説明

CVD装置

【課題】優れた膜厚均一性を確保することができ、簡単な構造であってかつ安価なCVD装置を提供する。
【解決手段】内部に基板設置部25を備えるチャンバー14の内部に基板処理用のガスを供給して上記基板設置部材25にセットされる基板11に処理を施すガス導入部24を有し、ガス導入部24が、複数の管1とこれら管1を連通させる管連通・支持部材4とを有するとともに各管1に多数の孔2が設けられ、かつ、上記基板設置部材25のガス導入部24とは反対側にコンダクタンス調整のための開口板(コンダクタンスプレート)17が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウエハ、液晶用基板、プラズマディスプレイ用基板等の基板に対して成膜を行うCVD装置に関わる。
【背景技術】
【0002】
CVD装置は、密閉し真空排気された反応室内に供給した材料ガスを、容量結合型プラズマ或いは誘導結合型プラズマによって活性化処理し、その活性化した材料ガスを反応室内に配置させてある基板上に堆積させることで成膜することができるように構成されている。
【0003】
ところで、基板に到達する材料ガス量に基づき堆積量、つまり膜厚が影響を受ける。したがって、膜厚を均一にするためには、材料ガスを基板上均一に堆積させることが重要であり、その為に色々な試みがなされている(特許文献1参照)。
【0004】
特許文献1に記載されている従来の装置においては、ガスの導入を多数の細孔を設けたシャワープレート110によって行い、基板に堆積せしめる材料の量の均一化を図る構成としている。具体的には、図18に示すように、チャンバー内へガスを供給するシャワープレート110を備える。そのシャワープレート110は、プレート111とその上の隙間板112との間で通路113を形成し、その下側に多数の吹出口114を設けた構成で、吹出口114はプレート111に開けられた孔116と、その孔116よりも小さな径を有し、前記孔116に挿入された円柱115との間に形成される空間により形成されている。
【特許文献1】特開平11−297672号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した特許文献1による場合には、プレート111に開けられた孔116に円柱115を挿入した構造となっているので、構造が複雑になってしまうという難点があった。また、ガス噴き出し用の孔が設けられる部材は、一般にアルミナ等の高価な難切削材が用いられ、上記プレート111等の板材に上述した吹出口114を加工する場合には、孔あけ加工に失敗すると損害が大きくなり、作り直しに伴い非常に高価になるという不都合があった。
【0006】
本発明の目的は、優れた膜厚均一性を確保することができ、しかも簡単な構造であってかつ安価なCVD装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1の発明のCVD装置は、内部に基板設置部を備えるチャンバーの内部に基板処理用のガスを供給して上記基板設置部にセットされる基板に処理を施すガス導入部を有し、該ガス導入部が、複数の管とこれら管を連通・支持する管連通・支持部材とを有するとともに各管に多数の孔が設けられた構成とされ、かつ、上記基板設置部のガス導入部とは反対側にコンダクタンス調整を行う多数の貫通孔を有する開口板が設けられていることを特徴とする。
【0008】
請求項2の発明のCVD装置は、請求項1に記載のCVD装置において、前記ガス導入部と前記開口板とで囲まれた領域に前記基板設置部が設けられていることを特徴とする。
【0009】
請求項3の発明のCVD装置は、請求項1または2に記載のCVD装置において、前記ガス導入部が2または3以上設けられていることを特徴とする。
【0010】
請求項4の発明のCVD装置は、請求項1乃至3のいずれか一つに記載のCVD装置において、チャンバー内であって前記ガス導入部に連通するガス通路に排気バルブが設けられたことを特徴とする。
【0011】
請求項5の発明のCVD装置は、請求項1乃至4のいずれか一つに記載のCVD装置において、前記チャンバー内に、ガス導入部、基板設置部及び開口板がこの順序で上側から設けられ、開口板は周縁が上側に向けて突出するように形成され、この開口板には、これを上下させるリフターが設けられていることを特徴とする。
【0012】
請求項6の発明のCVD装置は、請求項5に記載のCVD装置において、前記リフターは、開口板の上下動に伴って基板設置部も上下動させる構成となっていることを特徴とする。
【0013】
