説明

CO2及びH2Sを含むガスの回収システム及び方法

【課題】例えば石炭等をガス化して得られるガス化ガスに含まれるH2Sを効率よく回収するCO2及びH2Sを含むガスの回収システム及び方法を提供する。
【解決手段】CO2及びH2Sを含む導入ガス11中のCO及びH2Sを吸収させる吸収塔13と、CO及びH2Sを吸収したリッチ溶液12AからCO及びH2Sを放出させて吸収液12を再生する吸収液再生塔14と、再生されたリーン溶液12Bを吸収塔13に戻す第2の供給ラインL2と、導入ガス11のCO2濃度を計測する計測器41とを具備すると共に、第2の供給ラインL2を複数に分岐して供給ラインL2-1、L2-2、L2-4とすると共に、その分岐先の導入口13b-1〜13b-4を吸収塔13の高さ方向に沿って設けると共に、計測器による導入ガス中のCO2濃度に応じて、再生された吸収液の導入位置又は導入量のいずれか一方又は両方を吸収塔の高さ方向で変更する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば石炭やバイオマス等をガス化炉によりガス化して得られるガス化ガスに含まれるCO2とH2SからH2Sを効率よく回収するCO2及びH2Sを含むガスの回収システム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
石炭やバイオマス等をガス化炉でガス化したガス化ガス等に含まれるCO2とH2S等の酸性ガスを除去する技術として、従来より、化学吸収法(例えば、アミン吸収液(例えば(N−メチルジエタノールアミン:MDEA等の吸収液利用))や物理吸収法(例えば、ポリエチレングリコール・ジメチルエーテルを用いるSelexol吸収液利用)が提案されている。
【0003】
ところで、IGCC(石炭ガス化複合発電)技術のようなシステムの場合、以下のような要求がある。
1) 発電システムにおいて、大気汚染物質であるSOの排出を規制値未満とするために、SOの発生源となるH2Sの除去が必要となる。一方で、発電効率を上昇させる効果があるため、COは極力回収しないことが望ましい。
2) 回収したH2S含有ガス(オフガス)流量が少なく、H2S濃度が高い方が、回収ガスから化製品を製造する場合やH2Sを処理する場合に有利であり、H2Sを選択的に回収できることが望ましい。
3) IGCCにCOシフトとCCS(二酸化炭素回収・貯留)とを組み合わせたシステムでは、CO2回収プロセスで回収したCO2中のH2S濃度を規定値(例えば10〜20ppm)程度に抑える必要がある。
4) 発電効率を向上させるためには、スチーム等の熱エネルギーの使用量は少ないほど好ましい。
すなわち、CO2とH2Sとを含むガスから、H2Sを熱エネルギーの面で効率的、かつ選択的に分離することが求められている。
【0004】
そこで、従来では、H2Sを選択的に吸収する吸収液の提案がある(特許文献1、2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭53−86681号公報
【特許文献2】特表平6−500259号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1、2の技術では、エネルギー効率が悪い、という問題がある。
【0007】
よって、化学吸収プロセスにおいて、CO2とH2Sとを含むガスから、CO2の吸収とは別にH2Sを熱エネルギーの面で効率的、かつ選択的に分離することができる手段の出現が切望されている。
【0008】
本発明は、前記問題に鑑み、例えば石炭やバイオマス等をガス化炉によりガス化して得られるガス化ガスに含まれるH2Sを効率よく回収するCO2及びH2Sを含むガスの回収システム及び方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決するための本発明の第1の発明は、CO2及びH2Sを含むガスを導入ガスとし、該導入ガスとCO2及びH2Sを吸収する吸収液とを接触させて前記導入ガスからCO及びH2Sを吸収させる吸収塔と、CO及びH2Sを吸収した吸収液を吸収塔の塔底部から抜き出し、第1の供給ラインを介して塔頂部より導入し、リボイラの熱によりCO及びH2Sを放出させて吸収液を再生する吸収液再生塔と、再生された再生吸収液を吸収塔側に戻す第2の供給ラインと、前記導入ガスのCO2濃度を計測する計測器とを具備すると共に、前記第2の供給ラインを複数分岐し、その分岐先を吸収塔の高さ方向に沿って設けると共に、前記計測器による導入ガス中のCO2濃度に応じて、再生された吸収液の導入位置又は導入量のいずれか一方又は両方を吸収塔の高さ方向のいずれかに変更する制御を行うことを特徴とするCO2及びH2Sを含むガスの回収システムにある。
