説明

高輝度・低ガス性薄肉樹脂反射鏡

【課題】本発明は、薄肉部分を有する部品の成形において、シルバーや曇りなどの発生を抑制し、かつ、金属蒸着、例えばアルミ蒸着後において、熱エージング前後の外観、特に表面反射率の保持に優れ、さらに剛性および耐熱性にも優れた高輝度・低ガス性薄肉樹脂反射鏡を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明の高輝度・低ガス性薄肉樹脂反射鏡は、樹脂組成物からなる高輝度・低ガス性薄肉樹脂反射鏡であって、前記反射鏡が金属蒸着されたものであり、前記金属蒸着された部分の成形品厚みが平均2mm以下であり、前記金属蒸着された部分(蒸着面)の初期表面反射率が90%以上であり、前記金属蒸着された部分の表面粗さが12nm以下であり、かつ前記樹脂組成物についてフォギング試験を行った後のガラス板のヘイズ値が1.0以下である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高輝度・低ガス性薄肉樹脂反射鏡に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、光を反射する樹脂製部品(反射鏡;リフレクター、主に自動車ランプ部品など)の材料は主に、不飽和ポリエステル(BMC)などの熱硬化性樹脂などが広く使用されてきた。このような熱硬化性樹脂はアルミニウムに比べれば軽量であるが、比重が2.0を超えるため、一層の軽量化が求められている。また、熱硬化性樹脂では、成形品後処理作業の煩雑さや、粉塵などによる作業環境汚染などの問題もある。そのため、反射鏡用の材料としては、熱硬化性樹脂からポリエーテルイミドなどの熱可塑性樹脂への転換が進んでいる。
【0003】
また、反射鏡の中でも金属光沢が必要とされる部品(自動車のエクステンションリフレクター)の材料としては、高耐熱ポリカーボネートや、金属蒸着時のプライマー(アンダーコート)が必要ではあるものの、コスト的に優位なポリエチレンテレフタレート(PET)/ポリブチレンテレフタレート(PBT)のガラス強化材などが使用されている。更には、自動車ランプ部品として、耐熱性、耐加水分解性に優れるポリフェニレンエーテル系樹脂を用いた技術が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、反射鏡の表面光沢を高める技術として、鏡面に仕上げた金型を用いて得られた成形品に直接アルミ蒸着を行う技術(例えば、特許文献2参照)や、金型温度を、加熱変形温度より約40℃低い温度から加熱変形温度までの範囲で設定して成形する技術(例えば、特許文献3参照)が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平5−320495号公報
【特許文献2】特開平11−60935号公報
【特許文献3】特開平11−116793号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
樹脂製反射鏡の主たる用途である自動車ランプ部品においては、成形品の更なる軽量化の要求が強まっており、例えば従来の成形品の50%以上の軽量化が要求されることがある。したがって、成形品の肉厚についても大幅な低減が必要となる。薄肉の成形品を得るためには、一般には高いせん断条件が必要となり、一般に得られる成形品の外観の悪化(シルバーや曇り、剥離などの発生)や薄肉部への樹脂の充填不足による成形品外観の悪化などが発生する傾向にある。また、近年のエンジンルーム温度の向上により使用環境温度が高くなっており、そのような環境下であっても、使用中に成形品外観が悪化しないことも求められている。
【0007】
このような薄肉部における特性に関して、前記した文献では、いずれも解決されていない。特許文献1に記載の技術は、薄肉部品の流動性が満足できず、基材の外観および、金属蒸着の外観も悪いという問題がある。同様に、特許文献2に開示の技術でも薄肉部における成形品外観の悪化などについての課題が解決されていない。また、特許文献3に開示の技術は、同様に薄肉部における成形品外観について検討されていない上に、更に所望の効果を得るために、極めて限定的な成形条件としなければならないが、実際の成形品は通常複雑な形状を有するため、成形する際に金型温度を均一に保つことはできない等、限定的な成形条件に制御することは困難である。
【0008】
そこで、本発明は、金属蒸着、例えばアルミ蒸着された薄肉部分において、熱エージング前後の外観、特に表面反射率の保持に優れた高輝度・低ガス性薄肉樹脂反射鏡を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記の課題を達成するために鋭意検討したところ、成形条件が高温高せん断となる薄肉部分を有する成形品であっても、熱エージング前後の表面外観、特に表面反射率の保持に優れる反射鏡を見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明は以下のとおりである。
【0011】
[1]
樹脂組成物からなる高輝度・低ガス性薄肉樹脂反射鏡であって、
前記反射鏡が金属蒸着されたものであり、
前記金属蒸着された部分の成形品厚みが平均2mm以下であり、
前記金属蒸着された部分(蒸着面)の初期表面反射率が90%以上であり、
前記金属蒸着された部分の表面粗さが12nm以下であり、かつ
前記樹脂組成物について下記フォギング試験を行った後のガラス板のヘイズ値が1.0以下であることを特徴とする高輝度・低ガス性薄肉樹脂反射鏡。
【0012】
<フォギング試験>
前記樹脂組成物 50g(±1g)をガラス製サンプル瓶に入れて、当該ガラス製サンプル瓶の口を全部覆うことのできるガラス板で静置して蓋をし、150℃(±5℃)環境下で24時間加熱することにより、前記ガラス板に曇り(フォギング)を発生させる。
【0013】
[2]
前記フォギング試験おける加熱温度が170℃であることを特徴とする[1]に記載の高輝度・低ガス性薄肉樹脂反射鏡。
【0014】
[3]
前記金属蒸着された部分の成形品厚みが平均1.5mm以下であることを特徴とする[1]または[2]に記載の高輝度・低ガス性薄肉樹脂反射鏡。
【0015】
[4]
前記初期表面反射率に対する、150℃環境下(±5℃)で24時間の熱エージング処理後、反射鏡の表面反射率の保持率が、50%以上であることを特徴とする[1]〜[3]のいずれかに記載の高輝度・低ガス性薄肉樹脂反射鏡。
【0016】
[5]
前記初期表面反射率に対する、150℃環境下(±5℃)で24時間の熱エージング処理後、反射鏡の表面反射率の保持率が、70%以上であることを特徴とする[1]〜[4]のいずれかに記載の高輝度・低ガス性薄肉樹脂反射鏡。
【0017】
[6]
前記初期表面反射率に対する、150℃環境下(±5℃)で24時間の熱エージング処理後、反射鏡の表面反射率の保持率が、90%以上であることを特徴とする[1]〜[5]のいずれかに記載の高輝度・低ガス性薄肉樹脂反射鏡。
【0018】
[7]
前記金属蒸着が、プライマーを必要としないダイレクト蒸着法により行われることを特徴とする[1]〜[6]のいずれかに記載の高輝度・低ガス性薄肉樹脂反射鏡。
【0019】
[8]
前記樹脂組成物が、
(A)ポリフェニレンエーテル樹脂(PPE)と、
(B)ポリスチレン樹脂と、
(C)ゴム重合体と
を含み、それぞれの比率は、(A)+(B)+(C)=100重量%に対して、
(A)ポリフェニレンエーテル樹脂(PPE)が59〜98重量%、
(B)ポリスチレン樹脂が1〜40重量%、
(C)ゴム重合体が1〜40重量%
であり、
前記(C)ゴム重合体が、
(C−1)重量平均分子量が200,000〜500,000である水素添加ブロック共重合体と、
(C−2)重量平均分子量が10,000〜150,000である水素添加ブロック共重合体とを含むことを特徴とする[1]〜[7]のいずれかに記載の高輝度・低ガス性薄肉樹脂反射鏡。
【0020】
[9]
前記(C−1)が、ビニル芳香族系炭化水素由来の単量体を10質量%以上40質量%未満含む水素添加ブロック共重合体であり、
前記(C−2)が、ビニル芳香族系炭化水素由来の単量体を40質量%以上90質量%以下含む水素添加ブロック共重合体であることを特徴とする[8]に記載の高輝度・低ガス性薄肉樹脂反射鏡。
【0021】
[10]
前記(C−1)と前記(C−2)との質量比率((C−1)/(C−2))が、5/95〜95/5の範囲であることを特徴とする[8]または[9]に記載の高輝度・低ガス性薄肉樹脂反射鏡。
【0022】
[11]
前記(B)ポリスチレン樹脂が、
(B−1)ゴム強化されていないポリスチレン樹脂と、
(B−2)アクリロニトリル成分を含むポリスチレン系樹脂と
を含むことを特徴とする[8]〜[10]のいずれかに記載の高輝度・低ガス性薄肉樹脂反射鏡。
【0023】
[12]
前記(B−1)と前記(B−2)との質量比率((B−1)/(B−2))が、5/95〜95/5の範囲であることを特徴とする[11]に記載の高輝度・低ガス性薄肉樹脂反射鏡。
【0024】
[13]
前記(B−1)のメルトフローレート(MFR)(試験規格ISO 1133 ペレット 200℃/5kgf)が、1g/10分以上であること特徴とする[11]または[12]に記載の高輝度・低ガス性薄肉樹脂反射鏡。
【0025】
[14]
前記(A)ポリフェニレンエーテル樹脂の還元粘度(30℃ のクロロホルム0.5g/dL溶液)が、0.2〜0.6の範囲であることを特徴とする[8]〜[13]のいずれかに記載の高輝度・低ガス性薄肉樹脂反射鏡。
【0026】
[15]
前記反射鏡が、金型において溶融した前記樹脂組成物をゲートからキャビティーに射出する工程を含む製造方法により得られ、
前記ゲートの厚みが2.0mm以下であり、キャビティー内に形成される成形品にシルバー現象が起こらないことを特徴とする[1]〜[14]のいずれかに記載の高輝度・低ガス性薄肉樹脂反射鏡。
【0027】
[16]
前記ゲートの厚みが1.0mm以下であることを特徴とする[15]に記載の高輝度・低ガス性薄肉樹脂反射鏡。
【0028】
[17]
前記反射鏡が、シリンダー温度300℃〜340℃、金型温度90℃〜150℃の条件で前記樹脂組成物を成形する工程を含む製造方法により得られることを特徴とする[1]〜[16]のいずれかに記載の高輝度・低ガス性薄肉樹脂反射鏡。
