説明

LED無影灯

【課題】長寿命で、光の制御が容易な無影灯を提供する。
【解決手段】光源に反射型LED1を複数個用いた平行光を出射する光源ユニット2を、被照射対象物に対する垂線上にある、被照射対象物から距離Lにある任意の点Aを含む対称空間に一対以上置き、光源ユニット2の入射角度θ一定で光源ユニット間の距離Bを変化させた場合、もしくは光源ユニット間距離B一定で入射角度θを変化させた場合、もしくは光源ユニット間距離Bと入射角度θを同時に変化させた場合に、被照射対象物を中心とした一定領域に常に入射方向が異なる光線が指向され、大きさ一定で輪郭が鮮明な照射野を得ることができる構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に医療分野、特に、手術灯及び、歯科治療に用いられる医療用無影灯照射器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の医療分野で用いられる手術灯、歯科治療などに用いられている医療用照明装置としては、光源として発光部端部に封止部を有する電球と別置きされた反射鏡の外部に配置されている。そして電球のフィラメントコイルの中心軸は反射鏡の光軸と直行するよう配置されていて、反射鏡にはファセットが形成されているため照射野に無影効果を生じさせることができる。また最近では光源にLEDを用いた医療用無影灯照射器もある(特許文献1参照)。また、最近では複数の光源からの光で被照射対象物を照射する歯科治療用照明装置もある(特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2002−306512号公報
【特許文献2】特開2005−065807号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、前記従来の照明装置では電球や光の制御をされていないLEDを用いている為、以下の3つの問題点があった。
問題点1:経時変化での白熱電球のフィラメントの曲がりによる光軸のずれや、フィラメントの寿命による電球の交換による反射鏡に対する光学的位置ズレ、また、電球の光がフィラメントからあらゆる方向に放射されている為、反射鏡の設計精度を高めても、照射野の輪郭がはっきりしない、深い照射深度が得難い、照射距離が変化すると照射野の大きさが大きく変化してしまうといった問題点があった。
【0004】
問題点2:従来の無影灯照射器は光線が交差するポイントを変更することができないため、使用できる範囲が決まっているという問題点があった。
【0005】
問題点3:また、光源にLEDを用いた医療用照明装置では、光源のLEDの光線は一般的には拡散光であるため、光源から照射距離までの距離が離れるほど照射野が大きくなってしまう。
【0006】
問題点4:またLEDを光源として使用した場合、光量が不足する可能性があるが、既存のLEDを用いた無影灯照射器では対応できないという問題があった。
本発明は、医療用特に、歯科治療に用いられる照明装置における上記問題点を解消する為になされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記問題を解決する為、請求項1記載の発明は、被照射対象物に対する垂線上にある、被照射対象物から距離Lにある任意の点Aを含む対称空間に、常に被照射物に指向する一対以上の平行光を出射するLED光源ユニットを置き、被照射対象物に対する垂線と光源ユニットから出射される光線の入射角度θが常に一定の角度を保持するとともに、照射距離Lの変化に応じて光源ユニット間の距離BをB=2L・tanθで変化させることにより、被照射対象物を中心とした一定領域に常に入射方向が異なる光線が指向され、照射野の大きさが一定となることを特徴とする無影灯照射器である。
【0008】
請求項2記載の発明は、被照射対象物に対する垂線上にある、被照射対象物から距離Lにある任意の点Aを含む対称空間に、常に被照射対象物に指向する一対以上の平行光を出射するLED光源ユニットを置き、照射距離Lの変化に応じて、被照射対象物に対する垂線と光源ユニットから出射される光線の入射角度θを変化させ、被照射対象物を中心とした一定領域に常に入射方向が異なる光線が指向され、照射野の大きさが一定となることを特徴とする無影灯照射器である。
【0009】
