魚類及び甲殻類用飼料添加剤としてのメチオニル−メチオニンの製造及び使用
本発明は、水産養殖で飼育される動物の混合食餌中の飼料添加剤としてのDL−メチオニル−DL−メチオニン及びその塩の使用及び一般式(II)の尿素誘導体をDL−メチオニル−DL−メチオニンに変換することにより式(I)を有するDL−メチオニル−DL−メチオニン(I)を製造する方法に関する。式中、尿素誘導体IIa、IIb、IIc、IId、IIe、IIf及びIIgのR1及びR2は以下と規定される:IIa:R1=COOH、R2=NHCONH2 IIb:R1=CONH2、R2=NHCONH2 IIc:R1=CONH2、R2=NH2 IId:R1−R2=−CONH−CONH− IIe:R1=CN、R2=OH IIf:R1=CN、R2=NH2 IIg:R1==O、R2=H。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メチオニンのジペプチドであるメチオニルメチオニンの新規の化学的合成方法及び魚類及び甲殻類飼料用の単独又はメチオニンと混合しての飼料添加物としてのその特異的使用に関する。
【0002】
メチオニン、リジン又はスレオニンなどの必須アミノ酸(EAA)は動物飼料の添加物としてきわめて重要な成分であり、鶏、豚及び反芻動物などの家畜の商業的飼育において重要な役割を果たす。大豆、トウモロコシ及び小麦などの天然タンパク源にEAAを添加することで、動物をより早く成長させ、酪農では産出量の高い乳牛を得ることができる一方で、飼料の使用がより効率的になる。これはきわめて大きな商業的利点である。飼料添加剤市場は大きな産業的及び商業的重要性を有する。また、これらは高成長市場であり、例えば中国及びインドといった国々が存在感を強めている一因でもある。
【0003】
L−メチオニン((S)−2−アミノ−4−メチルチオ酪酸)は、鶏、アヒル、七面鳥など多数の種及び多くの魚類及び貝類における第一の制限アミノ酸であるため、動物飼料において飼料添加剤としてきわめて重要な役割を果たす(Rosenberg et al.,J.Agr.Food Chem.1957,5,694−700及びLovell,T.R.,J.Anim.Sci.1991,69,4193−4200)。しかし、従来の化学合成法では、メチオニンはD−及びL−メチオニンの50:50混合物のラセミ化合物として生成される。ただし、動物種によってはin vivo条件下でメチオニンの非天然Dエナンチオマーを天然Lエナンチオマーに変換する変換機序を有するため、このラセミ体DL−メチオニンは飼料添加剤として直接使用することができる。これに伴い、D−メチオニンは最初に非特異的D−オキシダーゼによりα−ケトメチオニンへと脱アミノ化され、その後さらにL−トランスアミナーゼによりL−メチオニンへと変換される(Baker,D.H."Amino acids in farm animal nutrition",D’Mello,J.P.F.(ed.),Wallingford(UK),CAB International,1994,37−61)。体内のL−メチオニンの利用可能量がこれにより増加し、その動物を成長させることができる。D−からL−メチオニンへの酵素変換は鶏、豚及び牛で認められているが、特に肉食性及び雑食性の魚及びエビならびに小エビにも認められている。このため、例えばSveierら(Aquacult.Nutr.2001,7(3),169−181)及びKimら(Aquaculture 1992,101(1−2),95−103)はD−からL−メチオニンへの変換が肉食性のタイセイヨウサケ及びニジマスで可能であると示すことができた。Robinsonら(J.Nutr.1978,108(12),1932−1936)及びSchwarzら(Aquaculture 1998,161,121−129)は、例えばナマズ及びコイといった雑食性の魚類で同様のことを示すことができた。また、ForsterとDominy(J.World Aquacult.Soc.2006,37(4),474−480)は、雑食性のエビLitopenaeus vannameiを対象とした飼料実験で、DL−メチオニンがL−メチオニンと同じ活性を有すると示すことができた。
【0004】
結晶DL−メチオニン及びラセミ体の液体メチオニンヒドロキシ類似体(MHA、rac−2−ヒドロキシ−4−(メチルチオ)ブタン酸(HMB))及び固形のカルシウムMHAの2007年の世界生産量は700,000トンを超え、例えば鶏及び豚などの単胃動物用の飼料添加剤に直接使用され成功をみた。高度に工業化された魚及び甲殻類の養殖業は急速に商業的発展を遂げたため、近年まさにこの分野において至適な経済的かつ効率的なメチオニン添加方法は重要性を増してきている(Food and Agriculture Organization of the United Nation(FAO)Fisheries Department"State of World Aquaculture 2006",2006,Rome,International Food Policy Research Institute(IFPRI)"Fish 2020:Supply and Demand in Changing Markets",2003,Washington,D.C.)。しかし、鶏及び豚とは異なり、特定の魚類及び甲殻類ではメチオニン、MHA又はCa−MHAの飼料添加剤としての使用には種々の問題が起きている。このため、RumseyとKetola(J.Fish.Res.Bd.Can.1975,32,422−426)は、大豆飼料に単一の結晶アミノ酸を添加して使用してもニジマスの成長は全く促進されないことを報告している。Muraiら(Bull.Japan.Soc.Sci.Fish.1984,50,(11),1957)は、魚用飼料に高率で結晶アミノ酸を添加してコイに毎日与えたところ、40%超の遊離アミノ酸がエラ及び腎から排泄されることを示すことができた。食餌の摂取直後に添加されたアミノ酸は急速に吸収されるため、魚の血漿中アミノ酸濃度はきわめて急速に上昇する(即応性)。しかし、この時点で、例えば大豆飼料などの天然タンパク源由来の他のアミノ酸はまだ血漿中には存在しないため、重要なアミノ酸すべてが同時に利用できない可能性がある。この結果、高濃度のアミノ酸の一部は急速に排泄され、又は体内で急速に代謝され、例えば純粋なエネルギー源として使用される。その結果、結晶アミノ酸を飼料添加剤として使用しても成長に促進はわずかしか認められない又は全く認められない(Aoe et al.,Bull.Jap.Carp Soc.Sci.Fish.1970,36,407−413)。結晶アミノ酸の添加は甲殻類ではさらに大きな問題をもたらしうる。例えばLitopenaeus Vannamei種のエビなど特定の甲殻類は摂食行動が緩徐であり、飼料が長時間水中に留まるため、添加された水溶性アミノ酸は溶け出してしまい(浸出)、水が富栄養化し、動物の成長の促進には至らない(Alam et al.,Aquaculture 2005,248,13−16)。
【0005】
このため、水産養殖場で飼育する魚類及び甲殻類に効率的に給餌を行うには、特定の動物種及び応用例では、例えばしかるべく化学的又は物理的に保護したメチオニンなどの特異的なメチオニン製品が必要である。この目的は、一方では給餌中水性環境においてその製品を十分安定にし、飼料の外へ溶出しないようにすることである。他方では動物に摂取されたそのメチオニン製品が動物の体内で至適かつ高効率に使用されるようにすることである。
【0006】
過去には、魚類及び甲殻類用の特にメチオニンを主成分とする好適な飼料添加剤を開発するため、数多くの努力がなされてきた。例えば、WO8906497は魚類及び甲殻類用の飼料添加剤としてのジ−及びトリペプチドの使用を記述している。当該発明の目的は動物の成長を促進させることである。しかし、この場合に使用するのに好ましいとされたジ−及びトリペプチドは、例えばグリシン、アラニン及びセリンなどの非必須アミノ酸、すなわち非制限アミノ酸由来であった。記載の唯一のメチオニン含有ジペプチドはDL−アラニル−DL−メチオニン及びDL−メチオニル−DL−グリシンである。しかし、これは、このジペプチド中に有効に存在する活性物質はわずか50%(mol/mol)であることを意味し、経済的な観点からはきわめて不利であると言わざるを得ない。WO02088667はMHAオリゴマー及び例えばメチオニンなどのアミノ酸のエナンチオ選択的合成及びとりわけ魚類及び甲殻類用の飼料添加剤としての使用を記述している。これにより、より早い成長を達成することが可能であるという。記載のオリゴマーは酵素触媒反応により組み立てられ、個々のオリゴマーはきわめて広範囲の鎖長分布を呈する。これにより、製造は非選択的になり、製造及び精製はコストも手間もかかる。DabrowskiらはUS20030099689で、水産動物の成長を促進する飼料添加剤としての合成ペプチドの使用を記述している。この場合、全飼料組成におけるペプチドの比率は6〜50質量%である。この合成ペプチドは好ましくは必須及び制限アミノ酸から構成される。しかし、かかる合成オリゴ及びポリペプチドの合成は非常に手間がかかり高コストで、実生産規模に変換するのが困難である。また、単一アミノ酸のポリペプチドは生理学的条件下では遊離アミノ酸にきわめて緩徐にしか変換されない、又は全く変換されないことが多いため、その有効性には異論がある。このため、例えばBakerら(J.Nutr.1982,112,1130−1132)は、ポリ−L−メチオニンが水には全く溶けず、体への吸収が不可能であるため、鶏における生物学的価値がないことを記述している。
【0007】
例えばメチオニン含有ペプチド及びオリゴマーなどの新規の化学的メチオニン誘導体の使用のほか、例えばアミノ酸の保護マトリックスへのコーティング及び組み込みといった種々の物理的保護の可能性も研究されてきた。例えば、Alamら(Aquacult.Nutr.2004,10,309−316及びAquaculture 2005,248,13−19)は、コーティングされたメチオニン及びリジンが未コーティング時とは対照的に、若いクルマエビの成長にきわめて好ましい影響を与えることを示すことができた。特異的なコーティングの使用は飼料ペレットからのメチオニン及びリジンの浸出を抑制することができたが、いくつかの深刻な欠点もある。メチオニンの製造又はコーティングは、通常技術的に複雑かつ手間のかかる方法であり、そのためコストがかかる。また、コーティング後のメチオニンのコーティング表面は飼料の加工中、機械的応力及び摩耗により損傷を受けやすく、物理的保護が低下する、又は完全に失われることがある。もう一つの因子は、コーティング又はマトリックス物質の使用によりメチオニンの含量が減少し、そのためしばしば不経済になることである。
【0008】
DL−メチオニル−DL−メチオニンの飼料ペレット及び押出成形品からの浸出特性が低い飼料添加剤としての新規使用方法の発明及びメチオニルメチオニンの緩徐な開裂を介するメチオニンの体への至適な供給方法のほか、文献に記載された種々の製造方法を超えた多くの利点を有するメチオニルメチオニンの新規の製造方法を開発することも可能になった。文献に開示されたジペプチド合成方法の大半では、Boc−(tert−ブトキシカルボニル)又はZ−(ベンジルオキシカルボニル)保護基などの高コストの保護基を適切なアミノ酸に結合させてから実際にジペプチドを合成しなければならず、その後それをまた除去しなければならない。また、通常は結合対象のアミノ酸を活性化する必要がある。このように、メチオニルメチオニンは、ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)を用いてN−Boc−メチオニンをメチオニンのメチルエステルと結合することによって製造することができる。この製造方法の大きな欠点は、高コストの保護基を使用すること、合成にきわめて手間がかかること及びDCCなどのリサイクルできない高コストの結合試薬を使用することである。このほか、メチオニルメチオニンの実生産規模の合成方法がDE2261926に記述されている。第一段階でメチオニンのイソプロピルエステルを加熱することにより3,6−Bis[2−メチルチオ)エチル]−2,5−ピペラジンジオン(メチオニンジケトピペラジン、DKP)を生成し、その後メチオニルメチオニンに加水分解する。この場合、加水分解段階での収率はわずかに62〜65%が可能になるのみであった。また、出発材料としてメチオニンイソプロピルエステルを使用するにはコストがかかりすぎ、不経済である。
【0009】
一般的な目的の一つは、特に水産養殖場での魚類及び甲殻類の産業的飼育部門において単独又はメチオニンとの混合物として使用可能な新規のメチオニン代用品を主成分とする動物飼料又は飼料添加剤を提供することであった。同時に、この新規のメチオニン代用品の単純かつコスト効率のよい化学的合成方法を開発することを目的とした。
【0010】
先行技術の欠点に照らし、特に海水又は淡水に住む雑食性、草食性及び肉食性魚類及び甲殻類用の化学的に保護されたメチオニン製品を提供することを目的とした。特に、この製品が水中で完全な飼料ペレット又は押出成形品からの溶解特性(浸出)が低く、徐放性機序すなわち生理学的条件下で遊離メチオニンを緩徐かつ持続的に放出する機序を有することを目的とした。また、この新規メチオニン製品がDL−メチオニンとの混合物として有益に使用できることも目的とした。
【0011】
さらなる目的は、きわめて高い生物学的価値を有し、取り扱い及び保存が容易で、特にペレット成形及び押出成形といった配合飼料の通常の加工条件で優れた安定性を示す飼料又は飼料添加剤としてのメチオニン代用品を見出すことであった。
【0012】
このような方法で、結晶DL−メチオニンに加えて、可能であれば既知の製品の欠点をわずかしか有さない、又は全く有さないさらに効率的なメチオニン源を魚類及び甲殻類に与えることを目的とした。
【0013】
さらに、DL−メチオニンの実生産規模の製造方法から生じる典型的な前駆体及び副産物を出発材料として使用可能な、メチオニルメチオニン(DL−メチオニル−DL−メチオニン)の新規で融通性のある合成経路を開発することを目的とした。また、ジアステレオマーDD/LL−及びDL/LD−メチオニルメチオニンの対を分離する好適な方法を開発し、特定の応用例のためジアステレオマーの1対のみ(DL/LL−I又はDL/LD−I)の至適かつ効率的な使用を可能にすることを目的とした。
【0014】
この目的は、水産養殖場で飼育される動物用の混合飼料に、飼料添加剤としてDL−メチオニル−DL−メチオニン及びその塩を使用することにより達成される。
【0015】
好ましくは、この混合飼料は0.01〜5質量%、好ましくは0.05〜0.5質量%のDL−メチオニル−DL−メチオニンを包含する。
【0016】
ちなみに、DL−メチオニル−DL−メチオニンの使用は、この化合物がDD/LL/DL/LD−メチオニルメチオニンの混合物及びジアステレオマーDL/LD−メチオニルメチオニンの対の溶解性が低いことから優れた浸出特性を示すため(0.4g/L)、特に有益であることが証明された。
【0017】
さらにこの化合物は飼料製造中に良好なペレット成形及び押出成形安定性を示す。DL−メチオニル−DL−メチオニンは、例えば穀類(特にトウモロコシ、小麦、ライ小麦、大麦、粟など)、植物性又は動物性タンパク源(特に大豆及び菜種及びその加工産物など、野菜(エンドウ、豆、ルピナスなど)、魚用飼料など)などの従来の成分及び飼料との混合物中でも、添加される必須アミノ酸、タンパク質、ペプチド、炭水化物、ビタミン、ミネラル、脂肪及び油とともに使用しても安定である。
【0018】
さらに、1kgの物質につきメチオニルメチオニンの活性物質の含量が高いため、DL−メチオニンに比してメチオニルメチオニン1モルにつき水1モルが節約できるのが利点である。
【0019】
好ましい使用方法において、混合飼料は好ましくはフィッシュミール、大豆ミール又はトウモロコシミールを主成分としてタンパク質及び炭水化物を包含し、必須アミノ酸、タンパク質、ペプチド、ビタミン、ミネラル、炭水化物、脂肪又は油を添加することができる。
【0020】
DL−メチオニル−DL−メチオニンは、DD/LL/LD/DL混合物、DL/LD又はDD/LL混合物としてのみ、各場合にDL−メチオニンと追加的に混合して、好ましくはDL−メチオニンの含量を0.01〜20質量%、特に好ましくは1〜10質量%として、混合飼料中に存在するのが特に好ましい。
【0021】
特に好ましい使用方法において、DL−メチオニル−DL−メチオニンはエナンチオマー対DL/LD−メチオニルメチオニンとして存在する。
【0022】
好ましい使用方法において、水産養殖場で飼育される動物は、コイ、マス、サケ、ナマズ、スズキ、ヒラメ、チョウザメ、マグロ、ウナギ、タイ、タラ、エビ、オキアミ及び小エビ、きわめて好ましくはハクレン(Hypophthalmichthys molitrix)、ソウギョ(Ctenopharyngodon idella)、鯉(Cyprinus carpio)及びコクレン(Aristichthys nobilis)、フナ(Carassius carassius)、カトラ(Catla Catla)、インド鯉(Labeo rohita)、タイヘイヨウ及びタイセイヨウサケ(Salmon salar及びOncorhynchus kisutch)、ニジマス(Oncorhynchus mykiss)、アメリカナマズ(Ictalurus punctatus)、アフリカンクララ(Clarias gariepinus)、パンガシウス(Pangasius bocourti及びPangasius hypothalamus)、ナイルティラピア(Oreochromis niloticus)、サバヒー(Chanos)、スギ(Rachycentron canadum)、バナメイエビ(Litopenaeus vannamei)、ブラックタイガーエビ(Penaeus monodon)及びオニテナガエビ(Macrobrachium rosenbergii)からなる群から選択される淡水及び海水魚及び甲殻類である。
【0023】
本発明によれば、例えば融けにくいカルシウム又は亜鉛塩をDL−メチオニル−DL−メチオニン(I)(メチオニルメチオニン又は略してMet−Met)又はそのアルカリ金属及びアルカリ土類金属塩類を、好ましくは魚類及び甲殻類用に、DD/LL/DL/LD、DD/LL又はDL/LDジアステレオマー混合物として、単独又はDLメチオニンと混合して混合飼料に添加して用いる:
【化1】
【0024】
ジペプチドDL−メチオニル−DL−メチオニン(I)には4種類の異なる立体異性体(ジアステレオマー)DD−、LL、DL−及びLD−Iが存在し、そのうちL−メチオニル−L−メチオニン(LL−I)のみが天然であり、残る3種類のジペプチドL−メチオニル−D−メチオニン(LD−I)、D−メチオニル−L−メチオニン(DL−I)及びD−メチオニル−D−メチオニン(DD−I)はすべて非天然である(スキーム1を参照)。
【0025】
【化2】
【0026】
ちなみに、DD−I及びLL−Iは互いに像及び鏡像としての関係を有する。すなわち、これらはエナンチオマーであるため、同じ物理的特性を有する。同じことがDL−I及びLD−Iの対にも言える。
【0027】
これに対してDD/LL−I及びDL/LD−Iの2対は互いにジアステレオマーである。すなわち、これらは異なる物理的データを示す。このため、例えばDD/LL−Iのジアステレオマー対の室温での水への溶解度は21.0g/Lであるのに対し、DL−LD−Iのジアステレオマー対の溶解度は0.4g/Lである。
【0028】
メチオニルメチオニンの新規の合成方法の開発のほか、本発明は、水産養殖場の雑食性、肉食性及び草食性魚類及び甲殻類用の成長促進剤としてのDD/LL/DL/LD、DD/LL又はDL/LDジアステレオマー混合物としての飼料としてのDL−メチオニル−DL−メチオニンの使用に関する。本発明により、DL−メチオニル−DL−メチオニン(I)が生理学的条件下で魚類及び甲殻類により遊離D−及びL−メチオニンに酵素的に開裂されうることを示すことが可能になった(スキーム2)(実施例22〜24も参照)。この目的のため、対応する消化酵素をコイ(雑食性)、マス(肉食性)及びバナメイエビ(雑食性)から単離し、生理学的に同等な条件下で至適化したin vitro実験にてDL−メチオニル−DL−メチオニンと反応させた。本発明によるDL−メチオニル−DL−メチオニン(I)の開裂の特殊な特性とは、4つの考えうるジアステレオマーである天然のLL−I及び3つの非天然ジアステレオマーDD−、DL−及びLD−Iをすべて生理学的条件下で開裂することができることである。これはすべてのジアステレオマーの全混合物(DD/LL/DL/LD−I)の使用にも、ジアステレオマーDD/LL−I及びDL/LD−Iの2対のいずれのケースにも適用される(図1参照)。
【0029】
【化3】
【0030】
しかし、個々のメチオニルメチオニンジアステレオマーの開裂速度は異なる。個々のメチオニルメチオニンジアステレオマーの魚類及び甲殻類の消化酵素による酵素開裂に関する図表を図2に示す。しかし、開裂の遅延は、D−及びL−メチオニンの遊離も遅延することを意味する(図3参照)。消化管で遊離D−又はL−メチオニンの即応性の吸収がなく、したがって血漿中の遊離メチオニン濃度にピークもないことには大きな利点がある。
【0031】
このように、飼料添加剤としてのメチオニルメチオニン及びメチオニン源を使用する利点は、D−又はL−メチオニンが消化期間を通じて体内に放出され、天然タンパク源由来の他のアミノ酸の放出(徐放性機序)と同調して行われることである(図3参照)。この特殊な作用により、すべての重要かつ必須のアミノ酸が血漿中で、体の至適な成長に絶対的に必要とされる理想的な比率にて同時に利用可能になる。
【0032】
DL−メチオニル−DL−メチオニンジペプチド(I)の酵素開裂においては、非天然D−メチオニンも天然L−メチオニンに加えて放出される(スキーム2参照)。前者は肉食性、雑食性及び草食性の海水及び淡水魚及び甲殻類によって、酵素的にアミノ交換されて天然L−メチオニンになる。これは、例えば実施例25のコイの例で明らかにすることができた。コイ由来の消化酵素及び肝酵素の酵素カクテルを用いて、生理学的な関連条件下でD−メチオニンをL−メチオニンに変換することができた(図4参照)。このように、DL−メチオニル−DL−メチオニン(I)を使用することで、天然L−メチオニンを体に至適に供給することができる。
【0033】
DL−メチオニル−DL−メチオニン(I)と、例えば魚、トウモロコシ及び大豆ミールなどの天然タンパク源及び炭水化物源との種々の混合物に他の必須アミノ酸、タンパク質、ペプチド、ビタミン、ミネラル、脂肪及び油を混合して実施したペレット成形及び押出成形実験では、DL−メチオニル−DL−メチオニン(I)が製造工程中及び後に絶対的に安定であり、いかなる劣化又は分解も起こらないことが確認された(実施例26参照)。
【0034】
