説明

4ウエイ排気ガス処理のための高多孔度フィルタ

【課題】圧力降下が低く、改善された耐熱衝撃性及び強度をもつ、コージエライトセラミック製品を形成する。
【解決手段】少なくとも64%であるが80%未満の高い体積%多孔度をもつコージエライトセラミック製品が、かなり改善された破壊強度係数(MOR)及び耐熱衝撃性(TSR)をセラミック製品に与える、制御された細孔径中央値及び熱膨張係数平均値を有する。

【発明の詳細な説明】
【関連出願の説明】
【0001】
本出願は2006年6月30日に出願された、名称を「4ウエイ排気ガス処理のための高多孔度フィルタ(High Porosity Filters for 4-Way Exhaust Treatment)」とする、米国仮特許出願第60/817722号の恩典を特許請求する。
【技術分野】
【0002】
本発明はセラミック技術の分野にあり、特に、燃焼排気ガスの処理のための強靭なウォールフローフィルタの作成にそのようなセラミックを特に適するセラミックとする高強度を示す、低熱膨張及び高多孔度を有する耐熱コージエライトセラミックに関する。
【背景技術】
【0003】
コージエライトセラミック体、特にハニカム多セル構造体として形成されたコージエライトセラミック体は、触媒コンバータ、NO吸着体、電気加熱触媒、溶融金属濾過器、熱交換器コア、化学過程基板、水硫化用触媒、水素添加分解法または水素処理法、及びディーゼル排気粒子フィルタのようなフィルタのような、多くの高温用途に利用される。
【0004】
ディーゼル排気濾過においては、低コスト材料であるコージエライトが、低い熱膨張係数(CTE)の提供と相まって、特選材料となっている。1980年代初めから、ウォールフロー型の多孔質コージエライトセラミックフィルタがある種のディーゼルエンジンからの排気流内の粒子の除去に利用されている。ディーゼル粒子フィルタ(DPF)は理想的には、(耐熱衝撃のための)低CTE、(エンジン効率のための)低圧力降下、(排気流からほとんどの粒子を除去するための)高濾過効率、(取扱い、封缶及び使用中の振動に耐えるための)高強度及び低コストを併せもつ。
【0005】
ディーゼルエンジン排気ガスからの窒素酸化物,NOの除去が必要とされる用途においては一般に大量の触媒またはNO吸着体が必要である。圧力降下の増大を最小限に抑えるためには、一層多くのNO触媒/吸着体を収容するために高多孔度及び粗細孔径が望ましい。しかし、多孔度を高めても、細孔径を大きくしても、セラミックハニカムの強度は低下する傾向にある。
【0006】
さらに、極めて低いCTEは多くの場合、耐熱衝撃性(TSR)を高めるための手段として追求され、コージエライト及びその他いくつかの先進セラミックにおける低CTEは一般にセラミック材料内の微細クラックの存在によって達成されている。しかし、残念ながら、微細クラックはそのような高多孔度体の強度をさらに低めるためにもはたらく。
【0007】
高多孔度及び粗細孔径を併せて提供する、例えば64〜80%の多孔度を10〜45μmの細孔径中央値とともに有する、コージエライトセラミックは、極めて低いかまたは極めて高いCTEをもって作成されている。高CTEセラミックは耐熱衝撃性能が劣る傾向があり、CTEが極めて低いセラミックにともなう多量の微細クラックは低強度及び劣悪な機械的耐久性をもたらしていた。低CTEセラミックは一般に、破壊係数(MOR)検査によって決定されるような物理的強度が、代表的なディーゼルエンジン排気システムの機械的に過酷な環境における実用には不十分である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、触媒付でも低い圧力降下のために高多孔度及び粗細孔径中央値を併せもち、同時に改善された耐熱衝撃性及び強度の組合せを保証するCTE平均値をもつコージエライトセラミック体を提供することは技術上の進歩であろう。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、高体積%多孔度の制御された細孔径中央値及び熱膨張係数平均値との新規な組合せを有する、コージエライトハニカム製品を提供する。細孔径中央値及び熱膨張係数平均値の両者に関する制御により、思いがけなくも、そのような高多孔度セラミックの破壊強度係数(MOR)及び耐熱衝撃性(TSR)のかなりの改善が可能になることが見いだされた。特定の実施形態において、本発明のコージエライトセラミック製品は少なくとも64%で80%未満の体積多孔度を示すが、従来技術にしたがって作成された高多孔度セラミックで見られるより一般に高い強度及び熱膨張係数平均値をもつ。
【0010】
本発明のセラミック製品は、CTE及び細孔径分布に関する管理範囲限定により高破壊強度係数(MOR)が良好な耐熱衝撃性と併せて得られる点及び、有効量の触媒及び/またはNO吸着体がコーティングされている場合であっても、セラミックの細孔微細構造によって清浄時及びすす堆積時の低圧力降下が保証される点において、触媒付ウォールフローディーゼル粒子フィルタとしての使用に特に良く適する。本発明のコージエライトセラミックにおける高MOR強度の保持は本製品の、多孔度が同様の従来技術製品と比較して若干高い許容CTEとして表れるような、低減された微細クラックレベルによる結果であると考えられる。すなわち、いくつかの実施形態において、本発明は、多孔度が≧64%かつ<80%であり、
(i) ≧10μmかつ<18μmの細孔径中央値(d50)においてCTEが<6.0×10−7/℃、
(ii) ≧18μmかつ<22μmの細孔径中央値(d50)においてCTEが<9.0×10−7/℃、
(iii)≧22μmかつ≦25μmの細孔径中央値(d50)においてCTEが<10.0×10−7/℃、
(iv) >25μmかつ<29μmの細孔径中央値(d50)においてCTEが<13.0×10−7/℃、または
(v) ≧29μmかつ≦45μmの細孔径中央値(d50)においてCTEが<17.0×10−7/℃かつ≧3.0×10−7/℃、
の範囲のいずれかの内に入る、細孔径中央値及び25〜800℃での熱膨張係数(CTE)平均値を有する、コージエライトセラミック製品を含む。本説明の目的のため、コージエライトセラミック材料の細孔径中央値(d50)は従来通りに材料の細孔体積の50%がそれより微細な細孔径をもつ細孔径として定義され、全ての細孔径及び%細孔体積は標準の水銀多孔度測定法によって決定される。
【0011】
許容CTEレベルと細孔径中央値(d50)の間の重要な関係をより直接的に表す別の態様において、本発明は、少なくとも10μmであって45μm未満の細孔径中央値(d50)及び、上記温度範囲(25〜800℃)にかけて測定した軸方向CTE平均値が、d50をμm単位で表し、CTE(25〜800℃)を10−7/℃単位で表したときに、関係式:
0.5(d50−24.0)<CTE(25〜800℃)<0.5(d50−5.0)
を満たす、高多孔度コージエライトセラミック製品を含む。この場合にも、体積多孔度が少なくとも64%で80%未満の高多孔度コージエライトセラミックが含まれる。
【0012】
