説明

高力率スイッチング電源

【課題】交流入力電流が正弦波になるようにソフトスイッチングする一次側に平滑コンデンサを有するスイッチング電源を提供する。
【解決手段】交流電源の整流回路DBの正極と負極の間にトランスT1の第2の1次巻線N2と第1の1次巻線N1とスイッチング素子M1を直列に接続し、トランスT1の第2及び第1の1次巻線N2とN1の接続箇所と整流回路DBの負極の間に1次平滑コンデンサC1を接続し、トランスT1の2次側がフォワード型で出力するように、2次巻線N3と2次平滑コンデンサC2を接続する回路構成としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、交流電源を入力とし、入力電流をほぼ正弦波にできる高力率スイッチング電源に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、コンデンサインプット形の高力率スイッチング電源として、図4の電源が知られている。この従来例は、交流電源に整流回路DBを接続し、この整流回路DBの正極と負極の間に第1及び第2のトランスT11、T12の第1及び第2の1次巻線N11、N12とスイッチング素子Qを直列に接続する。また、この整流回路DBの負極から正極の間に第2及び第1のダイオードD12、D11を直列に接続する。第1及び第2のダイオードD11、D12の接続中点と第1及び第2の1次巻線N11、N12の中点との間に1次平滑コンデンサC11を接続する。第1及び第2のダイオードD11、D12の接続中点とスイッチング素子Qの間に第3のダイオードD13を接続する。そして、第1及び第2のトランスT11、T12の第1及び第2の2次巻線N21、N22にダイオードD21、D22を介して出力2次平滑コンデンサC21を接続したものである。
【0003】
1次側の1次平滑コンデンサC11は、逆方向のダイオードD12を介して整流回路DBの負極に接続しているために、コンデンサC11に十分な充電ができないので、1次側の平滑性を機能させるためには、大きい容量のコンデンサが必要である。しかし、コンデンサC11の容量が大き過ぎると、スイッチング時、第1のトランスT11と第2のトランスT12が共振しないため、十分な容量をもたせることはできない。そのため、交流電源の瞬断に対しては、2次側に大きい容量の平滑コンデンサが必要である。また、1次平滑コンデンサC11は、逆方向のダイオードD12と接続しているので、十分な充放電ができないため、第1のトランスT11と第2のトランスT12は、大きく共振しない。そのために、整流回路DBの正極の電圧VDBとコンデンサC11の電圧VC11の関係が、正極電圧VDB<コンデンサ電圧VC11の時、整流回路DBから電流が流れ込まないために、力率が下がる等の問題がある。また、交流電圧との関係から、コンデンサC11の充電電圧を高くできないので、一次側に十分な平滑性を持たせることができない。
【特許文献1】特開平9−93946
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
解決しようとする問題点は、正極電圧VDB<コンデンサ電圧VC11の時、整流回路DBから電流が流れ込まない、そして、1次側に大きい容量の平滑コンデンサを接続できず、十分な平滑性を持たせることができない点である。
【0005】
本発明は、トランスT1の一次側の第1の1次巻線N1と第2の1次巻線N2の接続箇所と整流回路DBの負極の間に1次平滑コンデンサC1を接続して、1次平滑コンデンサC1を十分に充放電させ、第1及び第2の1次巻線N1とN2を大きく共振させることにより、スイッチングのオン時にゼロ電流スイッチング(ZCS)し、交流電圧の低い期間においても、交流電流を引き込み、交流入力電流が力率1に近い正弦波になることを最も主要な特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明のスイッチング電源は、交流電源の低電圧期間においても整流回路から電流が流れ込み、また、スイッチング素子のオン期間とオフ期間の両期間において、トランスが2次側へ電力を供給するため、高効率で高力率のスイッチングを行なえる利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明は、交流電源の整流回路DBの正極と負極の間にトランスT1の第2の1次巻線N2、第1の1次巻線N1と、スイッチング素子M1を直列に接続し、第1及び第2の1次巻線N2とN1の接続箇所と整流回路DBの負極の間に、1次平滑コンデンサC1を接続し、1次平滑コンデンサC1を十分に充放電させて、1次巻線N2とN1を大きく共振させることにより、スイッチングのオン時にゼロ電流スイッチング(ZCS)、交流電源の低電圧期間においても整流回路DBから電流IDBが流れ込み、交流入力電流をほぼ正弦波にできる高力率スイッチング電源を実現した。
【実施例1】
【0008】
図1により本発明の第1の実施例を説明する。交流入力電圧検出、直流出力電圧検出、スイッチング制御等の回路は示していない。トランスT1の巻線は、図に示すドットを巻き始めとする。図1において、Vacは交流電源、LPFはローパスフィルタ、DBは整流回路、T1はトランス、M1はスイッチング素子、C1は1次側の平滑コンデンサ、C2は2次側の平滑コンデンサ、L1は2次側の平滑コイルである。
【0009】
交流電源に接続される整流回路DBと、整流回路DBの正極とトランスT1の第2の1次巻線N2の巻き始めを接続し、第2の1次巻線N2の巻き終わりと第1の1次巻線N1の巻き始めを接続し、第1の1次巻線N1の巻き終わりと整流回路DBの負極の間にスイッチング素子M1を接続し、第1及び第2の1次巻線N2とN1の接続箇所と整流回路DBの負極の間に1次平滑コンデンサC1を接続する。2次側の2次巻線N3の巻き始めに第1のダイオードD1のアノードを、巻き終わりに第2のダイオードD2のアノードを接続し、第1及び第2のダイオードD1とD2のカソードを平滑コイルL1の一端に接続し、平滑コイルL1の他端を2次側の2次平滑コンデンサC2のプラス側に、2次巻線N3の巻き終わりを2次平滑コンデンサC2のマイナス側に接続する。2次側の2次平滑コンデンサC2のプラス側を2次側出力の正極に、マイナス側を2次側出力の負極にする。スイッチング素子M1がオンの期間、また、オフの期間の両期間においてトランスT1が2次側に電力を供給するフォワード型に接続している。図2に、図1の回路の各部の電圧、電流特性を時間の経過(区間T0,・・,T4)にそって示す。図2の各波形は、理解を助けるための代表例として、交流電源の中電圧期間の波形の特徴を示したものである。(a)は、整流回路DBの正極の電流IDBである。(b)は、スイッチング素子M1の電流IM1である。(c)は、巻線N3より第1のダイオードD1を通って2次側に出力される電流ID1である。(d)は、巻線N3より第2のダイオードD2を通って2次側に出力される電流ID2である。(e)は、スイッチング素子M1の電圧VM1である。(f)は、整流回路DBの正極の電圧VDBである。
【0010】
スイッチング素子M1がオンになった時、スイッチング素子M1の電圧VM1は、1次平滑コンデンサC1の平滑電圧から0Vに下がり、整流回路DBの正極の電圧VDBは、第1及び第2の1次巻線N1とN2の共振により1次平滑コンデンサC1の平滑電圧から共振電圧の高い方にまで上がる。1次平滑コンデンサC1の放電電流IC1が第1の1次巻線N1を流れるので、スイッチング素子M1を流れる電流IM1は緩やかに立ち上がるゼロ電流スイッチング(ZCS)になる。2次側の巻線N3より第1のダイオードD1を通って2次側に出力される電流ID1も緩やかに立ち上がって流れる。(区間T0−T1)。
【0011】
次に、スイッチング素子M1がオフになった時、スイッチング素子M1を流れる電流IM1は止まり、2次側の巻線N3の第1のダイオードD1を通って2次側に出力される電流ID1も止まる。スイッチング素子M1の電圧VM1は、0Vから1次平滑コンデンサC1の平滑電圧に上がり、整流回路DBの正極の電流IDBが流れ始めるまでの僅かの時間、その平滑電圧を維持し、正極の電流IDBが流れ始めると共振電圧の高い方に上がり始める。整流回路DBの正極の電圧VDBも、共振電圧の高い方から1次平滑コンデンサC1の平滑電圧にまで下がり、電流IDBが流れ始めるまでの僅かの時間、その平滑電圧を維持し、正極の電流IDBが流れ始めると共振電圧の低い方に下がり始める。(区間T1−T2)。整流回路DBの正極の電流IDBが流れ終わり、2次側の巻線N3より第2のダイオードD2を通って2次側に出力される電流ID2も流れ終わると、スイッチング素子M1の電圧VM1は、共振電圧の高い方の電圧から1次平滑コンデンサC1の平滑電圧にまで下がり、整流回路DBの正極の電圧VDBも、共振電圧の低い方の電圧から1次平滑コンデンサC1の平滑電圧にまで上がる。(区間T2−T3)。スイッチング素子M1の電流IM1と整流回路DBの正極の電流IDBと2次側に出力される第1及び第2のダイオード電流ID1とID2が止まり、スイッチング素子M1の電圧VM1と整流回路DBの正極の電圧VDBが1次平滑コンデンサC1の平滑電圧で止まる期間である。(区間T3−T4)。
【0012】
以上説明したように、本発明の実施例においては、スイッチング素子M1は、オン時、ゼロ電流スイッチングし、オフ時、スイッチング素子M1の電圧VM1は、0Vから1次平滑コンデンサC1の平滑電圧にまで上がって、電流IM1が止まった後に、共振電圧の高い電圧に上がるために、オフ時のスイッチング損失は小さいので、変換効率を90%以上に上げることができる。また、トランスT1の第1及び第2の1次巻線N1とN2の共振により、交流電圧がゼロ点を通過する電圧の低い期間においても、整流回路DBの電流IDBは流れ、図3に示すように、正弦波に近い交流入力電流を流すことができる。
【0013】
直流出力電圧の調整は、直流出力電圧を検出し基準電圧と比較して、直流出力電圧が一定になるように、スイッチング素子M1のオン時間一定で、オフ時間を変えるデューティ制御、または、オン時間、オフ時間のデューティ比と周波数を共に変える制御により、行うことができる。
【0014】
さらに、交流入力電圧を検出して、交流の低電圧期間は、スイッチング素子M1のオン・オフ時間比一定でスイッチング1周期の時間を短くする周波数制御を行う、あるいは、オン時間の割合を大きくするようにデューティ制御を行うとともに、スイッチング1周期の時間を短くする周波数制御を行なえば、交流入力電流の引き込みを多くできる。一方、交流の高電圧期間は、オフ時間の割合を大きくするようにデューティ制御を行うとともに、スイッチング1周期の時間を長くする周波数制御を行なえば、交流入力電流の大きな流れ込みを抑えることができる。これらの制御により、交流入力電流を力率が1に近い正弦波にすることができる。さらに、交流入力電圧検出による制御に、直流出力電圧検出による制御を加えれば、直流出力電圧を一定にすることがでる。
【産業上の利用可能性】
【0015】
スイッチング損失とスイッチングノイズが少ない、ソフトスイッチングを行い、そして、ほぼ正弦波の交流入力電流が流れるので、交流側へ出る高調波が非常に少ない、高効率・高力率スイッチング電源として、産業界の広範囲の電源に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】スイッチング電源の回路図である。(実施例1)
【図2】スイッチング電源の電圧、電流特性の波形図である。
【図3】スイッチング電源の交流入力電流の波形図である。
【図4】スイッチング電源の回路図である。(従来例)
【符号の説明】
【0017】
C1,C2・・・平滑コンデンサ
DB ・・・整流回路
D1,D2・・・ダイオード
L1・・・チョークコイル
M1・・・スイッチング素子
T1・・・トランス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
交流電源の整流回路の正極と負極の間にトランスの第2の1次巻線と第1の1次巻線とスイッチング素子を直列に接続し、第2の1次巻線と第1の1次巻線の接続箇所と整流回路の負極の間に1次平滑コンデンサを接続し、スイッチング素子のスイッチングにより1次平滑コンデンサを充放電させて、交流電源の低電圧期間においても整流回路から電流が流れ込み、交流入力電流をほぼ正弦波にでき、スイッチング素子のオン期間、オフ期間の両期間において、トランスが2次側へ電力を供給する高力率スイッチング電源。
【請求項2】
交流電源に接続される整流回路の正極とトランスの第2の1次巻線の巻き始めを接続し、第2の1次巻線の巻き終わりと第1の1次巻線の巻き始めを接続し、第1の1次巻線の巻き終わりと整流回路の負極の間にスイッチング素子を接続し、第2の1次巻線と第1の1次巻線の接続箇所と整流回路の負極の間に1次平滑コンデンサを接続し、トランスの2次巻線の巻き始めに第1ダイオードのアノードを、巻き終わりに第2ダイオードのアノードを接続し、第1ダイオードと第2ダイオードのカソードを平滑コイルの一端に接続し、平滑コイルの他端を2次平滑コンデンサのプラス側に、2次巻線の巻き終わりを2次平滑コンデンサのマイナス側に接続し、2次平滑コンデンサのプラス側を2次側出力の正極とし、マイナス側を2次側出力の負極とする請求項1記載の高力率スイッチング電源。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−50822(P2006−50822A)
【公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−229900(P2004−229900)
【出願日】平成16年8月5日(2004.8.5)
【出願人】(000102429)エス・オー・シー株式会社 (6)
【Fターム(参考)】