LED照明基板用積層体及びそれを用いたLED照明
【課題】放熱性に優れると共に、構造がシンプルで生産性が高く、かつ安価なLED照明基板用積層体を提供し、高性能で安価なLED照明を提供する。
【解決手段】LED素子2を実装するためのLED照明基板用積層体1である。アルミニウム合金よりなる基材11と、絶縁塗膜層12と、高反射塗膜層13と、電極部14とを有する。電極部14は、LED素子2が備える端子21と電気的に接続する電極表面141を露出するように形成されている。
【解決手段】LED素子2を実装するためのLED照明基板用積層体1である。アルミニウム合金よりなる基材11と、絶縁塗膜層12と、高反射塗膜層13と、電極部14とを有する。電極部14は、LED素子2が備える端子21と電気的に接続する電極表面141を露出するように形成されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、LED素子を実装するためのLED照明基板用積層体及びそれを用いたLED照明に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境保全に貢献する照明としてLED照明が普及している。従来から使用されている白熱灯や蛍光灯と同等の光量を確保しつつ、消費電力を低く抑え、かつ長寿命とすることができる場合もあることから、省エネルギー化、ゴミの削減及び交換作業回数の低減が可能となる。
しかし、LED照明は、白熱灯や蛍光灯に比べ、高価であるため、低コスト化が求められている。また、LED照明に用いられるLED素子は固体半導体自体を発光体としているため、固体半導体に劣化が生じることが光量の低下につながる。固体半導体の劣化を早める要因の一つとして、点灯時にLED素子が発する熱があり、この熱を効率的に放熱し、長寿命化することが求められている。
【0003】
従来から用いられているLED照明におけるLED実装基板の実装例を図11に示す。
LED実装基板9は、平板上のアルミニウム板からなる基材91上に、導電接着テープ92によってLED組付体93を貼付けしてある。LED組付体93は、アルミニウム合金からなる台座部材937を備え、その上に複数の層を積層した台座一体型の積層構造を有している。LED組付体93の台座部材937の上面には、絶縁樹脂層936を形成してある。絶縁樹脂層936の上面には、白色レジスト層935と、複数の電極部934とが形成されている。電極934上には、複数のLED素子931が配されており、LED素子931が有する端子932を半田付けすることにより電極934と接続してある。また、電極934には、電源回路(図示略)と接続するための導線(図示略)が半田付けしてある。
【0004】
また、放熱性の向上を図る構造としては、金属製のリードフレームと高熱伝導絶縁性樹脂とを一体成形し、上記リードフレーム上にLED素子を直接実装する構造も開示されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−50563号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上述した構造においては、以下の問題点がある。
上述した台座一体型のLED組付体を導電接着テープによって基材上に実装する方法においては、上記LED組付体が有する上記台座部材の露出する表面積が小さいため、放熱性も小さく、上記台座部材のみでは十分な放熱性能を得られない。
【0007】
また、上記基材は比較的表面積が大きいため、上記LED素子の発する熱を上記基材へと効率良く伝えることで、放熱性を向上することができる。しかし、上記LED素子は、上記電極、上記高反射塗膜層及び上記絶縁塗膜層を介して台座部材に配され、該台座部材と上記基材とは、導電接着テープを介して実装されている。さらに、上記絶縁塗膜層の厚さは、80μm程度の厚さを有している場合が多い。このように、上記LED素子と上記基材との間に多くの構造部材が存在するため、その間における熱伝導効率が悪化する。それゆえ、上記LED素子の発する熱が上記基材へと伝わりにくく、上記基材が有する放熱性能を効果的に使用できない場合がある。
【0008】
また、特許文献1に示す構造においては、金属製のリードフレームと高熱伝導絶縁性樹脂とを一体成形し、上記リードフレーム上にLED素子を直接実装してある。そのため、LED素子が発した熱は効率良く上記リードフレームへと伝わる。しかし、高熱伝導絶縁性樹脂は、アルミニウム等の金属に比べ、熱伝導性が低いため、最終的な放熱性は金属には及ばず、十分な放熱性を得られない場合がある。また、高熱伝導絶縁性樹脂は、単価が高いため低コスト化が困難である。
【0009】
本発明は、かかる問題点に鑑みてなされたものであり、放熱性に優れると共に、構造がシンプルで生産性が高く、かつ安価なLED照明基板用積層体及び、高性能で安価なLED照明を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
第1の発明は、LED素子を実装するためのLED照明基板用積層体であって、
アルミニウム合金よりなる平板状の基材と、
該基材の表面に形成された電気的絶縁性を備えた絶縁塗膜層と、
該絶縁塗膜層上には、電気的絶縁性及び上記絶縁塗膜層よりも高い光反射特性を備えた高反射塗膜層と、電極部との両方が印刷成形されてなり、
該電極部は、上記LED素子が備える端子と電気的に接続するための電極表面を露出するように形成されていることを特徴とするLED照明基板用積層体にある(請求項1)。
【0011】
第2の発明は、第1の発明のLED照明基板用積層体を用いたLED照明であって、
上記LED照明基板用積層体に1つ又は複数のLED素子を実装したLED実装基板と、
アルミニウム合金よりなる放熱部材とを有し、
該放熱部材と上記LED実装基板とを直接的に接合してあることを特徴とするLED照明にある(請求項8)。
【発明の効果】
【0012】
第1の発明におけるLED照明基板用積層体は、上記基材の表面に上記絶縁塗膜層を形成し、該絶縁塗膜層上に上記高反射塗膜層及び上記電極部を印刷形成してある。そのため、LED素子を直接、上記電極部上に実装することができる。したがって、前述した台座一体型のLED組付体を実装する構造と比較して、上記LED素子と上記基材との間に存在する構成部材の数を低減することができる。それゆえ、上記LED素子と上記基材の間における熱伝導率を向上することができる。
【0013】
また、上記基材は、放熱性に優れるアルミニウム合金からなる。それゆえ、上記LED素子から発生し、上記基材へと伝わる熱を効率良く放熱することができる。また、アルミニウム合金板は、鋳物やダイキャスト品と異なり、連続ラインを用いて大量に効率よく製造することができる。そのため、素材コストを従来よりも大幅に低減することができる。また、アルミニウム合金の軽量である特性を活かして、軽量化を図ることもできる。また、上記高反射塗膜層を形成することにより、上記LED素子が発光した際に照射方向とは逆方向に拡散する光を効率良く照射方向に反射することができ、光の利用効率を高めることができる。
【0014】
第2の発明は、上述したLED照明基板用積層体にLED素子を実装した上記LED実装基板を用いたLED照明である。該LED照明は、アルミニウム合金よりなる放熱部材を有している。アルミニウム合金は上述のごとく安価で軽量な材料である。そのため、上記LED照明の低コスト化及び軽量化を図ることができる。また、該放熱部材と上記LED実装基板とは、直接的に接合されている。そのため、上記LED素子が発した熱を、上記基材から上記放熱部材へと効率的に伝えることができ、さらに放熱性能を向上することができる。それゆえ、LED素子の特性を有効に発揮させ高性能で長寿命のLED照明を得ることができる。
【0015】
以上のごとく、本発明によれば、放熱性に優れると共に、構造がシンプルで生産性が高く、かつ安価なLED照明基板用積層体及び、高性能で安価なLED照明を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】実施例1における、LED照明基板用積層体の平面視図。
【図2】実施例1における、図1のA−A線矢視相当部分拡大断面図。
【図3】実施例2における、LED照明基板用積層体の平面視図。
【図4】実施例2における、図3のB−B線矢視相当部分拡大断面図。
【図5】実施例3における、LED照明を示す図1のC−C線矢視相当の断面図。
【図6】実施例3における、かしめ固定前のLED実装基板及び放熱部材を示す断面説明図。
【図7】実施例3における、第1回目のかしめ加工方法を示す説明図。
【図8】実施例3における、第2回目のかしめ加工方法を示す説明図。
【図9】実施例3における、第3回目のかしめ加工方法を示す説明図。
【図10】実施例3における、かしめ固定後のLED実装基板及び放熱部材を示す断面説明図。
【図11】従来例における、LED実装基板の構造を示す部分断面拡大説明図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
上述したアルミニウム合金とは、アルミニウムを主成分とした種々の合金を指し、いわゆる純アルミニウムも含まれるものである。
【0018】
上記LED素子は、少なくとも、発光体であるLEDと、該LEDと電気的に接続した陽極端子及び陰極端子とを有するものである。また、上記LED素子は、上記LEDの照射面を覆う透光性のレンズ部や、上記LEDの側面に反射板を兼ねた枠体を設けたもの等、種々のLED素子を用いることができる。
【0019】
また、上記絶縁塗膜層の上面に印刷形成される上記高反射塗膜層及び上記電極部の形成順序は、上記高反射塗膜層を先に印刷形成し、上記電極部をその後に印刷形成してもよいし、その逆の順序でも良い。尚、いずれの順序で上記高反射塗膜層及び上記電極部を形成した場合においても、上記電極部は、少なくとも上記LED素子と上記電極部を接続する接続部が露出して形成され、かつ隣接する電極部同士は、上記高反射塗膜層により、電気的に絶縁されている必要がある。
【0020】
また、上記高反射塗膜層及び上記電極部の印刷形成の方法としては、スクリーン印刷を用いることが好ましい。
この場合には、所望の範囲に上記高反射塗膜層及び上記電極部を形成することができるため、上述した構成を容易に形成することができる。
【0021】
また、上記絶縁塗膜層は、その厚さが5μm〜50μmであり、かつ絶縁破壊電圧が2kV以上であることが好ましい(請求項2)。
この場合には、上記絶縁塗膜層に必要な絶縁性能と熱伝導性を確保することができる。
上記絶縁塗膜層の厚さが5μm未満の場合には、絶縁性能が不十分となり、絶縁不良が起こる場合がある。
上記絶縁塗膜層の厚さが50μmを超えた場合には、該絶縁塗膜層により上記LED素子と上記基材との間における熱伝導性が悪化し、十分な放熱性能が得られない場合がある。
絶縁破壊電圧が2kV未満の場合には、絶縁性能が不十分となり、絶縁不良が起こる場合がある。
【0022】
また、上記絶縁塗膜層の材料は、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、ポリブチレンテフタレート樹脂、ポリスチレンテレフタレート樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、シリコーン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂のうち少なくとも1種からなることが好ましい(請求項3)。
上述した材料は、絶縁性が十分に高く、その厚さを薄くした場合においても、必要な絶縁性能を得ることができる。そのため、絶縁性能を確保しつつ、上記絶縁塗膜層の厚さを薄くし熱伝導性を向上することができる。それゆえ、放熱性能をさらに向上することができる。
【0023】
また、上記高反射塗膜層は、430nm〜460nmの波長域の全域で分光反射率が95%以上、または、全波長域における全反射率が95%以上であることが好ましい(請求項4)。
この場合には、LED素子が発する光を効果的に利用することができ、光量を増大することができる。すなわち、上記LED照明基板用積層体にLED素子を実装し、LED照明として使用した場合、上記LED素子が発する光の一部は拡散し、照射方向とは反対側に配された上記LED照明基板用積層体へと照射される。この光を効果的に反射することにより、照射方向における光量を増大することができる。
上記分光反射率が95%未満又は上記全反射率が95%未満の場合、光量の増大効果が得られにくい場合がある。
【0024】
また、上記高反射塗膜層は、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、フレタン樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリスチレンテレフタレート樹脂、シリコーン樹脂のうち少なくとも1種を基剤とし、該基剤に高反射物質として、2,5−チオフェンジイル(5−tert−ブチル−1,3−ベンゾキサゾール)、酸化チタン、炭酸カルシウム、アルミナ、酸化マグネシウム、硫酸マグネシウム、酸化亜鉛、硝子、窒化アルミニウム、シリカ、酸化ジルコニウムのうち1種以上を含有するものである。
【0025】
また、上記高反射塗装膜の絶縁破壊電圧は、2kV以上であることが好ましい。
この場合には、上記電極部同士及び該電極部と上記基材との間に必要な電気的絶縁性能を確保することができる。絶縁破壊電圧が2kV未満の場合には、絶縁性能が不十分となり、絶縁不良が起こる場合がある。
【0026】
また、上記基材の両面に上記絶縁塗膜層及び上記高反射塗膜層のいずれか一方または両方を形成することが好ましい(請求項5)。
この場合には、上記表面と反対側の面における熱放射量を増大することができる。そのため、放熱効率をより向上することができる。
【0027】
また、上述したLED照明において、上記実装基板と上記放熱部材とは直接的に接合されている。この接合方法としては、公知の種々の接合方法を採用することができる。中でも、上記実装基板と上記放熱部材とは、両者をかしめることによって接合してあることが好ましい(請求項6)。
この場合、上記実装基板と上記放熱部材の接合密着性を高めることができ、LED素子から発生した熱を上記LED照明基板用積層体から上記放熱部材へとより効率的に伝えることができる。そのため、放熱部材から効率よく放熱することができる。それゆえ、LED素子の特性をより有効に発揮させ高性能で長寿命のLED照明を得ることができる。
【実施例】
【0028】
(実施例1)
本発明の実施例にかかるLED照明基板用積層体につき、図1及び図2を用いて説明する。
本例のLED照明基板用積層体1は、図1及び図2に示すごとく、アルミニウム合金よりなる平板状の基材11と、該基材11の表面に電気的絶縁性を備えた絶縁塗膜層12を形成してある。また、該絶縁塗膜層12上には、電気的絶縁性及び絶縁塗膜層12よりも高い光反射特性を備えた高反射塗膜層13と電極部14の両方を印刷形成してある。該電極部14は、LED素子2が備える端子21と電気的に接続するための電極表面141を露出するように形成されている。
【0029】
以下詳説する。
本例に示すLED照明基板用積層体1は、LED素子2を実装することでLED実装基板101(図1)を形成し、LED電球10(図5)の構造部材をなすものである。LED照明基板用積層体1は、図1及び図2に示すごとく、アルミニウム合金よりなる円板状の基材11を有し、その表面と裏面の両面に絶縁塗膜層12を形成してある。該絶縁塗膜層12の材料は、エポキシ樹脂からなり、電着塗装により形成した。電着塗装をした後、塗装焼付処理を行い、塗装を焼付硬化した。塗装の焼付処理は、雰囲気温度105℃にて15min加熱保持後、雰囲気温度190℃にて40min加熱保持し、さらに雰囲気温度260℃にて10min加熱保持する条件により行った。また、絶縁塗膜層の厚さは20μmとし、その絶縁破壊電圧は4.5kVである。
【0030】
図2に破線で示すごとく、基材11の表面側において、絶縁塗膜層12の上面には、電極部14を印刷形成してある。該電極部14は、バインダーがポリエステル樹脂からなり、導電性フィラーが銀粉末からなる導電性塗料を用いて、スクリーン印刷により形成した
。電極部14を形成した後、仮焼付を行い、電極部14をなす導電性塗料を仮固着させた。電極部14の仮焼付処理は、雰囲気温度180℃にて5min加熱保持する条件にて行った。本例においては略台形形状を有する6つの電極部14を基材11がなす円板の内側において、円周方向に略同間隔を介して形成してある。
【0031】
また、図2に示すごとく、絶縁塗膜層12の上面には高反射塗膜層13が印刷形成されている。高反射塗膜層13は、不飽和ポリエステル樹脂塗料に高反射物質である硫酸バリウムを含有した高反射塗料よりなる。該高反射塗料をスクリーン印刷により厚さ20μmの高反射塗膜層13を形成した。このとき、電極部14の電極表面141上においては、LED素子2の端子21と接続する接続面142を露出して高反射塗膜層13を形成してある。高反射塗膜層13を形成した後、焼付処理を行い、高反射塗膜層13をなす高反射塗料を焼付硬化させる。高反射塗膜層13の焼付処理は、雰囲気温度150℃にて60min加熱保持する条件にて行った。尚、該高反射塗膜層13において、全反射率は95%以上である。
【0032】
上述のごとく構成されたLED照明基板用積層体1の電極表面141の接続面142上に低融点ハンダペーストを塗布し、LED素子2が有する2つの端子21が、隣接する2つの電極部14の接続面142にそれぞれ接続するように配した。その後、雰囲気温度100℃にて20秒加熱保持し、LED素子2と電極部14とを半田付けし、図1に示す実装基板101を得た。
【0033】
次に、本例の作用効果を説明する。
本例におけるLED照明基板用積層体1は、図2に示すごとく、基材11の表面に絶縁塗膜層12を形成し、該絶縁塗膜層12上に高反射塗膜層13と電極部14の両方を印刷形成してある。そのため、LED素子2を電極部14上へ直接、実装することができる。本例における絶縁塗膜層12の厚さ及び高反射塗膜層13の厚さは、それぞれ20μmと非常に薄いため、熱伝導性への影響が小さい。したがって、LED素子2と基材11の間における熱伝導率を向上することができる。
【0034】
また、基材11の材料であるアルミニウム合金は、放熱性に優れ軽量である。そのため、LED素子2が発する熱を、基材11から効果的に放熱することができ、かつ軽量化を図ることもできる。また、アルミニウム合金板は、鋳物やダイキャスト品と異なり、連続ラインを用いて大量に効率よく製造することができる。そのため、素材コストを従来よりも大幅に低減することができる。また、高反射塗膜層13を形成することにより、上記LED素子2が発光した際に照射方向とは逆方向に拡散する光を効率良く照射方向に反射することができ、光の利用効率を高めることができる。
【0035】
また、絶縁塗膜層12は、その厚さが20μmであり、かつ絶縁破壊電圧が4.5kVである。そのため、絶縁塗膜層12に必要な絶縁性能を確保すると共に、LED素子2と基材11との間における熱伝導性の悪化を防止することができる。
【0036】
また、絶縁塗膜層12の材料は、スルホニウム含有タイプの還元不導体化されたエポキシ樹脂からなる。そのため、絶縁性が十分に高く、厚さを薄くした場合においても、必要な絶縁性能を得ることができる。したがって、絶縁性能を確保しつつ、絶縁塗膜層の厚さを薄くし熱伝導性を向上することができる。それゆえ、放熱性能をさらに向上することができる。
【0037】
また、高反射塗膜層13は、全反射率が95%以上である。そのため、LED素子2が発光した際に拡散する光を効果的に利用することができ、光量を増大することができる。すなわち、LED照明基板用積層体1にLED素子2を実装し、LED照明10として使用した場合、LED素子2が発する光の一部は拡散し、照射方向とは反対側に配されたLED照明基板用積層体1側へと照射される。この光を効果的に反射することにより、照射方向における光量を増大することができる。
【0038】
また、基材11の両面に絶縁塗膜層12を形成してある。そのため、表面と反対側に配される面における熱放射量を増大することができる。そのため、放熱効率をより向上することができる。
このように、本例によれば、放熱性に優れると共に、構造がシンプルで生産性が高く、かつ安価なLED照明基板用積層体を提供することができる。
【0039】
(実施例2)
本例は、図3及び図4に示すごとく、実施例1に示すLED照明基板用積層体1の高反射塗膜層13と電極部14の形成順序を変更した例である。
本例においては、高反射塗膜層13を先に形成し、電極部14をその後に形成してある。高反射塗膜層13は、絶縁塗膜層12上において、電極部14を形成する部分以外の範囲に形成した。高反射塗膜層13を形成した後、仮焼付を行い、高反射塗膜層13を仮固着させた。高反射塗膜層13の仮焼付処理は、雰囲気温度150℃にて5min加熱保持する条件にて行った。尚、本例における高反射塗膜層13は、シリコーンをベース材とした高反射白色レジストからなる。該高反射白色レジストは、430nm〜460nmの波長域の全域で分光反射率が95%以上である。
【0040】
次に、絶縁塗膜層12上において、高反射塗膜層13が形成されていない部分に、スクリーン印刷によって、電極部14を形成する。電極部14を形成した後、焼付処理を行うことにより、高反射塗膜層13及び電極部14を焼付硬化させる。高反射塗膜層13及び電極部14の焼付処理は、雰囲気温度180℃にて10min加熱保持する条件にて行った。その他の構成は、実施例1と同様である。
【0041】
本例においては、高反射塗膜層13は、高反射白色レジストからなり、430nm〜460nmの波長域の全域で分光反射率が95%以上である。そのため、LED素子2が発光した際に拡散する光を効果的に利用することができ、光量を増大することができる。すなわち、LED照明基板用積層体1にLED素子2を実装し、LED照明10として使用した場合、LED素子2が発する光の一部は拡散し、照射方向とは反対側に配されたLED照明基板用積層体1側へと照射される。この光を効果的に反射することにより、照射方向における光量を増大することができる。その他、実施例1と同様の作用効果を有する。
