説明

LEDフラッシュ装置および電子機器

【課題】リチウムイオンキャパシタを使用した小型化に適したLEDフラッシュ装置、及び該LEDフラッシュ装置を搭載した電子機器を提供する。
【解決手段】このLEDフラッシュ装置は、光源としてのLEDと、そのLED駆動用のリチウムイオンキャパシタと、そのリチウムイオンキャパシタ充電用の非水系二次電池と、フラッシュパルス幅を含む前記LEDの発光状態を制御するコントローラと、前記コントローラの制御に応じて前記LEDに流れる電流をオン/オフする第一のスイッチング素子を有している。そして、前記リチウムイオンキャパシタが少なくとも2個以上のセルからなり、該セルの充電時に各々のセルの満充電電圧を監視する監視回路と、該セルの接続を開閉可能な第二のスイッチング素子とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デジタルカメラやデジタルカメラ機能付携帯電話機等の電子機器に用いられるLEDフラッシュ装置および電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
デジタルカメラは、夜間や暗いところにおいても明瞭な写真を撮影するために、フラッシュ装置を搭載したものが普及している。フラッシュ装置としては、キセノン放電管を使用したものとLEDを使用したものとがある。
キセノン放電管を使用したフラッシュ装置は、バッテリ、DC−DCコンバータ(昇圧回路)、キャパシタ(放電コンデンサ)、トリガ回路から構成され、例えば以下のように動作する。まず、バッテリの電圧をDC−DCコンバータで250〜500V程度に昇圧し、キャパシタを充電する。次に、トリガ回路のスイッチによりキャパシタから放電させ、放電電流をトランスによって数千Vのパルス電圧に昇圧し、キセノン放電管を発光させる。このキセノン放電管を使用したフラッシュ装置はフィルム式のアナログカメラの時代から使用されてきている。
【0003】
しかしながら、上記キャパシタとして高耐圧で瞬時放電容量の大きい電解コンデンサを用いる必要がありそのサイズが大きくなるため、小型のデジタルカメラや携帯電話機には搭載が困難であるという課題があった。
そこで、近年においては、フラッシュ装置を小型化する手段として、LED光源を使用したLEDフラッシュ装置が注目されている。例えば、LEDと前記LED駆動用の補助電源と、前記LEDの発光状態を制御するコントローラと、前記LEDの発光に必要な電圧を発生する昇圧回路と、前記LEDに流れる電流をオン/オフする電流スイッチとを有するLEDフラッシュ装置において、前記補助電源のエネルギー密度が5Wh/kg以上であると共に、前記LEDには0.8A以上の電流が通電されるLEDフラッシュ装置が提案されており、該補助電源として、有機ラジカル二次電池、リチウムイオン二次電池、リチウムイオンキャパシタを使用するとの記載がある(特許文献1参照)。
【0004】
上記特許文献1には、LED駆動用の補助電源が直列接続された複数の高出力電池(有機ラジカル二次電池)からなる実施例と、補助電源が主電源に対して並列に配置された実施例との記載がある。前者の場合は、LEDの発光に必要な電圧を充電するために2つの高出力電池とセルバランス回路が必要となるが、昇圧回路は小型のブーストコンバータまたはチャージポンプが使用できる。後者の場合は、高出力電池は1つですむが、昇圧回路として大型のブーストコンバータが必要となる。
【0005】
ここで、リチウムイオンキャパシタとは、正極は電気二重層キャパシタと同様に活性炭を活物質とし、負極はリチウムイオン二次電池と同様にリチウムイオンを吸蔵放出する炭素質材料を活物質とした蓄電素子であり(例えば、特許文献2参照)、蓄電可能なエネルギー密度はリチウムイオン二次電池に劣るものの電気二重層キャパシタより優れ、瞬時に放出できるエネルギー量は二次電池や電気二重層キャパシタより優れる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−295769号公報
【特許文献2】国際公開2009/063966号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述したように、リチウムイオンキャパシタはLEDフラッシュ装置のキャパシタ(放電コンデンサ)を小型化するにあたって好ましい特性を有していると考えられる。しかしながら、リチウムイオンキャパシタには、通常のキャパシタとは異なって好ましい使用電圧範囲が存在する。本発明は、リチウムイオンキャパシタを使用した小型化に適したLEDフラッシュ装置、及び該LEDフラッシュ装置を搭載した電子機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、前記課題を検討した結果、LEDフラッシュ装置において、複数のリチウムイオンキャパシタを該キャパシタの電圧監視回路と組合せて使用することで上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させた。即ち、本発明は以下のLEDフラッシュ装置とそれを用いた電子機器である。
