説明

高出力レーザ光の光ファイバ伝送装置

【課題】 1本の光ファイバでは伝送できない高出力レーザビームを複数の光ファイバによって伝送する装置を提供する。
【解決手段】 高出力レーザビーム(1)を強度分割する一つまたは複数のビームスプリッタ(4)と、該ビームスプリッタから出射される各レーザビームに対して、レーザビームの強度分布を均一にするビームホモジナイザ(5)と単一ビームを複数のスポットに集光する回折レンズ(6)で構成される複合レンズと、該複合レンズから出射される複数の分割レーザビームを別個の光ファイバに効率良く入射させる光ファイバ整列部を具備し、前記各レーザビームをそれぞれに対応する前記複合レンズを通過させて分割した後に光ファイバ整列部で、複数の光ファイバ(7、15)に入射させる高出力レーザビームを複数の光ファイバで伝送する光ファイバ伝送装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高出力レーザビームを光ファイバシステムを利用して伝送する装置に関する。
【0002】
その目的は、規模が大きく定期的な整備が必要であって外部環境に敏感な高出力レーザシステムの設置が困難な産業的構造物や工程に、容易に高出力レーザビームを伝送する装置を提供することにより、高出力レーザビームを利用する各種工程の産業的な活用度を向上させることにある。特に、高出力である高出力パルスレーザシステムに好適な技術に関する。
【背景技術】
【0003】
産業的に、高出力レーザ特に高出力レーザパルスは、アブレーション(融発)効果による超音波の生成、材料の加工、又は表面処理などに広く使用することができる。しかしながら、通常の高出力レーザシステムは、その規模が大きく、定期的な整備が必要であって、外部環境に敏感であり、産業的な応用が制限されている。即ち、複雑な構造を有したり、或いは劣悪な環境下にある対象の場合には、上記のような高出力レーザシステムを接近させることが困難であるため、高出力レーザパルスビームの遠隔伝送が必要となる。しかしながら、このような高出力レーザパルスの遠隔伝送を実現する通常の光学的方法は、その構造が非常に複雑であって、実際に実現することが極めて困難である。このような高出力レーザパルスの遠隔伝送は、光ファイバを利用すれば、容易に実現することができる。しかしながら、このような光ファイバを利用したレーザパルスの伝送においては、1本の光ファイバが伝送可能な最大伝送エネルギーが制限されていることから、従来、高出力のパルスビームを必要とする場合には、光ファイバ伝送の適用により、実際的な効果を奏することができないという問題点が存在していた。
【0004】
1本の光ファイバを利用するレーザパルスビームの伝送に関する従来技術(非特許文献1)によれば、波長532nmのレーザパルスビーム(パルス幅5ns)に対して、コア直径が1.5mmの光ファイバを利用した最大伝送エネルギーは、138mJ/pulse(20MW)である。この従来技術においては、ビームホモジナイザを利用し空間的にガウス分布を有するレーザビームの断面の強度分布を均一にして光ファイバの入射断面における損失を防止することにより、光ファイバ伝送エネルギーを拡大している。しかしながら、この従来技術において1本の光ファイバを利用して伝送した最大エネルギーは、通常の高出力レーザパルスビームの応用においては、十分なものではない。
高出力レーザパルスの産業的応用に必要な最大パルスエネルギーは、応用分野や応用対象の種類及び状態などによって異なることから、光ファイバによるパルスビーム伝送の活用度を向上させるためには、最大伝送エネルギーの拡大が必要である。このような伝送エネルギーの拡大は、光ファイバの損傷や非線形光学効果などによって限界があるため、多数の光ファイバを利用する方法が、唯一の解決策として認識されている。このように多数の光ファイバを利用する従来技術()においては、光ファイバの束を利用して総伝送エネルギーを拡大する方法が提示されている。しかしながら、この従来技術の場合には、多数の光ファイバのコア面積の総和が、1本の光ファイバの束の全体断面積(入射レーザビームの断面積と同一)を基準として、最大75%にしかならないため、集光レンズによる反射損失や光ファイバ入射断面における損失などを除外したとしても、基本的に25%のレーザパルスエネルギーの損失が発生する。
