説明

アラビノース代謝経路が導入されたキシリトール生産菌株及びそれを用いたキシリトール生産方法

本発明は、キシロースとアラビノースの混合培地中で、副産物であるアラビトールの生成を抑制させ、かつアラビノースを細胞代謝に用いるように、アラビノース代謝経路を新たに導入したキシリトール生産菌株を用いることによる、効率的なキシリトール生産方法に関するものである。より詳細には、L−アラビノースイソメラーゼ(araA)、L−リブロキナーゼ(araB)、L−リブロース−5−ホスフェート 4−エピメラーゼ(araD)をカンジダ・トロピカリス菌株で効率的に発現させるために、コドンの最適化を遂行した後、それぞれの遺伝子をグリセルアルデヒド−3−リン酸脱水素酵素のプロモーター及び選択マーカーであるURA3を含む遺伝子発現カセットに挿入して、カンジダ属菌株に導入することで、キシリトールの精製及び結晶化を妨害する副産物であるアラビトールの生成を抑制する、効率的なキシリトール生産方法に関するものである。本発明のアラビノース代謝経路が導入されたキシリトール生産菌株は、アラビトール生成を抑制することで、高生産性でキシリトールを生産するのに有用に使用することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アラビノース(arabinose)代謝経路が新たに導入されたキシリトール(xylitol)生産菌株及びそれを用いた効率的なキシリトール生産方法に関するものであり、詳細には、アラビノース代謝経路を導入することで、キシリトールの精製及び結晶化を妨害するアラビトール(arabitol)の生成を抑制するとともに、アラビノースを細胞成長に用いるキシリトール生産菌株、ならびに、それを用いてキシリトールを高生産性で生産する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
キシリトールは、五炭糖糖アルコールであり高い甘味度を有していて砂糖を代替する機能性甘味料として広く用いられている。キシリトールは、甘味度が砂糖と似ているが、体内摂取後の代謝過程がインスリンと無関係であるため、糖尿病患者の砂糖代用甘味料として使用されている。特に、虫歯誘発菌であるストレプトコッカスムータンス(Streptococcus mutans)の生育を抑制する特性を有していて、虫歯抑制成分としても産業的に広く用いられている。
【0003】
このようなキシリトールは、現在、トウモロコシの穂軸やサトウキビの茎などのキシロース(xylose)を多く含んだヘミセルロース(hemicellulose)加水分解物を化学的に還元させる方法で生産されている。しかし、このような化学的方法は、キシロースをアラビノース、ブドウ糖などの他の五炭糖及び六炭糖構成物から分離及び精製がしにくくて費用が多くかかり、この過程で、キシロースの回収率が50〜60%程度と低い。また、水素ガス及びニッケル触媒を用いた高温、高圧の工程なので、危険性及び環境的問題が存在するという短所がある。
【0004】
最近は、このような短所を補うための生物学的な方法によるキシリトール生産方法が活発に研究されている。生物学的方法は、化学的方法に比べて原料物質として、相対的に低い純度のキシロースを用いることができ、工程自体が常温及び常圧で行なわれるので、安全で環境に配慮した生産工程である。そして、高生産性、高収率のキシリトール生産のために多様な細菌と酵母菌株、組換え酵母を用いたキシリトール生産研究が進行されている(非特許文献1、非特許文献2)。しかし、細菌と組換え酵母菌株は、キシロースを用いた代謝経路が弱いかまたは効率が良くないので、産業的なキシリトールの生産に相応しくないことが分かった。しかし、酵母菌株の中でカンジダ属(Candida sp.)菌株は、他の微生物に比べてキシロースを利用する能力に優れていて、キシリトールの生産性および収率が高いので、生物学的キシリトールの生産に相応しい菌株である。
【0005】
今までの研究によると、カンジダ・グイリエルモンジ(C.guillermondi)、カンジダ・パラプシロシス(C.parapsilosis)、カンジダ・トロピカリス(C. tropicalis)などのカンジダ属菌株は、細胞外部から吸収されたキシロースをキシロース還元酵素(xylose reductase)によってキシリトールに変換して、それをキシリトール脱水素酵素(xylitol dehydrogenase)によってキシルロース(xylulose)に転換させて、キシルロースはまたキシルロースリン酸化酵素(xylulokinase)によってキシルロース−五リン酸(xylulose−5−phosphate)に転換されて、これは続いてペントースリン酸化過程(pentose phosphate pathway)を通じて、細胞成長と維持に用いられることが知られている(非特許文献3、非特許文献4)。
【0006】
ここで、キシロース還元酵素は、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸(NADPH;Nicotinamide adenine dinucleotide phosphate)を補助因子(cofactor)に用いて、キシリトール脱水素酵素は、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD)を補助因子として用いる。キシロース還元酵素によってキシロースから転換されたキシリトールはまた、キシリトール脱水素酵素によってキシルロースに転換されるが、培地内に酸素の供給が制限されて溶存酸素の濃度が0.5%〜2.0%に低く維持されると細胞内の酸化還元力の不均衡が誘発されてキシリトール脱水素酵素が必要とする補助因子であるニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD)の供給が不足して、キシリトールがキシルロースに転換される過程が抑制される。その結果、キシリトールが細胞及び培地に蓄積されるようになって、50〜60%の収率でキシロースからキシリトールが生産される。すなわち、キシリトール生産菌株を用いてキシリトールを生産する従来の技術では、酸素供給を制限することによって、低い溶存酸素濃度に調節することが必須である。そして、培地内の酸素供給を制限して、溶存酸素濃度を低く維持して細胞内の酸化還元力の不均衡を意図的に誘発させることによって、キシリトールの生産性と収率を高める研究が活発に行なわれている(非特許文献5、特許文献1)。
【0007】
特許文献2によると、濃縮されたカンジダ・パラプシロシス菌株を用いて、溶存酸素濃度を0.8%〜1.2%に調節してキシリトールを生産する方法が開示されている。しかし、産業的規模の大容量の発酵器を用いてキシリトールを生産する場合、溶存酸素濃度を上記のように低く調節することは事実上不可能であり、たとえ調節することができたとしても生産収率が50〜60%程度に過ぎない。また、特許文献3で、培地酸素条件をDOT(培地内酸素濃度を百分率で示した数値)1%未満に調節するための撹拌速度を提示しているが、工程上の煩わしさが依然存在する。そして、特許文献4には、カンジダ・パラプシロシスの自然種から誘発させた突然変異種を用いたキシリトール生産方法であって、キシリトール最適化が培地内の酸素分圧の調節によって達成されるキシリトール生産方法に関して開示しており、特許文献5には、前記突然変異株のキシリトール生産のための最適培地及び培養条件に関して開示しているが、このような最適の条件でも、キシリトール収率は70%を超えなかった。そこで、本発明者等は、カンジダ属菌株で生成されたキシリトールがキシリトール脱水素酵素によって再びキシルロースに転換されて減少するという点に着眼して、キシリトール脱水素酵素の活性を完全に不活性化させたカンジダ・トロピカリス変異株を開発した(特許文献6)。以前は、キシリトールをキシルロースに転換するキシリトール脱水素酵素の作用抑制のために、細胞内の酸化還元力の不均衡を誘発させるために培地内の酸素供給の制限が必要だったが、キシリトール脱水素酵素の活性が完全に不活性化された変異株は、キシロースから生産されたキシリトールがそれ以上細胞成長に用いられないようにするため、酸化還元力の不均衡を誘発させる必要性がない。この方法で、97%〜98%の収率でキシロースをキシリトールに生物転換することができる。
