説明

ICテスタ用信号遅延測定プログラムおよびその測定方法

【課題】 TDR測定によって、DUTボードの配線長に依存した信号遅延時間を正確に求めることが可能なICテスタ用信号遅延測定プログラムを提供する。
【解決手段】 本発明にかかるICテスタ用信号遅延測定プログラム106の構成は、コンピュータを、テストヘッド110側からステップ波形148を印加してその入射波と反射波との第1到達時間差Td1、第2到達時間差Td2を測定するTDR測定手段、第1スルーレートS2、第2スルーレートS2を演算するスルーレート演算手段、第1スルーレートS2と第2スルーレートS2とを用いて第2到達時間差Td2を補正し、第1到達時間差Td1を差し引くことで信号遅延時間を演算する信号遅延演算手段、として機能させることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、TDR(Time Domain Reflectometry)測定によって、DUTボードの配線長に依存した信号遅延時間を求めるICテスタ用信号遅延測定プログラムおよびその測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ICテスタは、DUT(Device under test)と呼ばれるICやLSIなどの被試験デバイスに対して、所定の電流や電圧を印加した際に所定のレスポンスが得られるかどうかを試験する装置である。所定のレスポンスには、電流、電圧、および応答速度などが含まれる。特に応答速度に対しては、配線長が問題となる。1つのDUTには多数のピンが備えられているうえ、通常は複数のDUTを同時に試験するため、各配線長を均一にすることは難しい。このため、レスポンスのタイミングについて適切な結果を得るためには、各配線長の差を考慮した補正を行う必要がある。
【0003】
特許文献1、特にその図1〜図4を参照されたい。特許文献1に記載されているようにICテスタでは、テストヘッドからDUTボードのDUTの各ピンまでの各配線長の差の補正が実施されている。これは、ICテスタへの試験信号の入力から応答出力までの時間がnsecオーダまたはpsecオーダとされているのに対し、例えば配線長1m当たり5nsec、6nsec程度の無視できない信号遅延を生じるためである。
【0004】
上記補正を実施するためには、各ピンまでの各配線長に依存した信号遅延のデータである配線長補正データが必要となる。従来、この配線長補正データは、いわゆるTDR測定によって導出していた。具体的には、テストヘッドに実装されたドライバからステップ波形を出力し、その入射波および反射波をテストヘッドに実装されたコンパレータにて検出することでこれらの到達時間差等を測定し導出していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−58196号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
テストヘッドに実装されたコンパレータは、判定基準信号(閾値)に対しステップ波形の入射波および反射波の入力が高いか低いかを判定できるのみである。換言すれば、コンパレータでは、入射波が到達した瞬間である遷移開始時刻、および反射波が到達した遷移開始時刻を検出することができない。そのため従来、例えば、入射波が到達した際の立ち上がりの50%の電圧値と、反射波が到達した際の立ち上がりの50%の電圧値とを閾値として設定し、これらを検出することで、入射波と反射波との到達時間差を測定していた。
【0007】
しかしながら、DUTボード(テストヘッドとDUTボードのICソケットとの間)には抵抗成分、インダクタンス/キャパシタンス成分が存在しており(とりわけDUTボードの配線は数十cmから1mにもなり)、ローパスフィルタ型の特性がある。したがって、DUTボードのICソケットで反射して戻ってきた反射波などでは高周波成分が減衰してしまい、入射波に比してその立ち上がりが鈍化してしまう問題があった。そして、例えば、かかる高周波成分が減衰したものの立ち上がりの50%の電圧値を検出する場合、立ち上がりの鈍化分だけその50%の電圧値に到るまでの時間が遅れて(増加して)しまっていた。これより、入射波と反射波との到達時間差の測定を正確に行うことができず、DUTボードの配線長に依存した信号遅延時間を正確に求めることができなかった。