請求項3記載の発明は、被照射対象物に対する垂線上にある、被照射対象物から距離Lにある任意の点Aを含む対称空間に、常に被照射対象物に指向する一対以上の平行光を出射するLED光源ユニットを置き、照射距離Lの変化に応じて、光源ユニット間の距離Bと被照射対象物に対する垂線と光源ユニットから出射される光線の入射角度θを変化させても、被照射対象物を中心とした一定領域に常に入射方向の異なる光線が指向されており、照射野の大きさが一定であることを特徴とした無影灯照射器である。
【0010】
請求項4記載の発明は、被照射対象物に対する垂線上にある、被照射対象物から距離Lにある任意の点Aを含む対称空間に、常に被照射物に指向する一対以上の平行光を出射するLED光源ユニットを置き、そのLED光源ユニットから出射される光線が被照射対象物を指向するのに加え、被照射対象物上面より制御された平行光を被照射対象物に照射することにより被照射対象物からの距離Lが変化しても、照射野が一定で、光量を上げることを可能にした請求項1乃至3記載の無影灯照射である。
【発明の効果】
【0011】
問題点1については光源に反射型LEDを用いることにより、電球使用時には必要であった光軸調整が不要となる。またLEDは点光源の為、設計精度を高めることができ、照射野の形状や輪郭を鮮明にすることが出来る。
【0012】
また、問題点2についても、請求項1乃至3を用いることにより、光線が交差するポイントを変更する事ができ、使用者の希望する位置で光線を交差させ無影効果を持たせることができる。
【0013】
更に、問題点3についても、光源に平行光を出射する反射型LEDを用いることにより、照射距離Lが変化しても照射野が変化しなくなる。
【0014】
また、問題点4についても、請求項4を用いることにより、無影灯として十分な光量を確保することができる。
以上説明したように、本発明によれば、光源に平行光を出射する反射型LEDを用いた光源ユニット2を用いることにより、長寿命で且つ、光軸調整などが不要で、被照射対象物に光線が立体的に指向されるため無影効果が得られ、かつ、照射距離Lが変動しても照射野の大きさが一定で輪郭が鮮明な、特に歯科治療用に適した無影灯照射器が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明を図面を用いて詳細に説明する。図1は本発明に使用したLED光源ユニット2の概略構成図であり、光源として平行光を出射する反射型LED1を密に実装している。
【0016】
図2は光源ユニット2を2点配置したときの光線追跡図である。異なった方向にある光源からの平行光を被照射対象物に照射することにより、無影効果を得ることが出来る。またこれ以降、被照射対象物に対する垂線上にある任意の点Aまでの距離をLとし、光源ユニット2間距離をBとし、∠AXYを入射角度θとする。
【0017】
図3は照射距離LがL’に変化したときに光源ユニット2間の距離Bを照射距離Lの変化に応じてB’まで変化させたときの光線追跡図である。光源ユニット2間距離Bを変化させることにより、照射野が一定の大きさで輪郭が鮮明な状態で照射距離Lの変化に対応できるようになっていることを示している。光源ユニット2間距離Bは近いほど照射距離Lは短くなり、逆に光源ユニット2間距離Bが遠いほど照射距離Lは長くなる。
この関係を式で表すとB=2L・tanθとなる。
この式により、照射距離Lが変化した場合の光源ユニット2間距離Bが求められる。
【0018】
図4では照射距離LがL’に変化した時に光源ユニット2からの入射角度θを変えることにより、照射野を一定の大きさ、輪郭が鮮明な状態で照射距離Lの変化に対応できるようになっていることを示している。光源ユニット2からの入射角度θは大きくなるほど照射距離Lは短くなる。この関係を式で表すとθ=tan−1(B/2L)となる。
【0019】
この式により照射距離Lが変化した場合に光線の交差ポイントを照射距離Lの地点に合わせるための入射角度θを求めることができる。
【0020】
図5は照射距離LがL’に変化した時に、光源ユニット2間距離Bと、光源ユニット2からの入射角度θを変える事により、照射野は一定の大きさで輪郭が鮮明な状態で照射距離Lを変えることができることを示している。この関係はB=2L・tanθおよびθ=tan−1(B/2L)を用いることにより表すことができる。
【0021】
図6は図2に加えて被照射対象物に上面から光線を照射するために平行光を出射する光源ユニット2を照射器中心部にも取り付けたものである。請求項1〜3で用いた照射器の中心部に平行を出射する光源を追加したことにより、図6の4のような光線も得られ、照射野の大きさを一定のままで、被照射対象物への光量を増やす事ができる。
【0022】
