケール値は全体大豆試料につき測定した。色捕捉プログラムはエクセル・スプレッド・シートにその値を記録した。視野はCIELAB色スケールスクリーンにトグルし、読取りキーを押し、分光光度計を用いて、全体大豆試料についてのCIELAB色尺度値L*、a*およびb*を計算した。
【0154】
多層配置での全体大豆の5つの複製物を各試料につき測定した。同じ全体の大豆を、5の色測定を達成するために4回詰め直した。色分析の結果は、以下のように表12に要約できる。
【0155】

【0156】
実施例13
リポキシゲナーゼ遺伝子における配列変異
GenBank、GI505137からのLox2配列をモンサント配列データベースに対してブラストすべき質問として用いた。60の高ヒットをSeqManプログラム(DNASTAR, INC, Madison, WI)を用いて、ダウンロードし組み立てた。区別される2つの転写物をモンサントDNA配列収集において同定した。転写物のうちの1つはGenBankにおけるリポキシゲナーゼ-1(Lox1)遺伝子に相当し、かくして、lx1(配列番号: 157)と命名し、他方はLox2(lx2)遺伝子(配列番号: 158)に相当した。遺伝子特異的プライマーを設計および用いて、8つの系のパネルからアンプリコン群を生成した。パネルは6つの変異体および2つの野性型から成った。表13は、配列決定パネルに用いた系をリストする。
【0157】
【表12】

【0158】
アンプリコン配列決定は、21のSNPおよび6のINDELを含むLox1座上の8つの系のうち27の多型性があることを明らかにした(表14)。これらの多型性から、10がエキソンに位置した。これらのすべての多型性での対立形質スコアに基づいて、配列パネル中の8つの系を6つのハプロタイプに分類する。野性型A3469およびA2247の双方は同じハプロタイプに属するが、他の変異体は異なるハプロタイプのものである。74bp欠失はIA2025、IA2032およびPI408251に検出した。欠失は、lx1変異表現型(表13)に関係しているようである。
【0159】
【表13】

注: # GATCは、IA2025、IA2032およびPI408251において欠失した74bp配列を表す。
【0160】
Lox2座での多型性を表15に示す。6つのSNPおよび2bpのINDELを検出し、2つの区別されるハプロタイプがこれらの8つの系で形成される。ハプロタイプはlx2表現型に明確に関係する(表13)。2542位でのもの以外のこれらのすべての多型性はイントロンに位置する。2542位でのSNPは、ヒスチジンをコードするCATからグルタミンをコードするCAAまでの遺伝コドンの変化を引き起こすミスセンス変異である。
【0161】
【表14】

【0162】
Taqmanアッセイを2542位でのSNPから設計した。そのアッセイ情報を表16に与える。このアッセイのアリログラムを図8に示す。このマーカーは、Lox2での変異体からの「A」対立遺伝子と野性型からの「T」対立遺伝子との間の明確な区別を可能にした。
【0163】
【表15】

【0164】
実施例14
大豆中でKunitz型トリプシン阻害因子ヌル表現型と関係する配列変異
大豆のKunitz型トリプシン阻害因子蛋白質(KTI)をコードする候補配列を大豆中のKTIをコードする4つの候補配列から同定した。1つの候補配列(KTIA(配列番号: 167))をテンプレートとして利用して、引き続いてのPCR増幅反応用プライマーを設計した。座特異的なプライマーを候補配列から設計し、PCRアンプリコン群を5つのKTIヌル変異体系および7つの野生型系から生成した(表17)。これらのアンプリコン群からの配列の整列は、Kunitz表現型と関係するヌクレオチド変異の同定を可能とした(図9)。622-623位での2-bp欠失および624位での1塩基変異(図9参照)をすべてのKunitzヌル変異体に検出したが、「GAG」が同じ位置におけるすべての野性型に存在した。その欠失/挿入は、ナンセンス変異であり、蛋白質を時期を早めて終了させるKunitzヌル表現型を示す変異体系の表現型について説明する。このINDELは、Kunitzヌル大豆系および品種についてのマーカー支援選択用の遺伝子マーカーとして用いることができる。
【0165】
【表16】

【0166】
