説明

CO2及びH2Sを含むガスの回収システム及び方法

【課題】例えば石炭等をガス化炉によりガス化して得られるガス化ガスに含まれるH2Sを効率よく回収するCO2及びH2Sを含むガスの回収システム及び方法を提供する。
【解決手段】例えば石炭等をガス化したCO2及びH2Sを含むガス化ガスを導入ガス11とし、CO2及びH2Sを吸収する吸収液12とを接触させて導入ガス11からCO2及びH2Sを吸収させる吸収塔13と、CO2及びH2Sを吸収した吸収液12Aを吸収塔13の塔底部13cより抜き出すと共に塔頂部14aより導入し、CO2及びH2Sを放出させて吸収液12を再生する吸収液再生塔14と、再生された吸収液12Bを再生塔14から吸収塔13に戻す第2の供給ラインL2と、吸収塔13の塔中段13b近傍からCO2及びH2Sの一部を吸収した吸収液(セミリッチ溶液)12Cを抜き出し、該セミリッチ溶液12Cを再生塔14の塔中段14b近傍に導入する第3の供給ラインL3とを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば石炭やバイオマス等をガス化炉によりガス化して得られるガス化ガスに含まれるCO2とH2SからH2Sを効率よく回収するCO2及びH2Sを含むガスの回収システム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
石炭やバイオマス等をガス化炉でガス化したガス化ガスに含まれるCO2とH2S等の酸性ガスを除去する技術として、従来より、化学吸収法(例えば、アミン吸収液(例えば(N−メチルジエタノールアミン:MDEA等の吸収液利用))や物理吸収法(例えば、ポリエチレングリコール・ジメチルエーテルを用いるSelexol吸収液利用)が提案されている。
【0003】
ところで、IGCC(石炭ガス化複合発電)技術のようなシステムの場合、以下のような要求がある。
1) 発電システムにおいて、大気汚染物質であるSOの排出を規制値未満とするために、SOの発生源となるH2Sの除去が必要となる。一方で、発電効率を上昇させる効果があるため、CO2は極力回収しないことが望ましい。
2) 回収したH2S含有ガス(オフガス)流量が少なく、H2S濃度が高い方が、回収ガスから化製品を製造する場合やH2Sを処理する場合に有利であり、H2Sを選択的に回収できることが望ましい。
3) IGCCにCOシフトとCCS(二酸化炭素回収・貯留)とを組み合わせたシステムでは、CO2回収プロセスで回収したCO2中のH2S濃度を規定値(例えば10〜20ppm)程度に抑える必要がある。
4) 発電効率を向上させるためには、スチーム等の熱エネルギーの使用量は少ないほど好ましい。
すなわち、CO2とH2Sとを含むガスから、H2Sを熱エネルギーの面で効率的、かつ選択的に分離することが求められている。
【0004】
そこで、従来では、放圧容器(再生塔上段)で溶解成分を一部放散させた吸収液の一部を、吸収塔の最上部より下方から供給する省エネプロセスの提案がある(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−120013号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の技術では、H2Sを含まないガスからのCO2回収に適用する場合は有効であるが、CO2とH2Sとを含有するガスからのH2Sの選択回収に適用する場合は、吸収塔の下方の吸収液中のH2S濃度が高くなることで、H2S吸収速度が大幅に低下するため、H2S除去率、H2S選択性が低下し、所望の除去率を得るためには逆に熱エネルギーの増大を招いてしまう、という問題がある。
【0007】
よって、化学吸収プロセスにおいて、CO2とH2Sとを含むガスから、CO2の吸収とは別にH2Sを熱エネルギーの面で効率的、かつ選択的に分離することができる手段の出現が切望されている。
【0008】