【0042】
尚、上述した実施例1及び実施例2においては円板上の基材に絶縁塗膜層、高反射塗膜層及び電極部を形成したが、加工前のアルミニウム合金の板材において、絶縁塗膜層、高反射塗膜層及び電極部を形成した後、プレス打ち抜き等により、所望の形状とすることもできる。
【0043】
(実施例3)
本例は、図5に示すごとく、実施例1に示すLED照明基板用積層体1を用いたLED電球10である。図1に示すごとく、LED照明基板用積層体1に5つのLED素子2を実装したLED実装基板101と、アルミニウム合金よりなる放熱部材102とを有する。該放熱部材102とLED実装基板101とは、両者をかしめることによって接合してある。
【0044】
本例に示すLED照明10は、LED実装基板101と、放熱部材102と、透光性の材料からなるカバー103と、家屋等の給電ソケットと接続するための口金104とを有している。カバー103は、放熱部材102におけるLED電球10が光を照射する側の開口部に配設してある。カバー103は、軽量化及び破損防止のため、透光性の白色樹脂からなる。また、口金104は、放熱部材102におけるカバー103と反対側に位置する開口部に配設してある。口金104は、放熱部材102の内側に設けられた、交流電流を直流電流へと変換し、LED素子へと電流を供給するためのAC−DC変換回路(図示略)と接続してある。
【0045】
放熱部材102は、素材として、アルミニウム合金板を採用した。次に、上記素材を用い、これに塑性加工を加えることにより図6に示す略円錐状に成形して放熱部材102を作製した。放熱部材102は、軸方向両端が開口しており、LED実装基板101と接合される大径側の開口端部105のみは、軸方向に沿って真っ直ぐに伸びるストレート形状となっている。
また、本例のLED照明基板用積層体1においては、図6に示すごとく、積層構造を形成する前の段階で、基材11の外周縁部を略直角に立ち上げる絞り加工を施し、フランジ部112を形成してある。
【0046】
図6〜図9に示すごとく、LED実装基板101と放熱部材102との接合は、かしめ加工により行う。
まず、図6に示すごとく、放熱部材102の開口端部105の内側に、フランジ部112が外側に向くようにLED実装基板101を挿入配置する。
次に、図7に示すごとく、第1回目のプレス加工を施して、放熱部材3の開口端部105の上半部106をLED実装基板101のフランジ部112の先端部分を起点として、径方向内方に向けて斜めになるよう成形する。
【0047】
次に、図8に示すごとく、第2回目のプレス加工を施して、放熱部材102の開口端部105の上半部106が軸方向に略直交する方向に向くまで成形する。
次に、図9に示すごとく、第3回目のプレス加工を施して、放熱部材102の開口端部105の上半部106の先端部分107を、LED実装基板101のフランジ部112の内周面に近づくように折り返した形状となるように成形する。
これにより、かしめ加工が完了し、LED実装基板101と放熱部材102とが全周にわたって接合される。尚、本例のかしめ加工は、巻きじめ加工と呼ばれることもある。
【0048】
得られたLED電球用部材1は、上記のごとく、2つのアルミニウム合金板を素材とした部品を組み合わせて構成されている。アルミニウム合金板は、上述したごとく、生産性に優れた材料である。そのため、素材コストを従来よりも大幅に低減することができる。また、アルミニウム合金板の軽量である特性を活かして、LED電球用部材1全体の軽量化を図ることもできる。
【0049】
また、LED実装基板101と放熱部材102とは、上記のごとくかしめ加工によって接合してある。これにより、LED実装基板101と放熱部材102の接合密着性を高めることができ、LED素子2から発生した熱をLED実装基板101から放熱部材102へと効率的に伝えることができ、かつ、放熱部材102から効率よく放熱することができる。それ故、LED電球用部材1を用いれば、LED素子の特性を有効に発揮させ高性能で長寿命のLED電球を得ることができる。
尚、本例においては、LED電球を一例としたが、これに限るものではなく、上述したLED照明基板用積層体及びLED照明は、LEDを用いた種々の照明装置に用いることができる。
【符号の説明】
【0050】
1 LED照明基板用積層体
10 LED電球
101 LED実装基板
102 放熱部材
11 基材
12 絶縁塗膜層
13 高反射塗膜層
14 電極部
141 電極表面
2 LED素子
【技術分野】
【0001】
本発明は、LED素子を実装するためのLED照明基板用積層体及びそれを用いたLED照明に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境保全に貢献する照明としてLED照明が普及している。従来から使用されている白熱灯や蛍光灯と同等の光量を確保しつつ、消費電力を低く抑え、かつ長寿命とすることができる場合もあることから、省エネルギー化、ゴミの削減及び交換作業回数の低減が可能となる。
しかし、LED照明は、白熱灯や蛍光灯に比べ、高価であるため、低コスト化が求められている。また、LED照明に用いられるLED素子は固体半導体自体を発光体としているため、固体半導体に劣化が生じることが光量の低下につながる。固体半導体の劣化を早める要因の一つとして、点灯時にLED素子が発する熱があり、この熱を効率的に放熱し、長寿命化することが求められている。
【0003】
従来から用いられているLED照明におけるLED実装基板の実装例を図11に示す。
LED実装基板9は、平板上のアルミニウム板からなる基材91上に、導電接着テープ92によってLED組付体93を貼付けしてある。LED組付体93は、アルミニウム合金からなる台座部材937を備え、その上に複数の層を積層した台座一体型の積層構造を有している。LED組付体93の台座部材937の上面には、絶縁樹脂層936を形成してある。絶縁樹脂層936の上面には、白色レジスト層935と、複数の電極部934とが形成されている。電極934上には、複数のLED素子931が配されており、LED素子931が有する端子932を半田付けすることにより電極934と接続してある。また、電極934には、電源回路(図示略)と接続するための導線(図示略)が半田付けしてある。
【0004】
また、放熱性の向上を図る構造としては、金属製のリードフレームと高熱伝導絶縁性樹脂とを一体成形し、上記リードフレーム上にLED素子を直接実装する構造も開示されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−50563号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上述した構造においては、以下の問題点がある。
上述した台座一体型のLED組付体を導電接着テープによって基材上に実装する方法においては、上記LED組付体が有する上記台座部材の露出する表面積が小さいため、放熱性も小さく、上記台座部材のみでは十分な放熱性能を得られない。
【0007】
