説明

RFIDアンテナモジュールおよび電子機器

【課題】通信性能を良好に維持しつつ、専有面積を少なく抑えることができるRFIDアンテナモジュールを得ることにある。
【解決手段】RFIDアンテナモジュールは、絶縁基板、アンテナおよび磁性部品を備えている。前記アンテナは、前記絶縁基板にループコイル状に設けられている。前記磁性部品は、前記アンテナの裏側に位置するように前記絶縁基板に設けられている。前記絶縁基板は、前記アンテナが複数の方向を指向するように屈曲されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、屈曲された絶縁基板を有するRFIDアンテナモジュールおよびRFIDアンテナモジュールを搭載した電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
近距離の無線通信により情報をやりとりするRFIDシステムは、例えばセキュリティロックなどの認証用としてポータブルコンピュータのような電子機器に導入されている。
【0003】
従来のRFID機能を有する電子機器では、筐体の内部にRFIDアンテナモジュールが配置されている。アンテナモジュールは、ループコイルアンテナが実装されたフラットな絶縁基板を有している。絶縁基板は、例えば筐体の内面に沿うような姿勢で筐体の内部に収容されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−91744号公報
【特許文献2】特開2006−148462号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
RFIDアンテナモジュールによると、電磁波による通信性能を高めるためには、アンテナ自体の面積を大きくすることが必要である。
【0006】
しかしながら、アンテナ自体の面積を大きくするということは、フラットな絶縁基板の大型化に繋がり、RFIDアンテナモジュールをコンパクト化する上での妨げとなる。さらに、筐体の内部にRFIDアンテナモジュールを収める広いスペースを確保しなくてはならず、RFIDアンテナモジュールを設置する場所に制約が生じるのを否めない。
【0007】
本発明の目的は、通信性能を良好に維持しつつ、専有面積を少なく抑えることができるRFIDアンテナモジュールを得ることにある。
【0008】
本発明の他の目的は、RFIDアンテナモジュールを収めるスペースを拡張することなく、通信性能が良好なRFIDアンテナモジュールの実装を可能とした電子機器を得ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
実施形態によれば、RFIDアンテナモジュールは、絶縁基板、アンテナおよび磁性部品を備えている。前記アンテナは、前記絶縁基板にループコイル状に設けられている。前記磁性部品は、前記アンテナの裏側に位置するように前記絶縁基板に設けられている。前記絶縁基板は、前記アンテナが複数の方向を指向するように屈曲されている。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】第1の実施形態に係るポータブルコンピュータの斜視図。
【図2】絶縁基板をフラットな形状に展開した状態を示すRFIDアンテナモジュールの平面図。
【図3】図2のF3−F3線に沿う断面図。
【図4】絶縁基板を折り曲げた状態を示すRFIDアンテナモジュールの正面図。
【図5】絶縁基板を折り曲げた状態を示すRFIDアンテナモジュールの斜視図。
【図6】第1の実施形態において、ポータブルコンピュータに内蔵されたRFIDアンテナモジュールとRFIDカードとの間で電磁波を用いた無線通信により情報がやりとりされている状態を示す断面図。
【図7】第2の実施形態において、ポータブルコンピュータに内蔵されたRFIDアンテナモジュールとRFIDカードとの間で電磁波を用いた無線通信により情報がやりとりされている状態を示す断面図。
【図8】RFIDアンテナモジュールで囲まれた領域にカメラモジュールを配置した第3の実施形態に係るポータブルコンピュータの断面図。
【図9】第3の実施形態において、RFIDアンテナモジュールとカメラモジュールのカメラとの位置関係を示す正面図。
【図10】第4の実施形態において、RFIDアンテナモジュールとカメラモジュールのカメラとの位置関係を示す正面図。
【図11】第5の実施形態に係るスレート型ポータブルコンピュータの斜視図。
【図12】第5の実施形態において、ポータブルコンピュータに内蔵されたRFIDアンテナモジュールとRFIDカードとの間で電磁波を用いた無線通信により情報がやりとりされている状態を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[第1の実施形態]