すなわち、本発明の第一の態様は、光源としてのLEDと、前記LED駆動用のリチウムイオンキャパシタと、前記リチウムイオンキャパシタ充電用の非水系二次電池と、フラッシュパルス幅を含む前記LEDの発光状態を制御するコントローラと、前記コントローラの制御に応じて前記LEDに流れる電流をオン/オフする第一のスイッチング素子を有するLEDフラッシュ装置であって、前記リチウムイオンキャパシタが少なくとも2個以上のセルからなり、該セルの充電時に各々のセルの満充電電圧を監視する監視回路と、該セルの接続を開閉可能な第二のスイッチング素子とを有することを特徴とする。
【0009】
また、本発明の第二の態様は、上記第一の態様に係るLEDフラッシュ装置であって、前記非水系二次電池の電圧を前記LEDの発光に必要な電圧まで昇圧させる昇圧回路を有することを特徴とする。
また、本発明の第三の態様は、上記第一の態様に係るLEDフラッシュ装置であって、前記非水系二次電池によって前記複数のリチウムイオンキャパシタを並列接続で充電し、第三のスイッチング素子によって前記複数のリチウムイオンキャパシタを直列接続に切り替えて放電させることを特徴とする。
また、本発明の第四の態様は、上記第一ないし第三のいずれかの態様に係るLEDフラッシュ装置を搭載した電子機器であることを特徴とする。なお、本発明の第四の態様に係る電子機器としては、例えば、デジタルカメラ、カメラ付携帯機器が好適である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、リチウムイオンキャパシタを使用した小型化に適したLEDフラッシュ装置、及び該LEDフラッシュ装置を搭載した電子機器を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の第一の実施形態を示すブロック図である。
【図2】本発明の第二の実施形態を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について、図面を適宜参照しつつ説明する。
本発明のLEDフラッシュ装置の第一の実施形態は、図1のブロック図にて示すように、非水系二次電池4の電圧を、LED2の発光に必要な電圧まで昇圧させる昇圧回路20を有するLEDフラッシュ装置である。
詳しくは、同図に示すように、このLEDフラッシュ装置1は、光源としてのLED2と、このLED2を駆動するためのリチウムイオンキャパシタ3と、このリチウムイオンキャパシタ3を充電するための非水系二次電池4と、フラッシュパルス幅を含む前記LED2の発光状態を制御するコントローラ5と、このコントローラ5の制御に応じて前記LED2に流れる電流をオン/オフする第一のスイッチング素子6を有して構成されている。ここで、図1における第一のスイッチング素子6は高電位側に位置しているが、低電位側に位置するようにしてもよい。
【0013】
そして、このLEDフラッシュ装置1は、2個を直列に配置したリチウムイオンキャパシタ3を備え、各リチウムイオンキャパシタ3は、少なくとも2個以上のセルからなり、該セルの充電時に各々のセルの満充電電圧を監視する監視回路10と、該セルの接続を開閉可能な第二のスイッチング素子7とを有している。ここで、図1における第二のスイッチング素子7は低電位側に位置しているが、高電位側に位置するようにしてもよい。
【0014】
上記非水系二次電池4としては、動作電圧及びエネルギー密度が高いことから、リチウムイオン二次電池であることが好ましい。ここで、リチウムイオン二次電池(以下、単に「電池」ともいう)とは、遷移金属とリチウムとの複合酸化物を正極活物質とする正極と、リチウムイオンを吸蔵放出可能な材料を負極活物質とする負極と、リチウムイオンを含む電解質を有機溶媒に溶解させた非水系電解液とを有するものである。好適には正極活物質としてコバルト酸リチウム、マンガン酸リチウム、ニッケル酸リチウム、またはオリビン酸リチウム、負極活物質としてグラファイト、またはコークスが使用される。以下においては、正極活物質としてコバルト酸リチウム、負極活物質としてグラファイトを使用した電池を代表例として説明する。