本発明は、前記問題に鑑み、例えば石炭やバイオマス等をガス化炉によりガス化して得られるガス化ガスに含まれるH2Sを効率よく回収するCO2及びH2Sを含むガスの回収システム及び方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決するための本発明の第1の発明は、CO2及びH2Sを含むガスを導入ガスとし、該導入ガスとCO2及びH2Sを吸収する吸収液とを接触させて前記導入ガスからCO2及びH2Sを吸収させる吸収塔と、CO2及びH2Sを吸収した吸収液を吸収塔の塔底部から抜き出し、第1の供給ラインを介して塔頂部より導入し、リボイラの熱によりCO2及びH2Sを放出させて吸収液を再生する吸収液再生塔と、再生された再生吸収液を吸収塔に戻す第2の供給ラインと、吸収塔の塔中段近傍からCO2及びH2Sの一部を吸収した吸収液を抜き出し、抜き出した吸収液を再生塔の塔中段近傍に導入する第3の供給ラインと、とを具備することを特徴とするCO2及びH2Sを含むガスの回収システムにある。
【0010】
第2の発明は、第1の発明において、第1の供給ラインと、第2の供給ラインとの交差部に介装され、吸収塔の塔底部から抜き出したCO2及びH2Sを吸収した吸収液と再生吸収液とを熱交換する第1の熱交換器と、第3の供給ラインと、第2の供給ラインとの交差部に介装され、吸収塔の塔中段近傍から抜き出したCO2及びH2Sを吸収した吸収液と再生吸収液とを熱交換する第2の熱交換器と、を具備し、熱交換の後の再生塔の塔中段近傍より導入されるCO2及びH2Sを吸収した吸収液の温度は、熱交換の後の再生塔の塔頂部より導入されるCO2及びH2Sを吸収した吸収液の温度と同等又は同等以上であることを特徴とするCO2及びH2Sを含むガスの回収システムにある。
【0011】
第3の発明は、CO2及びH2Sを含むガスを導入ガスからCO2及びH2Sを回収する吸収塔と再生塔とを用いたCO2及びH2Sを含むガスの回収方法であって、前記導入ガスからCO2及びH2Sを吸収させる吸収塔の塔中段近傍から吸収液の一部を抜き出し、吸収塔の下方に流下する吸収液の流量を低減させ、塔底部から抜き出した吸収液を再生塔の塔頂部近傍から導入させると共に、吸収塔の塔中段近傍から抜き出した吸収液を、再生塔の塔中段近傍に導入して再生することを特徴とするCO2及びH2Sを含むガスの回収方法にある。
【0012】
第4の発明は、第3の発明において、吸収塔の塔底部及び塔中段近傍から抜出されるCO2及びH2Sを吸収した吸収液が、再生塔で再生された再生吸収液と各々熱交換され、熱交換の後の再生塔の塔中段近傍より導入されるCO2及びH2Sを吸収した吸収液は、熱交換の後の再生塔の塔頂部より導入されるCO2及びH2Sを吸収した吸収液の温度と同等又は同等以上であることを特徴とするCO2及びH2Sを含むガスの回収方法にある。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、吸収塔の塔中段近傍から吸収液の一部を第3の供給ラインにより抜き出すようにして、吸収塔の下方に流下する吸収液の流量を低減させることで、H2Sの吸収量をほとんど低下させることなく、CO2吸収量を低下させ、H2Sの選択分離性の向上を図ると共に、再生塔におけるリボイラ熱量の低減を図る。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1−1】図1−1は、実施例1に係るCO2及びH2Sを含むガスの回収システムの概略図である。
【図1−2】図1−2は、実施例1に係るCO2及びH2Sを含むガスの回収システムの温度・圧力条件の一例を追加した概略図である。
【図2−1】図2−1は、従来技術の基本プロセスによる回収システムと、実施例による回収システムとにおける蒸留エンタルピーを比較する図である。
【図2−2】図2−2は、再生塔の理論段数を示す模式図である。
【図3】図3は、実施例2に係るCO2を含むH2Sの回収システムの概略図である。
【図4】図4は、実施例3に係るCO2及びH2Sを含むガスの回収システムの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、この発明につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、この実施例によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施例における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。
【実施例1】
【0016】