【0008】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、TDR測定によって、DUTボードの配線長に依存した信号遅延時間を正確に求めることが可能なICテスタ用信号遅延測定プログラム、およびその測定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明にかかるICテスタ用信号遅延測定プログラムの構成は、DUTボードの配線長に依存した信号遅延時間を求めるためにコンピュータを、DUTボードが非装着の状態にてテストヘッド側からステップ波形を印加してその入射波と反射波との第1到達時間差を測定し、かつ、DUTボードが装着されDUTが搭載されていない状態にて、テストヘッド側からステップ波形を印加してその入射波と反射波との第2到達時間差を測定するTDR測定手段、DUTボードが非装着の状態の反射波の第1スルーレート、およびDUTボードが装着された状態の反射波の第2スルーレートを演算するスルーレート演算手段、並びに、第1スルーレートと第2スルーレートとを用いてDUTボードが装着された状態の反射波の立ち上がりの鈍化による第2到達時間差の増加分を補正し、第1到達時間差を差し引くことで信号遅延時間を演算する信号遅延演算手段、として機能させることを特徴とする。
【0010】
上記構成によれば、第1スルーレートと第2スルーレートとが演算され、これらを用いて第2到達時間差の増加分が補正される。よって、DUTボードの配線長に依存した信号遅延時間を正確に求めることが可能となる。これより、ICテスタに正確な配線長補正データを供給でき、延いてはDUT試験を正確に実施可能となる。
【0011】
上記テストヘッドに実装されたドライバからステップ波形を印加し、このテストヘッドに実装されたコンパレータにて入射波と反射波とを検出するとよい。
【0012】
上記構成によれば、既存のICテスタのハードウェア構成に変更を要しないため、容易に採用でき、かつ低いコストで導入することができる。
【0013】
上記スルーレート演算手段は、コンパレータにてステップ波形の反射波の立ち上がりを2点以上検出することで、第1スルーレートおよび第2スルーレートを演算するとよい。
【0014】
上記構成によれば、本発明の特徴たるスルーレート(第1スルーレート、第2スルーレート)の導出についても、既存のICテスタのハードウェア構成を利用して実施されるので、容易に採用でき、かつ低いコストで導入することができる。
【0015】
上記スルーレート演算手段は、第1スルーレートに換えて、DUTボードが非装着の状態の入射波のスルーレートまたはDUTボードが装着された状態の入射波のスルーレートを演算してもよい。
【0016】
上記構成によっても、第2到達時間差の増加分を補正して、DUTボードの配線長に依存した信号遅延時間を正確に求めることが可能である。
【0017】
上記課題を解決するために、本発明の他の代表的な構成は、DUTボードの配線長に依存した信号遅延時間を求めるICテスタ用信号遅延測定方法において、DUTボードが非装着の状態にてテストヘッド側からステップ波形を印加してその入射波と反射波との第1到達時間差を測定するステップと、DUTボードが非装着の状態の反射波の第1スルーレートを求めるステップと、DUTボードが装着されDUTが搭載されていない状態にて、テストヘッド側からステップ波形を印加してその入射波と反射波との第2到達時間差を測定するステップと、DUTボードが装着された状態の反射波の第2スルーレートを求めるステップと、第1スルーレートと第2スルーレートとを用いてDUTボードが装着された状態の反射波の立ち上がりの鈍化による第2到達時間差の増加分を補正し、第1到達時間差を差し引くことで信号遅延時間を求めるステップと、を含むことを特徴とする。
【0018】
上述したICテスタ用信号遅延測定プログラムにおける技術的思想に対応する構成要素やその説明は、当該ICテスタ用信号遅延測定方法にも適用される。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、TDR測定によって、DUTボードの配線長に依存した信号遅延時間を正確に求めることが可能なICテスタ用信号遅延測定プログラム、およびその測定方法を提供可能である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施形態にかかるICテスタ用信号遅延測定プログラムが適用されるICテスタの概略図である。