【0010】
第2の発明は、第1の発明において、前記計測器による導入ガス中のCO2濃度に応じて、前記吸収塔と前記吸収液再生塔との吸収液の循環量を変化させる制御を行うことを特徴とするCO2及びH2Sを含むガスの回収システムにある。
【0011】
第3の発明は、第1又は2の発明において、前記吸収塔からCO及びH2Sを一部吸収した吸収液を外部に抜き出すと共に、導入する抜出・導入ラインと、該抜出・導入ラインに介装され、抜き出した吸収液を冷却する冷却器とを具備することを特徴とするCO2及びH2Sを含むガスの回収システムにある。
【0012】
第4の発明は、CO2及びH2Sを含むガスを導入ガスからCO2及びH2Sを回収する吸収塔と、CO及びH2Sを吸収した吸収液からCO及びH2Sを放出させて吸収液を再生する吸収液再生塔とを用いたCO2及びH2Sを含むガスの回収方法であって、前記導入ガス中のCO2濃度を計測し、その計測濃度に応じて、再生された吸収液の導入位置又は導入量のいずれか一方又は両方を吸収塔の高さ方向のいずれかに変更することを特徴とするCO2及びH2Sを含むガスの回収方法にある。
【0013】
第5の発明は、第4の発明において、計測器による導入ガス中のCO2濃度に応じて、前記吸収塔と前記吸収液再生塔との吸収液の循環量を変化させることを特徴とするCO2及びH2Sを含むガスの回収方法にある。
【0014】
第6の発明は、第4又は5の発明において、吸収塔からCO及びH2Sを一部吸収した吸収液を外部に抜き出し、抜き出した吸収液を冷却した後、吸収塔に戻すことを特徴とするCO2及びH2Sを含むガスの回収方法にある。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、導入ガス中のCO2濃度に応じて、吸収液流量を変化させることで、H2Sの回収量を満足しつつ、CO2の回収量を極力低くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は、実施例1に係るCO2及びH2Sを含むガスの回収システムの概略図である。
【図2】図2は、実施例2に係るCO2及びH2Sを含むガスの回収システムの概略図である。
【図3】図3は、実施例3に係るCO2及びH2Sを含むガスの回収システムの概略図である。
【図4】図4は、実施例3に係る他のCO2及びH2Sを含むガスの回収システムの概略図である。
【図5】図5は、実施例3に係る他のCO2及びH2Sを含むガスの回収システムの概略図である。
【図6】図6は、本試験例に係るCO2及びH2Sを含むガスの回収システムの吸収塔部分の模式図である。
【図7−1】図7−1は、CO2回収量(左縦軸)/出口ガス中H2S濃度(右縦軸)と吸収塔の高さ位置(段数)との関係図である。
【図7−2】図7−2は、CO2回収量(左縦軸)/出口ガス中H2S濃度(右縦軸)と吸収塔の高さ位置(段数)との関係図である。
【図7−3】図7−3は、CO2回収量(左縦軸)/出口ガス中H2S濃度(右縦軸)と吸収塔の高さ位置(段数)との関係図である。
【図8−1】図8−1は、CO2回収量(左縦軸)/出口ガス中H2S濃度(右縦軸)と吸収塔の出口液温度との関係図である。
【図8−2】図8−2は、CO2回収量(左縦軸)/出口ガス中H2S濃度(右縦軸)と吸収塔の出口液温度との関係図である。
【図8−3】図8−3は、CO2回収量(左縦軸)/出口ガス中H2S濃度(右縦軸)と吸収塔の出口液温度との関係図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、この発明につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、この実施例によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施例における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。
【実施例1】
【0018】
本発明による実施例に係るCO2及びH2Sを含むガスの回収システムについて、図面を参照して説明する。図1は、実施例1に係るCO2及びH2Sを含むガスの回収システムの概略図である。
図1に示すように、本実施例に係るCO2及びH2Sを含むガスの回収システム10Aは、例えば石炭やバイオマス等をガス化するガス化炉等から得られたCO2及びH2Sを含むガス化ガスを導入ガス11とし、該導入ガス11とCO2及びH2Sを吸収する吸収液12とを接触させて前記導入ガス11からCO及びH2Sを吸収させる吸収塔13と、CO及びH2Sを吸収した吸収液(リッチ溶液)12Aを吸収塔13の塔底部13cより抜き出すと共に、第1の供給ラインL1を介して塔頂部14aより導入し、リボイラ15の熱によりCO及びH2Sを放出させて吸収液12を再生する吸収液再生塔(以下「再生塔」という)14と、再生された吸収液(リーン溶液)12Bを再生塔14の塔底部14cより抜き出し、吸収塔13側に戻す第2の供給ラインL2と、前記導入ガス11のCO2濃度を計測する計測器41とを具備すると共に、前記第2の供給ラインL2を複数(本実施例では4つ)に分岐して供給ラインL2-1、L2-2、L2-3、L2-4とすると共に、その分岐先の導入口13b-1〜13b-4を吸収塔13の高さ方向に沿って設け、前記計測器41による導入ガス11中のCO2濃度に応じて、再生された吸収液の導入位置又は導入量のいずれか一方又は両方を吸収塔の鉛直高さ方向のいずれかに変更するものである。
このシステムでは、前記再生塔14でCO及びH2Sを除去し、再生された吸収液(リーン溶液)12Bは吸収液12として再利用される。
【0019】
このCO2及びH2Sを含むガスの回収システム10Aを用いた精製方法では、石炭やバイオマス等をガス化するガス化炉で得られたガス化ガスは、ガス冷却装置(図示せず)に送られ、ここで冷却水により冷却され、導入ガス11として吸収塔13に導入される。
吸収塔13は、塔内部に充填部13A〜13Dが設けられ、これらの充填部13A〜13Dを通過する際、導入ガス11と吸収液12との対向接触効率を向上させている。なお、充填部は複数設けてもよく、充填法以外に、例えばスプレー法、液柱法、棚段法等により導入ガス11と吸収液12とを対向接触させるようにしている。
【0020】
前記吸収塔13において、導入ガス11は例えばアミン系の吸収液12と対向流接触し、導入ガス11中のCO及びH2Sは、化学反応により吸収液12に吸収され、CO及びH2Sが除去された浄化ガス21は塔頂部13aより系外に放出される。CO及びH2Sを吸収した吸収液は「リッチ溶液」12Aとも呼称される。このリッチ溶液12Aは、リッチ溶液ポンプ31を介し、熱交換器16において、再生塔14で再生された吸収液(リーン溶液)12Bとの熱交換により加熱され、その後、再生塔14に供給される。
【0021】
この熱交換されたリッチ溶液12Aは、充填部14A、14Bを有する吸収液再生塔14の塔頂部14a近傍から塔内に導入され、塔内を流下する際に、リボイラ15からの水蒸気22による吸熱反応を生じて、大部分のCO及びH2Sを放出し、再生される。吸収液再生塔14内で一部または大部分のCO及びH2Sを放出した吸収液は「セミリーン溶液」と呼称される。このセミリーン溶液は、吸収液再生塔14下部に至る頃には、ほぼ全てのCO及びH2Sが除去された吸収液となる。このほぼ全てのCO及びH2Sが除去されることにより再生された吸収液は「リーン溶液」12Bと呼称される。このリーン溶液12Bはリボイラ15で飽和水蒸気23により間接的に過熱され水蒸気22を発生している。
また、吸収液再生塔14の塔頂部14aからは塔内においてリッチ溶液12A及びセミリーン溶液から放出された水蒸気22を伴ったCO及びH2Sガス25が導出され、コンデンサ26により水蒸気22が凝縮され、分離ドラム27にて水28が分離され、CO及びH2Sガス29が系外に放出されて回収される。分離ドラム27にて分離された水28は吸収液再生塔14の上部に供給される。
再生された吸収液(リーン溶液)12Bは、熱交換器16にてリッチ溶液12Aと熱交換されて冷却され、つづいてリーン溶液ポンプ32にて昇圧され、さらにリーン溶液クーラ33にて冷却された後、再び吸収塔13に供給され、吸収液12として再利用される。