【0005】
【非特許文献1】Masaki YODAなど、”Fiber Delivery of 20MW Laser Pulses and Its Applications”、レーザ研究、第28巻、第5号、2000年、309頁
【特許文献1】米国特許第5708747号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、規模が大きく周期的な整備が必要であって外部環境に敏感な高出力レーザシステムの接近が困難な地点においても高出力レーザ特にパルスビームを利用する各種工程を可能にするべく、この高出力レーザビームを光ファイバによって伝送する際に発生する上記従来技術の問題点を解決するために、多数の光ファイバを使用してレーザの総伝送エネルギーを拡大し、このように多数の光ファイバを使用した際に発生する損失を防止することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、規模が大きく周期的な整備が必要であって外部環境に敏感な高出力レーザシステムの接近が困難な地点においても高出力レーザビームを利用する各種工程を可能にするべく、この高出力レーザビームを光ファイバによって伝送する方法及び装置に関するものであって、更に詳しく記述すれば、総エネルギーがETのレーザビームを、1本の光ファイバが伝送可能な最大ビームエネルギー(ES)よりも小さなエネルギー(E1≦ES)を有する多数のビームに分割した後に、このそれぞれの個別のビームを複数の光ファイバによって個別に伝送することにより、高出力レーザビームの光ファイバ伝送を実現する方法であって、特に高出力レーザパルスビームに有効な光ファイバ伝送装置を提供する。
【0008】
第1の発明は、高出力レーザビームを複数の光ファイバによって伝送するレーザビームの伝送装置において、
高出力レーザビーム(1)を強度分割する一つまたは複数のビームスプリッタ(4)と、該ビームスプリッタから出射される各レーザビームに対して、レーザビームの強度分布を均一にするビームホモジナイザ(5)と単一ビームを複数のスポットに集光する回折レンズ(6)で構成される複合レンズと、該複合レンズから出射される複数の分割レーザビームを別個の光ファイバに効率良く入射させる光ファイバ整列部を具備し、
前記各レーザビームをそれぞれに対応する前記複合レンズを通過させて分割した後に光ファイバ整列部で、複数の光ファイバ(7、15)に入射させる高出力レーザビームを複数の光ファイバで伝送する光ファイバ伝送装置である。
【0009】
第2の発明は、前記光ファイバ整列部は、光ファイバ支持用シリンダ(8、16)と光ファイバマウンタ(9、17)で多数の光ファイバ(7、15)を整列させることにより、多数の集束されたレーザビームが、それぞれ多数の光ファイバ入射面に容易且つ正確に入射させるものである第1の発明に記載の光ファイバ伝送装置である。
【0010】
第3の発明は、前記複数の光ファイバへ前記分割レーザビームが入射する部分が真空あるいは不活性ガス雰囲気になるように、一部または全体が真空あるいは不活性ガス雰囲気であるケーシングを具える第1又は第2の発明に記載の光ファイバ伝送装置である。
【0011】
第4に発明は、前記複数の光ファイバの本数が、伝送しようとする総レーザエネルギーを1本の光ファイバによって伝送可能なレーザエネルギーによって除算した値よりも大きな整数の中で最も小さな整数値であることを特徴とする第1〜第3の発明の内の何れか一つに記載の光ファイバ伝送装置である。
【0012】
第5の発明は、前記のビームホモジナイザ(5)と回折レンズ(6)から構成される複合レンズを利用して多数の光ファイバによって高出力レーザを伝送する際に、多数の光ファイバの入射断面を、複合レンズによって生成される2つの焦点位置(ホモジナイザ(5)の有効焦点及び回折レンズ(6)の焦点)よりも後方に位置させることを特徴とする第1〜第4の発明の内の何れか一つに記載の光ファイバ伝送装置である。
【0013】
