説明

CD52に対するモノクローナル抗体

本発明は、イヌまたはネコまたはウマ抗原、例えば、イヌCD52に対する抗体、および記載されている抗体を作製および使用する方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願に対する相互参照
本出願は、35 USC §119下に、2010年3月4日に出願された米国仮出願番号第61/310,450号(この記載は出典明示により本明細書に包含させる)の優先権の利益を主張する。
【0002】
発明の分野
本発明は、一般的に、例えば、哺乳動物における、および特にペット、例えば、イヌ、ネコおよびウマにおける、疾患の処置のためのCD52に対する部分または変異体を含むモノクローナル抗体に関する。さらに特に、本発明は、CD52と反応し、標的の検出、疾患の診断およびペットの処置のために有用である抗体構築物、および該構築物によってコードされる抗体を提供する。さらに、ペットにおける白血球関連障害の処置のための方法を本明細書に記載している。これらの方法は、白血球の調節のためのペットのCD52を標的とする抗CD52抗体の投与に基づく。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
免疫グロブリンは、安全、かつ有効な治療剤であることが示されているため、種々の疾患および障害のための治療処置としての免疫グロブリンの使用が、急速に増加している。ヒト使用のために承認された治療モノクローナル抗体は、トラスツマブ(抗原:180kD、HER2/neu)、アレムツズマブ(抗原:21−28kD、CD52)およびリツキシマブ(抗原:35kD、CD20)を含む。さらなる治療タンパク質は、その多数が種々の形態の癌および炎症性関連疾患を標的とする種々の疾患に関して、ヒトに対して臨床開発の種々のフェーズにある。
【0004】
抗体は、抗体分子の可変領域との相互作用による抗原上の特定のエピトープの結合を介して、抗原を標的化する。同時に、抗体の定常領域はさらに、例えば、抗体が結合する細胞またはタンパク質を破壊するか、またはさらなる免疫反応を誘導するような、他の細胞または分子を補充する。免疫グロブリン定常ドメインの特定の領域は、抗体介在性細胞毒性(ADCC)、補体介在性細胞毒性(CDC)、食作用、即時型過敏性、Ig合成の制御および抗原提示細胞を誘導し得る。
【0005】
抗体は、いくつかの哺乳動物種、例えば、ヒトおよびマウスにおいて試験され、開発されているが、それらは、ペット、例えば、イヌ、ネコおよびウマ哺乳動物においてあまり試験されていない。獣医的免疫および炎症状態に対する処置は、ヒトに対して開発された薬物から取り入れられ、しばしば不完全な結果であり、一般的に非ステロイド系抗炎症剤、鎮痛剤、ステロイド剤、免疫抑制剤または抗代謝産物、および化学療法剤を含む小分子に分類される薬物からなる。したがって、免疫状態および癌に関しては、獣医医薬の蓄積は限定される。これらの処置のさらなる欠点は、それらが一般的に症状のみに対処していること、および累積効果で長期間、繰り返し大量に投与されなければならないため、しばしばその疾患自体よりも悪くなる傾向にある深刻な副作用を付随することである。したがって、動物、例えば、ペットにおける使用のための、改良された、さらに特異的な処置および生物学的薬剤の必要性が存在する。ペットの処置における使用のための増強されたエフェクター領域を有するヘテロキメラ抗体は、一般的に、出願人自身の国際公開:US 2010/0061988A1およびUS 2010/110838A2(それぞれの内容を出典明示により本明細書に包含させる)に記載されている。ペットにおいて免疫原性ではなく、ペットにおけるCD52−陽性細胞の過剰増殖により特徴付けられる疾患を処置するために有効である高度に特異的な抗体に対する必要性が、未だ存在する。
【発明の概要】
【0006】
発明の概要
本発明は、獣医適用に有用な治療抗体、特にイヌまたはネコまたはウマCD52、例えばイヌCD52に対する抗体、最適化された免疫原性構築物を使用するこのような抗体を作製する方法、およびこのような抗体を使用する処置方法を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0007】
発明の詳細な説明
前記の概要および以下の詳細な説明はいずれも、単なる例示および説明であって、請求される本発明を限定しないと理解されるべきである。本明細書および特許請求の範囲において使用されるとき、単数形は複数形を含み;「または」の使用は、他に記載のない限り、「および/または」を意味することに注意するべきである。したがって、例えば、単数の「対象ポリペプチド」への言及は、複数のこのようなポリペプチドを含み、単数の「薬剤」への言及は、1つ以上の薬剤および当業者に知られているそれらの同等物などへの言及を含む。さらに、本発明は、記載されている特定の態様に限定されず、もちろんそれ自体変化し得ると理解されるべきである。さらに、本発明の範囲は、特許請求の範囲のみによって限定されるため、特定の態様を記載するために使用される用語に限定されることを意図しない。
【0008】
本明細書において使用されるセクションの表題は、系統的目的のみであり、記載されている対象の限定と解釈されるべきでない。限定はしないが、特許、特許出願、論文、本および学術論文を含む本出願において引用されている全ての文献または文献の一部は、あらゆる目的のために、それら全体において明白に出典明示により本明細書に包含させる。
【0009】
他に定義がない限り、本明細書において使用される全ての専門および科学用語は、本発明が属する分野における通常の技術者により一般的に理解されるのと同じ意味を有する。適当な方法および材料は以下に記載されるが、しかしながら、本明細書に記載されているものと同様または同等の方法および材料を本発明の実施において使用することができる。したがって、材料、方法および実施例は、説明のためのみであり、限定されることを意図しない。本明細書に記載されている全ての刊行物、特許出願、特許および他の文献は、それら全体において、出典明示により包含させる。対立のある場合、定義を含む本願明細書が調整する。
【0010】
標準技術は、組換えDNA、オリゴヌクレオチド合成、組織培養およびトランスフェクション(例えば、エレクトロポレーション、リポフェクションなど)のために使用され得る。酵素反応および精製技術は、製造業者の仕様書にしたがって、または、当分野で一般的に成し遂げられているとおり、もしくは本明細書に記載されているとおりに実施され得る。前記技術および方法は、一般的に、当分野でよく知られている慣用の方法にしたがって、ならびに種々の一般的な文献および本願明細書中で引用および記載されているさらに特定の文献に記載されているとおりに実施され得る。例えば、Sambrookら Molecular Cloning: A Laboratory Manual (2d ed., Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y. (1989); Mayer and Walker, Immunochemical Methods In Cell And Molecular Biology, Academic Press, London (1987); Borrebaeck, Antibody Engineering, 2nd ed., Oxford Univ. Press (1995); Roittら Immunology 6th ed., Mosby (2001)参照;全ての上記引用文献ならびに本明細書における全ての引用文献を、それら全体において出典明示により本明細書に包含させる。
【0011】
本発明は、疾患の処置のために対象への投与に適当なヘテロキメラ抗体および/またはそれらのフラグメントを操作するための方法を提供する。「患者」、「対象」および「個体」なる用語は、本明細書において互換的に使用され、哺乳動物、例えば、限定はしないが、ヒト、ネズミ、サル、ネコ、イヌ、ウマ、ウシ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、哺乳動物家畜用および農業用動物、哺乳動物スポーツ用動物、および哺乳動物ペットを示す。本発明の1つの態様において、対象はペット、例えば、イヌ、ネコまたはウマである。
【0012】
それらの操作されたヘテロキメラ抗体は、ヘテロキメラ組換え抗体を生産するように、定常領域ヌクレオチド配列への可変ドメインヌクレオチド配列の部分の融合、およびこれらの配列の共発現の結果である。さらに、本発明は、動物における疾患の処置のための免疫療法剤および診断薬としての、このようなヘテロキメラ抗体および/またはそれらのフラグメントの使用に関する。
【0013】
本発明において創造された抗体は、いくつかの利点、例えば、(i)反復投与における減少した免疫原性応答;(ii)標的種におけるエフェクター機能に関与する免疫系の効率的な増強が介在する増加した効力;および(iii)増加した半減期を提供する。
【0014】
本発明は、所望の特性を有する抗体および/またはそれらのフラグメントの産生ならびに生産におけるそれらの使用を含む。本発明の抗体は、定常領域の1つと異なる種由来の抗体の可変領域のフラグメントを含む。したがって、抗体および/またはそれらのフラグメントは、標的種における所望のエフェクター機能に対する特異性および高い親和性を保持する。
【0015】
特定の態様における本発明の抗体は、抗体治療に適当なあらゆる治療標的、例えば、腫瘍関連抗原、アレルギーもしくは炎症関連抗原、心臓血管疾患関連抗原、自己免疫疾患関連抗原またはウイルスもしくは細菌感染関連抗原を認識し得る。
【0016】
本明細書において使用される「天然抗体」は、通常、2つの同一の軽鎖および2つの同一の重鎖からなる約150,000ダルトンの糖タンパク質である。それぞれの軽鎖は、1つの共有ジスルフィド結合により重鎖に連結しているが、ジスルフィド結合の数は、種々の免疫グロブリンアイソタイプの重鎖の間で変化する。それぞれの重鎖および軽鎖はまた、規則的間隔の鎖内ジスルフィド架橋を有する。それぞれの重鎖は、一方の端で可変ドメイン(可変領域)(V)、次にいくつかの定常ドメイン(定常領域)を有する。それぞれの軽鎖は、一方の端で可変ドメイン(V)およびもう一方の末端で定常ドメインを有し;軽鎖の定常ドメインは、重鎖の第1の定常ドメインとアラインされ、軽鎖可変ドメインは、重鎖の可変ドメインとアラインされる。
【0017】
任意の脊椎動物種由来の抗体の「軽鎖」は、カッパおよびラムダと呼ばれる2つの明白に別個の型の1つに割り当てられることができる。