【0022】
本実施例では、導入ガス11のCO2濃度を計測器41で計測し、その濃度に応じて、吸収塔に導入される再生されたリーン溶液12Bである吸収液12の導入位置を吸収塔の高さ方向のいずれかに変更する制御を制御手段42により行うようにしている。
切り替えの際には、制御手段42より、供給ラインL2-1、L2-2、L2-4に介装されたバルブV1〜V4の開閉度を調整しつつ行うようにしている。
本実施例では吸収塔13を複数の充填層13A〜13Dを用いているので、その充填高さを変更している。なお、吸収塔における導入ガス11と吸収液12との接触方法を棚段方式とする場合はトレイ段数の高さを変更するようにすればよい。その他のスプレー塔方式や液柱塔方式とする場合には、吸収塔13内の供給位置(高さ)を変更するようにすればよい。
【0023】
[試験例1]
図6は、本試験例に係るCO2及びH2Sを含むガスの回収システムの吸収塔部分の模式図である。
ここで、図6においては、吸収塔13内の充填層を8段13A〜13Hとし、計測器41で計測した結果、CO2濃度が低い場合(10mol%−dry以下)、には4段から塔頂部側とするのが好適である。
また、計測器41で計測した結果、CO2濃度が高い場合(10mol%−dryを超える)、には4段から下方(底部)側とするのが好適である。
【0024】
これは、吸収塔13の高さが低い場合、所定量のH2Sを回収できない場合があるため、所定量のH2Sを吸収するだけの高さが最低限必要となるが、吸収塔13を高くしすぎると、逆にH2Sの吸収性が低下することとなる。
図7−1〜図7−3に、CO2回収量(左縦軸)/出口ガス中H2S濃度(右縦軸)と吸収塔の高さ位置(段数)との関係を示す。
図7−1は、導入ガス11中のCO2濃度が6mol%−dryの場合では、高さによる出口ガス中のH2S濃度(右縦軸)の変化は少しであった。
ところが、導入ガス11中のCO2濃度が6mol%−dryから8mol%−dry(図7−2)、10mol%−dry(図7−3)と上昇するにつれて、H2Sの放散量が増大する傾向となることが判明した。
よって、例えば棚段の場合においては、10mol%−dryのCO2濃度が高い場合、8段の棚段を用いた際には、4段程度の高さに位置を変更することが好適であることが判明した。
【0025】
これは、吸収塔13において、H2Sの吸収のほかにCO2を吸収する発熱反応に起因することに伴う吸収液12の温度上昇により、H2Sの飽和吸収量が低下することによるものである。
【0026】
そこで、本実施例のように、導入ガス11のCO2濃度を計測する計測器41を設けると共に、再生吸収液であるリーン溶液12Bを導入する第2の供給ラインL2を複数(図1に示す実施例では3つ)分岐して供給ラインL2-1、L2-2、L2-3とすると共に、その分岐先の導入口13b-1〜13b-3を吸収塔13の高さ方向に沿って設け、高さ方向の各位置に吸収液を状況に応じて供給するようにすることで、H2Sが効率的に除去できるように、吸収液12(リーン溶液12B)の供給位置を適宜変更させるようにしている。
これにより、H2Sの吸収量を所望に維持すると共に、CO2の回収量を可能な限り低く保つようにすることができる。
また、吸収液12を供給する位置を一つの位置に固定せず、多段の位置に供給するようにし、それぞれの供給位置における吸収液流量をそれぞれ変化させるようにしてもよい。
【0027】
本実施例によれば、導入ガス11のCO2濃度に応じて、吸収塔13に導入する吸収液12(リーン溶液12B)の供給位置を適宜変更させることで、H2Sの回収量を満足しつつ、CO2の回収量を極力低くすることができることとなる。
すなわち、導入ガス11中のCO2濃度に応じて、吸収塔13に導入する吸収液12(リーン溶液12B)の供給位置を適宜変更させることで、H2SとCO2とのを選択分離性の向上を図ることができる。
【0028】
なお、本実施例では吸収液の分岐を4本として4箇所の導入する場合や、試験例では吸収液の分岐を5本として5箇所の導入する場合について、説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、吸収塔13の容積及び高さに応じて適宜変更するようにすればよい。
【実施例2】
【0029】