メチオニルメチオニン(I)ジアステレオマーの配合飼料ペレットからの水中での浸出特性を調査するため、メチオニルメチオニンの溶出の時間依存性を測定した(実施例26参照)。比較のため、DL−メチオニン、MHA及びカルシウム−MHA(MHA−Ca)の浸出特性を同一条件下で調査した。これにより、すべてのジアステレオマーの全混合物(DD/LL/DL/LD−I)及びDD/LL−I及びDL/LD−Iのジアステレオマー対はいずれも、DL−メチオニン、MHA及びカルシウム−MHA(MHA−Ca)よりも浸出性が明らかに低いことが確認された(図5参照)。したがって、飼料ペレットからのメチオニルメチオニンの経時的な溶出量は、他のすべてのメチオニン誘導体よりもはるかに少ない。DL−LD−Iのジアステレオマー対は特に浸出速度が遅く、200時間の滞留時間を過ぎても飼料ペレットから溶出したのは最大でわずかに5%であった(図5参照)。
【0035】
さらに、式(I)
【化4】
のDL−メチオニル−DL−メチオニンを、
一般式IIの尿素誘導体
【化5】
[式中、
尿素誘導体IIa、IIb、IIc、IId、IIe、IIf及びIIgのR1及びR2基は以下の通り規定される;
式中、
IIa:R1=COOH、R2=NHCONH2
IIb:R1=CONH2、R2=NHCONH2
IIc:R1=CONH2、R2=NH2
IId:R1−R2=−CONHCONH−
IIe:R1=CN、R2=OH
IIf:R1=CN、R2=NH2
IIg:R1==O、R2=H]
と反応させてDL−メチオニル−DL−メチオニン(I)を得る、DL−メチオニル−DL−メチオニン(I)の製造方法により目的が達成される。
【0036】
本発明の方法の一実施形態においては、メチオニンヒダントイン(IId)を出発材料として使用する、又は中間産物として生成することがさらに好ましい。この方法は、DL−メチオニル−DL−メチオニンをメチオニンヒダントインから直接合成するものであり、スキーム3に示す手法G、H及びJが含まれる。
【0037】
【化6】
【0038】
ちなみに、メチオニンヒダントイン及び水を包含する溶液を基本的な条件下でメチオニンと反応させるのが好ましい。さらに、尿素誘導体を包含する溶液のpHを8〜14に、好ましくは10〜13に調節するのが好ましい。
【0039】
好ましくは、反応を温度50〜200℃で、好ましくは80〜170℃、特に好ましくは130〜160℃で実施する。
【0040】
さらに好ましくは、反応を加圧下で、好ましくは3〜20バール下で、特に好ましくは6〜15バール下で実施する。
【0041】
さらに好ましい方法において、メチオニンヒダントイン及び水を包含する溶液はあらかじめ化合物IIa、IIb、IIc、IId、IIe、IIf及びIIgの一つ以上から生成しておく。
【0042】
さらに好ましい方法において、メチオニンヒダントインは、化合物IIe又はIIfを窒素含有塩基、NH4HCO3、(NH4)2CO3、NH4OH/CO2混合物又はカルバミン酸塩と反応させることによって得る。
【0043】
化合物IIeの反応は、好ましくは温度0〜150℃、好ましくは0〜100℃、特に好ましくは10〜70℃で実施する。
【0044】
さらに好ましい方法において、メチオニンヒダントインは、化合物IIfをCO2と反応させることによって得る。ちなみにこの反応は、好ましくはKHCO3、K2CO3、第三級アミン又はその塩、アルカリ金属及びアルカリ土類金属塩基類を包含する群から選択される塩基の存在下で実施する。
【0045】
さらに好ましい方法において、メチオニンヒダントインは、化合物IIgをシアン化物イオン源及び、窒素含有塩基、CO2存在下のアンモニウム塩、NH4HCO3、(NH4)2CO3、NH4OH/CO2混合物及びカルバミン酸塩を包含する群から選択される塩基と反応させることによって得る。この場合の反応は、好ましくは温度−20〜150℃、好ましくは−10〜100℃、特に好ましくは0〜70℃で実施する。
【0046】
本発明の方法のもうひとつの実施形態は、以下の段階を包含する。
a) 式IIa、IIb、IIc、IId、IIe、IIf及びIIgの尿素誘導体を反応させて式
【化7】
のジケトピペラジンを得る。
b) ジケトピペラジンを反応させてDL−メチオニル−DL−メチオニンを得る。この方法はスキーム3に示す手法A、B、C及びDを含む。この方法では、ジケトピペラジン(III)は中間体として生成される。
【0047】
ちなみに、ジケトピペラジンを得るための尿素誘導体の反応は、温度50〜200℃、好ましくは100〜180℃、特に好ましくは140〜170℃で実施するのが好ましい。
【0048】
好ましい方法において、ジケトピペラジンを得るための尿素誘導体の反応は、加圧下で、好ましくは3〜20バール下で、特に好ましくは6〜15バール下で実施する。
【0049】
ジケトピペラジンを得るための尿素誘導体の反応は、好ましくは塩基の存在下で実施する。ちなみに塩基は好ましくは、窒素含有塩基、NH4HCO3、(NH4)2CO3、KHCO3、K2CO3、NH4OH/CO2混合物、カルバミン酸塩、アルカリ金属及びアルカリ土類金属塩基類からなる群から選択する。
【0050】
さらに好ましい方法において、ジケトピペラジンを得るための尿素誘導体の反応は、メチオニンと反応させることによって実施する。ちなみに尿素誘導体とメチオニンの比は、1:100〜1:0.5が好ましい。
【0051】
さらに好ましい方法において、DL−メチオニル−DL−メチオニンを得るためのジケトピペラジンの反応は、酸加水分解によって実施する。この場合、酸加水分解は、好ましくは鉱酸類、HCl、H2CO3、CO2/H2O、H2SO4、リン酸類、カルボン酸類及びヒドロキシカルボン酸類からなる群から選択される酸の存在下で実施する。
【0052】
本発明の方法のまた別の実施形態において、DL−メチオニル−DL−メチオニンを得るためのジケトピペラジンの反応は、塩基性加水分解によって実施する。この場合、塩基性加水分解は好ましくはpH7〜14、特に好ましくはpH9〜12、きわめて特に好ましくはpH10〜11で実施してDL−メチオニル−DL−メチオニンを得る。さらに、この塩基性条件は、好ましくは窒素含有塩基、NH4HCO3、(NH4)2CO3、NH4OH/CO2混合物、カルバミン酸塩類、KHCO3、K2CO3、炭酸塩類、アルカリ金属及びアルカリ土類金属塩基類からなる群から選択される物質を用いて調節することができる。
【0053】
酸又は塩基性加水分解は、好ましくは温度50〜200℃、好ましくは80〜180℃、特に好ましくは90〜160℃で実施する。
【0054】
さらに別の実施形態において、DL−メチオニル−DL−メチオニンを得るためのジケトピペラジンの反応は、塩基性溶液、好ましくは塩基性の水酸化アンモニウム、水酸化カリウム又は水酸化ナトリウム溶液にCO2を導入することにより実施する。
【0055】
好ましい方法において、ジケトピペラジンは加水分解の前に単離する。ちなみにジケトピペラジンは、好ましくは温度−30〜120℃、特に好ましくは10〜70℃で結晶化により反応溶液から単離するのが好ましい。
【0056】
DD/LL/DL/LD−メチオニルメチオニンジアステレオマーの混合物を塩基性反応溶液から単離するには、これらを酸性化し、結晶化又は沈殿によりメチオニルメチオニンを得る。ちなみに、pHは5〜9、特に好ましくは5〜7、きわめて特に好ましくは約5.6にするのが好ましい。ちなみに、酸性化には好ましくは鉱酸類、HCl、H2CO3、CO2/H2O、H2SO4、リン酸類、カルボン酸類及びヒドロキシカルボン酸類から成る群から選択した酸を使用することができる。
【0057】
DD/LL/DL/LD−メチオニルメチオニンジアステレオマーの混合物を酸性反応溶液から単離するには、塩基を添加して中和し、結晶化又は沈殿によりメチオニルメチオニンを得る。ちなみに、pHは5〜9、特に好ましくは5〜7、きわめて特に好ましくは約5.6にするのが好ましい。この場合に中和に使用する塩基は、好ましくはNH4HCO3、(NH4)2CO3、窒素含有塩基、NH4OH、カルバミン酸塩類、KHCO3、K2CO3、炭酸塩類、アルカリ金属及びアルカリ土類金属塩基類からなる群から選択する。
【0058】
さらに本発明は、分画結晶化によりDD/LL/DL/LD−メチオニルメチオニンジアステレオマーの混合物を分画し、それによってDD/LL−メチオニルメチオニン及びDL/LD−メチオニルメチオニンのエナンチオマー2対を得る方法を提供する。
【0059】
酸性化による分画結晶化の方法の好ましい実施形態においては、以下の手順に従う。
a) DD/LL/DL/LD−メチオニルメチオニンを含有する懸濁液を、透明な溶液が得られるまで酸性化した後、その酸性溶液に塩基を段階的に添加して沈殿物を分離し、沈殿物としてDL/LD−メチオニルメチオニンを得る。
b) 段階a)で得られた母液からDD/LL−メチオニルメチオニンを得る。
【0060】
ちなみに、段階a)の酸性化は、酸を用いてpHを0.1〜1.0、好ましくは約0.6に設定して実施し、得られた透明な溶液をその後塩基を用いてpH5〜6、好ましくは約5.6に調節するのが特に好ましい。ちなみに、鉱酸類、好ましくはリン酸、硫酸、塩酸又は炭酸又は二酸化炭素及び/又はカルボン酸類、特にC1−C4カルボン酸類の蟻酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸又はイソ酪酸を酸として使用することができる。特に好ましくは炭酸又は二酸化炭素を使用する。この場合、炭酸又は二酸化炭素は、大気圧下又は超大気圧下で反応混合物に導入することができる。
【0061】
段階a)において、塩基性条件は好ましくはNH4HCO3、(NH4)2CO3、窒素含有塩基類、NH4OH、カルバミン酸塩類、KHCO3、K2CO3、炭酸塩類、アルカリ金属塩基類及びアルカリ土類金属塩基類からなる群から選択される塩基を用いて調節する。
【0062】
塩基性化による分画結晶化の方法のさらに好ましい実施形態においては、以下の手順に従う。
a) DD/LL/DL/LD−メチオニルメチオニンを含有する懸濁液を、透明な溶液が得られるまで塩基性化し、その塩基性溶液に酸を段階的に添加して沈殿物を分離し、沈殿物としてDL/LD−メチオニルメチオニンを得る。
b) その後、段階a)で得られた母液からDD/LL−メチオニルメチオニンを得る。
【0063】
ちなみに、段階a)の塩基性化は、塩基を用いてpHを7.5〜14、好ましくは約9〜13に調節して実施し、得られた透明な溶液をその後酸を用いてpH5〜6、好ましくは約5.6に調節するのが特に好ましい。この場合使用するのが好ましい塩基は、NH4HCO3、(NH4)2CO3、窒素含有塩基類、NH4OH、カルバミン酸塩類、KHCO3、K2CO3、炭酸塩類、アルカリ金属及びアルカリ土類金属塩基類からなる群から選択される塩基である。
【0064】
段階a)の酸性条件は、好ましくは鉱酸類からなる群から選択される酸、好ましくはリン酸、硫酸、塩酸又は炭酸又は二酸化炭素及び/又はカルボン酸類、特にC1−C4カルボン酸類の蟻酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸又はイソ酪酸を用いて調節する。炭酸又は二酸化炭素を使用するのが特に好ましい。
【0065】
分画結晶化の方法の好ましい実施形態においては、温度0〜100℃、好ましくは5〜60℃、特に好ましくは10〜40℃で実施する。
【0066】
得られたDD/LL−メチオニルメチオニンをさらにラセミ化し、上述の分離方法に導入して、DD/LL−メチオニルメチオニン及びDL/LD−メチオニルメチオニンのエナンチオマー2対を互いに分離することができる。
【0067】
上述した本発明の方法はすべて、好ましくは水性培地中で実施する。さらに、本発明の方法は、当業者に既知のバッチ製造工程又は連続工程で実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】メチオニルメチオニンジアステレオマー混合物のDD/LL−I、DL/LD−I及びDD/LL/DL/LD−Iの酵素開裂に関する図表を示す。
【図2】開裂速度の異なる4つのメチオニルメチオニンジアステレオマーDD−I、LL−I、DL−I及びLD−Iの酵素開裂に関する図表を示す。
【図3】4つのメチオニルメチオニンジアステレオマーDD−I、LL−I、DL−I及びLD−Iからのメチオニン(D−及びL−Metの両方)の酵素による放出に関する図表を示す。
【図4】鯉由来の酵素カクテルを用いたD−メチオニンのL−メチオニンへの生体内変換を示す。
【図5】メチオニルメチオニンジアステレオマー混合物DD/LL−I、DL/LD−I及びLL/DD/LD/DL−Iの浸出特性のメチオニン、MHA及びMHA−Caとの比較を示す。
【図6】鯉の消化酵素を用いた4種類の異なるメチオニルメチオニンジアステレオマーLL−I、LD−I、DL−I及びDD−Iのin vitro消化を示す。
【図7】鯉の消化酵素を用いた種々のメチオニルメチオニンジアステレオマー混合物LL/DD−I、DL/LD−I及びLL/DD/LD/DL−Iのin vitro消化を示す。
【図8】ニジマスの消化酵素を用いた4種類の異なるメチオニルメチオニンジアステレオマーLL−I、LD−I、DL−I及びDD−Iのin vitro消化を示す。
【図9】ニジマスの消化酵素を用いたメチオニルメチオニンジアステレオマー混合物LL/DD−I、DL/LD−I及びLL/DD/LD/DL−Iのin vitro消化を示す。
【図10】バナメイエビの消化酵素を用いた4種類の異なるメチオニルメチオニンジアステレオマーLL−I、LD−I、DL−I及びDD−Iのin vitro消化を示す。
【図11】バナメイエビの消化酵素を用いた種々のメチオニルメチオニンジアステレオマー混合物LL/DD−I、DL/LD−I及びLL/DD/LD/DL−Iのin vitro消化を示す。
【0069】
実施例
A)本発明の方法の個々の段階及び手法の概括
本発明によるDL−メチオニル−DL−メチオニン(I)の製造及びジアステレオマー対DD/LL−I及びDL/LD−Iへの分離方法を、以下に詳述する。
【0070】
本発明によるDL−メチオニル−DL−メチオニン(I)の製造方法は、一般式IIの化合物から出発する。
【化8】
[式中、
IIa:R1=COOH、R2=NHCONH2
IIb:R1=CONH2、R2=NHCONH2
IIc:R1=CONH2、R2=NH2
IId:R1−R2=−CONHCONH−
IIe:R1=CN、R2=OH
IIf:R1=CN、R2=NH2
IIg:R1==O、R2=H]
【0071】
この化合物を種々の合成手法(A、B、C、D、E、F、G、H及びJ)によりDL−メチオニル−DL−メチオニン(I)に変換する(スキーム3参照)。その手法A、B、C及びDでは、対応するジケトピペラジン(III)が中間体として生成される。合成手法G、H及びJでは、メチオニンヒダントインが中間体として生成され、これを直接DL−メチオニル−DL−メチオニン(I)に変換する。その後、手法Kを用いて、分画結晶化により2つのジアステレオマー対DD/LL−I及びDL/LD−Iを分離することができる(スキーム3参照)。
【0072】
【化9】
【0073】
B) 合成実施例:
実施例1:
手法AによるN−カルバモイルメチオニン(IIa)からの3,6−bis[2−(メチルチオ)エチル]−2,5−ピペラジンジオン(III)(メチオニンジケトピペラジン、DKP)の合成
N−カルバモイルメチオニン(IIa)17.5g(90.0mmol、純度:99%)を水150mLに溶解し、撹拌子を用いて160℃で6時間、Roth Steel社製200mLオートクレーブ中で攪拌した。この間圧力は上昇する。時々ガスを反復的に抜いて、圧力が7バールに達するようにした。反応終了後、オートクレーブを氷浴で冷却した。得られた懸濁液を濾過し、得られた固形物を水で数回洗浄して、乾燥オーブンで50℃にて真空中で乾燥した。単離収率は、純度>98%(HPLC)、融点234〜236℃の黄白色の結晶、bis[2−(メチルチオ)エチル]−2,5−ピペラジンジオン(III)8.1g(30.9mmol)(69%)であった。
【0074】
3,6−bis[2−(メチルチオ)エチル]−2,5−ピペラジンジオン(III)の1H−NMR
【0075】
3,6−bis[2−(メチルチオ)エチル]−2,5−ピペラジンジオン(III)の13C−NMR
C10H18N2O2S2(M=262.39g/mol)の元素分析:
算出値:C45.77;H6.91;N10.68;S24.44
測定値:C45.94;H6.96;N10.64;S24.38
【0076】
実施例2:
手法Aによる2−[(アミノカルボニル)アミノ]−4−(メチルチオ)ブタノアミド(N−カルバモイルメチオニンアミド)(IIb)からの3,6−bis[2−(メチルチオ)エチル]−2,5−ピペラジンジオン(III)(メチオニンジケトピペラジン、DKP)の合成
2−[(アミノカルボニル)−アミノ]−4−(メチルチオ)ブタノアミド(IIb)17.4g(90.0mmol、純度:98.5%)を水150mLに溶解し、撹拌子を用いて160℃で7時間、Roth Steel社製200mLオートクレーブ中で攪拌した。この間圧力は上昇する。時々ガスを反復的に抜いて、圧力が7バールに達するようにした。反応終了後、オートクレーブを氷浴で冷却した。得られた懸濁液を濾過し、得られた固形物を水で数回洗浄して、乾燥オーブンで50℃にて真空中で乾燥した。単離収率は、純度>98%(HPLC)の黄白色の結晶、bis[2−(メチルチオ)エチル]−2,5−ピペラジンジオン(III)9.2g(35.1mmol)(78%)であった。
【0077】
融点及びNMRデータは実施例1に合致した。
【0078】
実施例3:
手法Aによる5−[2−(メチルチオ)エチル]−2,4−イミダゾリジンジオン(IId)(メチオニンヒダントイン)からの3,6−bis[2−(メチルチオ)エチル]−2,5−ピペラジンジオン(III)(メチオニンジケトピペラジン、DKP)の合成及びその後の母液の再使用(カスケード反応)
第1バッチ:
メチオニン13.4g(0.09mol)、メチオニンヒダントイン(IId)17.2g(0.09mol、純度:91%)及び水150gからなる懸濁液を、撹拌子付きRoth Steel社製200mLオートクレーブに入れ、160℃で6時間攪拌した。この間圧力は15バールまで上昇する。時々オートクレーブを減圧して、圧力が一定して10バールになるようにした。その後、オートクレーブを氷浴で冷却し、得られた懸濁液を濾過し、得られた固形物を水75mLで洗浄した。最後に、固形物を真空乾燥オーブンで50℃にて一晩乾燥した。黄白色の結晶としてbis[2−(メチルチオ)エチル]−2,5−ピペラジンジオン(III)を単離した。
【0079】
その後のバッチ:
前バッチの洗浄水及び母液を合わせて、回転式蒸発器で50℃にて90mLまで濃縮した。メチオニンヒダントイン(IId)17.2g(0.09mol、純度:91%)を濃縮した母液とともに取り、水溶液150gとした。得られた溶液を撹拌子付きRoth Steel社製200mLオートクレーブに入れ、160℃で6時間攪拌した。この間圧力は15バールまで上昇する。時々オートクレーブを減圧して、圧力が一定して10バールになるようにした。その後の作業は第1バッチと同様に実施した。
【0080】
実施例4:
手法Bによる2−アミノ−4−(メチルチオ)ブタノアミド(メチオニンアミド)(IIc)からの3,6−bis[2−(メチルチオ)エチル]−2,5−ピペラジンジオン(III)(メチオニンジケトピペラジン、DKP)の合成
2−アミノ−4−(メチルチオ)ブタノアミド塩酸塩(IIc)16.6g(0.09mol)及び(NH4)2CO38.7g(0.09mol)を水150gに溶解し、撹拌子を用いて160℃で6時間、Roth Steel社製200mLオートクレーブ中で攪拌した。その後、オートクレーブを氷浴で冷却した。得られた懸濁液を濾過し、得られた固形物を水で数回洗浄して、乾燥オーブンで50℃にて真空中で乾燥した。単離収率は、純度>98%(HPLC)の黄白色の結晶、bis[2−(メチルチオ)エチル]−2,5−ピペラジンジオン(III)6.5g(24.8mmol)(55%)であった。
【0081】
融点及びNMRデータは実施例1に合致した。
【0082】
実施例5:
手法Cによる2−ヒドロキシ−4−(メチルチオ)ブタンニトリル(3−(メチルメルカプト)プロピオンアルデヒドシアノヒドリン、MMP−CH)(IIe)からの3,6−bis[2−(メチルチオ)エチル]−2,5−ピペラジンジオン(III)(メチオニンジケトピペラジン、DKP)の合成
2−ヒドロキシ−4−(メチルチオ)ブタンニトリル(IIe)30.5g(0.232mol)及び水360gからなる溶液を、水20g中のNH4HCO322.4g(0.283mol=1.22 eq.)の懸濁液に室温にて緩徐に滴加して、2時間攪拌した。この間NH4HCO3が溶解した。その後、得られた溶液を50℃で7時間、その後室温で一晩攪拌した。この反応混合物を500mLスチール製オートクレーブに移し、160℃まで加熱し、この温度で6時間攪拌した。その後、オートクレーブを氷浴で冷却し、得られた懸濁液を濾過し、得られた固形物を水50mLで洗浄した。最後に、淡色の固形物を真空乾燥オーブンで50℃にて一晩乾燥した。単離収率は、純度>98%(HPLC)の黄白色の結晶、bis[2−(メチルチオ)エチル]−2,5−ピペラジンジオン(III)17.8g(67.8mmol)(58%)であった。
【0083】
融点及びNMRデータは実施例1に合致した。
【0084】
実施例6:
手法Cによる2−アミノ−4−(メチルチオ)ブタンニトリル(メチオニンニトリル)(IIf)からの3,6−bis[2−(メチルチオ)エチル]−2,5−ピペラジンジオン(III)(メチオニンジケトピペラジン、DKP)の合成
水330g中の2−アミノ−4−(メチルチオ)ブタンニトリル(IIf)26.2g(0.201mol)の溶液に中濃度のCO2を3時間かけて通気し、その間温度は45度に上昇し、pHは8に固定した。その後室温で一晩継続的に撹拌を行った。翌朝、反応混合物を500mLスチール製オートクレーブに移し、160℃まで加熱し、この温度で6時間攪拌した。その後、オートクレーブを氷浴で冷却し、得られた懸濁液を濾過し、得られた固形物を水50mLで洗浄し、真空乾燥オーブンで50℃にて一晩乾燥した。単離収率は、純度>98%(HPLC)の黄白色の結晶、bis[2−(メチルチオ)エチル]−2,5−ピペラジンジオン(III)15.7g(59.7mmol)(59%)であった。
【0085】
融点及びNMRデータは実施例1に合致した。
【0086】
実施例7:
手法Dによる3−(メチルチオ)プロパンアルデヒド(3−(メチルメルカプト)プロピオンアルデヒド、MMP)(IIg)からの3,6−bis[2−(メチルチオ)エチル]−2,5−ピペラジンジオン(III)(メチオニンジケトピペラジン、DKP)の合成