【図2】本発明の実施形態にかかるICテスタ用信号遅延測定方法の手順を説明する図である。
【図3】図1(a)のドライバのドライバ出力、およびコンパレータのコンパレータ入力を示す図である。
【図4】図1(b)のドライバのドライバ出力、およびコンパレータのコンパレータ入力を示す図である。
【図5】図3(b)のコンパレータ入力および図4(b)のコンパレータ入力を併せて示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値などは、発明の理解を容易とするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0022】
図1は、本発明の実施形態にかかるICテスタ用信号遅延測定プログラム(以下「測定プログラム106」と称する)が適用されるICテスタ100の概略図である。図1(a)はDUTボード130が非装着の状態を示す図であり、図1(b)はDUTボード130が装着されDUT134が搭載されていない状態を示す図である。
【0023】
図1(a)、(b)に示すように、ICテスタ100は、テストヘッド110とDUTボード130とを含んで構成される。また、ICテスタ100は、制御部102とメモリ104とを備えている。制御部102は中央処理装置(いわゆるCPU)を含んで構成され、メモリ104はROM、RAM、フラッシュメモリ、HDD等で構成される。メモリ104には、測定プログラム106が格納される。例えば制御部102およびメモリ104は、汎用のコンピュータを用いることができる。
【0024】
図2は、本発明の実施形態にかかるICテスタ用信号遅延測定方法の手順を示す図である。制御部102は測定プログラム106を実行することで、図2に示すステップS200〜S214の手順に則って、DUTボード130の配線長に依存した信号遅延時間を正確に導出する。以下、図2のステップS200〜S214の手順に則って、ICテスタ100および測定プログラム106について説明する。
【0025】
図3は、図1(a)のドライバ114のドライバ出力、およびコンパレータ116のコンパレータ入力を示す図である。図3(a)がドライバ114のドライバ出力を示す図であり、図3(b)がコンパレータ116のコンパレータ入力を示す図である。
【0026】
ステップS200では、測定プログラム106を実行する制御部102は、DUTボード130が非装着の状態(図1(a)の状態)、すなわちテストヘッド110のDUTボード130と接続する端子が開放端となっている状態にて、テストヘッド110に実装されたドライバ114からステップ波形148を出力させる。
【0027】
ドライバ114は、制御部102からのタイミング制御信号140に基づきタイミングジェネレータ112がパターン信号142を発生することで、種々の試験信号を出力可能に構成されている。したがって、制御部102からの指示により、図3(a)に示すようにドライバ114にステップ波形148を出力させることができる。
【0028】
ステップS202では、測定プログラム106を実行する制御部102は、ドライバ114から出力したステップ波形148の入射波、およびDUTボード130の非装着によりテストヘッド110の開放端で全反射して戻ってきた反射波をコンパレータ116に検出させる。そして、入射波と反射波との第1到達時間差Td1を測定する。
【0029】
コンパレータ116は、制御部102からのタイミング制御信号140に基づいてタイミングジェネレータ112が発生するストローブ信号144、判定基準信号146(閾値)の入力を受ける。そして、ストローブ信号144のタイミングで、判定基準信号146に対しコンパレータ入力、すなわちステップ波形148の入射波および反射波の入力(図3(b)に示すコンパレータ入力)が高いか低いかを判定する。
【0030】
図3(b)に示すように、コンパレータ入力は、ドライバ114から出力されたステップ波形148の入射波の到達により入射波電圧V1となり、さらにその反射波の到達により入射波電圧V1に反射波電圧V2を加えたものとなる。ここで、入射波と反射波との第1到達時間差Td1を測定するためには、入射波が到達した瞬間である遷移開始時刻および反射波が到達した瞬間である遷移開始時刻を求め、その差を取ることが理想的である。