【0008】
しかし、キシロースに対するキシリトールの収率は最大化されたが、実際のキシリトール生産の原料になるバイオマス加水分解物は、キシロースだけではなく相当量のアラビノースを含んでいる。キシリトール生産菌株のキシロース還元酵素は、アラビノースに対する活性も有しているので、バイオマス加水分解物を直接基質として使用する場合、アラビトールが生成される。アラビトールは、キシリトールと同様に五炭糖糖アルコールであり、分子構造及び物性がキシリトールと類似であり、キシリトール生産時の精製及び結晶化過程を妨害して生産収率を低下させる副産物である。したがって、キシロースとアラビノースの混合培地を用いてキシリトールを生産する時、アラビトールを生成させないキシリトール生産技術を開発する必要がある。
【0009】
それで、本発明者等は、アラビノース代謝経路に関与する酵素、すなわち、L−アラビノースイソメラーゼ(L−arabinose isomerase;araA)、L−リブロキナーゼ(L−ribulokinase;araB)、L−リブロース−5−ホスフェート 4−エピメラーゼ(L−ribulose−5−phosphate 4−epimerase;araD)をカンジダ属菌株で効率的に発現させるために、コドンの最適化(codon optimization)を遂行した後、それぞれの遺伝子をグリセルアルデヒド−3−リン酸脱水素酵素(glyceraldehyde−3−phosphate dehydrogenase)のプロモーター及び選択マーカーであるURA3を含むカセットに挿入して、カンジダ属菌株に導入することで、キシリトール生産時の精製及び結晶化過程を妨害するアラビトール生成を抑制して、キシリトールを高生産性で生産することができることを明らかにして本発明を完成した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】韓国特許第1996−030577号
【特許文献2】韓国特許第10−0169061号
【特許文献3】韓国特許第10−0259470号
【特許文献4】韓国特許出願第95−37516号
【特許文献5】韓国特許出願第95−13638号
【特許文献6】韓国特許第10−0730315号
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】Winkelhausen,E.等,J.Ferment,Bioeng.1998年,第86巻,p.1−14
【非特許文献2】Granstrom,T.B.等,Appl.Microbiol.Biotechnol.2007年,第74巻,p.277−281
【非特許文献3】Laplace,J.M.等,Appl.Microbiol.Biotechnol.1991年,第36巻,p.158−162
【非特許文献4】Hahn−Hagerdal、B.等,Enzyme Microb.Technol.1994年,第16巻,p.933−943
【非特許文献5】Kim,S.Y.等,J.Ferment.Bioeng.1997年,第83(3)巻,p.267−270
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の目的は、アラビトールの生成を抑制し、かつアラビノースを細胞成長に用いるように、アラビノース代謝経路を誘導することによって、キシリトール生産収率を最大化させた、キシリトール生産菌株を提供することである。
【0013】
本発明の別の目的は、前記キシリトール生産菌株の生産方法を提供することである。
【0014】
本発明のさらに別の目的は、前記キシリトール生産菌株を用いてブドウ糖またはグリセロールを炭素源とする培地で、キシリトールを高生産性で生産する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
前記目的を達成するために、本発明は、アラビノース代謝経路関連遺伝子を含む遺伝子発現カセットをカンジダ属菌株に導入することで作製された、アラビトール生成が抑制されたキシリトール生産菌株を提供する。
【0016】
また、本発明は、アラビノース代謝経路関連遺伝子を含む遺伝子発現カセットをカンジダ属菌株に導入することで作製された、アラビトール生成が抑制されたキシリトール生産菌株を作製する方法を提供する。
【0017】
また、本発明は、
1)前記キシリトール生産菌株をバイオマス加水分解物及び炭素源を含んだ培地中で培養する工程、
2)培養された菌株からキシリトールを生産する工程、及び
3)培養液からキシリトールを分離する工程
を含む、キシリトールの大量生産方法を提供する。
【発明の効果】
【0018】
本発明は、キシロースとアラビノースの混合培地中で、副産物であるアラビトールの生成を抑制させ、かつアラビノースを細胞代謝に用いるように、アラビノース代謝経路を新たに導入したキシリトール生産菌株を用いることによる、効率的なキシリトール生産方法に関するものである。本方法は、キシリトール生産時の精製及び結晶化過程を妨害するアラビトール生成を抑制して、高生産性でキシリトールを生産するのに有用に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1は、キシリトール生産菌株による、キシロース及びアラビノースの代謝経路を示した図である。
【図2】図2は、CoAraA、CoAraB及びCoAraD発現カセットの遺伝子地図を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を詳しく説明する。
【0021】
本発明は、アラビノース代謝経路関連遺伝子を含む遺伝子発現カセットをカンジダ属菌株に導入することで作製された、アラビトール生成が抑制されたキシリトール生産菌株を提供する。
【0022】
また、本発明は、下記1)ないし3)の遺伝子発現カセットをカンジダ属菌株に導入することで作製された、アラビトール生成が抑制されたキシリトール生産菌株を提供する。
1)プロモーター、L−アラビノースイソメラーゼをコードするポリヌクレオチド及びターミネーターからなる遺伝子発現カセット、
2)プロモーター、L−リブロキナーゼをコードするポリヌクレオチド及びターミネーターからなる遺伝子発現カセット、及び
3)プロモーター、L−リブロース−5−ホスフェート 4−エピメラーゼをコードするポリヌクレオチド及びターミネーターからなる遺伝子発現カセット。
【0023】
前記プロモーターは、配列番号1で表わされる塩基配列を有するプロモーター、前記L−アラビノースイソメラーゼをコードするポリヌクレオチドは、配列番号7で表わされる塩基配列を有するポリヌクレオチド、前記L−リブロキナーゼをコードするポリヌクレオチドは、配列番号8で表わされる塩基配列を有するポリヌクレオチド、前記L−リブロース−5−ホスフェート 4−エピメラーゼ(L−ribulose−5−phosphate 4−epimerase)をコードするポリヌクレオチドは、配列番号9で表わされる塩基配列を有するポリヌクレオチド及び、前記ターミネーターは、配列番号2で表わされる塩基配列を有することが好ましいが、これに限定されるのではない。
【0024】
また、本発明は、受託番号:KCTC 11761BP(寄託機関:韓国生命工学研究院、寄託日:2010.09.08)で寄託された、アラビトール生成が抑制されたキシリトール生産菌株を提供する。
【0025】
前記アラビトール生成が抑制されたキシリトール生産菌株PBDAU、LBDAUまたはEBDAUは、配列番号1で表わされる塩基配列を有するプロモーター、配列番号7で表わされる塩基配列を有するポリヌクレオチド及び配列番号2で表わされる塩基配列を有するターミネーターからなる遺伝子発現カセットを作製する工程と、配列番号1で表わされる塩基配列を有するプロモーター、配列番号8で表わされる塩基配列を有するポリヌクレオチド及び配列番号2で表わされる塩基配列を有するターミネーターからなる遺伝子発現カセットを作製する工程と、配列番号1で表わされる塩基配列を有するプロモーター、配列番号9で表わされる塩基配列を有するポリヌクレオチド及び配列番号2で表わされる塩基配列を有するターミネーターからなる遺伝子発現カセットを作製する工程、及び前記遺伝子発現カセットをカンジダ属菌株に導入することで作製することができるが、これに限定されない。