プライマー(例えば、配列番号: 168-171)を使用するPCRベースのTAQMANマーカー支援アッセイを利用して、KTIヌル形質の同定を可能とし(表18)、アッセイの確認は、KTIヌルマーカーがKTIヌル表現型で分離することを示した。
【0167】
【表17】

【0168】
* * *
本明細書に開示および特許請求したすべての組成物および方法は、本開示に徴して過度の実験なくして作成および実行できる。本発明の組成物および方法は好ましい具体例の項に記載されているが、変形が、本発明の概念、精神および範囲から逸脱することなく、本明細書に記載された組成物および方法に、およびその方法の工程または工程の順序において、適用できることは当業者に明らかであろう。より詳細には、化学的および生理学的の双方に関連するある種の作用物質が本明細書に記載された作用物質に代えて置換され得るが、同一または同様の結果が達成されることは明らかであろう。当業者に明らかなすべての同様のかかる置換および変形は、添付した特許請求の範囲により規定された本発明の精神、範囲および概念内にあると考えられる。
【0169】
参考文献
以下の参考文献は、これらが本明細書に記載されたものに典型的な手順または補足的な他の詳細を供する範囲まで、ここに出典明示して具体的に本明細書の一部とみなす。
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【図面の簡単な説明】
【0176】
【図1】図1:示された大豆品種の種子から抽出された蛋白質は、SDS-PAGEによって分離され、クーマシー染色によって視覚化された。各遺伝子によりコードされた酸性グリシニンサブユニットの移動度が示される。ゲル分離はGy2でコード化されたサブユニット蛋白質からGy1を分離するのに不十分であった。
【図2】図2A-B: 変異体Gy1およびGy2対立遺伝子を含む子孫植物は、種子の2つの表現型グループに基づいたGy1およびGy2コード化蛋白質含量中で分配される。図2A.グラフは、Gy1およびGy2コード化酸性蛋白質により構成される合計蛋白質のパーセンテージ(x軸)と比較したF2植物数(y軸)を示す。図2B. F2子孫植物からのデータは、B2G2大豆からの変異体Gy1およびGy2対立遺伝子が、劣性であることを示す。2つのクラス中のGy1およびGy2コード化蛋白質レベルを有する子孫植物数をカイ平方分析に付し、確率値を各ケースで決定した。
【図3】図3A-B:「11Sヌル」植物の子孫は、Gy3である種子中の合計蛋白質のパーセンテージに基づいて2つの集団へ分配される。図3A. グラフは、Gy3コード化蛋白質(x軸)により構成される合計蛋白質のパーセンテージと比較された、F2植物数(y軸)を示す。図3B.子孫植物からのデータは、B2G2大豆からの変異体Gy3対立遺伝子が劣性であることを示す。2つのクラスにおけるGy3コード化蛋白質レベルを有する子孫植物の数は、カイ平方分析に付し、確率値も各ケースにおいて決定した。
【図4】図4:Gy3コード化蛋白質の量は、Gy1およびGy2コード化蛋白質の量と正に相関している。図4A.グラフは、Gy3コード化蛋白質の量(y軸)に対するGy1およびGy2コード化酸性蛋白質の観察された量(x軸)をプロットする。図4B.表は、Gy1、Gy2、Gy3、Gy4およびGy5コード化蛋白質の発現レベル間の相関係数を示す。
【図5】図5:11Sヌル植物の子孫は、Gy4である種子中の合計蛋白質のパーセンテージに基づいて2つの集団へ分配される。図5A.グラフは、Gy4コード化酸性蛋白質により構成される合計蛋白質のパーセンテージ(x軸)と比較されたF2植物数(y軸)を示す。図5B.子孫植物からのデータは、B2G2大豆からの変異体Gy4対立遺伝子が劣性であることを示す。2つのクラスにおけるGy4コード化蛋白質レベルを有する子孫植物数は、カイ平方分析に付され、確率値を各ケースにおいて決定した。
【図6】図6A-B:大豆種子中のグリシニンの減少した発現は、β-コングリシニンの増加した発現と関連する。図6A.グラフは、Cgy対立遺伝子によりコード化された合計蛋白質のパーセンテージ(y軸)に対するGy対立遺伝子によりコード化された合計蛋白質のパーセンテージ(x軸)をプロットする。図6B.表は、Gyコード化蛋白質の発現およびCgy1-4コード化蛋白質の発現間の相関係数を示す。