本発明のいくつかの別の実施形態にしたがえば、挟細孔径分布により、触媒のより一様な細孔壁表面上分布が得られる。細孔壁上のより一様な触媒コーティング厚により、清浄時及びすす堆積時の低圧力降下が得られ、触媒とすす及び触媒と排気ガスの間の接触機会も増大し、したがってより効率的な触媒使用が促進される。挟細孔径分布によりさらに、触媒付フィルタで、圧力降下が軽減され、濾過効率が高くなり、強度が高くなる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、本発明の選ばれたコージエライトセラミックについての、25〜800℃でのCTE平均値(×10−7/℃)に対する細孔径中央値のプロットである。
【図2】図2は、本発明の選ばれたコージエライトセラミックについての、25〜800℃でのCTE平均値(×10−7/℃)に対する細孔径中央値の別のプロットである。
【図3】図3は、本発明の選ばれたコージエライトセラミックについての、多孔度に対する細孔径中央値のプロットである。
【図4】図4は、本発明の選ばれたコージエライトセラミックについての、多孔度に対する細孔径中央値の別のプロットである。
【図5】図5は、挟細孔径分布を示す本発明の選ばれたコージエライトセラミックについての、25〜800℃でのCTE平均値(×10−7/℃)に対する細孔径中央値(d50)のプロットである。
【図6】図6は、挟細孔径分布及び小極微細孔体積分率を有する本発明の選ばれたコージエライトセラミックについての、25〜800℃でのCTE平均値(×10−7/℃)に対する細孔径中央値(d50)のプロットである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に添付図面を参照して本発明をさらに説明する。
【0015】
燃焼機関排気ガスの処理のための先進ハニカム支持体及びフィルタのような用途のためのコージエライトセラミック製品は必ず、多孔度が非常に高いが、高耐熱衝撃性を保証するに十分に高い機械的強度及び十分に低い熱膨張係数も示さなければならない、セラミックを含むであろう。高多孔度要件を満たすセラミック製品は、少なくとも64%かつ80%未満の体積多孔度をもつセラミック製品を含む。そのような高多孔度セラミックは一般に、多量の微細クラックが必要な低CTEコージエライトセラミックの場合は特に、比較的脆弱である。
【0016】
本発明は、コージエライト材料の熱膨張及び細孔径分布の慎重な制御により、高TSRに必要な多孔度と強度の組合せを示すコージエライトセラミック製品を提供する。すなわち、発明者等は、CTEが低〜中程度の高多孔度コージエライトセラミックでは、低CTE材料においてセラミックの細孔径平均値を下げれば、驚くほど良好なMOR強度が実際に得られることを見いだした。
【0017】
[CTE平均値×細孔径中央値]セラミック設計空間の高強度と高耐熱衝撃性の所要の組合せを提供する領域が図面の図1にグラフで示され、広いグラフ面内に外郭線で囲まれた5つの隣接する許容[CTE−細孔径]設計空間によって示されている。本発明にしたがって提供された多くのコージエライトセラミック製品に対するCTE平均値及び細孔径中央値(d50)が図面にプロットされ、プロット上のこれらの製品の分布は、コージエライトセラミックに対するCTEは細孔径中央値が低いほど低くできるという全体的傾向を示している。
【0018】
上に要約され、図1の外郭線で囲まれた領域に表されるように、許容セラミック特性の範囲内に入るであろう本発明に所たがう高多孔度コージエライトセラミックは、