次に今回の発明で使用した反射型LEDチップについて記載する。
図7は反射型LEDチップ5の縦断面図、図8は同反射型LEDチップ10の底面図、図9は同反射型LEDチップ5の右側面図である。これらの図に示すように、反射型LEDチップ5は、略直方形に形成され、LED素子6及び反射鏡7を収容するチップケース8と、このチップケース8の底面8Aの略中央部からチップケース8の左右に向けて延び、チップケース8の左右側面8B、8Cのそれぞれに沿って上方に延出する2つのリード9A、9Bとを備えている。
【0023】
上記LED素子6は、チップケース8の底面8A略中央部の面状に、光出射面6Aを上方に向けて配置され、上記リード9A、9Bのそれぞれと、金属ワイヤ10により電気的に接続されるとともに、リード9A、9Bのそれぞれの上端部11がソケットとして機能している。
【0024】
上記リード9A、9Bは、高熱伝導性を有する金属板から形成され、2つのリード9A、9Bのうち、一方のリード9Bの下端部12がLED素子6の下面に面して配置されており、LED素子6の発熱がリード9Bを介して効果的に放熱されるようになっている。
【0025】
さて、上記反射鏡7は、方物面形状に形成された反射鏡7を有し、この反射面7Aが上記反射型LEDチップ5の上面(光出射面)を覆うように配置されている。また、反射面7Aには、高い光反射率を有する例えばアルミニウムなどの金属膜、或いは、コールドミラーなどの光学薄膜が形成されている。
【0026】
すなわち、LED素子6の光出射面6Aから上方に向けて出射された光は反射鏡7の反射面7Aでチップケース8の底面8A側に向けて反射され、図7中破線矢印C、C’で示すように、チップケース8の底面8Aを放射面として光が照射される。反射型LEDチップ5と反射鏡7との間の空間7Bには、反射型LEDチップ5の保護を図るべく、エポキシ樹脂などの樹脂剤が充填されている。
【実施例1】
【0027】
次に本発明の実施例を示す。この無影灯には、光源に複数個の反射型LEDを用いて平行光を出射するユニットを構成している。このユニットを例えば2つ用いた場合について検討する。一般的に歯科治療用で用いられる無影灯の照射距離Lはおよそ650mmであるが、この照射距離Lが変化した場合の光源ユニット2間距離BをB=2L・tanθより求める。本実施例では無影灯としての適切な照射野を得るために入射角度をθ=4.5°とした。入射角度θ=4.5°とすると図10〜12のようになる。図10より照射距離L=400mm、入射角度θ=4.5°時に光源ユニット2間距離Bが63mmになることがわかる。図11より照射距離L=650mm、入射角度θ=4.5°時に光源ユニット2間距離Bが102mmになることがわかる。図12より照射距離L=1000mm、入射角度θ=4.5°時に光源ユニット2間距離Bが157mmになることがわかる。
【0028】
表1はこの結果をまとめたものである。これにより、入射角度θ=4.5°時は光源ユニット2間の距離Bは63mm〜157mm動かすことにより、歯科用の無影灯では一般的に利用される照射距離400mm〜1000mmまでの間で、照射野の大きさ一定で輪郭が鮮明な無影効果を得ることが可能となる。
【0029】
【表1】

【実施例2】
【0030】
次に本発明の別の実施例を図13〜15によって示す。光源ユニット2は実施例1と同様の構成としている。前記の通り一般的に歯科治療用で用いられる無影灯の照射距離Lはおよそ650mmであるがこの照射距離Lが変化した場合に光源ユニット2間の距離を固定した状態で、光源ユニット2からの入射角度θを変えた場合の、入射角度θと照射距離Lとの関係をθ=tan−1(B/2L)を用いて検討する。
光源ユニット2間を100mmとした場合、照射距離Lと入射角度θは表2のようになる。
【0031】
【表2】


これにより光源ユニット間距離が100mmの場合、入射角度θは図13〜15に示すように2.9°〜7.1°動かすことにより、歯科用の無影灯で一般的に利用される照射距離400mm〜1000mmの範囲で照射野の大きさ一定で輪郭が鮮明な無影効果を得られる。
【実施例3】
【0032】
次に本発明の別の実施例を示す。光源ユニット2の実施例1、2と同様の構成としている。光源ユニット2間距離Bと入射角度θを同時に変化させた時の照射距離Lの変化をL=B/(2tanθ)を用いて求める。
この式を用いて、光源間距離Bを100、200、300mmと変化させた時に、それぞれ入射角度θを10°、20°、30°と変化させた時の結果を示したものが表3である。
【0033】
【表3】