以下、第1の実施形態について、図1ないし図7を参照して説明する。
【0012】
図1は、電子機器の一例であるノート型のポータブルコンピュータ1を開示している。ポータブルコンピュータ1は、機器本体2と、機器本体2に支持された表示部3とで構成されている。
【0013】
機器本体2は、第1の筐体4を備えている。第1の筐体4は、四角い箱形であり、例えばCPUが実装されたマザーボードおよびハードディスク駆動装置のような主要な構成要素を収容している。
【0014】
第1の筐体4は、上面4aを有している。上面4aは、フラットなパームレスト5とキーボード取り付け部6とを備えている。パームレスト5は、上面4aの前半部において第1の筐体4の幅方向に延びている。キーボード取り付け部6は、パームレスト5よりも凹んだ四角い窪みであり、パームレスト5の背後に位置されている。キーボード7がキーボード取り付け部6に設置されている。キーボード7は、パームレスト5に連続するように第1の筐体4の上面4aに露出されている。
【0015】
表示部3は、第2の筐体10と表示モジュール11とを備えている。第2の筐体10は、例えば合成樹脂材料のような非導電体で構成されている。第2の筐体10は、第1の筐体4と略同じ大きさの四角い箱形であり、前壁12、後壁13および周壁14を有している。前壁12は、第1の壁の一例であって、四角い開口部18が設けられている。後壁13は、第2の壁の一例であって、前壁12に対し第2の筐体10の厚み方向に沿う反対側に位置されている。
【0016】
第1の実施形態によると、第2の筐体10は、ディスプレイマスク16およびディスプレイカバー17を備えている。ディスプレイマスク16は、前壁12を含むとともに、開口部18を取り囲む額縁20を構成している。ディスプレイカバー17は、ディスプレイマスク16と組み合わされて、第2の筐体10の外郭を構成している。このため、ディスプレイカバー17の後壁13は、ディスプレイマスク16の前壁12および開口部18と向かい合っている。
【0017】
表示モジュール11は、第2の筐体10に収容されている。表示モジュール11は、フラットな板状であり、画像や映像を表示する画面21を有している。画面21は、ディスプレイマスク16の開口部18から表示部3の外に露出されている。
【0018】
図1に示すように、一対のヒンジ部22a,22bが第2の筐体10の一端に形成されている。ヒンジ部22a,22bは、第1の筐体4の後端部に図示しないヒンジを介して連結されている。
【0019】
表示部3は、ヒンジ部22a,22bを支点として第1の回動位置と第2の回動位置との間で回動可能である。第1の回動位置では、表示部3は、画面21がパームレスト5およびキーボード7と向かい合うように機器本体2の上に横たわる。第2の回動位置では、表示部3は、パームレスト5、キーボード7および画面21を露出させるように機器本体2の後端部から起立する。
【0020】
図1に示すように、ディスプレイマスク16の額縁20は、第1ないし第4の縁部20a、20b、20c、20dを有している。第1の縁部20aは、表示部3が第2の回動位置に回動された時に、画面21の上側で画面21の幅方向に延びている。第2の縁部20bは、表示部3が第2の回動位置に回動された時に、画面21の右側で画面21の高さ方向に延びている。第3の縁部20cは、表示部3が第2の回動位置に回動された時に、画面21の左側で画面21の高さ方向に延びている。第4の縁部20dは、表示部3が第2の回動位置に回動された時に、画面21の下側で画面21の幅方向に延びている。
【0021】
図6に最もよく示されるように、実装スペース24が第2の筐体10の内部に設けられている。実装スペース24は、額縁20の第1の縁部20aとディスプレイカバー17の後壁13との間で表示モジュール11の幅方向に延びている。実装スペース24は、第2の筐体10の内部で表示モジュール11の周囲に位置されて、表示モジュール11から外れている。
【0022】
図1に示すように、一対の無線LAN用のアンテナ30a,30bおよび個人認証用のRFIDアンテナモジュール31が第2の筐体10の実装スペース24に配置されている。アンテナ30a,30bは、表示部3が第2の位置に回動された時に、表示部3の上端部に位置されるとともに、表示部3の幅方向に互いに離れている。
【0023】
RFIDアンテナモジュール31は、ユーザが保持するRFIDカード32との間で電磁波を用いた近距離の無線通信によって情報をやりとりする要素であって、アンテナ30a,30bの間に介在されている。
【0024】
図2ないし図5に示すように、RFIDアンテナモジュール31は、絶縁基板34、アンテナ35および磁性部品36を備えている。絶縁基板34は、例えばポリイミドフィルムあるいはポリエステルフィルムのようなフレキシブルな絶縁フィルムで構成されている。絶縁基板34は、長辺および短辺を備えた矩形状であるとともに、表面34aおよび裏面34bを有している。