(i) ≧10μmかつ<18μmの細孔径中央値(d50)において、CTEが<6.0×10−7/℃、
(ii) ≧18μmかつ<22μmの細孔径中央値(d50)において、CTEが<9.0×10−7/℃、
(iii)≧22μmかつ≦25μmの細孔径中央値(d50)において、CTEが<10.0×10−7/℃、
(iv) >25μmかつ<29μmの細孔径中央値(d50)において、CTEが<13.0×10−7/℃、または
(v) ≧29μmかつ≦45μmの細孔径中央値(d50)において、CTEが<17.0×10−7/℃かつ≧3.0×10−7/℃、
の範囲のいずれかの内に入る、(標準的な水銀多孔度測定法で決定させるような)細孔径中央値(d50)及び25〜800℃の温度範囲にわたって平均された軸方向熱膨張係数(CTE)平均値を有するであろう。本発明の好ましいコージエライトセラミックは、
(i) ≧10μmかつ<18μmの細孔径中央値(d50)において、>2.0×10−7/℃かつ<5.0×10−7/℃のCTE,
(ii) ≧18μmかつ<22μmの細孔径中央値(d50)において、>3.0×10−7/℃かつ<8.0×10−7/℃のCTE,
(iii)≧22μmかつ≦25μmの細孔径中央値(d50)において、>4.0×10−7/℃かつ<9.0×10−7/℃のCTE,
(iv) >25μmかつ<29μmの細孔径中央値(d50)において、>5.0×10−7/℃かつ<11.0×10−7/℃のCTE,または
(v) ≧29μmかつ≦39μmの細孔径中央値(d50)において、<14.0×10−7/℃かつ≧3.0×10−7/℃のCTE、
の範囲のいずれかの内に入る細孔径中央値及び25〜800℃の熱膨張係数平均値を有する。
【0019】
図面の図2は、CTE平均値がより低いセラミックにおける縮小された細孔径中央値(d50)に向かう傾向をさらに明確に示す、図1にプロットされた例示組成に重なるセラミック設計空間の領域を外郭線で囲んでいるプロットである。図2において外郭多角形(A-B-C-D-E)で囲まれた領域は、セラミック製品の少なくとも一次元において、d50をμm単位で表し、CTE(25〜800℃)平均値を10−7/℃単位で表したときに、関係式:
0.5(d50−24.0)<CTE(25〜800℃)<0.5(d50−5.0)
を満たす、25〜800℃の温度範囲にわたって平均された熱膨張係数(CTE)平均値を示し、多孔度は少なくとも64%かつ80%未満であり、細孔径中央値(d50)は少なくとも10μmかつ45μm以下である。好ましい実施形態にしたがえば、熱膨張係数(CTE)平均値は、d50をμm単位で表し、CTE(25〜800℃)平均値を10−7/℃単位で表したときに、関係式:
0.5(d50−24.0)<CTE(25〜800℃)<0.5(d50−5.0)
を満たして、多孔度は少なくとも64%かつ80%未満、細孔径中央値(d50)は少なくとも13μmかつ40μm以下で、CTE平均値は少なくとも3.0×10−7/℃かつ13×10−7/℃以下である。
【0020】
限定ではなく、説明が目的である、本発明の特定の実施例を参照して本発明を以下でさらに説明する。そのような実施例の作成に適する原料が下の表1に示される。そのような用途のためのこれらの、及び同様の、材料は鉱物学的及び科学的な高純度が保証されるように選ばれることが望ましい。選ばれた原料について決定された表1には、標準的なレーザ回折法及び/または沈降法によって測定された、そのような材料についての細孔径中央値が含まれる。
【表1】