本発明による実施例に係るCO2及びH2Sを含むガスの回収システムについて、図面を参照して説明する。図1−1は、実施例1に係るCO2及びH2Sを含むガスの回収システムの概略図である。
図1−1に示すように、本実施例に係るCO2及びH2Sを含むガスの回収システム10Aは、例えば石炭やバイオマス等をガス化するガス化炉等から得られたCO2及びH2Sを含むガス化ガスを導入ガス11とし、該導入ガス11とCO2及びH2Sを吸収する吸収液12とを接触させて前記導入ガス11からCO2及びH2Sを吸収させる吸収塔13と、CO2及びH2Sを吸収した吸収液(リッチ溶液)12Aを吸収塔13の塔底部13cより抜き出すと共に、第1の供給ラインL1を介して塔頂部14aより導入し、リボイラ15の熱によりCO2及びH2Sを放出させて吸収液12を再生する吸収液再生塔(以下「再生塔」という)14と、再生された吸収液(リーン溶液)12Bを再生塔14の塔底部14cより抜き出し、吸収塔13の塔頂部13aに戻す第2の供給ラインL2と、吸収塔13の塔中段13b近傍からCO2及びH2Sの一部を吸収した吸収液(セミリッチ溶液)12Cを抜き出し、抜き出したセミリッチ溶液12Cを再生塔14の塔中段14b近傍に導入する第3の供給ラインL3と、第1の供給ラインL1と、第2の供給ラインL2との交差部に介装され、リッチ溶液12Aとリーン溶液12Bとを熱交換する第1の熱交換器16と、第3の供給ラインL3と、第2の供給ラインL2との交差部に介装され、セミリッチ溶液12Cとリーン溶液12Bとを熱交換する第2の熱交換器17と、を具備する。
このシステムでは、前記液再生塔14でCO2及びH2Sを除去し、再生された吸収液(リーン溶液)12Bは吸収液12として再利用される。
【0017】
このCO2及びH2Sを含むガスの回収システム10Aを用いた精製方法では、石炭やバイオマス等をガス化するガス化炉で得られたガス化ガスは、ガス冷却装置(図示せず)に送られ、ここで冷却水により冷却され、導入ガス11として吸収塔13に導入される。
吸収塔13は、塔内部に充填部13A、13Bが設けられ、これらの充填部13A、13Bを通過する際、導入ガス11と吸収液12との対向接触効率を向上させている。なお、充填部は複数設けてもよく、充填法以外に、例えばスプレー法、液柱法、棚段法等により導入ガス11と吸収液12とを対向接触させるようにしている。
【0018】
前記吸収塔13において、導入ガス11は例えばアミン系の吸収液12と対向流接触し、排ガス12中のCO2及びH2Sは、化学反応により吸収液12に吸収され、CO2及びH2Sが除去された浄化ガス21は系外に放出される。CO2及びH2Sを吸収した吸収液は「リッチ溶液」12Aとも呼称される。このリッチ溶液12Aは、リッチ溶液ポンプ(図示せず)を介し、第1の熱交換器16において、吸収液再生塔14で再生された吸収液(リーン溶液)12Bとの熱交換により加熱され、その後、吸収液再生塔14に供給される。
【0019】
この熱交換されたリッチ溶液12Aは、充填部14A、14Bを有する吸収液再生塔14の塔頂部14a近傍から塔内に導入され、塔内を流下する際に、リボイラ15からの水蒸気22による吸熱反応を生じて、大部分のCO2及びH2Sを放出し、再生される。吸収液再生塔14内で一部または大部分のCO2及びH2Sを放出した吸収液は「セミリーン溶液」と呼称される。このセミリーン溶液は、吸収液再生塔14下部に至る頃には、ほぼ全てのCO2及びH2Sが除去された吸収液となる。このほぼ全てのCO2及びH2Sが除去されることにより再生された吸収液は「リーン溶液」12Bと呼称される。このリーン溶液12Bはリボイラ15で飽和水蒸気23により間接的に過熱され蒸気22を発生している。
また、吸収液再生塔14の塔頂部14aからは塔内においてリッチ溶液12A及びセミリーン溶液から放出された水蒸気を伴ったCO2及びH2Sガス25が導出され、コンデンサ26により水蒸気が凝縮され、分離ドラム27にて水28が分離され、CO2及びH2Sガス29が系外に放出されて回収される。分離ドラム27にて分離された水28は吸収液再生塔14の上部に供給される。
再生された吸収液(リーン溶液)12Bは、第2の熱交換器17にてセミリッチ溶液12Cと熱交換されて冷却され、次いで第1の熱交換器16にてリッチ溶液12Aと熱交換されて冷却され、つづいてリーンソルベントポンプ(図示せず)にて昇圧され、さらにリーンソルベントクーラ30にて冷却された後、再び吸収塔13に供給され、吸収液12として再利用される。