請求項7の発明のCVD装置は、請求項1乃至4のいずれか一つに記載のCVD装置において、前記チャンバー内に、ガス導入部、基板設置部及び開口板がこの順序で下側から設けられ、開口板は周縁が下側に向けて突出するように形成され、この開口板には、これを上下させる昇降部材が設けられていることを特徴とする。
【0014】
請求項8の発明のCVD装置は、請求項7に記載のCVD装置において、前記ガス導入部と前記基板設置部との間に、前記基板の一部を覆うマスクが設けられることを特徴とする。
【0015】
請求項9の発明のCVD装置は、請求項5乃至8のいずれかに記載のCVD装置において、排気穴が前記基板設置部のガス導入部とは反対側のチャンバー部分に配置されていることを特徴とする。
【0016】
請求項10の発明のCVD装置は、請求項9に記載のCVD装置において、前記排気穴が、基板設置部のガス導入部とは反対側に複数配置されていることを特徴とする。
【0017】
請求項11の発明のCVD装置は、請求項9に記載のCVD装置において、前記排気穴が複数位置に配置されていて、各排気穴の排気量が独立して調整可能となっていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
請求項1及び2の発明による場合には、ガス導入部に多数の孔が設けられているのでガス導入部付近でのガス分布を均一化でき、しかも、基板設置部が開口板で覆われているので基板設置部近傍を流れるガス分布も均一化でき、この結果、優れた膜厚均一性を確保することができる。また、管に孔をあけるだけでよく、簡単な構造にすることができる。更に、孔あけ加工の対象が複数の管であるので、孔あけ加工を失敗しても管交換で対応することが可能となり、管に高価な材料を用いていても、結果として安価なものとすることが可能になる。
【0019】
請求項3の発明による場合には、2または3以上の種類の基板処理用ガスをチャンバー内に供給することが可能となる。
【0020】
請求項4の発明による場合には、排気バルブを開けると、ガス導入部内とガス導入部に繋がる配管内とをチャンバーに連通させ得、その結果、ガス導入部内と配管内に残っているガスを、チャンバー内へ迅速に排気させることが可能になる。その結果、チャンバー内のガス排気時間を大幅に削減できるので、CVD装置の生産性を向上することができる。
【0021】
請求項5の発明による場合には、リフターにより開口板が上下するので、その上限位置のときにチャンバー内面またはその近傍部分の部材に開口板の周縁の上端が当接して、この周縁が基板設置部を包囲し、一方、下限位置に開口板を降下させると基板設置部の横側を開放させるようにすることができる。
【0022】
請求項6の発明による場合には、リフターによる開口板の上下動に伴って基板設置部の高さが上下するので、開口板が下限位置に降下したときにおける基板設置部の横方向位置に、基板設置部へ基板をセット及び排出する手段を配置しておくことで、横側が開放状態にされた基板設置部への基板のセットと排出を機能的に行うようにさせ得る。また、開口板の上下と基板設置部の上下を同一の機構が行うので装置価格を低く抑えることができる。
【0023】
請求項7の発明による場合には、昇降部材により開口板が上下するので、その下限位置のときにチャンバー内面またはその近傍部分の部材に開口板の周縁の下端が当接して、この周縁が基板設置部を包囲し、一方、開口板を上昇させると基板設置部の横側を開放させるようにすることができる。
【0024】
請求項8の発明による場合には、基板の下面側に形成される薄膜をマスクの形状に応じた所望形状に形成することができる。
【0025】
請求項9の発明による場合には、ガス導入部、基板設置部、開口板及び排気穴が、この順に上側からまたは下側から同軸上に配置されているので、ガス導入部からのガスが、基板設置部に左右方向ではなく下向きにまたは上向きに流れる状態にすることができ、ガス流れの不均一性を最小限に抑えることが可能になる。
【0026】
請求項10の発明による場合には、隣合う排気穴どうしの間であって基板直下の空間を利用することが可能となり、その空間に、例えば基板にバイアス電位を印加するための整合器などを配置することができる。
【0027】
請求項11の発明による場合には、排気穴に繋がる排気管に設けられる開閉弁の開度を調整すること、或いは排気穴に繋がる排気管に設けられる排気ポンプの回転数を調整することにより、基板上でのガス分布を調節することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下に、本発明を具体的に説明する。
【0029】
(第1実施形態)
図1は本発明の第1実施形態に係るCVD装置を示す正面断面図で、図2はそのCVD装置のチャンバー部分を示す正面断面図、図3は図2の側面断面図である。
【0030】
このCVD装置は、内部が高真空に調節されるチャンバー14を有し、チャンバー14の上部は透過窓8を有する蓋5で覆われていて、底部には高真空排気のための排気穴23aが設けられている。透過窓8の上には、ブラズマ発生用のコイル13が設けられ、透過窓8の下側であってチャンバー14内には、複数、図示例では2つのガス導入部24が設けられている。ガス導入部24の下方には、角形の基板11が上に配置される基板設置部材25が設けられ、基板11には整合器12によりバイアス電位が印加されるようになっており、コイル13に与えられる高周波電源によりチャンバー14内にブラズマが発生する。更に、基板設置部材25の下側には、開口板としてのコンダクタンスプレート17が設けられ、これら基板設置部材25及びコンダクタンスプレート17は、リフター18により上下動するようになっている。なお、上記基板11としては、上記角形の他の形状のもの、例えば円形等も用いられる。
【0031】
上記基板設置部材25の中央部の下方には、前記排気穴23aが配され、その排気穴23aには排気管23が接続されており、排気管23の途中には開閉弁21が設けられ、その開閉弁21よりも下側には排気ポンプ20が設けられている。また、チャンバー14の側面には、開閉蓋22が設けられ、その開閉蓋22を開けると、基板セット・排出手段15により基板11のセットと排出とが行われるようになっている。なお、基板セット・排出手段15としては、本実施形態では水平方向に進出・退入する腕15aを有する。
【0032】
上記2つのガス導入部24の一方(上側)は、図4に示すように、内部にガス通路を有する一対の管連通・支持部材4と、これら管連通・支持部材4の両端同士を連結する連結部材4aと、両管連通・支持部材4に両端が接続された複数、図示例では5本の管1とを備え、各管1の両端は管連通・支持部材4内のガス通路と連通連結され、各管1には多数の孔2が形成されている。このガス導入部24は、例えば石英、或いはアルミナ等のセラミックスなどの材料で形成されている。
【0033】
上記孔2の配置は、例えば基板設置部材25上にセットされる基板11に対してほぼ均一となるように配されており、孔2の向きは水平方向となっている。但し、基板設置部材25上にセットされる基板11上へ成膜される量を均一にするために、例えば基板11の中央に相当する位置の孔2を粗に、基板11の外周に相当する位置の孔2を密に配置することもある。孔2の方向は水平方向に限定されない。例えば、プロセスを行う圧力が1Paのように比較的高い場合は、孔2から噴出したガスの分子は平均自由行程6.8mm移動する間に他のガス分子と衝突することによりその方向を変えて混合されるので、どの方向を向いていても違いはない。圧力が極端に低くガスが希薄な条件でプロセスが行われることは少ないが、圧力が低い場合に孔2を基板11に対面する方向に向けると孔2の分布が基板11上の成膜量に直接影響を及ぼすことになる。なお、管1と管連通・支持部材4との連結部には、Oリング9aが設けられている(図5参照)。また、図4及び図5中の3はガスの流れを示す。
【0034】
また、他方(下側)のガス導入部24は、管1の本数を4本としたことが異なるだけで、他は上述した一方のものと同様の構成となっている。但し、両ガス導入部24は、異なるガス供給源に接続され、異なるガスが供給されるようになっている。
【0035】
また、上記2つのガス導入部24は、図6及び図7に示すように、蓋5の内側にOリング9bを挟んでボルト27により取付けられている。なお、図6及び図7中の9は、種々のOリングである。
【0036】
上記コンダクタンスプレート17は、多数の貫通孔が均一に配置された板材、例えば金属板を使用して周縁が上側に向いて突出した皿状、例えば矩形皿状に形成したものである。また、基板設置部材25は、下側の基部25aの複数箇所、図示例では4箇所から上方に突出した突出部25bを有するもので、その突出部25bの上の基板設置部25cに基板が載置されてセットされる。これらコンダクタンスプレート17及び基板設置部材25は、上述したようにリフター18により上下動される。
【0037】
リフター18は、同期的に動く同じ構成のものが2つ同じ高さ位置に並設されており、その片方のリフター18は、図1、図8及び図9に示すように、一対の平行なリンク19の下端が駆動軸16となっていて、揺動駆動モータ16aにより各リンク19が揺動する(図3参照)。各リンク19の途中には基板設置部材25の基部25aが回動可能に支持され、各リンク19の上端にはコンダクタンスプレート17が回動可能に支持されている。このとき、コンダクタンスプレート17の支持位置が、基板設置部材25の支持位置に対し駆動軸16から離れているので、コンダクタンスプレート17の上下変化量D1は、基板設置部材25の上下変化量D2よりも大きい(図9参照)。具体的には、コンダクタンスプレート17が上限位置のときに、矩形の上縁が基板設置部材25よりも上に位置して管連通・支持部材4及び連結部材4aの下面に当接し、基板設置部材25を包囲する。一方、リフター18により降下せしめられると、コンダクタンスプレート17の上縁が基板設置部材25よりも降下し、下限位置まで降下すると、基板設置部材25の横側を開放し、前記基板セット・排出手段15による基板11のセットと排出とを可能とする(図1及び図8参照)。なお、突出部25bは、リフター18による基板設置部材25の上下動に伴い、コンダクタンスプレート17に設けた切欠き穴(図示せず)を出入りするようになっていて、突出部25bの長さは、コンダクタンスプレート17が下限位置にあるとき、そのコンダクタンスプレート17の上縁よりも突出部25bの上端が高くなる寸法に設定される。
【0038】
上記チャンバー14内には、図6及び図7に示すように、その側面に設けたガス供給用の配管7を介して図示しないガス供給源からの基板処理用ガスが供給される。チャンバー14内に供給されたガスは、ガス通路26上に設けた排気バルブ6を経て片方のガス導入部24へ与えられる。なお、もう片方のガス導入部24も同様な構成でガスが与えられるようになっている。
【0039】
上記排気バルブ6は、ガス通路26に設けた開口26aを開閉するように構成され、図6に示す閉状態のとき、排気バルブ6の周囲の隙間をガス通路としてガスをガス導入部24に供給する。一方、図7に示す開状態のとき、ガス導入部24内及びガス通路26(配管7を含む)内をチャンバー14に連通させ得、その結果、ガス導入部24内とガス通路26(配管7を含む)内に残っているガスを、チャンバー14内へ迅速に排気させ得る。
【0040】
したがって、この第1実施形態に係るCVD装置による場合には、ガス導入部24に設けられた孔2が均等に多数配置されているのでガス導入部24付近でのガス分布を均一化でき、しかも、基板設置部25cが多数の貫通孔を有するコンダクタンスプレート17で覆われているので基板設置部25c近傍を流れるガス分布も均一化できる。
【0041】
ここで、コンダクタンスプレート17の働きにつき説明する。本実施形態に係るCVD装置からコンダクタンスプレート17を省略すると、ガスが排気穴23aへ最短経路を経て流れ込む状態となり、基板設置部25cにガス流れの多い部分と少ない部分とが発生し、例えば基板設置部25cにセットした基板11に対しては基板中央部よりも端部の方がガスが多く流れて膜厚が厚くなる。これに対し、コンダクタンスプレート17を用いる場合には、ガス流れの多い部分と少ない部分とを分散させることが可能となる。よって、コンダクタンスプレート17に設ける貫通孔の密度を、ガス流れの多い部分では低くし、一方ガス流れの少ない部分では高くすることで、上述したように基板設置部25c近傍を流れるガス分布も均一化できる。よって、前記貫通孔の配置は、均等にする必要性はなく、ガス分布の均一化を図るために、貫通孔の位置を不均一にすることもある。
【0042】
図10は、ガス導入部24・基板11・コンダクタンスプレート17・排気穴23aに至るガスの流線10を示す図である。各流線10がほぼ同じ長さになっているので、部分的なガス流量のバラツキが小さく、また流路の長さについても各部位間でのバラツキが小さいので、基板11上に堆積される膜の質の面でも高い均一性が達成される。この結果、優れた膜厚均一性を確保することができる。
【0043】
また、この第1実施形態による場合には、管1に孔2をあけるだけでよく、簡単な構造にすることができ、しかも、孔あけ加工の対象が複数の管1であるので、孔あけ加工を失敗しても管交換で対応することが可能となり、管1に高価な材料を用いていても、結果として安価なものとすることが可能になる。
【0044】
また、コストに関して、第1実施形態と特許文献1(特開平11−297672:以下同様)とを比較すると、第1実施形態の場合には、以下のような効果を有する。特許文献1ではチャンバーの上部にガスの活性化手段としてのマイクロ波放出部を有し、大気中に置かれるマイクロ波放出部とチャンバーとの境界を、電気的には不導体であるセラミックスで構成し、マイクロ波の活性化の効果が最も高い(プラズマの密度の高い)この境界部からガスを放出せしめようとしている。特許文献1では直径350mmのアルミナで作ったシャワープレート110でその境界を構成している(図18参照)。境界の一方は大気圧、他方は真空になっているので、大気圧に相当する差圧に耐える強度を持たせる必要がある。仮に強度設計上の安全率10を確保させるようにすると、板厚は14mm以上が必要となる。このシャワープレート110に加工するガスを導入するための孔116は深さ14mmが必要になるが、深さ14mmでは例えば直径0.5mmの孔をあけることはできない。その理由は、直径の28倍の細長いドリルでアルミナ等の難切削材に例えば200箇所も加工することは不可能だからである。特許文献1は直径2.1mmの太い孔116をあけて中を直径2mmの円柱115で埋めることによって開口面積を調整して実質上直径0.5mm相当の孔を得るための技術と言える。しかし、アルミナに対して直径2.1mm、深さ14mmの細孔の加工を200箇所に対して行うだけでも大きな費用がかかる。シャワープレート110にかかる費用の80%以上が細孔の加工に費やされると推定される。これに対して、第1実施形態のガス導入部においては、孔を管にあける構成である。大気圧分の差圧を受ける管1の強度設計を、材質をアルミナ、安全率を10、外径を6.35mmとして行うと、肉厚は計算上0.011mmでよいことになる。細孔の加工深さは計算上1/1000以下で済み、加工コストは極めて低くなる。実際には、管は肉厚0.5mm程度のものが使われるが、それでも細孔の加工深さは1/28になる。深い孔の加工と比べて高速な加工が可能となるので、費用の計算のベースになる加工時間は1/28より更に短くなる。アルミナを材料とした試算を行ってきたが、他の材料においても同様である。これまでの特許文献1に関する説明において、チャンバー内と大気との境界をシャワープレート110で構成するとしてきたが、実際には前記境界に隙間板(101)とシャワープレート110とが配置されている。シャワープレート110は20mmの厚さとされており、強度計算を行うと、安全率は21.1となる。2枚の隙間板(101)とシャワープレート110とが設けられているが、隙間板(101)とシャワープレート110とには個別に大気圧と真空の差圧が負荷されるものと推定される。なお、シャワープレート110に対しては、多数の孔加工に伴う材料強度の低下が算入されて、一般的とされる安全率10の倍になっていると考えられる。特許文献1と第1実施形態とは、絶縁材料によってチャンバー上部を隔離すること、及び境界領域にガスを導入することに関しては同じように目的を達成しているが、ガス導入のための細孔の加工費用及び絶縁材料の費用で大きな差がある。
【0045】
また、第1実施形態においては、上述したようにガス導入部24が蓋5の内側にOリング9bを挟んでボルト27により取付けられており、しかもガス導入部24と蓋5との間では、前記差圧分をシールすればよいので、Oリング9bの使用のみで対処でき、これによりメンテナンス時のガス導入部24の取付け・取外し作業は大幅に軽減される。また、同作業は、特許文献1のように大きく・重いガス導入部と較べて非常に簡単になる。部品の洗浄では、狭い部分の洗浄が問題になる。特許文献1では直径2.1mmの孔にはめ込まれた円柱115及び雌ネジ(206)を、プロセス中に生成した副生成物が付着した状態で200セット分取り外して洗浄作業の開始が可能となる。一方、第1実施形態においては、管を外すだけで洗浄を行うことができ、交換用の管を準備することも容易である。
【0046】
更に、第1実施形態において、2つのガス導入部24に異なるガスの供給が可能となっていので、混合すると反応する2種類のガスをチャンバーに供給することが可能である。
【0047】
(第2実施形態)
図11は、本発明の第2実施形態に係るCVD装置を示す正面断面図であり、図12はそのCVD装置のチャンバー内を示す平面図である。
【0048】
この第2実施形態においては、チャンバー14の底面には、基板設置部25cの中央部の真下から偏位させて排気穴23aが2つ配置され、各排気穴23aにはそれぞれ排気管23が接続されていて、各排気管23の途中には開閉弁21が設けられ、その開閉弁21よりも下側には排気ポンプ20が設けられている。つまり、排気穴23a、排気管23、開閉弁21及び排気ポンプ20が2系統設けられている。他の部分の構成は、図1及び図2に示すものと同一である。
【0049】
この第2実施形態の場合には、隣合う排気穴23aどうしの間であって基板11直下の空間Aを利用することが可能となり、その空間Aに、例えば基板11にバイアスをかけるための整合器12を配置することができる。また、排気穴23aが2つ設けられているので、ガス導入部24・基板11・コンダクタンスプレート17・排気穴23aに至るガスの流線は、上述した排気穴23aが1つの場合よりも当然に短くなる。
【0050】
(第3実施形態)
図13は、本発明の第3実施形態に係るCVD装置を示す平面図であり、このCVD装置は排気穴23aを基板設置部25cの四隅下方に4つ装備している。なお、他の部分は、図1及び図2に示すものと同一に構成してある。
【0051】
この第3実施形態による場合には、4つある排気穴23aの排気性能を操作して基板上の所定部位膜厚を調整できる。例えば図13の基板の右上の部分の膜厚が薄い(厚い)場合は、右上の排気穴23aの排気量を増加(減少)させる。その排気量の増加(減少)は、開閉弁21の開度を上げる(下げる)、あるいは排気ポンプ20の回転数を上げる(下げる)等により行われる。
【0052】
(第4実施形態)
上述した各実施形態では基板の上方にガス導入部を配置した構成について適用しているが、本発明はこれとは逆に基板の下方にガス導入部を配置した構成についても適用することができる。
【0053】
図14は本発明の第4実施形態に係るCVD装置を示す側面断面図であり、図15はそのCVD装置のチャンバー部分を示す側面断面図、図16はチャンバー内に設けられた基板設置部材およびマスクホルダーなどの説明図(斜視図)である。なお、図16中のコンダクタンスプレート33とガス導入部24は模式的に表している。また、図14〜図16においては第1実施形態と同一部分には同一の番号を付している。
【0054】
このCVD装置は、第1実施形態のCVD装置とは上下逆の構成であり、チャンバー14の天井部に高真空排気のための排気穴23aが設けられ、チャンバー14の底部の下側には、ブラズマ発生用のコイル13が設けられ、コイル13の上側であってチャンバー14内には、ガス導入部24が設けられている。ガス導入部24の上方には、基板11を保持する基板設置部材30が昇降可能に設けられ、基板設置部材30の下側にはマスク31を保持するマスクホルダー32が昇降可能に設けられており、基板設置部材30の上側にはコンダクタンスプレート33が昇降可能に設けられている。そして、ガス導入部24から導入されたガスは、基板11・コンダクタンスプレート33・排気穴23aに至る順序で下方から上方へ向けて流れるように構成されている。
【0055】
チャンバー14の側面には、開閉蓋22が設けられ、その開閉蓋22を開けると、前記基板セット・排出手段(15)に備わった腕15aにより基板11およびマスク31のセットと排出とが行われるようになっている(図16参照)。
【0056】
基板設置部材30は、例えば4箇所に下端が連結された昇降用のシリンダ34により昇降可能となっている。基板設置部材30の下側に配されるマスクホルダー32は、例えば4箇所に下端が連結された昇降用のシリンダ35により昇降可能となっている。コンダクタンスプレート33は、前述したコンダクタンスプレート17とは同一の形状のもので、上下逆向きに配置され、つまり周縁を下向きにして配置され、上面に連結した昇降部材としてのシリンダ36を介して昇降可能となっていて、その下限位置においてコンダクタンスプレート33の下端33aがチャンバー14内の底面に当接し、かつ上昇させることで、下端33aが開閉蓋22よりも高くなる。
【0057】
このコンダクタンスプレート33には、上記シリンダ34、35、36のそれぞれを挿通させる挿通孔33bが形成され、また、基板設置部材30には、上記シリンダ35の途中を挿通させる挿通孔37が形成された構成となっている。この構成により、基板設置部材30、マスクホルダー32およびコンダクタンスプレート33は、それぞれ独立して昇降させ得る。
【0058】
これら基板設置部材30、マスクホルダー32およびコンダクタンスプレート33は、開閉蓋22から基板11およびマスク31が挿入されるため、以下のように昇降される。すなわち、基板設置部材30およびコンダクタンスプレート33を開閉蓋22よりも上方に移動させておき、開閉蓋22から腕15a上に載せて挿入されたマスク31を、マスクホルダー32を上昇させてすくい上げ、マスクホルダー32上にマスク31をセットする。その後、マスクホルダー32を所定高さにまで降下させる。続いて、基板設置部材30を開閉蓋22よりも下方に降下させておき、開閉蓋22から腕15a上に載せて挿入された基板11を、基板設置部材30を上昇させてすくい上げ、基板設置部材30上に基板11をセットする。その後、基板設置部材30を降下させ、マスク31の上面に基板11の下面が接触する状態にさせる。続いて、コンダクタンスプレート33を下限位置にまで降下させる。これにより基板11の下面に薄膜形成が可能な状態とされる。
【0059】
一方、薄膜形成後は、コンダクタンスプレート33を、その下端が開閉蓋22よりも十分高くなる位置まで上昇させ、基板設置部材30を開閉蓋22よりも少しだけ高い位置まで上昇させ、その後、腕15aをチャンバー14内に進出させ、基板設置部材30を降下させることで、腕15aの上に基板11を移動させて、腕15aの退入により基板11をチャンバー14から排出する。マスク31の交換や補修を行わない場合は、操作を終了する。一方、マスク31の交換等を行う場合は、基板設置部材30の場合と同様に、マスクホルダー32および腕15aを移動させることでマスク31を排出する。
【0060】
このように基板設置部材30およびマスクホルダー32を移動させることで基板11およびマスク31のセットと排出を行うため、各部材の形状および寸法を以下のように規制している。即ち、図16に示すように、基板設置部材30およびマスクホルダー32は、腕15aに対して上下動できるようにコの字状に形成する。また、基板11の幅をWとすると、基板設置部材30のコの字状開口部30aの幅W1を基板幅Wよりも少し短くして、基板11の周縁を基板設置部材30で保持できるようにする。また、基板設置部材30のコの字状開口部30aをマスク31が通るように、マスク31の幅W2は開口部30aの幅W1よりも少し短くする。また、マスクホルダー32のコの字状開口部32aの幅W3は、マスク幅W2よりも少し短くして、マスク31の周縁をマスクホルダー32で保持できるようにする。更に、腕15aの幅W4は、上記W、W1、W2、W3のうちで最も短いW3よりも短くし、マスク31および基板11の腕15aからのすくい上げや、逆への移動を可能とする。更に、基板設置部材30の開口部30aを介して基板11の下面と接触させ得るように、マスク31は、図17に示すようにマスク本体31aの下側に、マスク本体31aと同一外寸(共に幅W、長さL)の額縁状をした嵩上げ部材31bを取付け、かつ図16に示すようにマスクホルダー32はコの字状開口部32aの周縁を他の部分よりも盛上げた凸部32bを設けている。つまり、この嵩上げ部材31bの厚み寸法と凸部32bの高さ寸法とにより、基板11の周縁とマスクホルダー32との間に基板設置部材30が入り得るようにしている。なお、マスク本体31aには縦横に多数の開口部31cが設けられている。
【0061】
上記基板11には整合器12によりバイアス電位が印加されるようになっており、コイル13に与えられる高周波電源によりチャンバー14内にブラズマが発生する。上記排気穴23aには排気管23が接続されており、排気管23の途中には開閉弁(図示せず)が設けられ(図1参照)、その開閉弁よりも上側には排気ポンプ(図示せず)が設けられている。ガス導入部24および排気バルブ(図示せず)は、前述の実施形態と同様に構成されている(図6及び図7参照)。
【0062】
したがって、この第4実施形態に係るCVD装置による場合にも、第1実施形態と同様に、ガス導入部24に設けられた孔2が均等に多数配置されているのでガス導入部24付近でのガス分布を均一化でき、しかも、基板設置部25cが多数の貫通孔を有するコンダクタンスプレート33で覆われているので基板設置部25c近傍を流れるガス分布も均一化できる。特に、この第4実施形態による場合には、マスク31を基板11に対して設けているので、マスク31にあけた開口部31cの形状の薄膜を形成することが可能となるとともに、多数の開口部31cを設けていると、1つの基板(マザー基板)11から開口部31cの数に応じた基板を一遍に作製し得る。但し、開口部31cの数は1または2以上の任意の数が選ばれる。
【0063】
また、この第4実施形態においても、第2実施形態、第3実施形態のようなCVD装置の構成としてもよく、そのようにすることで各実施形態と同様の効果が得られる。
【0064】
更に、前述した第1〜第3実施形態においては基板に対してマスクを設ける構成とはしていないが、これら第1〜第3実施形態においても、第4実施形態のようにマスク31を基板11に対して設ける構成としてもよいことは勿論である。但し、第1〜第3実施形態に適用する場合には、基板の上側にマスクを配することとなる。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明の第1実施形態に係るCVD装置を示す正面断面図である(リフターを上げた状態を示す)。
【図2】図1のCVD装置のチャンバー部分を示す正面断面図である。
【図3】図2のチャンバー部分を示す側面断面図である。
【図4】図1のCVD装置に備わったガス導入部を示す平面図である。
【図5】図1のCVD装置に備わったガス導入部の端部を示す平面図(一部断面)である。
【図6】図1のCVD装置を側面断面図(部分拡大図)であり、排気バルブを閉じた状態を示す。
【図7】図1のCVD装置を側面断面図(部分拡大図)であり、排気バルブを開けた状態を示す。
【図8】図1のCVD装置を示す正面断面図であり、リフターを下げた状態を示す。
【図9】図1のCVD装置のリフター部分を拡大して示す正面断面図であり、リフターの上下動作を示す。
【図10】図1のCVD装置を示す正面断面図であり、ガスの流線を示す。
