説明

OFDM復調装置、復調方法、OFDM復調プログラムおよび記録媒体

【課題】マルチパス状態である場合とマルチパス状態でない場合とを通じた総合的な受信性能が従来より良好なOFDM復調装置を実現する。
【解決手段】OFDM復調装置1は、ダイバシティ合成を行って高速フーリエ変換する第1のFFT処理、およびダイバシティ合成を行わずに高速フーリエ変換する第2のFFT処理を実行可能なFFT窓生成部103b、演算処理部105と、第1のFFT処理および第2のFFT処理をそれぞれ実行させるFFT窓制御部104bと、伝送シンボルに対する第1のFFT処理により得たデータのMER値と、第2のFFT処理により得たデータのMER値と、を算出するMER検出部102と、を備えている。FFT窓制御部104bは、各MER値の算出後には、MER値が大きいほうのFFT処理をFFT窓生成部103b、演算処理部105が実行するよう制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、直交周波数分割多重(OFDM)により変調されたOFDM信号を復調するOFDM復調装置、復調方法、OFDM復調プログラムに関する。また、そのようなOFDM復調プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、地上波を用いる地上デジタル音声放送(デジタルラジオ)や地上デジタルテレビジョン放送(デジタルテレビ)では、音声および映像のデジタル信号を効率よく伝送できる、直交周波数分割多重方式(OFDM:Orthogonal Frequency Division Multiplex)と呼ばれる変調方式が用いられている。
【0003】
この「OFDM」では、デジタル放送を送信する送信側(デジタル放送の放送局)が、QPSK方式、16QAM方式、または64QAM方式による変調方式を用いて、送信するデジタル放送の放送波のデジタル信号列を数ビットにまとめて複素信号にマッピングする。そして、送信側は、このマッピングされたN個の複素信号に対して、逆高速フーリエ変換(IFFT:Inverse Fast Fourier Transform)を行い、ベースバンドOFDM信号を生成する。
【0004】
ところで、現在、日本では地上デジタルテレビ放送の伝送方式として、ISDB−T(Integrated Services Digital Broadcasting for Terrestrial Television Broadcasting)を採用している。このISDB−Tは、地上デジタルテレビジョン放送に関する伝送方式の標準規格である、ARIB STD‐B31により規定されている。
【0005】
OFMD変調によって得られるOFDM信号について、図14(a)を参照しながら、もう少し詳しく説明する。
【0006】
OFDM信号は、逐次伝送される複数(100個程度)の伝送シンボルからなる伝送フレームを単位として伝送される。非特許文献1では、1伝送フレームあたりの伝送シンボル数を204個と定義している。情報伝送用の伝送シンボルの他に、フレーム同期用やサービス識別用の伝送シンボルなども、伝送フレーム内に含めることができる。
【0007】
図14(a)は、各伝送フレームを構成する伝送シンボルの構造を示す図である。伝送シンボル500は、通常、逆高速フーリエ変換の処理窓に相当する有効シンボル510に、有効シンボル510の終端部511の信号波形を複写したガードインターバル(GI)520を付加することによって構成される。したがって、伝送シンボル期間長Tsは、有効シンボル期間長Tuと、ガードインターバル期間長Tgとの和(Tu+T)になる。
【0008】
非特許文献1では、有効シンボル期間長Tuを、「モード」と呼ばれるパラメータに応じて、表1のように定義している。
【0009】
【表1】

【0010】
また、非特許文献1では、有効シンボル期間長Tuに対するガードインターバル期間Tの比(GI比g)が1/4、1/8、1/16、1/32の何れかになるよう、ガードインターバル期間Tを、モードに応じて表2のように定義している。
【0011】
【表2】

【0012】
また、ARIB STD‐B31で規定されるOFDM放送波に含まれる各伝送シンボルは、複数のセグメントに分割されている。そして、各セグメントには、データキャリア、SP(Scattered Pilot)キャリア、TMCC(Transmission and Multiplexing Configuration Control)キャリア、AC(Auxiliary Channel)1キャリア、および、AC2キャリアが含まれている。
【0013】
SPキャリアは、OFDM信号に対する波形等化の基準として用いられるパイロット信号を伝送するためのキャリアであり、各伝送フレームに周期的に挿入される。このSPキャリアが配置される周期は予め定められており、具体的に、当該SPキャリアは、OFDM信号のセグメント構成におけるキャリア方向について12キャリアに1つ、シンボル方向について4シンボルに1つの周期で挿入される。
【0014】
TMCCキャリアは、同期ワードおよび伝送パラメータを含む、TMCC信号を伝送するためのキャリアである。
【0015】
AC1キャリアまたはAC2キャリアは、付加情報を伝送するための、AC1信号またはAC2信号を伝送するためのキャリアである。TMCCキャリア、AC1キャリア、およびAC2キャリアは、SPキャリアと異なり、キャリア方向では各伝送フレームに非周期的に挿入される。
【0016】
以上のようなOFDM信号を復号する復号装置が特許文献1に開示されている。特許文献1の復号装置は、変調された有効シンボル長以上の時間長のOFDM信号に対し、拡張されたFFT窓を用いて、FFT処理によりOFDM信号を復調するものである。この拡張されたFFT窓は、伝送シンボル中の有効シンボル長のデータの前又は後ろの部分を、有効シンボル長のデータに合成して生成するものである。
【0017】
特許文献1の復号装置について、図14(b)を参照してより具体的に説明する。
【0018】
図14(b)は、FFT窓(FFTwin1)を用いて、伝送シンボル中の有効シンボル長のデータの前の部分を、有効シンボル長のデータの末尾に合成することを示した図である。
【0019】
図14(b)に示すように、特許文献1の復号装置は、ガードインターバル(GI:Guard Interval)期間の先頭から有効シンボル期間長にわたる期間531と、有効シンボル先頭から有効シンボル期間長にわたる期間532を考える。期間530は、期間531と期間532の共通部分である。GI期間に相当する期間520とGIの複写元期間に相当する期間511とは、OFDM波としては、同一内容である。しかし、実際に大気中等の通信路を経由した際に付加された雑音の影響は、期間511と期間520とで異なる。
【0020】
特許文献1の復号装置は、雑音の影響が異なる期間511のデータと期間520のデータとをダイバシティ合成することにより、すなわち、ダイバシティ効果を利用することにより、雑音を低減することを特徴としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0021】
【特許文献1】特開2008−109173号公報(平成20年5月8日公開)
【非特許文献】
【0022】
【非特許文献1】社団法人電波産業界、「地上デジタルテレビジョン放送の伝送方式 ARIB STD‐B31 1.7版」、2001年5月31日初版策定、2007年9月26日1.7版改定 http://www.arib.or.jp/english/html/overview/doc/2-STD-B31v1_7.pdf
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0023】
しかしながら、上記特許文献1の構成では、マルチパス波を受信する場合には、受信性能・受信率が悪化するという課題がある。
【0024】
このことについて、図18を参照してより具体的に説明する。図18は、D波(直接波)と時間τだけ遅延したU波(反射波)によるマルチパス波を受信した場合における、特許文献1の復調装置のダイバシティ合成を示した図である。なお、図18において、期間520の先頭から期間511の末尾までは、D波における1つの伝送シンボルのシンボル期間を示している。
【0025】
図18に示すように、期間531の中のU波成分には、1つ前の伝送シンボルのシンボル成分533が挿入されてしまう。したがって、期間531中の期間520のデータと、期間532中の期間511のデータとを合成すると、シンボル間干渉が発生するので、受信性能が悪化してしまう。このことは、以下のような数値シミュレーションによっても示されている。
【0026】
すなわち、FFT窓生成時にデータを抽出するだけでダイバシティ合成を行わないFFT窓生成処理1の場合と、期間511のデータと期間520のデータとをダイバシティ合成する(すなわち、ダイバシティ効果を利用する)FFT窓生成処理2の場合と、での復調装置の受信性能の違いをコンピュータによる数値シミュレーションにより検討した。変調方式が「QPSK」、モードが「モード3」、ガードインターバル長が有効シンボル長さの1/4、マルチパス状態におけるDU比(D波とU波との信号強度の比)が1dBであると仮定し、D波に対するU波の遅延時間τを変えながら、波形等化部64の出力信号における信号成分と雑音成分の電力比であるSNR(Signal-to-Noise Ratio)を測定した。図19は、その結果を示す図である。
【0027】
図19に示すように、τ=0の場合(マルチパス状態でない場合)は、ダイバシティ合成を行うFFT窓生成処理2のSNRの方が良い。しかし、τ≠0の場合(マルチパス状態の場合)は、FFT窓生成処理1のSNRの方が良い。そして、SNRが良い方が、受信性能が良く受信率が高いことは明らかである。
【0028】
以上、特許文献1の構成ではマルチパス波を受信した場合に期間511のデータと期間522のデータとをダイバシティ合成すると復調装置の受信性能・受信率が悪化するという課題を示した。本発明は、この課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、マルチパス状態である場合とマルチパス状態でない場合とを通じた総合的なOFDM復号装置の受信性能を向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0029】
本発明に係るOFDM復調装置は、上記課題を解決するために、有効シンボルと、該有効シンボルの一部分を複写してなるガードインターバルと、を含む伝送シンボルで構成され、受信部が受信したOFDM(直交周波数分割多重変調)信号を復調するOFDM復調装置において、上記受信部において受信した上記伝送シンボルに含まれる有効シンボル長より長い期間のデータのうち上記有効シンボル長のデータの前または後ろのデータを用いて上記有効シンボル長のデータの末尾または先頭のデータを平均化するとともに、平均化後の該有効シンボル長のデータを高速フーリエ変換(FFT)する第1のFFT処理、および上記有効シンボル長のデータを上記平均化を行わずに抽出して高速フーリエ変換する第2のFFT処理を実行可能なFFT手段と、上記第1のFFT処理および上記第2のFFT処理を上記FFT手段にそれぞれ実行させるFFT制御手段と、上記伝送シンボルに対する上記第1のFFT処理により得たデータのMER値と、上記伝送シンボルに対する上記第2のFFT処理により得たデータのMER値と、を算出するMER値算出手段と、を備え、上記FFT制御手段は、上記MER値算出手段の各MER値の算出後には、上記第1のFFT処理および上記第2のFFT処理のうち該MER値が大きいほうのFFT処理を上記FFT手段が実行するよう制御することを特徴としている。
【0030】
上記の構成によれば、OFDM復調装置は、第1のFFT処理を施して得られるデータのMER値と、第2のFFT処理を施して得られるデータのMER値とを比較し、その後は、MER値の大きいほうのFFT処理を施すようになる。すなわち、OFDM復調装置は、OFDM信号がマルチパス状態で受信されたか否かに関わらず、OFDM信号に対し常に受信性能が改善するほうのFFT処理を施すようになる。
