説明

ALCパネルの取付金物及び取付構造

【課題】 ALCパネルに取付金物収納用の切り込み部を加工する必要がなく、ALCパネルのH形鉄骨梁への取付けが容易で施工効率の良いALCパネルの取付金物、及び取付構造を提供する。
【解決手段】 取付金物10は、細長い板状の平板部11と、平板部11の長手方向一辺の下面側に略鉤状に設けた複数の挟持片12とからなる。取付金物10は平板部11と挟持片12によりH形鉄骨梁2のフランジ部2aに嵌合保持され、フランジ部2a上にある平板部11にALCパネルが載置されると共に、そのALCパネルが平板部11のフランジ部2aから突き出た長手方向他辺側にネジ止め固定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物駆体のH形鉄骨梁に床用又は屋根用などのALCパネルを取付けるための取付金物、及びその取付金物を用いて建物駆体のH形鉄骨梁に取付けたALCパネルの取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から床用又は屋根用のALCパネルは、取付金物を用いて建物駆体のH形鉄骨梁に取付固定されている。かかるALCパネルの取付けに用いる取付金物としては、特開平2000−273996号公報、特開平11−166282号公報、特開平9−287229号公報、特開平8−209832号公報、特開2004−011678号公報に記載のものが知られている。
【0003】
例えば、特開平2000−273996号公報及び特開平11−166282号公報には、図5〜6に示すように、平板部1aと嵌合部1bを有する断面略コ字状の金属板からなり、その嵌合部1bがH形鉄骨梁の上部フランジ部2aに嵌合される取付金物1が記載されている。この取付金物1は、嵌合部1bでH形鉄骨梁2の上部フランジ部2aに嵌合された状態で、平板部1aにALCパネル3を載せて平板部1aにネジ4で固定するようになっている。
【0004】
しかし、この取付金物1の場合、H形鉄骨梁2に嵌合固定したとき、上部フランジ部2aの表面との間に段差ができるため、ALCパネル3の端部は取付金物1の平板部1aに載置されるが、その他の部分では上部フランジ部2aとALCパネル3の間に隙間が生じてしまう。そこで、この隙間をなくため、図6に示すように、ALCパネル3の裏面に、取付金物1を収納するU字溝型の切り込み部3aを予め加工する必要があった。また、ALCパネル3には、ネジ4を挿通するためのネジ用孔3bも加工されていた。
【0005】
また、特開平9−287229号公報には、図7〜8に示すように、平板支持部5aと、平板支持部5aから面一に突き出た平板支持片部5bと、この平板支持片部5bの両側に平板支持部5aから湾曲して延長した2つの圧接片部5cとからなり、平板支持片部5bと圧接片部5cの間にH形鉄骨梁2の上部フランジ部2aを圧接挟持する取付金物5が記載されている。しかし、この取付金物5の場合も、図8に示すように、ALCパネル3を載せてネジ4で固定した平板支持部5aと上部フランジ部2aの表面の間に段差ができるため、ALCパネル3の裏面に取付金物5を収納する切り込み部3aを予め加工する必要があった。
【0006】
更に、特開平8−209832号公報には、図9〜10に示すように、H形鉄骨梁2の上部フランジ部2aを挟持する上部係止片6a及び下部係止片6bと、両者の連結部に固定された板状部6cと、下部係止片6bに螺合された固定用ボルト7とからなる取付金物6が記載されている。しかし、この取付金物6においても、図10に示すように、ALCパネル3を載せてネジ4で固定した板状部6c及び上部フランジ部2aの表面と、上部係止片6aとの間に段差ができるため、ALCパネル3の裏面に上部係止片6aを収納する切り込み部3aを予め加工する必要があった。
【0007】
このように、従来のALCパネルの取付金物においては、H形鉄骨梁のフランジ部に取付けたとき、そのままでは取付金物の最上部とフランジ部の表面との間に段差が生じてしまうため、ALCパネルの裏面に取付金物を収納する切り込み部を予め加工しておき、ALCパネル裏面とフランジ部表面の間に隙間が発生することを防ぐ必要があった。
【0008】
一方、特開2004−011678号公報には、ALCパネルを貫入する刃を備えた固定ボルトが開示されている。ここで用いる取付金物8は、図11に示すように、H形鉄骨梁2の上部フランジ部2aの下面に当接し、固定ボルト9a及びナット9bと協働してALCパネル3をフランジ部2a上に締め付ける役割を果たすものであり、取付金物8それ自体では上部フランジ部2aに係合保持されることがない。そのため、取付金物8の一部が上部フランジ部2aの上に延在することがなく、従ってALCパネル3の裏面に取付金物8を収納するための切り込み部を加工する必要はない。
【0009】
しかしながら、特開2004−011678号公報の取付金物は、上記したように取付金物8だけを上部フランジ部2aに係合保持しておくことができない。そのため、この取付金物8では、固定ボルト9aとナット9bを用いたALCパネル3の取付作業が極めて煩雑で面倒である。また、この取付金物8は、前記し且つ図5〜10に図示した従来の取付金物1、5、6も同様であるが、H形鉄骨梁2の上部フランジ部2aに取付けるALCパネル3の1枚ごとに1つの取付金物1、5、6、8が必要である。そのため、ALCパネル3の取り付けに数多くの取付金物1、5、6、8が必要となり、取付作業が極めて煩雑で面倒であるうえ、ALCパネル1を固定するネジ4との位置合わせについても厳密な墨出し作業が必要であった。
【0010】
【特許文献1】特開平2000−273996号公報
【特許文献2】特開平11−166282号公報
【特許文献3】特開平9−287229号公報
【特許文献4】特開平8−209832号公報
【特許文献5】特開2004−011678号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、このような従来の事情に鑑み、ALCパネルに取付金物収納用の切り込み部を予め加工するなどの特殊な加工を施す必要がなく、製造工場でのコストの低減が可能であると共に、H形鉄骨梁への設置並びにネジによるALCパネルの固定が簡単で、1枚の取付金物上に複数のALCパネルを取付けることができ、現場での施工効率を著しく向上させることが可能なALCパネルの取付金物、及びその取付構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するため、本発明が提供する建物駆体のH形鉄骨梁にALCパネルを取付けるための取付金物は、細長い板状の平板部と、平板部の長手方向一辺の下面側に略鉤状に設けた複数の挟持片とからなり、H形鉄骨梁のフランジ部を平板部と挟持片の間に嵌合挟持でき、平板部がフランジ部上に保持されてパネル載置面となることを特徴とする。
【0013】
本発明は、また、上記した取付金物を用いてALCパネルを建物駆体のH形鉄骨梁に取付けたALCパネルの取付構造であって、前記取付金物が平板部と挟持片によりH形鉄骨梁のフランジ部に嵌合保持され、フランジ部上の平板部にALCパネルが載置されると共に、そのALCパネルが平板部のフランジ部から突き出た部分にネジ止め固定されていることを特徴とするALCパネルの取付構造を提供するものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、ALCパネルに取付金物を収納するためのU字型などの切り込み部や取付ネジ孔の加工が不要になるため、ALCパネルの製造工程が簡素化され且つ生産効率を改善でき、製造コストを低減することができる。また、本発明の取付金物は、H形鉄骨梁への設置が簡単なうえ、1枚の取付金物上に複数のALCパネルを取付けることができ、パネル枚数や割付などを気にせず設置を行うことが可能であり、且つ固定用のネジ位置の墨出し作業も必要ない。更には、ALCパネル裏面からの作業が不要となるため、作業者が上下階を行き来する必要がない。従って、現場での施工効率を著しく向上させ、施工コストを低減させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明におけるALCパネルの取付金物は、細長い板状の平板部と、その平板部の長手方向一辺の下面側に略鉤状に設けた複数の挟持片とからなり、この平板部と挟持片の間にH形鉄骨梁のフランジ部を嵌合させて挟持することができる。従って、取付金物の平板部はH形鉄骨梁のフランジ部上に載った状態で保持され、細長い平板部全体が面一のパネル載置面を構成する。そのため、1枚の取付金物上に複数のALCパネルを載置することができ、また、ALCパネルを載置したとき部分的に段差が生じることがないので、ALCパネルの裏面に取付金物を収納する切り込み部を予め加工しておく必要がない。