【0018】
重鎖の「定常ドメイン」または「定常領域」のアミノ酸配列に依存して、免疫グロブリンは、異なるクラスに割り当てられることができる。免疫グロブリンの5つの主要なクラス:IgA、IgD、IgE、IgGおよびIgMがあり、これらのいくつかはさらに、サブクラス(アイソタイプ)、例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgAおよびIgA2に分類され得る。異なるクラスの免疫グロブリンに対応する重鎖定常ドメインは、それぞれアルファ、デルタ、エプシロン、ガンマおよびミューと呼ばれる。
【0019】
「可変ドメイン」なる用語は、可変ドメインの特定の部分の配列が抗体の間で異なっており、特定の抗原に対するそれぞれの特定の抗体の結合および特異性において使用されるという事実を示す。しかしながら、可変性は、抗体の可変ドメイン中で均一に分布されない。軽鎖および重鎖可変ドメインの両方における超可変領域と呼ばれる3つのセグメントに集中している。可変ドメインのさらに高度に保存されている部分は、フレームワーク領域(FR)と呼ばれる。天然重鎖および軽鎖の可変ドメインは、それぞれ、4つのFR(FR1、FR2、FR3およびFR4)を含む。それぞれの鎖における超可変領域は、FRと極めて接近して結合しており、他の鎖からの超可変領域と共に、抗体の抗原結合部位の形成に寄与する(Kabatら Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th Ed. Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, Md. (1991), pages 647-669参照)。定常ドメインは、抗原への抗体の結合に直接的に関与しないが、種々のエフェクター機能、例えば、抗体依存性細胞毒性(ADCC)および補体活性化における抗体の関与を示す。
【0020】
抗体のパパイン消化は、それぞれ単一の抗原結合部位を有する「Fab」フラグメントと呼ばれる2つの同一の抗原結合フラグメント、および容易に結晶化する能力が名前に反映されている残りの「Fc」フラグメントを生産する。ペプシン処理は、結合架橋(binding cross-linking)抗原を生じる。
【0021】
本明細書において使用される「Fv」は、完全な抗原認識および結合部位を含む最小抗体フラグメントを示す。この領域は、1つの重鎖および1つの軽鎖可変ドメインのダイマーからなる。
【0022】
Fabフラグメントはまた、軽鎖の定常ドメインおよび重鎖の第1の定常ドメイン(CH1)を含む。Fab’フラグメントは、抗体ヒンジ領域由来の1つ以上のシステインを含む重鎖CH1ドメインのカルボキシル末端での少数の残基の付加により、Fabフラグメントと異なる。Fab’−SHは、本明細書において、定常ドメインのシステイン残基が遊離チオール基を有するFab’を示す。F(ab’)抗体フラグメントは、初めは、Fab’フラグメント間でヒンジシステインを有するフラグメント対として生産された。抗体フラグメントの他の立体配置もまた、当業者によく知られている。
【0023】
「抗体」なる用語は、本明細書において非常に広範な意味で使用され、具体的には、モノクローナル抗体(全長モノクローナル抗体を含む)、ポリクローナル抗体、多特異的抗体(例えば、二重特異性抗体)、および所望の生物学的または機能活性を示す抗体フラグメントを含む。所望の生物学的または機能活性は、少なくとも同種抗原に対する結合を含み、補体活性化および/または他のエフェクター機能をさらに含み得る。本明細書において「全長抗体」は、可変および定常領域を含む抗体の天然生物学的形態を構成する構造を意味する。
【0024】
「抗体フラグメント」または「抗原結合部分」は、全長抗体の一部、一般的に、それらの抗原結合または可変ドメインを含む。抗体フラグメントの例は、Fab、Fab’、F(ab’)、およびFvフラグメント;ダイアボディ;直線抗体;一本鎖抗体分子;ならびに2つまたはそれ以上の異なる抗原に結合する抗体フラグメントから形成される多特異的抗体を含む。
【0025】
「免疫抱合体」なる用語は、別の分子、特に、細胞毒性剤、例えば、化学療法剤、毒素(例えば、細菌、真菌、植物または動物起源の酵素的に活性な毒素、またはそれらのフラグメント)、または放射性同位体(すなわち、放射性抱合体)に抱合された抗体またはそれらのフラグメントを示す。
【0026】
本明細書において使用される「価数」なる用語は、ポリペプチドにおける電位標的結合部位の数を示す。それぞれの標的結合部位は、1つの標的分子または標的分子に対する特定の部位に特異的に結合する。ポリペプチドが1つ以上の標的結合部位を含むとき、それぞれの標的結合部位は、同じか、または異なっている分子に特異的に結合し得る(例えば、異なる分子、例えば、異なる抗原、または同じ分子上の異なるエピトープに結合し得る)。
【0027】
「特異性」なる用語は、所定の標的に特異的に結合する(例えば、と免疫反応する)能力を示す。ポリペプチドは、単一特異性であり、標的に特異的に結合する1つ以上の結合部位を含むか、ポリペプチドは、多特異的(例えば、二重特異性または三重特異性)であり、同じか、または異なる標的に特異的に結合する2つ以上の結合部位を含んでいてもよい。
【0028】
興味ある抗原またはエピトープ「に結合する」または「を認識する」本発明の抗体は、抗体が抗原の標的化における診断および/または治療剤として有用であるような十分な親和性で抗原またはエピトープに結合するものである。全部または一部において、標的分子に対する抗体の結合に関して、特定のポリペプチドまたは特定のポリペプチド標的上のエピトープを「特異的結合」または「に特異的に結合する」または「に特異的」であるまたは「に特異的に免疫反応性」であるまたは「特異的に認識する」なる用語は、非特異的相互作用と測定可能な程度に異なる結合を意味する。CD52標的分子を欠いている細胞または組織ではなく、CD52標的分子を有する細胞または組織との、全部または一部における抗体の選択的結合への言及を含む。特異的結合は、一般的に、CD52を欠いている細胞もしくは組織または非特異的ポリペプチドと比較して、単離されたポリペプチドまたはCD52を有する細胞もしくは組織に対して結合したリガンドの量において、2倍以上、好ましくは5倍以上、さらに好ましくは10倍以上、およびより好ましくは100倍以上の増加をもたらす。種々の免疫測定法フォーマットは、特定のタンパク質と特異的に免疫反応性である抗体を選択するために適当である。例えば、ELISA免疫測定法、FACSアッセイ、ウェスタンブロットは、日常的に、タンパク質と特異的に免疫反応性であるモノクローナル抗体を選択するために使用される。
【0029】
抗体は、2つの抗体が同一または立体的に重複するエピトープを認識するとき、参照抗体と「同じエピトープ」に結合する。2つのエピトープが同一または立体的に重複のエピトープに結合するか否かを決定するために非常に広範に使用されている迅速な方法は、標識された抗原または標識された抗体のいずれかを使用する、異なるフォーマットの全てにおいて構成することができる競合アッセイである。抗体は、所定のエピトープへの参照抗体の結合を競合的に少なくとも90%、少なくとも80%、少なくとも70%、少なくとも60%または少なくとも50%阻害すると言われ得る。
【0030】
本明細書において使用される「モノクローナル抗体」なる用語は、実質的に同種の抗体の集団から得られる抗体を示し、すなわち、集団からなる個々の抗体は、少量で存在し得る起こりうる天然変異体を除けば、同一である。モノクローナル抗体は高度に特異的である。例えば、本発明において使用されるべきモノクローナル抗体は、Kohlerら Nature 256:495 (1975)により最初に記載されたハイブリドーマ方法により作製され得るか、または組換えDNA方法により作製され得る。モノクローナル抗体はまた、例えばファージ抗体ライブラリーから単離され得る。
【0031】
モノクローナル抗体は、「抗原」の投与、次に抗体を作るB細胞の単離により、マウスにおいて非常に頻繁に産生される。次に、B細胞は、「ハイブリドーマ」を創造するために、B細胞と同じ種の別の安定な細胞型への融合により不死化される。個々のB細胞は、一次アミノ酸配列および根本的な遺伝子配列により定義される1つの特異的抗体(すなわち、クローン的に単一特異性である)を作る。本明細書において使用される「ヘテロハイブリドーマ」および「ヘテロ骨髄腫」なる用語は、2つの異なる種由来のリンパ球および骨髄腫の融合により不死化されたリンパ球細胞系を示す。
【0032】
モノクローナル抗体は、最初に、例えば、抗原または抗原を発現する細胞で動物を免疫化することにより産生され得る。ハイブリドーマの産生は、マウスまたはペット、例えば、イヌの免疫化で開始する。免疫化は、アジュバントの存在または非存在下で細胞のいくつかの型で行うことができる。細胞はまた、ELISA、Biacore、FACSまたは当分野で利用できる他の方法論により、所望の特性を有するハイブリドーマ細胞系を同定するために使用することができる。
【0033】
本発明のモノクローナル抗体調製の方法における使用のために適当な細胞は、(1)健常または罹患ペット、例えば、イヌ、ネコまたはウマから回収された細胞の特定の型において豊富である末梢血単核細胞(PBMC)またはPBMCの画分を含む。リンパ球は、場合によっては、免疫化前に、抗原の発現を増加させるために、増殖因子、例えば、EPO、SCF、TNFα、TGFβ、GMCSF、TPO、IL−1、IL−2、IL−3、IL−4、GCSFを含む因子とプレインキュベートされる。(2)健常または罹患対象から確立されたリンパ腫細胞系または腫瘍細胞系は、所望により、免疫化前に、抗原の発現を増加させるために、上記因子とプレインキュベートされる。(3)健常または罹患対象の組織由来の細胞系は、場合によっては、免疫化前に、抗原の発現を増加させるために、上記因子とプレインキュベートされる。(4)抗原コード領域またはそのフラグメントを発現するように操作された培養細胞、例えば、バキュロウイルス感染細胞、細菌細胞、酵母細胞、哺乳動物細胞、植物細胞、真菌細胞など。DNA、RNA、タンパク質またはペプチドの形態における抗原は、細胞の画分のいずれか1つに含まれ得る。(5)膜貫通受容体の天然構造が維持されるように、抗原を発現する細胞から調製されるマグネティック(Magnetic)プロテオリポソーム(Proteoliposome)粒子(MPL)が、以前に記載されている(例えば、Mirzabekovら Nat. Biotechnol. 18:649-654 (2000); Babcockら J. Biol. Chem. 276:38433-38440 (2001);PCT公開WO01/49265;米国特許出願第20010034432号参照)。