【0031】
従って、OFDM復号装置は、マルチパス状態である場合とマルチパス状態でない場合とを通じた総合的な受信性能が向上する。
【0032】
本発明に係る復調方法は、上記課題を解決するために、有効シンボルと、該有効シンボルの一部分を複写してなるガードインターバルと、を含む伝送シンボルで構成され、受信部が受信したOFDM(直交周波数分割多重変調)信号を復調するために高速フーリエ変換するFFT手段を備えたOFDM復調装置の復調方法において、上記FFT手段が、上記受信部において受信した上記伝送シンボルに含まれる有効シンボル長より長いデータのうち上記有効シンボル長のデータの前または後ろのデータを用いて上記有効シンボル長のデータの末尾または先頭のデータを平均化するとともに、平均化後の該有効シンボル長のデータを高速フーリエ変換(FFT)する第1のFFT処理、および上記有効シンボル長のデータを上記平均化を行わずに抽出して高速フーリエ変換する第2のFFT処理を実行するFFT工程と、上記FFT手段に上記第1のFFT処理および上記第2のFFT処理のいずれを実行させるかを制御するFFT制御工程と、上記伝送シンボルに対する上記第1のFFT処理により得たデータのMER値と、上記伝送シンボルに対する上記第2のFFT処理により得たデータのMER値と、を算出するMER値算出工程と、を含み、上記MER値算出工程における各MER値の算出後の上記FFT制御工程では、上記第1のFFT処理および上記第2のFFT処理のうち該MER値が大きいほうのFFT処理を実行するよう上記FFT手段を制御することを特徴としている。
【0033】
上記の構成によれば、本発明に係る復調方法は、本発明に係るOFDM復調装置と同様の作用効果を奏する。
【0034】
上記OFDM復調装置は、上記受信部において受信した上記OFDM信号が規定の複数の受信状態のうちいずれの受信状態で受信されたかを繰り返し特定する受信状態特定手段をさらに備え、上記受信状態特定手段が特定した受信状態が前回特定した受信状態と異なる場合に、上記FFT制御手段は、上記第1のFFT処理および上記第2のFFT処理を上記FFT手段に実行させ、上記MER値算出手段は、該第1のFFT処理により得たデータのMER値と、該第2のFFT処理により得たデータのMER値と、を算出し、上記FFT制御手段は、上記MER値算出手段が該MER値を各々算出した後には、上記第1のFFT処理および上記第2のFFT処理のうち該MER値が大きいほうのFFT処理を上記FFT手段が実行するよう制御することが望ましい。
【0035】
上記の構成によれば、OFDM復調装置は、受信状態が変わるたびに、上記第1のFFT処理により得たデータのMER値と、上記伝送シンボルに対する上記第2のFFT処理により得たデータのMER値と、を算出し、両者を比較する。例えば、OFDM復調装置は、受信状態がレイリー波状態からマルチパス状態に変わったときに各MER値の算出およびMER値の比較を行う。
【0036】
したがって、OFDM復調装置は、受信状態が時間とともに変化するような環境であっても、受信性能を最適に維持することができるというさらなる効果を奏する。
【0037】
上記OFDM復調装置では、上記FFT制御手段が、複数の伝送シンボルについて上記第1のFFT処理を施すとともに上記複数の伝送シンボルと同数の伝送シンボルについて上記第2のFFT処理を実行するよう上記FFT手段を制御し、上記MER値算出手段が、上記第1のFFT処理により得た複数のデータについて算出した各MER値を上記第2のFFT処理により得た複数のデータについて算出した各MER値と比較し、上記FFT制御手段が、上記MER値算出手段の全MER値の算出後には、上記第1のFFT処理および上記第2のFFT処理のうち上記比較の結果MER値が大きいデータの数が上記複数のデータの数の過半数を占めるほうのFFT処理を上記FFT手段が実行するよう制御することが望ましい。
【0038】
さらに、上記OFDM復調装置では、上記FFT制御手段が、上記FFT手段が上記第1のFFT処理および上記第2のFFT処理を上記伝送シンボル毎に交互に実行するように制御し、上記MER値算出手段が、上記第1のFFT処理により得た複数のデータの各々について、該データについて算出したMER値と、該データを得るために実行した上記第1のFFT処理の直前または直後の第2のFFT処理により得たデータについて算出したMER値と、を比較することが望ましい。
【0039】
上記の構成によれば、OFDM復調装置では、同じような受信状態で受信した2つのシンボルのMER値を比較できる可能性が、MER値を比較する2つの伝送シンボルを受信した複数のシンボルの中から任意に選択する場合よりも高くなる。したがって、受信状態が短い時間の間に急に変化するような環境であっても、受信性能を最適に維持することができるというさらなる効果を奏する。
【0040】
本発明のOFDM復調装置は、上記課題を解決するために、有効シンボルと、該有効シンボルの一部分を複写してなるガードインターバルと、を含む伝送シンボルで構成され、受信部が受信したOFDM(直交周波数分割多重変調)信号を復調するOFDM復調装置において、上記受信部において受信した上記OFDM信号がマルチパスの状態で受信されたか否かを判定する判定手段と、上記判定手段が否と判定した場合には、上記伝送シンボルに含まれる有効シンボル長より長いデータのうち上記有効シンボル長のデータの前または後ろのデータを用いて上記有効シンボル長のデータの末尾または先頭のデータを平均化するとともに、平均化後の該有効シンボル長のデータを高速フーリエ変換(FFT)する第1のFFT処理を実行し、上記判定手段がマルチパスの状態で上記OFDM信号が受信されたと判定した場合には、上記有効シンボル長のデータを上記平均化を行わずに抽出して高速フーリエ変換する第2のFFT処理を実行するFFT手段と、を備えていることを特徴としている。
【0041】
上記の構成によれば、OFDM復調装置は、シングルパスの状態でOFDM信号を受信した場合に第1のFFT処理を実行し、マルチパスの状態でOFDM信号を受信した場合に第2のFFT処理を実行する。また、一般に、マルチパスの状態でOFDM信号を受信した場合には第1のFFT処理を実行するほうが第2のFFT処理を実行するよりもSNRが向上し、シングルパスの状態でOFDM信号を受信した場合には第2のFFT処理を実行するほうが第1のFFT処理を実行するよりもSNRが向上する。
【0042】
従って、OFDM復調装置は、常に第1のFFT処理を実行したり第2のFFT処理を実行したりするよりも、マルチパス状態である場合とマルチパス状態でない場合とを通じた総合的な受信性能が向上する。
【0043】
上記OFDM復調装置では、上記OFDM信号がマルチパスの状態で受信されたと上記判定手段が判定した場合には、上記FFT手段は、上記有効シンボル長より長いデータの中から、上記OFDM信号の平均電力が最も大きくなるような期間のデータを上記有効シンボル長のデータとして選択することにより、上記第1のFFT処理を実行することが望ましい。
【0044】
また、上記OFDM復調装置では、上記OFDM信号がマルチパスの状態で受信されたと上記判定手段が判定した場合に、マルチパス波を形成する先行波の信号強度が遅延波の信号強度よりも強いか否かを判定する信号強度判定手段をさらに備え、上記FFT手段は、上記OFDM信号がマルチパスの状態で受信されたと上記判定手段が判定した場合であっても、上記信号強度判定手段が強いと判定した場合には、上記有効シンボル長のデータについて上記平均化の処理を施すとともに平均化後の該有効シンボル長のデータを高速フーリエ変換することを特徴とすることが望ましい。
【0045】
上記OFDM復調装置では、上記FFT手段が、上記伝送シンボルのうち先頭の上記有効シンボル長のデータを記憶部に記録した後、上記記憶部に記録したデータのうちの上記ガードインターバルに対して、上記ガードインターバルの複写元となる上記有効シンボルの一部分を用いて上記平均化の処理を施すことにより、上記第1のFFT処理を実行することが望ましい。
【0046】
上記の構成によれば、OFDM復調装置は、伝送シンボルを記録する記憶部の記憶容量を有効シンボル長のデータを記録するのに必要十分な記憶容量とすることができる。これにより、OFDM復調装置の回路面積が小さくなり、LSIの小型化、低消費電力化が可能となる。
【0047】
また、本発明に係るOFDM復調装置を動作させるためのプログラムであって、コンピュータを上記の各手段として機能させることを特徴とするプログラムおよびそれらのプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体も本発明の範疇に含まれる。
【発明の効果】
【0048】
以上説明したように、本発明に係るOFDM復調装置は、マルチパス状態である場合とマルチパス状態でない場合とを通じた総合的な受信性能が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】実施形態1に係るOFDM復調装置の要部構成を示すブロック図である。
【図2】各実施形態に係るOFDM復調装置のチューナ部の詳細を示すブロック図である。
【図3】各実施形態に係るOFDM復調装置のFEC(前方誤り訂正:Forward Error Correction)部の詳細を示すブロック図である。
【図4】実施形態1に係るOFDM復調装置のBB(ベースバンド信号処理)部の詳細を示すブロック図である。
【図5】各実施形態を示すものであり、(a)は、FFT部が備える演算処理部によるバタフライ演算処理の流れを模式的に示した図であり、(b)は演算処理部が備えるバタフライ処理部の回路構成を示す図である。
【図6】実施形態1〜3を示すものであり、(a)は、FFT部が備える演算処理部の構成を示す図であり、(b)は、2つのRAMに記録されるデータの内容を時間軸上で示した図である。
【図7】実施形態4を示すものであり、演算処理部がシンボルデータを記憶部に記録する記録動作を模式的に示したものである。
【図8】実施形態4を示すものであり、シンボル中のデータをRAMに記録する記録動作を模式的に示したものであり、(a)および(b)は、シンボルデータに含まれるシンボル期間中の各時点の信号値と、信号値が記録される第1記憶部138a中の領域との関係を示した図である。
【図9】マルチパス波を受信する場合において、ダイバシティ合成を行わない場合とダイバシティ合成を行う場合とでのSN比を比較したグラフを示す図である。
【図10】シングルパス波を受信する場合において、ダイバシティ合成を行わない場合とダイバシティ合成を行う場合とでのSN比を比較したグラフを示す図である。
【図11】シングルパス波を受信する場合において、ダイバシティ合成を行わない場合とダイバシティ合成を行う場合とでのSN比を比較したグラフを示す別の図である。
【図12】実施形態3を示すものであり、MER検出部の計算処理方法を模式的に示す図である。
【図13】実施形態3を示すものであり、FFT窓生成部のFFT窓生成方法を模式的に示す図である。
【図14】(a)は送信側においてOFDMシンボルを生成する処理を模式的に示す図であり、(b)は各実施形態に係るOFDM復調装置が受信したOFDMシンボルを復調する際のFFT窓の生成処理を模式的に示す図である。
【図15】実施形態2に係るOFDM復調装置のBB部の詳細を示すブロック図である。
【図16】実施形態3に係るOFDM復調装置のBB部の詳細を示すブロック図である。
【図17】実施形態4に係るOFDM復調装置のBB部の詳細を示すブロック図である。
【図18】直接波(D波)および反射波(U波)からなるマルチパス波を受信した場合に、シンボル間干渉が発生することを示す図である。
【図19】図18のようなマルチパス波を受信する場合において、ダイバシティ合成を行わない場合とダイバシティ合成を行う場合とでのSN比を比較したグラフを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0050】
本発明の一実施形態に係るOFDM復調装置について図1〜図14、図18、図19を参照しつつ以下に説明する。
