説明

TK壁面植栽緑化工法と壁面植栽緑化システム

【課題】構築物の壁面に対してはこれといった緑化技術が少なく、代表的なものとしてツタ緑化以外には樹木を混植した緑化は見当たらず、コンクリートむき出しの壁面等が太陽の光を照り返し、温暖化の一原因を創り出し、なおかつ殺風景な景観を醸す等その有り様が、環境面での批判を浴びるようになった。
【解決手段】植栽室を設けた薄型植栽マット体を型枠盤に固定し、植栽室に低木や草本類を、また薄型植栽マット体表面にはセダムを植栽するとともに上部に雨水集受器を設け、自然灌水が出来ることを特徴とし、コンクリート擁壁等の垂直面に設置することにより景観的に優れた市街地に生まれ変わり、反射熱の削減にも貢献できる壁面への植栽工法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植栽マット盤に低木や草本類を植栽し、薄型植栽マット体表面にはセダム類を植栽して壁面に取付ける壁面植栽緑化工法とそのための壁面緑化システムに関する技術である。
【背景技術】
【0002】
近年、都会におけるヒートアイランド現象が社会問題になるにつれて、屋上緑化、屋根緑化や壁面緑化などの必要性が高まり、この要請に応える緑化装置や緑化器具の開発が盛んに行われている。
【0003】
そこで、ベランダに植木鉢を置き草花や低木を栽培し、あるいは屋上緑化としてミニ庭園といった樹木を取り入れた植栽緑化が流行している反面、垂直面の壁面に対しては、樹木を交えた植栽が見当たらず、ネット類を壁面に設置しツタ類による緑化、又は胴部上面を開放したパイプ状プランターを吊り下げてプランター内部の土壌に草花類の空中植栽をするのが一般的である。
【特許文献1】特開2004−254620号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような現実を踏まえ、建築物等の壁面に薄型植栽マット体を使用し、低木や草本類及びセダム類を植栽して樹木等緑化により景観の向上を図り、問題となっている地球温暖化の原因でもある太陽光線の照り返し防止や二酸化炭素の削減にも貢献できる壁面への植栽緑化工法と壁面緑化システムを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者が考案した腐蝕しにくい材料で縫製形成した薄型植栽マット体(登録第3116273号)に植栽室を設け、該薄型植栽マット体をL型型枠盤に固定して壁面等への設置を容易にし、植栽室に低木や草本類を植栽、また薄型植栽マット体表面にはセダム類を植栽し、上部に雨水集受器を設け、自然灌水できる壁面への植栽緑化工法と壁面緑化システム。
【0006】
薄型植栽マット体の下端部を上方に帯状に折り返し、折り返し部分の空間内に硬質樹脂系有孔板に複数の樹脂系有孔管を一定間隔で固定したものを挿入固定し、左右の樹脂系有孔管と前後のマット体に囲まれた植栽室を形成する。水分を多量に蓄えられる乾燥水苔と遅効性肥料を混合し不織布で樹脂系有孔管の大きさに巻装袋体とし、該樹脂系有孔管内に挿入して植栽木への肥料と補給水とし、該薄型植栽マット体の裏面には、型くずれ防止と型枠盤に取付が容易な硬質樹脂系有孔板を取付ける。
【0007】
樹脂材で形成した係止を有するL型型枠盤に植栽室を設けた薄型植栽マット体を粘着材と複数本のボルトで固定し植栽マット盤に形成する。該植栽マット盤の植栽室に植栽基盤土を充填して低木等を植栽するとともに薄型植栽マット体の表面にはセダムをランダムに挿し付け植栽した該植栽マット盤を一定間隔で係止口を有する有穴帯状鋼板と該有穴帯状鋼板落下防止保護の笠木鋼板と係止ピンを使って壁面に設置固定する。なお粘着剤とワイヤーの組み合わせ等で固定してもよい。
【0008】
最後に鉄筋棒2本を内角約135°に曲げ加工し、直の部分は植栽マット盤へ差込むための脚部とし、曲がりの部分には別途2本の鉄筋棒を足し、該植栽マット盤の長さに合わせて長方形に溶接加工し、その上に載せるアクリル板の下方部に数カ所固定バンドを通す穴を開け粘着固定し、ウイング型雨水集受器とする。該ウイング型雨水集受器の脚部を植栽マット盤に差し込み、風等に飛ばされないように該植栽マット盤に固定バンドで固定する。