【0029】
[18]
前記反射鏡が、ペレット供給機に減圧機構を有する成型機を用いて前記樹脂組成物を成形する工程を含む製造方法により得られることを特徴とする[1]〜[17]のいずれかに記載の高輝度・低ガス性薄肉樹脂反射鏡。
【0030】
[19]
前記金属蒸着がアルミ蒸着であることを特徴とする[1]〜[18]のいずれかに記載の高輝度・低ガス性薄肉樹脂反射鏡。
【0031】
[20]
移動体に付属する反射鏡として用いることを特徴とする[1]〜[19]のいずれかに記載の高輝度・低ガス性薄肉樹脂反射鏡。
【0032】
[21]
前記移動体が、内燃機関またはモーターを動力とすることを特徴とする[20]に記載の高輝度・低ガス性薄肉樹脂反射鏡。
【0033】
[22]
前記移動体が、飛行体、陸上走行体、海上走行体または水中走行体であることを特徴とする[20]または[21]に記載の高輝度・低ガス性薄肉樹脂反射鏡。
【0034】
[23]
前記移動体が、車輪を有することを特徴とする[20]〜[22]のいずれかに記載の高輝度・低ガス性薄肉樹脂反射鏡。
【0035】
[24]
光源の反射鏡として用いることを特徴とする[1]〜[23]のいずれかに記載の高輝度・低ガス性薄肉樹脂反射鏡。
【0036】
[25]
前記光源が、ハロゲンランプ、ディスチャージランプまたはLEDランプであることを特徴とする[24]に記載の高輝度・低ガス性薄肉樹脂反射鏡。
【0037】
[26]
エクステンションリフレクター、リフレクター、その他ランプ部品またはミラーであることを特徴とする[19]〜[25]のいずれかに記載の高輝度・低ガス性薄肉樹脂反射鏡。
【0038】
[27]
(A)ポリフェニレンエーテル樹脂(PPE)と、
(B)ポリスチレン樹脂と、
(C)ゴム重合体と
を含み、それぞれの比率は、(A)+(B)+(C)=100重量%に対して、
(A)ポリフェニレンエーテル樹脂(PPE)が59〜98重量%、
(B)ポリスチレン樹脂が1〜40重量%、
(C)ゴム重合体が1〜40重量%
であり、
前記(C)ゴム重合体が、
(C−1)重量平均分子量が200,000〜500,000である水素添加ブロック共重合体と、
(C−2)重量平均分子量が10,000〜150,000である水素添加ブロック共重合体とを含む樹脂組成物からなる高輝度・低ガス性薄肉樹脂反射鏡。
【発明の効果】
【0039】
本発明の高輝度・低ガス性薄肉樹脂反射鏡は、金属蒸着された部分の成形品厚みが平均2mm以下という薄肉であっても、金属蒸着された部分の表面粗さが良好であり、表面外観に優れ、また、上記フォギング試験を行った後のガラス板のヘイズ値が1.0以下であり、高温環境下でもガスの発生が抑制された高輝度・低ガス性薄肉樹脂反射鏡である。このような本発明の高輝度・低ガス性薄肉樹脂反射鏡は、表面反射率の保持率に優れ、かつ耐熱性や機械的物性に優れることから、特に自動車ランプエクステンションとして、有効に活用できる。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下、本発明を実施するための形態(以下、本実施形態)について詳細に説明する。尚、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施できる。
【0041】
≪高輝度・低ガス性薄肉樹脂反射鏡≫
本実施形態の高輝度・低ガス性薄肉樹脂反射鏡は、樹脂組成物からなる高輝度・低ガス性薄肉反射鏡であって、前記反射鏡が金属蒸着されたものであり、前記金属蒸着された部分の成形品厚みが平均2mm以下であり、前記金属蒸着された部分(蒸着面)の初期表面反射率が90%以上であり、前記金属蒸着された部分の表面粗さが12nm以下であり、かつ前記樹脂組成物(反射鏡もしくはペレット)について下記フォギング試験を行った後のガラス板のヘイズ値が1.0以下である。
【0042】
〔フォギング試験;
前記樹脂組成物 50g(±1g)をガラス製サンプル瓶に入れて、当該ガラス製サンプル瓶の口を全部覆うことのできるガラス板で静置して蓋をし、150℃(±5℃)環境下で24時間加熱することにより、前記ガラス板に曇り(フォギング)を発生させる。〕
本実施形態の高輝度・低ガス性薄肉樹脂反射鏡は、上記のように金属蒸着された部分の成形品厚みが従来よりも薄肉(2mm以下)である。成形品の軽量化は年を追うごとに強くなり、従来の成形品の50%以上軽量化が目標となっている。したがって、成形品の肉厚については、従来の30%以上も低減しなければならない要求が市場にはある。金属蒸着される部分についても同様に成形品厚みの低減が要求されている。本実施形態の高輝度・低ガス性薄肉樹脂反射鏡は、上記のように金属蒸着された部分の成形品厚みが従来よりも薄肉(2mm以下)である場合であっても、成形品の外観に優れ(剥離や曇りがない)、フォギング試験を行った後のヘイズ値に優れるものである。
【0043】
前記金属蒸着された部分の成形品厚みは、平均1.5mm以下であることが好ましく、平均1mm以下であることがより好ましい。
【0044】
また、前記金属蒸着された部分の表面粗さは、12nm以下であることが好ましく、10nm以下であることがより好ましい。金属蒸着された部分の表面粗さが前記範囲内であると、外観等の特性に優れる傾向にある。本実施形態において、金属蒸着された部分の表面粗さは後述する実施例に記載の方法により測定される値である。金属蒸着された部分の表面粗さを12nm以下とするためには、金型転写性を向上させることが重要であり、例えば後述するように適切な成形温度や金型温度を設定すること、あるいは樹脂組成物の流動性を向上させることなどによって達成することができる。
【0045】
更に、本実施形態の高輝度・低ガス性薄肉樹脂反射鏡は、前記金属蒸着された部分(蒸着面)の初期表面反射率が90%以上である。初期表面反射率が前記範囲内である反射鏡は、反射性能に優れる。本実施形態において、金属蒸着された部分(蒸着面)の初期表面反射率は後述する実施例に記載の方法により測定される値である。金属蒸着された部分の初期表面反射率を90%以上とするためには、前記の金型転写性を高めるとともに、薄肉の成形品で発生しやすい表面剥離を抑えることが重要である。例えば後述するように適切な成形温度や金型温度を設定すること、あるいは樹脂組成物の流動性を向上させる、更には樹脂組成物のモルフォロジーを適切に設計する(例えば連続相と分散相の相溶性を高めるなど)ことなどによって達成することができる。
【0046】
本実施形態の高輝度・低ガス性薄肉樹脂反射鏡は、フォギング試験を行った後のガラス板のヘイズ値が1.0以下である。当該ガラス板のヘイズ値が前記範囲内であると、樹脂組成物からなる反射鏡は、高温環境下においてもガス成分の発生を抑制することができる。したがって、該反射鏡を含む部品(例えばランプ部品等)は、曇りなどのガス成分の析出が少なく、反射性能を長期的に保持することができる。
【0047】
本実施形態において、フォギング性とは、樹脂組成物を加熱する際に発生するガス成分(アウトガス)が付着した部分に曇り(フォギング)が生じる性質をいう。前記フォギング試験を行った後のガラス板のヘイズ値が小さいほど、フォギング性に優れ、樹脂組成物からなる反射鏡の性能が良いことを意味する。
【0048】
近年、反射鏡を、移動体に付属する部品、特に自動車に付属する部品として用いる場合、上記フォギング試験を行った後のガラス板のヘイズ値に関する要求が厳しくなってきている。例えば、エクステンションリフレクターでは、150℃(±5℃)環境下で24時間加熱するという条件で、上記フォギング試験を行った後のガラス板のヘイズ値が1.0以下であることが求められている。
【0049】
本実施形態の高輝度・低ガス性薄肉樹脂反射鏡は、上記フォギング試験における加熱温度が170℃である場合に、前記ガラス板のヘイズ値が前記範囲内であることがさらに好ましい。なお、通常、フォギング試験における加熱温度が高いほど、ガラス板の曇りが多く、ヘイズ値が高くなる。
【0050】
フォギング試験を行った後のガラス板のヘイズ値を1.0以下とするためには、耐熱性の高く、かつ揮発成分の含有量が少ない樹脂組成物を用いること、更には揮発後ガラス板に付着する成分の含有量が少ない樹脂組成物を用いることなどによって達成することができる。
【0051】
このように本実施形態の高輝度・低ガス性薄肉樹脂反射鏡は、薄肉の金属蒸着された部品(蒸着面)の表面粗さに優れ、かつ金属蒸着された部分の初期表面反射率に優れ、かつフォギング性に優れるという特徴を有するものである。前記した要件を満足することによって初めて、金属蒸着面が従来よりも薄い肉厚を有するものであっても金属蒸着後の外観に優れ、かつ熱エージング処理後の反射鏡の表面反射率の保持率に優れるという効果を得ることができる。
【0052】
熱エージング処理後の反射鏡の表面反射率の保持率については、金属蒸着された部分(蒸着面)の初期表面反射率に対する、150℃環境下(±5℃)で24時間の熱エージング処理後、反射鏡の表面反射率の保持率が、50%以上であることが好ましく、70%以上であることがより好ましく、90%以上であることがさらに好ましい。更に、170℃環境下(±5℃)で24時間の熱エージング処理後の反射鏡の表面反射率の保持率が、50%以上であることが好ましく、70%以上であることがより好ましく、90%以上であることがさらに好ましい。表面反射率の保持率が前記範囲内である反射鏡は、反射性能を長期的に保持することができ、特に自動車エクステンションリフレクターとして好ましく用いることができる。
【0053】
本実施形態において、表面反射率の保持率は後述する実施例に記載の方法により測定される値である。
【0054】
《樹脂組成物》
本実施形態の高輝度・低ガス性薄肉樹脂反射鏡は、通常、射出成形により製造されるため、材料として熱可塑性樹脂を用いる。熱可塑性樹脂としては、特に限定されず、公知のものを用いることができる。熱可塑性樹脂の例としては、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリカーボネート樹脂とABSを含むポリマーアロイ、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂及びポリフェニレンサルファイド樹脂などが挙げられる。特に、高温の光源の近傍で用いられることが多いため、本実施形態の高輝度・低ガス性薄肉樹脂反射鏡に用いられる樹脂組成物としては、耐熱性の高い熱可塑性樹脂を含有することが好ましい。耐熱性の高い熱可塑性樹脂としては、特に100℃以上のガラス転移温度を有する樹脂が好ましく、ポリフェニレンエーテル樹脂や高耐熱ポリカーボネート樹脂を好適に用いることができる。中でもポリフェニレンエーテル樹脂が好ましい。