【0051】
以下、本発明の一実施形態に係るOFDM復調装置の構成および動作について説明するが、OFDM復調装置の動作は、地上デジタルテレビジョン放送の放送方式(ISDB−T)で規定された直交周波数分割多重方式(OFDM)によって変調されたデジタル放送波を受信する場合の動作であることを予め述べておく。
【0052】
<OFDM復調装置の構成>
本実施形態に係るOFDM復調装置1の構成について、図1を参照しつつ以下に説明する。
【0053】
図1に示すように、OFDM復調装置1は、デジタル放送波を受信するアンテナ2、チューナ部3、および復調部4を備えている。
【0054】
以下、チューナ部3および復調部4の構成について説明するが、最初に図2を参照してチューナ部3の構成について説明する。図2はOFDM復調装置1が備えるチューナ部3の要部構成を示すブロック図である。
【0055】
(チューナ部3)
チューナ部3は、アンテナ2で受信したデジタル放送波のRF(高周波)信号から特定のチャンネルの周波数成分を抽出することにより当該チャンネルの選局処理を行うものである。図2に示すようにチューナ部3は、フィルタ31、可変利得増幅部32、周波数変換部33、フィルタ34、および可変利得増幅部35を備えた構成である。
【0056】
フィルタ31は、所望の周波数成分を抽出する、すなわち、所望のデジタル放送の放送波以外のRF信号を取り除くために設けられたバンドパスフィルタである。フィルタ31は、この抽出した周波数成分を有するRF信号を、可変利得増幅部32に供給する。
【0057】
可変利得増幅部32は、後述する自動利得制御部(以下、「AGC」と称する)66から供給された利得調整信号に基づいて、フィルタ31からのRF信号を、増幅または減衰させるために設けられた低雑音増幅器(ローノイズアンプ)である。可変利得増幅部32は、フィルタ31からのRF信号を増幅または減衰させるとともに周波数変換部33に供給する。
【0058】
周波数変換部33は、可変利得増幅部32からのRF信号に対して、周波数変換を実施するものである。周波数変換部33は、周波数変換によりRF信号をIF(Intermediate Frequency:中間周波)信号に変換する。そして、周波数変換部33は、変換後のIF信号をフィルタ34に供給する。
【0059】
フィルタ34は、周波数変換部33から供給されたIF信号のうち一定の周波数成分を抽出するために設けられたローパスフィルタである。フィルタ34により、再び不要なチャンネルの信号が取り除かれる。すなわち、フィルタ34は、ユーザーが選択するチャンネルに応じた特定のチャンネルの周波数成分を抽出するためのフィルタであるといえる。フィルタ34は、抽出した周波数成分を有するIF信号を、可変利得増幅部35に供給する。
【0060】
可変利得増幅部35は、後述するAGC66から供給された利得調整信号に基づいて、フィルタ34からのIF信号を、後段の復調部4に入力可能な電圧まで増幅させるものである。可変利得増幅部35は、増幅したIF信号を後段の復調部4に送信する。
【0061】
なお、本実施の形態に係るOFDM復調装置1のチューナ部3は、フィルタ31および34を備えた構成であるが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、チューナ部3は、フィルタ31を省いてフィルタ34だけを備えた構成であってもよい。
【0062】
(復調部4)
次に、復調部4の構成について説明する。
【0063】
復調部4は、チューナ部3から受信したIF信号を復調するものである。すなわち、復調部4は、チューナ部3が抽出した周波数成分を有する受信信号に対して復調処理を行うものである。
【0064】
復調部4は、図1に示すように、アナログデジタル変換部(以下、「ADC部」と称する)5、ベースバンド信号処理部(以下、「BB部」と称する)6、および誤り訂正処理部(以下、「FEC部」と称する)7、を備えている。
【0065】
以下、復調部4が備えるADC部5、BB部6、およびFEC部7について、それぞれ詳細に説明する。
【0066】
(ADC部5)
ADC部5は、チューナ部3の可変利得増幅部35から入力されたIF信号をサンプリングすることにより、IF信号をアナログ信号からデジタル信号に変換するものである。
【0067】
(BB部6)
BB部6は、ADC部5から供給されたデジタル信号のIF信号を、ベースバンドOFDM信号に変換して、当該ベースバンドOFDM信号に対して復調処理を実施する。そして、BB部6は、復調処理によって得られたデータ信号群およびTMCC情報を、FEC部7に供給する。すなわち、BB部6は、デジタル放送の受信信号を、ベースバンド信号に変換して復調処理を行うものであるといえる。
【0068】
図1に示すように、BB部6は、直交検波部61、狭帯域キャリア周波数誤差補正部(図1では狭帯域誤差補正部と省略して表記)62、高速フーリエ変換部(以下、「FFT部」と称する)63、波形等化部64、シンボル同期部65、AGC66、広帯域キャリア周波数誤差検出部(図1では広帯域誤差検出部と省略して表記)67、TMCC復号部68、伝搬路モニタ101、およびMER検出部102を備えている。
【0069】
直交検波部61は、ADC部5から供給されたIF信号に対して、予め設定されたキャリア周波数のキャリア信号を用いて直交検波を行う。これにより、直交検波部61は、実軸成分(いわゆる、Iチャネル信号)および虚軸成分(いわゆる、Qチャネル信号)からなる複素信号であるベースバンドOFDM信号を生成する。そして、直交検波部61は、生成したベースバンドOFDM信号を狭帯域キャリア周波数誤差補正部62に供給する。
【0070】
狭帯域キャリア周波数誤差補正部62は、直交検波部61から供給されたベースバンドOFDM信号から、狭帯域キャリア周波数誤差を検出することによって、当該ベースバンドOFDM信号を補正するものである。狭帯域キャリア周波数誤差補正部62は、例えば、ベースバンドOFDM信号と、不図示の数値制御発振器から供給されるキャリア周波数誤差補正信号とを複素乗算することによって、このベースバンドOFDM信号のキャリア周波数を補正する。
【0071】
なお、狭帯域キャリア周波数誤差補正部62によるベースバンドOFDM信号のキャリア周波数の補正方法はこれに限定されるものではない。例えば、狭帯域キャリア周波数誤差補正部62は、CORDIC(Coordinate Rotation Digital Computer)回路に代表される、位相回転回路を用いて補正を行う構成であってもよい。このように構成される場合、位相回転回路には、狭帯域キャリア周波数誤差から各サンプリング点の位相補正量が計算されて入力される。そして、ベースバンドOFDM信号の位相を位相補正量だけ回転することで、狭帯域キャリア周波数誤差を補正する。狭帯域キャリア周波数誤差補正部62は、キャリア周波数を補正したベースバンドOFDM信号を、FFT部63、シンボル同期部65、および、AGC66に供給する。
【0072】
FFT部63は、シンボル同期部65によって特定された各有効シンボルの先頭タイミングを参照することによって、ベースバンドOFDM信号から有効シンボル期間分の信号を抽出する。そして、FFT63は、抽出したベースバンドOFDM信号に対して高速フーリエ変換を行う。すなわち、FFT63は、FFT処理を行うことにより、送信側においてOFDM変調により周波数多重された信号から各キャリア情報を抽出する。
【0073】
FFT部63は、例えば、ベースバンドOFDM信号におけるガードインターバル期間内の任意の点を、高速フーリエ変換を行う対象として抽出するベースバンドOFDM信号の開始点としてもよい。FFT部63は、ベースバンドOFDM信号に対して高速フーリエ変換を行うことによって、このベースバンドOFDM信号から、データ信号、SP信号、TMCC信号等、送信側において各キャリアに変調されたN個の複素信号を得る。FFT部63は、ベースバンドOFDM信号から得たN個の複素信号を、波形等化部64、広帯域キャリア周波数誤差検出部67、およびTMCC復号部68に供給する。
【0074】
広帯域キャリア周波数誤差検出部67は、FFT部63から複素信号が供給されると、広帯域キャリア周波数誤差を検出する。波形等化部64は、広帯域キャリア周波数誤差検出部67が検出した広帯域キャリア周波数誤差に基づいて、所望の周波数帯域のキャリアの複素信号のみをFEC部7に供給する。なお、本実施の形態に係るOFDM復調装置100のBB部6では、FFT部63から出力されるN個の複素信号が波形等化部64に直接供給される構成になっているが、本発明のOFDM復調装置が備えるBB部はこの構成に限定されるものではない。例えば、BB部は、広帯域キャリア周波数誤差検出部67で検出した広帯域キャリア周波数誤差を補正してから波形等化部64に供給するように構成されていてもよい。
【0075】
波形等化部64は、TMCC復号部68から供給される同期確立信号の示すタイミングと、広帯域キャリア周波数誤差検出部67が示す補正すべきキャリアとに基づいて、FFT部63から供給されたN個の複素信号に対して波形等化処理を行うものである。なお、波形等化処理とは、N個の複素信号の振幅および位相を等しくする処理を意味する。具体的には、波形等化部64は、FFT部63から供給されたSP信号群の期待値に基づいて、通信路の伝達関数(通信路で生じた振動変動および位相回転に対応する関数)を推定する。そして、波形等化部64は、この推定により得られた伝達関数で各データ信号を複素除算することによって、波形等化されたデータ信号群を得る。波形等化部64は、波形等化したデータ信号群をFEC部7に供給する。
【0076】
シンボル同期部65は、狭帯域キャリア周波数誤差補正部62から供給されたベースバンドOFDM信号から、伝送モードおよびガードインターバル比等の伝送パラメータを抽出する。これにより、シンボル同期部65は、ベースバンドOFDM信号に含まれる、各有効シンボルの先頭タイミングを特定する。
【0077】
AGC66は、狭帯域キャリア周波数誤差補正部62から供給されたベースバンドOFDM信号から、チューナ部3が復調部4に入力するIF信号の最適な強度を算出し、この算出結果を利得調整信号としてチューナ部3の可変利得増幅部32・35のそれぞれに供給する。
【0078】
TMCC復号部68は、各伝送フレームの先頭タイミングを特定するものである。TMCC復号部68は、FFT部63が出力する複素信号から、広帯域キャリア周波数誤差検出部67が検出した広帯域キャリア周波数誤差に基づいてTMCCキャリアを抽出する。そして、TMCCキャリアに対しDBPSK復調を行う。さらに、DBPSK復調を行った結果に含まれる同期ワードを検出することによって、各伝送フレームの先頭タイミングを特定する。
【0079】
また、TMCC復号部68は、TMCC信号に対して誤り訂正復号(具体的には差集合巡回復号)を行うことによって、伝送パラメータ等を規定するTMCC情報を得る。TMCC復号部68は、特定した各伝送フレームの先頭タイミングを示す同期確立信号を、波形等化部64とFEC部7とに供給し、TMCC情報をFEC部7に供給する。
【0080】
伝搬路モニタ101は、直交検波部61もしくは狭帯域キャリア周波数誤差補正部62の出力ベースバンド信号の複素相関、もしくは、波形等化部64で推定した伝搬路伝達関数から、伝搬路の状態をモニタするモニタ手段である。
【0081】
なお、FFT部63および伝搬路モニタ101は、本実施形態に係るOFDM復調装置1が備える特徴的な構成であるので、これらについては後に詳細に説明することとする。
【0082】
(FEC部7)
次いで、FEC部7の詳細について図3を参照して説明する。図3は、本発明の実施形態を示すものであり、FEC部7の要部構成を示すブロック図である。
【0083】
FEC部7は、TMCC復号部68によって特定されたフレーム先頭タイミング、および、TMCC復号部68によって抽出されたTMCC情報を参照して、波形等化されたデータ信号に対する誤り訂正復号を行い、TSP(トランスポートストリームパケット)を生成するものである。生成したTSPは、例えばH.264方式またはMPEG‐2方式等の画像圧縮方式、あるいは音声圧縮方式のデコーダ(図示しない)に入力され復調される。このデコーダにはモニタやアンプ等(図示しない)が接続されており、モニタは、デコーダから受け付けた画像信号が表わす映像を表示する。また、アンプはデコーダから受け付けた音声信号が増幅し、アンプに接続されたスピーカー(図示しない)は増幅された音声信号が表わす音声が出力する。