【0034】
本発明の1つの態様において、モノクローナル抗体の産生は、DNA、ペプチドまたはタンパク質由来の免疫原を使用してなし遂げることができる。ハイブリドーマは、例えば、マウスまたはペットであり得る動物、または適当な抗体応答を与える任意の動物を免疫化することにより産生する。1つの局面において、免疫化は、動物に抗原をコードする核酸またはタンパク質抗原、例えば、イヌCD52もしくはその免疫原性フラグメントまたはCD52もしくはその免疫原性フラグメントをコードする核酸を導入することにより行われる。当業者は、特定のエピトープは、天然環境から取り出されたとき、動物においてさらに免疫原性であることを認識している。したがって、担体、例えば、キーホールリンペットヘモシアニンに接合した抗原のエピトープに対応するペプチドは、天然タンパク質の一部において見られるときのペプチド単独またはエピトープのいずれかよりもより強い抗体応答を誘導し得る。かかる変形免疫化スキームおよび他の免疫化スキームは、当業者に知られており、本発明の免疫化方法に含まれる。
【0035】
免疫原は、抗原またはそれらのフラグメントをコードする核酸配列を有するプラスミドであり得る。本発明の他の態様において、本発明のモノクローナル抗体は、動物の免疫化から得られる抗体分子またはそれらのフラグメントのライブラリーをスクリーニングすることにより得ることができる。本発明のモノクローナル抗体はまた、抗体または抗体をコードする核酸のライブラリーから得ることができる。
【0036】
本明細書において使用される「抗原」なる用語は、抗体生産を刺激することができるあらゆる物質であることが理解される。また、「免疫原」なる用語は、免疫応答を誘導するために使用されるあらゆる物質を含むことが理解される。
【0037】
いくつかの態様において、本明細書においてモノクローナル抗体は、重鎖および/または軽鎖の一部が、特定の種由来の抗体由来の対応する配列または特定の抗体クラスまたはサブクラスに属する配列と同一であるか、または相同であるが、残りの鎖が、別の種由来の抗体における対応する配列または別の抗体クラスまたはサブクラスに属する配列と同一であるか、または相同である「キメラ」抗体、ならびに、所望の生物学的活性を示すこのような抗体のフラグメントを含み得る(例えば、米国特許第4,816,567号;およびMorrisonら Proc. Natl. Acad. Sci. USA 81:6851-6855 (1984)参照)。
【0038】
「一本鎖Fv」または「sFv」抗体フラグメントは、単一のポリペプチド鎖に存在する抗体のVHおよびVLドメインを含む。一般的に、Fvポリペプチドは、sFvが抗原結合のための所望の構造を形成することができるようにするVHおよびVLドメイン間にポリペプチドリンカーをさらに含む。sFvの概観ために、Pluckthun in The Pharmacology of Monoclonal Antibodies, vol. 113, Rosenburg and Moore eds. Springer-Verlag, New York, pp. 269-315 (1994)参照。
【0039】
「ダイアボディ」なる用語は、2つの抗原結合部位を有する小さい抗体フラグメントであって、該フラグメントが同じポリペプチド鎖において軽鎖可変ドメイン(V)に連結している重鎖可変ドメイン(V)(V−V)を含む抗体フラグメントを示す。同じ鎖上の2つのドメイン間で対形成することを可能にするように短いリンカーを使用することにより、ドメインは、別の鎖の相補的ドメインと対になり、2つの抗原結合部位を創造させられる。
【0040】
1つの局面において、本発明は、抗体を意図される治療標的の種に適応させるための方法を提供する。一般的に、これらの方法は、ドナー抗原結合情報をより弱い免疫原性の哺乳動物抗体受容体に移し、有用な治療処置を産生するための方法として定義される「哺乳動物化(mammalization)」を含む。さらに具体的には、本発明は、抗体のネコ化(felinization)、ウマ化(equinization)およびイヌ化(caninization)のための方法を提供する。
【0041】
「イヌ化」は、ドナー抗体由来の非イヌ抗原結合情報をより弱い免疫原性のイヌ抗体アクセプターに移し、イヌにおける治療として有用な処置を産生する方法として定義される。
【0042】
「ネコ化」は、ドナー抗体由来の非ネコ抗原結合情報をより弱い免疫原性のネコ抗体アクセプターに移し、ネコにおける治療として有用な処置を産生する方法として定義される。
【0043】
「ウマ化」は、ドナー抗体由来の非ウマ抗原結合情報をより弱い免疫原性のウマ抗体アクセプターに移し、ウマにおける治療として有用な処置を産生する方法として定義される。
【0044】
本明細書において提供される非イヌ抗体のイヌ化形態は、非イヌ抗体由来の最小配列を含むキメラ抗体である。ほとんど、イヌ化抗体は、レシピエントの超可変領域残基が、非イヌ種(「ドナー」抗体)、例えば、マウス、ラット、ウサギ、ネコ、イヌ、ヤギ、ニワトリ、ウシ、ウマ、ラマ、ラクダ、ヒトコブラクダ、サメ、非ヒト霊長類、ヒト、ヒト化、組換え配列、または所望の特性を有する操作された配列由来の超可変領域残基により置き換えられている、イヌ抗体配列(「受容体」または「レシピエント」抗体)である。場合によっては、イヌ抗体のフレームワーク領域(FR)残基は、対応する非イヌFR残基により置き換えられる。さらに、イヌ化抗体は、レシピエント抗体またはドナー抗体において見られない残基を含み得る。これらの修飾は、抗体能力をさらに向上させるように作製される。イヌ化抗体はまた、イヌ抗体の免疫グロブリン定常領域(Fc)の少なくとも一部を含み得る。
【0045】
本明細書において使用される「同一性」は、2つのポリペプチド、分子、または2つの核酸間で一致している配列を示す。2つの比較配列の両方の位置が同じ塩基またはアミノ酸モノマーサブユニットにより占めるとき(例えば、2つのDNA分子のそれぞれにおける位置がアデニンにより占めるか、または2つのポリペプチドのそれぞれにおける位置がリジンにより占めるとき)、それぞれの分子はその位置で同一である。2つの配列間の「同一性パーセント」は、2つの配列により共有される一致している位置の数を比較される位置の数で割り、100を掛ける関数である。このようなアラインメントは、例えば、全米バイオテクノロジー情報センター NCBIからのプログラム Basic Local Alignment Search Tool(BLAST)を使用して提供することができる。
【0046】
1つの好ましい態様において、組換えポリペプチド、またはそれらのフラグメント、誘導体もしくは修飾体は、具体的には、患者に投与される。別の態様において、本発明の組換えポリペプチド、またはそれらのフラグメント、誘導体もしくは修飾体は、疾患状態または該疾患と関連するか、もしくは該疾患が介在する症状を処置、予防、回復またはあるいは低減する目的のために、哺乳動物体に細胞および/または組織の移植の前に、インビトロまたはエキソビボ条件下で細胞および/または組織に導入される。
【0047】
「フラグメント」および「領域」なる用語は、参照核酸分子またはポリペプチドの全長の少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、またはそれ以上を含むポリペプチドまたは核酸分子の部分を示す。
【0048】
「ポリヌクレオチド」、「核酸」および「核酸分子」なる用語は、本明細書において互換的に使用され、あらゆる長さのヌクレオチドのポリマー形態を示す。ポリヌクレオチドは、デオキシリボヌクレオチド、リボヌクレオチドおよび/またはそれらのアナログを含むことができる。ポリヌクレオチドは、任意の三次元構造を含むことができ、任意の既知または未知の機能を果たすことができる。ポリヌクレオチドなる用語は、一本鎖、二本鎖および三重らせん分子を含み、合成、天然または非天然であってよく、参照核酸と同様の結合特性を有するヌクレオチドアナログまたは修飾された骨格残基もしくは連結を含む核酸を含む。
【0049】
「オリゴヌクレオチド」は、一般的に、5から約100ヌクレオチドの一本鎖または二本鎖DNAであるポリヌクレオチドを示す。本明細書の目的のために、オリゴヌクレオチドのサイズの下限は2であり、オリゴヌクレオチドの長さの上限はない。オリゴヌクレオチドは、「オリゴマー」または「オリゴ」としても知られており、天然ポリヌクレオチドからの単離、酵素合成および化学合成を含む当分野で知られている任意の方法により製造することができる。
【0050】
「ポリペプチド」、「ペプチド」および「タンパク質」なる用語は、本明細書において互換的に使用され、あらゆる長さのアミノ酸残基のポリマーを示す。ポリペプチドは、任意の三次元構造を有することができ、任意の既知または未知の機能を果たすことができる。該用語は、1つ以上のアミノ酸残基が対応する天然アミノ酸の人工的化学模擬物であるアミノ酸ポリマー、ならびに天然アミノ酸ポリマーおよび非天然アミノ酸ポリマーに適用する。
【0051】
「アミノ酸」なる用語は、天然および合成アミノ酸、ならびに天然アミノ酸と同様の様式において機能するアミノ酸アナログおよびアミノ酸模擬物を示す。天然アミノ酸は、遺伝子コードによってコードされるもの、ならびにアミノ酸が後に、例えば、ヒドロキシプロリン、γ−カルボキシグルタミン酸およびO−ホスホセリンで修飾されたものである。アミノ酸模擬物は、アミノ酸の一般的な化学構造と異なる構造を有するが、天然アミノ酸と同様の様式において機能する化合物を示す。
【0052】
アミノ酸は、本明細書において、一般的に知られている3文字記号またはIUPAC−IUB Biochemical Nomenclature Commissionにより推奨されている1文字記号のいずれかにより示され得る。ヌクレオチドは、同様に、一般的に受け入れられている1文字記号により示され得る。
【0053】
「保存的に修飾された変異体」または「保存変異体」または「変異体」なる用語は、アミノ酸および核酸配列の両方に適用される。特定の核酸配列に対して、保存的に修飾された変異体は、同一または実質的に同一のアミノ酸配列をコードする核酸のもの;または、アミノ酸配列をコードしない核酸に対して、実質的に同一である核酸を示す。本明細書において使用される「実質的に同一の」は、2つのアミノ酸またはポリヌクレオチド配列が、わずか10%のアミノ酸またはヌクレオチド位置、一般的にわずか5%、しばしばわずか2%、および非常に頻繁にわずか1%のアミノ酸またはヌクレオチド位置で異なることを意味する。