【図7】図7A-B:ゲノムGyマーカーは、高β-コングリシニン発現を有する種子を生産する通常の植物を有効に選択した。図7A.グラフは、合計種子グリシニン含量(x軸)に対する種子のβ-コングリシニン蛋白質含量(y軸)をプロットする。ダイヤモンドは、グリシニンサブユニットの蛋白質分析により選択された植物を示す。図7B.グラフは図7Aと同一であるが、ダイヤモンドは、マーカーNS0199002、NS0199003およびNS0199008により選択された植物を示す。
【図8】図8:Taqmanアッセイ用のアリログラムは、2542位(マーカーNS0203296)でのSNPのために設計した。図8に示されるように、このマーカーは、lx2変異体からの「A」対立遺伝子および実施例13および表15に記載された野性型からの「T」対立遺伝子間の明確な区別を可能にした。
【図9】図9:Kunitzヌル変異体系における欠失/挿入を示すKunitz型トリプシン阻害因子用の配列の整列。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
増加した種子β−コングリシニン含量を与えるGy3およびGy4ヌル表現型を供する非遺伝子組換え変異を含む作物学的エリート大豆品種の植物。
【請求項2】
種子β-コングリシニン含量が少なくとも約30%である請求項1記載の植物。
【請求項3】
種子β-コングリシニン含量が少なくとも約40%である請求項1記載の植物。
【請求項4】
種子β-コングリシニン含量が、さらに、約30%〜約60%、約35%〜約60%、約40%〜約60%、約35%〜約55%、約40%〜約55%および約40%〜約50%よりなる群から選択される請求項2記載の植物。
【請求項5】
合計抽出蛋白質の約25%未満の種子酸性グリシニン含量を含む請求項1記載の植物。
【請求項6】
合計抽出蛋白質の約18%未満の種子酸性グリシニン含量を含む請求項1記載の植物。
【請求項7】
合計抽出蛋白質の約10%未満の種子酸性グリシニン含量を含む請求項1記載の植物。
【請求項8】
合計抽出蛋白質の約8%未満の種子酸性グリシニン含量を含む請求項1記載の植物。
【請求項9】
Gy3およびGy4ヌル表現型を供する非遺伝子組換え変異が、該非遺伝子組換え変異を欠く植物に対し減少したGy1およびGy2発現を与える請求項1記載の植物。
【請求項10】
さらに、その種子の代表的な試料がATCC受入番号PTA-6893下で寄託された系B2G2に見出されるGy1およびGy2変異を含む請求項1記載の植物。
【請求項11】
増加した種子β-コングリシニン含量を与えるGy3およびGy4ヌル表現型を供する変異が、その種子の代表的な試料がATCC受入番号PTA-6892下で寄託された系統3に見出されるGy3およびGy4ヌル表現型を供する変異である請求項1記載の植物。
【請求項12】
上流プロモーター領域、エキソンIおよびイントロンIにわたるGy1座における欠失を含む請求項1記載の植物。
【請求項13】
植物が、該対立遺伝子中の位置で、配列番号:164のヌクレオチド848-851に対応するヌクレオチドTGATの挿入を含むGy3対立遺伝子を含む請求項1記載の植物。
【請求項14】
植物が、翻訳開始コドンを抑止する配列番号:165のヌクレオチド682に対応する該対立遺伝子の位置のアデニンを含むGy4対立遺伝子を含む請求項1記載の植物。
【請求項15】
Gy5蛋白質含量の低下を生じる変異をさらに含む請求項1記載の植物。
【請求項16】
植物が、位置が配列番号:166に対応する当該対立遺伝子中の位置である363位の一塩基多型(SNP)、612位のSNP、447-453位の欠失および519-524位の欠失よりなる群から選択される少なくとも第1の多型性を含むGy5対立遺伝子を含む請求項1記載の植物。
【請求項17】
Gy3およびGy4ヌル表現型が、系B2G2の種子の代表的な試料がATCC受入番号PTA-6893下で寄託された系B2G2に見出される該ヌル表現型の発現用の遺伝子手段により供される請求項1記載の植物。
【請求項18】
少なくとも5のCIELABカラースケールa*値および54を超えるL*値を有する生産用大豆と定義される請求項1記載の植物。
【請求項19】
さらに、導入遺伝子を含む請求項1記載の植物。
【請求項20】
除草剤耐性;耐病性;昆虫または病虫害抵抗性;改変された脂肪酸、蛋白質または炭水化物代謝;穀物収率の増加;改変された植物成熟、および改変された形態的特徴よりなる群から選択される形質を与える請求項19記載の植物。
【請求項21】