【0015】
リチウムイオンキャパシタ3は、活性炭を正極活物質とする正極と、リチウムイオンを吸蔵放出可能な材料を負極活物質とする負極と、リチウムイオンを含む電解質を有機溶媒に溶解させた非水系電解液とを有するものである。好適には、負極活物質として、グラファイト、難黒鉛化性炭素材料(ハードカーボン)、または活性炭の表面に炭素質材料を被着させた複合多孔質炭素材料が使用される。
【0016】
なお、上述したリチウムイオンキャパシタ3の負極活物質は、下記の条件(1)および(2)を満たす複合多孔質炭素材料であることがより好ましい。
(1) BJH法で算出されたメソ孔量(直径が2nm以上50nm以下である細孔の量)Vm1(cc/g)が、0.01≦Vm1<0.10である。
(2) MP法で算出されたマイクロ孔量(直径が2nm未満である細孔の量)Vm2(cc/g)が、0.01≦Vm2<0.30である。
【0017】
また、上述したリチウムイオンキャパシタ3の正極活物質は、下記の条件(3)〜(5)を満たす活性炭であることが好ましい。
(3) BJH法で算出されたメソ孔量V1(cc/g)が、0.3≦V1<0.8である。
(4) MP法で算出されたマイクロ孔量V2(cc/g)が、0.5≦V2<1.0である。
(5) BET法で測定された比表面積が1500m2/g以上3000m2/g以下である。
【0018】
上記リチウムイオンキャパシタ3の負極活物質ないし正極活物質が、上記(1)〜(5)を満たせば、上限電圧(4.0V)の条件を一層安定して繰り返し充放電可能とすることができる。本実施形態においては、これら条件(1)〜(5)を満たしたリチウムイオンキャパシタ3を採用してLEDフラッシュ回路を構成している。
リチウムイオン二次電池の使用電圧は正極活物質の種類によって異なるが、コバルト酸リチウムを正極活物質として使用するものは、通常3.0〜4.2V程度の電圧範囲内で使用される。これに対して、リチウムイオンキャパシタ3は、4.0Vより高い電圧での使用は素子の寿命に悪影響を与えることがあるため、2.0〜4.0V程度の電圧範囲内で使用される。
【0019】
一方、出力側のLED2の発光には瞬間的な発光のため1A以上の大電流が必要となる。そのため、内部抵抗による電圧降下を考慮すると、5〜8V程度の電源電圧が必要となる。従って、LED2を発光させるためには、放電コンデンサであるリチウムイオンキャパシタ3を、2個を直列で放電させる必要がある。そして、この2個を直列に配置したリチウムイオンキャパシタ3を充電するためには、リチウムイオン二次電池の出力を昇圧回路20によって2倍程度にする必要があることになる。この昇圧回路20としては、例えば、前述した特許文献1に記載のチャージポンプや電流制御ブーストコンバータを使用することができる。スイッチング素子としては、FETを好適に使用することができる。
【0020】
監視回路10は、2個のリチウムイオンキャパシタ3のそれぞれの両端の電圧が設定範囲内となるように監視し、充電時に設定範囲の最大電圧を超える場合に第2のスイッチング素子7(SW2)をオフするとともに2つのリチウムイオンキャパシタ3のセル電圧をバランスさせる機能を有するものである。また、放電時に設定範囲の最小電圧を超える場合に第一のスイッチング素子6(SW1)をオフする機能を有していても良い。
【0021】
図1記載のLEDフラッシュ装置1は、以下のように動作させることができる。
今、フラッシュを点灯させる状況になると、コントローラ5が、昇圧回路20をオン、第一のスイッチング素子6(SW1)をオフ、第2のスイッチング素子7(SW2)をオンとして充電を開始する。これにより非水系二次電池4の電圧(4V)を昇圧回路20により8Vに昇圧して2つのリチウムイオンキャパシタ3を直列で充電することができる。監視回路10が2つのリチウムイオンキャパシタ3の電圧が上限(4V)に達したことを検出したら、SW2をオフにする。
【0022】
コントローラ5が必要な発光タイミングに応じて第一のスイッチング素子6(SW1)をオンとして2つのリチウムイオンキャパシタ3の放電が開始する。これによりLED2が発光する。コントローラ5が必要な発光時間経過を検出するか、監視回路10がリチウムイオンキャパシタ3の電圧が下限(2V)に達したことを検出したら、SW1をオフにする。
上記構成により、リチウムイオンキャパシタ3を好適な電圧範囲で使用可能なLEDフラッシュ装置1とすることができる。
【0023】
次に、本発明のLEDフラッシュ装置1の第2の実施形態について図2を適宜参照しつつ説明する。なお、上記第一実施形態と同様の構成については同一の符号を付し、その説明は省略する。