(NH4)2CO3 66.0g(0.68mol)を水100gに入れ、氷浴で5℃まで冷却した。その後、新たに蒸留したシアン化水素酸16.6g(0.61mol)を25分かけて滴加し、その間懸濁液の温度は5〜10℃に保った。水860gを添加した後、3−(メチルチオ)プロピオンアルデヒド(IIg)60.3g(0.58mol)を10℃で80分かけて滴加した。この間pHは8.5〜9の範囲内で一定したままであった。その後、反応混合物を50℃まで加熱し、この温度で7時間攪拌した。反応終了後、反応混合物を氷浴で5℃に冷却し、冷蔵庫で一晩保存した。翌朝、混合物を2Lスチール製オートクレーブに移し、160℃まで加熱し、この温度で6時間攪拌した。その後、オートクレーブを氷浴で冷却し、得られた懸濁液を濾過して水150mLで洗浄し、得られた固形物を真空乾燥オーブンで50℃にて一晩乾燥した。単離収率は、純度>98%(HPLC)の黄白色の結晶、bis[2−(メチルチオ)エチル]−2,5−ピペラジンジオン(III)48.6g(185.2mmol)(64%)であった。
【0087】
融点及びNMRデータは実施例1に合致した。
【0088】
実施例8:
手法Eによる濃縮塩酸を用いた3,6−bis[2−(メチルチオ)エチル]−2,5−ピペラジンジオン(III)(メチオニンジケトピペラジン、DKP)からのDD/LL/DL/LD−メチオニルメチオニン(I)の合成
3,6−bis[2−(メチルチオ)エチル]−2,5−ピペラジンジオン(III)(DKP)655.9g(2.50mol)を水1661gに懸濁した。撹拌中、濃縮塩酸271.0gをきわめて緩徐に滴加した後、慎重にきわめて激しく撹拌しながら加熱して還流した。この間、大量の発泡を来すことがある。この反応混合物を5.5時間加熱還流し、すべての固形物を溶解した。その後冷却する間に、未反応のDKP(III)が沈殿し、濾去した。このDKPはその後の反応で使用してさらに加水分解することができる。その後ガラスビーカーに入れた濾過物を、32%アンモニア水を加えた氷浴中で、pH6に調節した。この間、DD/LL/DL/LD−メチオニルメチオニン(I)が厚い塊の結晶の、2つのジアステレオマー対(DL/LD−Met−Met)(DL/DL−I)及び(DD/LL−Met−Met)(DD/LL−I)の50:50混合物として分離される。最後にこれを真空乾燥オーブンで60℃にて乾燥した。収率:純度98%(HPLC)のわずかに黄色を帯びた固形物、DD/LL/DL/LD−メチオニルメチオニン(I)601.0g(2.14mol)(85.7%)。
【0089】
DD/LL/DL/LD−メチオニルメチオニン(I)の1H−NMR
【0090】
DD/LL/DL/LD−メチオニルメチオニン(I)の13C−NMR
C10H20N2O3S2(M=280.41g/mol)の元素分析:
算出値:C42.83;H7.19;N9.99;S22.87
測定値:C42.61;H7.19;N10.06;S22.72
【0091】
実施例9:
手法Eによる濃縮塩酸を用いた3,6−bis[2−(メチルチオ)エチル]−2,5−ピペラジンジオン(III)(メチオニンジケトピペラジン、DKP)からのDD/LL/DL/LD−メチオニルメチオニン(I)の実生産規模の合成
水500Lを撹拌機付500Lエナメル塗装タンクに入れ、濃縮塩酸32L及び3,6−bis[2−(メチルチオ)エチル]−2,5−ピペラジンジオン(III)(DKP)78.6kgを添加し、この装置を密閉した。その後、2時間攪拌しながら110℃まで加熱し、この間圧力は2.5バールまで上昇して、DKP(III)はほぼ完全に溶解した。反応終了後、混合物を20℃まで冷却し、未反応のDKPを遠心分離器で沈降させた。固形物を水10Lで洗浄した。濾過物及び洗浄水を800L入り容器に収集し、その後再度撹拌機付き500Lタンクに入れた。活性炭2kgを添加した後、20℃で30分間攪拌した。懸濁液をフィルタープレスを介して濾過し、別の撹拌機付き500Lタンクに移した。濃縮アンモニア溶液約28Lを添加して、pH6でDD/LL/DL/LD−メチオニルメチオニン(I)を沈殿させた。この間、溶解度の低いラセミ対であるジアステレオマーDL/LD−メチオニルメチオニン(DL/LD−I)が最初に優先的に沈殿する。これを遠沈して、蒸気噴射ポンプ中で40℃を超えない内部温度で、母液を洗浄水とともにもともとの1/4量まで濃縮した。この間、溶解度の高いラセミ対であるジアステレオマーDD/LL−メチオニルメチオニン(DD/LL−I)が、少量の溶けにくいDL/LD−Iとともに結晶化した。蒸留終了の後、20℃まで冷却して遠心分離した。分離した母液及び洗浄水を廃棄した。両分画を真空中で70℃にて乾燥した。ジアステレオマーの混合物としてDD/LL/DL/LD−メチオニルメチオニン(I)合計64.2kg(78%)が得られた。純度は>98%(HPLC)であった。
【0092】
融点及びNMRデータは実施例8に合致した。
【0093】
実施例10:
手法Fによる例えばアンモニアを用いたアルカリ条件下での3,6−bis[2−(メチルチオ)エチル]−2,5−ピペラジンジオン(III)(メチオニンジケトピペラジン、DKP)からのDD/LL/DL/LD−メチオニルメチオニン(I)の合成
3,6−bis[2−(メチルチオ)エチル]−2,5−ピペラジンジオン(III)(DKP)65.6g(0.25mol)、25%アンモニア溶液70mL及び水500mLをオートクレーブ中で150℃にて2時間加熱する。冷却後、未反応のDKP(III)(16.0g=24.4%)を吸引濾過により除去する。これはその後のバッチで再度使用可能である。濾過物を回転式蒸発器で水温80〜90℃にて、最初の結晶が分離されるまで濃縮した。冷却して一晩静置した後、濾過及び乾燥して、白色の固形物として、2つのジアステレオマー対DL/DL−I及びDD/LL−Iの50:50混合物、DD/LL/DL/LD−メチオニルメチオニン(I)合計49.3g(70.3%)を得ることができた。純度は98%(HPLC)であった。
【0094】
融点及びNMRデータは実施例8に合致した。
【0095】
実施例11:
DD/LL/DL/LD−メチオニルメチオニン(I)の精製
DD/LL/DL/LD−メチオニルメチオニン(I)500gを脱イオン水7800g(pH5.3)中に懸濁した。26℃で、50質量%の硫酸346.6gを用いてpHを1.0に調節した。メチオニルメチオニンを完全に溶解した。活性炭18gを黄色を帯びた混濁液に添加して60分間撹拌し、溶液を清澄化した。活性炭を濾去し、無色透明の溶液のpHを、32質量%のアンモニア溶液228gを用いて5.6に調節した。溶液を一晩静置した。沈殿した白色の固形物を吸引濾過により除去し、真空乾燥オーブンで50℃にて乾燥した。収率:純度>99%(HPLC)の鮮やかな白色の固形物、DD/LL/DL/LD−メチオニルメチオニン(I)460.5g(92%)。
【0096】
NMRデータは実施例8に合致した。
【0097】
実施例12:
手法GによるKOHを用いたN−カルバモイルメチオニン(IIa)及びDL−メチオニンからのDD/LL/DL/LD−メチオニルメチオニン(I)の合成
DL−メチオニン13.4g(0.09mol)、N−カルバモイルメチオニン(IIa)17.5g(0.09mol、純度:99%)及び純度85%のKOH11.9g(0.18mol)を水150mLに溶解し、撹拌子を用いて150℃で5時間、Roth Steel社製200mLオートクレーブ中で攪拌し、その間圧力は6バールまで上昇した。反応終了後、オートクレーブを冷却し、沈殿した3,6−bis[2−(メチルチオ)エチル]−2,5−ピペラジンジオン(III)(メチオニンジケトピペラジン、DKP)を濾去し、少量の水で洗浄した。洗浄水及び母液を合わせて、回転式蒸発器で40℃にて130mLになるまで濃縮した。得られた溶液に中濃度のCO2を3時間かけて通気し、pHを6.4とし、白色の固形物を沈殿させた。これを濾去し、少量の冷水で洗浄して、真空乾燥オーブンで50℃にて一晩乾燥した。単離収率は、純度>98%(HPLC)の白色の固形物、DD/LL/DL/LD−メチオニルメチオニン(I)11.4g(40.6mmol)(45%)であった。
【0098】
NMRデータは実施例8に合致した。
【0099】
実施例13:
手法GによるKOHを用いた5−[2−(メチルチオ)エチル]−2,4−イミダゾリジンジオン(IId)(メチオニンヒダントイン)及びDL−メチオニンからのDD/LL/DL/LD−メチオニルメチオニン(I)の合成
DL−メチオニン13.4g(0.09mol)、メチオニンヒダントイン(IId)17.2g(0.09mol、純度:91%)及び純度85%のKOH8.9g(0.135mol)を水150mLに溶解し、撹拌子を用いて150℃で5時間、Roth Steel社製200mLオートクレーブ中で攪拌し、その間圧力は8バールまで上昇した。反応終了後、オートクレーブを冷却し、得られた懸濁液を濾過して、沈殿した3,6−bis[2−(メチルチオ)エチル]−2,5−ピペラジンジオン(III)(メチオニンジケトピペラジン、DKP)を少量の水で数回洗浄した。母液及び洗浄水を合わせて、得られた溶液を回転式蒸発器で40℃にて125mLになるまで濃縮した。濃縮物を濃縮塩酸で慎重に中和した。室温でpH5.8にて一晩攪拌して白色の固形物を沈殿させた。この固形物を濾去し、少量の冷水で洗浄して、真空乾燥オーブンで50℃にて一晩乾燥した。単離収率は、純度>98%(HPLC)の白色の固形物、DD/LL/DL/LD−メチオニルメチオニン(I)17.5g(62.4mmol)(69%)であった。
【0100】
NMRデータは実施例8に合致した。
【0101】
実施例14:
手法GによるK2CO3を用いた5−[2−(メチルチオ)エチル]−2,4−イミダゾリジンジオン(IId)(メチオニンヒダントイン)及びDL−メチオニンからのDD/LL/DL/LD−メチオニルメチオニン(I)の合成
DL−メチオニン13.4g(0.09mol)、メチオニンヒダントイン(IId)17.2g(0.09mol、純度:91%)及びK2CO312.4g(0.09mol)を水150mLに溶解し、撹拌子を用いて150℃で5時間、Roth Steel社製200mLオートクレーブ中で攪拌し、その間圧力は12バールまで上昇した。反応終了後、オートクレーブを冷却し、沈殿した3,6−bis[2−(メチルチオ)エチル]−2,5−ピペラジンジオン(III)(メチオニンジケトピペラジン、DKP)を濾去して少量の水で洗浄した。洗浄水及び母液を合わせて、回転式蒸発器で40℃にて135mLになるまで濃縮した。得られた溶液に中濃度のCO2を通気してpHを6.8とし、白色の固形物を沈殿させた。これを濾去し、少量の冷水で洗浄して、真空乾燥オーブンで50℃にて一晩乾燥した。収率:純度>99%(HPLC)の白色の固形物、DD/LL/DL/LD−メチオニルメチオニン(I)14.3g(60.0mmol)(57%)。
【0102】
NMRデータは実施例8に合致した。
【0103】
実施例15:
手法GによるKHCO3を用いた5−[2−(メチルチオ)エチル]−2,4−イミダゾリジンジオン(IId)(メチオニンヒダントイン)及びDL−メチオニンからのDD/LL/DL/LD−メチオニルメチオニン(I)の合成
DL−メチオニン13.4g(0.09mol)、メチオニンヒダントイン(IId)17.2g(0.09mol、純度:91%)及びKHCO39.1g(0.09mol)を水150mLに溶解し、撹拌子を用いて150℃で5時間、Roth Steel社製200mLオートクレーブ中で攪拌し、その間圧力は12バールまで上昇した。反応終了後、オートクレーブを冷却し、沈殿した3,6−bis[2−(メチルチオ)エチル]−2,5−ピペラジンジオン(III)(メチオニンジケトピペラジン、DKP)を濾去して少量の水で洗浄した。洗浄水及び母液を合わせて、回転式蒸発器で40℃にて120mLになるまで濃縮した。得られた溶液に中濃度のCO2を通気してpHを6.3とし、白色の固形物を沈殿させた。これを濾去し、少量の冷水で洗浄して、真空乾燥オーブンで50℃にて一晩乾燥した。収率:純度>99%(HPLC)の白色の固形物、DD/LL/DL/LD−メチオニルメチオニン(I)16.0g(57.1mmol)(63%)。
【0104】
NMRデータは実施例8に合致した。
【0105】
実施例16:
手法Hによる(NH4)2CO3を用いた2−アミノ−4−(メチルチオ)ブタノアミド(IIc)(メチオニンアミド)及びDL−メチオニンからのDD/LL/DL/LD−メチオニルメチオニン(I)の合成
2−アミノ−4−(メチルチオ)ブタノアミド(IIc)塩酸塩8.3g(0.045mol)、メチオニン6.7g(0.045mol)、(NH4)2CO34.3g(0.045mol)及び純度85%のKOH3.0g(0.045mol)を水75gに溶解し、撹拌子を用いて160℃で6時間、Roth Steel社製200mLオートクレーブ中で攪拌した。その後、オートクレーブを氷浴で冷却し、得られた懸濁液を濾去し、沈殿した3,6−bis[2−(メチルチオ)エチル]−2,5−ピペラジンジオン(III)(メチオニンジケトピペラジン、DKP)を少量の水で洗浄した。洗浄水及び母液を合わせて、回転式蒸発器で40℃にて70mLになるまで濃縮した。得られた溶液に中濃度のCO2を通気してpHを6.3とし、白色の固形物を沈殿させた。これを濾去し、少量の冷水で洗浄して、真空乾燥オーブンで50℃にて一晩乾燥した。収率:純度>98%(HPLC)の白色の固形物、DD/LL/DL/LD−メチオニルメチオニン(I)7.8g(27.8mmol)(62%)。
【0106】
NMRデータは実施例8に合致した。
【0107】
実施例17:
手法HによるNH4HCO3を用いた2−ヒドロキシ−4−(メチルチオ)ブタンニトリル(IIe)(3−(メチルメルカプト)プロピオンアルデヒドシアノヒドリン、MMP−CH)及びDL−メチオニンからのDD/LL/DL/LD−メチオニルメチオニン(I)の合成
水10g中のNH4HCO3 11.1g(0.141mol=1.22 eq.)の懸濁液に、2−ヒドロキシ−4−(メチルチオ)ブタンニトリル(IIe)15.2g(0.116mol)を室温にて緩徐に滴加し、2時間攪拌した。この間、NH4HCO3は溶解した。その後、水180gを添加し、得られた溶液を50℃で7時間、室温で一晩攪拌した。翌朝、メチオニン17.3g(0.116mol)、純度85%のKOH7.7g(0.116mol)及びさらに水180gを添加し、この反応混合物を1Lスチール製オートクレーブに移し、160℃まで加熱して、この温度で6時間攪拌した。その後、オートクレーブを氷浴で冷却し、得られた懸濁液を濾過して、沈殿した3,6−bis[2−(メチルチオ)エチル]−2,5−ピペラジンジオン(III)(メチオニンジケトピペラジン、DKP)を水100mLで洗浄した。母液及び洗浄水を合わせて、得られた溶液を回転式蒸発器で40℃にて160mLになるまで濃縮した。濃縮物を50%硫酸で慎重に中和した。室温でpH5.4にて一晩攪拌して白色の固形物を沈殿させた。この固形物を濾去し、少量の冷水で洗浄して、真空乾燥オーブンで50℃にて一晩乾燥した。収率:純度>99%(HPLC)の白色の固形物、DD/LL/DL/LD−メチオニルメチオニン(I)15.2g(54.2mmol)(47%)。
【0108】
NMRデータは実施例8に合致した。
【0109】
実施例18:
手法HによるCO2及びDL−メチオニンを用いた2−アミノ−4−(メチルチオ)ブタンニトリル(IIf)(メチオニンニトリル)からのDD/LL/DL/LD−メチオニルメチオニン(I)の合成
水330g中の2−アミノ−4−(メチルチオ)ブタンニトリル(IIf)26.2g(0.201mol)の溶液に3時間かけて中濃度のCO2を通気して、その間温度は45℃に上昇し、pHは8に固定した。その後、撹拌を室温にて一晩継続した。翌朝、反応混合物をメチオニン30.0g(0.201mol)及び純度85%のKOH13.3g(0.201mol)と混合して1Lスチール製オートクレーブに移し、160℃まで加熱し、この温度で6時間攪拌した。その後、オートクレーブを氷浴で冷却し、得られた懸濁液を濾過し、沈殿した3,6−bis[2−(メチルチオ)エチル]−2,5−ピペラジンジオン(III)(メチオニンジケトピペラジン、DKP)を少量の水で洗浄した。洗浄水及び母液を合わせて、得られた溶液を回転式蒸発器で40℃にて280mLになるまで濃縮した。得られた溶液に中濃度のCO2を通気してpHを6.0とし、白色の固形物を沈殿させた。これを濾去し、少量の冷水で洗浄して、真空乾燥オーブンで50℃にて一晩乾燥した。収率:純度>98%(HPLC)の白色の固形物、DD/LL/DL/LD−メチオニルメチオニン(I)32.7g(116.6mmol)(58%)。
【0110】
NMRデータは実施例8に合致した。
【0111】
実施例19:
手法Jによるシアン化水素酸、炭酸アンモニウム及びDL−メチオニンを用いた3−(メチルチオ)プロパンアルデヒド(IIg)(MMP)からのDD/LL/DL/LD−メチオニルメチオニン(I)の合成
(NH4)2CO366.0g(0.68mol)を水100g中に入れ、氷浴で5℃まで冷却した。その後、新たに蒸留したシアン化水素酸16.55g(0.612mol)を25分かけて滴加し、その間懸濁液の温度は5〜10℃に保った。水500gを添加した後、3−(メチルチオ)プロピオンアルデヒド(IIg)60.3g(0.58mol)を10℃で80分かけて滴加した。この間pHは8.5〜9の範囲内で一定したままであった。その後、反応混合物を50℃まで加熱し、この温度で7時間攪拌した。反応終了後、反応混合物を氷浴で5℃に冷却し、冷蔵庫で一晩保存した。翌朝、2−アミノ−4−(メチルチオ)ブタン酸(メチオニン)86.5g(0.58mol)、純度85%のKOH38.3g(0.58mol)及びさらに水530gを添加した。この混合物を2Lスチール製オートクレーブに移し、160℃まで加熱し、この温度で6時間攪拌した。その後、オートクレーブを氷浴で冷却し、得られた懸濁液を濾過して、沈殿した3,6−bis[2−(メチルチオ)エチル]−2,5−ピペラジンジオン(III)(メチオニンジケトピペラジン、DKP)を少量の水で洗浄した。洗浄水及び母液を合わせて、溶液を回転式蒸発器で40℃にて800mLになるまで濃縮した。得られた溶液に中濃度のCO2を通気してpHを6.0とし、白色の固形物を沈殿させた。これを濾去し、少量の冷水で洗浄して、真空乾燥オーブンで50℃にて一晩乾燥した。収率:純度>98%(HPLC)の白色の固形物、DD/LL/DL/LD−メチオニルメチオニン(I)85.1g(0.30mol)(52%)。
【0112】
NMRデータは実施例8に合致した。
【0113】
実施例20:
手法KによるDD/LL/DL/LD−メチオニルメチオニン(I)からの分画結晶化による2つのジアステレオマー対DD/LL−メチオニルメチオニン(DD/LL−I)及びDL/LD−メチオニルメチオニン(DL/LD−I)の分離
a) DL/LD−メチオニルメチオニン(DL/LD−I):
DD/LL/DL/LD−メチオニルメチオニン(I)(DD/LL−IとDL/LD−Iの50:50混合物)290.4gを脱イオン水2614g中に懸濁し、50質量%の硫酸381.7gを用いてpHを0.6に調節した。この無色透明の溶液のpHを、32質量%のアンモニア溶液265.9gを用いて5.6に調節し、得られた白色の沈殿物を吸引濾過で除去した(湿重量580.9g)。最後に、この固形物を真空乾燥オーブンで50℃にて乾燥した。収率は、純度>98%(HPLC)、融点232〜233℃(分解)の白色の固形物、DL/LD−メチオニルメチオニン(DL/LD−I)126.2g(86.9%)であった。
【0114】
DL/LD−メチオニルメチオニン(DL/LD−I)の1H−NMR
【0115】
DL/LD−メチオニルメチオニン(DL/LD−I)の13C−NMR
溶解度(水、20℃):0.4g/L
【0116】
b) DD/LL−メチオニルメチオニン(DD/LL−I):
a)で得られた無色の母液を、ウォーターポンプ真空下で回転式蒸発器で35℃にて濃縮した。白色の懸濁液が得られた。硫酸アンモニウム、DL/LD−Iの残留物及び標的化合物からなるこの白色の固形物を吸引濾過により除去し、50℃で真空乾燥した。脱イオン水中でこの混合物を懸濁し、攪拌することにより、3つの固形物を分離した。未溶解のDL−LD−Iを吸引濾過により除去し、母液をウォーターポンプ真空下で回転式蒸発器で50℃にて約1/5量まで濃縮した。長時間静置した後、DD/LL−メチオニルメチオニン(DD/LL−I)が白色の固形物として結晶化した。最後にこれを吸引濾過により除去し、真空乾燥オーブンで50℃にて乾燥した。収率は、>96%(HPLC)、融点226〜227℃(分解)の白色の固形物、DD/LL−メチオニルメチオニン(DD/LL−I)に基づき78.2g(53.9%)であった。
【0117】
DD/LL−メチオニルメチオニン(DD/LL−I)の1H−NMR
【0118】
DD/LL−メチオニルメチオニン(DD/LL−I)の13C−NMR
溶解度(水、20℃):21.0g/L
【0119】
実施例21:
基本的な条件下での2つのジアステレオマー対DD/LL−メチオニルメチオニン(DD/LL−I)及びDL/LD−メチオニルメチオニン(DL/LD−I)のラセミ化
a) DL/LD−メチオニルメチオニン(DL/LD−I)のラセミ化
Roth社製200mL実験室規模反応器中でジアステレオマー対DL/LD−メチオニルメチオニン(DL/LD−I)12.6g(45.0mmol)を、K2CO3 3.1g(22.5mmol)とともに水75mLに溶解し、攪拌しながら160℃まで加熱した。この間、圧力は7バールまで上昇した。この温度を6時間保った後、オートクレーブを氷浴で冷却した。得られた懸濁液を濾過し、固形物を濾去し、水で数回洗浄して、真空乾燥オーブンで50℃にて乾燥した。単離収率は、純度>98%、融点234〜236℃の黄白色の結晶、bis[2−(メチルチオ)エチル]−2,5−ピペラジンジオン(III)6.5g(24.8mmol)(55%)であった;ジアステレオマー比:52:48(DD/LL−III:meso−III)。洗浄水及び母液を合わせて、回転式蒸発器で40℃にて25mLになるまで濃縮した。得られた溶液に中濃度のCO2を通気してpHを6.0とし、白色の固形物を沈殿させた。これを濾去し、少量の冷水で洗浄して、真空乾燥オーブンで50℃にて一晩乾燥した。単離収率は、純度>98%(HPLC)の白色の固形物、DD/LL/DL/LD−メチオニルメチオニン(I)5.7g(20.3mmol)(45%)であった。
【0120】
NMRデータは実施例8に合致した。
【0121】
a) DD/LL−メチオニルメチオニン(DD/LL−I)のラセミ化
Roth社製200mL実験室規模反応器中でDD/LL−メチオニルメチオニン(DD/LL−I)12.6g(45.0mmol)を、KHCO3 4.5g(45.0mmol)とともに水75mLに溶解し、攪拌しながら160℃まで加熱した。この間、圧力は7バールまで上昇し、この温度を6時間保った後、オートクレーブを氷浴で冷却した。得られた懸濁液を濾過し、濾過された固形物を水で数回洗浄して、真空乾燥オーブンで50℃にて乾燥した。単離収率は、純度>98%(HPLC)、融点233〜236℃の黄白色の結晶、bis[2−(メチルチオ)エチル]−2,5−ピペラジンジオン(III)6.0g(22.9mmol)であった;ジアステレオマー比:54:46(DD/LL−III:meso−III)。洗浄水及び母液を合わせて、回転式蒸発器で40℃にて25mLになるまで濃縮した。得られた溶液に中濃度のCO2を通気してpHを6.0とし、白色の固形物を沈殿させた。これを濾去し、少量の冷水で洗浄して、真空乾燥オーブンで50℃にて一晩乾燥した。単離収率は、純度>98%(HPLC)の白色の固形物、DD/LL/DL/LD−メチオニルメチオニン(I)5.5g(19.6mmol)(44%)であった。
【0122】
NMRデータは実施例8に合致した。
【0123】
実施例22:
雑食性のコイ由来の消化酵素を用いたDL−メチオニル−DL−メチオニン(I)のin vitro消化実験
a) 鯉(Cyprinus carpio morpha noblis)からの消化酵素の単離
消化酵素の単離方法はEID及びMATTY法に従った(Aquaculture 1989,79,111−119)。この目的のため1歳齢の鯉(Cyprinus carpio morpha noblis)5匹の腸を摘出し、水で洗い流し、縦方向に切開して、各例で腸粘膜を剥離した。これを一緒にして砕いた氷とともに混合機で粉末状にした。得られた懸濁液を超音波プローブで処理して、依然として無傷の細胞を破壊した。懸濁液を4℃で30分遠心分離して細胞成分と脂肪を分離し、ホモジネートの上清を回収して、微量のチメロサールで滅菌した。鯉5匹から腸粘膜由来の酵素溶液260.7mLを得、この溶液を暗所で4℃にて保存した。
【0124】
b) in vitro消化実験の手順
DL−メチオニル−DL−メチオニン(I)及び対応するジアステレオマー対DD/LL−I及びDL/LD−IをTRIS/HCl緩衝液中に取り、酵素溶液と混合した。各例で比較のため酵素溶液を入れずにブランクを作成し、純粋に化学的な開裂率を推定した。時々試料を採取し、その組成を検出して較正HPLCを用いて定量を実施した。変換率は、メチオニン面積及びメチオニルメチオニン(I)面積の率として決定した(図6及び7参照)。
【0125】
【表1】
【0126】
実施例23:
肉食性のマス由来の消化酵素を用いたDL−メチオニル−DL−メチオニン(I)のin vitro消化実験
a) ニジマス(Oncorhynchus mykiss)からの消化酵素の単離
消化酵素の単離方法はEID及びMATTY法に従った(Aquaculture 1989,79,111−119)。この目的のため1歳齢のニジマス(Oncorhynchus mykiss)6匹の腸を摘出し、実施例22に記載の方法で処理した。
b) in vitro消化実験の手順
in vitro実験を実施例22と同じく実施した(図8及び9参照)。
【0127】
【表2】
【0128】
実施例24:
雑食性のエビ由来の消化酵素を用いたDL−メチオニル−DL−メチオニン(I)のin vitro消化実験
a) バナメイエビ(Litopenaeus Vannamei)からの消化酵素の単離
消化酵素の単離方法はEzquerraとGarcia−Carrenoの方法に従った(J.Food Biochem.1999,23,59−74)。この目的のためバナメイエビ(Litopenaeus Vannamei)5kgから肝膵臓を摘出し、これを一緒にして砕いた氷とともに混合機で粉末状にした。さらに、実施例22と同じ方法で処理を実施した。
b) in vitro消化実験の手順
in vitro実験を実施例22と同じく実施した(図10及び11参照)。
【0129】
【表3】
【0130】
実施例25:
鯉の腸、肝及び膵由来の酵素を用いたD−メチオニンのL−メチオニンへの生体内変換
a) 鯉(Cyprinus carpio morpha noblis)からの消化酵素の単離
消化酵素の単離方法はEID及びMATTY法に従った(Aquaculture 1989,79,111−119)。この目的のため1歳齢の鯉(Cyprinus carpio morpha noblis)5匹の腸を摘出し、実施例22に記載の通り処理した。肝酵素を単離するため、実施例22の腸酵素の処理と同じ方法で、肝を摘出し、ホモジナイズして処理した。膵からの酵素の単離手順もこれと同じであった。
b) D−メチオニンのL−メチオニンへのin vitro生体内変換の手順
D−メチオニンを緩衝液に取り、酵素溶液を添加した。各例で比較のため酵素溶液を入れずにブランクを作成し、純粋に化学的な変換率を推定した。24時間後試料を採取し、その組成を検出して較正HPLCを用いて定量を実施した。変換率は、L−メチオニン面積及びD−メチオニン(I)面積の率として決定した(図4参照)。
【0131】
【表4】
緩衝液:
クエン酸塩緩衝液:pH5、pH6及びpH7
リン酸塩緩衝液:pH8
TRIS/HCl緩衝液:pH9
腸、肝及び膵酵素からなる酵素カクテル(5%コイ溶液に相当):
腸粘膜由来の酵素溶液2.6mL
肝由来の酵素溶液3.5mL
膵由来の酵素溶液5.6mL。
【0132】
実施例26:
メチオニルメチオニンジアステレオマー混合物LL/DD/LD/DL−I、DD/LL−I及びDL/LD−Iの飼料ペレットからの浸出特性のDL−メチオニン、MHA及びカルシウムMHAとの比較
混合飼料:
基質として使用した飼料は、例えば大豆ミール、ダイズ油、コーンスターチ、小麦ミール、フィッシュミール、セルロース、結晶必須アミノ酸及びプレミックスとしてのミネラル類及びビタミン類といった従来の成分からなるメチオニン欠乏混合飼料であった。この混合物に、各例で20kgバッチに対し、第5表に記載のメチオニン誘導体を0.25%添加率(硫黄等価物に基づく)でバッチ式に添加し、ホモジナイズした後、ペレット成形して水蒸気処理した。メチオニルメチオニン(I)と比較するため、各例でDL−メチオニン、MHA(メチオニンヒドロキシ類似体)及びカルシウムMHAを用いてペレット成形実験を実施した。また、メチオニン誘導体を添加せずにペレット成形することにより対照実験を実施した(第5表参照)。
【0133】
【表5】
【0134】
メチオニルメチオニン(I)のジアステレオマーはすべて、ペレット成形工程及び水蒸気処理の間、安定であった(第6表参照)。
【0135】
【表6】
【0136】
この場合、アミノ酸の測定はEU法98/64/ECに従った。遊離アミノ酸及びメチオニルメチオニン(I)を抽出した後、ニンヒドリンを用いたポストカラム誘導体化法により、アミノ酸検出機を用いてこれらを測定した(第6表参照)。
【0137】
その後、メチオニルメチオニン(I)ジアステレオマーの飼料ペレットからの浸出特性を水中で実験した。この場合、水中でのメチオニルメチオニンの溶出は、時間、温度、水の組成(海水又は淡水)の関数として決定した。この目的のため、飼料ペレット20.0gを目の細かい篩袋に入れ、三角フラスコ中の水200gに完全に浸漬した。その後、一定温度20℃にて三角フラスコ全体を振盪機で連続的に振盪した。その後、規定の間隔で各例にて水試料を採取し、水中の個々のメチオニルメチオニンジアステレオマー対の含量をHPLCで測定した(第7表参照)。
【0138】
【表7】
【0139】
比較のため、各例でDL−メチオニン、MHA又はカルシウムMHAを添加した飼料ペレットを同じ条件下で実験し、それぞれの条件下でその水中浸出特性を測定した(図5及び第7表参照)。
【技術分野】
【0001】
本発明は、メチオニンのジペプチドであるメチオニルメチオニンの新規の化学的合成方法及び魚類及び甲殻類飼料用の単独又はメチオニンと混合しての飼料添加物としてのその特異的使用に関する。
【0002】
メチオニン、リジン又はスレオニンなどの必須アミノ酸(EAA)は動物飼料の添加物としてきわめて重要な成分であり、鶏、豚及び反芻動物などの家畜の商業的飼育において重要な役割を果たす。大豆、トウモロコシ及び小麦などの天然タンパク源にEAAを添加することで、動物をより早く成長させ、酪農では産出量の高い乳牛を得ることができる一方で、飼料の使用がより効率的になる。これはきわめて大きな商業的利点である。飼料添加剤市場は大きな産業的及び商業的重要性を有する。また、これらは高成長市場であり、例えば中国及びインドといった国々が存在感を強めている一因でもある。
【0003】
L−メチオニン((S)−2−アミノ−4−メチルチオ酪酸)は、鶏、アヒル、七面鳥など多数の種及び多くの魚類及び貝類における第一の制限アミノ酸であるため、動物飼料において飼料添加剤としてきわめて重要な役割を果たす(Rosenberg et al.,J.Agr.Food Chem.1957,5,694−700及びLovell,T.R.,J.Anim.Sci.1991,69,4193−4200)。しかし、従来の化学合成法では、メチオニンはD−及びL−メチオニンの50:50混合物のラセミ化合物として生成される。ただし、動物種によってはin vivo条件下でメチオニンの非天然Dエナンチオマーを天然Lエナンチオマーに変換する変換機序を有するため、このラセミ体DL−メチオニンは飼料添加剤として直接使用することができる。これに伴い、D−メチオニンは最初に非特異的D−オキシダーゼによりα−ケトメチオニンへと脱アミノ化され、その後さらにL−トランスアミナーゼによりL−メチオニンへと変換される(Baker,D.H."Amino acids in farm animal nutrition",D’Mello,J.P.F.(ed.),Wallingford(UK),CAB International,1994,37−61)。体内のL−メチオニンの利用可能量がこれにより増加し、その動物を成長させることができる。D−からL−メチオニンへの酵素変換は鶏、豚及び牛で認められているが、特に肉食性及び雑食性の魚及びエビならびに小エビにも認められている。このため、例えばSveierら(Aquacult.Nutr.2001,7(3),169−181)及びKimら(Aquaculture 1992,101(1−2),95−103)はD−からL−メチオニンへの変換が肉食性のタイセイヨウサケ及びニジマスで可能であると示すことができた。Robinsonら(J.Nutr.1978,108(12),1932−1936)及びSchwarzら(Aquaculture 1998,161,121−129)は、例えばナマズ及びコイといった雑食性の魚類で同様のことを示すことができた。また、ForsterとDominy(J.World Aquacult.Soc.2006,37(4),474−480)は、雑食性のエビLitopenaeus vannameiを対象とした飼料実験で、DL−メチオニンがL−メチオニンと同じ活性を有すると示すことができた。
【0004】
結晶DL−メチオニン及びラセミ体の液体メチオニンヒドロキシ類似体(MHA、rac−2−ヒドロキシ−4−(メチルチオ)ブタン酸(HMB))及び固形のカルシウムMHAの2007年の世界生産量は700,000トンを超え、例えば鶏及び豚などの単胃動物用の飼料添加剤に直接使用され成功をみた。高度に工業化された魚及び甲殻類の養殖業は急速に商業的発展を遂げたため、近年まさにこの分野において至適な経済的かつ効率的なメチオニン添加方法は重要性を増してきている(Food and Agriculture Organization of the United Nation(FAO)Fisheries Department"State of World Aquaculture 2006",2006,Rome,International Food Policy Research Institute(IFPRI)"Fish 2020:Supply and Demand in Changing Markets",2003,Washington,D.C.)。しかし、鶏及び豚とは異なり、特定の魚類及び甲殻類ではメチオニン、MHA又はCa−MHAの飼料添加剤としての使用には種々の問題が起きている。このため、RumseyとKetola(J.Fish.Res.Bd.Can.1975,32,422−426)は、大豆飼料に単一の結晶アミノ酸を添加して使用してもニジマスの成長は全く促進されないことを報告している。Muraiら(Bull.Japan.Soc.Sci.Fish.1984,50,(11),1957)は、魚用飼料に高率で結晶アミノ酸を添加してコイに毎日与えたところ、40%超の遊離アミノ酸がエラ及び腎から排泄されることを示すことができた。食餌の摂取直後に添加されたアミノ酸は急速に吸収されるため、魚の血漿中アミノ酸濃度はきわめて急速に上昇する(即応性)。しかし、この時点で、例えば大豆飼料などの天然タンパク源由来の他のアミノ酸はまだ血漿中には存在しないため、重要なアミノ酸すべてが同時に利用できない可能性がある。この結果、高濃度のアミノ酸の一部は急速に排泄され、又は体内で急速に代謝され、例えば純粋なエネルギー源として使用される。その結果、結晶アミノ酸を飼料添加剤として使用しても成長に促進はわずかしか認められない又は全く認められない(Aoe et al.,Bull.Jap.Carp Soc.Sci.Fish.1970,36,407−413)。結晶アミノ酸の添加は甲殻類ではさらに大きな問題をもたらしうる。例えばLitopenaeus Vannamei種のエビなど特定の甲殻類は摂食行動が緩徐であり、飼料が長時間水中に留まるため、添加された水溶性アミノ酸は溶け出してしまい(浸出)、水が富栄養化し、動物の成長の促進には至らない(Alam et al.,Aquaculture 2005,248,13−16)。
【0005】
このため、水産養殖場で飼育する魚類及び甲殻類に効率的に給餌を行うには、特定の動物種及び応用例では、例えばしかるべく化学的又は物理的に保護したメチオニンなどの特異的なメチオニン製品が必要である。この目的は、一方では給餌中水性環境においてその製品を十分安定にし、飼料の外へ溶出しないようにすることである。他方では動物に摂取されたそのメチオニン製品が動物の体内で至適かつ高効率に使用されるようにすることである。
【0006】
過去には、魚類及び甲殻類用の特にメチオニンを主成分とする好適な飼料添加剤を開発するため、数多くの努力がなされてきた。例えば、WO8906497は魚類及び甲殻類用の飼料添加剤としてのジ−及びトリペプチドの使用を記述している。当該発明の目的は動物の成長を促進させることである。しかし、この場合に使用するのに好ましいとされたジ−及びトリペプチドは、例えばグリシン、アラニン及びセリンなどの非必須アミノ酸、すなわち非制限アミノ酸由来であった。記載の唯一のメチオニン含有ジペプチドはDL−アラニル−DL−メチオニン及びDL−メチオニル−DL−グリシンである。しかし、これは、このジペプチド中に有効に存在する活性物質はわずか50%(mol/mol)であることを意味し、経済的な観点からはきわめて不利であると言わざるを得ない。WO02088667はMHAオリゴマー及び例えばメチオニンなどのアミノ酸のエナンチオ選択的合成及びとりわけ魚類及び甲殻類用の飼料添加剤としての使用を記述している。これにより、より早い成長を達成することが可能であるという。記載のオリゴマーは酵素触媒反応により組み立てられ、個々のオリゴマーはきわめて広範囲の鎖長分布を呈する。これにより、製造は非選択的になり、製造及び精製はコストも手間もかかる。DabrowskiらはUS20030099689で、水産動物の成長を促進する飼料添加剤としての合成ペプチドの使用を記述している。この場合、全飼料組成におけるペプチドの比率は6〜50質量%である。この合成ペプチドは好ましくは必須及び制限アミノ酸から構成される。しかし、かかる合成オリゴ及びポリペプチドの合成は非常に手間がかかり高コストで、実生産規模に変換するのが困難である。また、単一アミノ酸のポリペプチドは生理学的条件下では遊離アミノ酸にきわめて緩徐にしか変換されない、又は全く変換されないことが多いため、その有効性には異論がある。このため、例えばBakerら(J.Nutr.1982,112,1130−1132)は、ポリ−L−メチオニンが水には全く溶けず、体への吸収が不可能であるため、鶏における生物学的価値がないことを記述している。
【0007】
例えばメチオニン含有ペプチド及びオリゴマーなどの新規の化学的メチオニン誘導体の使用のほか、例えばアミノ酸の保護マトリックスへのコーティング及び組み込みといった種々の物理的保護の可能性も研究されてきた。例えば、Alamら(Aquacult.Nutr.2004,10,309−316及びAquaculture 2005,248,13−19)は、コーティングされたメチオニン及びリジンが未コーティング時とは対照的に、若いクルマエビの成長にきわめて好ましい影響を与えることを示すことができた。特異的なコーティングの使用は飼料ペレットからのメチオニン及びリジンの浸出を抑制することができたが、いくつかの深刻な欠点もある。メチオニンの製造又はコーティングは、通常技術的に複雑かつ手間のかかる方法であり、そのためコストがかかる。また、コーティング後のメチオニンのコーティング表面は飼料の加工中、機械的応力及び摩耗により損傷を受けやすく、物理的保護が低下する、又は完全に失われることがある。もう一つの因子は、コーティング又はマトリックス物質の使用によりメチオニンの含量が減少し、そのためしばしば不経済になることである。
【0008】
DL−メチオニル−DL−メチオニンの飼料ペレット及び押出成形品からの浸出特性が低い飼料添加剤としての新規使用方法の発明及びメチオニルメチオニンの緩徐な開裂を介するメチオニンの体への至適な供給方法のほか、文献に記載された種々の製造方法を超えた多くの利点を有するメチオニルメチオニンの新規の製造方法を開発することも可能になった。文献に開示されたジペプチド合成方法の大半では、Boc−(tert−ブトキシカルボニル)又はZ−(ベンジルオキシカルボニル)保護基などの高コストの保護基を適切なアミノ酸に結合させてから実際にジペプチドを合成しなければならず、その後それをまた除去しなければならない。また、通常は結合対象のアミノ酸を活性化する必要がある。このように、メチオニルメチオニンは、ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)を用いてN−Boc−メチオニンをメチオニンのメチルエステルと結合することによって製造することができる。この製造方法の大きな欠点は、高コストの保護基を使用すること、合成にきわめて手間がかかること及びDCCなどのリサイクルできない高コストの結合試薬を使用することである。このほか、メチオニルメチオニンの実生産規模の合成方法がDE2261926に記述されている。第一段階でメチオニンのイソプロピルエステルを加熱することにより3,6−Bis[2−メチルチオ)エチル]−2,5−ピペラジンジオン(メチオニンジケトピペラジン、DKP)を生成し、その後メチオニルメチオニンに加水分解する。この場合、加水分解段階での収率はわずかに62〜65%が可能になるのみであった。また、出発材料としてメチオニンイソプロピルエステルを使用するにはコストがかかりすぎ、不経済である。
【0009】
一般的な目的の一つは、特に水産養殖場での魚類及び甲殻類の産業的飼育部門において単独又はメチオニンとの混合物として使用可能な新規のメチオニン代用品を主成分とする動物飼料又は飼料添加剤を提供することであった。同時に、この新規のメチオニン代用品の単純かつコスト効率のよい化学的合成方法を開発することを目的とした。
【0010】
先行技術の欠点に照らし、特に海水又は淡水に住む雑食性、草食性及び肉食性魚類及び甲殻類用の化学的に保護されたメチオニン製品を提供することを目的とした。特に、この製品が水中で完全な飼料ペレット又は押出成形品からの溶解特性(浸出)が低く、徐放性機序すなわち生理学的条件下で遊離メチオニンを緩徐かつ持続的に放出する機序を有することを目的とした。また、この新規メチオニン製品がDL−メチオニンとの混合物として有益に使用できることも目的とした。
【0011】
さらなる目的は、きわめて高い生物学的価値を有し、取り扱い及び保存が容易で、特にペレット成形及び押出成形といった配合飼料の通常の加工条件で優れた安定性を示す飼料又は飼料添加剤としてのメチオニン代用品を見出すことであった。
【0012】
このような方法で、結晶DL−メチオニンに加えて、可能であれば既知の製品の欠点をわずかしか有さない、又は全く有さないさらに効率的なメチオニン源を魚類及び甲殻類に与えることを目的とした。
【0013】
さらに、DL−メチオニンの実生産規模の製造方法から生じる典型的な前駆体及び副産物を出発材料として使用可能な、メチオニルメチオニン(DL−メチオニル−DL−メチオニン)の新規で融通性のある合成経路を開発することを目的とした。また、ジアステレオマーDD/LL−及びDL/LD−メチオニルメチオニンの対を分離する好適な方法を開発し、特定の応用例のためジアステレオマーの1対のみ(DL/LL−I又はDL/LD−I)の至適かつ効率的な使用を可能にすることを目的とした。
【0014】
この目的は、水産養殖場で飼育される動物用の混合飼料に、飼料添加剤としてDL−メチオニル−DL−メチオニン及びその塩を使用することにより達成される。
【0015】
好ましくは、この混合飼料は0.01〜5質量%、好ましくは0.05〜0.5質量%のDL−メチオニル−DL−メチオニンを包含する。
【0016】
ちなみに、DL−メチオニル−DL−メチオニンの使用は、この化合物がDD/LL/DL/LD−メチオニルメチオニンの混合物及びジアステレオマーDL/LD−メチオニルメチオニンの対の溶解性が低いことから優れた浸出特性を示すため(0.4g/L)、特に有益であることが証明された。
【0017】
さらにこの化合物は飼料製造中に良好なペレット成形及び押出成形安定性を示す。DL−メチオニル−DL−メチオニンは、例えば穀類(特にトウモロコシ、小麦、ライ小麦、大麦、粟など)、植物性又は動物性タンパク源(特に大豆及び菜種及びその加工産物など、野菜(エンドウ、豆、ルピナスなど)、魚用飼料など)などの従来の成分及び飼料との混合物中でも、添加される必須アミノ酸、タンパク質、ペプチド、炭水化物、ビタミン、ミネラル、脂肪及び油とともに使用しても安定である。
【0018】
さらに、1kgの物質につきメチオニルメチオニンの活性物質の含量が高いため、DL−メチオニンに比してメチオニルメチオニン1モルにつき水1モルが節約できるのが利点である。
【0019】
好ましい使用方法において、混合飼料は好ましくはフィッシュミール、大豆ミール又はトウモロコシミールを主成分としてタンパク質及び炭水化物を包含し、必須アミノ酸、タンパク質、ペプチド、ビタミン、ミネラル、炭水化物、脂肪又は油を添加することができる。
【0020】
DL−メチオニル−DL−メチオニンは、DD/LL/LD/DL混合物、DL/LD又はDD/LL混合物としてのみ、各場合にDL−メチオニンと追加的に混合して、好ましくはDL−メチオニンの含量を0.01〜20質量%、特に好ましくは1〜10質量%として、混合飼料中に存在するのが特に好ましい。
【0021】
特に好ましい使用方法において、DL−メチオニル−DL−メチオニンはエナンチオマー対DL/LD−メチオニルメチオニンとして存在する。
【0022】
好ましい使用方法において、水産養殖場で飼育される動物は、コイ、マス、サケ、ナマズ、スズキ、ヒラメ、チョウザメ、マグロ、ウナギ、タイ、タラ、エビ、オキアミ及び小エビ、きわめて好ましくはハクレン(Hypophthalmichthys molitrix)、ソウギョ(Ctenopharyngodon idella)、鯉(Cyprinus carpio)及びコクレン(Aristichthys nobilis)、フナ(Carassius carassius)、カトラ(Catla Catla)、インド鯉(Labeo rohita)、タイヘイヨウ及びタイセイヨウサケ(Salmon salar及びOncorhynchus kisutch)、ニジマス(Oncorhynchus mykiss)、アメリカナマズ(Ictalurus punctatus)、アフリカンクララ(Clarias gariepinus)、パンガシウス(Pangasius bocourti及びPangasius hypothalamus)、ナイルティラピア(Oreochromis niloticus)、サバヒー(Chanos)、スギ(Rachycentron canadum)、バナメイエビ(Litopenaeus vannamei)、ブラックタイガーエビ(Penaeus monodon)及びオニテナガエビ(Macrobrachium rosenbergii)からなる群から選択される淡水及び海水魚及び甲殻類である。
【0023】
本発明によれば、例えば融けにくいカルシウム又は亜鉛塩をDL−メチオニル−DL−メチオニン(I)(メチオニルメチオニン又は略してMet−Met)又はそのアルカリ金属及びアルカリ土類金属塩類を、好ましくは魚類及び甲殻類用に、DD/LL/DL/LD、DD/LL又はDL/LDジアステレオマー混合物として、単独又はDLメチオニンと混合して混合飼料に添加して用いる:
【化1】
【0024】
ジペプチドDL−メチオニル−DL−メチオニン(I)には4種類の異なる立体異性体(ジアステレオマー)DD−、LL、DL−及びLD−Iが存在し、そのうちL−メチオニル−L−メチオニン(LL−I)のみが天然であり、残る3種類のジペプチドL−メチオニル−D−メチオニン(LD−I)、D−メチオニル−L−メチオニン(DL−I)及びD−メチオニル−D−メチオニン(DD−I)はすべて非天然である(スキーム1を参照)。
【0025】
【化2】
【0026】
ちなみに、DD−I及びLL−Iは互いに像及び鏡像としての関係を有する。すなわち、これらはエナンチオマーであるため、同じ物理的特性を有する。同じことがDL−I及びLD−Iの対にも言える。
【0027】
これに対してDD/LL−I及びDL/LD−Iの2対は互いにジアステレオマーである。すなわち、これらは異なる物理的データを示す。このため、例えばDD/LL−Iのジアステレオマー対の室温での水への溶解度は21.0g/Lであるのに対し、DL−LD−Iのジアステレオマー対の溶解度は0.4g/Lである。
【0028】
メチオニルメチオニンの新規の合成方法の開発のほか、本発明は、水産養殖場の雑食性、肉食性及び草食性魚類及び甲殻類用の成長促進剤としてのDD/LL/DL/LD、DD/LL又はDL/LDジアステレオマー混合物としての飼料としてのDL−メチオニル−DL−メチオニンの使用に関する。本発明により、DL−メチオニル−DL−メチオニン(I)が生理学的条件下で魚類及び甲殻類により遊離D−及びL−メチオニンに酵素的に開裂されうることを示すことが可能になった(スキーム2)(実施例22〜24も参照)。この目的のため、対応する消化酵素をコイ(雑食性)、マス(肉食性)及びバナメイエビ(雑食性)から単離し、生理学的に同等な条件下で至適化したin vitro実験にてDL−メチオニル−DL−メチオニンと反応させた。本発明によるDL−メチオニル−DL−メチオニン(I)の開裂の特殊な特性とは、4つの考えうるジアステレオマーである天然のLL−I及び3つの非天然ジアステレオマーDD−、DL−及びLD−Iをすべて生理学的条件下で開裂することができることである。これはすべてのジアステレオマーの全混合物(DD/LL/DL/LD−I)の使用にも、ジアステレオマーDD/LL−I及びDL/LD−Iの2対のいずれのケースにも適用される(図1参照)。
【0029】
【化3】
【0030】
しかし、個々のメチオニルメチオニンジアステレオマーの開裂速度は異なる。個々のメチオニルメチオニンジアステレオマーの魚類及び甲殻類の消化酵素による酵素開裂に関する図表を図2に示す。しかし、開裂の遅延は、D−及びL−メチオニンの遊離も遅延することを意味する(図3参照)。消化管で遊離D−又はL−メチオニンの即応性の吸収がなく、したがって血漿中の遊離メチオニン濃度にピークもないことには大きな利点がある。
【0031】
このように、飼料添加剤としてのメチオニルメチオニン及びメチオニン源を使用する利点は、D−又はL−メチオニンが消化期間を通じて体内に放出され、天然タンパク源由来の他のアミノ酸の放出(徐放性機序)と同調して行われることである(図3参照)。この特殊な作用により、すべての重要かつ必須のアミノ酸が血漿中で、体の至適な成長に絶対的に必要とされる理想的な比率にて同時に利用可能になる。
【0032】
DL−メチオニル−DL−メチオニンジペプチド(I)の酵素開裂においては、非天然D−メチオニンも天然L−メチオニンに加えて放出される(スキーム2参照)。前者は肉食性、雑食性及び草食性の海水及び淡水魚及び甲殻類によって、酵素的にアミノ交換されて天然L−メチオニンになる。これは、例えば実施例25のコイの例で明らかにすることができた。コイ由来の消化酵素及び肝酵素の酵素カクテルを用いて、生理学的な関連条件下でD−メチオニンをL−メチオニンに変換することができた(図4参照)。このように、DL−メチオニル−DL−メチオニン(I)を使用することで、天然L−メチオニンを体に至適に供給することができる。
【0033】
DL−メチオニル−DL−メチオニン(I)と、例えば魚、トウモロコシ及び大豆ミールなどの天然タンパク源及び炭水化物源との種々の混合物に他の必須アミノ酸、タンパク質、ペプチド、ビタミン、ミネラル、脂肪及び油を混合して実施したペレット成形及び押出成形実験では、DL−メチオニル−DL−メチオニン(I)が製造工程中及び後に絶対的に安定であり、いかなる劣化又は分解も起こらないことが確認された(実施例26参照)。
【0034】
メチオニルメチオニン(I)ジアステレオマーの配合飼料ペレットからの水中での浸出特性を調査するため、メチオニルメチオニンの溶出の時間依存性を測定した(実施例26参照)。比較のため、DL−メチオニン、MHA及びカルシウム−MHA(MHA−Ca)の浸出特性を同一条件下で調査した。これにより、すべてのジアステレオマーの全混合物(DD/LL/DL/LD−I)及びDD/LL−I及びDL/LD−Iのジアステレオマー対はいずれも、DL−メチオニン、MHA及びカルシウム−MHA(MHA−Ca)よりも浸出性が明らかに低いことが確認された(図5参照)。したがって、飼料ペレットからのメチオニルメチオニンの経時的な溶出量は、他のすべてのメチオニン誘導体よりもはるかに少ない。DL−LD−Iのジアステレオマー対は特に浸出速度が遅く、200時間の滞留時間を過ぎても飼料ペレットから溶出したのは最大でわずかに5%であった(図5参照)。
【0035】
さらに、式(I)
【化4】
のDL−メチオニル−DL−メチオニンを、
一般式IIの尿素誘導体
【化5】
[式中、
尿素誘導体IIa、IIb、IIc、IId、IIe、IIf及びIIgのR1及びR2基は以下の通り規定される;
式中、
IIa:R1=COOH、R2=NHCONH2
IIb:R1=CONH2、R2=NHCONH2
IIc:R1=CONH2、R2=NH2
IId:R1−R2=−CONHCONH−
IIe:R1=CN、R2=OH
IIf:R1=CN、R2=NH2
IIg:R1==O、R2=H]
と反応させてDL−メチオニル−DL−メチオニン(I)を得る、DL−メチオニル−DL−メチオニン(I)の製造方法により目的が達成される。
【0036】
本発明の方法の一実施形態においては、メチオニンヒダントイン(IId)を出発材料として使用する、又は中間産物として生成することがさらに好ましい。この方法は、DL−メチオニル−DL−メチオニンをメチオニンヒダントインから直接合成するものであり、スキーム3に示す手法G、H及びJが含まれる。
【0037】
【化6】
【0038】
ちなみに、メチオニンヒダントイン及び水を包含する溶液を基本的な条件下でメチオニンと反応させるのが好ましい。さらに、尿素誘導体を包含する溶液のpHを8〜14に、好ましくは10〜13に調節するのが好ましい。
【0039】
好ましくは、反応を温度50〜200℃で、好ましくは80〜170℃、特に好ましくは130〜160℃で実施する。
【0040】
さらに好ましくは、反応を加圧下で、好ましくは3〜20バール下で、特に好ましくは6〜15バール下で実施する。
【0041】
さらに好ましい方法において、メチオニンヒダントイン及び水を包含する溶液はあらかじめ化合物IIa、IIb、IIc、IId、IIe、IIf及びIIgの一つ以上から生成しておく。
【0042】
さらに好ましい方法において、メチオニンヒダントインは、化合物IIe又はIIfを窒素含有塩基、NH4HCO3、(NH4)2CO3、NH4OH/CO2混合物又はカルバミン酸塩と反応させることによって得る。
【0043】
化合物IIeの反応は、好ましくは温度0〜150℃、好ましくは0〜100℃、特に好ましくは10〜70℃で実施する。
【0044】
さらに好ましい方法において、メチオニンヒダントインは、化合物IIfをCO2と反応させることによって得る。ちなみにこの反応は、好ましくはKHCO3、K2CO3、第三級アミン又はその塩、アルカリ金属及びアルカリ土類金属塩基類を包含する群から選択される塩基の存在下で実施する。
【0045】
さらに好ましい方法において、メチオニンヒダントインは、化合物IIgをシアン化物イオン源及び、窒素含有塩基、CO2存在下のアンモニウム塩、NH4HCO3、(NH4)2CO3、NH4OH/CO2混合物及びカルバミン酸塩を包含する群から選択される塩基と反応させることによって得る。この場合の反応は、好ましくは温度−20〜150℃、好ましくは−10〜100℃、特に好ましくは0〜70℃で実施する。
【0046】
本発明の方法のもうひとつの実施形態は、以下の段階を包含する。
a) 式IIa、IIb、IIc、IId、IIe、IIf及びIIgの尿素誘導体を反応させて式
【化7】
のジケトピペラジンを得る。
b) ジケトピペラジンを反応させてDL−メチオニル−DL−メチオニンを得る。この方法はスキーム3に示す手法A、B、C及びDを含む。この方法では、ジケトピペラジン(III)は中間体として生成される。
【0047】
ちなみに、ジケトピペラジンを得るための尿素誘導体の反応は、温度50〜200℃、好ましくは100〜180℃、特に好ましくは140〜170℃で実施するのが好ましい。
【0048】
好ましい方法において、ジケトピペラジンを得るための尿素誘導体の反応は、加圧下で、好ましくは3〜20バール下で、特に好ましくは6〜15バール下で実施する。
【0049】
ジケトピペラジンを得るための尿素誘導体の反応は、好ましくは塩基の存在下で実施する。ちなみに塩基は好ましくは、窒素含有塩基、NH4HCO3、(NH4)2CO3、KHCO3、K2CO3、NH4OH/CO2混合物、カルバミン酸塩、アルカリ金属及びアルカリ土類金属塩基類からなる群から選択する。
【0050】
さらに好ましい方法において、ジケトピペラジンを得るための尿素誘導体の反応は、メチオニンと反応させることによって実施する。ちなみに尿素誘導体とメチオニンの比は、1:100〜1:0.5が好ましい。
【0051】
さらに好ましい方法において、DL−メチオニル−DL−メチオニンを得るためのジケトピペラジンの反応は、酸加水分解によって実施する。この場合、酸加水分解は、好ましくは鉱酸類、HCl、H2CO3、CO2/H2O、H2SO4、リン酸類、カルボン酸類及びヒドロキシカルボン酸類からなる群から選択される酸の存在下で実施する。
【0052】
本発明の方法のまた別の実施形態において、DL−メチオニル−DL−メチオニンを得るためのジケトピペラジンの反応は、塩基性加水分解によって実施する。この場合、塩基性加水分解は好ましくはpH7〜14、特に好ましくはpH9〜12、きわめて特に好ましくはpH10〜11で実施してDL−メチオニル−DL−メチオニンを得る。さらに、この塩基性条件は、好ましくは窒素含有塩基、NH4HCO3、(NH4)2CO3、NH4OH/CO2混合物、カルバミン酸塩類、KHCO3、K2CO3、炭酸塩類、アルカリ金属及びアルカリ土類金属塩基類からなる群から選択される物質を用いて調節することができる。
【0053】
酸又は塩基性加水分解は、好ましくは温度50〜200℃、好ましくは80〜180℃、特に好ましくは90〜160℃で実施する。
【0054】
さらに別の実施形態において、DL−メチオニル−DL−メチオニンを得るためのジケトピペラジンの反応は、塩基性溶液、好ましくは塩基性の水酸化アンモニウム、水酸化カリウム又は水酸化ナトリウム溶液にCO2を導入することにより実施する。
【0055】
好ましい方法において、ジケトピペラジンは加水分解の前に単離する。ちなみにジケトピペラジンは、好ましくは温度−30〜120℃、特に好ましくは10〜70℃で結晶化により反応溶液から単離するのが好ましい。
【0056】
DD/LL/DL/LD−メチオニルメチオニンジアステレオマーの混合物を塩基性反応溶液から単離するには、これらを酸性化し、結晶化又は沈殿によりメチオニルメチオニンを得る。ちなみに、pHは5〜9、特に好ましくは5〜7、きわめて特に好ましくは約5.6にするのが好ましい。ちなみに、酸性化には好ましくは鉱酸類、HCl、H2CO3、CO2/H2O、H2SO4、リン酸類、カルボン酸類及びヒドロキシカルボン酸類から成る群から選択した酸を使用することができる。
【0057】
DD/LL/DL/LD−メチオニルメチオニンジアステレオマーの混合物を酸性反応溶液から単離するには、塩基を添加して中和し、結晶化又は沈殿によりメチオニルメチオニンを得る。ちなみに、pHは5〜9、特に好ましくは5〜7、きわめて特に好ましくは約5.6にするのが好ましい。この場合に中和に使用する塩基は、好ましくはNH4HCO3、(NH4)2CO3、窒素含有塩基、NH4OH、カルバミン酸塩類、KHCO3、K2CO3、炭酸塩類、アルカリ金属及びアルカリ土類金属塩基類からなる群から選択する。
【0058】
さらに本発明は、分画結晶化によりDD/LL/DL/LD−メチオニルメチオニンジアステレオマーの混合物を分画し、それによってDD/LL−メチオニルメチオニン及びDL/LD−メチオニルメチオニンのエナンチオマー2対を得る方法を提供する。
【0059】
酸性化による分画結晶化の方法の好ましい実施形態においては、以下の手順に従う。
a) DD/LL/DL/LD−メチオニルメチオニンを含有する懸濁液を、透明な溶液が得られるまで酸性化した後、その酸性溶液に塩基を段階的に添加して沈殿物を分離し、沈殿物としてDL/LD−メチオニルメチオニンを得る。
b) 段階a)で得られた母液からDD/LL−メチオニルメチオニンを得る。
【0060】
ちなみに、段階a)の酸性化は、酸を用いてpHを0.1〜1.0、好ましくは約0.6に設定して実施し、得られた透明な溶液をその後塩基を用いてpH5〜6、好ましくは約5.6に調節するのが特に好ましい。ちなみに、鉱酸類、好ましくはリン酸、硫酸、塩酸又は炭酸又は二酸化炭素及び/又はカルボン酸類、特にC1−C4カルボン酸類の蟻酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸又はイソ酪酸を酸として使用することができる。特に好ましくは炭酸又は二酸化炭素を使用する。この場合、炭酸又は二酸化炭素は、大気圧下又は超大気圧下で反応混合物に導入することができる。
【0061】
段階a)において、塩基性条件は好ましくはNH4HCO3、(NH4)2CO3、窒素含有塩基類、NH4OH、カルバミン酸塩類、KHCO3、K2CO3、炭酸塩類、アルカリ金属塩基類及びアルカリ土類金属塩基類からなる群から選択される塩基を用いて調節する。
【0062】
塩基性化による分画結晶化の方法のさらに好ましい実施形態においては、以下の手順に従う。
a) DD/LL/DL/LD−メチオニルメチオニンを含有する懸濁液を、透明な溶液が得られるまで塩基性化し、その塩基性溶液に酸を段階的に添加して沈殿物を分離し、沈殿物としてDL/LD−メチオニルメチオニンを得る。
b) その後、段階a)で得られた母液からDD/LL−メチオニルメチオニンを得る。
【0063】
ちなみに、段階a)の塩基性化は、塩基を用いてpHを7.5〜14、好ましくは約9〜13に調節して実施し、得られた透明な溶液をその後酸を用いてpH5〜6、好ましくは約5.6に調節するのが特に好ましい。この場合使用するのが好ましい塩基は、NH4HCO3、(NH4)2CO3、窒素含有塩基類、NH4OH、カルバミン酸塩類、KHCO3、K2CO3、炭酸塩類、アルカリ金属及びアルカリ土類金属塩基類からなる群から選択される塩基である。
【0064】
段階a)の酸性条件は、好ましくは鉱酸類からなる群から選択される酸、好ましくはリン酸、硫酸、塩酸又は炭酸又は二酸化炭素及び/又はカルボン酸類、特にC1−C4カルボン酸類の蟻酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸又はイソ酪酸を用いて調節する。炭酸又は二酸化炭素を使用するのが特に好ましい。
【0065】
分画結晶化の方法の好ましい実施形態においては、温度0〜100℃、好ましくは5〜60℃、特に好ましくは10〜40℃で実施する。
【0066】
得られたDD/LL−メチオニルメチオニンをさらにラセミ化し、上述の分離方法に導入して、DD/LL−メチオニルメチオニン及びDL/LD−メチオニルメチオニンのエナンチオマー2対を互いに分離することができる。
【0067】
上述した本発明の方法はすべて、好ましくは水性培地中で実施する。さらに、本発明の方法は、当業者に既知のバッチ製造工程又は連続工程で実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】メチオニルメチオニンジアステレオマー混合物のDD/LL−I、DL/LD−I及びDD/LL/DL/LD−Iの酵素開裂に関する図表を示す。
【図2】開裂速度の異なる4つのメチオニルメチオニンジアステレオマーDD−I、LL−I、DL−I及びLD−Iの酵素開裂に関する図表を示す。
【図3】4つのメチオニルメチオニンジアステレオマーDD−I、LL−I、DL−I及びLD−Iからのメチオニン(D−及びL−Metの両方)の酵素による放出に関する図表を示す。
【図4】鯉由来の酵素カクテルを用いたD−メチオニンのL−メチオニンへの生体内変換を示す。
【図5】メチオニルメチオニンジアステレオマー混合物DD/LL−I、DL/LD−I及びLL/DD/LD/DL−Iの浸出特性のメチオニン、MHA及びMHA−Caとの比較を示す。
【図6】鯉の消化酵素を用いた4種類の異なるメチオニルメチオニンジアステレオマーLL−I、LD−I、DL−I及びDD−Iのin vitro消化を示す。
【図7】鯉の消化酵素を用いた種々のメチオニルメチオニンジアステレオマー混合物LL/DD−I、DL/LD−I及びLL/DD/LD/DL−Iのin vitro消化を示す。
【図8】ニジマスの消化酵素を用いた4種類の異なるメチオニルメチオニンジアステレオマーLL−I、LD−I、DL−I及びDD−Iのin vitro消化を示す。
【図9】ニジマスの消化酵素を用いたメチオニルメチオニンジアステレオマー混合物LL/DD−I、DL/LD−I及びLL/DD/LD/DL−Iのin vitro消化を示す。
【図10】バナメイエビの消化酵素を用いた4種類の異なるメチオニルメチオニンジアステレオマーLL−I、LD−I、DL−I及びDD−Iのin vitro消化を示す。
【図11】バナメイエビの消化酵素を用いた種々のメチオニルメチオニンジアステレオマー混合物LL/DD−I、DL/LD−I及びLL/DD/LD/DL−Iのin vitro消化を示す。
【0069】
実施例
A)本発明の方法の個々の段階及び手法の概括
本発明によるDL−メチオニル−DL−メチオニン(I)の製造及びジアステレオマー対DD/LL−I及びDL/LD−Iへの分離方法を、以下に詳述する。
【0070】
本発明によるDL−メチオニル−DL−メチオニン(I)の製造方法は、一般式IIの化合物から出発する。
【化8】
[式中、
IIa:R1=COOH、R2=NHCONH2
IIb:R1=CONH2、R2=NHCONH2
IIc:R1=CONH2、R2=NH2
IId:R1−R2=−CONHCONH−
IIe:R1=CN、R2=OH
IIf:R1=CN、R2=NH2
IIg:R1==O、R2=H]
【0071】
この化合物を種々の合成手法(A、B、C、D、E、F、G、H及びJ)によりDL−メチオニル−DL−メチオニン(I)に変換する(スキーム3参照)。その手法A、B、C及びDでは、対応するジケトピペラジン(III)が中間体として生成される。合成手法G、H及びJでは、メチオニンヒダントインが中間体として生成され、これを直接DL−メチオニル−DL−メチオニン(I)に変換する。その後、手法Kを用いて、分画結晶化により2つのジアステレオマー対DD/LL−I及びDL/LD−Iを分離することができる(スキーム3参照)。
【0072】
【化9】
【0073】
B) 合成実施例:
実施例1:
手法AによるN−カルバモイルメチオニン(IIa)からの3,6−bis[2−(メチルチオ)エチル]−2,5−ピペラジンジオン(III)(メチオニンジケトピペラジン、DKP)の合成
N−カルバモイルメチオニン(IIa)17.5g(90.0mmol、純度:99%)を水150mLに溶解し、撹拌子を用いて160℃で6時間、Roth Steel社製200mLオートクレーブ中で攪拌した。この間圧力は上昇する。時々ガスを反復的に抜いて、圧力が7バールに達するようにした。反応終了後、オートクレーブを氷浴で冷却した。得られた懸濁液を濾過し、得られた固形物を水で数回洗浄して、乾燥オーブンで50℃にて真空中で乾燥した。単離収率は、純度>98%(HPLC)、融点234〜236℃の黄白色の結晶、bis[2−(メチルチオ)エチル]−2,5−ピペラジンジオン(III)8.1g(30.9mmol)(69%)であった。
【0074】
3,6−bis[2−(メチルチオ)エチル]−2,5−ピペラジンジオン(III)の1H−NMR
【0075】
3,6−bis[2−(メチルチオ)エチル]−2,5−ピペラジンジオン(III)の13C−NMR
C10H18N2O2S2(M=262.39g/mol)の元素分析:
算出値:C45.77;H6.91;N10.68;S24.44
測定値:C45.94;H6.96;N10.64;S24.38
【0076】
実施例2:
手法Aによる2−[(アミノカルボニル)アミノ]−4−(メチルチオ)ブタノアミド(N−カルバモイルメチオニンアミド)(IIb)からの3,6−bis[2−(メチルチオ)エチル]−2,5−ピペラジンジオン(III)(メチオニンジケトピペラジン、DKP)の合成
2−[(アミノカルボニル)−アミノ]−4−(メチルチオ)ブタノアミド(IIb)17.4g(90.0mmol、純度:98.5%)を水150mLに溶解し、撹拌子を用いて160℃で7時間、Roth Steel社製200mLオートクレーブ中で攪拌した。この間圧力は上昇する。時々ガスを反復的に抜いて、圧力が7バールに達するようにした。反応終了後、オートクレーブを氷浴で冷却した。得られた懸濁液を濾過し、得られた固形物を水で数回洗浄して、乾燥オーブンで50℃にて真空中で乾燥した。単離収率は、純度>98%(HPLC)の黄白色の結晶、bis[2−(メチルチオ)エチル]−2,5−ピペラジンジオン(III)9.2g(35.1mmol)(78%)であった。
【0077】
融点及びNMRデータは実施例1に合致した。
【0078】
実施例3:
手法Aによる5−[2−(メチルチオ)エチル]−2,4−イミダゾリジンジオン(IId)(メチオニンヒダントイン)からの3,6−bis[2−(メチルチオ)エチル]−2,5−ピペラジンジオン(III)(メチオニンジケトピペラジン、DKP)の合成及びその後の母液の再使用(カスケード反応)
第1バッチ:
メチオニン13.4g(0.09mol)、メチオニンヒダントイン(IId)17.2g(0.09mol、純度:91%)及び水150gからなる懸濁液を、撹拌子付きRoth Steel社製200mLオートクレーブに入れ、160℃で6時間攪拌した。この間圧力は15バールまで上昇する。時々オートクレーブを減圧して、圧力が一定して10バールになるようにした。その後、オートクレーブを氷浴で冷却し、得られた懸濁液を濾過し、得られた固形物を水75mLで洗浄した。最後に、固形物を真空乾燥オーブンで50℃にて一晩乾燥した。黄白色の結晶としてbis[2−(メチルチオ)エチル]−2,5−ピペラジンジオン(III)を単離した。
【0079】
その後のバッチ:
前バッチの洗浄水及び母液を合わせて、回転式蒸発器で50℃にて90mLまで濃縮した。メチオニンヒダントイン(IId)17.2g(0.09mol、純度:91%)を濃縮した母液とともに取り、水溶液150gとした。得られた溶液を撹拌子付きRoth Steel社製200mLオートクレーブに入れ、160℃で6時間攪拌した。この間圧力は15バールまで上昇する。時々オートクレーブを減圧して、圧力が一定して10バールになるようにした。その後の作業は第1バッチと同様に実施した。
【0080】
実施例4:
手法Bによる2−アミノ−4−(メチルチオ)ブタノアミド(メチオニンアミド)(IIc)からの3,6−bis[2−(メチルチオ)エチル]−2,5−ピペラジンジオン(III)(メチオニンジケトピペラジン、DKP)の合成
2−アミノ−4−(メチルチオ)ブタノアミド塩酸塩(IIc)16.6g(0.09mol)及び(NH4)2CO38.7g(0.09mol)を水150gに溶解し、撹拌子を用いて160℃で6時間、Roth Steel社製200mLオートクレーブ中で攪拌した。その後、オートクレーブを氷浴で冷却した。得られた懸濁液を濾過し、得られた固形物を水で数回洗浄して、乾燥オーブンで50℃にて真空中で乾燥した。単離収率は、純度>98%(HPLC)の黄白色の結晶、bis[2−(メチルチオ)エチル]−2,5−ピペラジンジオン(III)6.5g(24.8mmol)(55%)であった。
【0081】
融点及びNMRデータは実施例1に合致した。
【0082】
実施例5:
手法Cによる2−ヒドロキシ−4−(メチルチオ)ブタンニトリル(3−(メチルメルカプト)プロピオンアルデヒドシアノヒドリン、MMP−CH)(IIe)からの3,6−bis[2−(メチルチオ)エチル]−2,5−ピペラジンジオン(III)(メチオニンジケトピペラジン、DKP)の合成
2−ヒドロキシ−4−(メチルチオ)ブタンニトリル(IIe)30.5g(0.232mol)及び水360gからなる溶液を、水20g中のNH4HCO322.4g(0.283mol=1.22 eq.)の懸濁液に室温にて緩徐に滴加して、2時間攪拌した。この間NH4HCO3が溶解した。その後、得られた溶液を50℃で7時間、その後室温で一晩攪拌した。この反応混合物を500mLスチール製オートクレーブに移し、160℃まで加熱し、この温度で6時間攪拌した。その後、オートクレーブを氷浴で冷却し、得られた懸濁液を濾過し、得られた固形物を水50mLで洗浄した。最後に、淡色の固形物を真空乾燥オーブンで50℃にて一晩乾燥した。単離収率は、純度>98%(HPLC)の黄白色の結晶、bis[2−(メチルチオ)エチル]−2,5−ピペラジンジオン(III)17.8g(67.8mmol)(58%)であった。
【0083】
融点及びNMRデータは実施例1に合致した。
【0084】
実施例6:
手法Cによる2−アミノ−4−(メチルチオ)ブタンニトリル(メチオニンニトリル)(IIf)からの3,6−bis[2−(メチルチオ)エチル]−2,5−ピペラジンジオン(III)(メチオニンジケトピペラジン、DKP)の合成
水330g中の2−アミノ−4−(メチルチオ)ブタンニトリル(IIf)26.2g(0.201mol)の溶液に中濃度のCO2を3時間かけて通気し、その間温度は45度に上昇し、pHは8に固定した。その後室温で一晩継続的に撹拌を行った。翌朝、反応混合物を500mLスチール製オートクレーブに移し、160℃まで加熱し、この温度で6時間攪拌した。その後、オートクレーブを氷浴で冷却し、得られた懸濁液を濾過し、得られた固形物を水50mLで洗浄し、真空乾燥オーブンで50℃にて一晩乾燥した。単離収率は、純度>98%(HPLC)の黄白色の結晶、bis[2−(メチルチオ)エチル]−2,5−ピペラジンジオン(III)15.7g(59.7mmol)(59%)であった。
【0085】
融点及びNMRデータは実施例1に合致した。
【0086】
実施例7:
手法Dによる3−(メチルチオ)プロパンアルデヒド(3−(メチルメルカプト)プロピオンアルデヒド、MMP)(IIg)からの3,6−bis[2−(メチルチオ)エチル]−2,5−ピペラジンジオン(III)(メチオニンジケトピペラジン、DKP)の合成
(NH4)2CO3 66.0g(0.68mol)を水100gに入れ、氷浴で5℃まで冷却した。その後、新たに蒸留したシアン化水素酸16.6g(0.61mol)を25分かけて滴加し、その間懸濁液の温度は5〜10℃に保った。水860gを添加した後、3−(メチルチオ)プロピオンアルデヒド(IIg)60.3g(0.58mol)を10℃で80分かけて滴加した。この間pHは8.5〜9の範囲内で一定したままであった。その後、反応混合物を50℃まで加熱し、この温度で7時間攪拌した。反応終了後、反応混合物を氷浴で5℃に冷却し、冷蔵庫で一晩保存した。翌朝、混合物を2Lスチール製オートクレーブに移し、160℃まで加熱し、この温度で6時間攪拌した。その後、オートクレーブを氷浴で冷却し、得られた懸濁液を濾過して水150mLで洗浄し、得られた固形物を真空乾燥オーブンで50℃にて一晩乾燥した。単離収率は、純度>98%(HPLC)の黄白色の結晶、bis[2−(メチルチオ)エチル]−2,5−ピペラジンジオン(III)48.6g(185.2mmol)(64%)であった。
【0087】
融点及びNMRデータは実施例1に合致した。
【0088】
実施例8:
手法Eによる濃縮塩酸を用いた3,6−bis[2−(メチルチオ)エチル]−2,5−ピペラジンジオン(III)(メチオニンジケトピペラジン、DKP)からのDD/LL/DL/LD−メチオニルメチオニン(I)の合成
3,6−bis[2−(メチルチオ)エチル]−2,5−ピペラジンジオン(III)(DKP)655.9g(2.50mol)を水1661gに懸濁した。撹拌中、濃縮塩酸271.0gをきわめて緩徐に滴加した後、慎重にきわめて激しく撹拌しながら加熱して還流した。この間、大量の発泡を来すことがある。この反応混合物を5.5時間加熱還流し、すべての固形物を溶解した。その後冷却する間に、未反応のDKP(III)が沈殿し、濾去した。このDKPはその後の反応で使用してさらに加水分解することができる。その後ガラスビーカーに入れた濾過物を、32%アンモニア水を加えた氷浴中で、pH6に調節した。この間、DD/LL/DL/LD−メチオニルメチオニン(I)が厚い塊の結晶の、2つのジアステレオマー対(DL/LD−Met−Met)(DL/DL−I)及び(DD/LL−Met−Met)(DD/LL−I)の50:50混合物として分離される。最後にこれを真空乾燥オーブンで60℃にて乾燥した。収率:純度98%(HPLC)のわずかに黄色を帯びた固形物、DD/LL/DL/LD−メチオニルメチオニン(I)601.0g(2.14mol)(85.7%)。
【0089】
DD/LL/DL/LD−メチオニルメチオニン(I)の1H−NMR
【0090】
DD/LL/DL/LD−メチオニルメチオニン(I)の13C−NMR
C10H20N2O3S2(M=280.41g/mol)の元素分析:
算出値:C42.83;H7.19;N9.99;S22.87
測定値:C42.61;H7.19;N10.06;S22.72
【0091】
実施例9:
手法Eによる濃縮塩酸を用いた3,6−bis[2−(メチルチオ)エチル]−2,5−ピペラジンジオン(III)(メチオニンジケトピペラジン、DKP)からのDD/LL/DL/LD−メチオニルメチオニン(I)の実生産規模の合成
水500Lを撹拌機付500Lエナメル塗装タンクに入れ、濃縮塩酸32L及び3,6−bis[2−(メチルチオ)エチル]−2,5−ピペラジンジオン(III)(DKP)78.6kgを添加し、この装置を密閉した。その後、2時間攪拌しながら110℃まで加熱し、この間圧力は2.5バールまで上昇して、DKP(III)はほぼ完全に溶解した。反応終了後、混合物を20℃まで冷却し、未反応のDKPを遠心分離器で沈降させた。固形物を水10Lで洗浄した。濾過物及び洗浄水を800L入り容器に収集し、その後再度撹拌機付き500Lタンクに入れた。活性炭2kgを添加した後、20℃で30分間攪拌した。懸濁液をフィルタープレスを介して濾過し、別の撹拌機付き500Lタンクに移した。濃縮アンモニア溶液約28Lを添加して、pH6でDD/LL/DL/LD−メチオニルメチオニン(I)を沈殿させた。この間、溶解度の低いラセミ対であるジアステレオマーDL/LD−メチオニルメチオニン(DL/LD−I)が最初に優先的に沈殿する。これを遠沈して、蒸気噴射ポンプ中で40℃を超えない内部温度で、母液を洗浄水とともにもともとの1/4量まで濃縮した。この間、溶解度の高いラセミ対であるジアステレオマーDD/LL−メチオニルメチオニン(DD/LL−I)が、少量の溶けにくいDL/LD−Iとともに結晶化した。蒸留終了の後、20℃まで冷却して遠心分離した。分離した母液及び洗浄水を廃棄した。両分画を真空中で70℃にて乾燥した。ジアステレオマーの混合物としてDD/LL/DL/LD−メチオニルメチオニン(I)合計64.2kg(78%)が得られた。純度は>98%(HPLC)であった。
【0092】
融点及びNMRデータは実施例8に合致した。
【0093】
実施例10:
手法Fによる例えばアンモニアを用いたアルカリ条件下での3,6−bis[2−(メチルチオ)エチル]−2,5−ピペラジンジオン(III)(メチオニンジケトピペラジン、DKP)からのDD/LL/DL/LD−メチオニルメチオニン(I)の合成
3,6−bis[2−(メチルチオ)エチル]−2,5−ピペラジンジオン(III)(DKP)65.6g(0.25mol)、25%アンモニア溶液70mL及び水500mLをオートクレーブ中で150℃にて2時間加熱する。冷却後、未反応のDKP(III)(16.0g=24.4%)を吸引濾過により除去する。これはその後のバッチで再度使用可能である。濾過物を回転式蒸発器で水温80〜90℃にて、最初の結晶が分離されるまで濃縮した。冷却して一晩静置した後、濾過及び乾燥して、白色の固形物として、2つのジアステレオマー対DL/DL−I及びDD/LL−Iの50:50混合物、DD/LL/DL/LD−メチオニルメチオニン(I)合計49.3g(70.3%)を得ることができた。純度は98%(HPLC)であった。
【0094】
融点及びNMRデータは実施例8に合致した。
【0095】
実施例11:
DD/LL/DL/LD−メチオニルメチオニン(I)の精製
DD/LL/DL/LD−メチオニルメチオニン(I)500gを脱イオン水7800g(pH5.3)中に懸濁した。26℃で、50質量%の硫酸346.6gを用いてpHを1.0に調節した。メチオニルメチオニンを完全に溶解した。活性炭18gを黄色を帯びた混濁液に添加して60分間撹拌し、溶液を清澄化した。活性炭を濾去し、無色透明の溶液のpHを、32質量%のアンモニア溶液228gを用いて5.6に調節した。溶液を一晩静置した。沈殿した白色の固形物を吸引濾過により除去し、真空乾燥オーブンで50℃にて乾燥した。収率:純度>99%(HPLC)の鮮やかな白色の固形物、DD/LL/DL/LD−メチオニルメチオニン(I)460.5g(92%)。
【0096】
NMRデータは実施例8に合致した。
【0097】
実施例12:
手法GによるKOHを用いたN−カルバモイルメチオニン(IIa)及びDL−メチオニンからのDD/LL/DL/LD−メチオニルメチオニン(I)の合成
DL−メチオニン13.4g(0.09mol)、N−カルバモイルメチオニン(IIa)17.5g(0.09mol、純度:99%)及び純度85%のKOH11.9g(0.18mol)を水150mLに溶解し、撹拌子を用いて150℃で5時間、Roth Steel社製200mLオートクレーブ中で攪拌し、その間圧力は6バールまで上昇した。反応終了後、オートクレーブを冷却し、沈殿した3,6−bis[2−(メチルチオ)エチル]−2,5−ピペラジンジオン(III)(メチオニンジケトピペラジン、DKP)を濾去し、少量の水で洗浄した。洗浄水及び母液を合わせて、回転式蒸発器で40℃にて130mLになるまで濃縮した。得られた溶液に中濃度のCO2を3時間かけて通気し、pHを6.4とし、白色の固形物を沈殿させた。これを濾去し、少量の冷水で洗浄して、真空乾燥オーブンで50℃にて一晩乾燥した。単離収率は、純度>98%(HPLC)の白色の固形物、DD/LL/DL/LD−メチオニルメチオニン(I)11.4g(40.6mmol)(45%)であった。
【0098】
NMRデータは実施例8に合致した。
【0099】
実施例13:
手法GによるKOHを用いた5−[2−(メチルチオ)エチル]−2,4−イミダゾリジンジオン(IId)(メチオニンヒダントイン)及びDL−メチオニンからのDD/LL/DL/LD−メチオニルメチオニン(I)の合成
DL−メチオニン13.4g(0.09mol)、メチオニンヒダントイン(IId)17.2g(0.09mol、純度:91%)及び純度85%のKOH8.9g(0.135mol)を水150mLに溶解し、撹拌子を用いて150℃で5時間、Roth Steel社製200mLオートクレーブ中で攪拌し、その間圧力は8バールまで上昇した。反応終了後、オートクレーブを冷却し、得られた懸濁液を濾過して、沈殿した3,6−bis[2−(メチルチオ)エチル]−2,5−ピペラジンジオン(III)(メチオニンジケトピペラジン、DKP)を少量の水で数回洗浄した。母液及び洗浄水を合わせて、得られた溶液を回転式蒸発器で40℃にて125mLになるまで濃縮した。濃縮物を濃縮塩酸で慎重に中和した。室温でpH5.8にて一晩攪拌して白色の固形物を沈殿させた。この固形物を濾去し、少量の冷水で洗浄して、真空乾燥オーブンで50℃にて一晩乾燥した。単離収率は、純度>98%(HPLC)の白色の固形物、DD/LL/DL/LD−メチオニルメチオニン(I)17.5g(62.4mmol)(69%)であった。
【0100】
NMRデータは実施例8に合致した。
【0101】
実施例14:
手法GによるK2CO3を用いた5−[2−(メチルチオ)エチル]−2,4−イミダゾリジンジオン(IId)(メチオニンヒダントイン)及びDL−メチオニンからのDD/LL/DL/LD−メチオニルメチオニン(I)の合成
DL−メチオニン13.4g(0.09mol)、メチオニンヒダントイン(IId)17.2g(0.09mol、純度:91%)及びK2CO312.4g(0.09mol)を水150mLに溶解し、撹拌子を用いて150℃で5時間、Roth Steel社製200mLオートクレーブ中で攪拌し、その間圧力は12バールまで上昇した。反応終了後、オートクレーブを冷却し、沈殿した3,6−bis[2−(メチルチオ)エチル]−2,5−ピペラジンジオン(III)(メチオニンジケトピペラジン、DKP)を濾去して少量の水で洗浄した。洗浄水及び母液を合わせて、回転式蒸発器で40℃にて135mLになるまで濃縮した。得られた溶液に中濃度のCO2を通気してpHを6.8とし、白色の固形物を沈殿させた。これを濾去し、少量の冷水で洗浄して、真空乾燥オーブンで50℃にて一晩乾燥した。収率:純度>99%(HPLC)の白色の固形物、DD/LL/DL/LD−メチオニルメチオニン(I)14.3g(60.0mmol)(57%)。
【0102】
NMRデータは実施例8に合致した。
【0103】
実施例15:
手法GによるKHCO3を用いた5−[2−(メチルチオ)エチル]−2,4−イミダゾリジンジオン(IId)(メチオニンヒダントイン)及びDL−メチオニンからのDD/LL/DL/LD−メチオニルメチオニン(I)の合成
DL−メチオニン13.4g(0.09mol)、メチオニンヒダントイン(IId)17.2g(0.09mol、純度:91%)及びKHCO39.1g(0.09mol)を水150mLに溶解し、撹拌子を用いて150℃で5時間、Roth Steel社製200mLオートクレーブ中で攪拌し、その間圧力は12バールまで上昇した。反応終了後、オートクレーブを冷却し、沈殿した3,6−bis[2−(メチルチオ)エチル]−2,5−ピペラジンジオン(III)(メチオニンジケトピペラジン、DKP)を濾去して少量の水で洗浄した。洗浄水及び母液を合わせて、回転式蒸発器で40℃にて120mLになるまで濃縮した。得られた溶液に中濃度のCO2を通気してpHを6.3とし、白色の固形物を沈殿させた。これを濾去し、少量の冷水で洗浄して、真空乾燥オーブンで50℃にて一晩乾燥した。収率:純度>99%(HPLC)の白色の固形物、DD/LL/DL/LD−メチオニルメチオニン(I)16.0g(57.1mmol)(63%)。
【0104】
NMRデータは実施例8に合致した。
【0105】
実施例16:
手法Hによる(NH4)2CO3を用いた2−アミノ−4−(メチルチオ)ブタノアミド(IIc)(メチオニンアミド)及びDL−メチオニンからのDD/LL/DL/LD−メチオニルメチオニン(I)の合成
2−アミノ−4−(メチルチオ)ブタノアミド(IIc)塩酸塩8.3g(0.045mol)、メチオニン6.7g(0.045mol)、(NH4)2CO34.3g(0.045mol)及び純度85%のKOH3.0g(0.045mol)を水75gに溶解し、撹拌子を用いて160℃で6時間、Roth Steel社製200mLオートクレーブ中で攪拌した。その後、オートクレーブを氷浴で冷却し、得られた懸濁液を濾去し、沈殿した3,6−bis[2−(メチルチオ)エチル]−2,5−ピペラジンジオン(III)(メチオニンジケトピペラジン、DKP)を少量の水で洗浄した。洗浄水及び母液を合わせて、回転式蒸発器で40℃にて70mLになるまで濃縮した。得られた溶液に中濃度のCO2を通気してpHを6.3とし、白色の固形物を沈殿させた。これを濾去し、少量の冷水で洗浄して、真空乾燥オーブンで50℃にて一晩乾燥した。収率:純度>98%(HPLC)の白色の固形物、DD/LL/DL/LD−メチオニルメチオニン(I)7.8g(27.8mmol)(62%)。
【0106】
NMRデータは実施例8に合致した。
【0107】
実施例17:
手法HによるNH4HCO3を用いた2−ヒドロキシ−4−(メチルチオ)ブタンニトリル(IIe)(3−(メチルメルカプト)プロピオンアルデヒドシアノヒドリン、MMP−CH)及びDL−メチオニンからのDD/LL/DL/LD−メチオニルメチオニン(I)の合成
水10g中のNH4HCO3 11.1g(0.141mol=1.22 eq.)の懸濁液に、2−ヒドロキシ−4−(メチルチオ)ブタンニトリル(IIe)15.2g(0.116mol)を室温にて緩徐に滴加し、2時間攪拌した。この間、NH4HCO3は溶解した。その後、水180gを添加し、得られた溶液を50℃で7時間、室温で一晩攪拌した。翌朝、メチオニン17.3g(0.116mol)、純度85%のKOH7.7g(0.116mol)及びさらに水180gを添加し、この反応混合物を1Lスチール製オートクレーブに移し、160℃まで加熱して、この温度で6時間攪拌した。その後、オートクレーブを氷浴で冷却し、得られた懸濁液を濾過して、沈殿した3,6−bis[2−(メチルチオ)エチル]−2,5−ピペラジンジオン(III)(メチオニンジケトピペラジン、DKP)を水100mLで洗浄した。母液及び洗浄水を合わせて、得られた溶液を回転式蒸発器で40℃にて160mLになるまで濃縮した。濃縮物を50%硫酸で慎重に中和した。室温でpH5.4にて一晩攪拌して白色の固形物を沈殿させた。この固形物を濾去し、少量の冷水で洗浄して、真空乾燥オーブンで50℃にて一晩乾燥した。収率:純度>99%(HPLC)の白色の固形物、DD/LL/DL/LD−メチオニルメチオニン(I)15.2g(54.2mmol)(47%)。
【0108】
NMRデータは実施例8に合致した。
【0109】
実施例18:
手法HによるCO2及びDL−メチオニンを用いた2−アミノ−4−(メチルチオ)ブタンニトリル(IIf)(メチオニンニトリル)からのDD/LL/DL/LD−メチオニルメチオニン(I)の合成
水330g中の2−アミノ−4−(メチルチオ)ブタンニトリル(IIf)26.2g(0.201mol)の溶液に3時間かけて中濃度のCO2を通気して、その間温度は45℃に上昇し、pHは8に固定した。その後、撹拌を室温にて一晩継続した。翌朝、反応混合物をメチオニン30.0g(0.201mol)及び純度85%のKOH13.3g(0.201mol)と混合して1Lスチール製オートクレーブに移し、160℃まで加熱し、この温度で6時間攪拌した。その後、オートクレーブを氷浴で冷却し、得られた懸濁液を濾過し、沈殿した3,6−bis[2−(メチルチオ)エチル]−2,5−ピペラジンジオン(III)(メチオニンジケトピペラジン、DKP)を少量の水で洗浄した。洗浄水及び母液を合わせて、得られた溶液を回転式蒸発器で40℃にて280mLになるまで濃縮した。得られた溶液に中濃度のCO2を通気してpHを6.0とし、白色の固形物を沈殿させた。これを濾去し、少量の冷水で洗浄して、真空乾燥オーブンで50℃にて一晩乾燥した。収率:純度>98%(HPLC)の白色の固形物、DD/LL/DL/LD−メチオニルメチオニン(I)32.7g(116.6mmol)(58%)。
【0110】
NMRデータは実施例8に合致した。
【0111】
実施例19:
手法Jによるシアン化水素酸、炭酸アンモニウム及びDL−メチオニンを用いた3−(メチルチオ)プロパンアルデヒド(IIg)(MMP)からのDD/LL/DL/LD−メチオニルメチオニン(I)の合成