また、上記基材は比較的表面積が大きいため、上記LED素子の発する熱を上記基材へと効率良く伝えることで、放熱性を向上することができる。しかし、上記LED素子は、上記電極、上記高反射塗膜層及び上記絶縁塗膜層を介して台座部材に配され、該台座部材と上記基材とは、導電接着テープを介して実装されている。さらに、上記絶縁塗膜層の厚さは、80μm程度の厚さを有している場合が多い。このように、上記LED素子と上記基材との間に多くの構造部材が存在するため、その間における熱伝導効率が悪化する。それゆえ、上記LED素子の発する熱が上記基材へと伝わりにくく、上記基材が有する放熱性能を効果的に使用できない場合がある。
【0008】
また、特許文献1に示す構造においては、金属製のリードフレームと高熱伝導絶縁性樹脂とを一体成形し、上記リードフレーム上にLED素子を直接実装してある。そのため、LED素子が発した熱は効率良く上記リードフレームへと伝わる。しかし、高熱伝導絶縁性樹脂は、アルミニウム等の金属に比べ、熱伝導性が低いため、最終的な放熱性は金属には及ばず、十分な放熱性を得られない場合がある。また、高熱伝導絶縁性樹脂は、単価が高いため低コスト化が困難である。
【0009】
本発明は、かかる問題点に鑑みてなされたものであり、放熱性に優れると共に、構造がシンプルで生産性が高く、かつ安価なLED照明基板用積層体及び、高性能で安価なLED照明を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
第1の発明は、LED素子を実装するためのLED照明基板用積層体であって、
アルミニウム合金よりなる平板状の基材と、
該基材の表面に形成された電気的絶縁性を備えた絶縁塗膜層と、
該絶縁塗膜層上には、電気的絶縁性及び上記絶縁塗膜層よりも高い光反射特性を備えた高反射塗膜層と、電極部との両方が印刷成形されてなり、
該電極部は、上記LED素子が備える端子と電気的に接続するための電極表面を露出するように形成されていることを特徴とするLED照明基板用積層体にある(請求項1)。
【0011】
第2の発明は、第1の発明のLED照明基板用積層体を用いたLED照明であって、
上記LED照明基板用積層体に1つ又は複数のLED素子を実装したLED実装基板と、
アルミニウム合金よりなる放熱部材とを有し、
該放熱部材と上記LED実装基板とを直接的に接合してあることを特徴とするLED照明にある(請求項8)。
【発明の効果】
【0012】
第1の発明におけるLED照明基板用積層体は、上記基材の表面に上記絶縁塗膜層を形成し、該絶縁塗膜層上に上記高反射塗膜層及び上記電極部を印刷形成してある。そのため、LED素子を直接、上記電極部上に実装することができる。したがって、前述した台座一体型のLED組付体を実装する構造と比較して、上記LED素子と上記基材との間に存在する構成部材の数を低減することができる。それゆえ、上記LED素子と上記基材の間における熱伝導率を向上することができる。
【0013】
また、上記基材は、放熱性に優れるアルミニウム合金からなる。それゆえ、上記LED素子から発生し、上記基材へと伝わる熱を効率良く放熱することができる。また、アルミニウム合金板は、鋳物やダイキャスト品と異なり、連続ラインを用いて大量に効率よく製造することができる。そのため、素材コストを従来よりも大幅に低減することができる。また、アルミニウム合金の軽量である特性を活かして、軽量化を図ることもできる。また、上記高反射塗膜層を形成することにより、上記LED素子が発光した際に照射方向とは逆方向に拡散する光を効率良く照射方向に反射することができ、光の利用効率を高めることができる。
【0014】
第2の発明は、上述したLED照明基板用積層体にLED素子を実装した上記LED実装基板を用いたLED照明である。該LED照明は、アルミニウム合金よりなる放熱部材を有している。アルミニウム合金は上述のごとく安価で軽量な材料である。そのため、上記LED照明の低コスト化及び軽量化を図ることができる。また、該放熱部材と上記LED実装基板とは、直接的に接合されている。そのため、上記LED素子が発した熱を、上記基材から上記放熱部材へと効率的に伝えることができ、さらに放熱性能を向上することができる。それゆえ、LED素子の特性を有効に発揮させ高性能で長寿命のLED照明を得ることができる。
【0015】
以上のごとく、本発明によれば、放熱性に優れると共に、構造がシンプルで生産性が高く、かつ安価なLED照明基板用積層体及び、高性能で安価なLED照明を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】実施例1における、LED照明基板用積層体の平面視図。
【図2】実施例1における、図1のA−A線矢視相当部分拡大断面図。
【図3】実施例2における、LED照明基板用積層体の平面視図。
【図4】実施例2における、図3のB−B線矢視相当部分拡大断面図。
【図5】実施例3における、LED照明を示す図1のC−C線矢視相当の断面図。
【図6】実施例3における、かしめ固定前のLED実装基板及び放熱部材を示す断面説明図。
【図7】実施例3における、第1回目のかしめ加工方法を示す説明図。
【図8】実施例3における、第2回目のかしめ加工方法を示す説明図。
【図9】実施例3における、第3回目のかしめ加工方法を示す説明図。
【図10】実施例3における、かしめ固定後のLED実装基板及び放熱部材を示す断面説明図。
【図11】従来例における、LED実装基板の構造を示す部分断面拡大説明図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
上述したアルミニウム合金とは、アルミニウムを主成分とした種々の合金を指し、いわゆる純アルミニウムも含まれるものである。
【0018】
上記LED素子は、少なくとも、発光体であるLEDと、該LEDと電気的に接続した陽極端子及び陰極端子とを有するものである。また、上記LED素子は、上記LEDの照射面を覆う透光性のレンズ部や、上記LEDの側面に反射板を兼ねた枠体を設けたもの等、種々のLED素子を用いることができる。
【0019】
また、上記絶縁塗膜層の上面に印刷形成される上記高反射塗膜層及び上記電極部の形成順序は、上記高反射塗膜層を先に印刷形成し、上記電極部をその後に印刷形成してもよいし、その逆の順序でも良い。尚、いずれの順序で上記高反射塗膜層及び上記電極部を形成した場合においても、上記電極部は、少なくとも上記LED素子と上記電極部を接続する接続部が露出して形成され、かつ隣接する電極部同士は、上記高反射塗膜層により、電気的に絶縁されている必要がある。
【0020】
また、上記高反射塗膜層及び上記電極部の印刷形成の方法としては、スクリーン印刷を用いることが好ましい。
この場合には、所望の範囲に上記高反射塗膜層及び上記電極部を形成することができるため、上述した構成を容易に形成することができる。
【0021】
また、上記絶縁塗膜層は、その厚さが5μm〜50μmであり、かつ絶縁破壊電圧が2kV以上であることが好ましい(請求項2)。
この場合には、上記絶縁塗膜層に必要な絶縁性能と熱伝導性を確保することができる。
上記絶縁塗膜層の厚さが5μm未満の場合には、絶縁性能が不十分となり、絶縁不良が起こる場合がある。
上記絶縁塗膜層の厚さが50μmを超えた場合には、該絶縁塗膜層により上記LED素子と上記基材との間における熱伝導性が悪化し、十分な放熱性能が得られない場合がある。
絶縁破壊電圧が2kV未満の場合には、絶縁性能が不十分となり、絶縁不良が起こる場合がある。
【0022】
また、上記絶縁塗膜層の材料は、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、ポリブチレンテフタレート樹脂、ポリスチレンテレフタレート樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、シリコーン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂のうち少なくとも1種からなることが好ましい(請求項3)。
上述した材料は、絶縁性が十分に高く、その厚さを薄くした場合においても、必要な絶縁性能を得ることができる。そのため、絶縁性能を確保しつつ、上記絶縁塗膜層の厚さを薄くし熱伝導性を向上することができる。それゆえ、放熱性能をさらに向上することができる。
【0023】
また、上記高反射塗膜層は、430nm〜460nmの波長域の全域で分光反射率が95%以上、または、全波長域における全反射率が95%以上であることが好ましい(請求項4)。
この場合には、LED素子が発する光を効果的に利用することができ、光量を増大することができる。すなわち、上記LED照明基板用積層体にLED素子を実装し、LED照明として使用した場合、上記LED素子が発する光の一部は拡散し、照射方向とは反対側に配された上記LED照明基板用積層体へと照射される。この光を効果的に反射することにより、照射方向における光量を増大することができる。
上記分光反射率が95%未満又は上記全反射率が95%未満の場合、光量の増大効果が得られにくい場合がある。
【0024】
また、上記高反射塗膜層は、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、フレタン樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリスチレンテレフタレート樹脂、シリコーン樹脂のうち少なくとも1種を基剤とし、該基剤に高反射物質として、2,5−チオフェンジイル(5−tert−ブチル−1,3−ベンゾキサゾール)、酸化チタン、炭酸カルシウム、アルミナ、酸化マグネシウム、硫酸マグネシウム、酸化亜鉛、硝子、窒化アルミニウム、シリカ、酸化ジルコニウムのうち1種以上を含有するものである。
【0025】
また、上記高反射塗装膜の絶縁破壊電圧は、2kV以上であることが好ましい。
この場合には、上記電極部同士及び該電極部と上記基材との間に必要な電気的絶縁性能を確保することができる。絶縁破壊電圧が2kV未満の場合には、絶縁性能が不十分となり、絶縁不良が起こる場合がある。
【0026】
また、上記基材の両面に上記絶縁塗膜層及び上記高反射塗膜層のいずれか一方または両方を形成することが好ましい(請求項5)。
この場合には、上記表面と反対側の面における熱放射量を増大することができる。そのため、放熱効率をより向上することができる。
【0027】
また、上述したLED照明において、上記実装基板と上記放熱部材とは直接的に接合されている。この接合方法としては、公知の種々の接合方法を採用することができる。中でも、上記実装基板と上記放熱部材とは、両者をかしめることによって接合してあることが好ましい(請求項6)。
この場合、上記実装基板と上記放熱部材の接合密着性を高めることができ、LED素子から発生した熱を上記LED照明基板用積層体から上記放熱部材へとより効率的に伝えることができる。そのため、放熱部材から効率よく放熱することができる。それゆえ、LED素子の特性をより有効に発揮させ高性能で長寿命のLED照明を得ることができる。
【実施例】
【0028】
(実施例1)
本発明の実施例にかかるLED照明基板用積層体につき、図1及び図2を用いて説明する。
本例のLED照明基板用積層体1は、図1及び図2に示すごとく、アルミニウム合金よりなる平板状の基材11と、該基材11の表面に電気的絶縁性を備えた絶縁塗膜層12を形成してある。また、該絶縁塗膜層12上には、電気的絶縁性及び絶縁塗膜層12よりも高い光反射特性を備えた高反射塗膜層13と電極部14の両方を印刷形成してある。該電極部14は、LED素子2が備える端子21と電気的に接続するための電極表面141を露出するように形成されている。
【0029】
以下詳説する。
本例に示すLED照明基板用積層体1は、LED素子2を実装することでLED実装基板101(図1)を形成し、LED電球10(図5)の構造部材をなすものである。LED照明基板用積層体1は、図1及び図2に示すごとく、アルミニウム合金よりなる円板状の基材11を有し、その表面と裏面の両面に絶縁塗膜層12を形成してある。該絶縁塗膜層12の材料は、エポキシ樹脂からなり、電着塗装により形成した。電着塗装をした後、塗装焼付処理を行い、塗装を焼付硬化した。塗装の焼付処理は、雰囲気温度105℃にて15min加熱保持後、雰囲気温度190℃にて40min加熱保持し、さらに雰囲気温度260℃にて10min加熱保持する条件により行った。また、絶縁塗膜層の厚さは20μmとし、その絶縁破壊電圧は4.5kVである。
【0030】
図2に破線で示すごとく、基材11の表面側において、絶縁塗膜層12の上面には、電極部14を印刷形成してある。該電極部14は、バインダーがポリエステル樹脂からなり、導電性フィラーが銀粉末からなる導電性塗料を用いて、スクリーン印刷により形成した
。電極部14を形成した後、仮焼付を行い、電極部14をなす導電性塗料を仮固着させた。電極部14の仮焼付処理は、雰囲気温度180℃にて5min加熱保持する条件にて行った。本例においては略台形形状を有する6つの電極部14を基材11がなす円板の内側において、円周方向に略同間隔を介して形成してある。
【0031】
また、図2に示すごとく、絶縁塗膜層12の上面には高反射塗膜層13が印刷形成されている。高反射塗膜層13は、不飽和ポリエステル樹脂塗料に高反射物質である硫酸バリウムを含有した高反射塗料よりなる。該高反射塗料をスクリーン印刷により厚さ20μmの高反射塗膜層13を形成した。このとき、電極部14の電極表面141上においては、LED素子2の端子21と接続する接続面142を露出して高反射塗膜層13を形成してある。高反射塗膜層13を形成した後、焼付処理を行い、高反射塗膜層13をなす高反射塗料を焼付硬化させる。高反射塗膜層13の焼付処理は、雰囲気温度150℃にて60min加熱保持する条件にて行った。尚、該高反射塗膜層13において、全反射率は95%以上である。
【0032】
上述のごとく構成されたLED照明基板用積層体1の電極表面141の接続面142上に低融点ハンダペーストを塗布し、LED素子2が有する2つの端子21が、隣接する2つの電極部14の接続面142にそれぞれ接続するように配した。その後、雰囲気温度100℃にて20秒加熱保持し、LED素子2と電極部14とを半田付けし、図1に示す実装基板101を得た。
【0033】
次に、本例の作用効果を説明する。
本例におけるLED照明基板用積層体1は、図2に示すごとく、基材11の表面に絶縁塗膜層12を形成し、該絶縁塗膜層12上に高反射塗膜層13と電極部14の両方を印刷形成してある。そのため、LED素子2を電極部14上へ直接、実装することができる。本例における絶縁塗膜層12の厚さ及び高反射塗膜層13の厚さは、それぞれ20μmと非常に薄いため、熱伝導性への影響が小さい。したがって、LED素子2と基材11の間における熱伝導率を向上することができる。
【0034】
また、基材11の材料であるアルミニウム合金は、放熱性に優れ軽量である。そのため、LED素子2が発する熱を、基材11から効果的に放熱することができ、かつ軽量化を図ることもできる。また、アルミニウム合金板は、鋳物やダイキャスト品と異なり、連続ラインを用いて大量に効率よく製造することができる。そのため、素材コストを従来よりも大幅に低減することができる。また、高反射塗膜層13を形成することにより、上記LED素子2が発光した際に照射方向とは逆方向に拡散する光を効率良く照射方向に反射することができ、光の利用効率を高めることができる。
【0035】
また、絶縁塗膜層12は、その厚さが20μmであり、かつ絶縁破壊電圧が4.5kVである。そのため、絶縁塗膜層12に必要な絶縁性能を確保すると共に、LED素子2と基材11との間における熱伝導性の悪化を防止することができる。
【0036】
また、絶縁塗膜層12の材料は、スルホニウム含有タイプの還元不導体化されたエポキシ樹脂からなる。そのため、絶縁性が十分に高く、厚さを薄くした場合においても、必要な絶縁性能を得ることができる。したがって、絶縁性能を確保しつつ、絶縁塗膜層の厚さを薄くし熱伝導性を向上することができる。それゆえ、放熱性能をさらに向上することができる。
【0037】
また、高反射塗膜層13は、全反射率が95%以上である。そのため、LED素子2が発光した際に拡散する光を効果的に利用することができ、光量を増大することができる。すなわち、LED照明基板用積層体1にLED素子2を実装し、LED照明10として使用した場合、LED素子2が発する光の一部は拡散し、照射方向とは反対側に配されたLED照明基板用積層体1側へと照射される。この光を効果的に反射することにより、照射方向における光量を増大することができる。
【0038】
また、基材11の両面に絶縁塗膜層12を形成してある。そのため、表面と反対側に配される面における熱放射量を増大することができる。そのため、放熱効率をより向上することができる。
このように、本例によれば、放熱性に優れると共に、構造がシンプルで生産性が高く、かつ安価なLED照明基板用積層体を提供することができる。
【0039】
(実施例2)
本例は、図3及び図4に示すごとく、実施例1に示すLED照明基板用積層体1の高反射塗膜層13と電極部14の形成順序を変更した例である。
本例においては、高反射塗膜層13を先に形成し、電極部14をその後に形成してある。高反射塗膜層13は、絶縁塗膜層12上において、電極部14を形成する部分以外の範囲に形成した。高反射塗膜層13を形成した後、仮焼付を行い、高反射塗膜層13を仮固着させた。高反射塗膜層13の仮焼付処理は、雰囲気温度150℃にて5min加熱保持する条件にて行った。尚、本例における高反射塗膜層13は、シリコーンをベース材とした高反射白色レジストからなる。該高反射白色レジストは、430nm〜460nmの波長域の全域で分光反射率が95%以上である。
【0040】
次に、絶縁塗膜層12上において、高反射塗膜層13が形成されていない部分に、スクリーン印刷によって、電極部14を形成する。電極部14を形成した後、焼付処理を行うことにより、高反射塗膜層13及び電極部14を焼付硬化させる。高反射塗膜層13及び電極部14の焼付処理は、雰囲気温度180℃にて10min加熱保持する条件にて行った。その他の構成は、実施例1と同様である。
【0041】
本例においては、高反射塗膜層13は、高反射白色レジストからなり、430nm〜460nmの波長域の全域で分光反射率が95%以上である。そのため、LED素子2が発光した際に拡散する光を効果的に利用することができ、光量を増大することができる。すなわち、LED照明基板用積層体1にLED素子2を実装し、LED照明10として使用した場合、LED素子2が発する光の一部は拡散し、照射方向とは反対側に配されたLED照明基板用積層体1側へと照射される。この光を効果的に反射することにより、照射方向における光量を増大することができる。その他、実施例1と同様の作用効果を有する。
【0042】
尚、上述した実施例1及び実施例2においては円板上の基材に絶縁塗膜層、高反射塗膜層及び電極部を形成したが、加工前のアルミニウム合金の板材において、絶縁塗膜層、高反射塗膜層及び電極部を形成した後、プレス打ち抜き等により、所望の形状とすることもできる。
【0043】
(実施例3)
本例は、図5に示すごとく、実施例1に示すLED照明基板用積層体1を用いたLED電球10である。図1に示すごとく、LED照明基板用積層体1に5つのLED素子2を実装したLED実装基板101と、アルミニウム合金よりなる放熱部材102とを有する。該放熱部材102とLED実装基板101とは、両者をかしめることによって接合してある。
【0044】
本例に示すLED照明10は、LED実装基板101と、放熱部材102と、透光性の材料からなるカバー103と、家屋等の給電ソケットと接続するための口金104とを有している。カバー103は、放熱部材102におけるLED電球10が光を照射する側の開口部に配設してある。カバー103は、軽量化及び破損防止のため、透光性の白色樹脂からなる。また、口金104は、放熱部材102におけるカバー103と反対側に位置する開口部に配設してある。口金104は、放熱部材102の内側に設けられた、交流電流を直流電流へと変換し、LED素子へと電流を供給するためのAC−DC変換回路(図示略)と接続してある。
【0045】
放熱部材102は、素材として、アルミニウム合金板を採用した。次に、上記素材を用い、これに塑性加工を加えることにより図6に示す略円錐状に成形して放熱部材102を作製した。放熱部材102は、軸方向両端が開口しており、LED実装基板101と接合される大径側の開口端部105のみは、軸方向に沿って真っ直ぐに伸びるストレート形状となっている。
また、本例のLED照明基板用積層体1においては、図6に示すごとく、積層構造を形成する前の段階で、基材11の外周縁部を略直角に立ち上げる絞り加工を施し、フランジ部112を形成してある。
【0046】
図6〜図9に示すごとく、LED実装基板101と放熱部材102との接合は、かしめ加工により行う。
まず、図6に示すごとく、放熱部材102の開口端部105の内側に、フランジ部112が外側に向くようにLED実装基板101を挿入配置する。
次に、図7に示すごとく、第1回目のプレス加工を施して、放熱部材3の開口端部105の上半部106をLED実装基板101のフランジ部112の先端部分を起点として、径方向内方に向けて斜めになるよう成形する。
【0047】
次に、図8に示すごとく、第2回目のプレス加工を施して、放熱部材102の開口端部105の上半部106が軸方向に略直交する方向に向くまで成形する。
次に、図9に示すごとく、第3回目のプレス加工を施して、放熱部材102の開口端部105の上半部106の先端部分107を、LED実装基板101のフランジ部112の内周面に近づくように折り返した形状となるように成形する。
これにより、かしめ加工が完了し、LED実装基板101と放熱部材102とが全周にわたって接合される。尚、本例のかしめ加工は、巻きじめ加工と呼ばれることもある。
【0048】
得られたLED電球用部材1は、上記のごとく、2つのアルミニウム合金板を素材とした部品を組み合わせて構成されている。アルミニウム合金板は、上述したごとく、生産性に優れた材料である。そのため、素材コストを従来よりも大幅に低減することができる。また、アルミニウム合金板の軽量である特性を活かして、LED電球用部材1全体の軽量化を図ることもできる。
【0049】
また、LED実装基板101と放熱部材102とは、上記のごとくかしめ加工によって接合してある。これにより、LED実装基板101と放熱部材102の接合密着性を高めることができ、LED素子2から発生した熱をLED実装基板101から放熱部材102へと効率的に伝えることができ、かつ、放熱部材102から効率よく放熱することができる。それ故、LED電球用部材1を用いれば、LED素子の特性を有効に発揮させ高性能で長寿命のLED電球を得ることができる。
尚、本例においては、LED電球を一例としたが、これに限るものではなく、上述したLED照明基板用積層体及びLED照明は、LEDを用いた種々の照明装置に用いることができる。
【符号の説明】
【0050】
1 LED照明基板用積層体
10 LED電球
101 LED実装基板
102 放熱部材
11 基材
12 絶縁塗膜層
13 高反射塗膜層
14 電極部
141 電極表面
2 LED素子
【特許請求の範囲】
【請求項1】
LED素子を実装するためのLED照明基板用積層体であって、
アルミニウム合金よりなる平板状の基材と、
該基材の表面に形成された電気的絶縁性を備えた絶縁塗膜層と、
該絶縁塗膜層上には、電気的絶縁性及び上記絶縁塗膜層よりも高い光反射特性を備えた高反射塗膜層と、電極部との両方が印刷形成されてなり、
該電極部は、上記LED素子が備える端子と電気的に接続するための電極表面を露出するように形成されていることを特徴とするLED照明基板用積層体。
【請求項2】
請求項1に記載のLED照明基板用積層体であって、上記絶縁塗膜層は、その厚さが5μm〜50μmであり、かつ絶縁破壊電圧が2kV以上であることを特徴とするLED照明基板用積層体。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のLED照明基板用積層体であって、上記絶縁塗膜層の材料は、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、ポリブチレンテフタレート樹脂、ポリスチレンテレフタレート樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、シリコーン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂のうち少なくとも1種からなることを特徴とするLED照明基板用積層体。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載のLED照明基板用積層体であって、上記高反射塗膜層は、430nm〜460nmの波長域の全域で分光反射率が95%以上、または、全波長域における全反射率が95%以上であることを特徴とするLED照明基板用積層体。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載のLED照明基板用積層体であって、上記基材の両面に上記絶縁塗膜層及び上記高反射塗膜層のいずれか一方または両方を形成したことを特徴とするLED照明基板用積層体。
【請求項6】
請求項1〜5に記載したLED照明基板用積層体を用いたLED照明であって、
上記LED照明基板用積層体に1つ又は複数のLED素子を実装したLED実装基板と、
アルミニウム合金よりなる放熱部材とを有し、
該放熱部材と上記LED実装基板とを直接的に接合してあることを特徴とするLED照明。
【請求項7】
請求項6に記載したLED照明において、上記実装基板と上記放熱部材とは、両者をかしめることによって接合してあることを特徴とするLED照明。
【請求項1】
LED素子を実装するためのLED照明基板用積層体であって、
アルミニウム合金よりなる平板状の基材と、
該基材の表面に形成された電気的絶縁性を備えた絶縁塗膜層と、
該絶縁塗膜層上には、電気的絶縁性及び上記絶縁塗膜層よりも高い光反射特性を備えた高反射塗膜層と、電極部との両方が印刷形成されてなり、
該電極部は、上記LED素子が備える端子と電気的に接続するための電極表面を露出するように形成されていることを特徴とするLED照明基板用積層体。
【請求項2】
請求項1に記載のLED照明基板用積層体であって、上記絶縁塗膜層は、その厚さが5μm〜50μmであり、かつ絶縁破壊電圧が2kV以上であることを特徴とするLED照明基板用積層体。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のLED照明基板用積層体であって、上記絶縁塗膜層の材料は、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、ポリブチレンテフタレート樹脂、ポリスチレンテレフタレート樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、シリコーン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂のうち少なくとも1種からなることを特徴とするLED照明基板用積層体。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載のLED照明基板用積層体であって、上記高反射塗膜層は、430nm〜460nmの波長域の全域で分光反射率が95%以上、または、全波長域における全反射率が95%以上であることを特徴とするLED照明基板用積層体。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載のLED照明基板用積層体であって、上記基材の両面に上記絶縁塗膜層及び上記高反射塗膜層のいずれか一方または両方を形成したことを特徴とするLED照明基板用積層体。
【請求項6】
請求項1〜5に記載したLED照明基板用積層体を用いたLED照明であって、
上記LED照明基板用積層体に1つ又は複数のLED素子を実装したLED実装基板と、
アルミニウム合金よりなる放熱部材とを有し、
該放熱部材と上記LED実装基板とを直接的に接合してあることを特徴とするLED照明。
【請求項7】
請求項6に記載したLED照明において、上記実装基板と上記放熱部材とは、両者をかしめることによって接合してあることを特徴とするLED照明。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−89357(P2012−89357A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−235216(P2010−235216)
【出願日】平成22年10月20日(2010.10.20)
【出願人】(000002277)住友軽金属工業株式会社 (552)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年10月20日(2010.10.20)
【出願人】(000002277)住友軽金属工業株式会社 (552)
【Fターム(参考)】
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