図2にブロック図にて示すように、このLEDフラッシュ装置1の第2の実施形態は、上記昇圧回路20に替えて第四のスイッチング素子9(SW4)を有するとともに、第二のスイッチング素子7(SW2)を二つ備え、二つのリチウムイオンキャパシタ3間に第三のスイッチング素子8(SW3)を備えている。そして、これらのスイッチング素子は、前記非水系二次電池4によって前記複数のリチウムイオンキャパシタ3を並列接続で充電し、第三のスイッチング素子8によって前記複数のリチウムイオンキャパシタ3を直列接続に切り替えて放電させるようになっている。ここで、図2における第一のスイッチング素子6は高電位側に位置しているが、低電位側に位置するようにしてもよい。また、図2における第四のスイッチング素子9は高電位側に位置しているが、低電位側に位置するようにしてもよい。
【0024】
この第2の実施形態のLEDフラッシュ装置1は、以下のように動作させることができる。
すなわち、今、フラッシュを点灯させる状況になると、コントローラ5が第四のスイッチング素子(SW4)と第二のスイッチング素子7(SW2)とをオンにして、第一のスイッチング素子6(SW1)と第三のスイッチング素子8(SW3)とをオフにすることにより、2つのリチウムイオンキャパシタ3を並列接続で充電する。
【0025】
次いで、監視回路10が2つのリチウムイオンキャパシタ3の電圧が上限(4V)に達したことを検出したら、第二のスイッチング素子7(SW2)をオフし、充電完了すれば第四のスイッチング素子(SW4)をオフにして第三のスイッチング素子8(SW3)をオンにすることにより、2つのリチウムイオンキャパシタ3の接続を直列接続に変更する。
【0026】
コントローラ5が必要な発光タイミングに応じて第一のスイッチング素子6(SW1)をオンとして2つのリチウムイオンキャパシタ3の放電が開始する。これによりLED2が発光する。コントローラ5が必要な発光時間経過を検出するか、監視回路10がリチウムイオンキャパシタ3の電圧が下限(2V)に達したことを検出したら、第一のスイッチング素子6(SW1)をオフする。
上記構成により、リチウムイオンキャパシタ3を好適な電圧範囲で使用可能なLEDフラッシュ装置1を昇圧回路20なしで構成することができる。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明は、デジタルカメラ、カメラ付携帯機器の分野で好適に利用できる。
【符号の説明】
【0028】
1 LEDフラッシュ装置
2 LED
3 リチウムイオンキャパシタ
4 非水系二次電池
5 コントローラ
6 第一のスイッチング素子
7 第二のスイッチング素子
8 第三のスイッチング素子
9 第四のスイッチング素子
10 監視回路
20 昇圧回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源としてのLEDと、前記LED駆動用のリチウムイオンキャパシタと、前記リチウムイオンキャパシタ充電用の非水系二次電池と、フラッシュパルス幅を含む前記LEDの発光状態を制御するコントローラと、前記コントローラの制御に応じて前記LEDに流れる電流をオン/オフする第一のスイッチング素子とを有するLEDフラッシュ装置であって、
前記リチウムイオンキャパシタが少なくとも2個以上のセルからなり、該セルの充電時に各々のセルの満充電電圧を監視する監視回路と、該セルの接続を開閉可能な第二のスイッチング素子とを有することを特徴とするLEDフラッシュ装置。
【請求項2】
前記非水系二次電池の電圧を前記LEDの発光に必要な電圧まで昇圧させる昇圧回路を有することを特徴とする請求項1記載のLEDフラッシュ装置。
【請求項3】
前記非水系二次電池によって前記複数のリチウムイオンキャパシタを並列接続で充電し、第三のスイッチング素子によって前記複数のリチウムイオンキャパシタを直列接続に切り替えて放電させることを特徴とする請求項1記載のLEDフラッシュ装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載のLEDフラッシュ装置を搭載したことを特徴とする電子機器。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−164258(P2011−164258A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−25315(P2010−25315)
【出願日】平成22年2月8日(2010.2.8)
【出願人】(000000033)旭化成株式会社 (901)
【Fターム(参考)】