説明

アルミナセラミックの製造法

【課題】 優れた光の反射特性を有すると共に、内部にボイドが生じにくいアルミナセラミックの製造方法を提供する。
【解決手段】 Ba0.808Al1.71Si2.29相を含有するフリットを焼成する第1焼成工程P2と、フリットを粉砕して、Ba0.808Al1.71Si2.29相を含有するアルミナセラミック粒子を含むフリット粉末とする粉砕工程P3と、少なくとも、フリット粉末と、アルミナを含有するアルミナ粉末と、シリカを含有するシリカ粉末とを混合し、混合材料とする混合工程P4と、混合材料を成形する成形工程P5と、成形された混合材料を焼結する第2焼成工程P6とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルミナセラミックの製造方法に関し、特に、内部にボイドが生じにくい、Ba0.808Al1.71Si2.29相を含有するアルミナセラミックの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
高輝度の発光ダイオード(LED)、半導体レーザー(LD)等の発光素子を収納するためのパッケージ(基板)として、セラミック製のパッケージが使用されている。このようなパッケージは、発光素子を搭載する基体と、基体上に設けられ貫通孔を有する枠体とを備えている。そして、発光素子は、枠体の貫通孔内に収容されて、基体上に配置される。この基体には外部から通電するための配電導体が設けられており、発光素子はこの配電導体とボンディングワイヤーにより電気的に接続されている。そして、発光素子は、配電導体とボンディングワイヤーを介して外部から通電されて発光し、発光素子から放出された光は直接外部へ放出されるか、基体の表面や枠体の内周面で反射して外部に放出される。従って、基体の表面や枠体の内周面における形状や組成は、発光装置の発光効率に多大な影響を与える。
【0003】
上述のような発光装置の枠体として、反射率の高い金属からなるものが知られている。しかし、このような枠体は、セラミックからなる基体と熱膨張率が異なるため、発光素子から発生する熱により基体から剥離することがある。そこで、下記特許文献1の枠体においては、このような基板と枠体との剥離を防止するために、セラミック製の枠体に金属メッキを施している。この枠体においては、めっきの材料として銀(Ag)が用いられており、波長が約460nmの光の反射率が、硫酸バリウムの反射率に対して約90%となる。しかし、この枠体は、約460nm以下の波長の光の反射率が低く、波長が250nm〜800nmの範囲における反射率が、平均で77%である。
【0004】
そこで、下記特許文献2には、光反射性に優れたアルミナセラミック、およびこの製造方法が記載されている。このアルミナセラミックは、Ba0.808Al1.71Si2.29相を含有するアルミナセラミックであり、少なくともバリウム化合物とアルミナとシリカとの混合材料を含む材料を焼成することにより得られる。このアルミナセラミックによれば、300nm以上の波長において、90%を超える反射率が実現できるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004-228531号公報
【特許文献2】国際公開第2010/001760号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記特許文献2に記載のアルミナセラミックは、優れた反射特性を有するが、バリウム化合物とアルミナとシリカとの混合材料を含む材料を焼成する際、バリウム化合物に起因するガスが発生する。このため、製造されたアルミナセラミック中に、意図しないボイドが生じ、アルミナセラミックのソリや、抗折強度の低下等が生じる場合があり、設計値通りのアルミナセラミックを得られない虞がある。
【0007】
そこで、本発明は、内部にボイドが生じにくい、Ba0.808Al1.71Si2.29相を含有するアルミナセラミックの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のアルミナセラミックの製造方法は、Ba0.808Al1.71Si2.29相を含有するフリットを焼成する第1焼成工程と、前記フリットを粉砕して、Ba0.808Al1.71Si2.29相を含有するアルミナセラミック粒子を含むフリット粉末とする粉砕工程と、少なくとも、前記フリット粉末と、アルミナを含有するアルミナ粉末と、シリカを含有するシリカ粉末とを混合し、混合材料とする混合工程と、前記混合材料を成形する成形工程と、成形された前記混合材料を焼結する第2焼成工程と、を備えることを特徴とするものである。
【0009】