第6の発明は、光ファイバを通じて伝送された後にレーザビームが出力される光ファイバの出力面を、該レーザビームの伝送方向と垂直な面を基準として0度以上の一定の角度(θ)を有するように切断し、光ファイバの損傷を防止したことを特徴とする第1〜第5の発明の内の何れか一つに記載の光ファイバ伝送装置である。
【0014】
第7に発明は、斜角に切断された多数の光ファイバ断面がすべて同一の方向を有するように、即ち、1つの平面上に存在するように整列させることにより、多数の光ファイバから出力されたレーザビームがすべて同一の方向に進行するようにした第6の発明に記載の光ファイバ伝送装置である。
【発明の効果】
【0015】
結果的に、本発明による高出力レーザビームの光ファイバ伝送装置によれば、レーザビームを光ファイバによって伝送することを目的として、上記レーザビームを光ファイバの入射断面に集束する際に、ビームホモジナイザ(5)と集光レンズから構成された複合レンズを利用して、光ファイバの入射断面におけるビームの強度分布を均一にすることにより、光ファイバの損傷を防止し、1本の光ファイバによって伝送可能な最大レーザエネルギーを拡大する効果がある。
【0016】
又、1本の光ファイバによっては伝送が不可能な高出力レーザの光ファイバ伝送が要求される場合には、1本の高出力レーザビームを多数のレーザビームに分割した後に、多数の光ファイバを利用して高出力レーザビームを伝送するが、このように多数の光ファイバを利用して高出力レーザビームを伝送する際には、1つの回折レンズ(6)を利用して1本のレーザビームから同時に多数の集束されたレーザビームを光ファイバの入射面に生成することにより、多数の光ファイバを利用したレーザビーム伝送装置を非常に簡単にするという効果がある。
【0017】
又、本発明によって提供されたビームホモジナイザ(5)と回折レンズ(6)から構成される複合レンズを利用し、多数の光ファイバによって高出力レーザビームを伝送する際には、光ファイバの入射断面を複合レンズによって生成される2つの焦点位置(ホモジナイザ(5)の有効焦点及び回折レンズ(6)の焦点)よりも後方に位置させることにより、光ファイバの入射面又は内部においてレーザレーザが集束し光ファイバが損傷することを防止する効果がある。
【0018】
又、光ファイバ支持用シリンダ(8、16)と光ファイバマウンタ(9、17)を利用して多数の光ファイバを整列させることにより、多数の集束されたレーザビームが、それぞれ多数の光ファイバの入射面に容易且つ正確に入射するようにするという効果がある。
【0019】
又、本発明によれば、高出力レーザビームを多数の光ファイバによって伝送する際に使用される光ファイバの本数を、伝送しようとする総レーザビームエネルギーを1本の光ファイバによって伝送可能なレーザエネルギーによって除算した値よりも大きな整数(integer)の中の最も小さい整数値に定めることにより、最も経済的に高出力レーザを伝送可能な装置を構成する根拠を提供するという効果がある。
【0020】
又、レーザビームの集光と集光されたレーザビームの光ファイバ断面への入射作用を真空中において遂行することにより、光ファイバ入射面の前方において発生し得るエアーブレーキングによるレーザエネルギーの損失及び光ファイバ断面の汚染を防止するという効果がある。
【0021】
又、本発明において提示されているように、光ファイバを通じて伝送された後に、レーザビームが出力される光ファイバの出力面を、このレーザビームの伝送方向を基準として一定の角度(図8のθ)を有するように切断することにより、光ファイバによって伝送されたレーザビームと、光ファイバ面において反射して戻ってきたレーザビームの干渉現象による光ファイバの損傷を防止する効果と、光ファイバの出力面の面積を拡大してレーザビームの単位面積当たりの強度を低下させることにより、光ファイバ出力面の損傷を更に緩和する効果も存在する。
【0022】
又、斜角によって切断された多数の光ファイバの断面がすべて同一の方向を有するように、即ち、1つの平面上に存在するように整列させることにより、多数の光ファイバから出力されたレーザビームがすべて同一の方向に進行するようにし、光ファイバ出力面から出力されたビームをレンズなどを利用して特定地点に集光することが容易になるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明による望ましい実施例を添付図面を参照して詳しく説明する。