【0025】
アンテナ35は、絶縁基板34の表面34aに積層されている。アンテナ35は、例えば銅箔のような金属箔あるいは導電性ペーストで構成されたアンテナパターン37を有している。アンテナパターン37は、絶縁基板34の長辺および短辺に沿うように絶縁基板34の表面34aの外周部にループコイル状に形成されている。すなわち、図2に示すように、アンテナパターン37は、複数の四角いループ部38を有している。ループ部38は、絶縁基板34の中央部を取り囲むように互いに間隔を存して配線されている。隣り合うループ部38の間隔は、略一定である。
【0026】
磁性部品36は、例えばゴムバインダーに透磁率が大きい磁性粉末を含有させたシート状の複合素材で構成されている。磁性部品36は、絶縁基板34に対応した大きさを有する矩形状であり、絶縁基板34の裏面34bに貼り合わされている。このため、磁性部品36は、アンテナ35の裏側に位置されて、アンテナ35から発せられた電磁波39を絶縁基板34の裏面34bに沿うようにバイパスさせる機能を有している。
【0027】
図5および図6に示すように、RFIDアンテナモジュール31は、絶縁基板34の上に定められた二つの直線L1,L2を折り目として屈曲されている。直線L1,L2は、絶縁基板34の長辺の方向に沿うとともに、絶縁基板34の短辺の方向に互いに間隔を存して平行に延びている。
【0028】
絶縁基板34は、直線L1,L2を境として第1ないし第3の基板部40a,40b,40cに区分けされている。第1の基板部40aは、絶縁基板34を直線L1に沿って略直角に折り曲げることで構成されている。同様に、第2の基板部40bは、絶縁基板34を直線L2に沿って略直角に折り曲げることで構成されている。
【0029】
この折り曲げにより、磁性部品36が絶縁基板34の曲げ方向に沿う内側に位置されている。それとともに、絶縁基板34のうち直線L1,L2の間に位置された部分が第3の基板部40cを構成している。第3の基板部40cは、第1の基板部40aの一側縁と第2の基板部40bの一側縁との間に跨る略フラットな形状を有している。
【0030】
第1の基板部40aおよび第2の基板部40bは、第3の基板部40cに対し同じ方向に折り曲げられている。したがって、RFIDアンテナモジュール31は、絶縁基板34の第1の基板部40aおよび第2の基板部40bが磁性部品36を間に挟んで向かいように屈曲されている。
【0031】
この屈曲により、第1の基板部40aと第2の基板部40bとの間に隙間41が形成されている。隙間41は、第3の基板部40cに対応した幅寸法Wを有するとともに、表示モジュール11の外周部の端面11aに向けて開口されている。さらに、絶縁基板34を屈曲させたことで、磁性部品36が隙間41に面している。
【0032】
図2および図4に示すように、第1の基板部40aおよび第2の基板部40bは、夫々長辺および短辺を有する矩形状であり、本実施形態では、互いにぴったりと重なり合うような面積を有している。さらに、アンテナパターン37のループ部38は、第1の基板部40aの長辺および短辺、第2の基板部40bの長辺および短辺に沿うように配線されている。
【0033】
図6に示すように、RFIDアンテナモジュール31の第1の基板部40aは、第2の筐体10内の実装スペース24で前壁12の内面に面している。同様に、第2の基板部40bは、第2の筐体10内の実装スペース24で後壁13の内面に面している。
【0034】
このため、第1の基板部40aの長辺および短辺に沿うように配線されたアンテナパターン37は、実装スペース24から前壁12に向かう第1の方向を指向している。同様に、第2の基板部40bの長辺および短辺に沿うように配線されたアンテナパターン37は、実装スペース24から後壁13に向かう第2の方向を指向している。第2の方向は、第1の方向に対する向きが第2の筐体10の厚み方向に沿って逆となっている。
【0035】
この結果、RFIDアンテナモジュール31を屈曲させたことにより、アンテナ35が第2の筐体10の内側で第2の筐体10の厚み方向に沿う複数の方向を指向している。
【0036】
さらに、第1の実施形態では、RFIDアンテナモジュール31は、例えば接着等の手段により前壁12の内面又は後壁13の内面に固定されている。
【0037】
図6は、ユーザがポータブルコンピュータ1に内蔵されたRFIDアンテナモジュール31とRFIDカード32との間で無線通信により情報をやりとりしている状態を示している。
【0038】