導入遺伝子がグリホサート除草剤に対する耐性を与える請求項20記載の植物。
【請求項22】
lx1、lx2およびlx3よりなる群から選択されるリポキシゲナーゼヌル対立遺伝子をさらに含む請求項1記載の植物。
【請求項23】
少なくとも2つの該ヌル対立遺伝子を含む請求項22記載の植物。
【請求項24】
lx1、lx2ヌル表現型を含む請求項22記載の植物。
【請求項25】
lx1、lx2およびlx3ヌル表現型を含む請求項22記載の植物。
【請求項26】
リポキシゲナーゼヌル対立遺伝子が、非遺伝子組換えヌル対立遺伝子である請求項22記載の植物。
【請求項27】
リポキシゲナーゼヌル対立遺伝子がlx2である請求項22記載の植物。
【請求項28】
Kunitz型トリプシン阻害因子(KTI)ヌル対立遺伝子を含む請求項1記載の植物。
【請求項29】
請求項1記載の植物の植物器官。
【請求項30】
花粉、胚珠、種子、分裂組織または細胞とさらに定義される請求項29記載の植物器官。
【請求項31】
種子の器官をさらに含む請求項29記載の植物器官。
【請求項32】
請求項1記載の植物の再生可能な細胞の組織培養物。
【請求項33】
再生可能な細胞が、胚、分裂組織細胞、花粉、葉、根、根端または花である請求項32記載の組織培養物。
【請求項34】
(a) 第1および第2大豆植物を交配し、ここに、該第1および第2の植物は、Gy3およびGy4ヌル表現型、および増加した種子β-コングリシニン含量を生じる非遺伝子組換え変異を集合的に含み、第1および第2の植物は、該植物の子孫植物に対する作物学的エリート特徴を与えることができる生殖質を集合的に含み;次いで
(b) 作物学的エリート特徴ならびにGy3およびGy4蛋白質含量につき交配に起因する子孫大豆植物をアッセイし;次いで
(c) 該Gy3およびGy4ヌル表現型および作物学的エリート特徴を含む少なくとも第1の子孫植物を選択して、請求項1記載の植物を得る工程を含む方法により調製された請求項1記載の植物。
【請求項35】
第1または第2の大豆植物の一方が品種B2G2であり、ここに、B2G2の種子の代表的試料が、ATCC受入番号PTA-6893下で寄託された請求項34記載の植物。
【請求項36】
第1および第2の植物が、Gy1-Gy4ヌル表現型および増加した種子β-コングリシニン含量を生じる非遺伝子組換え変異を集合的に含み、第1の子孫植物が、Gy1-Gy4ヌル表現型を生じる非遺伝子組換え変異を含む請求項34記載の植物。
【請求項37】
請求項1記載の植物またはその器官を得、次いで、それらから食品または食餌を製造することを特徴とする大豆食品または食餌の商品生産物の製造方法。
【請求項38】
請求項1記載の植物からの種子を得、次いで、その種子から食品を調製することを特徴とする請求項37記載の方法。
【請求項39】
食品が、蛋白質濃縮物、蛋白質単離物、大豆皮、ミールまたは粉末であることを特徴とする請求項37記載の方法。
【請求項40】
食品が油であることを特徴とする請求項37記載の方法。
【請求項41】
食品が、飲料、浸出食物、ソース、調味料、サラダドレッシング、果汁、シロップ、デザート、アイシングおよびフィリング、ソフト冷凍生成物、糖菓または中間食品を含むことを特徴とする請求項37記載の方法。
【請求項42】
食品が、請求項1記載の植物からのゲノム物質を含むことを特徴とする、請求項37記載の方法によって製造された食品。
【請求項43】
請求項1記載の植物を、それ自体または第2の大豆植物と交配させることを特徴とする大豆種子の生産方法。
【請求項44】
第2の区別される大豆植物に対して請求項1記載の植物を交配させることを特徴とするハイブリッド大豆種子を調製する方法としてさらに定義される請求項43記載の方法。
【請求項45】
グリシニンおよびβ-コングリシニン含量につき大豆植物の表現型を予測する方法であって、非遺伝子組換え変異体Gy1、Gy2またはGy4対立遺伝子の50cM内の大豆植物ゲノム領域中の少なくとも第1の多型性の存在につき大豆植物をアッセイして、減少したグリシニンおよび増加したβ-コングリシニン含量を与える少なくとも第1の対立遺伝子を同定ことを特徴とする該方法。
【請求項46】
(a) 減少したグリシニンおよび増加したβ-コングリシニン含量を与える非遺伝子組換え変異体Gy1、Gy2またはGy4対立遺伝子の50cM内の大豆植物ゲノム領域中の少なくとも第1の多型性の存在につき大豆植物をアッセイし;