【0055】
ポリフェニレンエーテル樹脂を含む樹脂組成物としては、
(A)ポリフェニレンエーテル樹脂(PPE)と、
(B)ポリスチレン樹脂と、
(C)特定のゴム重合体と
を含むことが好ましい。
【0056】
以下、前記(A)〜(C)成分について詳細に説明する。
【0057】
〔ポリフェニレンエーテル樹脂(A)〕
<(A)成分>
本実施形態で用いられる(A)ポリフェニレンエーテル樹脂としては、特に限定されず、公知のものを用いることができ、単独重合体であってもよいし共重合体であってもよい。
【0058】
ポリフェニレンエーテルの単独重合体としては、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2−メチル−6−エチル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2,6−ジエチル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2−エチル−6−n−プロピル−1,4−フェニレン)エーテルポリ(2,6−ジ−n−プロピル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2−メチル−6−n−ブチル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2−エチル−6−イソプロピル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2−メチル−6−クロロエチル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2−メチル−6−ヒドロキシエチル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2−メチル−6−クロロエチル−1,4−フェニレン)エーテル等が挙げられる。
【0059】
それらの中でも、原料としての実用上の観点から、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレン)エーテルが好ましく、2−(ジアルキルアミノメチル)−6−メチルフェニレンエーテルユニットや2−(N−アルキル−N−フェニルアミノメチル)−6−メチルフェニレンエーテルユニット等を部分構造として含んでいるポリフェニレンエーテルが好ましい。
【0060】
ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレン)エーテルは、原料としての実用上の観点から、30℃のクロロホルム溶液で測定した固有粘度が0.3〜0.7であることが好ましく、更に好ましくは0.35〜0.6である。固有粘度の異なる2種以上のポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレン)エーテルを用いることによって、分子量分布を広くすることも可能である。
【0061】
ポリフェニレンエーテルの共重合体としては、2,6−ジメチルフェノールと2,3,6−トリメチルフェノールとの共重合体、2,6−ジメチルフェノールとo−クレゾールとの共重合体、2,6−ジメチルフェノールと2,3,6−トリメチルフェノールおよびo−クレゾールとの共重合体等が挙げられる。
【0062】
上述した(A)ポリフェニレンエーテル樹脂は、1種単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。
【0063】
本実施形態に用いる(A)ポリフェニレンエーテル樹脂の還元粘度(30℃のクロロホルム0.5g/dL溶液)は、0.2〜0.6の範囲であることが好ましく、0.25〜0.55の範囲であることがより好ましい。
【0064】
本実施形態において、(A)ポリフェニレンエーテル樹脂の還元粘度は、(A)ポリフェニレンエーテルを、0.5g/dLのクロロホルム溶液として、ウベローデ粘度管を用いて30℃で測定された還元粘度(ηsp/c)である。還元粘度の単位はdL/gである。
【0065】
本実施形態に用いる(A)ポリフェニレンエーテル樹脂の重量平均分子量は、特に限定されず、下限値は、靭性と耐薬品性の観点から、30,000以上が好ましく、より好ましくは35,000以上であり、更に好ましくは40,000以上である。上限値は、成形加工性の観点から、100,000以下である。
【0066】
本実施形態に用いる(A)成分の重量平均分子量は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)による測定を行い、移動相としてテトラヒドロフランを用い、標準ポリスチレンのピーク分子量を使用して作成した検量線を使用して求めた重量平均分子量である。
【0067】
本実施形態に用いる(A)成分の水酸基濃度は、特に限定されず、単量体100単位あたり0.8個以上であることが好ましく、より好ましくは1.0個以上であり、更に好ましくは1.5個以上である。当該水酸基濃度をかかる範囲とすることで成形時の熱安定性を向上できる。
【0068】
水酸基濃度の測定は、Journal of Applied Polymer Science: Applied Polymer Symposium34,103−117(1978)に記載された方法に準拠して行うことができる。単位は単量体(2,6−キシレノール)100単位あたりの水酸基個数である。測定に際しては、日立ハイテクノロジー社製のU3310型分光光度計を用いることができる。
【0069】
本実施形態では、(A)成分として用いるポリフェニレンエーテルの水酸基濃度は、フェノール性化合物を重合する条件と重合停止後のキノン反応の条件によって変化する。重合の例としては、ポリ(2 ,6−ジメチル−1,4−フェニレン)エーテルについて特開平2000−281776号公報、特開平2000−281778号公報に記載されており、重合時に2,6−ジメチルフェノールを追添する量および時間によって生成するキノン化合物量が変化する。一般に、追添する量が多いほど、追添時間が短いほどキノン化合物の生成量が多くなる。重合停止後のキノン反応は、温度および時間によって末端水酸基濃度が変化し、温度が高いほど、時間が長いほど水酸基濃度が高くなる。
【0070】
これに関して、本実施形態に用いる(A)成分の水酸基濃度を単量体100単位あたり0.8個以上とすることによって、成形時の熱安定性を向上させることができる。
【0071】
本実施形態では、(A)成分として用いるポリフェニレンエーテルの一部として、不飽和カルボン酸又はその誘導体で変性されたポリフェニレンエーテル樹脂を用いることができる。変性ポリフェニレンエーテルは、特に限定されず、公知のものを用いることができる。例えば、変性ポリフェニレンエーテル樹脂については、特開平2−276823号公報、特開昭63−108059号公報、特開昭59−59724号公報等に記載されている。
【0072】
変性ポリフェニレンエーテル樹脂の製造方法は特に限定されず、公知の方法によって得ることができる。例えば、ラジカル開始剤の存在下又は非存在下において、ポリフェニレンエーテルに不飽和カルボン酸やその誘導体を溶融混練して反応させることによって製造できる。あるいは、ポリフェニレンエーテルと不飽和カルボン酸やその誘導体とをラジカル開始剤存在下又は非存在下で有機溶剤に溶かし、溶液下で反応させることによって製造できる。
【0073】
不飽和カルボン酸又はその誘導体としては、特に限定されず、公知のものを用いることができる。例えば、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、ハロゲン化マレイン酸、シス−4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸、エンド−シス−ビシクロ[2.2.1]−5−ヘプテン−2,3−ジカルボン酸等や、これらジカルボン酸の酸無水物、エステル、アミドおよびイミド等;アクリル酸、メタクリル酸等や、これらモノカルボン酸のエステルやアミド等が挙げられる。
【0074】
また、飽和カルボン酸であるが変性ポリフェニレンエーテルを製造する際の反応温度でそれ自身が熱分解し、誘導体となり得る化合物も用いることができる。具体的には、リンゴ酸、クエン酸等が挙げられる。これらは1種又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0075】
(A)ポリフェニレンエーテル樹脂の配合量は、(A)+(B)+(C)=100重量%に対して、59〜98重量%であることが好ましく、60〜98重量%であることがより好ましく、70〜95重量%であることが更に好ましい。このような配合量とすることにより、上記フォギング試験を行った後のガラス板のヘイズ値が1.0以下とすることができ、高温環境下でもガスの発生を抑制することができる。
【0076】
後述する(B)ポリスチレン樹脂と(C)ゴム状重合体との配合量については、それぞれ、1〜40重量%であることが好ましく、1〜20重量%であることがより好ましく、1〜15重量%であることが更に好ましい。
【0077】
上記の配合量である樹脂組成物は、成形流動性及びフォギング性等の特性に優れる。したがって、該樹脂組成物からなる反射鏡は、金属蒸着された部分の成形品厚みが平均2mm以下という薄肉であっても、金属蒸着された部分の表面粗さが良好であり、表面外観に優れ、また、上記フォギング試験を行った後のガラス板のヘイズ値が1.0以下であり、高温環境下でもガスの発生を抑制することができる。さらに、前記樹脂組成物からなる反射鏡は、表面反射率やその保持率に優れ、耐熱性や機械特性に優れる傾向にある。
【0078】
<(B)成分>
本実施形態において、(A)ポリフェニレンエーテル樹脂と組み合わせて用いられる(B)ポリスチレン樹脂は、特に限定されず、公知のものを用いることができ、スチレン系化合物の単独重合体や、スチレン系化合物、およびスチレン系化合物と共重合可能な化合物を、ゴム質重合体存在又は非存在下に重合して得られる重合体が挙げられる。