RFIDアンテナモジュール31に対応した位置でRFIDカード32を第2の筐体10の前壁12又は後壁13に近づけると、RFIDアンテナモジュール31とRFIDカード32とが電磁誘導により結合されて、RFIDアンテナモジュール31とRFIDカード32との間に交信用の電磁波39が形成される。
【0039】
具体的には、RFIDカード32を第2の筐体10の前壁12に近付けた場合、第1の基板部40aの上のアンテナ35とRFIDカード32との間に電磁波39が形成される。第1の基板部40aは、アンテナ35の裏側に位置するように積層された磁性部品36を有するので、第1の基板部40aを通過した電磁波39が磁性部品36により遮られる。これにより、電磁波39が第1の基板部40aの面方向に沿うようにバイパスされ、第2の筐体10の実装スペース24を第2の筐体10の後壁13に向けて通過し難くなる。
【0040】
一方、RFIDカード32を第2の筐体10の後壁13に近付けた場合、第2の基板部40bの上のアンテナ35とRFIDカード32との間に電磁波39が形成される。第2の基板部40bは、アンテナ35の裏側に位置するように積層された磁性部品36を有するので、第2の基板部40bを通過した電磁波39が磁性部品36により遮られる。したがって、電磁波39は、第2の基板部40bの面方向に沿うようにバイパスされ、第2の筐体10の実装スペース24を第2の筐体10の前壁12に向けて通過し難くなる。
【0041】
しかも、第1の実施形態では、第1の基板部40aと第2の基板部40bとの間に第3の基板部40cに対応した隙間41が確保されている。これにより、第1の基板部40aの上のアンテナ35と第2の基板部40bの上にアンテナ35とが互いに遠ざかり、第1の基板部40aのアンテナ35と第2の基板部40bのアンテナ35との間での交信磁界の干渉を回避することができる。
【0042】
よって、交信磁界が打ち消されないようにして、第2の筐体10の前壁12の側および後壁13の側の双方で無線通信を行えるとともに、良好な通信性能を得ることができる。
【0043】
さらに、第1の実施形態によると、RFIDアンテナモジュール31は、二つの直線L1,L2を折り目として三次元的な立体形状に屈曲されている。このため、例えば通信に寄与する第1の基板部40aおよび第2の基板部40bの個々の面積が従来のフラットなRFIDアンテナモジュールの面積と同じであると仮定すれば、RFIDアンテナモジュール31の絶縁基板34を平面的に展開した時の絶縁基板34の面積を従来よりも拡張することができる。
【0044】
したがって、アンテナ35を構成するループ部38の間隔を広げることができる。それとともに、第1および第2の基板部40a,40bの長辺、短辺に沿うアンテナパターン37の全長を長くして、アンテナパターン37で規定されるアンテナ35の開口面積を広げることができる。
【0045】
この結果、電磁誘導によりアンテナ35に発生する電磁力が強くなって、アンテナ35の利得を高めることができるとともに、交信距離を確保する上においても有利な構成となる。
【0046】
加えて、RFIDアンテナモジュール31を立体的に折り曲げたことで、第1ないし第3の基板部40a,40b,40cの専有面積を少なく抑えて、RFIDアンテナモジュール31をコンパクト化することができる。よって、第2の筐体10の内部の実装スペース24を拡張することなく、通信性能が良好なRFIDアンテナモジュール31を実装スペース24に配置することができる。
【0047】
RFIDアンテナモジュールの形状は第1の実施形態に限定されるものではない。例えば、第3の基板部を滑らかな円弧を描くように湾曲させてもよい。
【0048】
さらに、フラットな絶縁基板を一本の直線を折り目として折り返し、磁性部品が密着するように第1の基板部と第2の基板部とを互いに重ね合わせてもよい。このため、絶縁基板の第3の基板部は必須の要素ではなく、屈曲された絶縁基板の形状に応じて省略することができる。
【0049】
[第2の実施形態]
図7は、第2の実施形態を開示している。
【0050】
第2の実施形態は、電磁波をバイパスさせる磁性部品に関する事項が第1の実施形態と相違している。それ以外のRFIDアンテナモジュールおよびポータブルコンピュータの構成は、第1の実施形態と同様である。このため、第2の実施形態において、第1の実施形態と同一の構成部分には同一の参照符号を付して、その説明を省略する。
【0051】
図7に示すように、絶縁基板34の裏面34bに積層された磁性部品50は、第1のシート部51と第2のシート部52とに分割されている。第1のシート部51は、第1の基板部40aに対応した大きさを有する矩形状である。第1のシート部51は、第1の基板部40aに貼り付けられて、第1の基板部40aの上のアンテナ35の裏側に位置されている。
【0052】