(b)該多型性を含む少なくとも第1の大豆植物を選択して、該対立遺伝子を選択し;次いで
(c)第2の大豆植物に該多型性を含む第1の大豆植物を交配させて、減少したグリシニンおよび増加したβ-コングリシニン含量を与える少なくとも第1の非遺伝子組換え変異体Gy1、Gy2またはGy4対立遺伝子を含む子孫植物を生成する工程を含むことを特徴とする植物育種方法。
【請求項47】
(d)出発物質として工程(c)の子孫植物を用いて少なくとも約2-10回工程(a)〜(c)を繰り返して、さらなる子孫植物を生産する工程をさらに含むことを特徴とする請求項46記載の方法。
【請求項48】
第2の大豆植物が、作物学的エリート品種であることを特徴とする請求項46記載の方法。
【請求項49】
該多型性および作物学的エリート特徴を含む大豆植物を選択することを含むことを特徴とする請求項46記載の方法。
【請求項50】
変異体Gy1対立遺伝子が欠失を含むことを特徴とする請求項46記載の方法。
【請求項51】
非遺伝子組換え変異体Gy1、Gy2またはGy4対立遺伝子が、系B2G2に見出された変異遺伝子に対応し、その種子の代表的試料が、ATCC受入番号PTA-6893下で寄託されたことを特徴とする請求項46記載の方法。
【請求項52】
変異体Gy4対立遺伝子が翻訳開始コドンを抑止する点変異を含むことを特徴とする請求項46記載の方法。
【請求項53】
該多型性に同型接合性である第1の大豆植物を選択することをさらに含むことを特徴とする請求項46記載の方法。
【請求項54】
少なくとも2つの多型性を含む第1の大豆植物を選択することをさらに含むことを特徴とする請求項46記載の方法。
【請求項55】
Gy1およびGy4対立遺伝子の50cM内の多型性をアッセイすることを含むことを特徴とする請求項46記載の方法。
【請求項56】
Gy2およびGy4対立遺伝子の50cM内の多型性をアッセイすることを含むことを特徴とする請求項46記載の方法。
【請求項57】
配列番号:165のヌクレオチド682に対応するGy4対立遺伝子中の多型性をアッセイすることを含むことを特徴とする請求項46記載の方法。
【請求項58】
少なくとも3つの多型性を含む第1の大豆植物を選択することをさらに含むことを特徴とする請求項46記載の方法。
【請求項59】
非遺伝子組換え変異体Gy3対立遺伝子の50cM内の多型性を含む第1の大豆植物を選択することをさらに含むことを特徴とする請求項46記載の方法。
【請求項60】
第1の大豆植物の選択が、848-851位の挿入、1083位のSNP、1120位のSNPおよび1866位のSNPよりなる群から選択されるGy3対立遺伝子の少なくとも第1の多型性を検出し、その位置が配列番号:164に対応する該対立遺伝子中の位置であることを特徴とする請求項59記載の方法。
【請求項61】
非遺伝子組換え変異体Gy5対立遺伝子の50cM内の多型性を含む第1の大豆植物を選択することをさらに含むことを特徴とする請求項46記載の方法。
【請求項62】
植物の選択が、363位の一塩基多型(SNP)、612位のSNP、447-453位の欠失および519-524位の欠失よりなる群から選択されるGy5対立遺伝子の少なくとも第1の多型性を検出し、その位置は配列番号:166に対応する該対立遺伝子中の位置であることを特徴とする請求項61記載の方法。
【請求項63】
NS0199002、NS0199003およびNS0199008よりなる群から選択されるマーカーを検出することを含むことを特徴とする請求項46記載の方法。
【請求項64】
非遺伝子組換え変異体lx2対立遺伝子の50cM内の多型性を含む第1の大豆植物を選択することをさらに含むことを特徴とする請求項46記載の方法。
【請求項65】
多型性が、323位の一塩基多型(SNP)、439位のSNP、1390位のSNP、1431位のSNP、1458位のSNP、2486-2487位の欠失および2542位のSNPよりなる群から選択されるlx2対立遺伝子中の多型性を含み、その位置は配列番号:158に対応する該対立遺伝子中の位置であることを特徴とする請求項62記載の方法。
【請求項66】
多型性についての大豆植物のアッセイがPCRを含むことを特徴とする請求項46記載の方法。
【請求項67】
多型性が、標識ヌクレオチドプローブとのハイブリダイゼーションにより検出されることを特徴とする請求項46記載の方法。