【0020】
また、熱交換の後の再生塔14の塔中段14b近傍より導入されるCO2及びH2Sを吸収した吸収液(セミリッチ溶液)12Cの温度は、第2の熱交換器17での熱交換の後の再生塔14の塔頂部14aより導入されるCO2及びH2Sを吸収した吸収液(リッチ溶液)12Aの温度と、同等又は同等以上となるようにしている。
これは、再生塔14の塔頂部14aより塔中段14b部分はリボイラ15からの上記水蒸気22の熱によりその温度が高くなっているので、ここに導入されるセミリッチ溶液12Cは、その熱損失が発生しないように、塔頂部14a側よりも温度を同等以上とする必要があるからである。
【0021】
本実施例では、吸収塔13の最上段より下方側の塔中段13b近傍から吸収液の一部を第3の供給ラインL3により抜き出すようにしている。なお、抜き出し量は、導入される導入ガスの温度、圧力、流量、CO2濃度、H2S濃度を測定し、これらの条件を総合的に判断して最適な抜き出し位置や抜き出し量を決定するようにしている。
【0022】
抜き出されたセミリッチ溶液12Cは、第2の熱交換器17により、再生塔14の塔底部14cより排出される高温のリーン溶液12Bとの熱交換により加熱され、再生塔14の塔中段14b近傍、より好ましくは塔中段より下方側に供給する。
【0023】
ところで、導入ガス11中のH2Sと共にCO2は、吸収塔13内ではH2S及びCO2ともに吸収液12により吸収されている。
本発明のように、吸収塔13の塔中段13b近傍から吸収液の一部を第3の供給ラインL3により抜き出すようにして、吸収塔13の下方に流下する吸収液の流量を低減させることで、H2Sはガス側の物質移動、CO2は液側の物質移動が支配的であることから、CO2の方がより吸収速度が低下する。
これにより、CO2吸収量が低下、すなわち吸収液中のCO2濃度が低下する分、H2Sの吸収量は増加する。
吸収液の流量の低下によるH2S吸収量の低下を考慮しても、H2S吸収量はほとんど低下しない。
よって、H2Sの選択性の向上を図ることができる。
【0024】
CO2及びH2S濃度が高いリッチ溶液12Aを再生塔14の塔頂部14aから導入し、CO2及びH2S濃度がリッチ溶液12Aと比較して相対的に低いセミリッチ溶液12Cを、リッチ溶液12Aと同等かそれ以上の温度に加温した上で再生塔14の塔中段14b近傍、あるいはそれより下方側に供給することで、リボイラ15の熱量を低減させることができるので、リボイラ15による蒸気消費量を低減することができる。
【0025】
図1−2は、実施例1に係るCO2及びH2Sを含むガスの回収システムの温度・圧力条件の一例を追加した概略図である。
図1−2に示すように、導入ガス11は吸収塔13に導入される。
これに対向するように吸収液12(リーン溶液12B)は塔内に導入され、CO2及びH2Sを吸収する。
この吸収は発熱反応であるので、吸収塔13の塔中段13b近傍から抜き出されるセミリッチ溶液12Cは49℃である。一方、塔底部13cから抜き出されるリッチ溶液12Aは44℃である。
このリッチ溶液12Aとセミリッチ溶液12Cとは第1及び第2の熱交換器16、17において、それぞれ高温(122℃)のリーン溶液12Bと熱交換され、リッチ溶液12Aは77℃となり、再生塔14の塔頂部14aから導入される。またセミリッチ溶液12Cは104℃となり、再生塔14の塔中段14b近傍から導入される。
これにより、再生塔でのリボイラ熱量の低減を図るようにしている。
【0026】
図2−1は、従来技術の基本プロセスによる回収システムと、実施例による回収システムとにおける蒸留エンタルピーを比較する。図2−2は再生塔の理論段数を示す模式図である。
ここで、従来技術とは、吸収塔13の塔底部から全ての吸収液を抜き出し、再生塔14の塔頂部14aから全量を導入して再生する方法である。
図2−1に示すように、従来技術の場合に較べ、実施例の回収システムでは再生塔上段の蒸留エンタルピー、すなわち必要な熱エネルギーが大きく低下するのに対し、再生塔下段では蒸留エンタルピーの増加は比較的小さく、結果としてリボイラ及びコンデンサの必要熱量の低減を図ることが確認された。なお、CO2回収量が低減されたことにより吸収熱が低下したことも、必要熱量の低減に寄与している。