【0054】
遺伝子コードの縮重のため、多くの機能的に同一の核酸は、いずれかの所定のタンパク質をコードする。例えば、コドンGCA、GCC、GCGおよびGCUは、全てアミノ酸アラニンをコードする。したがって、アラニンがコドンにより特定されている全ての位置で、コドンは、コードされるポリペプチドを変化することなく、代替アラニンコドンのいずれかに変化させることができる。このような核酸変異は、保存的に修飾された変異体の1つの型である「サイレント変異」である。本明細書に記載されているポリペプチドをコードする核酸配列はまた、核酸の全ての可能なサイレント変異を含む。当業者は、核酸におけるそれぞれのアミノ酸コドン(通常メチオニンに対する唯一のコドンであるAUGおよび通常トリプトファンに対する唯一のコドンであるTGGを除く)が、1つ以上の位置で同じアミノ酸に対するコドンに変化され得ることを認識している。したがって、ポリペプチドをコードする核酸のそれぞれのサイレント変異は、発現産物に対してそれぞれ記載されている配列に含まれる。
【0055】
核酸に適用される「相補性」は、塩基対合の従来のワトソンクリックまたは他の非従来の型のいずれかによる別のポリヌクレオチド配列との水素結合を形成する核酸の能力を示す。本発明の核酸分子への言及において、標的または相補的配列と核酸分子に関する結合自由エネルギーは、核酸の関連機能が、例えば、酵素的核酸開裂、RNA干渉、アンチセンスまたは三重らせん阻害を続行することを可能にするために十分である。核酸分子に対する結合自由エネルギーの決定は、当分野でよく知られている。「相補性パーセント」は、別の核酸分子と水素結合(例えば、ワトソンクリック塩基対合)を形成することができる核酸分子における隣接する残基のパーセントを示す。「完全に相補的」または「100%相補性」は、核酸分子の隣接ヌクレオチドの全てが、第2の核酸分子における同じ数の隣接する残基と水素結合していることを意味する。本明細書において使用される「実質的な相補性」および「実質的に相補的」は、2つの核酸が、約15以上のヌクレオチド、およびさらにしばしば約19以上のヌクレオチドの領域にわたって、少なくとも90%相補的、一般的に少なくとも95%相補的、しばしば少なくとも98%相補的、および非常に頻繁に少なくとも99%相補的であることを示す。
【0056】
「相同」は、2つのヌクレオチド配列が、同じ遺伝子またはその遺伝子産物を示し、一般的に2つ以上の核酸分子のヌクレオチド配列が、部分的に、実質的にまたは完全に同一であることを意味する。同じ生物体由来のとき、同種ポリヌクレオチドは、ポリヌクレオチド配列間の個々の違い(例えば、多型変異体、対立遺伝子など)があり得るが、同じ染色体位置を有する同じ遺伝子の代表である。1つの態様において、ホモログは、例えば、転座の結果として、ゲノムにおいて非天然位置において見ることができる。
【0057】
「異種」なる用語は、通常、天然において互いに同じ関係において見られないあらゆる2つ以上の核酸またはポリペプチド配列を示す。例えば、異種核酸は、一般的に、2つ以上の配列を有して、例えば、新規機能性核酸を作製するように配置された非関連遺伝子、例えば、ある供給源由来のプロモーターおよび別の供給源由来のコード領域から組換え的に生産される。同様に、異種ポリペプチドは、しばしば、天然において互いに同じ関係において見られない2つ以上の部分配列(例えば、融合タンパク質)を示す。
【0058】
「ホモログ」なる用語は、参照アミノ酸配列(例えば、本明細書に記載されているアミノ酸配列のいずれか1つ)または核酸配列(例えば、本明細書に記載されている核酸配列のいずれか1つ)と少なくとも50%同一性を示すポリペプチドまたは核酸分子を示す。好ましくは、このような配列は、参照配列に対するアミノ酸レベルまたは核酸で少なくとも55%、57%、60%、65%、68%、70%、さらに好ましくは80%または85%、およびより好ましくは90%、95%、98%または99%同一である。
【0059】
「同様の」配列は、アラインされたとき、同一および同様のアミノ酸残基を共有するものであって、該同様の残基とは、アラインされた参照配列において対応するアミノ酸残基に対する保存的置換である。この点において、配列における保存的残基は、対応する参照残基と物理的または機能的に同様である、例えば、同様のサイズ、形状、電荷、化学特性、例えば、共有または水素結合を形成する能力などを有する残基である。2つの配列間の「類似性パーセント」は、2つの配列により共有される一致している残基または保存的残基を含む位置の数を比較される位置の数で割り、100を掛ける関数である。
【0060】
本明細書において使用される「アミノ酸コンセンサス配列」は、少なくとも2つ、および好ましくはそれ以上のアラインされたアミノ酸配列のマトリックスを使用して、それぞれの位置で非常に頻繁なアミノ酸残基を決定することができるように、アラインメントにおけるギャップを考慮して産生することができる仮説的アミノ酸配列を示す。コンセンサス配列は、それぞれの位置で非常に頻繁に示されているアミノ酸を含む配列である。万一、2つまたはそれ以上のアミノ酸が単一の位置で均一に示されているという場合には、コンセンサス配列は、これらのアミノ酸の両方または全てを含む。いくつかの場合において、アミノ酸コンセンサス配列は、天然において見られる配列または部分配列に対応する。他の場合において、アミノ酸コンセンサス配列は、天然において見られず、理論的配列のみを示す。
【0061】
タンパク質のアミノ酸配列は、種々のレベルで分析することができる。例えば、保存または可変性は、単一の残基レベル、複数の残基レベル、ギャップなどを有する複数の残基で示すことができる。残基は、同一の残基の保存を示すことができ、またはクラスレベルで保存され得る。以下の8つのグループはそれぞれ、互いに対して保存的置換であるアミノ酸を含む:1)アラニン(A)、グリシン(G);2)アスパラギン酸(D)、グルタミン酸(E);3)アスパラギン(N)、グルタミン(Q);4)アルギニン(R)、リジン(K);5)イソロイシン(I)、ロイシン(L)、メチオニン(M)、バリン(V);6)フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)、トリプトファン(W);7)セリン(S)、スレオニン(T);および8)システイン(C)、メチオニン(M)(例えば、Creighton, Proteins (1984)参照)。他のクラスは当業者に知られており、構造決定または代替性を評価するための他のデータを使用して定義され得る。
【0062】
アミノ酸配列に関して、当業者は、コードされた配列における単一のアミノ酸または少数のアミノ酸を変化、挿入または欠失する核酸、ペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質配列に対する個々の置換、欠失または挿入が、該変化が化学的に同様のアミノ酸でのアミノ酸の置換をもたらす「保存的に修飾された変異体」であることを認識している。機能的に同様のアミノ酸を記載している保存的置換表は、当分野でよく知られている。このような保存的に修飾された変異体は、加えて、本発明の機能的に同等の多型変異体、ホモログおよび対立遺伝子を除かない。
【0063】
本明細書において使用される、1つのアミノ酸配列(例えば、第1のVHまたはVL配列)が1つ以上のさらなるアミノ酸配列(例えば、データベースにおける1つ以上のVHまたはVL配列)とアラインされるとき、1つの配列(例えば、第1のVHまたはVL配列)におけるアミノ酸位置は、1つ以上のさらなるアミノ酸配列における「対応する位置」と比較され得る。本明細書において使用される「対応する位置」は、配列が最適にアラインされるとき、すなわち、配列が最も高い同一性パーセントまたは類似性パーセントをなし遂げるようにアラインされるとき、比較される配列における同等位置を示す。
【0064】
本明細書において使用される「抗体データベース」なる用語は、2つ以上の抗体アミノ酸配列(「多数」または「複数」の配列)の回収物を示し、一般的に10、100またはさらに1000の抗体アミノ酸配列の回収物を示す。抗体データベースは、例えば、抗体VH領域、抗体VL領域またはそれらの両方の回収物のアミノ酸配列を保存することができ、またはフレームワーク配列の回収を保存することができる。1つの態様において、抗体データベースは、生殖細胞系列抗体配列を含むか、または該配列からなるデータベースである。別の態様において、抗体データベースは、成熟抗体配列(例えば、成熟抗体配列のKabatデータベース)を含むか、または該配列からなるデータベースである。別の態様において、抗体データベースは、1つ以上の所有物に対して選択された配列を含むか、または該配列からなる。別の態様において、抗体データベースは、コンセンサス配列を含むか、または該配列からなる抗体データベースである。別の態様において、抗体データベースは、同様の配列を含むか、または該配列からなる抗体データベースである。さらに別の態様において、抗体データベースは、主要な抗体クラン由来の配列を含むか、または該配列からなる(Dasら Immunogenetics, 60:47-55 (2008); Dasら Proc. Natl. Ac. Sci. USA. 105:16647-16652 (2008))。
【0065】
本明細書において使用される「性質」または「特性」なる用語は、例えば、ポリペプチドの製造特性または治療効果を改善するために、当業者に望ましい、および/または有利であるポリペプチドの性質である。1つの態様において、機能特性は、改善された安定性である。別の態様において、機能特性は改善された溶解度である。さらに別の態様において、機能特性は非凝集である。さらに別の態様において、機能特性は発現における改良である。1つの態様において、機能特性は抗原結合親和性における改良である。
【0066】
発現「コントロール配列」は、特定の宿主生物において作動可能に連結しているコード配列の発現のために必要であるDNA配列を示す。原核生物のために適当であるコントロール配列は、例えば、プロモーター、所望によりオペレーター配列、およびリボソーム結合部位を含む。真核細胞は、プロモーター、ポリアデニル化シグナルおよびエンハンサーを利用することが知られている。
【0067】