【0026】
前記カンジダ属菌株は、カンジダ・グイリエルモンジ(C.guillermondi)、カンジダ・パラプシロシス(C.parapsilosis)及びカンジダ・トロピカリス(C.tropicalis)からなる群より選択されることが好ましいが、これに限定されるのではない。
【0027】
前記カンジダ・トロピカリスは、キシリトール脱水素酵素が不活性化されたカンジダ・トロピカリスであることが好ましいが、これに限定されるのではない。
【0028】
キシリトール脱水素酵素が不活性化された前記カンジダ・トロピカリスは、受託番号:KCTC 11137BPで寄託された菌株であることが好ましいが、これに限定されるのではない。
【0029】
キシリトール脱水素酵素を完全に不活性化させた前記カンジダ・トロピカリスは、キシリトール生産の原料になるバイオマスの加水分解物に含まれているアラビノースに対する活性も同時に有している。また、前記カンジダ・トロピカリスは、アラビノースを炭素源として用いる代謝経路を有していない。アラビノースは、細胞内に入って来た後、キシロース還元酵素の非特異的活性によってアラビトールに転換された後、それ以上代謝することができずに細胞外に放出される。したがって、バイオマス加水分解物を直接基質として使用する場合、アラビトールが生成される。アラビトールは、キシリトールと同じ五炭糖糖アルコールであり、分子構造及び物性がキシリトールと類似であり、キシリトール生産時の精製及び結晶化過程を妨害して生産収率を低下させる副産物である。したがって、キシロースとアラビノースの混合培地を用いてキシリトールを生産する場合、アラビトールを生成させないキシリトール生産技術を開発する必要がある。
【0030】
本発明者等は、細菌菌株のアラビノース代謝経路[L−アラビノースイソメラーゼ(L−arabinose isomerase;araA)、L−リブロキナーゼ(L−ribulokinase;araB)、及びL−リブロース−5−ホスフェート 4−エピメラーゼ(L−ribulose−5−phosphate 4−epimerase;araD)]をカンジダ・トロピカリスBSXDH−3に導入して、アラビノースがキシルロース−5−リン酸に転換されてペントースリン酸経路及び解糖経路を通じて細胞代謝に用いることができるようにした。
【0031】
本発明者等は、キシリトール生産菌株(PBDAU、LBDAU及びEBDAU)のアラビノース代謝経路が、キシリトール生産時の精製及び結晶化を妨害するアラビトールの生成を抑制することを確認するため、構築された菌株をアラビノース最少培地で培養して経時的な乾燥菌体濃度、アラビノース消費量及びアラビトール生成量を確認した(表1、表2及び表3参照)。
【0032】
その結果、対照群である野生型カンジダ・トロピカリスは、炭素源としてアラビノースのみが存在する最少培地で増殖することができなかったことを確認し、キシリトール生産菌株LBDAUは、60時間の間1.6g/l程度の乾燥菌体濃度に増殖して、4.3g/lのアラビノースを消費したので、アラビノースはアラビトールに転換されないですべて細胞代謝に用いられたことを確認することができた。また、対照群であるキシリトール脱水素酵素を不活性化させたBSXDH−3は、炭素源としてアラビノースのみが存在する最少培地で乾燥菌体は増殖せず、アラビノースは消費せず、アラビトールも生成しない一方、キシリトール生産菌株PBDAUは、60時間の間2.1g/l程度の乾燥菌体濃度に増殖して、5.4g/lのアラビノースを消費し、アラビノースはアラビトールに転換されないですべて細胞代謝に用いられたことを確認することができた。また、対照群である野生型カンジダ・パラプシロシスは、炭素源にアラビノースのみが存在する最少培地で増殖することができないことを確認し、キシリトール生産菌株EBDAUは、60時間の間1.4g/l程度の乾燥菌体濃度に増殖して、4.1g/lのアラビノースを消費したので、アラビノースはアラビトールに転換されないですべて細胞代謝に用いられたことを確認することができた。
【0033】
このことから、本発明のアラビノース代謝経路が新たに導入されたキシリトール生産菌株は、アラビトール生成を抑制して高生産性でキシリトールを生産するのに有用に使用できることを確認した。
【0034】
また、本発明は、アラビノース代謝経路関連遺伝子を含む遺伝子発現カセットをカンジダ属菌株に導入することで作製された、アラビトール生成が抑制されたキシリトール生産菌株の作製方法を提供する。
【0035】
また、本発明は、下記1)ないし3)の遺伝子発現カセットをカンジダ属菌株に導入する工程を含む、アラビトール生成が抑制されたキシリトール生産菌株の作製方法を提供する。
1)プロモーター、L−アラビノースイソメラーゼをコードするポリヌクレオチド及びターミネーターからなる遺伝子発現カセット、
2)プロモーター、L−リブロキナーゼをコードするポリヌクレオチド及びターミネーターからなる遺伝子発現カセット、及び
3)プロモーター、L−リブロース−5−ホスフェート 4−エピメラーゼをコードするポリヌクレオチド及びターミネーターからなる遺伝子発現カセット。
【0036】
前記プロモーターは配列番号1で表わされる塩基配列を有するプロモーター、前記L−アラビノースイソメラーゼをコードするポリヌクレオチドは配列番号7で表わされる塩基配列を有するポリヌクレオチド、前記L−リブロキナーゼをコードするポリヌクレオチドは配列番号8で表わされる塩基配列を有するポリヌクレオチド、前記L−リブロース−5−ホスフェート 4−エピメラーゼをコードするポリヌクレオチドは配列番号9で表わされる塩基配列を有するポリヌクレオチド及び、前記ターミネーターは配列番号2で表わされる塩基配列を有することが好ましいが、これに限定されるのではない。
【0037】
また、本発明は、受託番号:KCTC 11761BP(寄託機関:韓国生命工学研究院、寄託日:2010.09.08)で寄託された、アラビトール生成が抑制されたキシリトール生産菌株の作製方法を提供する。
【0038】
前記カンジダ属菌株は、カンジダ・グイリエルモンジ、カンジダ・パラプシロシス及びカンジダ・トロピカリスからなる群より選択されることが好ましいが、これに限定されるのではない。
【0039】
前記カンジダ・トロピカリスは、キシリトール脱水素酵素が不活性化されたカンジダ・トロピカリスであることが好ましいが、これに限定されるのではない。
【0040】
前記キシリトール脱水素酵素が不活性化されたカンジダ・トロピカリスは、受託番号:KCTC 11137BPで寄託された菌株であることが好ましいが、これに限定されるのではない。
【0041】
本発明の一つの実施態様として、前記配列番号7、8及び9の遺伝暗号(コドン)を最適化するために、コドン使用頻度データベース(http://www.kazusa.or.jp/codon/index.html)のデータを用いてバチルス・リケニフォルミス(Bacillus licheniformis)のL−アラビノースイソメラーゼ(araA)、大腸菌のL−リブロキナーゼ(araB)、L−リブロース−5−ホスフェート 4−エピメラーゼ(araD)のコドンをカンジダ属菌株に好適なコドンに入れ替えて遺伝子CoAraA(配列番号:7)、CoAraB(配列番号:8)、CoAraD(配列番号:9)を合成した(GENEART、ドイツ)。最適化された遺伝子をグリセルアルデヒド−3−リン酸脱水素酵素(glyceraldehyde−3−phosphate dehydrogenase)のプロモーターと選択マーカーであるURA3遺伝子、選択マーカーの除去のための反復配列(gluまたはarg遺伝子)を含むカセットにクローニングして、PGtrpfs2−CoAraA、PAHfs−CoAraB、PAHfs2−CoAraDをそれぞれ得た後、カンジダ属菌株に導入して、CoAraA、CoAraB、及びCoAraDを発現する変異株カンジダ・トロピカリスPBDAU、カンジダ・トロピカリスLBDAU及び変異株カンジダ・パラプシロシスEBDAUを得た。