【0024】
まず、図1に、本発明による高出力レーザビームの光ファイバ伝送方法を示す全体図面を図示している。図1において、高出力レーザにおいて発生したレーザビーム(1)は、真空チャンバ(2)の一面に構成された透明窓(3)を通過し、真空チャンバ(2)の内部に設置されたビームスプリッタ(4)を通過して、ビームホモジナイザ(5)に入射する。この際に、ビームスプリッタ(4)を通過したビームの強度は、初期のビーム強度に比べて、50%に低下しており、残りの50%のレーザビームは、光線スプリッタ(4)において反射され、全反射鏡(12)に入射する。図1に図示したビームホモジナイザ(5)は、図2に示すように、多数のマイクロレンズが二次元平面上にマトリックス形に配列された光学素子である。従って、初期の空間分布がガウス(Gaussian)であるレーザビームは、ビームホモジナイザ(5)を通過した後に、多数の集光スポットを形成する。このようなビームホモジナイザ(5)を通過した光が、続いて、更に別の1つの集光レンズを通過すれば、図3に表示されているように、空間分布が均一に変形する。即ち、図3において、ビームホモジナイザ(5)を構成するマイクロレンズによって個別に集光されたスポットは、空間的な位置が互いに異なっており、これらのスポットが、更に別の集光レンズによってその位置を互いに接近させ、全体的に均一な強度の分布を形成するのである。図3に図示されているように、ビームホモジナイザ(5)と集光レンズを利用してレーザビームの空間的分布を均一にした後に、これを光ファイバの断面(コア断面)に入射させれば、高密度に集束されたレーザエネルギーによって発生する光線の損傷を緩和し、光ファイバによって伝送される最大レーザパルスエネルギーの強度を拡大する効果を有することになる。又、空間的な分布が均一化されたレーザパルスビームは、光ファイバ断面の前方において、レーザエネルギーの集束によって発生するエアーブレーキングによるレーザエネルギーの損失及び光ファイバ断面の汚染を緩和する効果をも有している。
【0025】
本発明においては、図3のように、ビームホモジナイザ(5)を通過したレーザビームを再度集光する集光レンズとして、図1に図示されているように、回折レンズ(6)を使用している。回折レンズ(6)は、単一の波長を有するレーザビームが入射した場合に、同一の焦点面に多数の焦点を形成するレンズであって、1つのレンズにより、1本の入射レーザビームを多数のレーザビームに分離し、集光する効果がある。従って、本発明のように、1本の高出力レーザパルスビームを多数の光ファイバによって伝送するべく、1本のレーザビームから多数の集光されたレーザビームを生成する必要がある場合には、このような回折レンズ(6)を利用すれば、1つの回折レンズ(6)から多数の集光されたレーザビームを生成可能であるため、図1に図示されているように、光学系の構成が非常に簡単になるという長所がある。
【0026】
上述のように、ビームホモジナイザ(5)と回折レンズ(6)を使用すれば、図3において説明したように、空間分布が均一な多数のレーザスポットが得られるという効果がある。即ち、図4に示されているように、ビームホモジナイザ(5)に続いて回折レンズ(6)を通過した光は、少なくとも3本以上の集束されたレーザビームを形成し、それぞれの集束されたビームは、図3において説明した作用により、均一な空間分布を有している。このように形成された多数の集束されたレーザビームを、図4に示されているように、少なくとも3本以上の光ファイバに入射させれば、高出力レーザビームの効率的な光ファイバ伝送が可能になるのである。
【0027】
図4において、ホモジナイザ(5)を構成するマイクロレンズの焦点距離(fH)は、回折レンズ(6)(焦点距離fD)により、有効焦点距離が、次の光学式1に従って更に短くなる。
【0028】
H+D=(fH+fD)/fHD …… 式1