【0079】
スチレン系化合物としては、特に限定されず、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、モノクロロスチレン、p−メチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、エチルスチレン等が挙げられる。それらの中でも、原材料の実用性の観点から、スチレンが好ましい。
【0080】
また、スチレン系化合物と共重合可能な化合物としては、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート等のメタクリル酸エステル類;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等の不飽和ニトリル化合物類;無水マレイン酸等の酸無水物等が挙げられ、スチレン系化合物と共に使用される。また、ゴム質重合体としては共役ジエン系ゴムおよび共役ジエンと芳香族ビニル化合物とのコポリマーまたはこれらの水添物あるいはエチレン−プロピレン共重合体系ゴム等が挙げられる。
【0081】
本実施形態において、特に好適な(B)ポリスチレン樹脂は、
(B−1)ゴム強化されていないポリスチレン樹脂と、
(B−2)アクリロニトリル成分を含むポリスチレン系樹脂とを含む。
【0082】
前記(B−2)としては、アクリロニトリル成分を5〜15質量%含有するスチレン−アクリロニトリル共重合体樹脂であることが好ましい。
【0083】
前記(B−1)と(B−2)とを含む樹脂組成物は、成形流動性及びフォギング性等の特性に優れる。したがって、該樹脂組成物からなる反射鏡は、金属蒸着された部分の成形品厚みが平均2mm以下という薄肉であっても、金属蒸着された部分の表面粗さが良好であり、流動性に優れ、また、上記フォギング試験を行った後のガラス板のヘイズ値が1.0以下であり、高温環境下でもガスの発生を抑制することができる。さらに、前記樹脂組成物からなる反射鏡は、表面反射率やその保持率に優れ、耐熱性や機械的物性に優れる傾向にある。
【0084】
本実施形態に用いる(B−1)のメルトフローレート(MFR)は、特に限定されず0.5g/10分以上が好ましく、より好ましくは1g/10分以上であり、更に好ましくは2g/10分以上である。
【0085】
本実施形態に用いる(B−1)成分のメルトフローレート(MFR)は、試験規格ISO 1133に準じ、(B−1)成分のペレットを、200℃/5kgfの条件で測定した値である。
【0086】
本実施形態に用いる(B−2)成分であるスチレン−アクリロニトリル共重合体樹脂は、アクリロニトリル成分を、好ましくは5〜15質量%、より好ましくは7〜11質量%、さらに好ましくは8〜10質量%、特に好ましくは8.5〜9.5質量%含有する。
【0087】
該スチレン−アクリロニトリル共重合体において、流動性と耐熱性とのバランス改善の観点から、前記アクリロニトリル成分の含有量は5質量%以上が好ましい。また、相溶性および機械的物性改良の観点から、前記アクリロニトリル成分の含有量は15質量%以下が好ましい。
【0088】
該スチレン−アクリロニトリル共重合体は、メルトフローレートが5〜100g/10分であることが好ましく、より好ましい範囲は10〜90g/10分、さらに好ましい範囲は20〜80g/10分である。該スチレン−アクリロニトリル共重合体のメルトフローレートが高いほど、組成物の流動性も優れるが、充分な機械的物性保持の観点から100g/10分以下であることが好ましい。
【0089】
本実施形態に用いる(B−2)成分のメルトフローレート(MFR)は、ASTMのD−1238に準拠し、220℃、10kg荷重で測定した値である。
【0090】
本実施形態において、(B−1)成分と(B−2)成分との質量比率は、特に限定されず、所望のフォギング性を考慮して、任意の範囲で選ぶことができる。特に、本実施形態において、上記フォギング試験におけるガラス板のヘイズ値が1.0以下である場合は、実用に耐えうる観点から、(B−1)成分と(B−2)成分との質量比率は、好ましくは(B−1)/(B−2)=5/95〜95/5であり、より好ましくは20/80〜80/20であり、さらに好ましくは30/70〜70/30である。
【0091】
<(C)成分>
本実施形態で用いられる(C)ゴム重合体は、水素添加ブロック共重合体である。該水素添加ブロック共重合体は、ビニル芳香族炭化水素を主体とする重合体ブロックと、ジエン化合物を主体とする重合体ブロックと、を含むブロック共重合体の水素添加物である。
【0092】
本実施形態において、「主体とする」とは、単量体がブロック中に50質量%以上含まれていることを示す。好ましくは、単量体がブロック中に55質量%以上含まれていることであり、更に好ましくは60質量%以上含まれていることである。
【0093】
本実施形態で用いられるビニル芳香族炭化水素は、特に限定されず、公知のものを用いることができる。例えば、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−ターシャルブチルスチレン等のアルキルスチレン、パラメトキシスチレン、ビニルナフタレン等が挙げられ、1種のみならず2種以上を用いてもよい。それらの中でも、原材料の実用性の観点から、スチレンが好ましい。これらはビニル芳香族炭化水素由来の単量体として用いることができる。
【0094】
ビニル芳香族炭化水素を主体とする重合体ブロック中における、ビニル芳香族炭化水素由来の単量体単位の含有量は、50質量%以上であればよく、好ましくは55質量%以上、更に好ましくは60質量%以上である。かかる含有量とすることで耐剥離性を向上させることができる。
【0095】
本実施形態で用いられるジエン化合物は、特に限定されず、公知のものを用いることができる。例えば、1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン(即ちイソプレン)、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、2−メチル−1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエンが挙げられ、1種のみならず2種以上を用いてもよい。それらのなかでも、靭性の向上の観点から、1,3−ブタジエンおよびイソプレンが好ましい。これらはブタジエン化合物由来の単量体単位として用いることができる。
【0096】
ジエン化合物を主体とする重合体ブロック中における、ブタジエン化合物由来の単量体単位の含有量は、50質量%以上であればよく、好ましくは55質量%以上、更に好ましくは60質量%以上である。かかる含有量とすることで靭性を向上することができる。
【0097】
本実施形態に用いる(C)成分である水素添加ブロック共重合体の、水素添加前のブロック共重合体の製造方法としては、例えば特公昭36−19286号公報、特公昭43−17979号公報、特公昭46−32415号公報、特公昭49−36957号公報、特公昭56−28925号公報、特開昭59−166518号公報等に記載された方法が挙げられる。
【0098】
これらの方法により得られるブロック共重合体は、例えば、下記一般式(1)〜(7)で表される。
【0099】
(a−b)n ・・・(1)
a−(b−a)n ・・・(2)
b−(a−b)n ・・・(3)
(式中、aはビニル芳香族炭化水素を主体とする重合体ブロックを表し、bはジエン化合物を主体とする重合体を表す。aブロックとbブロックとの境界は必ずしも明瞭に区別される必要はない。nは1以上の整数であり、好ましくは1〜5の整数である。)
[(b−a)n(m+1)−X ・・・(4)
[(a−b)n(m+1)−X ・・・(5)
[(b−a)n−b](m+1)−X ・・・(6)
[(a−b)n−a](m+1)−X ・・・(7)
(式中、a、b、nは、式(1)〜(3)と同じ定義であり、Xは例えば四塩化ケイ素、四塩化スズ、エポキシ化大豆油、2〜6官能のエポキシ基含有化合物、ポリハロゲン化炭化水素、カルボン酸エステルおよびジビニルベンゼン等のポリビニル化合物のカップリング剤の残基、又は多官能有機リチウム化合物等の開始剤の残基を表す。また、mは1以上の整数であり、好ましくは1〜10の整数である。)
共重合体ブロック中のビニル芳香族炭化水素由来の単量体単位は均一に分布していてもよいし、テーパー状に分布していてもよい。共重合体部分には、ビニル芳香族炭化水素由来の単量体単位が均一に分布している部分と、テーパー状に分布している部分と、をそれぞれ複数個含有していてもよい。
【0100】
本実施形態で用いることができる水素添加ブロック共重合体は、例えば、上記一般式(1)〜(7)で表されるブロック共重合体の水素添加物を任意の割合で併用できる。
【0101】
本実施形態で使用する(C)水素添加ブロック共重合体は、上記のブロック共重合体を水素添加すること(水素添加反応)により得られる。水素添加反応に使用される触媒としては、特に限定されず、公知のものを用いることができる。具体的には、
(i)Ni、Pt、Pd、Ru等の金属をカーボン、シリカ、アルミナ、ケイソウ土等に担持させた担持型不均一系触媒、
(ii)Ni、Co、Fe、Cr等の有機酸塩又はアセチルアセトン塩等の遷移金属塩と有機アルミニウム等の還元剤とを用いる、いわゆるチーグラー型触媒、
(iii)Ti、Ru、Rh、Zr等の有機金属化合物等のいわゆる有機金属錯体等、の均一触媒が挙げられる。
【0102】
水素添加反応の方法は、特に限定されず、公知の方法によって行うことができる。例えば、特公昭42−8704号公報、特公昭43−6636号公報、特公昭63−4841号公報、特公平1−37970号公報、特公平1−53851号公報、特公平2−9041号公報に記載された方法が挙げられ、炭化水素溶媒中で水素添加触媒の存在下に水素添加して、水素添加物を得ることができる。その際、ブロック共重合体の水素添加率は、反応温度、反応時間、水素供給量および触媒量等を調整することによりコントロールできる。
【0103】