【0042】
併せて、本発明は、本発明による前記形質転換体PBDAU、LBDAUまたはEBDAUを用いて、ブドウ糖またはグリセロールを炭素源とする培地でキシリトールを高生産性で生産する方法を提供する。
【0043】
具体的には、本発明によるキシリトール生産方法は、下記の工程を含む方法で遂行することが好ましいが、これに限定されない。
1)本発明の形質転換体をバイオマス加水分解物及び炭素源を含んだ培地中で培養する工程、
2)培養された菌株からキシリトールを生産する工程、及び
3)培養液からキシリトールを分離する工程。
【0044】
前記方法において、工程1)のバイオマス加水分解物は、トウモロコシ穂軸の加水分解物、サトウキビの加水分解物、ココナッツ副産物、及びカバノキの加水分解物からなる群より選択されたいずれか一つであることが好ましいが、これに限定されず、キシロースを含むすべてのバイオマスが使用可能である。
【0045】
前記方法において、工程1)の炭素源は、ブドウ糖またはグリセロールであることが好ましいが、これに限定されず、菌株培養に使用するすべての炭素源が使用可能である。
【0046】
本発明者等は、PBDAU、LBDAUまたはEBDAUのキシリトール生産性を確認するため、経時的なキシロース、キシリトール、アラビノース、アラビトール濃度を測定した(表4、表5、表6及び表7、表8、表9及び表10参照)。その結果、PBDAUのキシリトール生産性は、BSXDH−3が0.55g/l/h、PBDAUが0.63g/l/hであることが示され、PBDAUは対照群であるBSXDH−3に比べて15%高いキシリトール生産性があることを確認し、BSXDH−3は60時間の間11.4g/lのアラビトールを生成するのに比べて、PBDAUは副産物であるアラビトールを生成せずにキシリトールのみを生産することを確認した。また、LBDAUのキシリトール生産性は、野生型菌株が0.51g/l/h、LBDAUが0.59g/l/hであることが示され、LBDAUは対照群である野生型菌株に比べて15%高いキシリトール生成性があることを確認し、野生型菌株は60時間の間10.3g/lのアラビトールを生成するのに比べて、LBDAUは副産物であるアラビトールを生成せずにキシリトールのみを生産することを確認した。また、EBDAUのキシリトール生産性は、野生型菌株が0.44g/l/h、EBDAUが0.49g/l/hであることが示され、EBDAUは対照群である野生型菌株に比べて12%高いキシリトール生産性があることを確認し、野生型菌株は60時間の間9.8g/lのアラビトールを生成するのに比べて、EBDAUは副産物であるアラビトールを生成せずにキシリトールのみを生産することを確認した。併せて、PBDAUのバイオマス加水分解物を用いた発酵槽で大量生産した場合のキシリトール生産性は、BSXDH−3が2.16g/l/h、PBDAUが2.28g/l/hであることを確認し、BSXDH−3は72時間の間6.4g/lのアラビトールを生成したのに比べて、PBDAUは副産物であるアラビトールを全く生成せずにキシリトールのみを純粋に生産することを確認した。
【0047】
このことから、アラビノース代謝経路が新たに導入された本発明のキシリトール生産菌株は、アラビトール生成を抑制して高生産性でキシリトールのみを純粋に生産するのに有用に使用することができ、またバイオマス加水分解物を用いた大量生産時にもアラビトール生成抑制を通じて、高濃度、高生産性でキシリトールを生産することができることを確認した。
【実施例】
【0048】
以下、本発明を実施例によって詳しく説明する。
【0049】
但し、下記の実施例は、本発明を例示するだけのものであって、本発明の内容が下記の実施例に限定されるのではない。
【0050】
<実施例1>グリセルアルデヒド−3−リン酸脱水素酵素のプロモーターとターミネーター配列のクローニング
カンジダ・トロピカリスのグリセルアルデヒド−3−リン酸脱水素酵素(GAPDH)のプロモーターとターミネーターをクローニングするため、カンジダ・トロピカリスのゲノムDNAと下記のプライマー対を用いたポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を遂行して、1455bpのプロモーター配列(配列番号:1)と309bpのターミネーター配列(配列番号:2)を得た。
【0051】
プロモーターPCR[94℃30秒、30サイクル(94℃30秒、55℃1分、72℃1分30秒)、72℃7分]:
PGAP−F(BglII):5'−agatctaacgtggtatggttgtaagaaac−3'(配列番号:3);及び
PGAP−R(XbaI_BamHI):5'−ggatccgcgtctagatgtttaaattctttaattg−3'(配列番号:4)。
【0052】
ターミネーターPCR[94℃30秒、30サイクル(94℃30秒、55℃1分、72℃1分)、72℃7分]:
TGAP−F(XbaI_Xho):5'−tctagattgctcgagctatccaacaaactctag−3'(配列番号:5);及び
TGAP−R(BamHI):5'−ggatcctctggtttagaagtagggactgtatg−3'(配列番号:6)。
【0053】
<実施例2>araA、araB、araDのコドン最適化
コドン使用頻度データベース(http://www.kazusa.or.jp/codon/index.html)のデータを根拠にして、バチルス・リケニフォルミス(Bacillus licheniformis)のL−アラビノースイソメラーゼ(araA)、大腸菌のL−リブロキナーゼ(araB)、L−リブロース−5−ホスフェート 4−エピメラーゼ(araD)のコドンをカンジダ・トロピカリスに好適なコドンに入れ替えて遺伝子配列番号:7で表わされる塩基配列で構成されたCoAraA、配列番号:8で表わされる塩基配列からなるCoAraB及び配列番号:9で表わされる塩基配列からなるCoAraDを合成した(GENEART、ドイツ)。
【0054】
<実施例3>CoAraA、CoAraB及びCoAraDの発現カセット及び発現菌株の構築
前記<実施例2>で合成した最適化された遺伝子をグリセルアルデヒド−3−リン酸脱水素酵素(GAPDH)のプロモーターと選択マーカーの除去のための反復配列(gluまたはarg遺伝子)とを含むカセットにクローニングして、PGtrpfs2−CoAraA、PAHfs−CoAraB及びPAHfs2−CoAraDをそれぞれ得た(図2)。
【0055】
<3−1>キシロース脱水素酵素の発現が抑制された、形質転換されたカンジダ・トロピカリスの構築
カンジダ・トロピカリスのゲノムDNAを鋳型にして、下記のプライマーを用いたPCR(94℃1分、25サイクル(94℃30秒、58℃30秒、72℃30秒)及び72℃3分)を遂行して、カンジダ・トロピカリスのキシリトール脱水素酵素の遺伝子を増幅して、前記増幅されたカンジダ・トロピカリスのキシリトール脱水素酵素の遺伝子をpGEM−T easyベクター(BIONEX、韓国)にクローニングした後、前記キシリトール脱水素酵素の遺伝子の中間にBamHI座位を導入して、前記導入されたBamHI座位にura3遺伝子を導入して、4.7kbの形質転換ベクターpXYL2−Ura3を得た。
【0056】
プライマーF:5'−aatggtcttgggtcacgaatcc−3'(配列番号:10)
プライマーR:5'−gctctgaccaagtcgtaggcttc−3'(配列番号:11)
【0057】