【発明の効果】
【0009】
低木や草本類による壁面植栽緑化を簡単に可能とし、景観向上と二酸化炭素削減に貢献できる垂直面への植栽緑化工法である。さらに使用する植栽マット盤は腐蝕しにくい材質であること、また薄型植栽マット体に傷を付けず植栽室を形成していること等から植栽基盤土の移動や流出がなく、長年使用可能な環境に優しい植栽マット盤である。
【0010】
また、薄型植栽マット体の植栽基盤土には、保水力が一般用土より非常に強いココピート、ピートモス、水苔、バーク堆肥、木炭を使用し、特に植栽室は二重のマット体及び肥料と水分補給の補給袋が組み込まれた樹脂系有孔管で形成され、なおかつ薄型植栽マット体と同じ植栽基盤土が充填されるので非常に水持ちがよいこと、薄型植栽マット体の保水シートは雨水等の水分を効率よく吸水し植栽基盤土に給水すること、植栽されたセダムが蒸散水を抑制すること、またウイング型雨水集受器から自然灌水すること等理由から水管理省力型の壁面への植栽緑化工法である。
【0011】
なお、時間経過とともに植栽木は生育し、その根が基盤の薄型植栽マット体のネットに絡みさらにマット体内に張り巡らされて、該薄型植栽マット体と一体となり、植栽木は強風でも倒木することがない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明を図に基づき説明すると、図1は、図2に示す構造を持つ薄型植栽マット体1の斜視図である。
【0013】
図2は、いずれも腐蝕しにくい材質にてマットを成形するもので、ネット状シート2、不織布3の順に重ね底部を形成し、その上に植栽基盤土4(ココピート、水苔、バーク堆肥、ピートモス、木炭の混合土に有機肥料、遅効性肥料、化成肥料を添加した人工改良土壌)を2〜5cm厚に敷き詰め、不織布3、保水シート5、ネット状シート2の順に重ね上部を形成し、底部と上部が一体化するように縦横所定間隔に縫製した薄型植栽マット体1の断面を示したものである。
【0014】
図3のイ)は、薄型植栽マット体1の下部を上方に帯状に折り返し、両端部を縫製形成し、マットの折り返し部の空間に形を整える硬質樹脂系有孔板に複数本の樹脂系有孔管7を一定間隔で固定したものを挿入固定し、左右の樹脂系有孔管7と前後のマット体に囲まれた空間部を植栽室16として成形し、樹脂系有孔管7内には肥料と水分を補給しやすい乾燥水苔と遅効性肥料を混合し不織布で巻装した補給袋7aを挿入した状態を示したものでロ)は、植栽室を形成する硬質樹脂系有孔板6と樹脂系有孔管7と該樹脂系有孔管に挿入される肥料と水分を補給する補給袋7a(乾燥水苔と遅効性肥料の混合)である。
【0015】
図4は、薄型植栽マット体を固定する樹脂製もしくは金属製のL型型枠盤8であり、上部の枠にはウイング型雨水集受器18の差込穴9と雨水等の給水を受け易いように溝を有し、該溝中に複数の水穴10が空いており、下部には該植栽マット体の植栽室を収めるボックス11を有し、その底には該植栽マット体の余剰水分を下部植栽マット盤に通水できるように複数の水穴が開けてあり、裏面には係止受け金具14が四隅に取付けられている。
【0016】
図5は、一定間隔で植栽マット盤を固定する係止口を有する有穴帯状鋼板12、植栽マット盤と有穴帯状鋼板12とを連結固定する係止ピン13及び植栽マット盤裏面の四隅に設けてある受け金具14及び有穴帯状鋼板の落下を防止する笠木鋼板23である。
【0017】
図6は、植栽室を設けた薄型植栽マット体1をL型型枠盤8に粘着剤とボルトで固定した植栽マット盤15の植栽室16に植栽基盤土4(ココピート、水苔、バーク堆肥、ピートモス、木炭の混合土に有機肥料、遅効性肥料、化成肥料を添加した人工改良土壌)を充填し、低木や草本類17を植栽し、薄型植栽マット体表面にはセダム17aを植栽した該植栽マット盤15の完成図である。
【0018】
図7は、ウイング型雨水集受器18であり、2本の鉄筋棒を内角約135°に折り曲げ、曲げられ上端の2点と曲点2点を結んだ長方形の長辺を植栽マット盤幅とする長方形になるように別の2本の鉄筋棒を溶接加工してこの長方形を骨組19とし、骨組19上にその大きさに合わせたアクリル板20を粘着剤で固定し、該アクリル板20下方部には固定バンドを通す穴を複数開けて置く。
【0019】
アクリル板20を付着していない鉄筋棒の部分を脚部21として、植栽マット盤15の上部に差し込み、上記アクリル板の複数の穴に固定バンドを通し、植栽マット盤15に固定することにより、飛散を防止する。
【0020】
図8のイ)は、植栽が完了した植栽マット盤15をコンクリート壁面22に設置し、植栽室及び植栽マット体に植栽を終えた状態を示したものであり、ロ)はイ)の断面を示したもので壁面に一定間隔に係止口を有する有穴帯状鋼板11を設置し、植栽マット盤15の受け金具14の設置位置に合わせて係止ピン13を差込み、これに受け金具14を差込み、植栽マット盤を固定するとともに、笠木鋼板23を有穴帯状鋼板11の上部に被せて有穴帯状鋼板と合わせてボルト締めして落下を防止する。次に上列部の植栽マット盤15の差込穴9にウイング型雨水集受器18の脚部21を根元まで差込み、アクリル板20に開けた穴を介し、固定バンドで該植栽マット盤15に結束固定する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】薄型植栽マット体を示す斜視図である。
【図2】薄型植栽マット体の構造を示す説明図である。
【図3】イ)は、薄型植栽マット体に植栽室を形成した斜視図でロ)は、植栽室を形成する硬質樹脂系有孔板と樹脂系有孔管と補給袋を示した斜視図である。
【図4】L型型枠盤の説明図である。
【図5】係止口を有する有穴帯状鋼板と係止ピンと受け金具を示す斜視図である。
【図6】植栽マット盤に植栽した状態を示す斜視図である。
【図7】ウイング型雨水集受器を示す斜視図である。
【図8】イ)は、本発明に係る壁面植栽緑化システムの一実施例を示す斜視図でロ)は、壁面植栽緑化システムの断面を示す説明図である。
【符号の説明】
【0022】
1 薄型植栽マット体
2 ネット状シート
3 不織布
4 植栽基盤土
5 保水シート
6 硬質樹脂系有孔板
7 樹脂系有孔管
7a 補給袋
8 L型型枠盤
9 差込穴
10 水穴
11 ボックス
12 有穴帯状鋼板
13 係止ピン
14 受け金具
15 植栽マット盤
16 植栽室
17 低木や草本類
17a セダム
18 ウイング型雨水集受器
19 骨組
20 アクリル板
21 脚部
22 コンクリート壁面
23 笠木鋼板
24 ボルト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の植栽室を設けた薄型植栽マット体をL型型枠盤に固定し植栽マット盤とし、植栽室に低木や草本類を植栽し、また薄型植栽マット体表面にはセダム類を植栽して取付金具を介して壁面等に設置することを特徴とする壁面植栽緑化工法。
【請求項2】
上記請求項1の植栽マット盤上部にウイング型雨水集受器を設け、自然潅水を行うことを特徴とした壁面植栽緑化工法。
【請求項3】
請求項1の薄型植栽マット体に植栽室を設け植栽マット盤とし、樹木等植物を植栽できることを特徴とする壁面植栽緑化システム。
【請求項4】
請求項2の植栽マット盤にウイング型雨水集受器を設け、自動潅水できるようにしたことを特徴とする壁面植栽緑化システム。
【請求項5】
請求項1〜4の植栽マット盤を吊り下げ係止させる有穴帯状鋼板及び付属金具を使用し壁面に設置できるようにしたことを特徴とする壁面植栽緑化システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−143472(P2007−143472A)
【公開日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−341865(P2005−341865)
【出願日】平成17年11月28日(2005.11.28)
【出願人】(391002199)株式会社丹勝 (29)
【Fターム(参考)】