【0031】
しかしながら、上述したように、コンパレータ116では判定基準信号146に対しステップ波形148の入射波および反射波の入力が高いか低いかを判定することしかできない。すなわち、一般的なTDR測定に利用されるオシロスコープ(サンプリングオシロスコープ)のように、コンパレータ入力の波形を実際に取得することはできない。
【0032】
そのため、ここではコンパレータ116に入射波電圧V1の50%の点(「測定点X1」と称する)と、入射波電圧V1+反射波電圧V2の50%の点(「測定点X2」と称する)とを検出させて、これらの時間差を取ることで第1到達時間差Td1を算出する。すなわち、制御部102が、測定点X1の時刻t1、測定点X2の時刻t2を用いて下記式1より第1到達時間差Td1を算出する。
Td1=t2−t1 …式1
【0033】
ステップS204では、測定プログラム106を実行する制御部102は、コンパレータ116に反射波が到達した際の立ち上がりを2点以上検出させ、第1スルーレートS1を演算する。
【0034】
図3(b)に示すように、ここでは一例としてコンパレータ116に、入射波電圧V1+反射波電圧V2の20%の点(「測定点X3」と称する)と、入射波電圧V1+反射波電圧V2の80%の点(「測定点X4」と称する)とを検出させる。そして、制御部102が、測定点X3の時刻t3、測定点X4の時刻t4を用いて下記式2より第1スルーレートS1を算出する。
S1=(0.8×V2−0.2×V2)/(t4−t3) …式2
【0035】
図4は、図1(b)のドライバ114のドライバ出力、およびコンパレータ116のコンパレータ入力を示す図である。図4(a)がドライバ114のドライバ出力を示す図であり、図4(b)がコンパレータ116のコンパレータ入力を示す図である。
【0036】
ステップS206では、測定プログラム106を実行する制御部102は、DUTボード130が装着されICソケット132にDUT134が搭載されていない状態(図1(b)の状態)、すなわちDUTボード130のICソケット132にて開放端となっている状態にてテストヘッド110に実装されたドライバ114からステップ波形148を出力させる(図4(a)参照)。
【0037】
ステップS208では、測定プログラム106を実行する制御部102は、ドライバ114から出力したステップ波形148の入射波、およびDUT134の非装着によりICソケット132の開放端で全反射して戻ってきた反射波をコンパレータ116に検出させる。そして、入射波と反射波との第2到達時間差Td2を測定する。
【0038】
図4(b)に示すように、コンパレータ入力は、ドライバ114から出力されたステップ波形148の入射波の到達により入射波電圧V1となり、さらにその反射波の到達により入射波電圧V1に反射波電圧V2を加えたものとなる。ここでは、上記と同様に、コンパレータ116に入射波電圧V1の50%の点(「測定点Y1」と称する)と、入射波電圧V1+反射波電圧V2の50%の点(「測定点Y2」と称する)とを検出させて、これらの時間差を取ることで第2到達時間差Td2を算出する。すなわち、制御部102が、測定点Y1の時刻ts1、測定点Y2の時刻ts2を用いて下記式3より第2到達時間差Td2を算出する。
Td2=ts2−ts1 …式3
【0039】
すなわち、測定プログラム106は、制御部102(コンピュータ)を第1到達時間差Td1、第2到達時間差Td2を測定するTDR測定手段として機能させる。
【0040】
ここで、第2到達時間差Td2は、ICソケット132の開放端で全反射して戻ってきた反射波の立ち上がりの鈍化により、その値が大きく見積もられてしまっている。そのため、本実施形態では、下記ステップS210でこの反射波の第2スルーレートS2を求め、下記ステップS212で第2到達時間差Td2の増加分を補正(除去)する。
【0041】
ステップS210では、測定プログラム106を実行する制御部102は、コンパレータ116に反射波が到達した際の立ち上がりを2点以上検出させ、第2スルーレートS2を演算する。
【0042】
図4(b)に示すように、ここでは一例としてコンパレータ116に、入射波電圧V1+反射波電圧V2の20%の点(「測定点Y3」と称する)と、入射波電圧V1+反射波電圧V2の80%の点(「測定点Y4」と称する)とを検出させる。そして、制御部102が、測定点Y3の時刻ts3、測定点Y4の時刻ts4を用いて下記式4より第2スルーレートS2を算出する。