前記で得たベクターpXYL2−Ura3をカンジダ・トロピカリスに導入して、それをウラシル(uracil)が欠乏した固形選択培地(酵母窒素ベース(無アミノ酸)6.7g/l、ブドウ糖20g/l、寒天粉15g/l)に塗抹して30℃で2日間静置培養した。その後、固形培地で形成されたコロニーを、キシロースが含まれた固形培地(酵母窒素ベース(無アミノ酸)6.7g/l、キシロース20g/l、寒天粉15g/l)とブドウ糖が含まれた固形培地(酵母窒素ベース(無アミノ酸)6.7g/l、ブドウ糖20g/l、寒天粉15g/l)にそれぞれ播種して30℃で2日間静置培養して、キシロースが含まれた固形培地では育つことができずに、ブドウ糖が含まれた固形培地でのみ育つ菌株を選択して、キシリトール脱水素酵素が除去されたカンジダ・トロピカリスを得た。
【0058】
<3−2>カンジダ・パラプシロシスのウラシル栄養要求体(Uracil auxotroph)構築
URA3遺伝子を菌株構築のための選択マーカーとして使用するために、カンジダ・パラプシロシス菌株を突然変異を誘発するアルキル化剤であるEMS(メタンスルホン酸エチル)で処理してウラシル栄養要求体を構築した。
【0059】
カンジダ・パラプシロシス菌株をYM培地(ブドウ糖20g/l、酵母抽出物3g/l、麦芽抽出物3g/l、ペプトン5g/l)4mlに播種して、12時間の間30℃、150rpmで振とう培養した。続いて前記培養液をYM培地50mlに播種して、30℃、200rpmで12時間の間振とう培養した後、前記培養液30mlを50mlチューブ(tube)に移した後、30mlミニマル(Minimal)Aバッファー(リン酸水素二カリウム(KHPO)10.5g/l、リン酸二水素カリウム(KHPO)4.5g/l、硫酸アンモニウム((NHSO)1.0g/l及びクエン酸ナトリウム0.5g/l)で細胞を二度洗浄して、細胞を再び15mlミニマル(Minimal)Aバッファーで再懸濁させた後、EMS450μlを添加した。その後、30℃、200rpmで振とう培養させながら90分間反応させた後、細胞を5mlミニマルAバッファーで二回洗浄してそれを1mlミニマルAバッファーで再懸濁して、5−FOA固形培地(酵母窒素ベース6.7g/l、ブドウ糖20g/l、5−FOA0.8g/l、ウラシル0.1g/l、寒天粉15g/l)に塗抹して、30℃で2日間静置培養した。固形培地で形成されたコロニーは、URA3遺伝子が不活性化した菌株であり、このようにウラシル栄養要求性カンジダ・パラプシロシス菌株を得た。
【0060】
<3−3>野生型カンジダ・トロピカリスからの、CoAraA、CoAraB及びCoAraD遺伝子を発現する菌株の構築
前記カセットPGtrpfs2−CoAraAを野生型カンジダ・トロピカリス菌株に導入して、それをウラシルが欠乏した固形選択培地(酵母窒素ベース6.7g/l、ブドウ糖20g/l、寒天粉15g/l)に塗抹して、30℃で2日間静置培養した。固形培地で形成されたコロニーはカセットが導入された菌株であり、それをYM培地(ブドウ糖20g/l、酵母抽出物3g/l、麦芽抽出物3g/l、ペプトン5g/l)4mlに播種して、12時間の間30℃、150rpmで振とう培養した。続いて前記培養液を5−FOA固形培地(酵母窒素ベース6.7g/l、ブドウ糖20g/l、5−FOA0.8g/l、ウラシル0.1g/l、寒天粉15g/l)に塗抹して、30℃で2日間静置培養した。
【0061】
固形培地で形成されたコロニーは、導入されたURA3遺伝子が除去された菌株であり、同一な方法でPAHfs−CoAraB、PAHfs2−CoAraDを順に導入して、CoAraA、CoAraB及びCoAraDを発現する変異株カンジダ・トロピカリス LBDAUを得た。
【0062】
<3−4>キシリトール脱水素酵素が除去されたカンジダ・トロピカリスからの、CoAraA、CoAraB及びCoAraD遺伝子を発現する菌株の構築
前記で得たカセットPGtrpfs2−CoAraAをキシリトール脱水素酵素が不活性化されたカンジダ・トロピカリスBSXDH−3(受託番号:KCTC 11137BP)に導入して、それをウラシルが欠乏した固形選択培地(酵母窒素ベース6.7g/l、ブドウ糖20g/l及び寒天粉15g/l)に塗抹して、30℃で2日間静置培養した。固形培地で形成されたコロニーはカセットが導入された菌株であり、それをYM培地(ブドウ糖20g/l、酵母抽出物3g/l、麦芽抽出物3g/l及びペプトン5g/l)4mlに播種した後、12時間の間30℃、150rpmで振とう培養した。続いて前記培養液を5−FOA固形培地(酵母窒素ベース6.7g/l、ブドウ糖20g/l、5−FOA0.8g/l、ウラシル0.1g/l及び寒天粉15g/l)に塗抹して、30℃で2日間静置培養した。
【0063】
固形培地で形成されたコロニーは、導入されたURA3遺伝子が除去された菌株であり、前記のような方法でPAHfs−CoAraB及びPAHfs2−CoAraDを順番に導入して、CoAraA、CoAraB及びCoAraDを発現する変異株カンジダ・トロピカリスPBDAUを得た。
【0064】
<3−5>カンジダ・パラプシロシスからの、CoAraA、CoAraB及びCoAraD遺伝子を発現する菌株の構築
前記で得たカセットPGtrpfs2−CoAraAをURA3遺伝子が不活性化されたカンジダ・パラプシロシス菌株に導入して、それをウラシルが欠乏した固形選択培地(酵母窒素ベース6.7g/l、ブドウ糖20g/l、寒天粉15g/l)に塗抹して、30℃で2日間静置培養した。固形培地で形成されたコロニーはカセットが導入された菌株であり、それをYM培地(ブドウ糖20g/l、酵母抽出物3g/l、麦芽抽出物3g/l、ペプトン5g/l)4mlに播種して、12時間の間30℃、150rpmで振とう培養した。続いて前記培養液を5−FOA固形培地(酵母窒素ベース6.7g/l、ブドウ糖20g/l、5−FOA0.8g/l、ウラシル0.1g/l、寒天粉15g/l)に塗抹して、30℃で2日間静置培養した。
【0065】
固形培地で形成されたコロニーは、導入されたURA3遺伝子が除去された菌株であり、同様な方法でPAHfs−CoAraB、PAHfs2−CoAraDを順番に導入して、CoAraA、CoAraB及びCoAraDを発現する変異株カンジダ・パラプシロシス EBDAUを得た。
【0066】
<実施例4>導入されたアラビノース代謝経路の作動有無の確認
前記<実施例3>で得たカンジダ・トロピカリスPBDAU、LBDAU及びカンジダ・パラプシロシスEBDAUのアラビノース代謝経路が正常に作動するかどうかを確認するために、構築された菌株をアラビノース最少培地で培養した。
【0067】
<4−1>野生型カンジダ・トロピカリスLBDAUのアラビノース代謝経路の作動有無の確認
LBDAUをYM培地(ブドウ糖20g/l、酵母抽出物3g/l、麦芽抽出物3g/l及びペプトン5g/l)4mlに播種して、12時間の間30℃、150rpmで振とう培養した。続いて、前記培養液をアラビノース最少培地(アラビノース20g/l、酵母窒素ベース6.7g/l、寒天粉15g/l)50mlに播種して、60時間の間30℃、200rpmで振とう培養した。
【0068】
試料を分光光度計を用いて600nmで吸光度を測定して、あらかじめ分析した標準曲線で換算して算出した。また、経時的なアラビノース、アラビトール濃度を測定した。測定方法は下記のとおりである。まず、試料を遠心分離して上澄液を0.2μmフィルターでろ過した後、HPLCシステム[Sugar−Pak Iカラム、HPLCポンプ、屈折率検出器(Waters、米国)、移動相:水、0.5ml/分、温度:90℃]で分析した。
【0069】
(表1)アラビノース最少培地での細胞成長及びアラビノース消費量とアラビトール生成量分析

【0070】
その結果、表1にみられるようにように、対照群である野生型カンジダ・トロピカリスは、炭素源としてアラビノースのみ存在する最少培地では増殖することができないことを確認し、したがってアラビノースを消費することもできずアラビトールを生成することもできないことを確認した。一方、LBDAUは、60時間の間に1.6g/l程度の乾燥菌体濃度に増殖し、4.3g/lのアラビノースを消費した。アラビノースはアラビトールに転換されないですべて細胞代謝に用いられたことを確認することができた。
【0071】
したがって、LBDAUに導入されたアラビノース代謝経路が十分に作動していることを確認することができた。
【0072】
<4−2>変異株カンジダ・トロピカリスPBDAUのアラビノース代謝経路の作動有無の確認
PBDAUをYM培地(ブドウ糖20g/l、酵母抽出物3g/l、麦芽抽出物3g/l及びペプトン5g/l)4mlに播種した後、12時間の間30℃、150rpmで振とう培養した。続いて、前記培養液をアラビノース最少培地(アラビノース20g/l、酵母窒素ベース6.7g/l及び寒天粉15g/l)50mlに播種して、60時間の間30℃、200rpmで振とう培養した。
【0073】
試料を分光光度計を用いて600nmで吸光度を測定し、あらかじめ分析した標準曲線で換算して算出して、経時的な乾燥菌体濃度を測定した。また、経時的なアラビノース、アラビトール濃度を測定した。測定方法は次のとおりである。まず、試料を遠心分離して上澄液を0.2μmフィルターでろ過した後、HPLCシステム[Sugar−Pak Iカラム、HPLCポンプ、屈折率検出器(Waters、米国)、移動相(mobile phase):水、0.5ml/分、温度:90℃]で分析した。経時的な細胞乾燥菌体濃度(Drv cell weight)及びアラビノース消費量とアラビトール生産量は次のとおりである。
【0074】
(表2)アラビノース最少培地での細胞成長及びアラビノース消費量とアラビトール生産量分析

【0075】
その結果、表2にみられるようにように、対照群であるBSXDH−3は、炭素源にアラビノースのみ存在する最少培地では増殖することができず、アラビノースを消費することもできずアラビトールを生成させることもできないことを確認した。一方、PBDAUは、60時間の間に2.1g/l程度の乾燥菌体濃度に増殖して、5.4g/lのアラビノースを消費し、アラビノースはアラビトールに転換されないですべて細胞代謝に用いられたことを確認した。
【0076】
したがって、PBDAUに導入されたアラビノース代謝経路が十分に作動していることを確認することができた。
【0077】
<4−3>カンジダ・パラプシロシスEBDAUのアラビノース代謝経路の作動有無の確認
EBDAUをYM培地(ブドウ糖20g/l、酵母抽出物3g/l、麦芽抽出物3g/l、ペプトン5g/l)4mlに播種した後、12時間の間30℃、150rpmで振とう培養した。続いて、前記培養液をアラビノース最少培地(アラビノース20g/l、酵母窒素ベース6.7g/l、寒天粉15g/l)50mlに播種して、60時間の間30℃、200rpmで振とう培養した。
【0078】
試料を分光光度計を用いて600nmで吸光度を測定し、あらかじめ分析した標準曲線で換算して算出して経時的な乾燥菌体濃度を測定した。また、経時的なアラビノース、アラビトール濃度を測定した。測定方法は次のとおりである。まず、試料を遠心分離して上澄液を0.2フィルターでろ過した後、HPLCシステム[Sugar−Pak Iカラム、HPLCポンプ、屈折率検出器(Waters、米国)、移動相:水、0.5ml/分、温度:90℃]で分析した。経時的な細胞乾燥菌体濃度及びアラビノース消費量及びアラビトール生成量は、次のとおりである。
【0079】
(表3)アラビノース最少培地での細胞成長及びアラビノース消費量とアラビトール生成量分析

【0080】
その結果、表3にみられるようにように、対照群である野生型カンジダ・パラプシロシスは、炭素源にアラビノースのみ存在する最少培地では増殖することができず、アラビノースを消費することもできずアラビトールを生成させることもできなかった。一方、EBDAUは、60時間の間に1.4g/l程度の乾燥菌体濃度に増殖して、4.1g/lのアラビノースを消費した。アラビノースは、アラビトールに転換されないですべて細胞代謝に用いられたことを確認することができた。
【0081】
したがって、EBDAUに導入されたアラビノース代謝経路が十分に作動していることを確認することができた。
【0082】
<実施例5>形質転換体を用いたキシリトールの生産
<5−1>形質転換体PBDAUと補助基質にブドウ糖を用いたキシリトールの生産
構築された形質転換体PBDAUをYM培地(ブドウ糖20g/l、酵母抽出物3g/l、麦芽抽出物3g/l、ペプトン5g/l)4mlに播種して、12時間の間30℃、150rpmで振とう培養した。その後、前記培養液をキシロース及びアラビノースを含んだ生産培地(キシロース30g/l、アラビノース30g/l、ブドウ糖20g/l、酵母抽出物10g/l、リン酸二水素カリウム(KHPO)5g/l及び硫酸マグネシウム(MgSO7HO)0.2g/l)50mlに播種した後、60時間の間30℃、200rpmで振とう培養し、培養開始14時間後、20時間後、26時間後及び32時間後にそれぞれブドウ糖2.5g/lずつ添加した。
【0083】
経時的なキシロース、キシリトール、アラビノース、アラビトール濃度を測定した。測定方法は次のように遂行した。まず、試料を遠心分離して上澄液を0.2μmフィルターでろ過した後、HPLCシステム[Sugar−Pak Iカラム、HPLCポンプ、屈折率検出器(Waters、米国)、移動相:水、0.5ml/分、温度:90℃]で分析した。経時的なキシロース、キシリトール、アラビノース及びアラビトールの濃度は、下記のとおりである。
【0084】
(表4)培養時間によるキシリトール及びアラビトールの濃度変化

【0085】
その結果、キシリトール生産性は、BSXDH−3 0.55g/l/h、PBDAU 0.63g/l/hであることが示され、PBDAUは対照群であるBSXDH−3に比べて15%高いキシリトール生産性を示した。また、BSXDH−3は、60時間の間に11.4g/lのアラビトールを生成したのに比べて、PBDAUは副産物であるアラビトールを生成せずにキシリトールのみを生産することを確認することができた。
【0086】
したがって、PBDAUを通じたキシリトール生産方法は、キシリトール生産時の精製及び結晶化過程を妨害するアラビトールを生産しないので、キシリトール生産収率を顕著に高めることができることを確認することができた。
【0087】
<5−2>形質転換体PBDAUと補助基質にグリセロールを用いたキシリトールの生産
構築された形質転換体PBDAUをYM培地(ブドウ糖20g/l、酵母抽出物3g/l、麦芽抽出物3g/l、ペプトン5g/l)4mlに播種して、12時間の間30℃、150rpmで振とう培養した。その後、前記培養液をキシロースとアラビノース及びグリセロールを含んだ生産培地(キシロース30g/l、アラビノース30g/l、グリセロール20g/l、酵母抽出物10g/l、リン酸二水素カリウム(KHPO)5g/l及び硫酸マグネシウム(MgSO7HO)0.2g/l)50mlに播種して、36時間の間30℃、200rpmで振とう培養した。
【0088】
経時的なキシロース、キシリトール、アラビノース、アラビトール濃度を測定した。測定方法は次のように遂行した。まず、試料を遠心分離して上澄液を0.2μmフィルターでろ過した後、HPLCシステム[Sugar−Pak Iカラム、HPLCポンプ、屈折率検出器(Waters、米国)、移動相:水、0.5ml/分、温度:90℃]で分析した。経時的なキシロース、キシリトール、アラビノース、アラビトールの濃度変化は、下記のとおりである。
【0089】
(表5)培養時間によるキシリトール及びアラビトールの濃度変化

【0090】
その結果、キシリトール生産性は、BSXDH−3が0.65g/l/h、PBDAUが0.74g/l/hであることが示され、PBDAUは対照群であるBSXDH−3に比べて14%高いキシリトール生産性を示した。また、BSXDH−3は、42時間の間に6.4g/lのアラビトールを生成したのに比べて、PBDAUは副産物であるアラビトールを生成せずにキシリトールのみを生産することを確認することができた。
【0091】
したがって、PBDAUを通じたシリトール生産方法は、キシリトール生産時の精製及び結晶化過程を妨害するアラビトールを生産しないので、キシリトール生産収率を顕著に高めることができることを確認することができた。
【0092】
<5−3>形質転換体LBDAUと補助基質にブドウ糖を用いたキシリトールの生産