【0084】
図3に示すように、FEC部7は、周波数デインターリーブ部70、時間デインターリーブ部71、デマッピング部72、ビットデインターリーブ部73、デパンクチャー部74、ビタビ復号部75、バイトデインターリーブ部76、エネルギー逆拡散部77、TSP生成部78、およびRS(リードソロモン)復号部79を備えている。
【0085】
このうち、周波数デインターリーブ部70、時間デインターリーブ部71、ビットデインターリーブ部73、バイトデインターリーブ部76は、誤り訂正復号を施す対象となる入力信号に含まれる誤りを分散させるために送信側で行われた各種インターリーブ処理を解除するものであり、上述したISDB−Tにて規定される規則性に準じた順番並べ替えを行うものである。
【0086】
周波数デインターリーブ部70は、波形等化部64によって波形等化されたデータ信号群の、周波数インターリーブの解除処理を行うものである。すなわち、各キャリアの順番を並べ替えるものである。周波数デインターリーブ部70は、周波数インターリーブの解除処理を行ったデータ信号群を、時間デインターリーブ部71に送信する。
【0087】
時間デインターリーブ部71は、周波数デインターリーブ部70からのデータ信号群の、時間インターリーブの解除処理を行うものである。すなわち、復調されたデータ信号101の順番を並べ替えるものである。時間デインターリーブ部71は、時間インターリーブの解除処理を行ったデータ信号群をデマッピング部72に送信する。
【0088】
デマッピング部72は、時間デインターリーブ部71によって並べ替えられたデータ信号群に対して、マッピングの復調処理を行うものである。すなわち、デマッピング部72は、QPSK、16QAM、および64QAMのいずれかによって複素信号にマッピングされたデータ信号群の送信ビット列を復元する。
【0089】
例えば、上述したARIB STD‐B31等により規定されるデジタル放送では、放送データの変調方式(QPSK、16QAM、および64QAM)の情報をTMCCキャリアで伝送する。
【0090】
デマッピング部72は、TMCC復号部68で抽出したTMCC情報に含まれるキャリア変調方式の情報に応じたデマッピングを行う。デマッピング部72は、復元した送信ビット列を有するデータ信号群を、ビットデインターリーブ部73に供給する。
【0091】
ビットデインターリーブ部73は、デマッピング部72からのデータ信号群の、ビットインターリーブの解除処理を行うものである。すなわち、ビットデインターリーブ部73は、データ信号群の有する送信ビット列の順番を、ビット単位で並べ替えるものである。ビットデインターリーブ部73は、ビットインターリーブの解除処理を行ったデータ信号群をデパンクチャー部74に供給する。
【0092】
デパンクチャー部74は、ビットデインターリーブ部73からのデータ信号群が有している、復元された送信ビット列に含まれる誤り訂正符号の内符号がパンクチャーされた畳み込み符号である場合に、当該畳み込み符号に対してデパンクチャー処理を行うものである。ここで、デパンクチャーとは、送信側にて予め間引かれた冗長性のある信号領域に暫定値(ダミービット)を挿入するものである。なお、送信側での間引き方法についてはISDB−Tにて規定されている。デパンクチャー部74は、デパンクチャー処理が施されたデータ信号群を、ビタビ復号部75に供給する。
【0093】
ビタビ復号部75は、デパンクチャー部74からのデータ信号群が有している、復元された送信ビット列に含まれる誤り訂正符号の内符号が畳み込み符号化されている場合に、当該畳み込み符号化された符号化データの復号および誤り訂正を行うものである。ビタビ復号部75は、符号化データの復号および誤り訂正が行われたデータ信号群を、バイトデインターリーブ部76に供給する。
【0094】
バイトデインターリーブ部76は、ビタビ復号部75からのデータ信号群の、バイトインターリーブの解除処理を行うものである。すなわち、データ信号群の有する送信ビット列の順番をバイト単位で並べ替えるものである。バイトデインターリーブ部76は、バイトインターリーブの解除処理を行ったデータ信号群を、エネルギー逆拡散部77に送信する。
【0095】
エネルギー逆拡散部77は、バイトデインターリーブ部76からのデータ信号群に対して、エネルギー逆拡散処理を行うものである。ここで、エネルギー逆拡散処理とは、データ信号群に対して、信号極性の偏りをなくすことによってランダム性を持たせるもので、送信側にて掛け合わされた擬似雑音系列を逆に掛け合わせることを意味する。エネルギー逆拡散部77は、エネルギー逆拡散処理を行ったデータ信号群を、TSP生成部78に送信する。
【0096】
TSP生成部78は、エネルギー逆拡散部77からのデータ信号群から、所定サイズ(例えば、204バイト)のTSPを生成する。TSP生成部78は、生成したTSPをRS復号部79に送信する。
【0097】
RS復号部79は、TSP生成部78からTSPを受信すると、受信したTSPを解析する。そして、RS復号部79は、TSPの送信ビット列に含まれるリードソロモン符号化された符号化データの復号および誤り訂正を行う。RS復号部79は、符号化データの復号および誤り訂正が行われたTSPを、H.264方式またはMPEG‐2方式等の画像圧縮方式あるいは音声圧縮方式にて圧縮されたデジタルの画像・音声信号から、もとのアナログの画像・音声信号を取り出すためのデコーダ(図示しない)に入力し、復調する。これにより、TSPを受信するモニタにおいて映像表示を行うことができる。また、TSPを受信するアンプにおいて自身に接続されたスピーカーを介して音声出力することができる。
【0098】
以上のように、FEC部7は、デジタルの映像・音声信号を、アナログの映像・音声信号に変換する為に後段の、例えばMPEG2復調部、またはH.264復調部に供給するものである。すなわち、FEC部7は、BB部6にて復調処理されたベースバンド信号に対して誤り訂正処理を行うものと言える。
【0099】
(伝搬路モニタ101のモニタリングの詳細)
伝搬路モニタ101が伝搬路の状態をモニタする手段として直交検波部61もしくは狭帯域キャリア周波数誤差補正部62の出力ベースバンド信号の複素相関を参照する例を説明する。伝搬路モニタ101は複素相関演算部を備えており、複素相関演算部は、入力信号に有効シンボル期間長Tuだけ遅延を与える先入れ先出しによって格納し出力するメモリFIFO(First In First Out)と、入力信号およびFIFOの出力信号の複素共役の複素乗算を行う複素乗算器と、で構成される。
【0100】
複素相関演算部は、複素乗算の結果を示すデータに対し、ガードインターバル期間内の区間平均をとる処理を施すことにより、複素相関を計算する。なお、計算した複素相関を表わす波形(複素相関波形)はシンボル期間長T周期で以下のように変化する。
【0101】
すなわち、シングルパス受信時には複素相関波形は三角形となり、マルチパス受信時には複数相関波形は複数の三角形を合成した形状となる。したがって、複素相関波形の形状を判定することにより、伝搬路がマルチパス状態であるのか否かを検出可能である。また、シンボル期間Tの間で複素相関波形に変動がある場合には、シングルパス受信時でも伝搬路の状態が時間軸上で変化するレイリー波状態であることも検出可能である。
【0102】
次に、伝搬路モニタ101が伝搬路の状態をモニタする手段として波形等化部64で推定した伝搬路伝達関数を参照する例を説明する。
【0103】
最初に、波形等化部64が推定する伝搬路伝達関数の性質について説明する。
【0104】
一般に、デジタル放送・通信の規格では、波形等化をするための基準としてパイロット信号が規定されている。たとえば、ISDB−Tでは、パイロット信号として、SP信号が、同一シンボル内で12キャリアごとに、かつ、前のシンボルで配置された各SP信号と3キャリアずれるように配置されている。波形等化部64は、FFT部63の出力信号からSP信号を抽出し、規格で規定されている基準値で複素除算することで、伝搬路の伝達関数を検出する。伝搬路がマルチパス状態である場合には、マルチパス状態でない場合と比較して伝達関数がキャリア周波数方向に変化する。また、伝搬路がレイリー波状態である場合には、レイリー波状態でない場合と比較して伝達関数が時間方向に変化する。
【0105】
この例では、伝搬路モニタ101は、伝搬路伝達関数の上記性質を利用して、伝搬路の状態を判定する。すなわち、伝搬路モニタ101は、波形等化部64が推定した伝達関数がキャリア周波数方向に変動する場合にはマルチパス状態であると判定し、伝達関数が時間方向に変動する場合にはレイリー波状態であると判定する。以上のように、推定した伝達関数の変化を調べることで、マルチパス状態・レイリー波状態にあるか否かが検出可能である。
【0106】
(FFT部63の詳細構成)
FFT部63の詳細構成について図4および図5を参照しつつ以下に説明する。
【0107】
図4は、BB部6が備える伝搬路モニタ101およびFFT部63の構成をより詳細に示したブロック図である。
【0108】
図4に示すように、FFT部63は、FFT窓生成部103、FFT窓制御部104、および演算処理部105を備えている。
【0109】
(演算処理部105)
最初に、演算処理部105の具体的な構成及び処理について図5(a)および図5(b)を用いて説明する。図5(a)は演算処理部105によるバタフライ演算処理の流れを模式的に示した図であり、図5(b)は演算処理部105が備えるバタフライ処理部130の回路構成を示す図である。
【0110】
演算処理部105は、以下の式(1)、式(2)を用いて時間軸上のデータ列x(n)の各周波数成分X(k)を計算することにより、ベースバンドOFDM信号のサンプリング点で離散フーリエ変換(DFT:Discrete Fourier Transform)処理を行う。ここで、DFTとは、離散群上のフーリエ変換であり、一般に信号処理などで離散化されたデジタル信号の周波数解析を行ったり、偏微分方程式又は畳み込み積分を効率的に計算するために用いられたりするものである。
【0111】
【数1】

【0112】
【数2】

【0113】
式(1)におけるNは、ベースバンドOFDM信号に含まれる全キャリア数である。また、式(1)の右辺に規格化因子が乗じたものをX(k)とするようにしてもよい。なお、式(2)に示したように、演算処理部105は、位相回転因子の対称性を利用して複素乗算の処理数を減らすことによって、DFT処理の高速処理(以下、FFT処理と称す)を実現している。
【0114】
FFT処理を行うために、図5(a)に示すように、演算処理部105は、バタフライ処理部130、位相回転因子乗算部131及びビットリバース処理部132を備えてなる構成となっている。なお、図5(a)は、キャリア数N=8の周波数間引き型のFFT処理の一例を示すものである。図5(a)に示すように、3段(Stage0〜2)のバタフライ演算処理をバタフライ処理部130および位相回転因子乗算部131が実行することにより、キャリア数N=8のFFT処理が実現されるようになっている。
【0115】
バタフライ処理部130は、図5(b)に示すように、2入力成分(入力される2つの信号)の和と差とを出力するものである。なお、バタフライ処理部130としては、図5(b)に示されている様な2データ入出力のRadix−2型のほか、4データ入出力のRadix−4型、あるいは8データ入出力のRadix−8型を用いてもよい。
【0116】
位相回転因子乗算部131は、バタフライ処理部130から出力される信号に対して、位相回転因子WNmを乗じることによって、当該信号の位相を−2πm/Nだけシフトさせるものである。なお、図5(a)には位相回転因子乗算部131が、各ステージで所定の入力信号に対し位相回転因子乗算を行うことが図示されているが、位相回転因子乗算に用いる位相回転因子WNmの値は、どのステージでどの入力信号に対して位相回転因子乗算を行うかに応じて異なっている。