式1において、fH+Dは、マイクロレンズの有効焦点距離である。このような光学的原理によって更に短くなったを図4に図示している。図4に図示されているように、マイクロレンズの有効焦点距離は、常に回折レンズ(6)の焦点距離(fD)よりも短い。図4において、光ファイバ(7)の入射断面は、回折レンズ(6)の焦点距離(fD)の後方に位置している。従って、光ファイバ(7)の入射断面は、常にマイクロレンズの有効焦点距離と回折レンズ(6)の焦点距離よりも後方に位置している。本発明におけるように、光ファイバ(7)の入射断面を、常にマイクロレンズの有効焦点距離(fH+D)と回折レンズ(6)の焦点距離(fD)よりも後方に位置させるのは、光ファイバの入射面又は内部においてレーザビームが集束し光ファイバが損傷することを防止するためである。
【0029】
図1において、初期のレーザビームビームの強度の残りの部分である50%は、ビームスプリッタ(4)において反射された後に、ビームホモジナイザ(13)と回折レンズ(6)を通じて、図4において説明したのものと同様の作用により、少なくとも3本以上の光ファイバ(15)によって伝送される。図1のような多数の光ファイバを利用した高出力レーザビームの伝送においては、回折レンズ(6、14)によって生成される均一な強度分布に集束されたビームの本数(n)又は光ファイバの本数(n)は、次の関係式によって決定される。
【0030】
T≦nxES …… 式2
ここで、ETは、レーザビームの産業的応用に必要な総パルスエネルギーであり、ESは、1本の光ファイバによって伝送可能な最大レーザビームエネルギーである。即ち、回折レンズ(6、14)によって生成された均一な強度分布に集束されたビームの本数(n)又は光ファイバの本数(n)として、式2を満足する最も小さな値を選択するのである。
【0031】
図1において、それぞれの光ファイバ(7、15)は、光ファイバ支持用シリンダ(8、16)に挿入された後に、光ファイバマウンタ(9、17)により、真空チャンバ内において、その位置が固定される。この際に、光ファイバ支持用シリンダ(8、16)は、光ファイバマウンタ(9、17)を利用して光ファイバの位置を機械的な力によって固定する際に発生しやすい光ファイバの損傷を防止することを目的として使用されている。光ファイバ支持用シリンダ(8、16)と光ファイバマウンタ(9、17)の構成及び作用を図5に図示している。
【0032】
図5の(A)は、光ファイバ支持用シリンダ(8、16)の構成を図示したものであって、図5の(B)は、光ファイバ支持用シリンダ(8、16)が装着された光ファイバマウンタ(9、17)の上面図であり、図5の(B)は、光ファイバ支持用シリンダ(8、16)が装着された光ファイバマウンタ(9、17)の前面図である。図5において、光ファイバ支持用シリンダ(8)の内径は、光ファイバの外形と一致し、この光ファイバ支持用シリンダ(8)に光ファイバが挿入される。光ファイバ支持用シリンダ(8、16)の一方の端部は、直方体の中心部に挿入されて固定され、この直方体が図5−(A)及び図5−(B)に図示されているように、光ファイバマウンタ(9、17)に挿入され、再度固定される。
【0033】
この直方体は、上面及び下面に回転軸(pivot)を有しており、光ファイバマウンタ(9、17)内において水平回転が可能である。即ち、3つの光ファイバ支持用シリンダ(8、16)の中の中心にある光ファイバ支持用シリンダは、光ファイバマウンタ(9、17)の中心に、回転機能なしで、固定される。これに対し、3つの光ファイバ支持用シリンダ(8、16)の左側シリンダと右側シリンダは、水平回転が可能であり、適切な方向に回転された後に、固定用ボルトによって光ファイバマウンタ(9、17)に固定される。このような光ファイバ支持用シリンダ(8、16)の水平回転は、図6に図示されているように、それぞれのレーザビームが、光ファイバの断面に対して垂直に入射するようにすることを目的としている。即ち、図5に図示されているように、光ファイバ支持用シリンダ(8、16)は、光ファイバマウンタ(9、17)の左側面と右側面にそれぞれ設置されたスプリングとボルト、そして、回転軸の作用を利用し、適切な方向(レーザビームが光ファイバの断面に垂直に入射する方向)に回転させた後に、光ファイバマウンタ(9、17)上面の固定用ボルトによって固定するのである。このような光ファイバ支持用シリンダ(8、16)と光ファイバマウンタ(9、17)の作用により、少なくとも6本以上のレーザビームが、少なくとも6本以上の光ファイバに効率的に入射し、伝送される。