(NH4)2CO366.0g(0.68mol)を水100g中に入れ、氷浴で5℃まで冷却した。その後、新たに蒸留したシアン化水素酸16.55g(0.612mol)を25分かけて滴加し、その間懸濁液の温度は5〜10℃に保った。水500gを添加した後、3−(メチルチオ)プロピオンアルデヒド(IIg)60.3g(0.58mol)を10℃で80分かけて滴加した。この間pHは8.5〜9の範囲内で一定したままであった。その後、反応混合物を50℃まで加熱し、この温度で7時間攪拌した。反応終了後、反応混合物を氷浴で5℃に冷却し、冷蔵庫で一晩保存した。翌朝、2−アミノ−4−(メチルチオ)ブタン酸(メチオニン)86.5g(0.58mol)、純度85%のKOH38.3g(0.58mol)及びさらに水530gを添加した。この混合物を2Lスチール製オートクレーブに移し、160℃まで加熱し、この温度で6時間攪拌した。その後、オートクレーブを氷浴で冷却し、得られた懸濁液を濾過して、沈殿した3,6−bis[2−(メチルチオ)エチル]−2,5−ピペラジンジオン(III)(メチオニンジケトピペラジン、DKP)を少量の水で洗浄した。洗浄水及び母液を合わせて、溶液を回転式蒸発器で40℃にて800mLになるまで濃縮した。得られた溶液に中濃度のCO2を通気してpHを6.0とし、白色の固形物を沈殿させた。これを濾去し、少量の冷水で洗浄して、真空乾燥オーブンで50℃にて一晩乾燥した。収率:純度>98%(HPLC)の白色の固形物、DD/LL/DL/LD−メチオニルメチオニン(I)85.1g(0.30mol)(52%)。
【0112】
NMRデータは実施例8に合致した。
【0113】
実施例20:
手法KによるDD/LL/DL/LD−メチオニルメチオニン(I)からの分画結晶化による2つのジアステレオマー対DD/LL−メチオニルメチオニン(DD/LL−I)及びDL/LD−メチオニルメチオニン(DL/LD−I)の分離
a) DL/LD−メチオニルメチオニン(DL/LD−I):
DD/LL/DL/LD−メチオニルメチオニン(I)(DD/LL−IとDL/LD−Iの50:50混合物)290.4gを脱イオン水2614g中に懸濁し、50質量%の硫酸381.7gを用いてpHを0.6に調節した。この無色透明の溶液のpHを、32質量%のアンモニア溶液265.9gを用いて5.6に調節し、得られた白色の沈殿物を吸引濾過で除去した(湿重量580.9g)。最後に、この固形物を真空乾燥オーブンで50℃にて乾燥した。収率は、純度>98%(HPLC)、融点232〜233℃(分解)の白色の固形物、DL/LD−メチオニルメチオニン(DL/LD−I)126.2g(86.9%)であった。
【0114】
DL/LD−メチオニルメチオニン(DL/LD−I)の1H−NMR
【0115】
DL/LD−メチオニルメチオニン(DL/LD−I)の13C−NMR
溶解度(水、20℃):0.4g/L
【0116】
b) DD/LL−メチオニルメチオニン(DD/LL−I):
a)で得られた無色の母液を、ウォーターポンプ真空下で回転式蒸発器で35℃にて濃縮した。白色の懸濁液が得られた。硫酸アンモニウム、DL/LD−Iの残留物及び標的化合物からなるこの白色の固形物を吸引濾過により除去し、50℃で真空乾燥した。脱イオン水中でこの混合物を懸濁し、攪拌することにより、3つの固形物を分離した。未溶解のDL−LD−Iを吸引濾過により除去し、母液をウォーターポンプ真空下で回転式蒸発器で50℃にて約1/5量まで濃縮した。長時間静置した後、DD/LL−メチオニルメチオニン(DD/LL−I)が白色の固形物として結晶化した。最後にこれを吸引濾過により除去し、真空乾燥オーブンで50℃にて乾燥した。収率は、>96%(HPLC)、融点226〜227℃(分解)の白色の固形物、DD/LL−メチオニルメチオニン(DD/LL−I)に基づき78.2g(53.9%)であった。
【0117】
DD/LL−メチオニルメチオニン(DD/LL−I)の1H−NMR
【0118】
DD/LL−メチオニルメチオニン(DD/LL−I)の13C−NMR
溶解度(水、20℃):21.0g/L
【0119】
実施例21:
基本的な条件下での2つのジアステレオマー対DD/LL−メチオニルメチオニン(DD/LL−I)及びDL/LD−メチオニルメチオニン(DL/LD−I)のラセミ化
a) DL/LD−メチオニルメチオニン(DL/LD−I)のラセミ化
Roth社製200mL実験室規模反応器中でジアステレオマー対DL/LD−メチオニルメチオニン(DL/LD−I)12.6g(45.0mmol)を、K2CO3 3.1g(22.5mmol)とともに水75mLに溶解し、攪拌しながら160℃まで加熱した。この間、圧力は7バールまで上昇した。この温度を6時間保った後、オートクレーブを氷浴で冷却した。得られた懸濁液を濾過し、固形物を濾去し、水で数回洗浄して、真空乾燥オーブンで50℃にて乾燥した。単離収率は、純度>98%、融点234〜236℃の黄白色の結晶、bis[2−(メチルチオ)エチル]−2,5−ピペラジンジオン(III)6.5g(24.8mmol)(55%)であった;ジアステレオマー比:52:48(DD/LL−III:meso−III)。洗浄水及び母液を合わせて、回転式蒸発器で40℃にて25mLになるまで濃縮した。得られた溶液に中濃度のCO2を通気してpHを6.0とし、白色の固形物を沈殿させた。これを濾去し、少量の冷水で洗浄して、真空乾燥オーブンで50℃にて一晩乾燥した。単離収率は、純度>98%(HPLC)の白色の固形物、DD/LL/DL/LD−メチオニルメチオニン(I)5.7g(20.3mmol)(45%)であった。
【0120】
NMRデータは実施例8に合致した。
【0121】
a) DD/LL−メチオニルメチオニン(DD/LL−I)のラセミ化
Roth社製200mL実験室規模反応器中でDD/LL−メチオニルメチオニン(DD/LL−I)12.6g(45.0mmol)を、KHCO3 4.5g(45.0mmol)とともに水75mLに溶解し、攪拌しながら160℃まで加熱した。この間、圧力は7バールまで上昇し、この温度を6時間保った後、オートクレーブを氷浴で冷却した。得られた懸濁液を濾過し、濾過された固形物を水で数回洗浄して、真空乾燥オーブンで50℃にて乾燥した。単離収率は、純度>98%(HPLC)、融点233〜236℃の黄白色の結晶、bis[2−(メチルチオ)エチル]−2,5−ピペラジンジオン(III)6.0g(22.9mmol)であった;ジアステレオマー比:54:46(DD/LL−III:meso−III)。洗浄水及び母液を合わせて、回転式蒸発器で40℃にて25mLになるまで濃縮した。得られた溶液に中濃度のCO2を通気してpHを6.0とし、白色の固形物を沈殿させた。これを濾去し、少量の冷水で洗浄して、真空乾燥オーブンで50℃にて一晩乾燥した。単離収率は、純度>98%(HPLC)の白色の固形物、DD/LL/DL/LD−メチオニルメチオニン(I)5.5g(19.6mmol)(44%)であった。
【0122】
NMRデータは実施例8に合致した。
【0123】
実施例22:
雑食性のコイ由来の消化酵素を用いたDL−メチオニル−DL−メチオニン(I)のin vitro消化実験
a) 鯉(Cyprinus carpio morpha noblis)からの消化酵素の単離
消化酵素の単離方法はEID及びMATTY法に従った(Aquaculture 1989,79,111−119)。この目的のため1歳齢の鯉(Cyprinus carpio morpha noblis)5匹の腸を摘出し、水で洗い流し、縦方向に切開して、各例で腸粘膜を剥離した。これを一緒にして砕いた氷とともに混合機で粉末状にした。得られた懸濁液を超音波プローブで処理して、依然として無傷の細胞を破壊した。懸濁液を4℃で30分遠心分離して細胞成分と脂肪を分離し、ホモジネートの上清を回収して、微量のチメロサールで滅菌した。鯉5匹から腸粘膜由来の酵素溶液260.7mLを得、この溶液を暗所で4℃にて保存した。
【0124】
b) in vitro消化実験の手順
DL−メチオニル−DL−メチオニン(I)及び対応するジアステレオマー対DD/LL−I及びDL/LD−IをTRIS/HCl緩衝液中に取り、酵素溶液と混合した。各例で比較のため酵素溶液を入れずにブランクを作成し、純粋に化学的な開裂率を推定した。時々試料を採取し、その組成を検出して較正HPLCを用いて定量を実施した。変換率は、メチオニン面積及びメチオニルメチオニン(I)面積の率として決定した(図6及び7参照)。
【0125】
【表1】
【0126】
実施例23:
肉食性のマス由来の消化酵素を用いたDL−メチオニル−DL−メチオニン(I)のin vitro消化実験
a) ニジマス(Oncorhynchus mykiss)からの消化酵素の単離
消化酵素の単離方法はEID及びMATTY法に従った(Aquaculture 1989,79,111−119)。この目的のため1歳齢のニジマス(Oncorhynchus mykiss)6匹の腸を摘出し、実施例22に記載の方法で処理した。
b) in vitro消化実験の手順
in vitro実験を実施例22と同じく実施した(図8及び9参照)。
【0127】
【表2】
【0128】
実施例24:
雑食性のエビ由来の消化酵素を用いたDL−メチオニル−DL−メチオニン(I)のin vitro消化実験
a) バナメイエビ(Litopenaeus Vannamei)からの消化酵素の単離
消化酵素の単離方法はEzquerraとGarcia−Carrenoの方法に従った(J.Food Biochem.1999,23,59−74)。この目的のためバナメイエビ(Litopenaeus Vannamei)5kgから肝膵臓を摘出し、これを一緒にして砕いた氷とともに混合機で粉末状にした。さらに、実施例22と同じ方法で処理を実施した。
b) in vitro消化実験の手順
in vitro実験を実施例22と同じく実施した(図10及び11参照)。
【0129】
【表3】
【0130】
実施例25:
鯉の腸、肝及び膵由来の酵素を用いたD−メチオニンのL−メチオニンへの生体内変換
a) 鯉(Cyprinus carpio morpha noblis)からの消化酵素の単離
消化酵素の単離方法はEID及びMATTY法に従った(Aquaculture 1989,79,111−119)。この目的のため1歳齢の鯉(Cyprinus carpio morpha noblis)5匹の腸を摘出し、実施例22に記載の通り処理した。肝酵素を単離するため、実施例22の腸酵素の処理と同じ方法で、肝を摘出し、ホモジナイズして処理した。膵からの酵素の単離手順もこれと同じであった。
b) D−メチオニンのL−メチオニンへのin vitro生体内変換の手順
D−メチオニンを緩衝液に取り、酵素溶液を添加した。各例で比較のため酵素溶液を入れずにブランクを作成し、純粋に化学的な変換率を推定した。24時間後試料を採取し、その組成を検出して較正HPLCを用いて定量を実施した。変換率は、L−メチオニン面積及びD−メチオニン(I)面積の率として決定した(図4参照)。
【0131】
【表4】
緩衝液:
クエン酸塩緩衝液:pH5、pH6及びpH7
リン酸塩緩衝液:pH8
TRIS/HCl緩衝液:pH9
腸、肝及び膵酵素からなる酵素カクテル(5%コイ溶液に相当):
腸粘膜由来の酵素溶液2.6mL
肝由来の酵素溶液3.5mL
膵由来の酵素溶液5.6mL。
【0132】
実施例26:
メチオニルメチオニンジアステレオマー混合物LL/DD/LD/DL−I、DD/LL−I及びDL/LD−Iの飼料ペレットからの浸出特性のDL−メチオニン、MHA及びカルシウムMHAとの比較
混合飼料:
基質として使用した飼料は、例えば大豆ミール、ダイズ油、コーンスターチ、小麦ミール、フィッシュミール、セルロース、結晶必須アミノ酸及びプレミックスとしてのミネラル類及びビタミン類といった従来の成分からなるメチオニン欠乏混合飼料であった。この混合物に、各例で20kgバッチに対し、第5表に記載のメチオニン誘導体を0.25%添加率(硫黄等価物に基づく)でバッチ式に添加し、ホモジナイズした後、ペレット成形して水蒸気処理した。メチオニルメチオニン(I)と比較するため、各例でDL−メチオニン、MHA(メチオニンヒドロキシ類似体)及びカルシウムMHAを用いてペレット成形実験を実施した。また、メチオニン誘導体を添加せずにペレット成形することにより対照実験を実施した(第5表参照)。
【0133】
【表5】
【0134】
メチオニルメチオニン(I)のジアステレオマーはすべて、ペレット成形工程及び水蒸気処理の間、安定であった(第6表参照)。
【0135】
【表6】
【0136】
この場合、アミノ酸の測定はEU法98/64/ECに従った。遊離アミノ酸及びメチオニルメチオニン(I)を抽出した後、ニンヒドリンを用いたポストカラム誘導体化法により、アミノ酸検出機を用いてこれらを測定した(第6表参照)。
【0137】
その後、メチオニルメチオニン(I)ジアステレオマーの飼料ペレットからの浸出特性を水中で実験した。この場合、水中でのメチオニルメチオニンの溶出は、時間、温度、水の組成(海水又は淡水)の関数として決定した。この目的のため、飼料ペレット20.0gを目の細かい篩袋に入れ、三角フラスコ中の水200gに完全に浸漬した。その後、一定温度20℃にて三角フラスコ全体を振盪機で連続的に振盪した。その後、規定の間隔で各例にて水試料を採取し、水中の個々のメチオニルメチオニンジアステレオマー対の含量をHPLCで測定した(第7表参照)。
【0138】
【表7】
【0139】
比較のため、各例でDL−メチオニン、MHA又はカルシウムMHAを添加した飼料ペレットを同じ条件下で実験し、それぞれの条件下でその水中浸出特性を測定した(図5及び第7表参照)。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水産養殖場で飼育される動物用の混合飼料における飼料添加剤としてのDL−メチオニル−DL−メチオニン及びその塩の使用。
【請求項2】
塩、好ましくはアルカリ金属類及びアルカリ土類金属類及びアンモニウム、Cu2+、Zn2+及びCo2+からなる群から選択される陽イオンとしての請求項1に記載の使用。
【請求項3】
混合飼料が0.01〜5質量%、好ましくは0.05〜0.5質量%のDL−メチオニル−DL−メチオニンを包含する、請求項1又は2に記載の使用。
【請求項4】
混合飼料が好ましくはフィッシュミール、大豆ミール又はトウモロコシミールを主成分としてタンパク質及び炭水化物を包含し、必須アミノ酸、タンパク質、ペプチド、ビタミン、ミネラル、炭水化物、脂肪又は油を添加可能な、請求項1から3までのいずれか1項に記載の使用。
【請求項5】
DL−メチオニル−DL−メチオニンが、DD/LL/LD/DL混合物、DL/LD又はDD/LL混合物として、各場合に好ましくはDL−メチオニンと追加的に混合して、好ましくはDL−メチオニンの含量を0.01〜20質量%、特に好ましくは1〜10質量%として単独又は塩として存在する、請求項1から4までのいずれか1項に記載の使用。
【請求項6】
DL−メチオニル−DL−メチオニンが、DL/LD−メチオニルメチオニンエナンチオマー対として存在する、請求項1から5までのいずれか1項に記載の使用。
【請求項7】
水産養殖場で飼育される動物が、好ましくはコイ、マス、サケ、ナマズ、スズキ、ヒラメ、チョウザメ、マグロ、ウナギ、タイ、タラ、エビ、オキアミ及び小エビ、きわめて好ましくはハクレン(Hypophthalmichthys molitrix)、ソウギョ(Ctenopharyngodon idella)、鯉(Cyprinus carpio)及びコクレン(Aristichthys nobilis)、フナ(Carassius carassius)、カトラ(Catla Catla)、インド鯉(Labeo rohita)、タイヘイヨウ及びタイセイヨウサケ(Salmon salar及びOncorhynchus kisutch)、ニジマス(Oncorhynchus mykiss)、アメリカナマズ(Ictalurus punctatus)、アフリカンクララ(Clarias gariepinus)、パンガシウス(Pangasius bocourti及びPangasius hypothalamus)、ナイルティラピア(Oreochromis niloticus)、サバヒー(Chanos chanos)、スギ(Rachycentron canadum)、バナメイエビ(Litopenaeus vannamei)、ブラックタイガーエビ(Penaeus monodon)及びオニテナガエビ(Macrobrachium rosenbergii)からなる群から選択される淡水及び海水魚及び甲殻類である、請求項1から6までのいずれか1項に記載の使用。
【請求項8】
化学式(I)
【化1】
のDL−メチオニル−DL−メチオニン(I)の製造方法において、一般式IIの尿素誘導体
【化2】
[式中、
尿素誘導体IIa、IIb、IIc、IId、IIe、IIf及びIIgのR1及びR2基は以下の通り規定される;
式中、
IIa:R1=COOH、R2=NHCONH2
IIb:R1=CONH2、R2=NHCONH2
IIc:R1=CONH2、R2=NH2
IId:R1−R2=−CONHCONH−
IIe:R1=CN、R2=OH
IIf:R1=CN、R2=NH2
IIg:R1==O、R2=H]
を反応させてDL−メチオニル−DL−メチオニンを得る、前記方法。
【請求項9】
メチオニンヒダントインを出発材料として使用する、又は中間産物として生成する、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
メチオニンヒダントイン及び水を包含する溶液を基本的な条件下でメチオニンと反応させる、請求項8又は9に記載の方法。
【請求項11】
尿素誘導体を包含する溶液のpHを8〜14に、好ましくは10〜13に調節する、請求項8から10までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
反応を温度50〜200℃で、好ましくは80〜170℃、特に好ましくは130〜160℃で実施する、請求項8から11までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
反応を加圧下で、好ましくは3〜20バール下で、特に好ましくは6〜15バール下で実施する、請求項8から12までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
メチオニンヒダントイン及び水を包含する溶液をあらかじめ化合物IIa、IIb、IIc、IId、IIe、IIf及びIIgの一つ以上から生成しておく、請求項8から13までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
メチオニンヒダントインを、化合物IIe又はIIfを窒素含有塩基、NH4HCO3、(NH4)2CO3、NH4OH/CO2混合物又はカルバミン酸塩と反応させることによって得る、請求項8から13までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
化合物IIeの反応を、温度0〜150℃、好ましくは0〜100℃、特に好ましくは10〜70℃で実施する、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
メチオニンヒダントインを、化合物IIfをCO2と反応させることによって得る、請求項8から13までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
反応を、好ましくはKHCO3、K2CO3、第三級アミン又はその塩、アルカリ金属及びアルカリ土類金属塩基類を包含する群から選択される塩基の存在下で実施する、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
メチオニンヒダントインを、化合物IIgをシアン化物イオン源及び、窒素含有塩基、CO2存在下のアンモニウム塩、NH4HCO3、(NH4)2CO3、NH4OH/CO2混合物及びカルバミン酸塩を包含する群から選択される塩基と反応させることによって得る、請求項8から13までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
反応を、温度−20〜150℃、好ましくは−10〜100℃、特に好ましくは0〜70℃で実施する、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
以下の段階:
a) 式IIa、IIb、IIc、IId、IIe、IIf及びIIgの尿素誘導体を反応させて式
【化3】
のジケトピペラジン(III)を得る
b) ジケトピペラジン(III)を反応させてDL−メチオニル−DL−メチオニン(I)を得る
を包含する、請求項8に記載の方法。
【請求項22】
ジケトピペラジンを得るための尿素誘導体の反応を、温度50〜200℃、好ましくは100〜180℃、特に好ましくは140〜170℃で実施する、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
ジケトピペラジンを得るための尿素誘導体の反応を、加圧下で、好ましくは3〜20バール下で、特に好ましくは6〜15バール下で実施する、請求項21又は22に記載の方法。
【請求項24】
ジケトピペラジンを得るための尿素誘導体の反応を、塩基の存在下で実施する、請求項21から23までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
塩基が、窒素含有塩基、NH4HCO3、(NH4)2CO3、KHCO3、K2CO3、NH4OH/CO2混合物、カルバミン酸塩、アルカリ金属及びアルカリ土類金属塩基類からなる群から選択される、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
ジケトピペラジンを得るための尿素誘導体の反応をメチオニンと反応させることによって実施する、請求項21から25までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項27】
DL−メチオニル−DL−メチオニンを得るためのジケトピペラジンの反応を酸加水分解によって実施する、請求項21から26までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項28】
酸加水分解を、鉱酸類、HCl、H2CO3、CO2/H2O、H2SO4、リン酸類、カルボン酸類及びヒドロキシカルボン酸類からなる群から選択される酸の存在下で実施する、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
DL−メチオニル−DL−メチオニンを得るためのジケトピペラジンの反応を塩基性加水分解によって実施する、請求項21から26までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項30】
塩基性加水分解をpH7〜14、特に好ましくはpH9〜12、きわめて特に好ましくはpH10〜11で実施してDL−メチオニル−DL−メチオニンを得る、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
塩基性条件を、窒素含有塩基、NH4HCO3、(NH4)2CO3、NH4OH/CO2混合物、カルバミン酸塩類、KHCO3、K2CO3、炭酸塩類、アルカリ金属塩基及びアルカリ土類金属塩基類からなる群から選択される物質を用いて調節する、請求項29又は30に記載の方法。
【請求項32】