【0034】
このように、光源ユニット間距離Bと入射角度θを選択することにより、どの照射距離で光線をクロスさせるか計算から求めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の実施形態に係る無影灯の正面図である
【図2】光源ユニットの光線追跡図である
【図3】照射距離Lと光源ユニット間距離Bが変化した時の光線追跡図である
【図4】照射距離Lと光源ユニットの入射角度θが変化した時の光線追跡図である
【図5】光源ユニット間距離Bと入射角度θが変化した時の光線追跡図である
【図6】図2の光源ユニットのさらに中心部に光源ユニットを追加した時の光線追跡図である
【図7】反射型LEDチップの縦断面図である
【図8】反射型LEDチップの底面図である
【図9】反射型LEDチップの右側面図である
【図10】入射角度θ一定で照射距離Lが変化した時の光源ユニット間距離Bの変化を表す図である
【図11】図10と同様の図である
【図12】図10、図11と同様の図である
【図13】光源ユニット間距離B一定で照射距離Lを変化させた時の入射角度θの変化を表す図である
【図14】図13と同様の図である
【図15】図13、図14と同様の図である
【符号の説明】
【0036】
1 反射型LED
2 光源ユニット
3 ボリューム
4 光線
5 反射型LEDチップ
6 LED素子
6A LED素子光出射面
7 反射プリズム(反射体)
7A 反射面
8 チップケース
9A、9B リード
10 金属ワイヤ
11 ソケット
L 被照射対象物から任意の点Aまでの距離(照射距離としている)
θ 被照射対象物に対する垂線と光源からの出射される光線の入射角
A 被照射対象物からの任意の距離にある点
B 光源ユニット間距離
C、C’ LED素子からの光線
X 被照射対象物の位置
Y 光源ユニットの位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被照射対象物に対する垂線上にある、被照射対象物から距離Lにある任意の点Aを含む対称空間に、常に被照射対象物に指向する一対以上の平行光を出射するLED光源ユニットを置き、被照射対象物に対する垂線と光源ユニットから出射される光線の入射角度θが常に一定の角度を保持するとともに、照射距離Lの変化に応じて光源ユニット間の距離BをB=2L・tanθで変化させることにより、被照射対象物を中心とした一定領域に常に入射方向が異なる光線が指向され、照射野の大きさが一定となることを特徴とする無影灯照射器。
【請求項2】
被照射対象物に対する垂線上にある、被照射対象物から距離Lにある任意の点Aを含む対称空間に、常に被照射対象物に指向する一対以上の平行光を出射するLED光源ユニットを置き、照射距離Lの変化に応じて、被照射対象物に対する垂線と光源ユニットから出射される光線の入射角度θを変化させ、被照射対象物を中心とした一定領域に常に入射方向が異なる光線が指向され、照射野の大きさが一定となることを特徴とする無影灯照射器。
【請求項3】
被照射対象物に対する垂線上にある、被照射対象物から距離Lにある任意の点Aを含む対称空間に、常に被照射対象物に指向する一対以上の平行光を出射するLED光源ユニットを置き、照射距離Lの変化に応じて、光源ユニット間の距離Bと被照射対象物に対する垂線と光源ユニットから出射される光線の入射角度θを変化させても、被照射対象物を中心とした一定領域に常に入射方向の異なる光線が指向されており、照射野の大きさが一定であることを特徴とした無影灯照射器。
【請求項4】
被照射対象物に対する垂線上にある、被照射対象物から距離Lにある任意の点Aを含む対称空間に、常に被照射物に指向する一対以上の平行光を出射するLED光源ユニットを置き、そのLED光源ユニットから出射される光線が被照射対象物を指向するのに加え、被照射対象物上面より制御された平行光を被照射対象物に照射することにより被照射対象物からの距離Lが変化しても、照射野が一定で、光量を上げることを可能にした請求項1乃至3記載の無影灯照射器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2007−89853(P2007−89853A)
【公開日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−283800(P2005−283800)
【出願日】平成17年9月29日(2005.9.29)
【出願人】(000000192)岩崎電気株式会社 (533)
【Fターム(参考)】