【0016】
また、H形鉄骨梁のフランジ部に保持された取付金物は、平板部のフランジ部と係合している長手方向一辺側がフランジ部上に位置し、他辺側はフランジ部から外側に突き出た状態となる。そのため、取付金物の平板部で構成されるパネル載置面上にALCパネルを載せ、フレキ付きタッピンネジやタッピンネジなどのネジにより、フランジ部から外に突き出た平板部の長手方向他辺側との間でALCパネルを固定することができる。しかも、ネジを固定すべき平板部の長手方向他端側は、フランジ部に沿って長く延長しているので、ネジ位置の墨出し作業を行わなくても簡単にネジを打ち込んで固定することができる。
【0017】
取付金物若しくはその平板部は、細長い金属板からなることが好ましい。また、その金属板の板厚は、強度や加工性を考慮すると1.2〜3.5mmの範囲が好ましい。平板部の板厚を1.2〜3.5mmとすることで、望ましい強度が得られるだけでなく、ALCパネルだけでなく平板部にもタッピンネジを簡単に貫通させて螺合することができるので、予めALCパネルにネジ用孔を加工する必要がないうえ、ALCパネルの取付けが極めて容易になる。
【0018】
平板部の下面側には、長手方向一辺に間隔をおいて複数の挟持片を設ける。挟持片は、平板部と協働して両者の間にH型鉄骨梁のフランジ部を嵌合挟持するものであるから、平板部に対して略鉤状をなし、例えば平板部と挟持片の断面形状が略h字状をなすように構成する。また、挟持片の形成は、別途作製した挟持片を平板部に溶接などにより固定してもよいが、好ましくは、平板部の長手方向一辺の複数箇所を所定幅で直角方向に切込み、その所定幅の切込み部分を平板部の下面側に略鉤状に折り曲げて形成することができる。
【0019】
また、取付金物の長さは、建物駆体のH形鉄骨梁に合せて何種類か設定し、使い分けをすることで、同じH形鉄骨梁であれば全て対応が可能となる。更に、大きな吹上荷重などを必要とする場合においては、取付金物の挟持片の数を増やしたり、取付金物の挟持片にリブや突起を設けることで取付強度を上げることも可能である。
【実施例】
【0020】
本発明によるALCパネルの取付金物及び取付構造を、図1〜4に基づいて具体的に説明する。この取付金物10は、図1に示すように、細長い板状の鋼板からなる平板部11と、その平板部11の長手方向一辺側の下面側に略鉤状(断面略h字状)に設けた複数の挟持片12とで構成されている。尚、これらの挟持片12は、平板部11の長手方向一辺側の複数箇所を一定幅で直角方向に切込み、その切込み部分を平板部11の下面側に略鉤状に折り曲げて形成してある。
【0021】
この取付金物10をH形鉄骨梁のフランジ部に取り付けるには、図2に示すように、挟持片12を有する平板部11の長手方向一辺側をH形鉄骨梁2の一つのフランジ部2aに対向させ、平板部11と挟持片12の間にフランジ部2aを嵌合させる。平板部11と挟持片12の間隔は、挟持片12の根本側でフランジ部2aの厚さより若干広く、挟持片12の先端に向かって狭くなり、最も狭い部分ではフランジ部2aの厚さより若干低なっているが、挟持片12の最先端部は平板部11と反対側に折り曲げてフランジ部2aの厚みよりも広くなっている(図4参照)。従って、平板部11と挟持片12の間の先端開口からフランジ部2aを簡単に嵌め込むことができると同時に、平板部11と複数の挟持片12とでフランジ部2aを挟持して、取付金物10をH型鉄骨梁2のフランジ部2aに確実に保持することができる。
【0022】
H型鉄骨梁2のフランジ部2aに保持された取付金物は、図2に示すように、平板部11のフランジ部2aと係合している長手方向一辺側がフランジ部2a上にあり、平板部11の他辺側はフランジ部2aの外側に突き出ている。この細長い取付金物10の平板部11をパネル載置面とすることで、図3に示すように、一つの取付金物10の上に複数のALCパネル3を載せることができる。尚、ALCパネル3には、取付金物10を収納するための切り込み部やネジ孔を予め形成しておく必要はない。