【0034】
図1において、真空チャンバ(2)は、ビームホモジナイザ(13)と回折レンズ(14)を通じて集束された多数のレーザビームを真空状態において光ファイバ(7、15)に入射させる。これは、光ファイバの入射面の前方において発生し得るエアーブレーキングによるレーザエネルギーの損失及び光ファイバ断面の汚染の防止を目的としている。このような真空機能により、高出力レーザビームの光ファイバ伝送を、外部環境の影響なしに、常に安定的に実現することができる。
【0035】
図1において、真空チャンバ(2)外部の光ファイバは、曲がりやすい保護用金属カバー(10)によって保護されており、この金属カバー(10)は、金属カバー固定帯(11)によって真空チャンバ(2)に固定されている。このような保護用金属カバー(10)及び金属カバー固定帯(11)により、長さが長い光ファイバを容易に処理可能であり、レーザパルスビームを所望の位置に光ファイバを通じて伝送することができる。
【0036】
光ファイバを通じて伝送されたレーザパルスビームは、光ファイバの反対側の面を通じて出力される。このようにレーザビームが出力される光ファイバ面の内側部位におけるビームの強度は、レーザビームが入射する面の内側部位におけるレーザビームの強度よりも常に大きい。これは、図7に図示されているように、レーザビームが出力される光ファイバ面の内側部位においては、光ファイバによって伝送されたレーザビームと光ファイバ面において反射されて戻ってきたレーザビームが常に同時に存在するためである。従って、光ファイバの出力面の近傍においては、この2種類のレーザビームの干渉現象によって光ファイバが損傷する可能性が非常に高い。このような問題点を解決するために、本発明においては、光ファイバの出力面を、図8に図示されているように、斜角によって切断することにより、2種類のビームの補強干渉を防止し、光ファイバの損傷を緩和している。このように光ファイバの出力面を斜角によって切断すれば、光ファイバの出力面の面積は、次の式3のように増加する。
【0037】
Ωl=ΩN/cos(θ) 式3
式3において、Ωlは、斜角によって切断された光ファイバ出力面の面積であり、ΩNは、直角で切断された光ファイバ出力面の面積であり、θは、図8に図示されている出力面の切断角度である。このように光ファイバの出力面の面積が増加すると、レーザビームの単位面積当たりの強度が小さくなるため、光ファイバ出力面の損傷を更に緩和させる効果も存在する。
【0038】
図1のように、高出力レーザビームを分割した後に6本の光ファイバを使用して伝送する場合には、この6本の光ファイバの出力面は、それぞれ図8に説明されているように、斜角によって切断する。斜角によって切断された6本の光ファイバの出力面を図9に示している。図9のように、表面の損傷を防止するべく斜角によって切断された多数の光ファイバ断面が、すべて同一の方向を有するように、即ち、1つの平面上に存在するように整列させれば、多数の光ファイバから出力されたレーザパルスビームがすべて同一の方向に進行するため、この光ファイバ出力面から出力されたビームをレンズなどを利用して特定地点に集光することが容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明による高出力レーザビームの光ファイバ伝送装置の概略図である。
【図2】ビームホモジナイザの構造を図示した図面である。
【図3】ビームホモジナイザと集光レンズによるレーザビーム分布の均一化を図示した図面である。
【図4】本発明による1つの回折レンズを利用した多数の集束レーザビームの生成及び光ファイバへの入射を図示した概略図である。
【図5】本発明による光ファイバ支持用シリンダ及び光ファイバマウンタの構造を図示した概略図である。