【0021】
本発明にしたがうコージエライトセラミックの作成のための原材料の、上記構成材料及びいくつかの別の材料の組合せを含む、例示的組合せが以下の表2〜8に示される。
【表2】

【表3】

【表4】

【表5】

【表6】

【表7】

【表8】

【0022】
上で表2〜8に報告したようなバッチ混合物からコージエライトセラミックハニカムを作成するための一般的な手順において、無機原料及び、グラファイト、デンプン、穀粉または高分子材の細孔形成剤を4〜6%のメチルセルロース結合剤及び0.5〜1%のステアリン酸ナトリウム離型剤とともに混合し、ステンレス鋼マラー内で得た混合物に水を練り込んで、可塑化バッチを形成した。そのようにして形成した可塑化バッチを次いで、ハニカム断面がほぼ200〜300セル/平方インチ(31〜46.5セル/cm)でセル壁厚が0.012〜0.020インチ(0.30〜0.51mm)である、直径が2インチ(50.8mm)ないし8.66インチ(220mm)の円柱形ハニカムプリフォームに押出成形した。断面直径がほぼ0.3インチ(7.62mm)のロッドに可塑化バッチを押出成形した場合もある。そのような押出成形ハニカム及びロッドを次いで乾燥し、続いてガス窯または電気窯内で焼成して、コージエライトが主結晶相(重量でハニカムを構成する結晶相の87%より多い)をなすセラミックハニカムに押出成形ハニカムの原材料を変換した。これらの焼成ハニカムでは、少量の(合せて重量で総結晶相の13%より少ない)残留ムライト、スピネル+サファイア及びα-アルミナの結晶相がX線回折法で検出される場合があり得る。
【0023】
上の表2〜8に示されたようなバッチ組成を有する押出成形ハニカムから得られた焼成コージエライト材料及びハニカム製品の代表的な焼成データ及び製品性能データが下の表9〜18に報告される。報告されるそれぞれの製品についてのこれらの表には、セラミックのCTE及び細孔径中央値に関する制御を可能にする態様での、ハニカム原料バッチ成分のコージエライトへの反応−焼結の開始及び完了に有用な焼成パラメータが含まれる。製品の多くについては、焼成されたハニカムまたはロッドについて決定された、焼成材料の選ばれた代表的物理特性も報告される。
【0024】
表9〜18のデータをさらに詳しく説明すれば、CTE値は、ハニカムのチャネルの長さに平行な方向(軸方向)にとった試料について体膨張計測法で測定された、25〜800℃の温度範囲にわたって平均された製品の、10−7/℃単位の、熱膨張係数平均値に対応する。%多孔度は、水銀多孔度測定法で測定された、製品の壁体内の細孔の体積%である。d10,d50及びd90は、同じく水銀多孔度測定法で測定された、総細孔体積のそれぞれ10%,50%及び90%がそれより小さい細孔径をもつ、ミクロン(μm、すなわち10−6m)単位の、細孔径を表す。したがって、例えば、d90は、細孔の(体積で)90%がそれより小さな直径を有する(累積水銀貫入体積が総水銀貫入体積の10%に等しい細孔径に等しい)細孔径である。
【0025】
焼成ハニカムについて報告される曲げ強度または破壊係数(MOR)値は、0.3インチ(7.62mm)径のロッドまたはハニカムの軸方向に平行に長さを測定した1インチ(25.4mm)×1/2インチ(12.7mm)×(長さ)5インチ(127mm)の有セルバーについて4点曲げで測定した値である。室温における弾性率値は、ハニカム軸方向に平行な長さをもつ、同様の1インチ×1/2インチ×5インチの有セルバーについて音波共鳴法で測定した。セル形状は「N/w」として挙げられ、ここで、「N」はハニカム断面の1平方インチ(6.45cm)当りのセル数で表されるセル密度であり、「w」は10−3インチ(25.4μm)単位のチャネル壁厚である。
【0026】
表9〜18には、いくつかの実施例について軸方向XRD I(強度)-比(ハニカムの軸断面で測定したI-比)及び横方向XRD I-比(横方向の、焼成したままの壁表面で測定したI-比)も報告される。I-比は関係式:
I-比=I(110)/[I(110)+I(002)]
で定義される。ここで、I(110)及びI(002)は、XRDピークの六方晶指数付けに基づく、コージエライト結晶格子の(110)面及び(002)面からのXRD反射のピーク高である。I-比は、軸方向断面(チャネル長に直交する断面)または横方向表面(焼成したままのハニカム壁表面)について、CuKα線を用いるX線回折法で測定した。I-比は、ハニカム製品内のコージエライト結晶の方位がハニカム壁の平面に平行なそれぞれの負熱膨張c軸に沿う度合いの定量的尺度である。そのような方位の度合いは大きい方が、(壁の平面内で、チャネルの長さに平行な)軸方向及び(壁の平面内で、チャネル長に直交する)径方向のいずれにおいても、ハニカム製品のCTEを低下させるから望ましい。コージエライト結晶の方位がランダムな場合、軸方向I-比及び横方向I-比はいずれもほぼ0.65に等しい。0.65より大きい横方向I-比値及び0.65より小さい軸方向I-比値は、コージエライト結晶が壁の平面に平行なそれぞれのc軸に沿って優先配向していることを示す。コージエライト結晶の全てが壁の平面においてそれぞれのc軸に沿って並んでいれば、横方向I-比値は1.0になるであろう。
【0027】
表9〜18には、焼成ハニカムのいくつかについて粉末にした試料をX線回折法で測定した、残留スピネル、ムライト及びα-アルミナの重量%も報告されている。
【表9】