核酸は、別の核酸配列と機能的な関係に配置されているとき、「作動可能に連結している」。例えば、プレ配列または分泌リーダーに対するDNAは、ポリペプチドの分泌に関与するプレタンパク質として発現されるとき、ポリペプチドに対するDNAに作動可能に連結されており;プロモーターまたはエンハンサーは、配列の転写に影響するとき、コード配列に作動可能に連結されており;または、リボソーム結合部位は、翻訳を容易にするように配置されるとき、コード配列に作動可能に連結されている。一般的に、「作動可能に連結している」は、連結しているDNA配列が隣接しており、分泌リーダーの場合、リーディング相において隣接していることを意味する。しかしながら、エンハンサーは、隣接していなくてもよい。連結は、便利な制限酵素認識部位でのライゲーションにより成し遂げられる。このような部位が存在しないとき、合成オリゴヌクレオチドアダプターまたはリンカーが慣用の習慣にしたがって使用される。
【0068】
本明細書において使用される「細胞」、「細胞系」および「細胞培養」なる表現は互換的に使用され、全てのこのような意味は子孫を含む。したがって、「形質転換体」および「トランスフェクタント」、「形質転換細胞」および「トランスフェクト細胞」なる用語は、一次対象細胞およびそれ由来の培養物を含む。
【0069】
本明細書において使用される免疫原性は、動物に導入されるとき、免疫応答、例えば、体液性または抗体応答を誘導する抗原(天然抗原、それらのフラグメント、変異体および誘導体、ならびに組換えおよび合成抗原を含む)を示す。
【0070】
本明細書において使用される「免疫原性なし」または「非免疫原性」なる用語は、抗原、例えば、抗体、または他の分子が、治療効果をなし遂げるために十分な時間、処置された患者の多くにおいて抗体の連続投与の有効性を減少させるような十分な大きさの抗体応答を引き起こさないことを意味する。
【0071】
「サイトカイン」なる用語は、細胞表面上の細胞外受容体に結合し、それにより細胞機能を調節する全ての哺乳動物、好ましくはペットのサイトカイン、例えば、限定はしないが、IL−1、IL−4、IL−6、IL−18、TNF−AおよびIFN−ガンマを示す。サイトカインは、免疫系の細胞により放出され、免疫応答の産生において細胞内モジュレーターとして作用する。この定義において、ケモカインもまた含まれる。「ケモカイン」なる用語は、組織への白血球の動員および浸潤を介在する哺乳動物体内で発現される全ての走化性サイトカインを示す。「ケモカイン」なる用語は、限定はしないが、システイン残基の分布に基づいて分類された、全ての哺乳動物メンバーの走化性サイトカインのC、CC、CXCおよびCXXXCファミリーを含む。「ケモカイン受容体」なる用語は、1つ以上のケモカインと相互作用するような全ての膜貫通タンパク質を示す。
【0072】
「サイトカイン受容体」なる用語は、1つ以上のサイトカインに結合する全ての哺乳動物のサイトカイン受容体を示し、限定はしないが、IL−1、IL−4、IL−6、IL−18、TNF−アルファの受容体を含む。「ケモカイン受容体」なる用語は、限定はしないが、CR、CCR、CXCRおよびCXXXCRに分類される全てのケモカイン受容体を含む。
【0073】
本明細書において使用される「治療」なる用語は、「疾患」または「障害」または「状態」に対する処置の全範囲を含む。本発明の「治療」剤は、危険性(遺伝薬理学的)があると同定することができる個体を標的化するように設計された手法を組み込む処置を含み、予防的または防止的に作用し得る;または、自然に改善または治癒するように作用し得る;または、疾患または障害の進行の速度または程度を遅延するように作用し得る;または、必要とされる時間、あらゆる不快または苦痛の発生または程度、または疾患、障害または身体外傷からの回復と関連する身体的制約を最小限にするように作用し得る;または、他の治療および処置に対するアジュバントとして使用され得る。
【0074】
本明細書において使用される「処置」は、動物に対する治療薬のあらゆる投与または適用、例えばヒトにおける疾患、疾患を阻害する、すなわち、発症を阻止する;疾患を軽減する、すなわち、退行を引き起こす;および疾患を排除する、すなわち、疾患細胞の除去または非疾患状態の回復を引き起こすことを含む。処置は、治療処置および予防または防止処置の両方を示す。処置を必要とするものは、障害をすでに有するもの、ならびに障害を予防すべきであるものを含む。
【0075】
本明細書における抗体、ポリペプチドまたはポリヌクレオチドの「医薬組成物」または「薬学的に許容される組成物」は、通常、当分野で慣用であり、治療、診断または予防目的のために対象への投与に対して適当である薬学的に許容される担体または賦形剤を含む組成物を示す。例えば、経口投与のための組成物は、溶液、懸濁液、錠剤、丸剤、カプセル、持続放出製剤、含嗽液または粉末を形成することができる。
【0076】
「併用療法」なる用語は、指示された治療効果をなし遂げるような少なくとも2つの別個の治療の提供を含む治療レジメンを示す。例えば、併用療法は、2つ以上の化学的に別個の活性成分、例えば、化学療法剤および抗体の投与を含み得る。あるいは、併用療法は、抗体および/または1つ以上の化学療法剤の投与を、単独または別の処置、例えば、放射線療法および/または外科手術の送達と一緒に含み得る。2つ以上の化学的に別個の活性成分の投与の文脈において、活性成分は、同じ組成物の一部として、または異なる組成物として投与され得ることが理解される。別々の組成物として投与されるとき、異なる活性成分を含む組成物は、同時か、または異なっている時間で、同じか、または異なっている経路により、同じか、または異なっている投与レジメンを使用して投与され得、全て特定の事情上に応じて、担当の獣医または介護人により決定され得る。
【0077】
「単剤療法」なる用語は、単回投与または時間をかけて複数回投与として投与されようとなかろうと、1つの治療的に有効な化合物の送達に基づく処置レジメンを示す。
【0078】
「免疫状態」は、免疫系またはその一部、例えば、免疫系の細胞が、異常であるか、または疾患状態を引き起こす、関節炎、乾癬、炎症性腸疾患、多発性硬化症、心筋梗塞、卒中、溶血性貧血、アトピー性皮膚炎、皮膚障害などを含む広範な疾患に対する一般名である。免疫状態は、免疫細胞、組織または臓器における原発性欠損、ならびに自己抗原の免疫認識を防止するための正常メカニズムが欠損しており、非免疫細胞、組織または臓器型に関する疾患または障害をもたらす「自己免疫性状態」を含む。癌、例えば、白血病およびリンパ腫は原発性免疫障害であるが、多発性硬化症および狼瘡は自己免疫性起源であると考えられている。
【0079】
多数の治療剤は、ヒトに対する種々の型の免疫状態の処置のために、過去数十年にわたって開発されており、これらはまた、ペットにおける免疫状態の処置のために使用されている。最も一般的に使用される抗免疫剤の型は、免疫抑制剤(例えば、シクロスポリン、チオプリン、プレドニゾン)、および鎮痛剤および解熱剤(例えば、アスピリン、イブプロフェン、ナプロキセン、セレコキシブ、ニメスリド、リコフェロン、オメガ−3−脂肪酸)を含み、これらそれぞれは、本発明の抗体と同時に、連続して、もしくは共通の投与レジメンにおいて投与され得る。(例えば、Withrow & MacEwen's, Small Animal Clinical Oncology, Saunders Elsevier, 4th ed. (2007)参照)。
【0080】
本明細書において使用される「癌」は、あらゆる異常な細胞または組織増殖、例えば、悪性または非悪性であり得る腫瘍を示す。癌は、周囲組織に侵入していてもよく、または侵入していなくてもよく、したがって、新規身体部位に転移していてもよく、または転移していなくてもよい、細胞の制御されない増殖により特徴付けられる。癌は、上皮性細胞の癌である癌腫(例えば、扁平上皮癌、腺癌、黒色腫および肝臓癌)を含む。癌はまた、間葉性起源の腫瘍である肉腫(例えば、骨肉腫、白血病およびリンパ腫)を含む。癌は、1つ以上の腫瘍性細胞型を含み得る。癌は、非制御な増殖、分化の欠如、および局所組織に侵入し、転移する能力により特徴付けられる広範な細胞性悪性腫瘍に対する一般名である。これらの新生悪性腫瘍は、種々の程度の罹患率で、全ての身体の組織および臓器に影響する。多数の治療剤は、ヒトに対する種々の型の癌の処置のために、過去数十年にわたって開発されており、ペットにおける癌の処置のために不認可でまたは再製剤化されて使用されている。最も一般的に使用される抗癌剤の型は、DNA−アルキル化剤(例えば、シクロホスファミド、イホスファミド)、抗代謝産物(例えば、メトトレキサート、葉酸アンタゴニスト、および5−フルオロウラシル、ピリミジンアンタゴニスト)、微小管分解剤(例えば、ビンクリスチン、ビンブラスチン、パクリタキセル)、DNA挿入剤(例えば、ドキソルビシン、ダウノマイシン、シスプラチン)、および免疫抑制剤(例えば、プレドニゾン)を含み、これらそれぞれは、本発明の抗体と同時に、連続して、もしくは共通の投与レジメンにおいて投与され得る。
【0081】
本明細書に記載されている技術に付すことができる抗体(mAb)は、種々の供給源由来のモノクローナルおよびポリクローナルmAb、および抗体フラグメント、例えば、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fd、scFv、ダイアボディ、抗体軽鎖、抗体重鎖および/または抗体フラグメントを含む。抗体は、配列ドナー種から得られる。さらに特に、ドナー種抗体の軽鎖、重鎖または両方の可変部分の核酸またはアミノ酸配列は、所望の抗原に対する特異性を有する。ドナー種は、抗体または抗体ライブラリーを産生するために使用された任意の種である、例えば、マウス、ラット、ウサギ、ネコ、イヌ、ヤギ、ニワトリ、ウシ、ウマ、ラマ、ラクダ、ヒトコブラクダ、サメ、非ヒト霊長類、ヒト、ヒト化、組換え配列、操作された配列など。モノクローナル抗体を産生およびクローニングする技術は、当業者によく知られている。
【0082】
ドナー種またはライブラリーから得られた抗体をシーケンシング後、可変領域(VHおよびVL)は、CDRおよびフレームワークの任意の公開された定義(例えば、Kabat、Chothia、AbM、コンタクト(contact)定義およびそれらの任意の組合せ、ならびに当業者に知られている任意の他のもの)を使用して、別々の領域、例えば、リーダー配列、フレームワーク(FR)およびCDRに分離される。特定の態様において、FRおよびCDRは、Kabat定義を基準にして同定される。
【0083】
本明細書において表されているときはいつでも、数的範囲、例えば、「1から100」は、所定の範囲におけるそれぞれの整数を示す;例えば、「1から100ヌクレオチド」は、核酸が1個のヌクレオチドのみ、2個のヌクレオチド、3個のヌクレオチドなど、最大100個のヌクレオチドを含むことができることを意味する。
【0084】
重鎖の定常ドメインについて、標的種由来の任意のサブクラスの定常ドメインまたはそのフラグメントが、重鎖ヘテロキメラ可変ドメインに融合され得る。
【0085】
本発明の組換え抗体の操作は、組換え、エラープローン(error-prone)PCR、シャフリング(shuffling)、オリゴヌクレオチド指向性変異誘発、アセンブリ(assembly)PCR、セクシャル(sexual)PCR変異誘発、インビボ変異誘発、部位特異的変異誘発、遺伝子再集合、合成ライゲーション再集合またはそれらの組合せを含む方法により導入され得る、抗体をコードする核酸への修飾、付加または欠失の導入により創造することができる。
【0086】
さらに、本発明の範囲内で構想されるものは、炎症の発症に介在するか、または関連する全てのペットの疾患および/または状態、ならびに自己免疫に介在するか、または関連するペットの疾患および/または状態の処置のための、組換え核酸もしくはタンパク質またはそれらのフラグメントもしくは誘導体の使用である。このような疾患および/または状態は、炎症性疾患として本明細書において示され、限定はしないが、炎症、自己免疫疾患および免疫関連疾患を含む。
【0087】
さらなる局面において、本発明は、本発明の抗体が治療的または予防的使用のために提供される医薬組成物を特徴とする。本発明は、特定の抗原、例えば、疾患と関連するものを有するイヌ対象を処置するための方法を特徴とする。該方法は、治療有効量の特定の抗原に対して特異的な組換え抗体を、本明細書に記載されている組換え抗体と共に投与することを含む。
【0088】
治療効果を生産するために有用な抗体の量は、当業者によく知られている標準技術により決定することができる。抗体は、一般的に、薬学的に許容されるバッファー内で標準技術により提供され、所望の任意の経路により投与され得る。本発明の抗体または抗原結合部分の投与経路は、経口的、非経口的、吸入的または局所的であり得る。本明細書において使用される非経口なる用語は、静脈内、筋肉内、皮下的、経直腸的、膣内または腹腔内投与を含む。
【0089】
上記手段または同等の技術により生産される抗体は、機能性生物学的アッセイにおける特性化のためにアフィニティーおよびサイズ排除クロマトグラフィーの組合せにより精製することができる。これらのアッセイは、特異性および結合親和性ならびに発現されるアイソタイプと関連するエフェクター機能、例えば、ADCC、アポトーシス、または補体結合の決定を含む。このような抗体は、多くの疾患、例えば、B細胞リンパ腫、T細胞リンパ腫、自己免疫疾患、炎症性疾患、感染症、および移植に対する受動的または能動的治療剤として使用され得る。
【0090】
「抗体依存性細胞介在細胞毒性」および「ADCC」は、非特異的細胞毒性細胞、例えば、ナチュラルキラー(NK)細胞、好中球およびマクロファージが標的細胞上に結合した抗体を認識し、次に標的細胞の溶解を引き起こす細胞介在反応を示す(例えば、Janewayら Immuno Biology: Elsevier Science Ltd., 4th ed., (1999)参照)。
【0091】
「補体依存性細胞毒性」および「CDC」は、補体の存在下での標的の溶解を示す。補体活性化経路は、同種抗原と複合体化した分子(例えば抗体)への補体系の第1の成分(C1q)の結合により開始する。
【0092】
本明細書において使用される「増強した」または「減少した」ADCCまたはCDC活性は、一般的に、参照重鎖よりもより高い活性またはより低い活性を与える重鎖を示す。当分野で理解されるとおり、活性の量は、当分野で知られている任意のアッセイまたは技術にしたがう手段で、定量的または定性的に、並行してまたは別々に決定され得る。
【0093】
上記局面の1つの態様において、抗原は、腫瘍抗原、免疫障害に関与する抗原、自己免疫性応答に関与する抗原、宿主細胞上に発現されるか、血液循環において利用できるか、もしくは細胞により分泌される受容体であり、組換え抗体は、望ましくない細胞を枯渇させるか、または受容体機能を阻害もしくは刺激するか、または活性な可溶性生成物を中和することができる。
【0094】
本発明の抗体(またはそれらのフラグメント)はまた、ペットにおける腫瘍を処置するために有用であり得る。さらに具体的には、それらは、腫瘍サイズを減少する、腫瘍増殖を阻害する、および/または腫瘍含有動物の生存時間を延長するために有用であるべきである。したがって、本発明はまた、有効用量を投与することによるイヌまたは他の動物における腫瘍を処置する方法に関する。有効用量は、1日に1キログラム体重あたり約0.05から100ミリグラムの範囲であることが予期される。
【0095】
特定の態様において、本発明はCD52に対する抗体を提供する。一般的にキャンパス(Campath)−1抗原と呼ばれる小細胞表面糖タンパク質CD52は、限定はしないが、リンパ球、単球、胸腺細胞、上皮性細胞、マクロファージ、末梢血細胞、樹状細胞、好酸球、肥満細胞およびいくつかの腫瘍細胞系、例えば、骨形成腫瘍細胞を含む種々の細胞上に生じる広範に分布した膜結合タンパク質である。いくつかの場合において、CD52またはそのフラグメントは、可溶性タンパク質であり得る。
【0096】
抗原CD52を発現する種々の細胞は、疾患、例えば、癌および免疫状態と関連する。いくつかの試験によって、ヒトCD52発現細胞の中和は、単独で、または他の抗癌または化学療法剤または処置と組み合わせて、腫瘍細胞または新生組織形成を改良することができることが証明または記載されている。
【0097】
CD52を含む多くの膜結合タンパク質を含む骨髄細胞系列免疫細胞は、炎症をもたらす種々のサイトカインおよび酵素を分泌する。いくつかのこれらの物質は粒状のように見える分泌小胞となるため、分泌のプロセスは、ときどき脱顆粒と呼ばれる。肥満細胞による迅速な脱顆粒は、喘息、アナフィラキシーおよび他のアレルギー性応答の病理に寄与し、肥満細胞による緩慢な脱顆粒は、関節炎および慢性炎症の他の型に寄与する。肥満細胞による炎症性サイトカインおよび酵素の放出は、組織損傷、さらなる肥満細胞の誘引を引き起こし、さらなる組織損傷を引き起こし得る。
【0098】
マクロファージは、CD52を含む多くの膜結合タンパク質を含む単球の分裂により生産される組織内で見られる白血球である。これらの細胞は、細胞残屑および病原体の食作用の役割ならびにリンパ球および他の免疫細胞を刺激する役割を有する先天免疫および細胞性免疫に関与する。マクロファージは、免疫系の多数の疾患に関与する。マクロファージは、アテローム性動脈硬化症の進行性のプラーク病変の創造に関与する優勢な細胞である。マクロファージは、癌性細胞の増殖および炎症を促進すると考えられている。
【0099】
動物疾患に関与する細胞の表面上のタンパク質を標的化する新規および特異的処置は、このような疾患を、細胞表面標的を特異的に認識するポリクローナル抗体またはそのフラグメント、モノクローナル抗体またはそのフラグメント、ポリペプチドまたはそのフラグメント、および他の薬剤で診断および処置するために使用され得る。特に、CD52のような抗原を有する細胞の疾患促進活性を調節する(減少させる、および/または増強する)ことができる細胞の表面上の標的を特異的に認識する、本明細書に記載されている新規抗体および他の薬剤。本発明は、膜上の抗原または血液循環に放出される抗原のいずれかを発現する細胞の疾患関連活性を阻害することができる抗原を標的化する抗体およびポリペプチドを提供する。別の局面において、本発明は、診断アッセイにおける使用のための、および抗原としての使用のための、またはCD52のような抗原に対する抗体を選択するための新規化合物を提供する。
【0100】
したがって、本発明は、(i)ドナー種由来の抗体において見られる配列と完全に、もしくは実質的に同一の超可変領域配列;(ii)ドナー種と異なる標的種由来の抗体において見られる配列と完全に、もしくは実質的に同一の定常領域配列;および(iii)標的種由来の抗体において見られる配列に対応する少なくとも3つの隣接する非CDR残基およびドナー種由来の抗体において見られる配列に対応する少なくとも3つの隣接する非CDR残基を含む重鎖および/または軽鎖可変フレームワーク配列、を含む抗体および/またはそれらのフラグメントを提供する。
【0101】
1つの態様において、本発明の抗体は、特定の疾患または障害、例えば、急性炎症、リウマチ性関節炎、移植拒絶反応、喘息、アレルギー性炎症、再狭窄、動脈再狭窄、炎症性腸疾患、ブドウ膜炎、多発性硬化症、乾癬、創傷治癒、エリテマトーデス、アレルギー性鼻炎、アトピー性皮膚炎、食物アレルギー、糖尿病、皮膚炎、血栓性血小板減少性紫斑病、脳炎、白血球接着不全症、リウマチ性発熱、乾癬性関節炎、骨関節症、眼の炎症性疾患、進行性全身性硬化症、原発性胆汁性肝硬変、CNS炎症性疾患、抗原抗体複合体介在疾患、自己免疫性溶血性貧血、虚血性心臓疾患、アテローム性動脈硬化症、透析後症候群、白血病、後天性免疫不全症候群、敗血症性ショック、脂質性組織球増殖症および癌と関連している抗原を標的とする。
【0102】
特に興味のあるものは、抗原CD52である。当業者は、抗原が好ましくは標的種(例えば、イヌ、ネコまたはウマ)から単離されるか、または標的種由来であるが、適当な交差反応性抗体が、いくつかの場合において、異種由来の抗原を使用することにより産生することができることを理解している。
1.1.相補性決定領域およびフレームワーク領域がKabatにしたがって定義されている、前記の態様のいずれかに記載の抗体。
1.2.抗体の定常領域が、ADCC、抗体依存性細胞食作用(ADCP)および補体依存性細胞毒性(CDC)から選択される細胞毒性エフェクター機能を増強させるように修飾されている、前記の態様のいずれかに記載の抗体。
【0103】
さらなる態様において、本発明は、以下のものを提供する。
2.CD52に対する抗体である抗体2。
2.1.イヌまたはネコまたはウマCD52を認識する抗体2。
2.2.CD52の1つ以上の細胞外ループの配列を含むペプチドを含むか、または発現する免疫原性構築物に対する抗体由来であるか、または該抗体と実質的に同じ超可変ドメインを有する、抗体2。
2.3.CD52を発現する細胞のアポトーシスを誘導する、抗体2のいずれか。
2.4.CD52を発現する細胞の増殖を抑制する、抗体2のいずれか。
2.5.抗体依存性細胞介在細胞毒性(ADCC)によるCD52を発現する細胞の死を引き起こす、抗体2のいずれか。
2.6.補体依存性細胞毒性(CDC)によるCD52を発現する細胞の死を引き起こす、抗体2のいずれか。