【図6】本発明による光ファイバ支持用シリンダ及び光ファイバマウンタを利用した光ファイバの整列方法を図示した概略図である。
【図7】光ファイバ出力面におけるレーザビームの反射を図示した図面である。
【図8】本発明による斜角で切断された光ファイバの出力面を図示した概略図である。
【図9】本発明によって提供された斜角で切断された多数の光ファイバ断面の整列方法を図示した概略図である。
【符号の説明】
【0040】
1 高出力レーザビーム
11 真空チャンバ
3 透明窓
4 ビームスプリッタ
5、13 ビームホモジナイザ
6、14 回折レンズ
7、15 光ファイバ
8、16 光ファイバ支持用シリンダ
9、17 光ファイバマウンタ
10 金属カバー
11 金属カバー固定帯

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高出力レーザビームを複数の光ファイバによって伝送するレーザビームの伝送装置において、
高出力レーザビーム(1)を強度分割する一つまたは複数のビームスプリッタ(4)と、該ビームスプリッタから出射される各レーザビームに対して、レーザビームの強度分布を均一にするビームホモジナイザ(5)と単一ビームを複数のスポットに集光する回折レンズ(6)で構成される複合レンズと、該複合レンズから出射される複数の分割レーザビームを別個の光ファイバに効率良く入射させる光ファイバ整列部を具備し、
前記各レーザビームをそれぞれに対応する前記複合レンズを通過させて分割した後に光ファイバ整列部で、複数の光ファイバ(7、15)に入射させる高出力レーザビームを複数の光ファイバで伝送する光ファイバ伝送装置。
【請求項2】
前記光ファイバ整列部は、光ファイバ支持用シリンダ(8、16)と光ファイバマウンタ(9、17)で多数の光ファイバ(7、15)を整列させることにより、多数の集束されたレーザビームが、それぞれ多数の光ファイバ入射面に容易且つ正確に入射させるものである請求項1に記載の光ファイバ伝送装置。
【請求項3】
前記複数の光ファイバへ前記分割レーザビームが入射する部分が真空あるいは不活性ガス雰囲気になるように、一部または全体が真空あるいは不活性ガス雰囲気であるケーシングを具える請求項1又は請求項2に記載の光ファイバ伝送装置。
【請求項4】
前記複数の光ファイバの本数が、伝送しようとする総レーザエネルギーを1本の光ファイバによって伝送可能なレーザエネルギーによって除算した値よりも大きな整数の中で最も小さな整数値であることを特徴とする請求項1〜請求項3の内の何れか一項に記載の光ファイバ伝送装置。
【請求項5】
前記のビームホモジナイザ(5)と回折レンズ(6)から構成される複合レンズを利用して多数の光ファイバによって高出力レーザを伝送する際に、多数の光ファイバの入射断面を、複合レンズによって生成される2つの焦点位置(ホモジナイザ(5)の有効焦点及び回折レンズ(6)の焦点)よりも後方に位置させることを特徴とする請求項1〜請求項4の内の何れか一項に記載の光ファイバ伝送装置。
【請求項6】
光ファイバを通じて伝送された後にレーザビームが出力される光ファイバの出力面を、該レーザビームの伝送方向と垂直な面を基準として0度以上の一定の角度(θ)を有するように切断し、光ファイバの損傷を防止したことを特徴とする請求項1〜請求項5の内の何れか一項に記載の光ファイバ伝送装置。
【請求項7】
請求項6において、斜角に切断された多数の光ファイバ断面がすべて同一の方向を有するように、即ち、1つの平面上に存在するように整列させることにより、多数の光ファイバから出力されたレーザビームがすべて同一の方向に進行するようにした光ファイバ伝送装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−84932(P2006−84932A)
【公開日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−271241(P2004−271241)
【出願日】平成16年9月17日(2004.9.17)
【出願人】(000006655)新日本製鐵株式会社 (6,474)
【出願人】(592000691)ポスコ (130)
【Fターム(参考)】