S2=(0.8×V2−0.2×V2)/(ts4−ts3) …式4
【0043】
すなわち、測定プログラム106は、制御部102(コンピュータ)を第1スルーレートS1、第2スルーレートS2を演算するスルーレート演算手段として機能させる。
【0044】
ステップS212では、測定プログラム106を実行する制御部102は、第1スルーレートS1と第2スルーレートS2とを用いて、DUTボード130が装着された状態の反射波の立ち上がりの鈍化による第2到達時間差Td2の増加分を補正する(真の第2到達時間差RTd2を算出する)。
【0045】
図4(b)に示すように、制御部102は、下記式5よりスルーレート補正値Tcを算出する。そして、下記式6のように、第2到達時間差Td2からこのスルーレート補正値Tcを差し引くことで、その増加分を補正した真の第2到達時間差RTd2を算出する。
Tc=0.5×V2/S2−0.5×V2/S1 …式5
RTd2=Td2−Tc …式6
【0046】
図5は、図3(b)のコンパレータ入力および図4(b)のコンパレータ入力を併せて示す図である。図5中、図3(b)のコンパレータ入力を破線で図示し、図4(b)のコンパレータ入力を実線で図示する。
【0047】
図5に示すように、ステップS214では、測定プログラム106を実行する制御部102は、下記式7のように、真の第2到達時間差RTd2から第1到達時間差Td1を差し引いて、テストヘッド110の端からDUTボード130のICソケット132までを信号が往復する往復時間RTz1を算出する。そして、下記式8のように、これを2で除して片道の正確な信号遅延時間を導出する。すなわち、測定プログラム106は、制御部102(コンピュータ)を第2到達時間差Td2の増加分を補正し、信号遅延時間を演算する信号遅延演算手段として機能させる。
RTz1=(RTd2−Td1) …式7
信号遅延時間=RTz1÷2 …式8
【0048】
なお、ステップS212の補正を行わない場合には、実際よりも大きく見積もられた往復時間Tz1に基づき信号遅延時間が導出されるため、正確な信号遅延時間を導出することができない。
【0049】
上記では理解を容易にするために、ドライバ114やコンパレータ116を1つ挙げてテストヘッド110からDUT134の1つのピンまでの配線長に依存した信号遅延時間を求める過程について説明した。上記と同様にDUT134の各ピンまでの各配線長に依存した信号遅延時間を求めデータとしてメモリ104に記憶しておくことで、ICテスタ100のDUT試験時に、DUT134の各ピンまでの各配線長の差について補正を実施することができる。
【0050】
ICテスタ100では、テストヘッド110の端までは試験信号のタイミングが保証されている。したがって、上記手法により、テストヘッド110からDUT134の各ピンまでの各配線長の差を補正することで、DUT試験を正確に実施することが可能となる。
【0051】
なお、上記ステップS204では、DUTボード130が非装着の状態の「反射波の」第1スルーレートS1を演算したが、これに換えて「入射波の」スルーレートを用いることも可能である。これは、DUTボード130が非装着の状態では、反射波のスルーレートの鈍化は無視できる程度であるためである。
【0052】
本実施形態にかかる測定プログラム106や測定方法が奏する効果は、ICテスタ100において特に顕著なものである。一般的なTDR測定では、高性能なサンプリングオシロスコープ(波形生成器および波形検出器)が外付けされ、そのスルーレートはpsecオーダとなる。そのため、一般に、スルーレートは考慮されない。一方、ICテスタ100にて既存のハードウェア構成を利用して上記のように信号遅延時間を求める場合、そのスルーレートがnsecオーダとなる。nsecオーダの誤差は無視できる範囲ではないため、本測定プログラム106や本測定方法が必要となるのである。
【0053】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0054】
なお、本実施形態におけるステップS200〜S214は、必ずしも記載された順序に沿って時系列に処理する必要はなく、並列的あるいは個別に実行される処理(例えば、並列処理あるいはオブジェクトによる処理)も含むとしてよい。すなわち、ステップS200〜S214は、その順序を問うものではない。