2.7.ネコCD52を認識する、抗体2のいずれか。
2.8.イヌCD52を認識する、抗体2のいずれか。
2.9.配列番号:1の残基4−18、20−26、30−39、36−47および/または49−64の1つ以上の配列から選択される配列を含むペプチドを含むか、または発現する免疫原性構築物に対する抗体由来であるか、または該抗体と実質的に同じ超可変ドメインを有する、抗体2。
2.10.イヌCD52の細胞外ループ上のエピトープを特異的に認識する抗体2であって、該エピトープは、配列番号:1の残基4−18、20−26、30−39、36−47および/または49−64から選択されるCD52の領域を含むか、または該領域内で見られる、抗体2。
2.11.ウマCD52を認識する、抗体2のいずれか。
2.12.ドナー種抗体由来の超可変配列および標的種由来の定常領域配列を含む、抗体2のいずれか。
2.13.イヌ化されている、抗体2のいずれか。
2.14.ネコ化されている、抗体2のいずれか。
2.15.ウマ化されている、抗体2のいずれか。
2.16.抗体1のいずれかのヘテロキメラ抗体である、抗体2のいずれか。
2.17.モノクローナルであり、完全にイヌ抗体である、抗体2のいずれか。
2.18.モノクローナルであり、完全にネコ抗体である、抗体2のいずれか。
2.19.モノクローナルであり、完全にウマ抗体である、抗体2のいずれか。
【0104】
本発明は、さらに以下のものを提供する。
a.標的抗原を発現する異常細胞の存在により特徴付けられる疾患または状態に罹患している患者を処置する方法であって、治療有効量のこのような標的抗原に結合する抗体を投与することを含み、該抗体は抗体1または2から選択される、方法。
b.CD52を発現する異常細胞の存在により特徴付けられる疾患または状態に罹患している患者を処置する方法であって、治療有効量の抗体2から選択される抗体を投与することを含む、方法。
c.患者がイヌである、方法b)。
d.処置される状態が炎症性疾患である、方法c)。
e.疾患が、急性炎症、リウマチ性関節炎、移植拒絶反応、喘息、アレルギー性炎症、再狭窄、動脈再狭窄、炎症性腸疾患、ブドウ膜炎、多発性硬化症、乾癬、創傷治癒、エリテマトーデス、アレルギー性鼻炎、アトピー性皮膚炎、食物アレルギー、糖尿病、皮膚炎、血栓性血小板減少性紫斑病、脳炎、白血球接着不全症、リウマチ性発熱、乾癬性関節炎、骨関節症、眼の炎症性疾患、進行性全身性硬化症、原発性胆汁性肝硬変、CNS炎症性疾患、抗原抗体複合体介在疾患、自己免疫性溶血性貧血、虚血性心臓疾患、アテローム性動脈硬化症、透析後症候群、白血病、後天性免疫不全症候群、敗血症性ショック、脂質性組織球増殖症および癌からなる群から選択される、方法a)。
f.化学療法の投与をさらに含む、方法a、b、cまたはdまたはe。
g.化学療法が、シクロホスファミド、ドキソルビシン、ビンクリスチン、プレドニゾン、L−アスパラギナーゼ、シトキサンおよびアドリアマイシンから選択される1つ以上の薬剤の投与を含む、方法f。
h.化学療法が、例えば、癌細胞における抗体のADCC効果への干渉を増強または減少させるように、エフェクター細胞を救うか、または増強させる、方法fまたはg。
i.コルチコステロイド、例えば、プレドニゾンの投与をさらに含む、前記方法のいずれか。
j.放射線の投与をさらに含む、前記方法のいずれか。
k.CD20およびCD52に対する抗体の共投与を含む、前記方法のいずれか。
l.抗体が、放射線または化学療法での処置後の癌の再発を処置または阻害するための方法において投与される、前記方法のいずれか。
【0105】
本発明は、さらに、例えば、方法a−lのいずれかにおける使用のための、抗体1または2のいずれかを含む医薬組成物を提供する。
【0106】
本発明は、さらに、方法a−oのいずれかにおける使用のための医薬のとしての、または医薬の製造における抗体1または2のいずれかの使用を提供する。
【0107】
本発明は、さらに、抗体1または2のいずれかを安定に発現する細胞系、例えば、抗体1または2のいずれかを安定に発現するCHO細胞系またはPerC6を提供する。
【0108】
本発明は、さらに、抗体1または2のいずれかの少なくとも1つの重鎖および少なくとも1つの軽鎖を発現するベクターを提供する。
【0109】
本発明は、さらに、抗体1または2のいずれかの少なくとも1つの重鎖および少なくとも1つの軽鎖を発現するベクターで細胞系を形質転換することを含む抗体を製造する方法を提供する。
【0110】
別の態様において、本発明は、本発明の抗体で処置することができる疾患または状態を診断する方法であって、組織サンプルを得て、本発明の抗体の1つによる結合を決定することを含む方法、および、本発明の抗体、例えば、抗体1または2のいずれかを含む、このような方法を行うための診断キットを提供する。
【0111】
したがって、本発明は、以下の抗体、ならびにそれらの機能性フラグメントおよび保存変異体を提供する:
【表1】

【0112】
本発明の他の特徴および利点は、その好ましい態様の以下の記載および特許請求の範囲から明らかである。
【実施例】
【0113】
実施例1.CD52のクローニング
I.イヌCD52コード配列のクローニング。CD52をイヌ末梢血単核細胞(PBMC)から単離する。全RNAを、MasterPureTM RNA Purification Kit(Epicentre Biotechnology)を使用して、100万のイヌPBMCから抽出する。一本鎖cDNAを、製造業者の指示にしたがってSuperScript, First−Strand Synthesis, System for RT−PCR kit(Invitrogen)を使用して、2μgの全RNAから合成する。次に、コード領域またはそのフラグメントを、配列番号:3および配列番号:4のプライマーを使用して、PCRにより増幅する。サンプルを94℃で5分間変性、次に35サイクル(94℃30s、62℃20s、72℃45s)増幅する。PCR産物をpcDNA3(Invitrogen)にクローニングし、配列決定する。
イヌPBMCから単離されたイヌCD52のアミノ酸配列を、配列番号:1として報告する。
【0114】
II.ネコCD52コード配列のクローニング。ネコCD52遺伝子を、イヌCD52配列を増幅するために設計されたプライマーで上記のとおりクローニングする。
ネコPBMCから単離されたネコCD52のアミノ酸配列を、配列番号:2として報告する。
【0115】
実施例2.CD52での免疫化およびイヌCD52に対するマウスモノクローナル抗体の産生
CD52に対する抗体は、CD52アミノ酸配列を含むポリペプチドまたはそのフラグメントを使用して、および/またはCD52遺伝子またはそのフラグメントを発現する細胞を使用して、および/またはCD52アミノ酸配列を発現する細胞から単離されたポリペプチドまたはそのフラグメントを使用してもたらす。次に、抗体を選択し、ペットにおける使用のために操作する。
【0116】
イヌCD52に対するモノクローナル抗体を産生するために、CHO−DG44(チャイニーズハムスター卵巣細胞、ジヒドロ葉酸レダクターゼ欠失、ATCC CRL−9096)、HEK293(ヒト胚腎臓細胞、ATCC CRC−1573)およびNIH:3T3(ATCC CRL−1658)を、全長またはそのフラグメントとしてCD52をコードする発現ベクターでトランスフェクトする。簡潔には、エピトープタグを含んだ組換えイヌCD52を、界面活性剤CHAPSOを使用してトランスフェクトCD52発現細胞系から単離し、タンパク質を、エピトープタグを介して電磁ビーズ上に捕獲する。
【0117】
抗CD52モノクローナル抗体を、マウスの免疫化により産生し、イヌCD52に対して特異的な免疫グロブリンをもたらす。イヌCD52を発現する洗浄された細胞(100μL中1×10個の細胞)または100μLのCD52ビーズ(1×10個のビーズ/ml)を免疫原として使用する。マウスをRibiアジュバント中の抗原で腹腔内に3回免疫化し、次に、連日で2回ブーストする。免疫応答は、眼窩後出血によりモニタリングされる。血清を、CD52発現細胞のFACS染色によりスクリーニングする。
【0118】
脾臓を、抗CD52免疫グロブリンの十分な力価でマウスから回収する。マウス抗体ライブラリーをマウスの脾臓細胞から調製し、CD52に対する特異性を有する抗体の発現のために、次にファージがスクリーニングされるようにファージ上に提示させる。この組合せアプローチは、一般的に、米国出願第6,092,098号(この内容を出典明示により本明細書に包含させる)に記載されている。
【0119】
ファージディスプレイライブラリーを、電磁ビーズ上に捕獲されたイヌCD52でのパニングにより、CD52に対する親和性を有するライブラリーメンバーに対してスクリーニングする。CD52−ビーズにおけるファージディスプレイライブラリーの3回のパニングは、バックグラウンドと比較して、数倍の濃縮のCD52−バインダーをもたらす。興味ある可変領域フラグメントをFab発現ベクターに再クローニングし、FabをトランスフェクトCD52を発現する細胞に対する抗原結合に関して再試験する。
【0120】
有効性を示すイヌCD52に対する高親和性を有する抗CD52抗体を、当分野で利用できる方法論を使用する一群のアッセイにおいて試験することにより同定する。
【0121】
新たに産生された抗CD52抗体の特異的結合を、CD52を発現する細胞でのFACSにより評価する。細胞結合アッセイにおいて、CD52を発現する細胞またはイヌリンパ腫細胞をリン酸緩衝食塩水(PBS)で洗浄し、ウェルに播種する。プレート表面への細胞付着を可能にするための室温で1時間後、細胞をFBSで洗浄し、プレート上の非特異的結合部位をブロックする。次に、抗−イヌCD52抗体を発現する細胞からの上清を加える。室温で1時間インキュベーション後、プレートをPBSで洗浄する。次に、二次抗体を加え、標準方法を使用して検出する。
【0122】
実施例3.ヘテロキメラ抗体
以下の実施例は、以下で説明されている配列および一般的なパターンを使用して、標準技術にしたがって構築されたヘテロキメラ抗体の一般的な表示を提供する。以下に記載されている実施例において、CDRは、Kabat命名法を使用して定義される。
【0123】
I.抗体可変ドメイン
表1の説明は、別々の免疫グロブリンドメインの隣接する配列を示す、軽鎖(AVD1からAVD10)および重鎖(AVD11からAVD13)抗体に関するヘテロキメラ化の図表示である。さらなる抗体変異体を、ドナー種由来の可変領域を標的種由来の任意の定常ドメインと連結することにより構築する。
表1.