第2のシート部52は、第2の基板部40bに対応した大きさを有する矩形状である。第2のシート部52は、第2の基板部40bに貼り付けられて、第2の基板部40bの上のアンテナ35の裏側に位置されている。
【0053】
この結果、第1のシート部51および第2のシート部52は、隙間41に面した状態で互いに間隔を存して向かい合っている。
【0054】
第2の実施形態によると、電磁波39をバイパスさせる磁性部品50が、第1の基板部40aに対応した第1のシート部51と、第2の基板部40bに対応した第2のシート部52とに分割されている。言い換えると、第1のシート部51と第2のシート部52との間に絶縁基板34の第3の基板部40cが介在され、第3の基板部40cにより第1のシート部51が第2のシート部52から切り離されている。
【0055】
したがって、磁性部品50に柔軟性は要求されず、例えば磁性部品50として磁性粉末を焼き固めたセラミック系材料を用いることができる。よって、磁性部品50の材質を選定する上での自由度が増大する利点がある。
【0056】
[第3の実施形態]
図8および図9は、第3の実施形態を開示している。
【0057】
第3の実施形態は、第2の筐体10の内部の実装スペース24に、RFIDアンテナモジュール31と一緒にカメラモジュール60を配置した点が第1の実施形態と相違している。カメラモジュール60を除くRFIDアンテナモジュール31およびポータブルコンピュータ1の構成は、基本的に第1の実施形態と同様である。このため、第3の実施形態において、第1の実施形態と同一の構成部分には同一の参照符号を付して、その説明を省略する。
【0058】
カメラモジュール60は、電子部品の一例であって、RFIDアンテナモジュール31の第1の基板部40aと第2の基板部40bとの間の隙間41に収容されている。図8および図9に示すように、カメラモジュール60は、モジュール基板61、Webカメラ62および複数のICチップ63を備えている。
【0059】
モジュール基板61は、表示モジュール11の幅方向に延びる細長いプリント配線板で構成され、図示しないホルダーを介して隙間41に保持されている。モジュール基板61は、第1の面61aおよび第2の面61bを有している。第1の面61aは、RFIDアンテナモジュール31の第1の基板部40aと向かい合っている。第2の面61bは、第1の面61aの裏側に位置されて、RFIDアンテナモジュール31の第2の基板部40bと向かい合っている。このため、モジュール基板61は、絶縁基板34の第1ないし第3の基板部40a,40b,40cによって取り囲まれている。
【0060】
Webカメラ62は、モジュール基板61の第1の面61aに半田付け等の手段により実装されて、モジュール基板61の長手方向に沿う一端部61cに位置されている。Webカメラ62は、撮像範囲を定める前面レンズ64と、前面レンズ64を透過した光を受ける撮像素子65とを有している。前面レンズ64は、第1の基板部40aを指向している。
【0061】
ICチップ63は、Webカメラ62の動作を制御するための要素であり、モジュール基板61の第1の面61aおよび第2の面61bに実装されている。
【0062】
図8に示すように、RFIDアンテナモジュール31は、Webカメラ62の前面レンズ64に対応した位置に通孔66を有している。通孔66は、第1の基板部40aおよび第1の基板部40aに積層された磁性部品36を貫通する孔であり、前面レンズ64と向かい合っている。
【0063】
さらに、RFIDアンテナモジュール31に開口された通孔66は、第2の筐体10の前壁12に開けたカメラ窓67と向かい合っている。カメラ窓67は、光透過性を有するレンズカバー68で塞がれている。
【0064】
第3の実施形態によると、三次元的な立体形状に折り曲げられたRFIDアンテナモジュール31で囲まれた領域にカメラモジュール60を配置できる。そのため、第2の筐体10の内部の実装スペース24にカメラモジュール60を配置する専用の領域を確保する必要はない。よって、LAN用のアンテナ30a,30bを収めるスペースを減らすことなく、第2の筐体10にカメラモジュール60を搭載することが可能となる。
【0065】
さらに、RFIDアンテナモジュール31の磁性部品36でカメラモジュール60を取り囲むことができる。これにより、磁性部品36が有する磁気特性を利用してカメラモジュール60のノイズ対策および静電気対策を実行することができる。
【0066】
加えて、例えばICチップ63をモジュール基板61に接合する半田のような金属部分がモジュール基板61の上に露出していても、カメラモジュール60とアンテナ35との間に介在された磁性部品36がアンテナ35に生じた電磁波39をシールドする。よって、電磁波39が金属部分を貫通するのを回避でき、RFIDアンテナモジュール31の通信性能を良好に維持することができる。