構築された形質転換体LBDAUをYM培地(ブドウ糖20g/l、酵母抽出物3g/l、麦芽抽出物3g/l、ペプトン5g/l)4mlに播種して、12時間の間30℃、150rpmで振とう培養した。その後、前記培養液をキシロースとアラビノース及びブドウ糖を含んだ生産培地(キシロース30g/l、アラビノース30g/l、ブドウ糖20g/l、酵母抽出物10g/l、リン酸二水素カリウム(KHPO)5g/l及び硫酸マグネシウム(MgSO7HO)0.2g/l)50mlに播種して、60時間の間30℃、200rpmで振とう培養し、14時間後、20時間後、26時間後及び32時間後にブドウ糖2.5g/lずつ添加した。
【0093】
経時的なキシロース、キシリトール、アラビノース、アラビトール濃度を測定した。測定方法は次のとおりである。まず、試料を遠心分離して上澄液を0.2μmフィルターでろ過した後、HPLCシステム[Sugar−Pak Iカラム、HPLCポンプ、屈折率検出器(Waters、米国)、移動相:水、0.5ml/分、温度:90℃]で分析した。経時的なキシロース、キシリトール、アラビノース、アラビトールの濃度変化は、下記のとおりである。
【0094】
(表6)培養時間によるキシリトール及びアラビトールの濃度変化

【0095】
その結果、キシリトール生産性は、野生型菌株が0.51g/l/h、LBDAUが0.59g/l/hであることが示され、LBDAUは対照群である野生型菌株に比べて15%高いキシリトール生産性を示した。また、野生型菌株は、60時間の間に10.3g/lのアラビトールを生成したのに比べて、LBDAUは副産物であるアラビトールを生成せずにキシリトールのみを生産することを確認することができた。
【0096】
<5−4>形質転換体LBDAUと補助基質にグリセロールを用いたキシリトールの生産
構築された形質転換体LBDAUをYM培地(ブドウ糖20g/l、酵母抽出物3g/l、麦芽抽出物3g/l、ペプトン5g/l)4mlに播種して、12時間の間30℃、150rpmで振とう培養した。その後、前記培養液をキシロースとアラビノース及びグリセロールを含んだ生産培地(キシロース30g/l、アラビノース30g/l、グリセロール20g/l、酵母抽出物10g/l、リン酸二水素カリウム(KHPO)5g/l及び硫酸マグネシウム(MgSO7HO)0.2g/l)50mlに播種して、36時間の間30℃、200rpmで振とう培養した。
【0097】
経時的なキシロース、キシリトール、アラビノース、アラビトール濃度を測定した。測定方法は下記のとおりである。まず、試料を遠心分離して上澄液を0.2μmフィルターでろ過した後、HPLCシステム[Sugar−Pak Iカラム、HPLCポンプ、屈折率検出器(Waters、米国)、移動相:水、0.5ml/分、温度:90℃]で分析した。経時的なキシロース、キシリトール、アラビノース、アラビトールの濃度変化は、下記のとおりである。
【0098】
(表7)培養時間によるキシリトール及びアラビトールの濃度変化

【0099】
その結果、キシリトール生産性は、野生型菌株が0.58g/l/h、LBDAUが0.63g/l/hであることが示され、LBDAUは対照群である野生型菌株に比べて10%高いキシリトール生産性を示した。また、野生型菌株は、42時間の間に6.7g/lのアラビトールを生成したのに比べて、LBDAUは副産物であるアラビトールを生成せずにキシリトールのみを生産することを確認することができた。
【0100】
<5−5>形質転換体EBDAUと補助基質にブドウ糖を用いたキシリトールの生産
構築された形質転換体EBDAUをYM培地(ブドウ糖20g/l、酵母抽出物3g/l、麦芽抽出物3g/l、ペプトン5g/l)4mlに播種して、12時間の間30℃、150rpmで振とう培養した。その後、前記培養液をキシロースとアラビノース及びブドウ糖を含んだ生産培地(キシロース30g/l、アラビノース30g/l、ブドウ糖20g/l、酵母抽出物10g/l、リン酸二水素カリウム(KHPO)5g/l及び硫酸マグネシウム(MgSO7HO)0.2g/l)50mlに播種して、60時間の間30℃、200rpmで振とう培養し、14時間後、20時間後、26時間後、32時間後にブドウ糖2.5g/lずつ添加した。
【0101】
経時的なキシロース、キシリトール、アラビノース、アラビトール濃度を測定した。測定方法は下記のとおりである。まず、試料を遠心分離して上澄液を0.2フィルターでろ過した後、HPLCシステム[Sugar−Pak Iカラム、HPLCポンプ、屈折率検出器(Waters、米国)、移動相:水、0.5ml/分、温度:90℃]で分析した。経時的なキシロース、キシリトール、アラビノース、アラビトールの濃度変化は、下記のとおりである。
【0102】
(表8)培養時間によるキシリトール及びアラビトールの濃度変化

【0103】
その結果、キシリトール生産性は、野生型菌株が0.44g/l/h、EBDAUが0.49g/l/hであることが示され、EBDAUは対照群である野生型菌株に比べて12%高いキシリトール生産性を示した。また、野生型菌株は、60時間の間に9.8g/lのアラビトールを生成したのに比べて、EBDAUは副産物であるアラビトールを生成せずにキシリトールのみを生産することを確認することができた。
【0104】
したがって、EBDAUを通じたキシリトール生産方法は、キシリトール生産時の精製及び結晶化過程を妨害するアラビトールを生産しないので、キシリトール生産収率を顕著に高めることができることを確認することができた。
【0105】
<5−6>形質転換体EBDAUと補助基質にグリセロールを用いたキシリトールの生産
構築された形質転換体EBDAUをYM培地(ブドウ糖20g/l、酵母抽出物3g/l、麦芽抽出物3g/l、ペプトン5g/l)4mlに播種して、12時間の間30℃、150rpmで振とう培養した。その後、前記培養液をキシロースとアラビノース及びグリセロールを含んだ生産培地(キシロース30g/l、アラビノース30g/l、グリセロール20g/l、酵母抽出物10g/l、リン酸二水素カリウム(KHPO)5g/l及び硫酸マグネシウム(MgSO7HO)0.2g/l)50mlに播種して、36時間の間30℃、200rpmで振とう培養した。
【0106】
経時的なキシロース、キシリトール、アラビノース、アラビトール濃度を測定した。測定方法は下記のとおりである。試料を遠心分離して上澄液を0.2μmフィルターでろ過した後、HPLCシステム[Sugar−Pak Iカラム、HPLCポンプ、屈折率検出器(Waters、米国)、移動相:水、0.5ml/分、温度:90℃]で分析した。経時的なキシロース、キシリトール、アラビノース、アラビトールの濃度変化は、下記のとおりである。
【0107】
(表9)培養時間によるキシリトール及びアラビトールの濃度変化

【0108】
その結果、キシリトール生産性は、野生型菌株が0.49g/l/h、EBDAUが0.56g/l/hであることが示され、EBDAUは対照群である野生型菌株に比べて13%高いキシリトール生産性を示した。また、野生型菌株は、42時間の間に5.2g/lのアラビトールを生成したのに比べて、EBDAUは副産物であるアラビトールを生成せずにキシリトールのみを生産することを確認することができた。
【0109】
したがって、EBDAUを通じたキシリトール生産方法は、キシリトール生産時の精製及び結晶化過程を妨害するアラビトールを生産しないので、キシリトール生産収率を顕著に高めることができることを確認することができた。
【0110】
<実施例6>形質転換体PBDAUとバイオマス加水分解物を用いたキシリトールの大量生産
形質転換体を用いてキシリトールを大量生産するために、糖成分がキシロース82.9%、アラビノース11.4%、ブドウ糖5.7%であるトウモロコシ穂軸の加水分解物を基質として用い、グリセロールを補助基質として用いた。これはトウモロコシ穂軸、サトウキビ、ココナッツ副産物、カバノキなどのバイオマスには、キシロース、アラビノース、ブドウ糖などからなるヘミセルロースが豊かであり、特にキシロースの含有量が高いので、それを加水分解した物質をキシリトール生産に直接用いることができるからである。