【0055】
また、上述の測定プログラム106は、コンピュータに組み込まれたものであってもよいが、記憶媒体や通信回線を用いて配布してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明は、TDR測定によって、DUTボードの配線長に依存した信号遅延時間を求めるICテスタ用信号遅延測定プログラムおよびその測定方法として利用することができる。
【符号の説明】
【0057】
100…ICテスタ、102…制御部、104…メモリ、106…測定プログラム、110…テストヘッド、112…タイミングジェネレータ、114…ドライバ、116…コンパレータ、130…DUTボード、132…ICソケット、134…DUT、140…タイミング制御信号、142…パターン信号、144…ストローブ信号、146…判定基準信号、148…ステップ波形、S1…第1スルーレート、S2…第2スルーレート、V1…入射波電圧、V2…反射波電圧、X1〜X4、Y1〜Y4…測定点、t1〜t4、ts1〜ts4…時刻、Td1…第1到達時間差、Td2…第2到達時間差、RTd2…真の第2到達時間差、Tc…スルーレート補正値、RTz1…往復時間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
DUTボードの配線長に依存した信号遅延時間を求めるためにコンピュータを、
前記DUTボードが非装着の状態にてテストヘッド側からステップ波形を印加してその入射波と反射波との第1到達時間差を測定し、かつ、前記DUTボードが装着されDUTが搭載されていない状態にて、前記テストヘッド側からステップ波形を印加してその入射波と反射波との第2到達時間差を測定するTDR測定手段、
前記DUTボードが非装着の状態の前記反射波の第1スルーレート、および前記DUTボードが装着された状態の前記反射波の第2スルーレートを演算するスルーレート演算手段、並びに、
前記第1スルーレートと前記第2スルーレートとを用いて前記DUTボードが装着された状態の前記反射波の立ち上がりの鈍化による前記第2到達時間差の増加分を補正し、前記第1到達時間差を差し引くことで前記信号遅延時間を演算する信号遅延演算手段、
として機能させることを特徴とするICテスタ用信号遅延測定プログラム。
【請求項2】
前記テストヘッドに実装されたドライバから前記ステップ波形を印加し、該テストヘッドに実装されたコンパレータにて前記入射波と前記反射波とを検出することを特徴とする請求項1に記載のICテスタ用信号遅延測定プログラム。
【請求項3】
前記スルーレート演算手段は、前記コンパレータにて前記ステップ波形の反射波の立ち上がりを2点以上検出することで、前記第1スルーレートおよび前記第2スルーレートを演算することを特徴とする請求項2に記載のICテスタ用信号遅延測定プログラム。
【請求項4】
前記スルーレート演算手段は、前記第1スルーレートに換えて、前記DUTボードが非装着の状態の前記入射波のスルーレートまたは前記DUTボードが装着された状態の前記入射波のスルーレートを演算することを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のICテスタ用信号遅延測定プログラム。
【請求項5】
DUTボードの配線長に依存した信号遅延時間を求めるICテスタ用信号遅延測定方法において、
前記DUTボードが非装着の状態にてテストヘッド側からステップ波形を印加してその入射波と反射波との第1到達時間差を測定するステップと、
前記DUTボードが非装着の状態の前記反射波の第1スルーレートを求めるステップと、
前記DUTボードが装着されDUTが搭載されていない状態にて、前記テストヘッド側からステップ波形を印加してその入射波と反射波との第2到達時間差を測定するステップと、
前記DUTボードが装着された状態の前記反射波の第2スルーレートを求めるステップと、
前記第1スルーレートと前記第2スルーレートとを用いて前記DUTボードが装着された状態の前記反射波の立ち上がりの鈍化による前記第2到達時間差の増加分を補正し、前記第1到達時間差を差し引くことで前記信号遅延時間を求めるステップと、
を含むことを特徴とするICテスタ用信号遅延測定方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate