説明

FM多重信号を処理する半導体装置

【課題】FM多重信号の処理システムにおけるメモリの使用量を低減する。
【解決手段】FM多重信号に重畳されたパケットに含まれる複数のキーのデータにおいて特定キーのデータの開始位置を求めるために必要なキー指定情報を記憶するROM36と、キー指定情報から特定キーのデータの開始位置を求めるキー位置算出部40と、パケットに含まれる複数のキーのデータにおけるキー位置算出部で求められた特定キーのデータの開始位置から特定キーのデータとして抽出するキー抽出部38と、を同一のパッケージ内に備える半導体装置とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、FM多重信号を処理する半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
FM多重放送は音声信号にディジタル信号のデータを重畳して、各種文字情報や図形の情報を含むFM多重信号として送信する。
【0003】
図5は、ディジタル信号のフレーム構成を示す。1フレームは272ブロックからなり、各ブロックの先頭には16ビットのBIC(Block Identification Code)が付加される。BICはフレーム同期及びブロック同期の再生に使用される。1ブロックのうち190ビットはデータを伝送するビットであり、残りの82ビットは横方向の誤り符合訂正のためのパリティを伝送するビットである。データを伝送する190ビットは、176ビットのパケットと14ビットのCRCから構成される。各パケットは、図6に示すように、32ビットのプリフィックスと144ビットのデータブロックとに分割される。プリフィックスは、図7に示すように、サービス識別、符号識別、情報終了、更新、データグループ番号、データパケット番号の情報を含んで構成される。図6に示すように、同一のサービス識別及び同一のデータグループ番号を有するプリフィックスに対応する複数のデータブロックが1つのデータグループ(データ群)を構成する。また、複数のブロック毎を組み合わせた単位毎にパリティブロックが設けられ、パリティブロックは縦方向の誤り符合訂正を行うために用いられる。1フレームを構成する272ブロックのうち190ブロックはデータを伝送するパケットであり、残りの82ブロックは縦方向の誤り符合訂正のためのパリティを伝送するパリティブロックである。
【0004】
このようなディジタル信号が多重されたFM多重信号を処理する際にキーを用いて処理を行う場合がある。キーは、例えば、その対象となる処理を行うことを許可する情報や暗号化されている情報を復号化するためのデータ等の情報である。このとき、キー自体をFM多重信号に含まれる情報の一部として送信し、必要に応じてFM多重信号からキーを抽出して用いる構成が採用されることがある。また、複数のキーを送信し、それら複数のキーから一つのキーを選択して用いる場合もある。
【0005】
図8は、従来のFM多重信号の処理システム100の構成を示す図である。処理システム100は、FM多重信号を受信する受信装置102及びキーを抽出するマイクロコンピュータ104を含んで構成される。
【0006】
受信装置102は、半導体装置(LSI)として構成され、アンテナ10によって受信されたFM多重信号に含まれるパケットを抽出する。受信装置102は、抽出されたパケットのうちキーを含むパケットをマイクロコンピュータ104へ出力する。FM多重信号に複数のキーを載せて送信し、そのうちの1つのキーを選択して処理に利用するシステムの場合、複数のキーのデータは複数のパケットに亘ることがあり、このような場合では受信装置102は、複数のパケットをパケット群としてマイクロコンピュータ104へ出力する。
【0007】
マイクロコンピュータ104は、受信装置102からキー情報を含むパケット群を受けて、すべてのパケット群のデータをデータメモリ12に格納する。具体的には、マイクロコンピュータ104に含まれるCPUコア14は、予めプログラムメモリ16に記憶されているキー指定情報を処理して、受信したパケット群において選択されるキーのデータが開始する位置を算出する。そして、抽出された開始位置及びデータ長で特定されるキーのデータをデータメモリ12から読み出して、FM多重信号の処理に利用する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平8−331076号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
複数のキーから一つのキーを選択して利用する場合であっても、マイクロコンピュータ104のデータメモリ12には複数のキーのデータを含む複数のパケットのデータのすべてを記憶させている。したがって、データメモリ12として大きなメモリ容量が必要となっていた。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の1つの態様は、所定ビット数から構成されるパケット毎に横方向誤り訂正符号が付され、前記横方向誤り訂正符号が付されたパケットを複数組み合わせた単位毎に縦方向誤り訂正符号が付され、前記単位を複数組み合わせたフレームとして時系列に送信されるFM多重信号、を前記パケットに含まれる複数のキーのうち1つの特定キーを用いて処理して出力する半導体装置であって、前記パケットに含まれる前記複数のキーのデータにおいて前記特定キーのデータの開始位置を求めるために必要なキー指定情報を記憶するキー指定情報記憶部と、前記キー指定情報から前記特定キーのデータの開始位置と前記特定キーのデータ長を求めるキー位置算出部と、前記パケットに含まれる前記複数のキーのデータにおける前記キー位置算出部で求められた前記特定キーのデータの開始位置から前記特定キーのデータとして抽出するキー抽出部と、を同一のパッケージ内に備えることを特徴とする半導体装置である。
【0011】
ここで、前記複数のキーのデータは、複数の前記パケットからなるパケット群に跨って送信され、前記キー指定情報は、前記パケット群における前記特定キーのデータの開始位置と前記特定キーのデータ長を示す情報であってもよい。
【0012】
また、前記キー抽出部は、前記パケット群のすべてを記憶することなく前記パケット群から前記特定キーのデータを抽出することが好適である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、FM多重信号の受信を行う半導体装置(LSI)においてFM多重信号の処理に利用される特定キーを抽出し、抽出された特定キーのみをメモリに格納・保持するので必要なメモリ容量を低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施の形態におけるFM多重信号の処理システムの構成を示す図である。
【図2】本発明の実施の形態における受信装置の構成を示す図である。
【図3】本発明の実施の形態における同期再生・誤り訂正回路の構成を示す図である。
【図4】本発明の実施の形態における特定キーの抽出処理を説明する図である。
【図5】FM多重信号のデータの構成を示す図である。
【図6】FM多重信号のデータの構成を示す図である。
【図7】FM多重信号のプリフィックスの構成を示す図である。
【図8】従来のFM多重信号の処理システムの構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本実施の形態におけるFM多重信号の処理システム200は、図1に示すように、受信装置202、マイクロコンピュータ204及び表示器206を含んで構成される。受信装置202は、送信されてくるFM多重信号を受信し、FM多重信号からパケット等を抽出して処理し、処理されたパケットの情報をマイクロコンピュータ204へ出力する。マイクロコンピュータ204は、受信装置202から受けた情報を表示器206で表示できるデータ形式に変更し、表示器206に表示させる。
【0016】
受信装置202は、図2に示すように、アンテナ20、フロントエンド22、局部発振回路26、検波回路28、マルチプレクサ30、LMSK(Level-controlled Minimun Shift Keying)復調回路32、同期再生・誤り訂正回路34、ROM36、キー抽出部38、キー位置算出部40、レジスタ42及び後処理部44を含んで構成される。
【0017】
受信装置202は、FM多重信号の処理システム200においてFM多重信号に含まれる複数のキーのうち処理システム200における処理に利用されるキーを特定キーとして抽出し、その特定キーを利用してFM多重信号に含まれるディジタル信号の情報に処理を施す。
【0018】
FM多重信号は、アンテナ20によって受信され、フロントエンド22に与えられる。そして、フロントエンド22ではPLL回路を含む局部発振回路26からの局部発振周波数信号によってIF信号に変換される。変換されたIF信号は、その後IF増幅および検波回路28で検波され、検波信号がマルチプレクサ30およびLMSK復調回路32に与えられる。マルチプレクサ30では検波信号に基づいて音声信号が生成される。音声信号は、マルチプレクサ30を介して左右の音声信号として出力される。LMSK復調回路32では、フレームを構成するパケットを含むディジタル信号が復調される。復調されたディジタル信号に含まれるパケットのデータは、同期再生・誤り訂正回路34で、BICに従って同期再生されると共にパリティコードに従って誤り訂正される。
【0019】
図3は、同期再生・誤り訂正回路34の構成を示す図である。同期再生・誤り訂正回路34は、図3に示すように、同期再生部50、RAMコントローラ52、フレームバッファRAM58、誤り訂正器54及びCRC回路56を含んで構成される。同期再生部50は、復調されたディジタル信号を受けて、BICを検出することによりブロック、フレーム及びパケットの先頭を検出して同期を確立する。RAMコントローラ52は、同期再生部50からディジタル信号を受けて、BICに基づいてフレームバッファRAM58の書き込み及び読み出しを制御する。誤り訂正器54は、RAMコントローラ52の制御によってフレームバッファRAM58から読み出された各パケットのデータをパリティコードに従い誤り訂正処理を行う。さらに、CRC回路56は、誤り訂正後の各パケットのデータをCRCに従い誤り検出する。誤り訂正処理された各パケットのデータは、フレームバッファRAM58に再び記憶され、フレームバッファRAM58からキー抽出部38及び後処理部44に出力される。
【0020】
キー抽出部38は、後処理部44で用いられる特定キーのデータを含むキーパケットを同期再生・誤り訂正回路34から受信し、受信したキーパケットから特定キーのデータを抽出する。具体的には、以下のようにキー抽出処理が行われる。
【0021】
まず、キー位置算出部40は、予めROM36に登録されているキー指定情報を読み出し、キー抽出部38で受信するキーパケットにおける特定キーのデータ開始位置を求める。キー指定情報は、キーパケットにおける特定キーのデータ開始位置を求めることができる情報を含めばよい。例えば、図4に示すように、複数のキーパケットNo.0〜No.nに跨って複数のキーNo.1〜No.mのデータが含まれているような場合、キーパケットNo.0〜No.nを1つのデータグループとして、その先頭位置から特定キー(キーk)のデータの開始位置までのビット長(データ長)L1が求められ、このL1を1つのキーパケットのビット長(L3)で除算を行うことにより、特定キーの含まれるキーパケットNoと、そのキーパケット内で何ビット目から特定キーが開始するかを求めることができる。特定キー(キーk)のビット長(データ長)L2分のサイズのデータをデータ開始位置から取得することにより、特定キー(キーk)のデータを特定して抽出することができる。
【0022】
キー抽出部38は、キー位置算出部40にて求められた特定キーのデータ開始位置を受けて、同期再生・誤り訂正回路34から受信したキーパケットから特定キーのデータを抽出する。
【0023】
ここで、同期再生・誤り訂正回路34から出力されるパケット群のうちキーの情報を含むキーパケットは、処理対象となる複数のパケットから構成されるフレームのうち何番目から何個のパケットをキーパケットとする等として予め定めておけば特定することができる。パケットの番号は、図6に示すように、各パケットの176ビットのデータのうち先頭の32ビットで表されるプリフィックス部に含まれており、キー抽出部38は、キー位置算出部40により、特定キーを含むパケットとして求められたパケット番号をプリフィックス部に含むパケットのみ、特定キーを含むパケットとして選択し、キーの抽出を行う。
【0024】
また、各パケットが32ビットのプリフィクスに続いてデータユニット識別コードを含む場合には、データユニット識別コードとしてパケットがキーのデータを示すようにしてもよい。すなわち、プリフィックスに続くデータユニット識別コードを用いて当該パケットのデータがキーのデータを含むことを判別することができる。
【0025】
図4に示すように、複数のキーパケットNo.0〜No.nに複数のキーNo.1〜No.mのデータが含まれている場合には、複数のキーパケットNo.0〜No.nを処理対象とする。キー抽出部38は、図4に示すように、キーパケットNo.0〜No.nにおける特定キー(キーk)のデータ開始位置(L1)から特定キーのデータ長(L2)分のデータを特定キー(キーk)のデータとして抽出する。キー抽出部38は、抽出された特定キー(キーk)のデータをレジスタ42に格納する。