【0111】
構築された形質転換体PBDAUをYM培地(ブドウ糖20g/l、酵母抽出物3g/l、麦芽抽出物3g/l、ペプトン5g/l)50mlに播種して、12時間の間30℃、200rpmで振とう培養した。その後、前記培養液をバイオマス加水分解物を用いたキシリトール生産培地(キシロース50g/l、ブドウ糖3.5g/l、アラビノース6.9g/l、グリセロール15g/l、酵母抽出物10g/l、リン酸二水素カリウム(KHPO)5g/l及び硫酸マグネシウムMgSO7HO)0.2g/l)1lが入った発酵槽に播種して、30℃、pH4.0、500〜800rpmで撹拌させながら培養した。培養開始の12時間後から栄養溶液(feeding solution)(キシロース503g/l、ブドウ糖34.7g/l、アラビノース69.2g/l、グリセロール150g/l)を添加して培地内のキシロース濃度が100g/l以下になるように調節して72時間の間流加式培養を遂行した。
【0112】
経時的な乾燥菌体濃度は、分光光度計を用いて600nmで吸光度を測定し、あらかじめ分析した標準曲線で換算して算出した。また、キシロース、キシリトール、アラビノース、アラビトール濃度を測定した。測定方法は下記のとおりである。まず、試料を遠心分離して上澄液を0.2μmフィルターでろ過した後、HPLCシステム[Sugar−Pak Iカラム、HPLCポンプ、屈折率検出器(Waters、米国)、移動相:水、0.5ml/分、温度:90℃]で分析した。経時的な乾燥菌体濃度、キシロース、キシリトール、アラビノース、アラビトールの濃度は、下記のとおりである。
【0113】
(表10)培養時間によるキシリトール及びアラビトールの濃度変化

【0114】
その結果、キシリトール生産性は、BSXDH−3が2.16g/l/h、PBDAUが2.28g/l/hであることが示され、PBDAUは対照群であるBSXDH−3に比べて5.6%高いキシリトール生産性を示した。また、BSXDH−3は、72時間の間に6.4g/lのアラビトールを生成したのに比べて、PBDAUは副産物であるアラビトールを生成せずにキシリトールのみを生産することを確認することができた。
【0115】
したがって、本発明のPBDAU菌株は、実際にバイオマス加水分解物を用いた大量生産において副産物であるアラビトールは生成せずに、高濃度、高生産性でキシリトールを生産することができることを確認することができた。
【0116】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
アラビノース(arabinose)代謝経路関連遺伝子を含む遺伝子発現カセットをカンジダ属(Candidia sp.)菌株に導入することで作製された、アラビトール生成が抑制されたキシリトール生産菌株。
【請求項2】
前記遺伝子発現カセットが下記の1)〜3)のうちの1つであることを特徴とする、請求項1に記載のアラビトール生成が抑制されたキシリトール生産菌株:
1)プロモーター、L−アラビノースイソメラーゼ(L−arabinose isomerase)をコードするポリヌクレオチド及びターミネーターからなる遺伝子発現カセット、
2)プロモーター、L−リブロキナーゼ(L−ribulokinase)をコードするポリヌクレオチド及びターミネーターからなる遺伝子発現カセット、及び
3)プロモーター、L−リブロース−5−ホスフェート 4−エピメラーゼ(L−ribulose−5−phosphate 4−epimerase)をコードするポリヌクレオチド及びターミネーターからなる遺伝子発現カセット。
【請求項3】
前記カンジダ属菌株が、好ましくは、カンジダ・グイリエルモンジ(C.guillermondi)、カンジダ・パラプシロシス(C.parapsilosis)及びカンジダ・トロピカリス(C.tropicalis)からなる群より選択されることを特徴とする、請求項1に記載のアラビトール生成が抑制されたキシリトール生産菌株。
【請求項4】
前記カンジダ属菌株が、キシリトール脱水素酵素(xylitol dehydrogenase)を不活性化させたカンジダ・トロピカリスであることを特徴とする、請求項1に記載のアラビトール生成が抑制されたキシリトール生産菌株。
【請求項5】
キシリトール生産菌株が、受託番号:KCTC 11761BPで寄託された菌株であることを特徴とする、請求項1に記載のアラビトール生成が抑制されたキシリトール生産菌株。
【請求項6】
前記カンジダ・トロピカリス菌株が、受託番号:KCTC 11137BPで寄託された菌株であることを特徴とする、請求項4に記載のアラビトール生成が抑制されたキシリトール生産菌株。
【請求項7】
アラビノース代謝経路関連遺伝子を含む遺伝子発現カセットをカンジダ属菌株に導入することで作製された、アラビトール生成が抑制されたキシリトール生産菌株の作製方法。
【請求項8】
下記の1)〜3)の遺伝子発現カセットをカンジダ属菌株に導入する工程を含むことを特徴とする、請求項7に記載のアラビトール生成が抑制されたキシリトール生産菌株の作製方法:
1)プロモーター、L−アラビノースイソメラーゼをコードするポリヌクレオチド及びターミネーターからなる遺伝子発現カセット、
2)プロモーター、L−リブロキナーゼをコードするポリヌクレオチド及びターミネーターからなる遺伝子発現カセット;及び
3)プロモーター、L−リブロース−5−ホスフェート 4−エピメラーゼをコードするポリヌクレオチド及びターミネーターからなる遺伝子発現カセット。
【請求項9】
前記カンジダ属菌株が、好ましくは、カンジダ・グイリエルモンジ、カンジダ・パラプシロシスまたはカンジダ・トロピカリスからなる群より選択されることを特徴とする、請求項7に記載のアラビトール生成が抑制されたキシリトール生産菌株の作製方法。
【請求項10】
前記カンジダ属菌株が、キシリトール脱水素酵素を不活性化させたカンジダ・トロピカリスであることを特徴とする、請求項7に記載のアラビトール生成が抑制されたキシリトール生産菌株の作製方法。
【請求項11】
キシリトール生産菌株が、受託番号:KCTC 11761BPで寄託された菌株であることを特徴とする、請求項7に記載のアラビトール生成が抑制されたキシリトール生産菌株の作製方法。
【請求項12】
前記カンジダ・トロピカリス菌株が、受託番号:KCTC 11137BPで寄託された菌株であることを特徴とする、請求項10に記載のアラビトール生成が抑制されたキシリトール生産菌株の作製方法。
【請求項13】
1)請求項1に記載のキシリトール生産菌株をバイオマス加水分解物及び炭素源を含んだ培地中で培養する工程、
2)培養された菌株からキシリトールを生産する工程、及び
3)培養液からキシリトールを分離する工程
を含む、キシリトールの大量生産方法。
【請求項14】
工程1)のバイオマス加水分解物が、好ましくは、トウモロコシ穂軸の加水分解物、サトウキビの加水分解物、ココナッツ副産物、及びカバノキの加水分解物からなる群より選択されることを特徴とする、請求項13に記載のキシリトールの大量生産方法。
【請求項15】
工程1)の炭素源が、好ましくは、ブドウ糖、グリセロール、果糖、ガラクトース、ショ糖、マンノース、マルトース、セロビオース及びこれらの混合物からなる群より選択されることを特徴とする、請求項13に記載のキシリトールの大量生産方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2013−502237(P2013−502237A)
【公表日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−537831(P2012−537831)
【出願日】平成23年1月18日(2011.1.18)
【国際出願番号】PCT/KR2011/000346
【国際公開番号】WO2012/046924
【国際公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【出願人】(508047668)コリア アドバンスド インスティチュート オブ サイエンス アンド テクノロジー (9)
【Fターム(参考)】