このように、本発明によれば、リボイラ熱量を低減することができ、システム全体の熱エネルギーの低減を図ることができる。
【実施例2】
【0027】
本発明による実施例に係るCO2及びH2Sを含むガスの回収システムについて、図面を参照して説明する。図3は、実施例2に係るCO2及びH2Sを含むガスの回収システムの概略図である。なお、図1に示す実施例1の構成と同一の構成については同一の符号を付してその説明は省略する。
図3に示すように、本実施例に係るCO2及びH2Sを含むガスの回収システム10Bは、実施例1に係るCO2及びH2Sを含むガスの回収システム10Aにおいて、再生塔14の塔中段近傍14bからCO2及びH2Sを一部放出して再生された吸収液(セミリーン溶液)12Dの全量を抜出す抜出しラインL4を設けている。そして、この抜出しラインL4を、第3の供給ラインL3に介装された第2の熱交換器17の前段側に合流させ、抜き出したセミリーン溶液12Dとここでセミリッチ溶液12Cと混合させた後、第2の熱交換器17で熱交換させた後、再生塔14の下段の充填部14B側に導入するようにしている。
【0028】
これにより、従来よりもリボイラの熱エネルギーの低減を図るようにしている。
【0029】
表1は従来技術1(吸収液を全量底部から抜き出し、全量再生塔の塔頂部から導入する回収システム)、従来技術2(放散塔を備えたシステム特許文献1)、実施例1の回収システム、実施例2の回収システムにおける、各々の再生塔のリボイラ熱量とCO2回収量、H2S回収量、H2S選択比(H2S回収量/CO2回収量)についての比較である。
なお、従来技術を100とし、各々その相対比を比較した。
【0030】
【表1】

【0031】
表1に示すように、実施例1及び実施例2は従来技術1と比べて、リボイラ熱量が低下することが確認された。また、H2S回収量を維持しつつ、CO2回収量の低減を図ることができた。この結果、H2S選択比(H2S回収量/CO2回収量)の向上をあることが確認された。
【実施例3】
【0032】
本発明による実施例に係るCO2及びH2Sを含むガスの回収システムについて、図面を参照して説明する。図4は、実施例3に係るCO2及びH2Sを含むガスの回収システムの概略図である。なお、図1に示す実施例1の構成と同様の構成については同一の符号を付してその説明は省略する。
図4に示すように、本実施例に係るCO2及びH2Sを含むガスの回収システム10Cは、実施例1に係るCO2及びH2Sを含むガスの回収システム10Aにおいて、吸収塔13を複数の吸収部13A〜13Dとし、抜き出す位置を複数としている。
導入ガス11の温度、圧力、流量、CO2濃度、H2S濃度を計測器41により測定し、制御装置により最適な抜出し位置や抜出し量を決定するようにしている。
【0033】
本実施例では、セミリッチ溶液12Cの抜出し位置を3箇所とするようにしており、複数の配管L3-1、L3-2、L3-3及びバルブV1〜V3を設けている。
【0034】
抜出し量の調整は、吸収塔13の圧力が高いため、前記バルブV1〜V3の開度調整、あるいは図示しないポンプ流量の調整により行うことができる。
【0035】
そして、導入ガス11の条件を計測し、浄化ガス21中のH2S濃度の目標値を満足させる場合のガス流量、リボイラ熱量の計算を行う。この計算には吸収液の抜き出し位置、抜き出し流量(m3/h)を求める。
吸収液の抜き出し条件の最適解を制御手段42により決定し、制御手段42は抜き出し位置の変更(バルブの開閉)の指示の制御を行う。
次に、制御手段42は、バルブの開度を調整又はポンプ流量の調整の指示を行うことで、セミリッチ溶液12Cの抜き出し流量の調整を行う。
これにより、H2S除去性能、H2S選択性(ガス流量)、熱エネルギーの最適化を図ることができる。
【0036】
よって、導入ガス11の条件が、例えば石炭の種類の変更によって変動した場合に、浄化ガス21のH2S濃度も大きく変動することがあるが、このような場合には、本実施例により、セミリッチ溶液12Cの抜き出し位置及び抜き出し量を制御することで、設備の改造を行うことなく、セミリッチ溶液12Cの抜き出し条件を最適化することができる。
【0037】
