説明

α型炭化ケイ素粒子の製造方法

【課題】耐酸化性に優れ、耐熱性を有するα型炭化ケイ素粒子の製造方法を提供する。
【解決手段】下記の(a)及び/又は(b)を満たす、カーボンファイバー及び/又はチューブと、一酸化ケイ素とを、互いに混合することなく互いに離して反応容器内に載置する工程、上記反応容器を、加熱炉内で、0.1気圧以下で、カーボンファイバー等を1,400℃以上の温度に加熱し、前記一酸化ケイ素を1,100℃以上の温度であって前記カーボンファイバー及び/又は前記カーボンチューブの加熱温度より低い温度に加熱してα型炭化ケイ素粒子を生成させる工程、を含む、α型炭化ケイ素粒子の製造方法。
ここで、(a)は粉末X線回折法によるグラファイト(002)面の回折ピークの半値幅が1°以下であること;(b)は600℃の大気中で加熱して重量減少が10%以下であること。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1,000℃以上の高温でも耐酸化性に優れ、耐熱性がある、α型炭化ケイ素粒子及びα型炭化ケイ素粒子ファイバーの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
炭化ケイ素は、1,000℃以上の高温でも、酸化されにくく、耐熱性に優れ、また機械的強度が強く、かつ化学的にも安定な材料である。その用途として、セラミックス焼結体としては、高温用るつぼ、焼成用部材、熱交換器用部材、高温用メカニカルシール、半導体熱処理プロセス用冶具、さらに最近では、自動車排ガス用フィルター材料としても利用されている。
【0003】
また、六方晶系であるα型炭化ケイ素は、常温でも熱伝導率が高く、放熱基板として、また最近では、LED用基板やパワートランジスタ用基板としても利用され、また耐摩耗性が高いため、研磨材としても利用されている。一方、ナノ粒子の炭化ケイ素は、最近では、アルミニウムやマグネシウムなどの金属材料に混合して、MMCといわれる金属複合材料として、軽量化した放熱基板などに用いられる。またナノ粒子の炭化ケイ素は、水溶液などに分散させて、ダイヤモンドやサファイアなどの難削材料の研磨材として、特により表面を細かく研磨できる研磨材としても開発されている。
【0004】
その炭化ケイ素ナノ粒子の製造方法としては、以下の報告がある。
特許文献1は、一酸化ケイ素と非晶質活性炭素を坩堝に入れ、不活性ガス雰囲気下で、一酸化ケイ素が気化する温度まで加熱することにより、立方晶系炭化ケイ素からなる繊維状構造体であって、長さが10〜100μm、直径が20nm〜100nmであることを特徴とする炭化ケイ素ナノロッドを得ている。
この作成方法は、反応物が立方晶系炭化ケイ素とあり、六方晶系であるα型炭化ケイ素の作製方法とは異なる。
【0005】
特許文献2は、クロロシランを1〜100Torrの範囲の減圧雰囲気下、キャリアーガス気流中、900℃以上1300℃以下の温度範囲に加熱することを特徴とする立方晶系炭化ケイ素ナノワイヤーの製造方法を開示する。
この作成方法も、反応物が立方晶系炭化ケイ素とあり、六方晶系であるα型炭化ケイ素の作製方法ではない。
【0006】
非特許文献1は、炭化ケイ素ナノファイバの合成にアルゴン雰囲気中でSiOガスとCOガスとの間の気相反応を検討しており、黒鉛るつぼ内に黒鉛粉末(触媒として不純物レベルの0.2wt%鉄含有)を入れ、その上にけい素圧粉体を乗せ、るつぼ蓋を黒鉛基板として用いた。反応器を873Kで1時間脱気した後、1気圧のアルゴン雰囲気中に1,523Kで1〜24時間保持したところ、基板上に生成した炭化ケイ素ナノファイバは、直径が10〜100nmで長さがほぼ10μmであり、このナノファイバは、コアが少量のα−SiC相を伴うβ−SiCであり、シェルがほぼ非晶質SiO2からなっている。
この製造方法も、反応物が六方晶系であるα型炭化ケイ素が一部しか得られない。
【0007】
【特許文献1】特開2004−161507号公報
【特許文献2】特開2004−292222号公報
【非特許文献1】Trans. Indian Ceram. Soc., Vol.63, No.4, Page.195-198 (2004.10)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述したように立方晶系の炭化ケイ素粒子を製造する方法は知られているが、六方晶系に属するα型炭化ケイ素ナノ粒子を高い純度で製造する方法は知られていない。
本発明が解決しようとする課題は、α型炭化ケイ素粒子を製造することができる方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題は、以下の手段(1)により達成された。好ましい実施形態(2)ないし(5)と共に列記する。
(1)下記の(a)及び/又は(b)の条件を満たす、カーボンファイバー及び/又はカーボンチューブと、一酸化ケイ素とを、互いに混合することなく互いに離して反応容器内に載置する工程、並びに、上記反応容器を、加熱炉内において、0.1気圧以下の真空下で、前記カーボンファイバー及び/又は前記カーボンチューブを1,400℃以上の温度に加熱し、前記一酸化ケイ素を1,100℃以上の温度であって前記カーボンファイバー及び/又は前記カーボンチューブの加熱温度より低い温度に加熱してα型炭化ケイ素粒子を生成させる工程、を含むことを特徴とする、α型炭化ケイ素粒子の製造方法、
(a)粉末X線回折法により測定した、グラファイト(002)面の回折ピークの半値幅が1°以下であること
(b)600℃の大気中で加熱したときに重量減少が10%以下であること
(2)カーボンファイバー及び/又はカーボンチューブの平均外径が30nm以上であって、直径に対する長さの比(アスペクト比)が10以上である、(1)に記載のα型炭化ケイ素粒子の製造方法、
(3)前記α型炭化ケイ素粒子を生成させる工程を、ひげ状ファイバーの付いたα型炭化ケイ素粒子を生成させる工程とした、(1)又は(2)に記載のα型炭化ケイ素粒子の製造方法、
(4)平均粒子径が1〜10μm以上の一酸化ケイ素を使用する、(1)ないし(3)いずれか1つに記載のα型炭化ケイ素粒子の製造方法、
(5)α型炭化ケイ素粒子を生成させる工程に引き続いて、600℃以上800℃以下の大気中で前記α型炭化ケイ素粒子を加熱して、残存するカーボンを酸化除去する工程を含む、(1)ないし(4)いずれか1つに記載のα型炭化ケイ素粒子の製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、酸化性に優れ、耐熱性がある、α型炭化ケイ素粒子を高い純度(純度95%以上)で製造することができた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下に上記の本発明の製造方法について説明する。
本発明のα型炭化ケイ素粒子の製造方法は、下記の(a)及び/又は(b)の条件を満たす、カーボンファイバー及び/又はカーボンチューブと、一酸化ケイ素とを、互いに混合することなく互いに離して反応容器内に載置する工程、及び、上記反応容器を、加熱炉内において、0.1気圧以下の真空下で、前記カーボンファイバー及び/又は前記カーボンチューブを1,400℃以上の温度に加熱し、前記一酸化ケイ素を1,100℃以上の温度であって前記カーボンファイバー及び/又は前記カーボンチューブの加熱温度より低い温度に加熱してα型炭化ケイ素粒子を生成させる工程、を含むことを特徴とする。ここで、(a)は、粉末X線回折法により測定した、グラファイト(002)面の回折ピークの半値幅が1°以下であること、であり、(b)は、600℃の大気中で加熱したときに重量減少が10%以下であること、である。
【0012】
上記の反応を化学式で書くと以下の通りである。
2C + SiO → SiC + CO
【0013】
以下に原料のカーボンファイバー及び/又はカーボンチューブ並びに一酸化ケイ素について説明する。
炭素の原料としては、カーボンファイバー(炭素繊維)とカーボンチューブのいずれか片方のみを使用しても良く、両者を併用することもできるが、いずれか片方のみを使用することが好ましい。以下、いずれか片方のみを使用する場合について説明する。カーボンファイバー又はカーボンチューブは、いずれもグラファイト(黒鉛)からなり、平均外径が30nm以上であって、かつ直径に対する長さの比であるアスペクト比が10以上であることが好ましい。
カーボンファイバーは中空でないものをいい、カーボンチューブは中空部分があるものをいい、両端が閉塞していてもいなくてもよい。
平均外径が40nm以上100nm以下のカーボンナノチューブが炭素の原料として好ましく使用できる。
【0014】
カーボンファイバーは、種々の方法で製造できる。ポリアクリロニトリル繊維、フェノール樹脂繊維等を、窒素気流中で高温に加熱して炭化処理すると得られる。本発明おいてフェノール樹脂の繊維を炭化処理して得られるカーボンファイバーが好ましく使用できる。原料とするカーボンファイバーは、平均外径が50nm以上であり、平均外径が50〜1,000nm(「50nm以上1,000nm以下」の意であり、以下同じである。)であることが好ましく、100〜1,000nmであることがより好ましく、100〜500nmであることが特に好ましい。直径に対する長さの比を、アスペクト比とする場合、アスペクト比は10以上であり、10〜1,000であることが好ましく、50〜500であることがより好ましい。
【0015】
本発明において使用するカーボンファイバー又はカーボンナノチューブは、耐酸化性である必要があり、以下の(a)及び/又は(b)の条件を満たすことが求められる。
(a)は、粉末X線回折法により測定した、グラファイト(002)面の回折ピークの半値幅が、1°以下であること、
(b)は、600℃の大気中で加熱したときに重量減少が10%以下であること。
【0016】
条件(a)は、粉末X線回折法により測定した、グラファイト(002)面のX線回折ピーク(本発明において、単に「回折ピーク」ともいう。)の半値幅が、1°以下の強度を有することである。粉末X線回折法によりこのような回折ピークを有するカーボンファイバー又はカーボンナノチューブは、グラファイト構造を有しており、2θ=24〜25°付近に、(002)面の回折ピークを示す。(002)面の回折ピークがシャープであって、その半値幅が1°以下である場合には、グラファイトの結晶面がきれいに成長していることを意味し、高温での耐酸化性が強くなる。
【0017】
条件(b)は、使用するカーボンファイバー又はカーボンナノチューブを、(株)リガク製示差熱天秤(TG−DTA)により、大気中で900℃まで等速で加熱(昇温速度20℃/分)した場合の、加熱時間に対する重量減少曲線を求めて、600℃での重量減少が10%以下(0〜10%)であることである。加熱に伴う重量減少は、耐酸化性の一指標であり、5%以下(0〜5%)であることが好ましい。
【0018】
そのため、カーボンファイバー又はカーボンチューブは、条件(a)又は条件(b)の少なくとも一方を満足して、炭化ケイ素を生成する高温での耐酸化性を有する必要がある。
【0019】
また、カーボンファイバー又はカーボン(ナノ)チューブに含まれる金属元素不純物(例えば、鉄、ニッケル、コバルトなど)は、いずれも1%以下であることが好ましい。
【0020】
カーボンファイバー又はカーボン(ナノ)チューブと反応させる一酸化ケイ素粉末は、特に平均粒子径の規定はないが、10μm以下であることが好ましく、1〜10μmであることがより好ましい。一酸化ケイ素の金属元素不純物(例えば、鉄、ニッケル、コバルトなど)も1%以下であることが好ましい。
【0021】
カーボンファイバーもしくはカーボンナノチューブと一酸化ケイ素粉末を反応させるときは、例えば100φ×500mmの管状ヒータ(「100φ」は、内径100mmを示す。)に80φ×800mmのアルミナチューブを入れたいわゆる管状炉で行う。管状ヒータは、3ゾーンで制御できるものが望ましいが、1ゾーン制御でも構わない。一方、アルミナチューブは、99%以上の純度で、緻密質のものが好ましい。前記カーボン材料を、管状炉アルミナチューブに入れるが、その位置は、カーボン材料が1,400℃以上になる位置にセットする。また前記一酸化ケイ素材料を管状炉アルミナチューブに入れるが、その位置は、一酸化ケイ素材料が1,100℃以上であって、前記カーボン材料の加熱温度よりも低い温度になる位置にセットする。この2つの材料は、混合せずに離してセットするが、カーボン材料の温度が、一酸化ケイ素材料の温度よりも高い温度になる位置にセットする。例えば、カーボン材料が1,400℃ならば、一酸化ケイ素材料が1,200℃になる位置にセットする。または、そのようになるように管状炉の温度分布をつけられるような構造にするか、ヒータの設定温度を決める。つぎに管状炉を0.1気圧以下になるように真空引きを行う。これは、反応して得られた炭化ケイ素の欠陥を減らし、緻密化するためには、真空度を上げる方が好ましい。
【0022】
一酸化ケイ素は、真空度にもよるが、約1,000℃から昇華しはじめ、約1,200℃で昇華しおわる。この真空度が高いほど、昇華する温度は低くなるが、温度が低すぎると、カーボンファイバー又はカーボンナノチューブの活性度が下がるので、昇華した一酸化ケイ素ガスとカーボンファイバー又はカーボンナノチューブが反応しない。したがって真空度の範囲としては、1〜1,000Paが好ましい。
【0023】
ヒータを加熱すると、上述の通り、一酸化ケイ素は、真空度にもよるが、約1,000℃から昇華しはじめ、約1,200℃で昇華しおわる。昇華した一酸化ケイ素ガスが、管状炉の中を拡散して、1,400℃以上に加熱したカーボンファイバー又はカーボンナノチューブと反応してα型炭化ケイ素になる。1,400℃以上の温度では、α型炭化ケイ素がβ型炭化ケイ素よりも優先的に生成するが、1,400℃未満では、β型炭化ケイ素が優先的に生成する。
カーボンファイバー又はカーボンナノチューブを、1,400℃以上1,800℃以下に加熱することが好ましい。
一酸化ケイ素は、真空度にもよるが、約1,000℃以上約1,200℃以下に加熱することが好ましい。
またカーボンファイバー又はカーボンナノチューブをセットする位置は、一酸化ケイ素よりも、真空排気側にセットするのが好ましい。これは、昇華した一酸化ケイ素のガスが、真空排気側に拡散しやすく、排気側に近いカーボンファイバー又はカーボンナノチューブと反応しやすいためである。またアニール効果により、緻密化し、結晶欠陥が低減する。
【実施例】
【0024】
(実施例1)
内径100φ長さ500mm3ゾーン制御できる管状カンタルヒータ内に、外径80φ×内径70φ長さ700mm高純度アルミナチューブ(純度99.9%、商品名:SSA−S、京セラ(株)製)を、前記ヒータの中心軸とチューブの中心軸がほぼ一致するようにセットした。予めアルミナチューブに何も入れない状態で、カンタルヒータを1,500℃に加熱して、チューブ内の長さ方向の温度分布を測定した。アルミナチューブの長さ中心位置が、ほぼ1,400℃に加熱され、中心から100mm離れた位置が、ほぼ1,200℃に加熱されることを予め確認した。
次に、半弧状60φ長さ150mmの高純度アルミナ容器に、平均粒子径5μmの一酸化ケイ素10gを20mmの長さにセットした。別の高純度アルミナ容器に、アルミナ仕切り板を設けて、一酸化ケイ素のセット位置から100mm離れた位置に、平均外径80nm(内径20nm)平均長さ20μm(アスペクト比250)のカーボンナノチューブを5gをセットした。
【0025】
このカーボンナノチューブは、(株)リガク製X線回折装置で、結晶性を評価すると、2θ=24〜25°にグラファイトの(002)面回折ピークを示し、その半値幅が0.5°であった。
次に、アルミナ容器を管状炉アルミナチューブ内にセットするが、前記カーボンナノチューブの中心が、アルミナチューブの中心にくるようにセットした。管状炉を50Paまで真空引きしてから、1,500℃まで温度を上げた。これによってカーボンナノチューブの加熱温度が約1,400℃になり、また、一酸化ケイ素の加熱温度が最終的に約1,200℃になった。
【0026】
途中、1,200℃付近まで加熱すると、約500Paまで真空度が低下したが、これは一酸化ケイ素粉末が昇華してガス化するためであった。その後、カーボンナノチューブを1,500℃まで加熱すると、真空度が約100Paまで低下した。安定した状態で、約5時間温度を一定に保持した後、温度を室温まで下げたところ、一酸化ケイ素は、ほとんど昇華して、白い残渣が0.5g残っていた。またカーボンナノチューブは、黒色のままで一部光沢がでていた。その反応した黒色のサンプルを5gを回収した。
【0027】
サンプルを走査型電子顕微鏡で観察すると、平均粒子径約3μmの大きさのほぼ六角形板状炭化ケイ素粒子が生成しており、また外周部は、ひげ状のファイバーが成長していた。これをX線回折装置で測定すると、95%のαSiCになって、グラファイトのピークは5%残っていた。なお、ファイバーの外径は約50nmであり、その長さは約5μmであった。図1に生成した炭化ケイ素粒子の電子写真顕微写真を示した。
グロー放電質量分析により、この炭化ケイ素粒子の不純物分析を行ったところ、鉄などの金属不純物が10ppm以下しか含まれておらず、またアルミニウムが50ppm含まれていた。
【0028】
(実施例2)
実施例1で使用した管状カンタルヒータ及びアルミナチューブを使用して、加熱条件を変化させた。
次に、半弧状60φ長さ150mmの高純度アルミナ容器に、平均粒子径5μmの一酸化ケイ素10gを20mmの長さにセットした。別の高純度アルミナ容器に、アルミナ仕切り板を設けて、一酸化ケイ素のセット位置から100mm離れた位置に、平均外径40nm(内径20nm)平均長さ4μm(アスペクト比100)のカーボンナノファイバーを5gセットした。
【0029】
このカーボンナノファイバーは、(株)リガク製熱重量測定装置で、900℃まで大気中で等速(昇温速度20℃/分)に温度を上げて、重量減少量を測定したところ、600℃での重量減少量は、5%であった。
【0030】
次に、高純度アルミナ容器を管状炉アルミナチューブ内にセットするが、前記カーボンファイバーの中心が、アルミナチューブの中心にくるようにセットした。管状炉を50Paまで真空引きしてから、1,600℃まで温度を上げた。これによってカーボンファイバーの加熱温度はほぼ1,450℃となり、また、一酸化ケイ素の加熱温度はほぼ1,250℃となった。
途中、1,200℃付近まで加熱すると、真空度が約500Paまで低下したが、これは一酸化ケイ素粉末が昇華してガス化するためである。その後、1,600℃まで加熱すると、真空度が100Paまで低下した。安定したところで、約5時間保持した後、温度を室温まで下げたところ、一酸化ケイ素は、ほとんど昇華して、白い残渣が1.0g残っていた。またカーボンナノファイバーは、黒色のままで一部光沢がでていた。その反応した黒色のサンプルを5g回収した。
【0031】
サンプルを走査型電子顕微鏡で観察すると、平均粒子径約4μmの大きさのほぼ六角形板状炭化ケイ素粒子が生成しており、また外周部は、ひげ状のファイバーが成長していた。なお、ファイバーの外径は約40nmであり、その長さは約5μmであった。これをX線回折装置で測定すると、95%のαSiCになって、グラファイトのピークは5%残っていた。
この炭化ケイ素ナノ粒子の不純物分析を、グロー放電質量分析にて、不純物分析を行ったところ、鉄などの金属不純物が、20ppm、アルミが80ppmであった。
【0032】
(比較例1)
実施例1で使用した管状カンタルヒータ及びアルミナチューブを使用して、実施例1と同じ加熱条件で操作した。
【0033】
半弧状60φ長さ150mmの高純度アルミナ容器に、平均粒子径5μmの一酸化ケイ素10gを20mmの長さにセットした。別の高純度アルミナ容器に、アルミナ仕切り板を設けて、一酸化ケイ素のセット位置から100mm離れた位置に、平均外径40nm(内径20nm)平均長さ4μm(アスペクト比100)のカーボンチューブを5gセットした。
【0034】
このカーボンナノチューブは、リガク製X線回折装置で、結晶性を評価すると、2θ=24〜25°のグラファイトの(002)面回折ピークを示し、その半値幅が2°であった。
【0035】
次に、アルミナ容器を管状炉アルミナチューブ内にセットするが、前記カーボンナノチューブの中心が、アルミナチューブの中心にくるようにセットした。
【0036】
真空引きと加熱を実施例1と同様に行ったところ、真空度の変化は実施例1と同様であった。
実施例1と同じく、安定したところで、約5時間保持して、温度を室温まで下げたところ、一酸化ケイ素は、ほとんど昇華して、白い残渣が0.5g残っていた。またカーボンナノチューブは、黒色のままで一部光沢がでていた。その反応した黒色のサンプルを5g回収した。
【0037】
サンプルを走査型電子顕微鏡で観察すると、平均粒子径約5μmの大きさのほぼ多角形状炭化ケイ素粒子が生成していた。これをX線回折装置で測定すると、85%のβSiCになって、グラファイトのピークは15%残っていた。
【0038】
(比較例2)
実施例2で使用した管状カンタルヒータ及びアルミナチューブを使用して、実施例2と同じ加熱条件で操作した。
【0039】
次に半弧状60φ長さ150mmの高純度アルミナ容器に、平均粒子径5μmの一酸化ケイ素10gを20mmの長さにセットする。同じアルミナ容器に、アルミナ仕切り板を設けて、一酸化ケイ素のセット位置から100mm離れた位置に、平均外径40nm(内径20nm)平均長さ4μm(アスペクト比100)のカーボンファイバーを5gセットした。
【0040】
このカーボンファイバーは、(株)リガク製示差熱天秤で、900℃まで大気中で等速に(昇温速度20℃/分)温度を上げて、重量減少量を測定したところ、600℃での重量減少量は、20%であった。
【0041】
真空引きと加熱を実施例2と同様に行ったところ、真空度の変化は実施例2と同様であった。
安定したところで、約5時間保持して、温度を室温まで下げたところ、一酸化ケイ素は、ほとんど昇華して、白い残渣が1.0g残っていた。またカーボンナノファイバーは、黒色のままで一部光沢がでていた。その反応した黒色のサンプルを5g回収した。
【0042】
サンプルを走査型電子顕微鏡で観察すると、平均粒子径約4μmの大きさのほぼ六角形板状炭化ケイ素に反応しており、また外周部は、ひげ状のファイバーが成長していた。これをX線回折装置で測定すると、90%のβSiCになって、グラファイトのピークは10%残っていた。
【0043】
(比較例3)
実施例1で使用した管状カンタルヒータ及びアルミナチューブを使用して、実施例1と同じ加熱条件で操作した。
次に半弧状60φ長さ150mmの高純度アルミナ容器に、平均粒子径5μmの一酸化ケイ素10gを20mm長さにセットする。同じアルミナ容器に、アルミナ仕切り板を設けて、一酸化ケイ素のセット位置から100mm離れた位置に、平均外径80nm(内径20nm)平均長さ20μm(アスペクト比250)のカーボンナノチューブを5gセットした。
【0044】
このカーボンチューブは、リガク製X線回折装置で、結晶性を評価すると、2θ=24〜25°のグラファイト(002)面の回折ピークの半値幅が0.5であった。
次に、アルミナ容器を管状炉アルミナチューブ内にセットするが、前記一酸化ケイ素の中心が、アルミナチューブの中心にくるようにセットする。管状炉を50Paまで真空引きしてから、1,500℃まで温度を上げる。これによってカーボンナノチューブの温度が、加熱したときにほぼ1,200℃になり、かつ一酸化ケイ素の温度が、ほぼ1,400℃になる。
1,200℃付近まで約500Paまで真空度が低下するが、これは一酸化ケイ素粉末が昇華してガス化するためである。その後、1,500℃まで真空度が100Paまで低下し、安定したところで、約5時間保持して、温度を室温まで下げたところ、一酸化ケイ素は、ほとんど昇華して、白い残渣が2.0g残っていた。またカーボンナノチューブは、黒色のままで一部光沢がでていた。その反応した黒色のサンプルを5gを回収した。
【0045】
サンプルを走査型電子顕微鏡で観察すると、図1に示すような、平均粒子径約3μmの大きさのほぼ多角形状炭化ケイ素粒子が生成していた。これをX線回折装置で測定すると、95%のβSiCになって、グラファイトのピークは5%残っていた。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】生成した炭化ケイ素粒子の結晶構造の一例を示す電子顕微鏡写真である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の(a)及び/又は(b)の条件を満たす、カーボンファイバー及び/又はカーボンチューブと、一酸化ケイ素とを、互いに混合することなく互いに離して反応容器内に載置する工程、並びに、
上記反応容器を、加熱炉内において、0.1気圧以下の真空下で、前記カーボンファイバー及び/又は前記カーボンチューブを1,400℃以上の温度に加熱し、前記一酸化ケイ素を1,100℃以上の温度であって前記カーボンファイバー及び/又は前記カーボンチューブの加熱温度より低い温度に加熱してα型炭化ケイ素粒子を生成させる工程、を含むことを特徴とする
α型炭化ケイ素粒子の製造方法。
(a)粉末X線回折法により測定した、グラファイト(002)面の回折ピークの半値幅が、1°以下であること
(b)600℃の大気中で加熱したときに重量減少が10%以下であること
【請求項2】
カーボンファイバー及び/又はカーボンチューブの平均外径が30nm以上であって、直径に対する長さの比(アスペクト比)が10以上である、請求項1に記載のα型炭化ケイ素粒子の製造方法。
【請求項3】
前記α型炭化ケイ素粒子を生成させる工程を、ひげ状ファイバーの付いたα型炭化ケイ素粒子を生成させる工程とした、請求項1又は2に記載のα型炭化ケイ素粒子の製造方法。
【請求項4】
平均粒子径が1〜10μm以上の一酸化ケイ素を使用する、請求項1〜3いずれか1つに記載のα型炭化ケイ素粒子の製造方法。
【請求項5】
α型炭化ケイ素粒子を生成させる工程に引き続いて、600℃以上800℃以下の大気中で前記α型炭化ケイ素粒子を加熱して、残存するカーボンを酸化除去する工程を含む、請求項1〜4いずれか1つに記載のα型炭化ケイ素粒子の製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2010−143771(P2010−143771A)
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−319442(P2008−319442)
【出願日】平成20年12月16日(2008.12.16)
【出願人】(000002060)信越化学工業株式会社 (3,361)
【Fターム(参考)】