【0117】
また、全ステージのバタフライ演算処理を完了すると、時間軸上のデータは周波数軸上のデータになる。その際に、周波数軸上のデータの並びを示す指標と時間軸上のデータの並びを示す指標とは、ビットリバースの関係になる。ビットリバースとは、ビット順序の反転である。例えば、演算処理部105に入力される入力信号(図5(a)の左側の0〜7に入力される信号)のうち上から5番目の信号は、時刻t=4(2進表示の指標は「100」)で入力された信号であるが、3段のバタフライ演算処理終了後の出力信号(ビットリバース処理部132に入力される信号)では、キャリア番号k=1(2進表示で001)の信号となる。ビットリバース処理部132は、全ステージでバタフライ演算処理が完了したデータに対し、データの並びの指標をビットリバースにすることで、キャリア番号順にデータを並びかえる。データの並びの指標とは、例えばRAMを利用する構成の場合には、RAMのアドレスに相当する。
【0118】
ここで、FFTの回路実装方式としては、パイプライン方式および共有RAM方式の2種類が存在するが、本実施形態では、FFT部63の回路を共有RAM方式で実装している。以下では、共有RAM方式で回路実装されたFFT部63の演算処理部105について図6を用いて説明する。
【0119】
図6(a)は、演算処理部105の構成を示す図であり、図6(b)は、2つのRAM(第1記憶部(RAM1)138a、第2記憶部(RAM2)138b)に記録されるデータの内容を時間軸上で示した図である。
【0120】
図6(a)に示すように、Radix−2型共有RAM方式FFTは、1個のバタフライ処理部130(バタフライ回路)と、各段でのバタフライ処理部130におけるバタフライ演算処理のデータを記憶する2つのRAM(第1記憶部138a、第2記憶部138b)と、位相回転因子乗算部131と、位相回転因子WNmを記憶するルックアップテーブル(LUT:Look Up Table)139と、で構成される。
【0121】
図6(b)に示すように、FFT部63は、2つのRAM(第1記憶部138a、第2記憶部138b)の一方に入出力処理されるデータ(FFT部63の外部から入力されるデータ、およびビットリバース処理部132によりビットリバースされ、FFT部63の外部に出力するデータ)を記録し、他方にバタフライ演算処理中の中間データを記録するようになっており、各データの記録先はシンボル期間ごとに2つのRAMの間で入れ替わるようになっている。演算処理部105は、前のシンボル期間におけるFFTの処理結果(すなわち、ビットリバース後のデータ)を第1記憶部138aから読み出し、出力信号としてFFT部63の外部に出力する。この直後に、読み出しを行った同じアドレスに対し、演算処理部105は、入力されるベースバンドOFDM信号を第1記憶部138aに書き込む。この入出力処理は基準サンプリング周波数で処理される。
【0122】
FFT部63が第1記憶部138bで入出力処理をしている間、バタフライ処理部130が、第2記憶部138bに記憶されているデータを2個読み出してバタフライ処理を行う。そして、位相回転因子乗算部131が、バタフライ処理が施されたデータに対して位相回転因子乗算を行うとともに、これにより得られた中間データを第2記憶部138bの同じアドレスに記憶する。なお、具体的には、位相回転因子乗算部131は、LUT139に記憶されている位相回転因子を参照して位相回転因子乗算を行う。バタフライ処理時の入出力処理は基準サンプリング周波数よりも高速のクロックで処理される。
【0123】
演算処理部105は、シンボルに対するバタフライ演算処理および入出力処理が終了したら次のシンボルに対してバタフライ演算処理および入出力処理を行う。なお、上述したように、演算処理部105は、入出力処理される次のシンボルのデータを第2記憶部138bに記録し、バタフライ演算処理中の中間データを第1記憶部138aに記録するようになる。
【0124】
この様にFFT部63は、2個の第1記憶部(138a)、第2記憶部(138b)を交互に利用して、図6(b)に示す様に、データ入出力処理とバタフライ処理とをシンボル毎に交互に行う。
【0125】
なお、上記した共有RAM方式FFTでは、バタフライ処理部130は1個であるが、2個以上であっても良い。また、上記ではRadix−2型のFFTについて説明したが、Radix−4,Radix−8型のFFTであっても良い。バタフライ処理部130の数やRadixを大きくすると回路規模および面積は大きくなるが、その反面、バタフライ処理の動作クロック周波数を低減させることが可能となる。したがって、プロセス等に起因して回路実装で動作クロックに制約がある場合などでは、バタフライ処理部130の個数やRadixを大きくすることは有効な手法となる。
【0126】
(FFT窓生成部103)
次に、FFT窓生成部103について、図14を用いて説明する。FFT処理を行う演算処理部105は、図14(a)の期間510で示した有効シンボル期間長(Tu)単位でベースバンドOFDM信号に演算処理を施すが、OFDM信号のシンボル期間は、図14(a)の期間500で示したシンボル期間長(Ts=Tu+Tg)となっている。FFT窓生成部103は、シンボル期間(Ts)中の全データから有効シンボル期間長(Tu)分のデータをFFT窓データとして抽出し、演算処理部105に出力する。
【0127】
FFT窓生成部103のFFT窓データを抽出する処理は、FFT窓生成処理1およびFFT窓生成処理2の2つが存在する。
【0128】
FFT窓生成処理2は、受信したOFDM信号のシンボル期間500のうちの有効シンボル期間長(Tu)のデータをそのまま抽出するものである。なお、FFT窓データを抽出する有効シンボル期間の開始時点がGI期間520内のいずれであっても、抽出するFFT窓データは並びが巡回的に異なるだけで同じ内容である。したがって、FFT窓生成部103は、FFT窓生成処理1を行う際にGI期間520内のどの開始時点からFFT窓データを抽出してもよい。
【0129】
FFT窓生成処理1では、受信したOFDM波のシンボル期間500のうち、図14(b)で示した期間520のうちのtで表わされる期間のデータと、期間511のうちのtで表わされる期間のデータと、を抽出する。そして、期間520中のtで表わされる期間のデータを、期間511中のtで表わされる期間のデータに合成して、合成後の期間532のデータを抽出する。ここで、合成とは、各期間のデータに1/2を乗じて加算する平均化処理である。
【0130】
図14(b)において、期間520の受信データと期間511の受信データとは、各受信データに含まれるOFDM波の成分は同一であるが、雑音成分は通常異なっている。したがって、期間520のデータおよび期間511のデータを合成すると、OFDM波の電力はそのままであるが、雑音成分の電力は平均効果(ダイバシティ効果)により1/2となる。したがって、GI比をgとすると、SNRの変化量δSNRは、
【0131】
【数3】

【0132】
となる。なお、期間530のデータとOFDM波の成分が同一であるような期間はシンボル期間内に存在しない。したがって、ダイバシティ効果を用いて期間530のデータに含まれる雑音成分を1/2にすることはできない。
【0133】
(FFT窓制御部104)
FFT部63が備えるFFT窓生成部103、演算処理部105についてはすでに説明したが、最後にFFT窓制御部104について以下に説明する。
【0134】
FFT窓制御部104は、FFT窓生成部103の処理を、伝搬路モニタ101がマルチパス状態を検出したらFFT窓生成処理2、それ以外はFFT窓生成処理1を制御する。これにより、マルチパス時にダイバシティ合成を行うことによる受信性能の悪化(SNRの低下)を回避し、シングルパス時にはダイバシティ合成による受信性能の改善(SNRの向上)を享受する。つまり、伝搬路の状況に応じて、FFT窓の生成方法を最適化することが可能となり、受信状態・受信率も最適となる。
【0135】
なお、シングルパス時にダイバシティ合成を行うとSNRが向上し、マルチパス時にダイバシティ合成を行うとSNRが低下することを以下に数値シミュレーションに示しておく。
【0136】
(ダイバシティ効果の数値シミュレーション結果)
FFTされたデータのSNRを以下の設定の下にコンピュータで数値シミュレーションすることにより、ダイバシティ効果の程度を確認した。すなわち、送信側では、乱数データを生成し、QPSKのマッピング処理を行い、ISDB−Tのmode3でIFFT処理を行い、GI挿入を行い、OFDM波の生成を行う設定とした。また、通信路では付加白色ガウス雑音(AWGN:Additive White Gaussian Noise)のみが付加され、通信路はシングルパスであるものと設定した。この場合に、FFT窓生成部103がFFT窓をFFT窓生成処理1により生成した場合およびFFT窓生成処理2により生成した場合のそれぞれについて波形等化出力のSNRを計算した。図10は、上記数値シミュレーションの結果を示すグラフである。
【0137】
図10に示すように、FFT窓生成処理1のSNRは、FFT窓生成処理2よりも大きい。したがって、FFT窓生成処理2を行う(ダイバシティ合成を行わない)よりもFFT窓生成処理1を行う(ダイバシティ合成を行う)ほうが受信性能・受信率が良いということになる。なお、図10に示すように、ダイバシティ合成を行う場合および行わない場合におけるSNRの差δSNRは、g=1/2の時に1.25dB、g=1/4の時に0.5dB、g=1/8の時に0.27dB、g=1/16の時に0.13dBとなっており、これらの値は式3で算出した値と一致する。
【0138】
さらに、AWGNのキャリア対雑音比(CNR)を少しずつ変えながら波形等化出力のSNRを数値シミュレーションで計算した。図11は、当該数値シミュレーションの結果を示すグラフである。図11に示すように、CNRを変えても、FFT窓生成処理1のSNRの方が、常に値が大きい。
【0139】
しかし、マルチパス等のフェージングが付加されると数値シミュレーションの結果が変わる。ここでは、FFTされたデータのSNRを以下の設定の下にコンピュータで数値シミュレーションすることにより、ダイバシティ効果の程度を確認した。すなわち、送信側では、乱数データを生成し、QPSKのマッピング処理を行い、ISDB−Tのmode3でIFFT処理を行い、GI(g=1/4)挿入を行い、OFDM波の生成を行う設定とした。また、通信路はシングルパスに限定せずマルチパスにもなるものとした。具体的には、通信路がマルチパスである場合のDU比(直接波と反射波との強度比)を1dBとし、D波に対するU波の遅延時間τを少しずつ変えながらSNRを算出した。
【0140】
図19は、上記設定のもとで行った数値シミュレーションの結果を示すグラフである。図19に示すように、τ=0の場合(通信路がシングルパスである場合)は、ダイバシティ合成を行うFFT窓生成処理1のSNRの方が良い。しかし、τ≠0の場合(通信路がマルチパスである場合)には、FFT窓生成処理2のSNRの方が良い。
【0141】
つまり、図18に示すように、通信路がシングルパスであるかマルチパスであるかに関わらず常にダイバシティ合成(FFT窓生成処理1)を行う場合には、マルチパス時にダイバシティ合成を行う分、受信性能が悪化することになる。
【0142】
(OFDM復調装置1の利点)
以上のように、OFDM復調装置1は、アンテナ2においてOFDM信号がマルチパスの状態で受信されたか否かを判定する伝搬路モニタ101と、伝搬路モニタ101がシングルパスの状態で受信したと判定した場合には、シンボル期間長(Ts)のデータに含まれる有効シンボル長より長いデータのうち、期間532の前の「t」で表わされる期間のデータを期間532のデータの末尾に合成することにより、有効シンボル長(Tu)のデータを生成してFFTし(すなわち、窓関数FFTWin1でFFTし)、伝搬路モニタ101がマルチパスの状態で受信したと判定した場合には、合成を行わずに期間531の有効シンボル長(Tu)のデータを抽出してFFTする(すなわち、窓関数FFTWin2でFFTする)FFT部63と、を備えている。