【0023】
取付金物10の平板部11に載せたALCパネル3は、図4に示すように、例えばタッピンネジ13などにより、フランジ部2aから外に突き出た平板部11の長手方向他辺側との間で固定される。その際、タッピンネジ13を固定すべき平板部11の長手方向他辺側は、フランジ部2aから外に突き出し且つフランジ部2aに沿って長く延長しているので、ネジ位置の墨出し作業を行わなくても、簡単にネジを打ち込むことが可能である。尚、タッピンネジ13の場合、スクリュードライバなどを用いて打ち込めば、ALCパネル3と取付金物10を貫通してネジ止めできるので、ALCパネル3及び取付金物10に予め挿通用の孔を設けておく必要がない。
【0024】
このようにして、取付金物10がH形鉄骨梁2のフランジ部2aに嵌合保持されると共に、この取付金物10の平板部11の表面によって面一のALCパネル載置面が構成され、このパネル載置面上に載置されたALCパネル3がフランジ部2aから外に突き出た平板部11の長手方向一辺側にネジ止め固定されたALCパネルの取付構造が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明によるALCパネルの取付金物の一実施例を示す斜視図である。
【図2】図1の取付金物をH形鉄骨梁のフランジ部に設置した状態を示す概略の斜視図である。
【図3】図2の取付金物上にALCパネルを載置した状態を示す概略の斜視図である。
【図4】図1の取付金物によるALCパネルの取付構造を示す概略の断面図である。
【図5】従来のALCパネル取付金物の一具体例を示す斜視図である。
【図6】図5の取付金物によるALCパネルの取付構造を示す概略の断面図である。
【図7】従来のALCパネル取付金物の別の具体例を示す斜視図である。
【図8】図7の取付金物によるALCパネルの取付構造を示す概略の断面図である。
【図9】従来のALCパネル取付金物の更に別の具体例を示す斜視図である。
【図10】図7の取付金物によるALCパネルの取付構造を示す概略の断面図である。
【図11】従来のALCパネル取付金物の更に別の具体例によるALCパネルの取付構造を示す概略の断面図である。
【符号の説明】
【0026】
1、5、6、8 取付金物
2 H形鉄骨梁
2a フランジ部
3 ALCパネル
3a 切り込み部
10 取付金物
11 平板部
12 挟持片
13 タッピンネジ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物駆体のH形鉄骨梁にALCパネルを取付けるための取付金物であって、細長い板状の平板部と、平板部の長手方向一辺の下面側に略鉤状に設けた複数の挟持片とからなり、H形鉄骨梁のフランジ部を平板部と挟持片の間に嵌合挟持でき、平板部がフランジ部上に保持されてパネル載置面となることを特徴とするALCパネルの取付金物。
【請求項2】
前記挟持片は、前記平板部の長手方向一辺の複数箇所を所定幅で直角方向に切込み、その所定幅の切込み部分を平板部の下面側に略鉤状に折り曲げて形成されていることを特徴とする、請求項1に記載のALCパネルの取付金物。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の取付金物を用いてALCパネルを建物駆体のH形鉄骨梁に取付けたALCパネルの取付構造であって、前記取付金物が平板部と挟持片によりH形鉄骨梁のフランジ部に嵌合保持され、フランジ部上の平板部にALCパネルが載置されると共に、そのALCパネルが平板部のフランジ部から突き出た部分にネジ止め固定されていることを特徴とするALCパネルの取付構造。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2006−97300(P2006−97300A)
【公開日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−283537(P2004−283537)
【出願日】平成16年9月29日(2004.9.29)
【出願人】(399117730)住友金属鉱山シポレックス株式会社 (195)
【Fターム(参考)】