本実施形態に用いる(C)成分である水素添加ブロック共重合体において、ジエン化合物に基づく不飽和二重結合の全水素添加率は、特に限定されないが、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、更に好ましくは99%以上である。全水素添加率をかかる範囲とすることで、成形時の熱安定性、耐薬品性、流動性が優れ、良好な反射鏡とすることができる。
【0104】
ここで、ジエン化合物に基づく不飽和二重結合の全水素添加率とは、水素添加前のブロック共重合体中に組み込まれているジエン化合物に基づく不飽和二重結合の含有量に対する、水素添加された不飽和二重結合の割合をいう。
【0105】
本実施形態において、ブロック共重合体中のビニル芳香族炭化水素に基づく芳香族二重結合の水素添加率は、特に限定されないが、好ましくは50%以下、より好ましくは30%以下、更に好ましくは20%以下である。当該水素添加率をかかる範囲とすることで、成形時の熱安定性を向上させることができる。
【0106】
本実施形態において、水素添加率は、核磁気共鳴装置(NMR)により測定できる。
【0107】
本実施形態では、上記の水素添加ブロック共重合体の溶液から、公知の方法によって脱溶剤することにより、本実施形態に用いる(C)水素添加ブロック共重合体を得ることができる。必要に応じ、金属類を脱灰する工程を採用することができる。また、必要に応じ、反応停止剤、酸化防止剤、中和剤、界面活性剤等を用いてもよい。
【0108】
本実施形態で使用する(C)水素添加ブロック共重合体は、窒素、酸素、ケイ素、リン、硫黄およびスズからなる群より選ばれる少なくとも1種を含む極性基含有官能基が重合体に結合した変性重合体や水素添加ブロック共重合体を、無水マレイン酸等の変性剤で変性させた変性ブロック共重合体も含まれる。
【0109】
また、本実施形態に用いる(C)水素添加ブロック共重合体には、軟化剤あるいは加工助剤として公知のナフテン系、パラフィン系のプロセスオイルおよびこれらの混合オイルを配合できる。
【0110】
本実施形態に用いる(C)ゴム重合体は、
(C−1)重量平均分子量が200,000〜500,000である水素添加ブロック共重合体と、
(C−2)重量平均分子量が10,000〜150,000である水素添加ブロック共重合体とを含むことが好ましい。
【0111】
前記(C−1)と(C−2)とを含むゴム重合体を含む樹脂組成物は、成形流動性及びフォギング性等の特性に優れる。したがって、該樹脂組成物からなる反射鏡は、金属蒸着された部分の成形品厚みが平均2mm以下という薄肉であっても、金属蒸着された部分の表面粗さが良好であり、表面外観に優れ、また、上記フォギング試験を行った後のガラス板のヘイズ値が1.0以下であり、高温環境下でもガスの発生を抑制することができる。さらに、前記樹脂組成物からなる反射鏡は、表面反射率やその保持率に優れ、耐熱性や機械的物性に優れる傾向にある。
【0112】
さらに、本実施形態に用いる(C)成分において、(C−1)水素添加ブロック共重合体は、ビニル芳香族系炭化水素由来の単量体の含有量が10質量%以上40質量%未満であり、かつ重量平均分子量が200,000〜500,000であることが好ましく、(C−2)水素添加ブロック共重合体は、ビニル芳香族系炭化水素由来の単量体の含有量が40質量%以上90質量%以下であり、かつ重量平均分子量が10,000〜150,000であることが好ましい。かかる(C−1)および(C−2)成分を含有することにより、靭性に優れるだけでなく(C)成分のモルフォロジーを安定化させることができ、耐剥離性を向上させることができる。
【0113】
ビニル芳香族炭化水素由来の単量体の含有量の調整は、ビニル化剤としてジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジフェニルエーテル、テトラヒドロフラン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル等のエーテル化合物、トリメチルアミン、トリエチルアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン等の第3級アミン等をブロック共重合体の製造時に添加すること等によって行うことができる。ビニル芳香族炭化水素由来の単量体の含有量は、核磁気共鳴装置(NMR)によって測定できる。
【0114】
(C−1)ブロック共重合体中のビニル芳香族炭化水素由来の単量体の含有量は、好ましくは10質量%以上40質量%未満であり、より好ましくは15質量%以上40質量%未満であり、さらに好ましくは20質量%以上35質量%以下である。また、(C−1)水素添加ブロック共重合体の重量平均分子量は、GPCによる測定において、標準ポリスチレン換算で200,000〜500,000であり、好ましくは200,000〜400,000、更に好ましくは250,000〜300,000である。
【0115】
(C−2)ブロック共重合体中のビニル芳香族炭化水素由来の単量体の含有量は、好ましくは40質量%以上90質量%以下であり、より好ましくは45質量%以上85質量%以下 、さらに好ましくは50質量%以上80質量%以下である。また、(C−2)水素添加ブロック共重合体の重量平均分子量は、GPCによる測定において、標準ポリスチレン換算で10,000〜150,000、好ましくは20,000〜150,000、更に好ましくは30,000〜150,000である。
【0116】
本実施形態に用いる(C)成分の重量平均分子量は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)による測定を行い、移動相としてクロロホルムを用い、標準ポリスチレンのピーク分子量を使用して作成した検量線を使用して求めた重量平均分子量である。
【0117】
本実施形態において、(C−1)成分と(C−2)と成分の質量比率は、特に限定されず、所望のフォギング性や耐剥離性などを考慮して、任意の範囲で選ぶことができる。フォギング試験におけるガラス板のヘイズ値を1.0以下とする観点から、(C−1)成分と(C−2)成分との質量比率は、好ましくは(C−1)/(C−2)=5/95〜95/5であり、より好ましくは、5/95〜80/20であり、さらに好ましくは5/95〜50/50である。
【0118】
更に、衝撃性や靭性等の向上の観点から、本実施形態の高輝度低ガス薄肉樹脂反射鏡の要求性能を満たす範囲で、他のエラストマー成分を併用することもできる。
【0119】
<その他の添加剤>
本実施形態に用いる樹脂組成物には、必要に応じて本発明の効果を阻害しない範囲で、その他の公知の添加剤を添加してもよい。1またはそれ以上の通常の添加剤、例えば、熱、および紫外線劣化に対する安定剤及び禁止剤、潤滑剤および離型剤、染料及び顔料を含む着色剤、核形成剤、発泡剤、可塑剤、無機充填材、帯電防止剤などがある。具体的な例としては、組成物の安定性を向上させる目的で、熱安定剤(酸化防止剤)を添加することが好ましい。熱安定剤としては、特に限定されず、公知のものを用いることができる。例えば、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤、リン系酸化防止剤等が挙げられ、それらを単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。熱安定性を向上させる目的で、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、硫化亜鉛等の無機化合物を添加することも効果的である。
【0120】
耐光性を向上させる目的で、紫外線吸収剤、光安定剤等の安定剤を添加することが好ましい。紫外線吸収剤、光安定剤としては、特に限定されず、公知のものを用いることができる。例えば、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−t−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール等のベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤;2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン系紫外線吸収剤;ヒンダードアミン系光安定剤等が挙げられる。
【0121】
射出成形時の金型からの離型性改良剤として、ポリオレフィン単独重合体又は共重合体を添加することが好ましい。特に、より優れた離型性を有する観点から、ポリエチレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−ブテン共重合体、エチレン−オクテン共重合体等がより好ましい。
【0122】
難燃性改良として、リン酸エステル等の難燃剤;三酸化アンチモン等の難燃助剤;チャー化促進剤;赤燐、上記以外の有機及び無機の各種リン化合物;メラミン、メロン等の環状窒素化合物やその誘導体;ホスファゼン化合物、ハロゲン化合物、水酸化マグネシウムや水酸化アルミニウム等の水酸化物;ホウ酸亜鉛化合物、スズ酸亜鉛化合物、三酸化アンチモン、酸化鉄等の金属酸化物;シリカ、シリカアルミナ等の無機ケイ素化合物;テトラフルオロエチレン系ポリマー、シリコーン化合物、フェノール化合物やフェノール樹脂類、多価アルコール類、糖類等を添加してもよい。
【0123】
更に、本実施形態では、有機又は無機の各種染顔料等の着色剤、滑剤としてのパラフィンワックス、マイクロクリスタンワックス、低分子量ポリエチレンワックス等のワックス類、高級脂肪酸、その金属塩又はそのエステル、高級アルコール等、各種帯電防止剤、導電性カーボン、可塑剤等を添加できる。
【0124】
《樹脂組成物の製造方法》
本実施形態に用いる樹脂組成物の製造方法は、例えば、前記各成分を溶融混練する方法が挙げられる。前記樹脂組成物を製造するための、前記各成分の溶融混練の条件については、本実施形態に所望の効果を充分に発揮し得る樹脂組成物を得るという観点から、二軸押出機を用いた場合に、シリンダー温度290〜350℃、スクリュー回転数50〜500rpm、およびベント真空度100Torr以下の条件で溶融混練することが好適である。
【0125】
本実施形態に用いる樹脂組成物の製造方法において、二軸押出機を用いることによって大量且つ安定的に樹脂組成物を調製できる。
【0126】
≪高輝度・低ガス性薄肉樹脂反射鏡の製造方法≫