本発明による実施例に係るCO2及びH2Sを含むガスの回収システムについて、図面を参照して説明する。図2は、実施例2に係るCO2及びH2Sを含むガスの回収システムの概略図である。なお、図1に示す実施例1の構成と同様の構成については同一の符号を付してその説明は省略する。
図2に示すように、本実施例に係るCO2及びH2Sを含むガスの回収システム10Bは、実施例1に係るCO2及びH2Sを含むガスの回収システム10Aにおいて、前記計測器41による導入ガス11中のCO2濃度に応じて、前記吸収塔13と前記再生塔14との吸収液の循環量を変化させる制御を制御手段42により行い、リーン溶液ポンプ32の流量を調節する制御を制御手段42により行い、吸収液12の循環量を変化させるようにしている。
【0030】
すなわち、導入ガス11中のCO2濃度に応じて、吸収塔13の例えば充填高さ、棚段の場合はトレイ段数等の高さを変更するのに加え、吸収塔13に導入する吸収液量をさらに変化させるようにしている。
また、吸収塔13の高さは一定として、吸収液量をさらに変化させるようにしてもよい。
このように、導入ガス11中のCO2濃度に応じて、吸収液流量を変化させることで、H2Sの回収量を満足しつつ、CO2の回収量を極力低くすることができることとなる。
【実施例3】
【0031】
本発明による実施例に係るCO2及びH2Sを含むガスの回収システムについて、図面を参照して説明する。図3は、実施例3に係るCO2及びH2Sを含むガスの回収システムの概略図である。図4及び図5は、各々実施例3に係る他のCO2及びH2Sを含むガスの回収システムの概略図である。なお、図1に示す実施例1の構成と同様の構成については同一の符号を付してその説明は省略する。
図3に示すように、本実施例に係るCO2及びH2Sを含むガスの回収システム10Cは、実施例1に係るCO2及びH2Sを含むガスの回収システム10Aにおいて、前記計測器41による導入ガス11中のCO2濃度に応じて、前記吸収塔13と前記再生塔14との吸収液12のリーン溶液クーラ33における冷却量を変化させる制御を制御手段42により行い、CO2濃度が高い場合には、吸収液12の温度を下げるようにしている。
【0032】
また、図4に示す実施例に係るCO2及びH2Sを含むガスの回収システム10Dに示すように、吸収塔13の各位置から吸収液12を抜き出し、再度導入する抜出・導入ラインL11〜L13を設け、各ラインに冷却器35−1〜35−3を介装して、CO2濃度が高い場合には、吸収液12の温度を下げるにしてもよい。
【0033】
[試験例2]
図8−1、図8−3に、CO2回収量(左縦軸)/出口ガス中H2S濃度(右縦軸)と吸収塔の出口液温度との関係を示す。
図8−1は、導入ガス11中のCO2濃度が6mol%−dryの場合では、温度変化があっても高さによる出口ガス中のH2S濃度(右縦軸)の変化は少しであった。
ところが、導入ガス11中のCO2濃度が6mol%−dryから8mol%−dry(図8−2)、10mol%−dry(図8−3)と上昇するにつれて、出口液温度の温度上昇があると、H2Sの放散量が増大する傾向となることが判明した。
【0034】
これは、吸収塔13において、H2Sの吸収のほかにCO2を吸収する発熱反応に起因することに伴う吸収液12の温度上昇により、H2Sの飽和吸収量が低下することによるものである。
【0035】
そこで、本実施例のように、導入ガス11のCO2濃度を計測する計測器41を設けると共に、再生吸収液であるリーン溶液12Bの導入温度をリーン溶液クーラ33により冷却させることで、H2Sの吸収量を所望に維持すると共に、CO2の回収量を可能な限り低く保つようにすることができる。
【0036】
また、図5に示す実施例に係るCO2及びH2Sを含むガスの回収システム10Eに示すように、吸収塔13の各位置から吸収液12を抜き出し、再度導入する抜出・導入ラインL11〜L13を設け、抜出ライン及び導入ラインを集合させて、冷却器35を一台としたものである。
【0037】
このように、導入ガス11中のCO2濃度に応じて、吸収液12の温度を変化させることで、H2Sの回収量を満足しつつ、CO2の回収量を極力低くすることができることとなる。
【産業上の利用可能性】
【0038】