【0067】
[第4の実施形態]
図10は、第4の実施形態を開示している。
【0068】
第4の実施形態は、カメラモジュール60とRFIDアンテナモジュール31との位置関係が第3の実施形態と相違している。
【0069】
具体的には、モジュール基板61の一端部61cが第1の基板部40aと第2の基板部40bとの間の隙間41から第2の筐体10の内部の実装スペース24に突出されている。これにより、Webカメラ62は、RFIDアンテナモジュール31で囲まれることなく実装スペース24に露出されている。Webカメラ62の前面レンズ64は、実装スペース24で第2の筐体10のレンズカバーと向かい合っている。
【0070】
第4の実施形態によれば、RFIDアンテナモジュール31の絶縁基板34に前面レンズ64と向かい合う孔を開ける必要はない。このため、絶縁基板34に孔を開ける格別な作業を省略できるとともに、絶縁基板34の強度を確保する上でも好都合となる。
【0071】
[第5の実施形態]
図11および図12は、第5の実施形態を開示している。
【0072】
第5の実施形態では、タブレット型のポータブルコンピュータ70を電子機器の一例としている。ポータブルコンピュータ70は、筐体71および表示モジュール72を主要な構成要素として備えている。
【0073】
筐体71は、フラットな四角い箱形であり、ベース73と保護パネル74とを備えている。ベース73は、例えば合成樹脂材料のような非導電体で構成されている。ベース73は、周壁75および底壁76を有している。周壁75は、第1の壁の一例であって、第1ないし第4の辺部75a,75b,75c,75dを有する四角い枠形である。周壁75は、第1ないし第4の辺部75a,75b,75c,75dで囲まれた第1の開口部78および第2の開口部79を有している。底壁76は、周壁75の第1の開口部78を覆っている。
【0074】
保護パネル74は、ガラスあるいは合成樹脂材料のような非導電体で構成されている。保護パネル74は、第2の壁の一例であって、四角い透明な表示領域80と、不透明なマスク部81とを有している。マスク部81は、表示領域80を取り囲んだ第1ないし第4の縁部81a,81b,81c,81dを有している。保護パネル74は、周壁75の第2の開口部79を覆っている。保護パネル74のマスク部81は、周壁75の第1ないし第4の辺部75a,75b,75c,75dに対し直交するような姿勢で周壁75と隣り合っている。
【0075】
したがって、保護パネル74は、ベース73と協働して筐体71の外郭を構成している。
【0076】
図12に示すように、表示モジュール72は、筐体71に収容されている。表示モジュール72は、画像や映像を表示する画面82を有している。画面82は、保護パネル74の下方に位置されている。
【0077】
さらに、手書き入力機能を有するタッチパネル83が保護パネル74と表示モジュール72の画面82との間に介在されている。タッチパネル83は、保護パネル74の裏面に接着されている。
【0078】
図12に示すように、実装スペース85が筐体71の内部に設けられている。第5の実施形態によると、実装スペース85は、周壁75の第1の辺部75a、底壁76および保護パネル74の第1の縁部81aとで囲まれた領域である。実装スペース85は、表示モジュール72の周囲に位置されて、表示モジュール72から外れている。
【0079】
個人認証用のRFIDアンテナモジュール90が筐体71の実装スペース85に配置されている。RFIDアンテナモジュール90は、ユーザが保持するRFIDカード91との間で電磁波を用いた近距離の無線通信によって情報をやりとりする要素である。
【0080】
RFIDアンテナモジュール90は、絶縁基板92、アンテナ93および磁性部品94を備えている。絶縁基板92は、フレキシブルな絶縁フィルムで構成されているとともに、長辺および短辺を備えた矩形状である。
【0081】
アンテナ93は、絶縁基板92の表面に積層されている。アンテナ93は、アンテナパターン95を有している。アンテナパターン95は、絶縁基板92の長辺および短辺に沿うように絶縁基板92の表面の外周部にループコイル状に形成されている。
【0082】
磁性部品94は、第1の実施形態と同様のシート状の複合素材で構成されている。磁性部品94は、絶縁基板92に対応した大きさを有する矩形状であり、絶縁基板92の裏面に貼り合わされている。このため、磁性部品94は、アンテナ93の裏側に位置されて、アンテナ93から発せられた電磁波96を絶縁基板92の裏面に沿うようにバイパスさせる機能を有している。
【0083】
RFIDアンテナモジュール90は、絶縁基板92の上に定められた一つの直線L3を折り目として屈曲されている。直線L3は、絶縁基板92の中央を通って絶縁基板92の長辺の方向に延びている。
【0084】
絶縁基板92は、直線L3を境として第1の基板部97aおよび第2の基板部97bに区分けされている。第1および第2の基板部97a,97bは、絶縁基板92を直線L3に沿って略直角に折り曲げることで構成されている。この折り曲げにより、磁性部品94が絶縁基板92の曲げ方向に沿う内側に位置されている。
【0085】
RFIDアンテナモジュール90の第1の基板部97aは、筐体71内の実装スペース85で周壁75の第1の辺部75aの内面に面している。第2の基板部97bは、筐体71内の実装スペース85で保護パネル74の第1の縁部81aの内面に面している。
【0086】
このため、第1の基板部97aの上に位置されたアンテナパターン95は、実装スペース85から周壁75の第1の辺部75aに向かう第1の方向を指向している。第2の基板部97bの上に位置されたアンテナパターン95は、実装スペース85から保護パネル74の第1の縁部81aに向かう第2の方向を指向している。第2の方向は、第1の方向に対し略直した向きとなっている。
【0087】
したがって、RFIDアンテナモジュール90を屈曲させたことで、アンテナ93は筐体71の実装スペース85で互いに異なる複数の方向を指向している。
【0088】
図12に示すように、RFIDカード91を周壁75の第1の辺部75aに近付けた場合、第1の基板部97aの上のアンテナ93とRFIDカード91との間に電磁波96が形成される。第1の基板部97aは、アンテナ93の裏側に位置するように積層された磁性部品94を有するので、第1の基板部97aを通過した電磁波96は、磁性部品94により第1の基板部97aの面方向に沿うようにバイパスされる。
【0089】
RFIDカード91を保護パネル74の第1の縁部81aに近付けた場合、第2の基板部97bの上のアンテナ93とRFIDカード91との間に電磁波96が形成される。第2の基板部97bは、アンテナ93の裏側に位置するように積層された磁性部品94を有するので、第2の基板部97bを通過した電磁波39は、磁性部品94により第2の基板部97bの面方向に沿うようにバイパスされる。
【0090】
この結果、第1の基板部97aの上のアンテナ93と第2の基板部97bの上のアンテナ93との間での交信磁界の干渉を回避することができる。よって、交信磁界が打ち消されないようにして、筐体71の周壁75の側および保護パネル74の側の双方で無線通信を行えるとともに、良好な通信性能を得ることができる。
【0091】
さらに、RFIDアンテナモジュール90は、直線L3を折り目として三次元的な立体形状に屈曲されている。このため、前記第1の実施形態と同様に、第1および第2の基板部97a,97bcの専有面積を少なく抑えて、RFIDアンテナモジュール90をコンパクト化することができる。したがって、筐体71の内部の実装スペース85を拡張することなく、通信性能が良好なRFIDアンテナモジュール90を実装スペース85に配置できる。
【0092】
第1のないし第5の実施形態では、ポータブルコンピュータを電子機器の一例として説明したが、電子機器はポータブルコンピュータに限らず、例えば液晶テレビでも同様に実施可能である。
【0093】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0094】
10,71…筐体(第2の筐体)、11,72…表示モジュール、31,90…RFIDアンテナモジュール、34,92…絶縁基板、35,93…アンテナ、36,50,94…磁性部品。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フレキシブルな絶縁基板と、
前記絶縁基板に設けられ、電磁誘導により通信を行うループコイル状のアンテナと、
前記絶縁基板に設けられ、前記アンテナの裏側に位置された磁性部品と、を含み、
前記絶縁基板が屈曲されて、前記アンテナが複数の方向を指向するように構成されたRFIDアンテナモジュール。
【請求項2】
請求項1の記載において、前記絶縁基板は、第1の方向を指向する第1の基板部と、前記第1の方向と異なる第2の方向を指向する第2の基板部と、を備え、前記第1の基板部および前記第2の基板部に前記アンテナが形成されたRFIDアンテナモジュール。
【請求項3】
請求項2の記載において、前記第1の基板部および前記第2の基板部は、夫々長辺および短辺を有する矩形状であり、前記アンテナが前記長辺および前記短辺に沿うように配線されたRFIDアンテナモジュール。
【請求項4】
請求項3の記載において、前記絶縁基板は、前記第1の基板部および前記第2の基板部が前記磁性部品を間に挟んで向かい合うように屈曲されたRFIDアンテナモジュール。
【請求項5】
請求項4の記載において、前記第1の基板部と前記第2の基板部との間に前記磁性部品が臨む隙間が形成されたRFIDアンテナモジュール。