このように、本実施例によれば、導入ガス条件が変動しても、容易に吸収液の抜き出し条件を変更し、目標性能を満足させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0038】
以上のように、本発明に係るCO2及びH2Sを含むガスの回収システム及び方法によれば、CO2との吸収とは別にH2Sを熱エネルギーの面で効率的、かつ選択的に分離することができ、例えば石炭やバイオマス等をガス化炉によりガス化して得られるガス化ガスに含まれるH2Sを効率よく回収することができる。
【符号の説明】
【0039】
10A、10B、10C CO2及びH2Sを含むガスの回収システム
11 導入ガス
12 吸収液
12A リッチ溶液
12B リーン溶液
12C セミリッチ溶液
12D セミリーン溶液
13 吸収塔
14 吸収液再生塔(再生塔)
15 リボイラ
16 第1の熱交換器
17 第2の熱交換器



【特許請求の範囲】
【請求項1】
CO2及びH2Sを含むガスを導入ガスとし、該導入ガスとCO2及びH2Sを吸収する吸収液とを接触させて前記導入ガスからCO2及びH2Sを吸収させる吸収塔と、
CO2及びH2Sを吸収した吸収液を吸収塔の塔底部から抜き出し、第1の供給ラインを介して塔頂部より導入し、リボイラの熱によりCO2及びH2Sを放出させて吸収液を再生する吸収液再生塔と、
再生された再生吸収液を吸収塔に戻す第2の供給ラインと、
吸収塔の塔中段近傍からCO2及びH2Sの一部を吸収した吸収液を抜き出し、抜き出した吸収液を再生塔の塔中段近傍に導入する第3の供給ラインと、とを具備することを特徴とするCO2及びH2Sを含むガスの回収システム。
【請求項2】
請求項1において、
第1の供給ラインと、第2の供給ラインとの交差部に介装され、吸収塔の塔底部から抜き出したCO2及びH2Sを吸収した吸収液と再生吸収液とを熱交換する第1の熱交換器と、
第3の供給ラインと、第2の供給ラインとの交差部に介装され、吸収塔の塔中段近傍から抜き出したCO2及びH2Sを吸収した吸収液と再生吸収液とを熱交換する第2の熱交換器とを具備し、
熱交換の後の再生塔の塔中段近傍より導入されるCO2及びH2Sを吸収した吸収液の温度は、熱交換の後の再生塔の塔頂部より導入されるCO2及びH2Sを吸収した吸収液の温度と同等又は同等以上であることを特徴とするCO2及びH2Sを含むガスの回収システム。
【請求項3】
CO2及びH2Sを含むガスを導入ガスからCO2及びH2Sを回収する吸収塔と再生塔とを用いたCO2及びH2Sを含むガスの回収方法であって、
前記導入ガスからCO2及びH2Sを吸収させる吸収塔の塔中段近傍から吸収液の一部を抜き出し、吸収塔の下方に流下する吸収液の流量を低減させ、
塔底部から抜き出した吸収液を再生塔の塔頂部近傍から導入させると共に、吸収塔の塔中段近傍から抜き出した吸収液を、再生塔の塔中段近傍に導入して再生することを特徴とするCO2及びH2Sを含むガスの回収方法。
【請求項4】
請求項3において、
吸収塔の塔底部及び塔中段近傍から抜出されるCO2及びH2Sを吸収した吸収液が、再生塔で再生された再生吸収液と各々熱交換され、
熱交換の後の再生塔の塔中段近傍より導入されるCO2及びH2Sを吸収した吸収液は、熱交換の後の再生塔の塔頂部より導入されるCO2及びH2Sを吸収した吸収液の温度と同等又は同等以上であることを特徴とするCO2及びH2Sを含むガスの回収方法。



【図1−1】
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【図1−2】
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【図2−1】
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【図2−2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−110835(P2012−110835A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−261840(P2010−261840)
【出願日】平成22年11月24日(2010.11.24)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】