反応を温度50〜200℃、好ましくは80〜180℃、特に好ましくは90〜160℃で実施する、請求項27から31までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項33】
DL−メチオニル−DL−メチオニンを得るためのジケトピペラジンの反応を、塩基性溶液、好ましくは塩基性の水酸化アンモニウム、水酸化カリウム又は水酸化ナトリウム溶液にCO2を導入することにより実施する、請求項21から26までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項34】
ジケトピペラジンを加水分解の前に単離する、請求項21から33までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項35】
ジケトピペラジンを、好ましくは温度−30〜120℃、特に好ましくは10〜70℃で結晶化により反応溶液から単離する、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
請求項8から20まで及び29から35までのいずれか1項に記載のようにして得られた塩基性反応溶液から、結晶化によりDD/LL/DL/LD−メチオニルメチオニンジアステレオマーの混合物を単離する方法。
【請求項37】
酸により、溶液のpHを5〜9、特に好ましくは5〜7、きわめて特に好ましくは約5.6に調節する、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
鉱酸類、HCl、H2CO3、CO2/H2O、H2SO4、リン酸類、カルボン酸類及びヒドロキシカルボン酸類から選択した酸の存在下で結晶化を実施する、請求項36又は37に記載の方法。
【請求項39】
請求項27又は28に記載のようにして得られた酸性反応溶液から、結晶化によりDD/LL/DL/LD−メチオニルメチオニンジアステレオマーの混合物を単離する方法。
【請求項40】
塩基により、溶液のpHを5〜9、好ましくは5〜7、より好ましくは約5.6に調節する、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
塩基を、NH4HCO3、(NH4)2CO3、窒素含有塩基、NH4OH、カルバミン酸塩類、KHCO3、K2CO3、炭酸塩類、アルカリ金属及びアルカリ土類金属塩基類からなる群から選択する、請求項39又は40に記載の方法。
【請求項42】
DD/LL−メチオニルメチオニン及びDL/LD−メチオニルメチオニンのエナンチオマー2対を得る、分画結晶化によるDD/LL/DL/LD−メチオニルメチオニンジアステレオマーの混合物の分画方法。
【請求項43】
a) DD/LL/DL/LD−メチオニルメチオニンを含有する懸濁液を、透明な溶液が得られるまで酸性化した後、その酸性溶液に塩基を段階的に添加して沈殿物を分離し、沈殿物としてDL/LD−メチオニルメチオニンを得る、及び
b) 段階a)で得られた母液からDD/LL−メチオニルメチオニンを得る、
請求項42に記載の方法。
【請求項44】
段階a)の酸性化を、酸を用いてpHを0.1〜1.0、好ましくは約0.6に設定して実施し、得られた透明な溶液をその後塩基を用いてpH5〜6、好ましくは約5.6に調節する、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
鉱酸類、好ましくはリン酸、硫酸、塩酸又は炭酸又は二酸化炭素、特に好ましくは炭酸又は二酸化炭素、及び/又はカルボン酸類を酸として使用する、請求項43又は44に記載の方法。
【請求項46】
NH4HCO3、(NH4)2CO3、窒素含有塩基類、NH4OH、カルバミン酸塩類、KHCO3、K2CO3、炭酸塩類、アルカリ金属及びアルカリ土類金属塩基類からなる群から塩基を選択する、請求項43又は44に記載の方法。
【請求項47】
a) DD/LL/DL/LD−メチオニルメチオニンを含有する懸濁液を、透明な溶液が得られるまで塩基性化し、その塩基性溶液に酸を段階的に添加して沈殿物を分離し、沈殿物としてDL/LD−メチオニルメチオニンを得る、及び
b) 段階a)で得られた母液からDD/LL−メチオニルメチオニンを得る、
請求項42に記載の方法。
【請求項48】
段階a)の塩基性化を、塩基を用いてpHを7.5〜14、好ましくは約9〜13に調節して実施し、得られた透明な溶液をその後酸を用いてpH5〜6、好ましくは約5.6に調節する、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
NH4HCO3、(NH4)2CO3、窒素含有塩基類、NH4OH、カルバミン酸塩類、KHCO3、K2CO3、炭酸塩類、アルカリ金属及びアルカリ土類金属塩基類からなる群から塩基を選択する、請求項47又は48に記載の方法。
【請求項50】
鉱酸類、好ましくはリン酸、硫酸、塩酸又は炭酸又は二酸化炭素、特に好ましくは炭酸又は二酸化炭素、及び/又はカルボン酸類を酸として使用する、請求項47又は48に記載の方法。
【請求項51】
温度0〜100℃、好ましくは5〜60℃、特に好ましくは10〜40℃で実施する、請求項42から50までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項52】
得られたDD/LL−メチオニルメチオニンをラセミ化し、DD/LL−メチオニルメチオニン及びDL/LD−メチオニルメチオニンのエナンチオマー2対を互いに分離する、請求項42から51までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項53】
方法を水性培地中で実施する、請求項8から52までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項1】
水産養殖場で飼育される動物用の混合飼料における飼料添加剤としてのDL−メチオニル−DL−メチオニン及びその塩の使用。
【請求項2】
塩、好ましくはアルカリ金属類及びアルカリ土類金属類及びアンモニウム、Cu2+、Zn2+及びCo2+からなる群から選択される陽イオンとしての請求項1に記載の使用。
【請求項3】
混合飼料が0.01〜5質量%、好ましくは0.05〜0.5質量%のDL−メチオニル−DL−メチオニンを包含する、請求項1又は2に記載の使用。
【請求項4】
混合飼料が好ましくはフィッシュミール、大豆ミール又はトウモロコシミールを主成分としてタンパク質及び炭水化物を包含し、必須アミノ酸、タンパク質、ペプチド、ビタミン、ミネラル、炭水化物、脂肪又は油を添加可能な、請求項1から3までのいずれか1項に記載の使用。
【請求項5】
DL−メチオニル−DL−メチオニンが、DD/LL/LD/DL混合物、DL/LD又はDD/LL混合物として、各場合に好ましくはDL−メチオニンと追加的に混合して、好ましくはDL−メチオニンの含量を0.01〜20質量%、特に好ましくは1〜10質量%として単独又は塩として存在する、請求項1から4までのいずれか1項に記載の使用。
【請求項6】
DL−メチオニル−DL−メチオニンが、DL/LD−メチオニルメチオニンエナンチオマー対として存在する、請求項1から5までのいずれか1項に記載の使用。
【請求項7】
水産養殖場で飼育される動物が、好ましくはコイ、マス、サケ、ナマズ、スズキ、ヒラメ、チョウザメ、マグロ、ウナギ、タイ、タラ、エビ、オキアミ及び小エビ、きわめて好ましくはハクレン(Hypophthalmichthys molitrix)、ソウギョ(Ctenopharyngodon idella)、鯉(Cyprinus carpio)及びコクレン(Aristichthys nobilis)、フナ(Carassius carassius)、カトラ(Catla Catla)、インド鯉(Labeo rohita)、タイヘイヨウ及びタイセイヨウサケ(Salmon salar及びOncorhynchus kisutch)、ニジマス(Oncorhynchus mykiss)、アメリカナマズ(Ictalurus punctatus)、アフリカンクララ(Clarias gariepinus)、パンガシウス(Pangasius bocourti及びPangasius hypothalamus)、ナイルティラピア(Oreochromis niloticus)、サバヒー(Chanos chanos)、スギ(Rachycentron canadum)、バナメイエビ(Litopenaeus vannamei)、ブラックタイガーエビ(Penaeus monodon)及びオニテナガエビ(Macrobrachium rosenbergii)からなる群から選択される淡水及び海水魚及び甲殻類である、請求項1から6までのいずれか1項に記載の使用。
【請求項8】
化学式(I)
【化1】
のDL−メチオニル−DL−メチオニン(I)の製造方法において、一般式IIの尿素誘導体
【化2】
[式中、
尿素誘導体IIa、IIb、IIc、IId、IIe、IIf及びIIgのR1及びR2基は以下の通り規定される;
式中、
IIa:R1=COOH、R2=NHCONH2
IIb:R1=CONH2、R2=NHCONH2
IIc:R1=CONH2、R2=NH2
IId:R1−R2=−CONHCONH−
IIe:R1=CN、R2=OH
IIf:R1=CN、R2=NH2
IIg:R1==O、R2=H]
を反応させてDL−メチオニル−DL−メチオニンを得る、前記方法。
【請求項9】
メチオニンヒダントインを出発材料として使用する、又は中間産物として生成する、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
メチオニンヒダントイン及び水を包含する溶液を基本的な条件下でメチオニンと反応させる、請求項8又は9に記載の方法。
【請求項11】
尿素誘導体を包含する溶液のpHを8〜14に、好ましくは10〜13に調節する、請求項8から10までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
反応を温度50〜200℃で、好ましくは80〜170℃、特に好ましくは130〜160℃で実施する、請求項8から11までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
反応を加圧下で、好ましくは3〜20バール下で、特に好ましくは6〜15バール下で実施する、請求項8から12までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
メチオニンヒダントイン及び水を包含する溶液をあらかじめ化合物IIa、IIb、IIc、IId、IIe、IIf及びIIgの一つ以上から生成しておく、請求項8から13までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
メチオニンヒダントインを、化合物IIe又はIIfを窒素含有塩基、NH4HCO3、(NH4)2CO3、NH4OH/CO2混合物又はカルバミン酸塩と反応させることによって得る、請求項8から13までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
化合物IIeの反応を、温度0〜150℃、好ましくは0〜100℃、特に好ましくは10〜70℃で実施する、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
メチオニンヒダントインを、化合物IIfをCO2と反応させることによって得る、請求項8から13までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
反応を、好ましくはKHCO3、K2CO3、第三級アミン又はその塩、アルカリ金属及びアルカリ土類金属塩基類を包含する群から選択される塩基の存在下で実施する、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
メチオニンヒダントインを、化合物IIgをシアン化物イオン源及び、窒素含有塩基、CO2存在下のアンモニウム塩、NH4HCO3、(NH4)2CO3、NH4OH/CO2混合物及びカルバミン酸塩を包含する群から選択される塩基と反応させることによって得る、請求項8から13までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
反応を、温度−20〜150℃、好ましくは−10〜100℃、特に好ましくは0〜70℃で実施する、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
以下の段階:
a) 式IIa、IIb、IIc、IId、IIe、IIf及びIIgの尿素誘導体を反応させて式
【化3】
のジケトピペラジン(III)を得る
b) ジケトピペラジン(III)を反応させてDL−メチオニル−DL−メチオニン(I)を得る
を包含する、請求項8に記載の方法。
【請求項22】
ジケトピペラジンを得るための尿素誘導体の反応を、温度50〜200℃、好ましくは100〜180℃、特に好ましくは140〜170℃で実施する、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
ジケトピペラジンを得るための尿素誘導体の反応を、加圧下で、好ましくは3〜20バール下で、特に好ましくは6〜15バール下で実施する、請求項21又は22に記載の方法。
【請求項24】
ジケトピペラジンを得るための尿素誘導体の反応を、塩基の存在下で実施する、請求項21から23までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
塩基が、窒素含有塩基、NH4HCO3、(NH4)2CO3、KHCO3、K2CO3、NH4OH/CO2混合物、カルバミン酸塩、アルカリ金属及びアルカリ土類金属塩基類からなる群から選択される、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
ジケトピペラジンを得るための尿素誘導体の反応をメチオニンと反応させることによって実施する、請求項21から25までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項27】
DL−メチオニル−DL−メチオニンを得るためのジケトピペラジンの反応を酸加水分解によって実施する、請求項21から26までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項28】
酸加水分解を、鉱酸類、HCl、H2CO3、CO2/H2O、H2SO4、リン酸類、カルボン酸類及びヒドロキシカルボン酸類からなる群から選択される酸の存在下で実施する、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
DL−メチオニル−DL−メチオニンを得るためのジケトピペラジンの反応を塩基性加水分解によって実施する、請求項21から26までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項30】
塩基性加水分解をpH7〜14、特に好ましくはpH9〜12、きわめて特に好ましくはpH10〜11で実施してDL−メチオニル−DL−メチオニンを得る、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
塩基性条件を、窒素含有塩基、NH4HCO3、(NH4)2CO3、NH4OH/CO2混合物、カルバミン酸塩類、KHCO3、K2CO3、炭酸塩類、アルカリ金属塩基及びアルカリ土類金属塩基類からなる群から選択される物質を用いて調節する、請求項29又は30に記載の方法。
【請求項32】
反応を温度50〜200℃、好ましくは80〜180℃、特に好ましくは90〜160℃で実施する、請求項27から31までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項33】
DL−メチオニル−DL−メチオニンを得るためのジケトピペラジンの反応を、塩基性溶液、好ましくは塩基性の水酸化アンモニウム、水酸化カリウム又は水酸化ナトリウム溶液にCO2を導入することにより実施する、請求項21から26までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項34】
ジケトピペラジンを加水分解の前に単離する、請求項21から33までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項35】
ジケトピペラジンを、好ましくは温度−30〜120℃、特に好ましくは10〜70℃で結晶化により反応溶液から単離する、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
請求項8から20まで及び29から35までのいずれか1項に記載のようにして得られた塩基性反応溶液から、結晶化によりDD/LL/DL/LD−メチオニルメチオニンジアステレオマーの混合物を単離する方法。
【請求項37】
酸により、溶液のpHを5〜9、特に好ましくは5〜7、きわめて特に好ましくは約5.6に調節する、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
鉱酸類、HCl、H2CO3、CO2/H2O、H2SO4、リン酸類、カルボン酸類及びヒドロキシカルボン酸類から選択した酸の存在下で結晶化を実施する、請求項36又は37に記載の方法。
【請求項39】
請求項27又は28に記載のようにして得られた酸性反応溶液から、結晶化によりDD/LL/DL/LD−メチオニルメチオニンジアステレオマーの混合物を単離する方法。
【請求項40】
塩基により、溶液のpHを5〜9、好ましくは5〜7、より好ましくは約5.6に調節する、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
塩基を、NH4HCO3、(NH4)2CO3、窒素含有塩基、NH4OH、カルバミン酸塩類、KHCO3、K2CO3、炭酸塩類、アルカリ金属及びアルカリ土類金属塩基類からなる群から選択する、請求項39又は40に記載の方法。
【請求項42】
DD/LL−メチオニルメチオニン及びDL/LD−メチオニルメチオニンのエナンチオマー2対を得る、分画結晶化によるDD/LL/DL/LD−メチオニルメチオニンジアステレオマーの混合物の分画方法。
【請求項43】
a) DD/LL/DL/LD−メチオニルメチオニンを含有する懸濁液を、透明な溶液が得られるまで酸性化した後、その酸性溶液に塩基を段階的に添加して沈殿物を分離し、沈殿物としてDL/LD−メチオニルメチオニンを得る、及び
b) 段階a)で得られた母液からDD/LL−メチオニルメチオニンを得る、
請求項42に記載の方法。
【請求項44】
段階a)の酸性化を、酸を用いてpHを0.1〜1.0、好ましくは約0.6に設定して実施し、得られた透明な溶液をその後塩基を用いてpH5〜6、好ましくは約5.6に調節する、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
鉱酸類、好ましくはリン酸、硫酸、塩酸又は炭酸又は二酸化炭素、特に好ましくは炭酸又は二酸化炭素、及び/又はカルボン酸類を酸として使用する、請求項43又は44に記載の方法。
【請求項46】
NH4HCO3、(NH4)2CO3、窒素含有塩基類、NH4OH、カルバミン酸塩類、KHCO3、K2CO3、炭酸塩類、アルカリ金属及びアルカリ土類金属塩基類からなる群から塩基を選択する、請求項43又は44に記載の方法。
【請求項47】
a) DD/LL/DL/LD−メチオニルメチオニンを含有する懸濁液を、透明な溶液が得られるまで塩基性化し、その塩基性溶液に酸を段階的に添加して沈殿物を分離し、沈殿物としてDL/LD−メチオニルメチオニンを得る、及び
b) 段階a)で得られた母液からDD/LL−メチオニルメチオニンを得る、
請求項42に記載の方法。
【請求項48】
段階a)の塩基性化を、塩基を用いてpHを7.5〜14、好ましくは約9〜13に調節して実施し、得られた透明な溶液をその後酸を用いてpH5〜6、好ましくは約5.6に調節する、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
NH4HCO3、(NH4)2CO3、窒素含有塩基類、NH4OH、カルバミン酸塩類、KHCO3、K2CO3、炭酸塩類、アルカリ金属及びアルカリ土類金属塩基類からなる群から塩基を選択する、請求項47又は48に記載の方法。
【請求項50】
鉱酸類、好ましくはリン酸、硫酸、塩酸又は炭酸又は二酸化炭素、特に好ましくは炭酸又は二酸化炭素、及び/又はカルボン酸類を酸として使用する、請求項47又は48に記載の方法。
【請求項51】
温度0〜100℃、好ましくは5〜60℃、特に好ましくは10〜40℃で実施する、請求項42から50までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項52】
得られたDD/LL−メチオニルメチオニンをラセミ化し、DD/LL−メチオニルメチオニン及びDL/LD−メチオニルメチオニンのエナンチオマー2対を互いに分離する、請求項42から51までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項53】
方法を水性培地中で実施する、請求項8から52までのいずれか1項に記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公表番号】特表2012−505646(P2012−505646A)
【公表日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−531453(P2011−531453)
【出願日】平成21年10月9日(2009.10.9)
【国際出願番号】PCT/EP2009/063160
【国際公開番号】WO2010/043558
【国際公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【出願人】(501073862)エボニック デグサ ゲーエムベーハー (837)
【氏名又は名称原語表記】Evonik Degussa GmbH
【住所又は居所原語表記】Rellinghauser Strasse 1−11, D−45128 Essen, Germany
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年10月9日(2009.10.9)
【国際出願番号】PCT/EP2009/063160
【国際公開番号】WO2010/043558
【国際公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【出願人】(501073862)エボニック デグサ ゲーエムベーハー (837)
【氏名又は名称原語表記】Evonik Degussa GmbH
【住所又は居所原語表記】Rellinghauser Strasse 1−11, D−45128 Essen, Germany
【Fターム(参考)】
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