【表2】

AVD=抗体可変ドメイン;T=標的種;ラムダ=ラムダ軽鎖;カッパ=カッパ軽鎖;C=定常ドメイン;FR=フレームワーク領域;CDR=相補性決定領域。
【0124】
II.フレームワーク配列
軽鎖および重鎖ヘテロキメラ抗体を構築するために供給源として使用される典型的なフレームワーク配列は、一般的に、米国シリアスナンバー12/584,390およびPCT/US2009/04997(これらの出願を出典明示により本明細書に包含させる)に記載されている。
【0125】
III.定常ドメイン配列
抗体変異体および/またはそのフラグメントを構築するために供給源として使用される典型的な定常ドメイン配列は、一般的に、国際公開WO2010/110838(この内容を出典明示により本明細書に包含させる)に記載されている。
【0126】
実施例4.イヌにおける抗CD52モノクローナル抗体の試験
I.抗CD52モノクローナル抗体の操作
VET306と称される抗CD52モノクローナル抗体を、実施例3にしたがって、pdb 1bfo_Eおよびpdb 1bfo_F(キャンパス−1G、クローンYTH 34.5HL、Protein Data Bank proteins (pdb)、寄託の日:1998年5月20日)に記載されている配列を有するラット抗−ヒトCD52抗体を使用して操作する。可変領域を公に利用できる配列に対応する合成オリゴヌクレオチドをアセンブリー(assemble)することにより調製し、可変ドメインの5’−および3’−末端のそれぞれにおいて側面に位置する制限酵素認識部位としてHindIIIおよびNheIを有するpSMARTにクローニングする。次に、アセンブリーさせた産物をプロモーターおよび重鎖定常ドメインを含むか、またはラムダ軽鎖定常ドメインを含む発現ベクターにサブクローニングする。全発現カセットは、得られる抗体産物を分泌経路に向かわせるために、コード配列のすぐ上流および軽鎖および重鎖の両方の可変領域とインフレームにおいて、ヒトサイトメガロウイルス前初期(CMV)プロモーター、kozak配列およびシグナルペプチド配列を含む。
【0127】
II.抗CD52を生産する細胞系の作成および抗体生産
イヌ化抗CD52抗体(VET 306)の軽鎖遺伝子および重鎖遺伝子の両方を有するベクターを、対応する組換え抗体を発現する細胞系を大規模で創造するために、哺乳動物細胞(PER.C6)に導入する。細胞を、3.0mMのグルタミン(Invitrogen, Gibco, Cat No. 25030-081)を補った化学的に定義された無タンパク質培地CDM4PerMab(Hyclone, Thermo-Scientific, Cat No. SH30871.02)中で培養する。4代継代解凍後、PER.C6細胞を、標準技術を使用して直線化ベクターDNAでのエレクトロポレーションによりトランスフェクトする。ベクターを安定に組み込んでいる細胞を、125.0ug/mLのGeneticin(Invitrogen, Cat No. 11811-023)の存在下での生存により選択する。トランスフェクションから回収された単一のクローンを、大規模培養において、抗体力価、CD52発現細胞への結合、細胞が2倍になる時間、細胞生存能力および細胞安定性についてさらに評価し、標準技術にしたがって冷凍凍結する。次に、抗体生産および精製を、標準技術にしたがって1つのクローンを使用して行う。
【0128】
III.組換え抗CD52の半減期
組換え抗CD52抗体(VET 306)の半減期を、ビーグル犬に静脈内に投与することにより評価する。血液サンプルを、抗凝固剤としてエチレンジアミンテトラ酢酸(EDTA)で処理された全血として回収された血漿サンプル中の抗体の分析のために回収する。酵素免疫測定法(ELISA)方法を、血漿抗体濃度を決定するために利用する。このアッセイにおいて、96−ウェルプレートを、組換え抗CD52の可変ドメインに対するウサギポリクローナル抗体でコーティングする。標準またはサンプル中の組換え抗CD52をポリクローナル抗体により捕獲し、酵素結合抗イヌ二次抗体により検出する。標準の非線形回帰フィットを、血漿中の組換え抗体濃度を決定するために使用する。
【0129】
薬物動態学試験は、イヌ化抗CD52抗体が全ての動物において高い血漿レベルをなし遂げることを示す。半減期は、第1の10.0mg投与後50.0から96.0時間および第1の30.0mg投与後75.0から120.0時間の範囲である。
【0130】
興味深いことに、組換え抗−イヌCD52抗体の半減期値は、連続投与後に増加する。全身クリアランスは、受容体介在クリアランスの減少(すなわち、末梢におけるCD52受容体の喪失)によって、反復投与で減少する。
【0131】
IV.インビボでの白血球の枯渇
3匹のビーグル犬に、3日毎に0.05mg/kgから3.0mg/kgの範囲である組換え抗CD52抗体の3連続投与を与える。血液サンプルをいくつかの時点で採取する。血液サンプルを2000RPMで5分間遠心する。血漿を、組換え抗体レベルのアッセイのために除去する。ペレット(末梢血白血球および赤血球を含む)を、フローサイトメトリーによる白血球集団の定量のために、血漿と同等の容量のリン酸塩水(Dulbecco's Phosphate-Buffered Saline, Mediatech, Cat No. 21-030-CM)に再懸濁する。0.1mL容量の細胞調製物を、微量遠心管に分配する。イヌ白血球表面マーカーCD45に対する特異性を有する標識化モノクローナル抗体(Rat anti-dog CD45:Alexa Flor 488, AbDSerotec, Cat No. MCS1042A488)をバイアルに加え、白血球細胞集団を同定する。自己蛍光の決定のために、試薬を加えないさらなるサンプルが含まれる。細胞を蛍光抗体と30分間インキュベートする。次に、赤血球を溶解バッファー(Red Blood Cell Lysis Buffer, Biolegend, Cat No. 420301)を使用して15分間で溶解し、次に洗浄し、Becton Dickinson FACS装置にて分析する。
【0132】
興味深いことに、1.0mg/kgの組換え抗CD52抗体の投与は、投与前レベルの36から95%の範囲で白血球枯渇を引き起こす。
【0133】
21日間にわたる組換え抗CD52抗体の投与は、局所的および全身的に耐容性が良く、臨床および行動観察または体重において副作用が見られない。
【0134】
実施例5.抗CD52抗体での処置
I.イヌの処置
免疫状態、例えば、リンパ腫、再発性リンパ腫、白血病、肥満細胞腫瘍、溶血性貧血、関節炎、アトピー性皮膚炎と診断されたイヌに、抗CD52モノクローナル抗体での治療を与える。イヌに1−5mg/kgの抗体を静脈内または皮下に注入し、最初の処置後、処置を週に1回、4−8週間繰り返す。最後の投与から2月後、患者はCD52を発現する細胞の特定の型の減少したレベルを示す。次に、イヌを、8−12週間毎に抗CD52抗体の投与での維持レジメン下で処置する。
【0135】
II.アトピー性皮膚炎の処置
アトピー性皮膚炎と確認されたイヌに、最初の4週間、週に2から3回、1mg/kgの処置を与える。処置に対する臨床反応を、最初の処置の4週間後に、(i)イヌのアトピー性皮膚炎の範囲と重症度指数(CADESI)を使用して皮膚病変に対して、および(ii)掻痒症に対して評価する。掻痒症スコアおよびCADESIスコアが改良を示した後、投与の用量および頻度を減少させる。最後の投与から2月後、患者は全体的な改善を示す。
【0136】
III.ネコの処置
免疫状態、例えば、リンパ腫、再発性リンパ腫、白血病、肥満細胞腫瘍、溶血性貧血、関節炎、アトピー性皮膚炎と診断されたネコに、抗CD52モノクローナル抗体での治療を与える。ネコに5mg/kgの抗体を静脈内または皮下に注入し、最初の処置後、処置を週に1回、4−8週間繰り返す。最後の投与から2月後、患者はCD52を発現する細胞の特定の型の減少したレベルを示す。
【0137】
IV.ウマの処置
免疫状態、例えば、リンパ腫、再発性リンパ腫、白血病、肥満細胞腫瘍、溶血性貧血、関節炎、アトピー性皮膚炎と診断されたウマに、抗CD52モノクローナル抗体での治療を与える。ウマに5mg/kgの抗体を静脈内または皮下に注入し、最初の処置後、処置を週に1回、4−8週間繰り返す。最後の投与から2月後、患者はCD52を発現する細胞の特定の型の減少したレベルを示す。
【0138】
提供される実施例の代替的組合せおよび変化は、本明細書の記載に基づいて明らかである。記載されている態様の多数の可能な組合せおよび変化の全てに対して特定の実施例を提供することが不可能であるが、かかる組合せおよび変化は、やはり、本発明の範囲内であることが意図される。
【0139】
配列表
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ペット宿主におけるCD52発現細胞の割合を減少させる、イヌまたはネコCD52を認識する抗体またはその抗体フラグメント
【請求項2】
ペット宿主における白血球を減少させる、請求項1に記載の抗体または抗体フラグメント。
【請求項3】
ペット宿主における白血球を枯渇させる、請求項1に記載の抗体または抗体フラグメント。
【請求項4】
イヌまたはネコ定常領域を含む、配列番号1のイヌCD52もしくはそのフラグメントまたは配列番号2のネコCD52もしくはそのフラグメントを認識する抗体または抗体フラグメント。
【請求項5】
イヌまたはネコCD52を認識し、配列番号1または2に対する抗体またはラット抗−ヒトCD52(キャンパス(Campath)−1G、クローンYTH 34.5HL)由来の少なくとも1つのCDR領域を含む、抗体または抗体フラグメント。
【請求項6】
AVD−1からAVD−13までから選択される可変ドメイン構造を含む、請求項1から5のいずれかに記載の抗体または抗体フラグメント。
【請求項7】
ヘテロキメラ抗体である、前記請求項のいずれかに記載の抗体または抗体フラグメント。
【請求項8】
イヌCD52に結合し、定常領域がイヌ起源である、請求項1から7のいずれかに記載の抗体または抗体フラグメント。
【請求項9】
ネコCD52に結合し、定常領域がネコ起源である、請求項1から7のいずれかに記載の抗体または抗体フラグメント。
【請求項10】
定常ドメインが、増強されたADCCおよび/またはCDCを提供するために選択された配列を含む前記請求項のいずれかに記載の抗体または抗体フラグメント。
【請求項11】
前記請求項のいずれかに記載の抗体または抗体フラグメントをコードする核酸。
【請求項12】
有効量の請求項1から11のいずれかに記載の抗体または抗体フラグメントを投与することを含む、CD52を発現する細胞の過剰増殖により特徴付けられる疾患または状態に罹患している動物を処置する方法。
【請求項13】
疾患または状態が癌、例えばリンパ腫である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
疾患または状態が炎症性疾患、例えばアトピー性皮膚炎である、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
第2の薬物、例えば化学療法薬、または第2のモノクローナル抗体、例えばCD20に対するmAbの共投与を含む、請求項12から14のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
CD52に対する抗体を含む診断アッセイを使用して、動物がCD52を発現する細胞の過剰増殖により特徴付けられる疾患または状態に罹患していると診断される、請求項12から15のいずれかに記載の方法。

【公表番号】特表2013−520999(P2013−520999A)
【公表日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−556250(P2012−556250)
【出願日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際出願番号】PCT/US2011/027094
【国際公開番号】WO2011/109662
【国際公開日】平成23年9月9日(2011.9.9)
【出願人】(512228657)ベット・セラピューティクス・インコーポレイテッド (2)
【氏名又は名称原語表記】VET THERAPEUTICS INC.
【Fターム(参考)】