【請求項6】
請求項4又は請求項5の記載において、前記アンテナは、コイル状に巻回された複数のアンテナパターンを有し、前記アンテナパターンが前記第1の基板部および前記第2の基板部に互いに間隔を存して配線されたRFIDアンテナモジュール。
【請求項7】
請求項1の記載において、前記絶縁基板は、第1の方向を指向する第1の基板部と、前記第1の方向と異なる第2の方向を指向する第2の基板部と、前記第1の基板部と前記第2の基板部との間に跨る第3の基板部と、を備え、前記第1の基板部ないし前記第3の基板部に前記アンテナが形成されているとともに、前記第1の基板部と前記第2の基板部との間に前記磁性部品が面する隙間が形成されたRFIDアンテナモジュール。
【請求項8】
請求項7の記載において、前記絶縁基板は、前記第1の基板部および前記第2の基板部が前記隙間を介して互いに向かい合うように屈曲されたRFIDアンテナモジュール。
【請求項9】
請求項7又は請求項8の記載において、前記磁性部品は、前記第1の基板部に積層された第1のシート部と、前記第2の基板部に積層された第2のシート部と、に分割されたRFIDアンテナモジュール。
【請求項10】
非導電性を有する筐体と、
前記筐体の内側に配置されたRFIDアンテナモジュールと、を備えた電子機器であって、
前記RFIDアンテナモジュールは、
フレキシブルな絶縁基板と、
前記絶縁基板に設けられ、電磁誘導により通信を行うループコイル状のアンテナと、
前記絶縁基板に設けられ、前記アンテナの裏側に位置された磁性部品と、を含み、
前記絶縁基板が屈曲されて、前記アンテナが前記筐体内で複数の方向を指向するように構成された電子機器。
【請求項11】
請求項10の記載において、前記筐体は、第1の壁と、前記第1の壁と隣り合う第2の壁と、を有し、前記第1の壁および前記第2の壁は、互いに協働して前記筐体の外郭を構成するとともに、
前記RFIDアンテナモジュールの前記絶縁基板は、前記第1の壁に面した第1の基板部と、前記第2の壁に面した第2の基板部と、を含み、前記第1の基板部および前記第2の基板部に前記アンテナが形成された電子機器。
【請求項12】
請求項10の記載において、前記筐体は、第1の壁と、前記第1の壁の反対側に位置された第2の壁と、を有し、前記第1の壁および前記第2の壁は、互いに協働して前記筐体の外郭を構成するとともに、
前記RFIDアンテナモジュールの前記絶縁基板は、前記第1の壁に面した第1の基板部と、前記第2の壁に面した第2の基板部と、を含み、前記第1の基板部および前記第2の基板部に前記アンテナが形成された電子機器。
【請求項13】
請求項12の記載において、前記第1の基板部と前記第2の基板部との間に前記磁性部品が臨む隙間が形成された電子機器。
【請求項14】
請求項13の記載において、前記RFIDアンテナモジュールの前記隙間に配置された電子部品をさらに備えた電子機器。
【請求項15】
請求項14の記載において、前記電子部品が前記RFIDアンテナモジュールの前記磁性部品で囲まれた電子機器。
【請求項16】
請求項14又は請求項15の記載において、前記電子部品は、前記筐体の外の情報を取り込むカメラであり、前記カメラは、撮像範囲を定めるレンズを有するとともに、前記RFIDアンテナモジュールの前記絶縁基板および前記磁性部品に前記レンズ向かい合う通孔が設けられた電子機器。
【請求項17】
非導電性を有する筐体と、
前記筐体に収容された表示モジュールと、
前記表示モジュールの周囲に位置するように前記筐体内に配置されたRFIDアンテナモジュールと、を備えた電子機器であって、
前記RFIDアンテナモジュールは、
フレキシブルな絶縁基板と、
前記絶縁基板に設けられ、電磁誘導により通信を行うループコイル状のアンテナと、
前記絶縁基板に設けられ、前記アンテナの裏側に位置された磁性部品と、を含み、
前記絶縁基板が屈曲されて、前記アンテナが前記表示モジュールの周囲で複数の方向を指向するように構成された電子機器。
【請求項18】
請求項17の記載において、前記表示モジュールの外周部と前記筐体との間に前記表示モジュールから外れた実装スペースが形成され、前記RFIDアンテナモジュールの前記絶縁基板が前記実装スペースに収容された電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2013−115628(P2013−115628A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−260327(P2011−260327)
【出願日】平成23年11月29日(2011.11.29)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】