【0026】
後処理部44は、同期再生・誤り訂正回路34から出力されるパケットに対して所定の処理を行った後にパケットをマイクロコンピュータ204に出力する。後処理部44は、例えば、復号化処理等の処理を行う。後処理部44は、キー抽出部38で抽出された特定キーを利用して処理を行う。すなわち、後処理部44は、レジスタ42に格納されている特定キーを読み出し、特定キーのデータに応じて入力されるパケットに対して論理的又は算術的な演算を施して復号化処理等の処理を行う。特定キーは、後処理部44での処理を許可(可能)又は禁止(不可能)とするための情報である。
【0027】
このとき、特定キー以外の情報を処理に用いてもよい。例えば、各パケットに含まれるパケット番号、データグループ番号、ブロック番号、フレーム番号等のデータに特定キーのデータを組み合わせてパケットのデータに対して処理を施してもよい。
【0028】
後処理部44における処理によって、FM多重信号に重畳されたディジタル信号の情報がマイクロコンピュータ204で扱えるデータとして出力される。
【0029】
マイクロコンピュータ204は、後処理部44で処理されたデータを受け、表示器206においてFM多重信号に含まれるディジタル信号の情報を表示できるデータ形式に変換して表示器206へ出力する。これにより、FM多重信号に含まれるディジタル信号の情報が表示器206にて表示される。
【0030】
以上のように、FM多重信号の受信を行う半導体装置において、FM多重信号に含まれる複数のキーのうち実際に利用される特定キーのみを抽出し、抽出された特定キーのみをメモリに格納・保持するので必要なメモリ容量を低減させることができる。また、これに伴って、半導体装置のチップ面積を削減することができる。
【0031】
また、受信装置に接続されるマイクロコンピュータにおける処理負担を軽減することができる。さらに、FM多重信号のディジタル信号の処理に用いられるキーの情報が受信装置外に漏れることがなくなり、処理システムとしてもセキュリティを向上させることができる。
【符号の説明】
【0032】
10 アンテナ、12 データメモリ、14 CPUコア、16 プログラムメモリ、20 アンテナ、22 フロントエンド、26 局部発振回路、28 検波回路、30 マルチプレクサ、32 LMSK復調回路、34 同期再生・誤り訂正回路、38 キー抽出部、40 キー位置算出部、42 レジスタ、44 後処理部、50 同期再生部、52 RAMコントローラ、54 誤り訂正器、56 CRC回路、58 フレームバッファRAM、100 処理システム、102 受信装置、104 マイクロコンピュータ、200 処理システム、202 受信装置、204 マイクロコンピュータ、206 表示器。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定ビット数から構成されるパケット毎に横方向誤り訂正符号が付され、前記横方向誤り訂正符号が付されたパケットを複数組み合わせた単位毎に縦方向誤り訂正符号が付され、前記単位を複数組み合わせたフレームとして時系列に送信されるFM多重信号、を前記パケットに含まれる複数のキーのうち1つの特定キーを用いて処理して出力する半導体装置であって、
前記パケットに含まれる前記複数のキーのデータにおいて前記特定キーのデータの開始位置を求めるために必要なキー指定情報を記憶するキー指定情報記憶部と、
前記キー指定情報から前記特定キーのデータの開始位置を求めるキー位置算出部と、
前記パケットに含まれる前記複数のキーのデータにおける前記キー位置算出部で求められた前記特定キーのデータの開始位置から前記特定キーのデータとして抽出するキー抽出部と、
を同一のパッケージ内に備えることを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
請求項1に記載の処理装置であって、
前記複数のキーのデータは、複数の前記パケットからなるパケット群に跨って送信され、
前記キー指定情報は、前記パケット群における前記特定キーのデータの開始位置と前記特定キーのデータ長を示す情報であることを特徴とする半導体装置。
【請求項3】
請求項2に記載の処理装置であって、
前記キー抽出部は、前記パケット群のすべてを記憶することなく前記パケット群から前記特定キーのデータを抽出することを特徴とする半導体装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate