説明

まくらぎ直角度測定装置

【課題】作業効率を良好とし、測定精度も良好としたまくらぎ直角度測定をする。
【解決手段】レール間に橋架され得る本体10と、この本体10の一端に取り付けられレールの長手方向に亘って当接する当接爪13を有しこの当接爪13をレールに当接させてレールに対する本体の位置を決める基準アーム11と、この基準アーム11に対してレールの長手方向に沿う測定基準位置に位置決めされレール側でのまくらぎの測定基準部位に当接可能な基準尺15と、本体10の他端に取り付けられ他方のレールの長手方向に沿って配置される測定アーム16と、この測定アーム16の移動基準位置を基準として長手方向に移動可能でまくらぎの測定基準部位に対応する他方のレール側の測定部位に当接可能な測定尺19とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道線路(軌道)に対して敷設されたまくらぎの軌道に対する直角度(直角狂い量)を測定する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
軌道に対して敷設されたまくらぎは、軌道に対して直角を成すことが必要である。このため、鉄道線路の敷設時にはまくらぎが軌道に対して直角であるようにまくらぎの敷設を行い、あるいは経年変化に伴って軌道に対するまくらぎの直角狂いを整正する必要がある。したがって、鉄道線路の敷設時あるいはその後必要に応じ、軌道に対するまくらぎの直角度を計測しこの直角度が所定の範囲内に在るか否か判定されることになる。
従来のまくらぎの直角度の計測は、図7に示す方法による。この図7は、軌道用直角定規(スコヤ)を用いてまくらぎの直角度を計測する場合を示す。図7において、並行に敷設された一対のレール1a、1bに対し直角を成すまくらぎ2が所定間隔にて敷設されている場合、対象となるまくらぎ2の基準位置(図では中心線位置)について一方及び他方のレール1a及び1bに印を付け、この印を基準としてスコヤ3をレール1aにあてがいレール1aに対して直角にスコヤ3を伸ばし、他方のレール1bに橋架されたスコヤ3の端と他方のレール1b側でのまくらぎ2の印を付けた基準位置とのずれ(狂い量)をスケールにて計測し、それを記録している。
【0003】
また別の方法として、数種類の三角定規をレール1a、1bに組み合わせて使用して、まくらぎの直角度を計測する方法もある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来技術による直角度の計測においては、次のような問題がある。すなわち、一箇所のまくらぎの直角度の測定に際し、一方のレール1aにてスコヤ3や三角定規を設置する作業、他方のレール1bにて計測する作業、計測結果を記録する作業、等3名ほどの人員が必要となる。また、上記各作業を実行するに際し、位置合わせを行い計測し記録する等について一箇所のまくらぎ当たり約3〜4分の測定時間が必要になる。更に、狂い量をスケールにて読み取るに際しては、作業者が屈んだ窮屈な姿勢を採る必要があり、測定作業に労力を要する。こうしてみると、従来のまくらぎの直角度の測定に際しては、人員や測定時間や労力を要し、作業効率が悪いという問題が生じている。
【0005】
更に、まくらぎの直角度の測定に際し、作業者の測定作業における測定誤差や使用する器具の種類やその扱いに伴う測定誤差が生じやすいという問題がある。また、測定対象であるまくらぎにも多くの種類があり、測定位置が種類に応じて異なる場合には、測定誤差が生じやすいという問題がある。更に、測定結果は作業者が帳票に記録することになり、記入ミスも生じ得るという問題がある。すなわち、従来のまくらぎの直角度の測定に際しては、測定精度に不安がある。
本発明は、上述の問題に鑑み発明されたもので、作業効率を良好とし、測定精度が良好なまくらぎ直角度測定装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述の目的を達成する本発明は、軌道に対し直角を成して敷設されるまくらぎの上記軌道に対する直角度を測定する装置であって、並行する一対のレール間に橋架され得る本体と、この本体の一端に取り付けられ一方のレールの長手方向に亘って当接する当接部を有しこの当接部を上記レールに当接させて上記レールに対する上記本体の位置を決める基準アームと、この基準アームに対して上記レールの長手方向に沿う測定基準位置に位置決めされ上記レール側でのまくらぎの測定基準部位に当接可能な基準尺と、上記本体の他端に取り付けられ他方のレールの長手方向に沿って配置される測定アームと、この測定アームの移動基準位置を基準として長手方向に移動可能で上記まくらぎの測定基準部位に対応する上記他方のレール側の測定部位に当接可能な測定尺と、この測定尺の上記移動基準位置に対する上記測定部位を得る検出手段とを有し、上記測定アームの移動基準位置と上記基準尺の測定基準位置との結ぶ線を上記基準アームに対して直角とした、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、一方のレールに基準アームを当接して基準尺をまくらぎの測定基準部位に当接し、測定尺を測定部位に当接することにより、まくらぎの直角度を計測することができ、一名の作業員が無理な姿勢を取ることなく一つの測定器にて一度にかつ直ちに測定できて作業効率が良くなり、また測定基準部位や測定部位への基準尺や測定尺の当接作業で済むので、異なる作業者やまくらぎの種類が変化しても、測定誤差が生じにくく、測定精度を向上することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、図1〜図6を参照して本発明の実施形態につき説明する。なお、図7と同一部分には同符号を付し、必要がなければその説明を省略する。
〔実施形態〕
図1、図2は、本実施形態のまくらぎ直角度測定装置を示しており、図1は平面図、図2は側面図である。図1及び図2において、並行する一対のレール間に橋架され得る長さを有する本体10にあって、この本体10の一端には本体10に対して直角を成すように基準アーム11が取り付けられている。この場合、直角度を確実にし本体10と基準アーム11との固定を確実にするため本体10と基準アーム11とは固定添え腕12にて固定されている。
【0009】
基準アーム11の長手方向に沿う両端で本体10が伸びる側と逆の側には、レールとの当接部である2個の当接爪13が取り付けられている。この当接爪13は、レールの上端に当接するように水平爪13aを有し及びレールの内側面(一対のレールの対向側面)に当接するように水平爪13aから垂直に伸びた垂直爪13bを有する。そして、当接爪13がレールに当接された状態では、レールの長手方向と基準アーム11の長手方向とが並行となり、レールの長手方向と本体10とは直角を成すことになる。なお、図1では、2個の当接爪13を備えた例を示したが、この当接爪の個数や形状は、レールの長手方向に亘って当接してレールの長手方向と基準アーム11の長手方向とが並行となるようにするものであれば、特に限定されず種々のものが考えられる。
【0010】
更に、基準アーム11(あるいは本体10)に対してレールの長手方向に沿う測定基準位置には、基準尺15が配置されている。この図1、図2の例では、基準アーム11に台座14を介して基準尺15が位置決めされている。この場合、基準尺15は、まくらぎの測定基準部位に当接可能なように台座14に対して垂直方向(上下方向)に移動可能に取り付けられる。すなわち、基準尺15の垂直方向の移動は、まくらぎの種類に対応した高さに調整することが可能である。こうしてこの基準尺15は、当接爪13がレールに当接された状態でまくらぎの測定基準部位例えば図3に示すバンドロールホルダ30の側面31に当接可能に取り付けられる。この場合、まくらぎの測定基準部位は、まくらぎでの位置が固定された部位であれば種々設定することができ、一例としてバンドロールホルダ30は、まくらぎ内にあって位置が固定されまくらぎ本体から突出して基準尺15と当接しやすいので本例にて測定基準部位とした。この結果、当接爪13がレールに当接された状態で基準アーム11をレールに沿って移動させることにより、まくらぎの測定基準部位に基準尺15が当接することになる。このとき、まくらぎの測定基準部位と測定基準位置とは一致する。
【0011】
本体10の基準アーム11側端部と逆の本体10の端部であって他方のレールの内側部分には、この本体10に直角を成して測定アーム16が取り付けられる。この場合、この測定アーム16の長手方向は、他方のレールの長手方向を並行する。更に、この測定アーム16の側面には、その長手方向にスライドレール17が備えられ、このスライドレール17に対して台座18が長手方向に沿い移動可能に構成される。更に、台座18には、垂直方向(上下方向)に移動可能に測定尺19が取り付けられるので、基準尺15同様、測定尺19の垂直方向の移動によりまくらぎの種類に対応した高さ調整をすることができる。この測定尺19は、基準尺15が当接されるまくらぎの測定基準部位と同様、他方のレール側のまくらぎの測定部位例えば図3に示すバンドロールホルダ30の側面31に当接可能に備えられることとなる。ここで、スライドレール17上を長手方向に沿って移動可能な台座18及び測定尺19は、測定アーム16の移動基準位置にあるとき基準アーム11の測定基準位置の基準尺15と対向しており、この移動基準位置と測定基準位置とを結ぶ線は基準アーム11に対して直角を成す。言い替えれば、この移動基準位置と測定基準位置とを結ぶ線はレールに対して直角をなし、測定基準位置にまくらぎの測定基準部位が存在し、移動基準位置に測定尺19によるまくらぎの測定部位が存在するとき、まくらぎはレールに対して直角を成す。
【0012】
したがって、まくらぎの直角度を計測するに当たっては、基準アーム11側で基準尺15をまくらぎの測定基準部位に当接させて測定基準位置を測定基準部位に一致させ、測定アーム16側で移動基準位置に対してまくらぎの測定部位に当接する測定尺19の位置を計測することによりまくらぎの直角度を検出できることとなる。図1の例では、測定尺19の移動量は移動基準位置を中心として左右(図中上下)50mmの範囲に設定される。
測定尺19の移動量の検出は、例えば図4に示すような検出器により行われる。図4(a)においては、スライドレール17に孔20を一列に多数形成し、この孔20に対して台座18内に備えた発光器21より光を照射しその照射した光を受光器22にて受光するものであり、孔20の存在にて光を受光できない(あるいは受光できる)パルスを計測して移動基準位置からの移動量を得ることができる。また、図4(b)では、スライドレール17上を台座18が移動するにつれプーリ23間に張られた無端のベルト24が動くことにより一方のプーリ23にあけた孔20を通過する光を計数することでプーリ23の回転量ひいては台座18の移動量を検出するようにしても良い。
【0013】
そして、図4(a)(b)の受光器22にて検出された光のオンオフは、図4(c)に示すように2値信号系列としてレジスタ25に取り込み、CPU26による演算、メモリ27による記憶、表示器28による表示が行われる。
なお、台座18の移動量を得る構造として、受光器での光のオンオフの検出によらず、移動量に応じて回転するカウンタのカウント値を得る構造としてもよい。更に簡便な方法としては、図4(d)に示すように測定アーム16にスライドアーム17に沿って目盛29を形成し、この目盛29を台座18の移動に伴い読むことで移動量の検出をするようにしても良い。尤も、この図4(d)の場合は、目盛29を読んだ値を帳票等に記入する作業は要することになる。
【0014】
台座18の移動量の単位としては、最小1mmまで測定できるものが好ましく、したがってスライドレール17やプーリ23にあけられた孔(スリットでも良い)あるいはカウント値は1mm単位で検出できる間隔にて形成されあるいはカウントされる。
図1、図2において、本体10の測定アーム16側端部には、上記図4(c)に示す電子装置の電源となるバッテリ(電池)ボックス4が備えられ、更に電子装置の電源スイッチ5が備えられる。更に、本体10上には測定尺19の移動基準位置に対する移動量を例えばディジタル表示する表示器28、この表示器28の表示内容をメモリ27(図1では省略)に取り込むメモリスイッチ6、多数のまくらぎの内におけるまくらぎ特定情報であって個々のまくらぎを測点として表しこの測点(例えば999測点)をまとめてグループとして表したまくらぎのアドレス表示部7、メモリ27に取り込んだ内容をシフトし、消去(クリア)し、前後(アップダウン)の探索をする操作スイッチ8を備える。こうして、本体10上にてアドレス表示にて特定したまくらぎにおいてその移動量を表示し、それを記憶し、記憶内容を必要に応じて移動し呼び出すことが可能となる。なお、本体10上の電子装置としては、多数のまくらぎを次々と測定していくことを主眼とした場合、表示部28を設けないで移動量をメモリ27に次々と入力するようにしても良い。また、まくらぎは多数あるので、直角度が範囲内にあるか否かのみを検出して範囲内にない場合のみ帳票にメモすることもあり、この場合には測定尺16の移動量を記憶するメモリは設けないで表示器のみを設けるようにしても良い。なお表示器28については、トンネル内等での測定もあるので、バックライトによる表示が好ましく、暗闇箇所での測定時には照明を取り付けるようにしても良い。
【0015】
なお、図1、図2にて測定尺19による移動量を移動基準位置を基準として検出するためには、測定に先立ち移動基準位置に対する測定尺19の初期位置を設定する必要がある。この場合、例えば、台座18をスライドレール17の端まで移動させその端の位置を移動基準位置に対する端の原点としてリセットする(例えばリセットスイッチ(図示省略)を押す等する)ことで初期設定をしても良い。あるいは、基準アーム11に対し本体10が直角を成し、この本体10に対し測定アーム16が直角を成している場合、基準尺15の測定基準位置に対向するように測定アーム16に移動基準位置を刻印し、その刻印に測定尺19を合わせるようにしても良い。
【0016】
図5、図6は、まくらぎの直角度を測定する状態を示している。図5、図6において、軌道を形成する左右のレール1a、1bに対して敷設された測定対象となるまくらぎ2の直角度を測定するに当たり、この左右のレール1a、1b間に本実施形態のまくらぎ直角度測定装置の本体を載せる。そして、基準アーム11に取り付けられた当接爪13を一方のレール1aに当接させると共に基準アーム11をレールに沿って動かして基準尺15をまくらぎ2のバンドロールホルダ30の側面31である測定基準部位に当接させる。ついで電源スイッチ5(図1参照)が投入されていることを条件に、測定尺19の台座18を他方のレール1bに沿うスライドレール17の端まで動かしてリセットし初期設定を行う。この後、スライドレール17上にて台座18を移動させ、測定尺19をバンドロールホルダ30の側面31である測定部位に当接させる。この当接により移動基準位置と測定部位に当接する位置との間の測定尺19の移動量を計測することができ、その値を表示器にて表示しメモリに記憶することができる。
【0017】
このように本実施形態のまくらぎ直角度測定装置は、単一の測定装置で1名の作業員にて当接爪13、基準尺15、測定尺18を当接させる等の無理な姿勢を採らずに簡単で短時間の作業にてレールに対する直角度を計測することができ、また、当接を確認することによる計測に基づくものであるので、測定者に左右されるような測定誤差も生じにくい。そして、図4(c)によるCPU26をパソコンやプリンタに接続することにより、計測値の処理や用紙への印刷をすることもできる。
なお、まくらぎ直角度測定装置のレールとの接触部分あるいはバンドロールとの接触部分は、短絡や橋絡防止のために絶縁性樹脂にて形成され、ここでは、当接爪13、基準尺15、測定尺19が絶縁性樹脂にて形成され、本体10の端部にてレール1bと接する部分は絶縁板9が配置されている。
【0018】
なお、本実施形態でのまくらぎ直角度測定装置は、製造上本体10に対して基準アーム11及び測定アーム16が直角を成すように形成されるが、この直角を成す構成は厳密でなくとも基準アーム11がレールと並行し基準尺15の測定基準位置と測定アーム16位動基準位置とが対向し、測定アーム16のスライドレール17を移動する台座18及び測定尺19がレールの長手方向に移動できる構造であれば、まくらぎの直角度は測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施形態を示しまくらぎ直角度測定装置の一例の平面図である。
【図2】図1に示すまくらぎ直角度測定装置の側面図である。
【図3】まくらぎのバンドロールホルダを主に示す斜視図である。
【図4】検出部分及び電子装置を示す構成図である。
【図5】使用状態を説明する側面図である。
【図6】使用状態を説明する斜視図である。
【図7】従来例の説明図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軌道に対し直角を成して敷設されるまくらぎの上記軌道に対する直角度を測定する装置であって、
並行する一対のレール間に橋架され得る本体と、
この本体の一端に取り付けられ一方のレールの長手方向に亘って当接する当接部を有しこの当接部を上記レールに当接させて上記レールに対する上記本体の位置を決める基準アームと、
この基準アームに対して上記レールの長手方向に沿う測定基準位置に位置決めされ上記レール側でのまくらぎの測定基準部位に当接可能な基準尺と、
上記本体の他端に取り付けられ他方のレールの長手方向に沿って配置される測定アームと、
この測定アームの移動基準位置を基準として長手方向に移動可能で上記まくらぎの上記測定基準部位に対応する上記他方のレール側の測定部位に当接可能な測定尺と、
この測定尺の上記移動基準位置に対する上記測定部位を得る検出手段とを有し、
上記測定アームの移動基準位置と上記基準尺の測定基準位置との結ぶ線を上記基準アームに対して直角とした、
ことを特徴とするまくらぎ直角度測定装置。
【請求項2】
上記検出手段による検出結果を演算する演算手段と、この演算手段の演算結果を記憶する記憶手段と、を更に有する請求項1に記載のまくらぎ直角度測定装置。
【請求項3】
上記検出手段による検出結果を演算する演算手段と、この演算手段による演算結果に基づき上記測定尺の測定位置に係る表示をする表示手段と、を更に有する請求項1に記載のまくらぎ直角度測定装置。
【請求項4】
上記表示手段は、バックライトにより表示されて本体上に備えられることを特徴とする請求項3に記載のまくらぎ直角度測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−17176(P2007−17176A)
【公開日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−196009(P2005−196009)
【出願日】平成17年7月5日(2005.7.5)
【出願人】(000221616)東日本旅客鉄道株式会社 (833)
【出願人】(000104216)株式会社カネコ (8)
【Fターム(参考)】