【0143】
従って、OFDM復調装置1は、マルチパス時にダイバシティ合成を行うことによる受信性能の悪化(SNRの低下)を回避し、シングルパス時にはダイバシティ合成による受信性能の改善(SNRの向上)を享受するので、マルチパス状態である場合とマルチパス状態でない場合とを通じた総合的な受信性能が向上するという効果を奏する。
【0144】
(実施形態2)
OFDM復調装置の受信性能を向上させる本発明の別の実施形態について図9、図15、図18を用いて以下に説明する。図15は、本実施形態に係るOFDM復調装置1aが備える構成のうち、実施形態1に係るOFDM復調装置1と相違するBB部6aを示したブロック図である。
【0145】
図15に示すように、OFDM復調装置1aは、伝搬路モニタ101aの判定処理、FFT窓制御部104aの制御処理、およびFFT窓生成部103aのFFT窓生成処理がOFDM復調装置1の伝搬路モニタ101、FFT窓制御部104、およびFFT窓生成部103と異なっている。したがって、これらの処理についてのみ、図9、図18を用いて以下に説明し、その他の部材については説明を省略することにする。
【0146】
伝搬路モニタ101aは、マルチパス状態であるかレイリー波状態であるかを判定するだけでなく、マルチパス状態と判定した場合において、先行波の強度が遅延波の強度より強いか弱いか(すなわち強度の強いD波を強度の弱いU波より先に受信したか否か)を判定する。
【0147】
FFT窓制御部104aは、実施形態1の場合と同様に、伝搬路モニタ101aがマルチパス状態でないと判定した場合には、FFT窓生成部103aが、ダイバシティ合成を行うようなFFT窓を生成するように制御する。一方、FFT窓制御部104aは、伝搬路モニタ101aがマルチパス状態であると判定した場合であっても、必ずしもFFT窓生成部103aがFFT窓生成処理1を実行するように制御するとは限らない。
【0148】
すなわち、FFT窓制御部104aは、伝搬路モニタ101aが先行波の強度が遅延波の強度より弱いと判定した場合には、FFT窓生成部103aが、ダイバシティ合成を行うようなFFT窓を生成するように制御する。そして、伝搬路モニタ101aが先行波の強度が遅延波の強度より強いと判定した場合には、FFT窓生成部103aがFFT窓生成処理1を実行するように制御する。
【0149】
FFT窓生成部103aは、ダイバシティ合成を行うようなFFT窓を生成する処理が実施形態1の場合と異なっている。すなわち、FFT窓生成部103aは、当該処理をFFT窓生成処理2でなく、マルチパスのうち先行波(先に受信した素波)を時間の基準として、先行波(先に受信した素波)の図18の期間520のデータと期間511のデータとを対象としてダイバシティ合成を行うようなFFT窓生成処理1を実行するようになっている。このようにダイバシティ合成を行うと、遅延波の方も一緒にダイバシティ合成するので、遅延波ではシンボル間干渉が発生してSNRが悪化するが、この場合の遅延波は信号強度が弱いので、先行波のダイバシティ合成によるSNRの改善の方が大きい。
【0150】
(ダイバシティ効果の数値シミュレーション結果)
このようにしても、OFDM復調装置の総合的な受信性能を向上させることができるが、このことについて、図9の数値シミュレーションの結果を参照して以下に説明する。
【0151】
図9は、図19と同様にQPSK、mode3、gi=1/4でのマルチパス受信波であると設定した場合の数値シミュレーションの結果を示すグラフである。FFT窓生成処理1を行った場合、図9からわかるように、τ<0のとき(すなわち、強度の小さいU波が強度の大きいD波の先行波である場合)には常に、FFT窓生成処理1を行った場合のSNRがFFT窓生成処理2を行った場合のSNRよりも高くなる。
【0152】
なお、図9の数値シミュレーション結果からわかるように、τ≧0のときは、FFT窓生成処理1を行った場合のSNRがFFT窓生成処理2を行った場合のSNR以下になるが、このときのSNRの差は、τ<0のときのSNRの差よりも小さい。
【0153】
したがって、OFDM復調装置1aは、伝搬路の状況に関わらず常に、FFT窓生成部103aにFFT窓生成処理1を実行させることによって受信性能を向上させることができる。
【0154】
(実施形態3)
本実施形態に係るOFDM復調装置1bについて図16を参照しつつ以下に説明する。図16は、本実施形態に係るOFDM復調装置1bが備える構成のうち、実施形態1に係るOFDM復調装置1と相違するBB部6bを示したブロック図である。
【0155】
OFDM復調装置1bの構成は、BB部6bの構成が実施形態1に係るOFDM復調装置1が備えるBB部6の構成と異なっている点を除き同一である。従って、ここでは、BB部6bについてのみ詳細に説明し、その他の部材については説明を省略することとする。
【0156】
図16に示すように、OFDM復調装置1bは、BB部6bが伝搬路モニタ101、FFT部63bとともに、MER検出部102を備えていることを特徴としている。
(MER検出部102)
MER検出部102は、波形等化部64によって波形等化されたデータ信号群に基づいて、変調誤差比(Modulation Error Rate:以下、「MER値」と称す)を算出することにより、当該データ信号群の受信品質を検出するものである。
【0157】
ここで、MER値とは、波形等化されたデータ信号(複素信号)XEQ(n、k)の電力換算値と、当該データ信号XEQ(n、k)の理想コンスタレーションポイントXEQ’(n、k)からのずれを示すベクトル誤差δXEQ(n、k)の電力換算値との比である。データ信号XEQ(n、k)に対するMER値は、以下の式(4)〜式(7)によって定義される。
【0158】
【数4】

【0159】
【数5】

【0160】
【数6】

【0161】
【数7】

【0162】
なお、上記の各数式において使用されている添え字は、nがシンボル番号を表しており、kがキャリア番号を表している。また、式(4)のシグマ計算で求める和は、添え字nおよびkについての和である。
【0163】
高精度のMER値を得る場合には、上記nおよびkの値を大きくして、これらについての和を求めればよい。一方、リアルタイム性が要求される場合には、1シンボル内の全キャリア、または、特定のキャリアについてのみ和を求めるようにすればよい。さらに、データ信号XEQ(n、k)に対する理想コンスタレーションポイントXEQ’(n、k)とは、変調方式に応じて決まる、取り得る全てのコンスタレーションポイントXm(0≦m<M)のうち、データ信号XEQ(n、k)との距離dm(n、k)=|XEQ(n、k)−Xm|が最小となるコンスタレーションポイントXmのことである。
【0164】
ここからは、変調方式がQPSK方式である場合の、MER検出部102におけるMER値の算出方法について説明する。図12は、変調方式がQPSK方式である場合の、MER検出部102におけるMER値の算出方法を説明するためのグラフである。
【0165】
波形等化部64によって波形等化されたデータ信号XEQ(n、k)が図12に示す位置にある場合、上述したように、理想コンスタレーションポイントXEQ’(n、k)は図12に示すコンスタレーションポイントX1と決定される。MER検出部102は、図12に示すPSignal(データ信号XEQ(n、k)と原点との距離)と、PNoise(データ信号XEQ(n、k)とコンスタレーションポイントX1との距離)と、を算出し、それぞれ、上記式(4)に示す、常用対数の真数部分の分母および分子に代入することによって、MER値を算出する。
【0166】
MER値は、式(4)に示すように、図12に示すPSignalとPNoiseとの電力比であるので、SNRに相当すると解釈することができる。
【0167】
以下、BB部6b全体の動作の流れについて説明する。
【0168】
伝搬路モニタ101は、実施形態1と同様の方法で、伝搬路の状態をモニタリングする。
【0169】
伝搬路モニタ101がマルチパス状態やレイリー波状態を検出しない場合には、FFT窓制御部104bは、FFT窓生成部103の処理を常にFFT窓生成処理2に制御する。
【0170】
一方、伝搬路モニタ101がマルチパス状態やレイリー波状態の少なくともいずれか一方を検出した場合のFFT窓制御部104bの動作は以下のようになる。
【0171】
最初に、マルチパス状態かレイリー波状態の少なくともいずれか一方を検出したタイミング(すなわち、直前の検出動作時にはマルチパス状態やレイリー波状態を検出しておらず、新たにマルチパス状態やレイリー波状態を検出したタイミング)でのBB部6bの動作について図13を参照しつつ以下に説明する。
【0172】
図13は、FFT部63bと波形等化部64とがシンボル単位で処理を行うことを模式的に表わした図である。なお、図13は、2つのシンボルを処理する例を示している。
【0173】
図13において、斜線が付された正方形は以下の処理の対象となるシンボルを表わしており、その平面上の各配置は次のことを表わしている。すなわち、配置の縦方向の位置は、シンボルに対して図中の(1)〜(6)のいずれの処理が行われるかを示している。また、配置の横方向の位置は、シンボルに対して上記処理が行われる時間を示している。
【0174】
なお、(1)は、FFT部63bがベースバンドOFDM信号のシンボルを受け付ける処理、(2)は、FFT部63bのバタフライ処理を主とした演算処理、(3)はFFT部63がシンボルを出力する処理(波形等化部64がシンボルを受け付ける処理)を示している。また、(4)は波形等化部64の波形等化処理、(5)は波形等化部64がシンボルを出力する(MER検出部102がシンボルを受け付ける)処理を示している。また、シンボル543、544は、それぞれ、シンボル541、542に対して(1)〜(4)の処理が施されたシンボルを示している。
【0175】
まず、FFT窓制御部104bは、FFT窓生成部103に対し、シンボル541を入力としてFFT窓生成処理1を行う様に制御する。そして、FFT窓制御部104bは、MER検出部102に対し、(6)の処理がシンボル543に対して行われるタイミングでMER1を計測する様に制御する。
【0176】
次に、FFT窓制御部104bは、FFT窓生成部103に対し、シンボル542を入力としてFFT窓生成処理2を行う様に制御する。そして、FFT窓制御部104bは、MER検出部102に対し、(6)の処理がシンボル544に対して行われるタイミングでMER2を計測する様に制御する。
【0177】
さらに、最初に受け付けた2つのシンボルのMERを比較する。すなわち、FFT窓制御部104bは、シンボル543のMER1とシンボル544のMER2とを比較する。
【0178】
FFT窓制御部104bは、その後に受け付けたシンボルに対し、伝搬路モニタ101がマルチパス状態かレイリー波状態の少なくともいずれか一方を検出している限り、上記比較に応じたFFT窓生成処理を行うようFFT窓生成部103を制御する。すなわち、FFT窓制御部104bは、その後に受け付けたシンボルに対し、シンボル543、544のうちMERが大きい方のシンボルを入力としてFFT窓生成部103が行ったFFT窓生成処理を行うようFFT窓生成部103を制御する。
【0179】
以上のように、OFDM復調装置1bが備えるBB部6bは、ダイバシティ合成を行うほうがMERが大きくなるのであればマルチパス状態やレイリー波状態を検出していてもダイバシティ合成を行うようになっている。
【0180】
なお、(2)のFFT処理の時間を1シンボル期間としたが、これに限定されるものではない。すなわち、FFT部63bの実装方法によっては、FFT処理の時間は、1シンボルより短くなったり長くなったりする場合もある。また、(4)の波形等化処理の時間を4シンボルとしたが、これに限定されるものではない。波形等化部64の実装方法によっては、波形等化処理の時間は、4シンボルより短くなったり長くなったりする場合もある。
【0181】
したがって、FFT部63bや波形等化部64が、伝搬路モニタ101が検出した伝搬路の状態に応じて、FFT処理や波形等化処理の時間を変化させるような構成であっても、受信状態・受信率を向上させることができる。