本実施形態の高輝度・低ガス性薄肉樹脂反射鏡は、例えば、上述の樹脂組成物を成形することにより製造することができる。当該成形法について制限はされるものでは無いが、射出成形、押出成形、真空成形、圧空成形等が好適である。さらに、当該成形時に、特殊な処方として、特許第3786972号明細書に記載の射出成形システムおよびペレット供給ユニットを使用すると、さらに高せん断がかかるゲートでも安定して成形品が得られる。特に、ゲート厚み0.5mm以下である場合に、従来と比較して安定して成形品が得られる効果が顕著である。さらに厚み2.0mm以下のゲートである場合に、シルバー低減に効果があり、外観に優れた成形品が得られる。
【0127】
なお、本実施形態において、「ゲート」とは、金型において溶融樹脂がキャビティーに射出される湯口のことをいう。
【0128】
通常、樹脂組成物から成形品を得る際に、成形品肉厚やゲートの肉厚が薄くなることで、せん断により発熱する傾向にある。その影響度合いは、用いる樹脂組成物の種類や成形品の種類によって異なる。一般に、ポリフェニレンエーテル(PPE)のアロイは、せん断による発熱のため、配合剤が不安定化して、成形品にシルバーが発生したり、ひどいときには、剥離現象が起こることがある。本実施形態の高輝度・低ガス性薄肉樹脂反射鏡は、特にゲートの厚みが薄かったり、成形品が薄肉である場合に、上述した問題点を効果的に抑制できる。具体的には、ゲートの厚みが2mm以下であっても剥離現象が低減できる。また、ゲートの厚みが1.5mm以下、1.0mm以下、0.5mm以下の場合であっても、キャビティー内の成形品に剥離現象が起こり難く、またキャビティー内に形成される成形品にシルバー現象が起こらない傾向にあり、安定した成形品が得られる傾向にある。
【0129】
また、本実施形態の高輝度・低ガス性薄肉樹脂反射鏡は、ペレット供給機に減圧機構を有する成型機を用いて前記樹脂組成物を成形する工程を含む製造方法により得られること好ましい。
【0130】
当該成形時の圧力は、好ましくは300Torr以下であり、さらに好ましくは100Torr以下である。
【0131】
さらに、二酸化炭素を用いた射出成形法(特開2002−79540号公報)の技術を併用することが可能である。当該射出成形法において、二酸化炭素の充填圧力は20MPaまで可能であるが、実用的には、10〜15MPa程度であることが好ましい。また、二酸化炭素の樹脂への吸収量は、5質量%以下であることが好ましく、実用的には、2〜3質量%であることがより好ましい。当該射出成形法は、射出圧力が20%以上低減するにともない、流動性が20%以上向上するため、薄肉流動により有効な手段である。
【0132】
本実施形態の高輝度・低ガス性薄肉樹脂反射鏡は、成形機のシリンダー温度300℃〜340℃、金型温度90℃〜150℃の条件で、前記樹脂組成物を成形する工程を含む製造方法により得られることが好ましい。当該製造方法により、金属蒸着された部分の表面粗さ、および金属蒸着された部分(蒸着面)の初期表面反射率を、上述した範囲内とした反射鏡を得ることができる。当該製造方法における条件は、より好ましくは、シリンダー温度310℃〜340℃、金型温度100℃〜150℃、さらに好ましくは、シリンダー温度320℃〜340℃、金型温度110℃〜150℃である。
【0133】
上述した製造方法により得られる反射鏡は、金属蒸着された部分の成形品厚みが平均2mm以下という薄肉であっても、金属蒸着された部分の表面粗さが良好であり、表面外観に優れ、また、上記フォギング試験を行った後のガラス板のヘイズ値が1.0以下であり、高温環境下でもガスの発生を抑制することができる。さらに、上述した製造方法により得られる反射鏡は、表面反射率やその保持率に優れ、耐熱性や機械的物性に優れる傾向にある。
【0134】
本実施形態の高輝度・低ガス性薄肉樹脂反射鏡は、金属蒸着がなされたものである。金属蒸着する方法については、制限を受けるものではないが、プライマーを必要としないダイレクト蒸着法であることが好ましい。また、前記金属蒸着はアルミ蒸着であることが好ましい。
【0135】
以下、ランプリフレクターを例にプライマーの有無による蒸着方法について、説明する。
【0136】
一般に金属蒸着の手法としては、「ドライプレーティング」(所謂、乾式の金属メッキ法)が挙げられ、具体的には真空蒸着法、イオンプレーティング法(イオンメッキ法)やこれらの中間的技術であるスパッタリング法が例示できる。
【0137】
以下に真空蒸着法を一例としてその具体的製法を以下に示す。
(I)射出成形された反射鏡を、イソプロピルアルコール等の溶剤に浸す(Dipping)などすることによって脱脂し、さらに必要によっては60〜120℃で乾燥する、
(II)脱脂後の成形品の表面に必要ならば、プライマー(アンダーコート)を塗布、硬化させる、
(III)該成形品を支持用治具に取り付け、真空容器に挿入した後、真空排気し、所定の圧力下で蒸発させた金属アルミニウム等の蒸発金属の蒸着を開始する。この際、必要に応じ取り付けた治具を蒸発源の上方で自転、公転させたりする。金属膜の厚みは0.05〜0.1μmである、
(IV)蒸着後、必要によってはトップコーティングを施し、蒸着面を保護する、等の方法による。
【0138】
前記のプライマーは、(イ)該反射面の表面平滑性を向上する、(ロ)金属膜と成形品表面との密着性を向上する等を目的として行われる。その膜厚は約10〜50μm程度である。プライマー塗料としては、例えば、メラミンアルキッド系、ウレタン系、アクリル系が一般的で、アクリル系はUV硬化型が、その他のものは加熱硬化型が主体である。本実施形態の高輝度・低ガス性薄肉樹脂反射鏡において使用するプライマー塗料としては耐熱性に優れた硬化膜が得られるウレタン系が好ましい。特に、ポリブタジエンを主鎖とする長鎖ジオールと、フェノール等でブロックされたブロッキングイソシアネートとの反応(硬化、焼き付け条件は150℃以上好ましくは180℃以上で1時間以上加熱する)により得られるものが好ましい。
【0139】
また、本実施形態の高輝度・低ガス性薄肉樹脂反射鏡は、プライマーを用いずに金属蒸着することが可能である。プライマーを用いない場合は、基材との密着性に優れるイオンプレーティング法(イオンメッキ法)を採用することが好ましい。
【0140】
≪用途≫
本実施形態の高輝度・低ガス性薄肉樹脂反射鏡は、移動体に付属する反射鏡として用いることができる。当該移動体は、内燃機関またはモーターを動力とすることが好ましい。前記移動体としては、例えば、飛行体、陸上走行体、海上走行体または水中走行体が挙げられる。さらに前記移動体は、車輪を有することがより好ましい。
【0141】
本実施形態の高輝度・低ガス性薄肉樹脂反射鏡は、光源の反射鏡として用いることができる。前記光源の種類は、特に制限することはないが、蛍光灯、水銀ランプ、ハロゲンランプ、ディスチャージランプ、LEDランプなどが挙げられる。前記光源は、ハロゲンランプ、ディスチャージランプまたはLEDランプであることが好ましい。
【0142】
本実施形態の高輝度・低ガス性薄肉樹脂反射鏡は、エクステンションリフレクター、リフレクター、その他ランプ部品またはミラーであることが好ましい。特に、本実施形態の高輝度・低ガス性薄肉樹脂反射鏡は、車輪のついた車両に用いられることが好ましく、例えば、車両用エクステンションリフレクター、車両用リフレクター、車両用ランプ、車両用ミラーとして用いることができる。
【実施例】
【0143】
以下、本発明について、実施例および比較例を挙げて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0144】
実施例および比較例で得られた樹脂組成物およびその成形体の物性の測定方法ならびに原材料を下記に示す。
【0145】
実施例および比較例中の各測定値は以下の方法によって求めた。
【0146】
(1)荷重たわみ温度(HDT)(DTUL:高荷重 1.82MPa)
ISO 75に準拠した方法で測定した。
【0147】
(2)成形流動性(SSP)
東芝機械社製の射出成形機:IS−80Cを用いて、実施例および比較例で得られた樹脂組成物により作製した厚み0.16cmのタンザク(両端ゲート)試験片のショートショットプレッシャー(SSP)をゲージ圧で測定した。当該ゲージ圧が低い程、成形流動性に優れると判断した。
【0148】
(3)表面反射率
実施例および比較例で作成した蒸着品について、アルミ蒸着された部分(蒸着面)の表面反射率を、有限会社 東京電色社製の反射率測定計 TR―1100AD/Sで測定した。蒸着面における当該測定箇所としては、フラット形状でかつ、突起物もない部分を3箇所選定した。当該測定は、常温で行われ、前記3箇所の測定結果の平均値を表面反射率とした。
【0149】
また、当該測定は、150℃・24時間および170℃・24時間の条件でオーブンを用いて熱エージング処理した後の蒸着品についても同様に実施した。
【0150】
また、表面反射率の保持率は、「熱エージング処理後の表面反射率/熱エージング処理前の表面反射率×100」とした。
【0151】
(4)引張強度試験および引張伸び試験
引張強度試験および引張伸び試験は ISO 527−1の測定方法に準拠した方法により23℃環境下で実施した。
【0152】
(5)曲げ強度試験および曲げ弾性率試験
曲げ強度試験および曲げ弾性率試験は、ISO 178に準拠した方法により23℃環境下で実施した。
【0153】
(6)シャルピー衝撃強度試験
シャルピー衝撃強度試験は、ISO 179に準拠した方法により23℃環境下で実施した。
【0154】
(7)シルバー/曇り判定
実施例および比較例で作成した成形品(金属蒸着前)および蒸着品について、シルバーや曇りの発生の度合いを目視で判定した。シルバーや曇りが著しく発生せず、外観に問題が認められないものを○とし、シルバーや曇りが著しく発生し、外観に問題あるものを×で判定した。
【0155】
また、当該評価は、150℃・24時間および170℃・24時間の条件でオーブンを用いて熱エージング処理した後の蒸着品についても同様に実施した。
【0156】
(8)フォギング性(ヘイズ値)
実施例および比較例で得られた樹脂組成物のペレット50g(±1g)を、ガラス製サンプル瓶の中に入れ、スライドガラスを前記サンプル瓶の口を完全に覆うように載せて蓋をし、温度設定(150℃(±5℃)、または170℃(±5℃))の東洋精機製作所社製オーブン中(ダンパー開度 ゼロ)に24時間静置し、加熱した。当該加熱後、サンプル瓶の口を覆っていた部分のスライドガラスの曇り(ヘイズ値)を、日本電色工業社製のヘイズメーター NDH2000型を用いて、測定した。
【0157】
(9)表面粗さ
実施例および比較例で作成した蒸着品について、金属蒸着された部分(蒸着面)の表面粗さを、株式会社アルバック社製の表面形状測定器「DEKTAK 8」で測定した。なお、当該測定結果の数値として、蒸着面中央部分の任意の3箇所(N=3)の平均値(表面の平均粗さRa)を記載した。
【0158】
表面反射率の場合と同様に、150℃・24時間および170℃・24時間の条件でオーブンを用いて熱エージング処理した後の蒸着品についても当該測定を実施した。
【0159】
[原材料1]
ポリフェニレンエーテル樹脂(A)
(A−1)還元粘度(ηsp/c値):0.42、残留揮発分:1.0質量%のポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレン)エーテル。
【0160】
(A−2)還元粘度(ηsp/c値):0.54、残留揮発分:0.6質量%のポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレン)エーテル。
【0161】
(A−3)還元粘度(ηsp/c値):0.31、残留揮発分:0.8質量%のポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレン)エーテル。
【0162】
本実施例において、(A)ポリフェニレンエーテル樹脂の還元粘度(ηsp/c)は、(A)ポリフェニレンエーテルを、0.5g/dLのクロロホルム溶液として、ウベローデ粘度管を用いて30℃で測定した。還元粘度の単位はdL/gである。
【0163】
本実施例において、(A)ポリフェニレンエーテル樹脂における残留揮発分は、真空乾燥機180℃で3時間乾燥した後の質量の減少割合(元の質量に対して減少した質量の割合)として算出した。
【0164】
[原材料2]
ポリスチレン樹脂(B)
(B−1)ゼネラルパーパスポリスチレン(ゴム成分を含まないポリスチレン。商品名:PSJ−ポリスチレン685、PSジャパン社製)。当該(B−1)のメルトフローレート(MFR)(試験規格ISO 1133 ペレット 200℃/5kgf)は、2.1g/10分であった。
【0165】
(B−2)スチレン−アクリロニトリル樹脂
スチレン−アクリロニトリル樹脂(B−2)を以下のとおり製造した。
【0166】
アクリロニトリル4.7質量部、スチレン73.3質量部、エチルベンゼン22質量部および重合開始剤としてのt−ブチルパーオキシ−イソプロピルカーボネート0.02質量部よりなる混合液を毎時2.5リットルの流速で容量5リットルの完全混合型反応機に連続的に供給し、142℃で重合を行なった。得られた重合液を、連続してベント付き押出機に導入し、260℃、40Torrの条件下で未反応モノマーおよび溶剤を除去し、ポリマーを得た。得られたポリマーを連続して冷却固化、細断して粒子状のスチレン−アクリロニトリル樹脂(B−2)を得た。この共重合体樹脂(B−2)は、赤外吸収スペクトル法により組成分析した結果、アクリロニトリル単位9質量%およびスチレン単位91質量%であり、メルトフローレート(ASTMのD−1238準拠、220℃、10kg荷重で測定)が78g/10分であった。
【0167】
[原材料3]
ゴム重合体(C)
(C−1)ビニル芳香族系炭化水素と共役ジエン化合物とのブロック共重合体の水素添加ブロック共重合体(SEBS)の製造
攪拌機およびジャケット付きの内容量100リットルのオートクレーブを洗浄、乾燥、窒素置換し、当該オートクレーブに予め精製したスチレン15質量部を含むシクロヘキサン溶液を投入した。次いでn−ブチルリチウムとテトラメチルエチレンジアミンとを添加し、70℃で1時間重合した後、予め精製したブタジエン70質量部を含むシクロヘキサン溶液を加えて1時間、さらにスチレン15質量部を含むシクロヘキサン溶液を加えて1時間重合して、ブロック共重合体溶液を得た。
【0168】
得られたブロック共重合体溶液の一部をサンプリングし、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネ−トを、ブロック共重合体100質量部に対して0.3質量部添加し、その後溶媒を加熱除去した。次に、残りのブロック共重合体溶液を用いて、ジ−p−トリスビス(1−シクロペンタジェニル)チタニウムとn−ブチルリチウムとを水添触媒として、温度70℃で水素添加を行い、水素添加ブロック共重合体(C−1)を得た。水素添加率は、供給する水素ガス量を流量計で測定し、目標水添率を達成した時点でガスの供給を止めることでコントロールした。水素添加ブロック共重合体(C−1)の物性は以下のとおりであった。
【0169】
(C−1):ポリスチレン−水素添加されたポリブタジエン−ポリスチレンの構造を有し、結合スチレン30質量%、重量平均分子量250,000、ポリブタジエン部の水素添加率が99%の水素添加ブロック共重合体。
【0170】
なお、本実施例において、水素添加ブロック共重合体の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー測定装置[GPC SYSTEM21:昭和電工(株)製]を用い、紫外分光検出器[UV−41:昭和電工(株)製]で測定し、分子量既知の標準ポリスチレンで換算した。当該測定の条件は以下のとおりとした。
[溶媒:クロロホルム、温度:40℃、カラム:サンプル側(K−G、K−800RL、K−800R)、リファレンス側(K−805L×2本)、流量10mL/分、測定波長:254nm、圧力15〜17kg/cm2]。
【0171】
また、水素添加ブロック共重合体の水素添加率は、核磁気共鳴装置(NMR)により測定した。
【0172】
(C−2)ビニル芳香族系炭化水素と共役ジエン化合物とのブロック共重合体の水素添加ブロック共重合体(SEBS)の製造
スチレン/ブタジエンの質量比、n−ブチルリチウムとテトラメチルエチレンジアミンとの添加量、および水素添加率をコントロールした以外は、(C−1)と同様の操作により、水素添加ブロック共重合体(C−2)を作成した。水素添加ブロック共重合体(C−2)の物性は以下のとおりであった。
【0173】
(C−2):ポリスチレン−水素添加されたポリブタジエン−ポリスチレンの構造を有し、結合スチレン60質量%、重量平均分子量100,000、ポリブタジエン部の水素添加率が99%の水素添加ブロック共重合体。
【0174】
[実施例1]
ポリフェニレンエーテル(A−1)80質量部、ポリスチレン樹脂(B−1)5質量部、ポリスチレン樹脂(B−2)5質量部、ゴム重合体(C−1)5質量部、およびゴム重合体(C−2)5質量部を、独国Werner&Pfleiderer社製、バレル数10、スクリュー径25mmのZSK25二軸押出機(ニーディングディスクL:2個、ニーディングディスクR:6個、ニーディングディスクN:2個を有するスクリューパターン)の最上流部(トップフィード)から供給し、シリンダー温度320℃、スクリュー回転数250rpm、ベント真空度60Torrで溶融混練して樹脂組成物(ペレット)を得た。得られた樹脂組成物を用いて上記(2)および(8)の測定を実施した。測定結果を表1に示す。
【0175】
次に、得られた樹脂組成物(ペレット)を120℃の熱風乾燥機中で3時間乾燥した。乾燥後の樹脂組成物(ペレット)を、日精樹脂工業社製の射出成形機であるFE120により、表1に示す成形条件(シリンダー温度330℃、金型温度135℃、ゲート厚み2mm、成形体厚み2mm)で成形することにより、成形品を作製した。なお、当該成形品は、金型において溶融した前記樹脂組成物をゲートからキャビティーに射出することにより得られた。得られた成形品を用いて、平板試験片(100mm×100mm、厚み:2mm)を作成し、該試験片の外観について上記(7)のとおり評価した。評価結果を表1に示す。
【0176】
また、得られた成形品の表面に、プライマーを必要としないダイレクト蒸着法によりアルミの蒸着面を形成し、蒸着品を得た。得られた蒸着品を用いて、平板試験片(100mm×100mm、厚み:2mm)を作成し、該試験片の外観、表面反射率および表面粗さについて上記(3)、(7)および(9)のとおり評価・測定した。結果を表1に示す。
【0177】
また、上記で得られた樹脂組成物(ペレット)を、表1に示す成形条件(シリンダー温度および金型温度)で、東芝機械社製の射出成形機:IS−80Cにより成形することにより、機械的強度等測定用試験片(各種ISO試験片)を作成した。当該ISO試験片について、上記(1)、(4)〜(6)の測定を実施した。測定結果を表1に示す。
【0178】
[実施例2〜7、比較例1〜4]
表1に示すとおり配合比を変えた以外は、実施例1と同様にして樹脂組成物(ペレット)、成形品および蒸着品を作成し、上記各測定を実施した。当該測定結果を表1に示す。
【0179】
【表1】

表1に示すように、(B)ポリスチレン樹脂および、(C)ゴム重合体のそれぞれが、2種類以上配合された樹脂組成物を用いたときに、得られる成形品の効果は大きくなり、反射鏡としての実用性を有することが明らかになった。
【0180】
[実施例8〜11、比較例5〜8]
樹脂組成物(ペレット)から、成形品を成形するときの成形条件(シリンダー温度および金型温度)を表2に示すとおりに変更した以外は、実施例1と同様にして樹脂組成物(ペレット)、成形品および蒸着品を作成し、上記各測定を実施した。当該測定結果を表2に示す。
【0181】
【表2】

表2に示すように、成形品の成形条件について、得られる成形品の特性をより向上させる適正な範囲があることがわかった。
【0182】
[実施例12〜14、18]
成形品を成形するときの金型におけるゲート厚みおよび成形体厚みを、表3に示すとおりに変更した以外は、実施例1と同様にして樹脂組成物(ペレット)、成形品および蒸着品を作成し、上記各測定を実施した。当該測定結果を表3に示す。
【0183】
[実施例15、実施例19]
成形品を成形するときに、成形機のペレットホッパー上部に減圧機構装置をつけて、その他の部分のシール性を上げて、ホッパー部分の減圧を100Torr以下にして、金型におけるゲート厚みおよび成形体厚みを表3に示すように変更して成形を行った以外は、実施例1と同様にして樹脂組成物(ペレット)、成形品および蒸着品を作成し、上記各測定を実施した。当該測定結果を表3に示す。
【0184】
[実施例16、実施例20]
成形品を成形するときに、成形機のシリンダー部分に二酸化炭素の供給装置つけて、二酸化炭素の充填圧力を12MPaにして、金型におけるゲート厚みおよび成形体厚みを表3に示すように変更して成形を行った以外は、実施例1と同様にして樹脂組成物(ペレット)、成形品および蒸着品を作成し、上記各測定を実施した。当該測定結果を表3に示す。
【0185】
[実施例17、実施例21]
成形品を成形するときに、成形機のペレットホッパー上部に減圧機構装置をつけて、その他の部分のシール性を上げて、ホッパー部分の減圧を100Torr以下にして、かつ、成形機のシリンダー部分に二酸化炭素の供給装置つけて、二酸化炭素の充填圧力を12MPaにして、金型におけるゲート厚みおよび成形体厚みを表3に示すように変更して成形を行った以外は、実施例1と同様にして樹脂組成物(ペレット)、成形品および蒸着品を作成し、上記各測定を実施した。当該測定結果を表3に示す。
【0186】
【表3】

表3に示すように、成形品の厚みおよびゲート厚みがより難易度の高い方(薄肉)に移行しても、本実施形態に記載の樹脂組成物の配合比、成形条件をもってすれば、得られる成形品は、実施例1に代表される性能を有することがわかった。さらに、成形品の製造の際に、減圧供給設備を用いて減圧下で行うこと、および/または二酸化炭素を充填させることによって、得られる成形品の品質がさらに向上することが、明らかとなった。
【産業上の利用可能性】
【0187】
本発明の反射鏡は、表面外観、表面光沢に優れると共に、耐熱性、剛性等の物性にも優れるため、車両用ランプ部品、特に車両用ランプエクステンションリフレクター、および車両用リフレクターに有効に使用することが可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂組成物からなる高輝度・低ガス性薄肉樹脂反射鏡であって、
前記反射鏡が金属蒸着されたものであり、
前記金属蒸着された部分の成形品厚みが平均2mm以下であり、
前記金属蒸着された部分(蒸着面)の初期表面反射率が90%以上であり、
前記金属蒸着された部分の表面粗さが12nm以下であり、かつ
前記樹脂組成物について下記フォギング試験を行った後のガラス板のヘイズ値が1.0以下であることを特徴とする高輝度・低ガス性薄肉樹脂反射鏡。
<フォギング試験>
前記樹脂組成物 50g(±1g)をガラス製サンプル瓶に入れて、当該ガラス製サンプル瓶の口を全部覆うことのできるガラス板で静置して蓋をし、150℃(±5℃)環境下で24時間加熱することにより、前記ガラス板に曇り(フォギング)を発生させる。
【請求項2】
前記フォギング試験おける加熱温度が170℃であることを特徴とする請求項1に記載の高輝度・低ガス性薄肉樹脂反射鏡。
【請求項3】
前記金属蒸着された部分の成形品厚みが平均1.5mm以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の高輝度・低ガス性薄肉樹脂反射鏡。
【請求項4】
前記初期表面反射率に対する、150℃環境下(±5℃)で24時間の熱エージング処理後、反射鏡の表面反射率の保持率が、50%以上であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の高輝度・低ガス性薄肉樹脂反射鏡。
【請求項5】
前記初期表面反射率に対する、150℃環境下(±5℃)で24時間の熱エージング処理後、反射鏡の表面反射率の保持率が、70%以上であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の高輝度・低ガス性薄肉樹脂反射鏡。
【請求項6】
前記初期表面反射率に対する、150℃環境下(±5℃)で24時間の熱エージング処理後、反射鏡の表面反射率の保持率が、90%以上であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の高輝度・低ガス性薄肉樹脂反射鏡。
【請求項7】
前記金属蒸着が、プライマーを必要としないダイレクト蒸着法により行われることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の高輝度・低ガス性薄肉樹脂反射鏡。
【請求項8】
前記樹脂組成物が、
(A)ポリフェニレンエーテル樹脂(PPE)と、
(B)ポリスチレン樹脂と、
(C)ゴム重合体と
を含み、それぞれの比率は、(A)+(B)+(C)=100重量%に対して、
(A)ポリフェニレンエーテル樹脂(PPE)が59〜98重量%、
(B)ポリスチレン樹脂が1〜40重量%、
(C)ゴム重合体が1〜40重量%
であり、
前記(C)ゴム重合体が、
(C−1)重量平均分子量が200,000〜500,000である水素添加ブロック共重合体と、
(C−2)重量平均分子量が10,000〜150,000である水素添加ブロック共重合体とを含むことを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の高輝度・低ガス性薄肉樹脂反射鏡。
【請求項9】
前記(C−1)が、ビニル芳香族系炭化水素由来の単量体を10質量%以上40質量%未満含む水素添加ブロック共重合体であり、
前記(C−2)が、ビニル芳香族系炭化水素由来の単量体を40質量%以上90質量%以下含む水素添加ブロック共重合体であることを特徴とする請求項8に記載の高輝度・低ガス性薄肉樹脂反射鏡。
【請求項10】
前記(C−1)と前記(C−2)との質量比率((C−1)/(C−2))が、5/95〜95/5の範囲であることを特徴とする請求項8または9に記載の高輝度・低ガス性薄肉樹脂反射鏡。
【請求項11】
前記(B)ポリスチレン樹脂が、
(B−1)ゴム強化されていないポリスチレン樹脂と、
(B−2)アクリロニトリル成分を含むポリスチレン系樹脂と
を含むことを特徴とする請求項8〜10のいずれか一項に記載の高輝度・低ガス性薄肉樹脂反射鏡。
【請求項12】
前記(B−1)と前記(B−2)との質量比率((B−1)/(B−2))が、5/95〜95/5の範囲であることを特徴とする請求項11に記載の高輝度・低ガス性薄肉樹脂反射鏡。
【請求項13】
前記(B−1)のメルトフローレート(MFR)(試験規格ISO 1133 ペレット 200℃/5kgf)が、1g/10分以上であること特徴とする請求項11または12に記載の高輝度・低ガス性薄肉樹脂反射鏡。
【請求項14】
前記(A)ポリフェニレンエーテル樹脂の還元粘度(30℃ のクロロホルム0.5g/dL溶液)が、0.2〜0.6の範囲であることを特徴とする請求項8〜13のいずれか一項に記載の高輝度・低ガス性薄肉樹脂反射鏡。
【請求項15】
前記反射鏡が、金型において溶融した前記樹脂組成物をゲートからキャビティーに射出する工程を含む製造方法により得られ、
前記ゲートの厚みが2.0mm以下であり、キャビティー内に形成される成形品にシルバー現象が起こらないことを特徴とする請求項1〜14のいずれか一項に記載の高輝度・低ガス性薄肉樹脂反射鏡。
【請求項16】
前記ゲートの厚みが1.0mm以下であることを特徴とする請求項15に記載の高輝度・低ガス性薄肉樹脂反射鏡。
【請求項17】
前記反射鏡が、シリンダー温度300℃〜340℃、金型温度90℃〜150℃の条件で前記樹脂組成物を成形する工程を含む製造方法により得られることを特徴とする請求項1〜16のいずれか一項に記載の高輝度・低ガス性薄肉樹脂反射鏡。
【請求項18】
前記反射鏡が、ペレット供給機に減圧機構を有する成型機を用いて前記樹脂組成物を成形する工程を含む製造方法により得られることを特徴とする請求項1〜17のいずれか一項に記載の高輝度・低ガス性薄肉樹脂反射鏡。
【請求項19】
前記金属蒸着がアルミ蒸着であることを特徴とする請求項1〜18のいずれか一項に記載の高輝度・低ガス性薄肉樹脂反射鏡。
【請求項20】
移動体に付属する反射鏡として用いることを特徴とする請求項1〜19のいずれか一項に記載の高輝度・低ガス性薄肉樹脂反射鏡。
【請求項21】
前記移動体が、内燃機関またはモーターを動力とすることを特徴とする請求項20に記載の高輝度・低ガス性薄肉樹脂反射鏡。
【請求項22】
前記移動体が、飛行体、陸上走行体、海上走行体または水中走行体であることを特徴とする請求項20または21に記載の高輝度・低ガス性薄肉樹脂反射鏡。
【請求項23】
前記移動体が、車輪を有することを特徴とする請求項20〜22にいずれか一項に記載の高輝度・低ガス性薄肉樹脂反射鏡。
【請求項24】
光源の反射鏡として用いることを特徴とする請求項1〜23のいずれか一項に記載の高輝度・低ガス性薄肉樹脂反射鏡。
【請求項25】
前記光源が、ハロゲンランプ、ディスチャージランプまたはLEDランプであることを特徴とする請求項24に記載の高輝度・低ガス性薄肉樹脂反射鏡。
【請求項26】
エクステンションリフレクター、リフレクター、その他ランプ部品またはミラーであることを特徴とする請求項19〜25のいずれか一項に記載の高輝度・低ガス性薄肉樹脂反射鏡。
【請求項27】
(A)ポリフェニレンエーテル樹脂(PPE)と、
(B)ポリスチレン樹脂と、
(C)ゴム重合体と
を含み、それぞれの比率は、(A)+(B)+(C)=100重量%に対して、
(A)ポリフェニレンエーテル樹脂(PPE)が59〜98重量%、
(B)ポリスチレン樹脂が1〜40重量%、
(C)ゴム重合体が1〜40重量%
であり、
前記(C)ゴム重合体が、
(C−1)重量平均分子量が200,000〜500,000である水素添加ブロック共重合体と、
(C−2)重量平均分子量が10,000〜150,000である水素添加ブロック共重合体とを含む樹脂組成物からなる高輝度・低ガス性薄肉樹脂反射鏡。

【公開番号】特開2012−164577(P2012−164577A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−25301(P2011−25301)
【出願日】平成23年2月8日(2011.2.8)
【出願人】(303046314)旭化成ケミカルズ株式会社 (2,513)
【Fターム(参考)】