【表10】

【表11】

【表12】

【表13】

【表14】

【表15】

【表16】

【表17】

【表18】

【0028】
上に例示したような本発明のコージエライトセラミック体の多孔度、細孔径中央値及びCTE平均値は、コージエライトセラミック体がハニカムウォールフローフィルタとしての使用のための形状につくられたときに、高強度が得られ、同時に低圧力降下及び高耐熱衝撃性が維持されるように選ばれる。そのような形状における最良の性能のためには、ハニカムが、セラミック材料の(無セル)ロッドまたは(無セル)バーについて4点曲げ法で測定して少なくとも500psi(3.45×10Pa),さらに好ましくは少なくとも700psi(4.83×10Pa),さらに一層好ましくは少なくとも900psi(6.20×10Pa),最も好ましくは1000psi(6.89×10Pa)の破壊係数(曲げ強度)を有するセラミックで形成されるべきである。有セル体について測定した場合は、MORの値はハニカム構造の軸方向に直交してとられた有セル体の断面の前面閉鎖面積(CFA)に比例する。CFAは試料の断面積、すなわち多孔壁及び壁交合部を合せた面積、の中実部分率として定義される。したがって、CFAは:
{w[2(N−0.5)−w]N}
に等しい。ここで,wはインチを単位とする壁厚であり、Nは(インチ)−2を単位とするセル密度である。ウォールフローフィルタ構造に用いられることになる有セル構造体に対して、MOR/CFAの値は少なくとも500psi(3.45×10Pa)であることが望ましく、少なくとも700psi(4.83×10Pa)であることが好ましく、少なくとも900psi(6.20×10Pa)であることが一層好ましく、少なくとも1000psi(6.89×10Pa)であることが最も好ましいであろう。
【0029】
ウォールフローフィルタに選ばれるコージエライトセラミックは、セラミックの弾性率Eに対するMORの比として定義される、高歪余裕を示すことも有利であろう。この場合も、セラミックのMORは室温における破壊係数であり、Eは室温における弾性率である。MORおよびEの値はいずれも中実ロッドについて決定されるべきであり、あるいは、有セルハニカム試料については、セラミック体を貫通するチャネル配位の方向に平行な軸に沿う測定によっていずれも決定されるべきである。有セルハニカム試料の場合も、ハニカムは同じセル形状(同じw及びN)をもつハニカムとすべきである。ウォールフローフィルタ用途に対しては、焼成したままの材料で、少なくとも0.09%,好ましくは0.10%,さらに好ましくは少なくとも0.12%,さらに一層好ましくは少なくとも0.14%,特には少なくとも0.16%の歪余裕を示すことが好ましい。高歪余裕は、その結果として、与えられたCTEに対してさらに高い耐熱衝撃性を得ることができるから、有益である。
【0030】
上の表1〜18にまとめたような組成評価に基づき、高多孔度ウォールフローフィルタ基板の作成に用いるに特に良く適合する範囲のコージエライトセラミック特性が識別された。この範囲内のコージエライトセラミックは、64%≦%多孔度≦77%の範囲の%多孔度を有し、
(i) 18μm<d50≦50μm,
(ii) d50>158−2.0(%多孔度),及び
(iii)d50<210−2.5(%多孔度),
の限定範囲を同時に満たす細孔径中央値(d50)を有するであろう。細孔径中央値は、上記範囲内で多孔度が高い側のコージエライトセラミックにおいては30μm未満にあることが好ましいであろう。
【0031】
これらのセラミックが入るであろう多孔度/細孔径の領域は図面の図3に示され、多孔度及び細孔径に関する上記限定範囲を同時に満たす組成は図面の外郭四辺形A-B-C-Dの領域内にある。この場合も、開示された範囲内で材料の多孔度が高くなるほど、与える細孔径中央値を小さくすることによって、そのようなセラミックのMOR強度を、他の方法で達成することができるMOR強度より、高くすることが可能になる。
【0032】
本発明のまた別の態様において、図面の図3に示されるセラミックの多くに加えて、図3の四辺形A-B-C-Dにカバーされる設計範囲の外にあるいくつかの高MOR/高TSR材料をさらに含む、コージエライトセラミック設計の領域が識別された。そのような設計制限範囲内に入るコージエライトセラミックは、以下の要件組合せ:
(i) 25μm<細孔径中央値<46μm及び64%<多孔度≦67%,
(ii) 21μm<細孔径中央値<42μm及び67%<多孔度≦68%,
(iii)19μm≦細孔径中央値<40μm及び68%<多孔度<71%,
(iv) 18μm<細孔径中央値<35μm及び71%≦多孔度<73%,または
(v) 10μm<細孔径中央値<30μm及び73%≦多孔度<75%,
の内のいずれかを満たすであろう。多孔度設計の上記領域内の好ましいセラミックは<30μmの細孔径中央値を有するであろう。
【0033】
図面の図4には、本発明にしたがう上記要件の1つを同時に満たすコージエライトセラミックの多くの実施例について、体積%単位の多孔度に対するμm単位の細孔径中央値(d50)がプロットされている。すなわち、プロットされた実施例は、上記5つの多孔度と細孔径の限定範囲の組合せに対応している細孔設計の5つの領域をカバーする、図面の面上に重畳された5つの矩形の内の1つの範囲内に入る。
【0034】
上述され、図面の図1〜4に開示された組成の中からウォールフローフィルタに適用するためのコージエライトセラミック材料設計の選択においては、多孔度及び細孔径中央値(d50)が65%≦多孔度≦75%及び15μm≦d50≦28μm,特に18μm≦d50≦25μmの範囲内に入ることが、最良の強度及び耐熱衝撃性に特に好ましい。25〜800℃の熱膨張係数平均値,CTE(25〜800℃)は、≦15×10−7/℃であることが望ましく、≦10×10−7/℃であることが好ましく、≦8×10−7/℃であることがさらに好ましく、≦6×10−7/℃であることが最も好ましいであろう。
【0035】
これらのセラミックでつくられたウォールフローフィルタのすす堆積時圧力降下は材料内に存在する細孔径のかなり広い範囲内の細孔径分布にある程度は依存するであろう。これらの高多孔度セラミックを用いるウォールフィルタ用途に対し、細孔径分布値,(d50−d10)/d50は、≦0.50であることが好ましく、≦0.40であることがさらに好ましく、≦0.35であることが最も好ましい。さらに、(d90−d10)/d50と定義され、材料内の細孔径分布の幅を示す、細孔径分布パラメータDの値は、≦1.7,好ましくは≦1.4,さらに好ましくは≦1.2,最も好ましくは≦1.0であるべきである。さらに、d90の値は、≦60μm,さらに好ましくは≦50μm,最も好ましくは≦40μmであるべきであり、d10の値は、≧10μm,さらに好ましくは≧12μm,最も好ましくは≧15μmであるべきである。
【0036】
(d90−d10)/d50<1.70であるような狭い細孔径分布を有する、高多孔度(>65%かつ<80%)コージエライトセラミック群内においては、<9.0×10−7/℃のCTE(25〜800℃)値において細孔径中央値(d50)が>10μmかつ≦25μmの範囲に維持される場合または≧3.0×10−7/℃かつ≦17.0×10−7/℃のCTE(25〜800℃)値において細孔径中央値(d50)が>25μmかつ<46μmの範囲に維持される場合に、最良の熱−機械的特性が見られる。図面の図5は多孔度及びCTEの上記の2つの範囲を示す。比較的少ない微細クラック、したがって比較的高い強度を示す、比較的高いCTE値をもつ群は、比較的大きな細孔径中央値(d50)において良好なTSRを示す。プロットされている材料の全てが65%より大きくかつ80%より小さい多孔度を有し、全てが<1.70のD値,(d90−d10)/d50を有する。これらのセラミック体は、細孔径中央値(d50)が>10μmかつ≦25μmの範囲で、≧3.0×10−7/℃かつ≦9.0×10−7/℃のCTE(25〜800℃)を示すか、または細孔径中央値(d50)が>25μmかつ≦36μmの範囲で、≧5.0×10−7/℃かつ≦15.0×10−7/℃のCTE(25〜800℃)を示すことが特に好ましい。
【0037】
若干狭い多孔度範囲の、細孔径分布が狭い材料において、すなわち多孔度が>65%かつ<75%で細孔径分布D,(d90−d10)/d50が<1.70のセラミックにおいては、d10値が≧10μmであり、
(i)CTE(25〜800℃)が<15.0×10−7/℃で、細孔径中央値が>10μmかつ<30μm,または
(ii)CTE(25〜800℃)が≧3.0×10−7/℃かつ<15.0×10−7/℃で、細孔径中央値が≧30μmかつ≦45μm,
のセラミックで、優れたレベルの圧力降下、TSR及びMORが示される。図面の図6には、細孔径中央値及びCTEの上記の範囲内の実施例についての細孔径中央値d50及びCTE平均値(25〜800℃,×10−7/℃)がプロットされている。図6の外郭線で囲まれた範囲の内の全ての実施例が、65%より大きく、かつ75%より小さい多孔度を有し、全てが、(d90−d10)/d50<1.70を満たす狭い細孔径分布(D)を有し、全てが≧10μmのd10値を有する。そのようなセラミック体は、>65%かつ<75%の多孔度、(d90−d10)/d50<1.70の細孔径分布D、≧10μmのd10値、≧18μmかつ≦32μmの細孔径中央値を、≧5.0×10−7/℃かつ≦15.0×10−7/℃のCTE(25〜800℃)値とともに有することが好ましい。CTEが<9×10−7/℃で、細孔径中央値d50が18μm≦d50≦30μmの範囲にあり、多孔度が66%<%多孔度<73%の範囲にある、セラミックがさらに一層好ましい。