【請求項68】
多型性がDNA配列決定によって検出されることを特徴とする請求項46記載の方法。
【請求項69】
工程(a)が、Kunitz型トリプシン阻害因子(KTI)ヌル対立遺伝子の50cM内の大豆植物ゲノム領域中の少なくとも第1の多型性の存在につき大豆植物をアッセイすることをさらに含むことを特徴とする請求項46記載の方法。
【請求項70】
工程(b)中の少なくとも第1の大豆植物の選択が、Kunitz型トリプシン阻害因子(KTI)ヌル対立遺伝子の50cM内の多型性を含む第1の大豆植物を選択し、該ヌル対立遺伝子を選択することをさらに含むことを特徴とする請求項46記載の方法。
【請求項71】
Kunitz型トリプシン阻害因子(KTI)ヌル対立遺伝子の50cM内の多型性が、622-623位の2-bp欠失および624位の変異よりなる群から選択され、その位置は配列番号:167に対応する該対立遺伝子中の位置であることを特徴とする請求項69記載の方法。
【請求項72】
多型性についての大豆植物のアッセイがPCRを含むことを特徴とする請求項69記載の方法。
【請求項73】
多型性が、標識ヌクレオチドプローブでのハイブリダイゼーションにより検出されることを特徴とする請求項69記載の方法。
【請求項74】
多型性が、DNA配列決定により検出されることを特徴とする請求項69記載の方法。
【請求項75】
(a) SNP 1390、SNP 1431、SNP 1458およびINDEL 2486-2487よりなる群から選択されるlox2対立遺伝子中の少なくとも第1の多型性の存在につき大豆植物をアッセイし、ここに、その対立遺伝子はリポキシゲナーゼ-2含量の減少に関係し;
(b)該多型性を含む少なくとも第1の大豆植物の選択して、該対立遺伝子を選択し;次いで
(c)第2の大豆植物に第1の大豆植物を交配させて、該多型性および該対立遺伝子を含む子孫植物を生成する工程を含むことを特徴とする植物育種方法。
【請求項76】
(d)出発物質として工程(c)の子孫植物を用いて少なくとも約2-10回工程(a)〜(c)を繰り返して、さらなる子孫植物を生産することをさらに含むことを特徴とする請求項75記載の方法。
【請求項77】
該多型性に同型接合性である第1の大豆植物を選択することをさらに含むことを特徴とする請求項75記載の方法。
【請求項78】
少なくとも2つの該多型性を含む第1の大豆植物を選択することをさらに含むことを特徴とする請求項75記載の方法。
【請求項79】
少なくとも3つの該多型性を含む第1の大豆植物を選択することをさらに含むことを特徴とする請求項75記載の方法。
【請求項80】
減少したグリシニンおよび増加したβ-コングリシニン含量を与える非遺伝子組換え大豆変異体Gy1、Gy2またはGy4対立遺伝子との連鎖不平衡における少なくとも第1の多型性を増幅および/または少なくとも第1の多型性にハイブリダイズするプローブまたはプライマーを含むキット。
【請求項81】
lox2ヌル対立遺伝子との連鎖不平衡における少なくとも第1の多型性を増幅および/または少なくとも第1の多型性にハイブリダイズするプローブまたはプライマーを含み、ここに、多型性は、SNP 1390、SNP 1431、SNP 1458およびINDEL 2486-2487よりなる群から選択されるキット。
【請求項82】
Gy1、Gy2、Gy3、Gy4およびGy5よりなる群から選択される少なくとも2つのグリシニンサブユニットヌル表現型を供する非遺伝子組換え変異を含む、増加した種子β-コングリシニン含量を持つ作物学的エリート大豆品種の植物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2009−506786(P2009−506786A)
【公表日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−530130(P2008−530130)
【出願日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【国際出願番号】PCT/US2006/034495
【国際公開番号】WO2007/030429
【国際公開日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【出願人】(501231613)モンサント テクノロジー エルエルシー (71)
【Fターム(参考)】