【0182】
また、本実施形態においては、OFDM復調装置1bがMERを比較することによりFFT窓生成処理を制御するタイミングを、「伝搬路モニタ101がマルチパス状態やレイリー波状態を検出しておらず、新たにマルチパス状態やレイリー波状態を検出した」タイミングとしたが、これに限定されない。すなわち、伝搬路モニタ101が何らかの電波状態の変化を検出した場合には常にMERを比較してFFT窓生成処理を制御してもよい。
【0183】
(実施形態3に係るOFDM復調装置の利点)
以上説明したように、本実施形態に係るOFDM復調装置1bは、マルチパス状態やレイリー波状態を検出した場合、実際にリアルタイムに受信したシンボルに基づいて、ダイバシティ合成を行う場合のMERとダイバシティ合成を行わない場合のMERとを比較する。そして、OFDM復調装置1bは、MERの値に基づいてダイバシティ合成を行うか行わないかを決定する。
【0184】
なお、実施形態1の数値シミュレーションで示したように、一般に単純にマルチパス状態のみのときにはダイバシティ合成を行うとSNRが低下し、受信性能が悪化するが、これはあくまで数値シミュレーションで示したものである。すなわち、マルチパス状態であっても、他の要因が重畳することによって、ダイバシティ合成を行うほうがSNRが上昇し、受信性能が向上する場合もあると考えられる。逆に、マルチパス状態でなくてもダイバシティ合成を行うとSNRが減少し、受信性能が悪化する場合もあると考えられる。
【0185】
したがって、本実施形態に係るOFDM復調装置は、マルチパス状態であれば常にダイバシティ合成を行わないようにし、マルチパス状態でなければ常にダイバシティ合成を行うようにするよりも受信性能を向上させることができる。
【0186】
(実施形態4)
本実施形態に係るOFDM復調装置1cは、演算処理部105cの構成が実施形態1のOFDM復調装置1の演算処理部105と異なっており、その他の構成はOFDM復調装置1と同様である。従って、ここでは、OFDM復調装置1cの演算処理部105cについてのみ図7および図8を参照して説明し、その他の部材については説明を省略することとする。
【0187】
図7は、演算処理部105cがシンボルデータを第1記憶部138aおよび第2記憶部138bに記録する記録動作を模式的に示したものであり、図8(a)および図8(b)は、シンボルデータに含まれるシンボル期間中の各時点の信号値と、各信号値が記録される第1記憶部138中の領域との関係を示した図である。なお、図7で示す記録動作は、RAM1(第1記憶部138a)およびRAM2(第2記憶部138b)における図6(b)の「入力出力」期間の記録動作である。
【0188】
また、図7には示していないが、演算処理部105cは、実施形態1〜3と同様に2つのRAMを備え、一方のRAMには入出力処理されるデータを記録し、他方のRAMにバタフライ演算処理中の中間データを記録するようになっており、各データの記録先はシンボル期間ごとに2つのRAMの間で入れ替わるようになっている。ただし、2つのRAMの記憶容量は、実施形態1〜3の第1の記憶部138a、第2の記憶部138bの記憶容量より少なく、有効シンボル期間(Tu)分のデータを一括して記憶可能であるが、シンボル期間(Ts)分のデータを一括して記憶するには不十分な記憶容量となっている。
【0189】
演算処理部105cは、2つのRAMの他、該2つのRAMと、バタフライ処理部130、位相回転因子乗算部131、ビットリバース処理部132、及びLUT139からなる回路と、の間に、セレクタ141〜144、除算器145、および加算器146からなる回路が備えられている。セレクタ141、144は、図中で示されている複数の出力先の中から信号を出力する出力先を選択するものである。同様に、セレクタ142、143は、図中で示されている複数の入力元のうちどの入力元から信号の入力を受け付けるかを選択するものである。
【0190】
以下、演算処理部105cの動作について説明するが、この動作はFFT窓生成部103がFFT窓生成処理2の動作を行った場合の動作であることを予め述べておく。
【0191】
まず、演算処理部105cは、狭帯域誤差補正部62が出力したベースバンドOFDM信号について、シンボル期間分のシンボルデータ全体のうち期間531に含まれる各時点の信号値を第1記憶部138aに記録する。すなわち、図8(a)に示すように、ベースバンドOFDM信号うち期間531中のサンプリングデータN点分を狭帯域誤差補正部62から取得し、取得した順に第1記憶部138のアドレス0からアドレスN−1まで記憶させる。なお、図7に示すように、セレクタ141が信号をIから出力することを選択し、セレクタ142が信号の入力をIから受け付けることを選択し、セレクタ143が信号の入力をI0から受け付けることを選択し、セレクタ144が信号をI0から出力することを選択することにより上記動作が行われる。
【0192】
次に、演算処理部105cが、シンボル期間分のシンボルデータ全体のうち残りの期間511に含まれる各時点の信号値を第1記憶部138aに記録する。すなわち、図8(b)に示すように、ベースバンドOFDM信号うち期間511中のサンプリングデータg点分を狭帯域誤差補正部62から取得し、すでに第1記憶部138aのアドレス0からアドレスg−1までに記録されている信号値との加重平均をとってアドレス0からアドレスg−1の値を更新する。
【0193】
より具体的には、演算処理部105cは、各サンプリングデータに対し以下の(a)(b)の処理を行う。すなわち、(a)演算処理部105cは、期間511中のi番目(0≦i≦g)のサンプリングデータ(信号値)を取得するタイミングで、第1記憶部138のアドレスiに記録されている信号値を読み出し、加算器146を通じて取得したi番目の信号値とアドレスiから読み出した信号値とを加算する。そして、(b)演算処理部105cは、加算器146を通じて加算された信号値を、除算器145を通じて2分の1にする。なお、図7に示すように、セレクタ141が信号をIから出力することを選択し、セレクタ142が信号の入力をIから受け付けることを選択し、セレクタ143が信号の入力をI1から受け付けることを選択し、セレクタ144が信号をI1から出力することを選択することにより上記動作は行われる。
【0194】
(実施形態4に係るOFDM復調装置の利点)
以上説明したように、本実施形態に係るOFDM復調装置1cには、実施形態1に係るOFDM復調装置1の利点に加え、演算処理部105cの2つのRAMが有効シンボル期間分のN点のサンプリングデータを一括して記憶可能な容量を備えていればよいというさらなる利点がある。すなわち、必要なRAMの記憶容量が少ない分、回路面積を小さくすることができ、LSIの小型化、低消費電力化が可能となる。
【0195】
(付記事項)
なお、実施形態1において、期間532を有効シンボルの先頭から有効シンボル期間長にわたる期間としたが、期間532はこれに限られず、シンボル期間500中の有効シンボル長の期間であれば任意である。ただし、期間532は、受信したOFDM信号のうち当該期間中の信号値の平均が最も大きくなるような期間であることが望ましい。この場合、マルチパス波を受信した場合において、期間532のOFDM信号にマルチパス波を形成する複数の素波のうち信号強度が最も強い素波のOFDM信号が含まれることとなる。なお、シンボル期間500中のどの期間を期間532とするかについては、狭帯域誤差補正部62が出力したOFDM信号に基づいてFFT窓制御部104が決定する。
【0196】
また、実施形態3に係るOFDM復調装置1bは、FFT窓制御部104bが、電波状態に関わらず一定期間ごとにMER検出部102にMERを比較させ、FFT窓生成部103が比較の結果に応じたFFT窓生成処理を行うように制御してもよい。
【0197】
さらに、実施形態3では、MERの比較するためにFFT窓生成処理1およびFFT窓生成処理2を施してMERを検出するシンボルの数をそれぞれ1つずつとしたが、シンボルの数はそれぞれ複数にすることが望ましい。このようにすることにより、実施形態3に係るOFDM復調装置1bは、伝搬路の状態をより精度よく判定することができ、ひいては受信性能をさらに向上させることができる。このことを以下に説明する。
【0198】
MERは雑音状態を表わす指標であるが、一般に雑音はランダムなプロセスであるので、一定期間内に同じ雑音状態が維持されても、当該期間内にMER検出部102で検出するMERの値は変化することになる。すなわち、MER値の検出が1回ではMERが表わす雑音状態と検出時の実際の雑音状態とには誤差が生じることとなる。
【0199】
しかし、MER検出部102の処理に用いる式4における総和(Σ)のデータ点数を増やせば、検出したMER値が表わす雑音状態の実際の雑音状態に対する誤差は抑制される。
【0200】
すなわち、統計学によると、分散がσのランダム・データについてデータ点数M点で平均を計算すると、平均値の分散はσ/Mに低減される。平均値の分散はデータ点数の逆数に比例する。仮に、データ点数を2倍にすると、平均値の分散はσ/(2M)に更に低減される。数4における総和(Σ)のデータ点数についても同様のことが言え、2シンボルで計算したMER値の上記誤差は、1シンボルで計算したMER値の上記誤差よりも小さくなる。さらに、データ点数(MERを算出するシンボル数)が多ければ多い程、MER値は安定化する。
【0201】
また、実施形態3において、FFT窓生成処理1およびFFT窓生成処理2を施してMERを検出するシンボルの数をそれぞれ複数とする場合には、MERを検出する複数のシンボルに対して、FFT窓を生成する順にFFT窓生成処理1およびFFT窓生成処理2を交互に施すことが望ましい。そして、MERの比較を複数回(N回)行い、各比較は、FFT窓生成処理を連続して施した2つのシンボルのMERにより行われることが望ましい。この場合、FFT窓制御部104bは、N回の比較の結果、FFT窓生成処理1により生成されたデータのMERの値がFFT窓生成処理2により生成されたデータのMERの値より大きいと比較された回数がN/2以上である場合には、FFT窓生成部130が以降FFT窓生成処理1を行うよう制御し、その他の場合には、FFT窓生成部130が以降FFT窓生成処理2を行うよう制御する。
【0202】
このようにすることにより実施形態3に係るOFDM復調装置1bは、電波状態(伝搬路の雑音状態)が時間とともに大きく変化する場合でも、略同じ電波状態で受信したシンボルのMER値の比較を行うことが可能となる。したがって、電波状態の時間変動が大きい場合の受信状態が向上することになる。
【0203】
(プログラムおよび記録媒体)
最後に、OFDM復調装置1、1a〜1cが備える各部は、ハードウェアロジックによって構成してもよいし、次のようにCPUを用いてソフトウェアによって実現してもよい。
【0204】
すなわち、OFDM復調装置1、1a〜1cは、各機能を実現する制御プログラムの命令を実行するCPU、前記プログラムを格納したROM(read only memory)、前記プログラムを展開するRAM(random access memory)、前記プログラムおよび各種データを格納するメモリ等の記憶装置(記録媒体)などを備えている。そして、本発明の目的は、上述した機能を実現するソフトウェアであるOFDM復調装置1、1a〜1cの制御プログラムのプログラムコード(実行形式プログラム、中間コードプログラム、ソースプログラム)をコンピュータで読み取り可能に記録した記録媒体を、前記OFDM復調装置1、1a〜1cに供給し、そのコンピュータ(またはCPUやMPU)が記録媒体に記録されているプログラムコードを読み出し実行することによっても、達成可能である。
【0205】
記録媒体としては、例えば、磁気テープやカセットテープ等のテープ系、フロッピー(登録商標)ディスク/ハードディスク等の磁気ディスクやCD−ROM/MO/MD/DVD/CD−R等の光ディスクを含むディスク系、ICカード(メモリカードを含む)/光カード等のカード系、あるいはマスクROM/EPROM/EEPROM/フラッシュROM等の半導体メモリ系などを用いることができる。
【0206】
また、OFDM復調装置1、1a〜1cを通信ネットワークと接続可能に構成し、前記プログラムコードを、通信ネットワークを介して供給してもよい。この通信ネットワークとしては、特に限定されず、例えば、インターネット、イントラネット、エキストラネット、LAN、ISDN、VAN、CATV通信網、仮想専用網(virtual private network)、電話回線網、移動体通信網、衛星通信網等が利用可能である。また、通信ネットワークを構成する伝送媒体としては、特に限定されず、例えば、IEEE1394、USB、電力線搬送、ケーブルTV回線、電話線、ADSL回線等の有線でも、IrDAやリモコンのような赤外線、Bluetooth(登録商標)、802.11無線、HDR、第3.9世代以降の携帯電話網、衛星回線、地上波デジタル網等の無線でも利用可能である。なお、本発明は、前記プログラムコードが電子的な伝送で具現化された、搬送波に埋め込まれたコンピュータデータ信号の形態でも実現され得る。
【0207】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【0208】
なお、本実施の形態に係るOFDM復調装置1、1a〜1cが受信するデジタル放送は地上波により配信されるものであってもよいし、衛星放送、ケーブルTV等を介して配信されるものであってもよい。すなわち、OFDM復調装置1、1a〜1cは、デジタル変調方式としてOFDMを採用する全てのデジタル放送に対して適用可能である。
【0209】
OFDM復調装置1、1a〜1cは、デジタル放送を受信し復調する復調装置として特に有効であるが、OFDMもしくはOFDMA(Orthogonal Frequency Division Multiple Access)を採用するデジタル通信の送受信装置の受信側装置としても有効である。具体的には、電力線搬送(PLC:Power Line Communication)、ADSL(Asymmetric Digital Subscriber Line)回線等の有線通信、IEEE802.11などの無線LAN、第3.9世代以降の携帯電話等の無線通信等の送受信装置の受信側装置として適用可能である。
【0210】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0211】
本発明は、デジタル放送の復調装置において、マルチパス状態である場合とマルチパス状態でない場合とを通じた総合的な受信性能を向上させることができるので、デジタル放送を復調する復調装置や、そのような復調装置を備えた受信装置に適用することができる。特に、本発明に係る復調装置は、上記受信装置のうち、携帯型受信装置(例えば、携帯電話機、PDA)に適用することができる。さらにまた、本発明に係る復調装置は、OFDM伝送方式に従って信号を受信して復調する復調装置、例えば、無線LANのための復調装置、BSデジタル放送またはCSデジタル放送を受信するための復調装置、ケーブルテレビ放送を受信するための復調装置としても適用できる。
【符号の説明】
【0212】
1、1a〜1c OFDM復調装置
2 アンテナ
3 チューナ
4 OFDM復調部
5 ADC
6、6a〜6c BB部
7 FEC部
61 直交検波部
62 狭帯域キャリア周波数誤差補正部
63、63b FFT部
64 波形等化部
65 シンボル同期部
66 AGC
67 広帯域キャリア周波数誤差検出部
68 TMCC
101、101a 伝搬路モニタ(判定手段)
102 MER検出部(MER値算出手段)
103、103a FFT窓生成部(FFT手段)
104、104a、104b FFT窓制御部(FFT制御手段、信号強度判定手段)
105、105c 演算処理部(FFT手段)
141〜144 セレクタ
145 除算器
146 加算器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有効シンボルと、該有効シンボルの一部分を複写してなるガードインターバルと、を含む伝送シンボルで構成され、受信部が受信したOFDM(直交周波数分割多重変調)信号を復調するOFDM復調装置において、
上記受信部において受信した上記伝送シンボルに含まれる有効シンボル長より長い期間のデータのうち上記有効シンボル長のデータの前または後ろのデータを用いて上記有効シンボル長のデータの末尾または先頭のデータを平均化するとともに、平均化後の該有効シンボル長のデータを高速フーリエ変換(FFT)する第1のFFT処理、および上記有効シンボル長のデータを上記平均化を行わずに抽出して高速フーリエ変換する第2のFFT処理を実行可能なFFT手段と、
上記第1のFFT処理および上記第2のFFT処理を上記FFT手段にそれぞれ実行させるFFT制御手段と、
上記伝送シンボルに対する上記第1のFFT処理により得たデータのMER値(変調誤差比)と、上記伝送シンボルに対する上記第2のFFT処理により得たデータのMER値と、を算出するMER値算出手段と、を備え、
上記FFT制御手段は、上記MER値算出手段の各MER値の算出後には、上記第1のFFT処理および上記第2のFFT処理のうち該MER値が大きいほうのFFT処理を上記FFT手段が実行するよう制御することを特徴とするOFDM復調装置。
【請求項2】
上記受信部において受信した上記OFDM信号が規定の複数の受信状態のうちいずれの受信状態で受信されたかを繰り返し特定する受信状態特定手段をさらに備え、
上記受信状態特定手段が特定した受信状態が前回特定した受信状態と異なる場合に、上記FFT制御手段は、上記第1のFFT処理および上記第2のFFT処理を上記FFT手段に実行させ、上記MER値算出手段は、該第1のFFT処理により得たデータのMER値と、該第2のFFT処理により得たデータのMER値と、を算出し、上記FFT制御手段は、上記MER値算出手段が該MER値を各々算出した後には、上記第1のFFT処理および上記第2のFFT処理のうち該MER値が大きいほうのFFT処理を上記FFT手段が実行するよう制御することを特徴とする請求項1に記載のOFDM復調装置。
【請求項3】
上記FFT制御手段は、複数の伝送シンボルについて上記第1のFFT処理を施すとともに上記複数の伝送シンボルと同数の伝送シンボルについて上記第2のFFT処理を実行するよう上記FFT手段を制御し、
上記MER値算出手段は、上記第1のFFT処理により得た複数のデータについて算出した各MER値を上記第2のFFT処理により得た複数のデータについて算出した各MER値と比較し、
上記FFT制御手段は、上記MER値算出手段の全MER値の算出後には、上記第1のFFT処理および上記第2のFFT処理のうち上記比較の結果MER値が大きいデータの数が上記複数のデータの数の過半数を占めるほうのFFT処理を上記FFT手段が実行するよう制御することを特徴とする請求項1または2に記載のOFDM復調装置。
【請求項4】
上記FFT制御手段は、上記FFT手段が上記第1のFFT処理および上記第2のFFT処理を上記伝送シンボル毎に交互に実行するように制御し、
上記MER値算出手段は、上記第1のFFT処理により得た複数のデータの各々について、該データについて算出したMER値と、該データを得るために実行した上記第1のFFT処理の直前または直後の第2のFFT処理により得たデータについて算出したMER値と、を比較することを特徴とする請求項3に記載のOFDM復調装置。
【請求項5】
有効シンボルと、該有効シンボルの一部分を複写してなるガードインターバルと、を含む伝送シンボルで構成され、受信部が受信したOFDM(直交周波数分割多重変調)信号を復調するOFDM復調装置において、
上記受信部において受信した上記OFDM信号がマルチパスの状態で受信されたか否かを判定する判定手段と、
上記判定手段が否と判定した場合には、上記伝送シンボルに含まれる有効シンボル長より長いデータのうち上記有効シンボル長のデータの前または後ろのデータを用いて上記有効シンボル長のデータの末尾または先頭のデータを平均化するとともに、平均化後の該有効シンボル長のデータを高速フーリエ変換(FFT)する第1のFFT処理を実行し、上記判定手段がマルチパスの状態で上記OFDM信号が受信されたと判定した場合には、上記有効シンボル長のデータを上記平均化を行わずに抽出して高速フーリエ変換する第2のFFT処理を実行するFFT手段と、を備えていることを特徴とするOFDM復調装置。
【請求項6】
上記OFDM信号がマルチパスの状態で受信されたと上記判定手段が判定した場合には、上記FFT手段は、上記有効シンボル長より長いデータの中から、上記OFDM信号の平均電力が最も大きくなるような期間のデータを上記有効シンボル長のデータとして選択することにより、上記第1のFFT処理を実行することを特徴とする請求項5に記載のOFDM復調装置。
【請求項7】
上記OFDM信号がマルチパスの状態で受信されたと上記判定手段が判定した場合に、マルチパス波を形成する先行波の信号強度が遅延波の信号強度よりも強いか否かを判定する信号強度判定手段をさらに備え、
上記FFT手段は、上記OFDM信号がマルチパスの状態で受信されたと上記判定手段が判定した場合であっても、上記信号強度判定手段が強いと判定した場合には、上記有効シンボル長のデータについて上記平均化の処理を施すとともに平均化後の該有効シンボル長のデータを高速フーリエ変換することを特徴とする請求項5に記載のOFDM復調装置。
【請求項8】
上記FFT手段は、上記伝送シンボルのうち先頭の上記有効シンボル長のデータを記憶部に記録した後、上記記憶部に記録したデータのうちの上記ガードインターバルに対して、上記ガードインターバルの複写元となる上記有効シンボルの一部分を用いて上記平均化の処理を施すことにより、上記第1のFFT処理を実行することを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載のOFDM復調装置。
【請求項9】
有効シンボルと、該有効シンボルの一部分を複写してなるガードインターバルと、を含む伝送シンボルで構成され、受信部が受信したOFDM(直交周波数分割多重変調)信号を復調するために高速フーリエ変換するFFT手段を備えたOFDM復調装置の復調方法において、
上記FFT手段が、上記受信部において受信した上記伝送シンボルに含まれる有効シンボル長より長いデータのうち上記有効シンボル長のデータの前または後ろのデータを用いて上記有効シンボル長のデータの末尾または先頭のデータを平均化するとともに、平均化後の該有効シンボル長のデータを高速フーリエ変換(FFT)する第1のFFT処理、および上記有効シンボル長のデータを上記平均化を行わずに抽出して高速フーリエ変換する第2のFFT処理を実行するFFT工程と、
上記FFT手段に上記第1のFFT処理および上記第2のFFT処理のいずれを実行させるかを制御するFFT制御工程と、
上記伝送シンボルに対する上記第1のFFT処理により得たデータのMER値と、上記伝送シンボルに対する上記第2のFFT処理により得たデータのMER値と、を算出するMER値算出工程と、を含み、
上記MER値算出工程における各MER値の算出後の上記FFT制御工程では、上記第1のFFT処理および上記第2のFFT処理のうち該MER値が大きいほうのFFT処理を実行するよう上記FFT手段を制御することを特徴とする復調方法。
【請求項10】
請求項1から8のいずれか1項に記載のOFDM復調装置を動作させるための復調プログラムであって、前記各手段としてコンピュータを機能させるための復調プログラム。
【請求項11】
請求項10に記載の復調プログラムを記録したコンピュータ読取可能な記録媒体。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate


【公開番号】特開2011−146872(P2011−146872A)
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−5250(P2010−5250)
【出願日】平成22年1月13日(2010.1.13)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】