以上のように、本発明に係るCO2及びH2Sを含むガスの回収システム及び方法によれば、CO2との吸収とは別にH2Sを熱エネルギーの面で効率的、かつ選択的に分離することができ、例えば石炭やバイオマス等をガス化炉によりガス化して得られるガス化ガスに含まれるH2Sを効率よく回収することができる。
【符号の説明】
【0039】
10A〜10E CO2及びH2Sを含むガスの回収システム
11 導入ガス
12 吸収液
12A リッチ溶液
12B リーン溶液
13 吸収塔
14 吸収液再生塔(再生塔)
15 リボイラ
16 熱交換器
41 計測器
42 制御手段


【特許請求の範囲】
【請求項1】
CO2及びH2Sを含むガスを導入ガスとし、該導入ガスとCO2及びH2Sを吸収する吸収液とを接触させて前記導入ガスからCO及びH2Sを吸収させる吸収塔と、
CO及びH2Sを吸収した吸収液を吸収塔の塔底部から抜き出し、第1の供給ラインを介して塔頂部より導入し、リボイラの熱によりCO及びH2Sを放出させて吸収液を再生する吸収液再生塔と、
再生された再生吸収液を吸収塔側に戻す第2の供給ラインと、
前記導入ガスのCO2濃度を計測する計測器とを具備すると共に、
前記第2の供給ラインを複数分岐し、その分岐先を吸収塔の高さ方向に沿って設けると共に、
前記計測器による導入ガス中のCO2濃度に応じて、再生された吸収液の導入位置又は導入量のいずれか一方又は両方を吸収塔の高さ方向のいずれかに変更する制御を行うことを特徴とするCO2及びH2Sを含むガスの回収システム。
【請求項2】
請求項1において、
前記計測器による導入ガス中のCO2濃度に応じて、前記吸収塔と前記吸収液再生塔との吸収液の循環量を変化させる制御を行うことを特徴とするCO2及びH2Sを含むガスの回収システム。
【請求項3】
請求項1又は2において、
前記吸収塔からCO及びH2Sを一部吸収した吸収液を外部に抜き出すと共に、導入する抜出・導入ラインと、
該抜出・導入ラインに介装され、抜き出した吸収液を冷却する冷却器とを具備することを特徴とするCO2及びH2Sを含むガスの回収システム。
【請求項4】
CO2及びH2Sを含むガスを導入ガスからCO2及びH2Sを回収する吸収塔と、CO及びH2Sを吸収した吸収液からCO及びH2Sを放出させて吸収液を再生する吸収液再生塔とを用いたCO2及びH2Sを含むガスの回収方法であって、
前記導入ガス中のCO2濃度を計測し、その計測濃度に応じて、再生された吸収液の導入位置又は導入量のいずれか一方又は両方を吸収塔の高さ方向のいずれかに変更することを特徴とするCO2及びH2Sを含むガスの回収方法。
【請求項5】
請求項4において、
計測器による導入ガス中のCO2濃度に応じて、前記吸収塔と前記吸収液再生塔との吸収液の循環量を変化させることを特徴とするCO2及びH2Sを含むガスの回収方法。
【請求項6】
請求項4又は5において、
吸収塔からCO及びH2Sを一部吸収した吸収液を外部に抜き出し、抜き出した吸収液を冷却した後、吸収塔に戻すことを特徴とするCO2及びH2Sを含むガスの回収方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7−1】
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【図7−2】
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【図7−3】
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【図8−1】
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【図8−2】
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【図8−3】
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【公開番号】特開2012−110836(P2012−110836A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−261841(P2010−261841)
【出願日】平成22年11月24日(2010.11.24)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】