【図11】本発明の第2実施形態に係るCVD装置を示す正面断面図である。
【図12】図11のCVD装置におけるチャンバー内を示す平面図である。
【図13】本発明の第3実施形態に係るCVD装置を示す平面図である。
【図14】本発明の第4実施形態に係るCVD装置を示す側面断面図である。
【図15】図14のCVD装置におけるチャンバー部分を示す側面断面図である。
【図16】図14のCVD装置における基板設置部材およびマスクホルダーなどの形状および寸法の説明図(斜視図)である。
【図17】図14のCVD装置におけるマスクの構成を示す分解斜視図である。
【図18】特許文献1のガス導入部を示す正面断面図である。
【符号の説明】
【0066】
1 管
2 孔
3 ガスの流れ
4 管連通・支持部材
5 蓋
6 排気バルブ
7 配管(ガス通路)
8 透過窓
9、9a、9b Oリング
10 ガスの流線
11 基板
12 整合器
13 コイル
14 チャンバー
16 駆動軸
17、33 コンダクタンスプレート(開口板)
18 リフター
19 リンク
20 排気ポンプ
21 開閉弁
23 排気管
23a 排気穴
24 ガス導入部
25、30 基板設置部材
25c 基板設置部
26 ガス通路
31 マスク
32 マスクホルダー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に基板設置部を備えるチャンバーの内部に基板処理用のガスを供給して上記基板設置部にセットされる基板に処理を施すガス導入部を有し、該ガス導入部が、複数の管とこれら管を連通・支持する管連通・支持部材とを有するとともに各管に多数の孔が設けられた構成とされ、かつ、上記基板設置部のガス導入部とは反対側にコンダクタンス調整を行う多数の貫通孔を有する開口板が設けられていることを特徴とするCVD装置。
【請求項2】
請求項1に記載のCVD装置において、前記ガス導入部と前記開口板とで囲まれた領域に前記基板設置部が設けられていることを特徴とするCVD装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載のCVD装置において、前記ガス導入部が2または3以上設けられていることを特徴とするCVD装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか一つに記載のCVD装置において、チャンバー内であって前記ガス導入部に連通するガス通路に排気バルブが設けられたことを特徴とするCVD装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか一つに記載のCVD装置において、前記チャンバー内に、ガス導入部、基板設置部及び開口板がこの順序で上側から設けられ、開口板は周縁が上側に向けて突出するように形成され、この開口板には、これを上下させるリフターが設けられていることを特徴とするCVD装置。
【請求項6】
請求項5に記載のCVD装置において、前記リフターは、開口板の上下動に伴って基板設置部も上下動させる構成となっていることを特徴とするCVD装置。
【請求項7】
請求項1乃至4のいずれか一つに記載のCVD装置において、前記チャンバー内に、ガス導入部、基板設置部及び開口板がこの順序で下側から設けられ、開口板は周縁が下側に向けて突出するように形成され、この開口板には、これを上下させる昇降部材が設けられていることを特徴とするCVD装置。
【請求項8】
請求項7に記載のCVD装置において、前記ガス導入部と前記基板設置部との間に、前記基板の一部を覆うマスクが設けられることを特徴とするCVD装置。
【請求項9】
請求項5乃至8のいずれかに記載のCVD装置において、排気穴が前記基板設置部のガス導入部とは反対側のチャンバー部分に配置されていることを特徴とするCVD装置。
【請求項10】
請求項9に記載のCVD装置において、前記排気穴が、基板設置部のガス導入部とは反対側に複数配置されていることを特徴とするCVD装置。
【請求項11】
請求項9に記載のCVD装置において、前記排気穴が複数位置に配置されていて、各排気穴の排気量が独立して調整可能となっていることを特徴とするCVD装置。

【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2006−124829(P2006−124829A)
【公開日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−281572(P2005−281572)
【出願日】平成17年9月28日(2005.9.28)
【出願人】(301071413)株式会社 セルバック (9)
【Fターム(参考)】