【0038】
上述したように、本発明の高多孔度コージエライトセラミックは、燃料燃焼排気ガス、特にディーゼルエンジンからの排気ガスからの粒子除去のためのハニカムウォールフローフィルタのような用途に対して、特に利点を提供する。これらの用途の最大の難点は、排気流からの窒素酸化物(NO)の除去のための触媒または吸着体が高多孔度ハニカム上に配されている、フィルタ/触媒支持体複合体としてのハニカム形状でのこれらのセラミックの使用にある。後者の場合においては、<10.0×10−7/℃(さらに好ましくは<8.0×10−7/℃)のCTE、≧20μmかつ≦28μmの細孔径中央値d50、>11μmのd10値、及び<50μmのd90値を有する、コージエライトセラミックハニカムが特に好ましい。最良の濾過性能のためには、≦1.5のD値,(d90−d10)/d50及び≦0.45の(d50−d10)/d50値を上記の特性とともに有する、ハニカムが選ばれるであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多孔度が64%以上80%未満であり、細孔径中央値(d50)が10μm以上45μm以下であり、25〜800℃における軸方向の平均熱膨張係数(CTE(25−800℃))が、d50をミクロン単位で表わし、CTE(25−800℃)を10−7/℃単位で表わしたときに、
関係式:0.5×(d50−24.0)<CTE(25−800℃)<0.5×(d50−5.0)を満足するものであって、
無セルのロッドまたはバーで測定して少なくとも500psi(3.45×10Pa)の破壊係数(MOR)曲げ強度を有するか、または有セルバーで測定して少なくとも500psiの破壊係数強度/前面閉鎖面積(MOR/CFA)比を有することを特徴とするコージエライトセラミック製品。
【請求項2】
%多孔度及び細孔径中央値(d50)を有し、前記%多孔度が:
64%≦%多孔度≦77%,
の範囲にあり、細孔径中央値(d50)が、μm単位で:
(i) 18μm<d50≦50μm,
(ii) d50>158−2.0×(%多孔度),かつ
(iii)d50<210−2.0×(%多孔度)
の範囲にあることを特徴とする請求項1記載のコージエライトセラミック製品。
【請求項3】
10.0×10−7/℃より大きいCTE平均値、20μm以上28μm以下の細孔径中央値、65%より大きく75%より小さい多孔度、11μmより大きいd10値、及び50μmより大きいd90値を有することを特徴とする請求項1記載のコージエライトセラミック製品。
【請求項4】
ハニカムウォールフローフィルタであることを特徴とする請求項1記載のコージエライトセラミック製品。
【請求項5】
少なくとも0.10%の歪余裕(MOR/E)を有することを特徴とする請求項1記載のコージエライトセラミック製品。
【請求項6】
少なくとも0.12%の歪余裕(MOR/E)を有し、(i)無セルのロッドまたはバーで測定して少なくとも600psi(4.14×10Pa)の破壊係数(MOR)曲げ強度を有するか、または(ii)有セルバーで測定して少なくとも600psiの破壊係数強度/前面閉鎖面積(MOR/CFA)比を有することを特徴とする請求項5記載のコージエライトセラミック製品。
【請求項7】
少なくとも0.14%の歪余裕(MOR/E)を有し、(i)無セルのロッドまたはバーで測定して少なくとも700psi(4.14×10Pa)の破壊係数(MOR)曲げ強度を有するか、または(ii)有セルバーで測定して少なくとも700psiの破壊係数強度/前面閉鎖面積(MOR/CFA)比を有することを特徴とする請求項5記載のコージエライトセラミック製品。
【請求項8】
多孔度が64%以上80%未満であり、細孔径中央値(d50)が10μm以上18μm未満であり、25〜800℃における平均熱膨張係数(CTE(25−800℃))が、6.0×10−7/℃未満であることを特徴とする請求項1記載のコージエライトセラミック製品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−100221(P2013−100221A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−266124(P2012−266124)
【出願日】平成24年12月5日(2012.12.5)
【分割の表示】特願2009−518276(P2009−518276)の分割
【原出願日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【出願人】(397068274)コーニング インコーポレイテッド (1,222)
【Fターム(参考)】