このようなアルミナセラミックの製造方法によれば、一旦、第1焼成工程において、Ba0.808Al1.71Si2.29相を含有するフリットを焼成する。このとき、バリウム化合物に起因するガスが発生し、フリット内にボイド等が生じる場合があるが、このフリットは、第1焼成工程後の粉砕工程において粉砕されるため、ボイド等が発生しても問題とならない。そして、混合工程において、フリットを粉砕したフリット粉末に、アルミナ粉末、シリカ粉末を混合し、成形工程において成形して、第2焼成工程において、成形した混合材料を焼成して、アルミナセラミック得る。また第2焼成工程においては、第1焼成工程において、既にバリウム化合物に起因するガスが発生しているため、新たなガスの発生を抑制することができる。従って、第2焼成工程において、ボイドが生じることを抑制して、所望の空隙率を有するアルミナセラミックを得ることができる。このようにボイドが生じることを抑制することができるので、ソリや抗折強度の低下が抑制されたアルミナセラミックを得ることができる。また、得られたアルミナセラミックには、Ba0.808Al1.71Si2.29相が形成されているため、優れた反射特性を有することができる。
【0010】
また、上記アルミナセラミックの製造方法において、前記第1焼成工程は、少なくとも、アルミナと、シリカと、バリウム化合物とを含有する混合材料を焼成し、前記第1焼成工程に用いられる前記混合材料における、前記アルミナ、前記シリカ、前記バリウム化合物の重量部数による配合比が、前記バリウム化合物の重量部数をBaOで換算する場合に、
4/96<(BaO+SiO)/(Al)<24/76
であることが好ましい。
【0011】
さらに、上記アルミナセラミックにおいて、前記第1焼成工程に用いられる前記混合材料における、前記シリカ、前記バリウム化合物(BaO換算)の配合モル比が、
BaO/SiO=8/1〜8/32
であることが好ましい。
【0012】
また、上記アルミナセラミックにおいて、前記バリウム化合物が炭酸バリウムであることが好ましい。
【0013】
このようなアルミナセラミックの製造法によれば、高い反射特性を有しつつ比較的安価に製造することができる。
【発明の効果】
【0014】
以上のように、本発明によれば内部にボイドが生じにくい、Ba0.808Al1.71Si2.29相を含有するアルミナセラミックの製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施形態に係る発光素子搭載用基板を示す断面図である。
【図2】アルミナセラミック、及び、発光素子搭載用基板の製造方法の手順を示すフローチャートである。
【図3】図3は、各波長における実施例1及び比較例1の反射率を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係るアルミナセラミック、及び、これを用いた発光素子搭載用基板の好適な実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0017】
図1は、本発明の実施形態に係る発光素子搭載用基板を示す断面図である。
【0018】
図1に示すように、発光素子搭載用基板1は、基台11と、基台11上に形成された枠体12とを備える。基台11は、板状に形成されている。また、基台11上の枠体12は、円筒状に形成されており、開口13が形成されている。そして、枠体12は、外周面が基台11の一方の面に対して略垂直に形成されており、内周面が、基台11の一方の面に対して斜めにされて、この内周面が基台11側とは反対側、すなわち開口13側を向くように形成されている。また、基台11及び枠体12は、アルミナセラミックにより構成されており、一体成型されている。
【0019】
なお、この発光素子搭載用基板1が用いられる発光装置においては、発光素子が、発光素子搭載用基板1の開口13内の基台11上に配置され、この発光素子が、基台11上に設けられている図示しない配線とボンディングワイヤーにより接続される。
【0020】
また、このアルミナセラミックにおいては、Ba0.808Al1.71Si2.29相を含有するアルミナセラミック粒子と、Baを含む相を含有しないアルミナセラミック粒子とが分散している。従って、このアルミナセラミックにおいては、全体的に、Ba0.808Al1.71Si2.29相を含有するアルミナセラミック粒子と、Baを含む相を含有しないアルミナセラミック粒子とが隣接して、それぞれの粒子による界面が形成されている。
【0021】
これらのアルミナセラミック粒子の平均粒径は、1.5μm〜3.5μmであることが安定した光の反射特性を得る観点から好ましく、1.5μm〜2.0μmであることがより好ましい。また、このBa0.808Al1.71Si2.29相を含有するアルミナセラミック粒子は、粒子の30%以上が、平均粒径の±1.5μm以内の範囲とされる粒度分布であることが、高い強度を得る観点から好ましく、粒子の50%以上が、平均粒径の±1.0μm以内の範囲とされる粒度分布であることが、さらに好ましい。
【0022】
なお、上述のアルミナセラミック粒子の測定は、旭化学エンジニアリング株式会社製の粒子解析ソフトA像くん(登録商標)により、次の手順に従って行った。まず、本発明のアルミナセラミックの切断面を、適当な装置を用いて鏡面研磨する。そして、研磨された切断面上にカーボンを蒸着し、走査電子顕微鏡(SEM)にて結晶構造を撮影する。このときの撮影倍率は、2,000倍、画素数は、縦方向が960画素であり、横方向が1280画素である。その画像を上記の粒子解析ソフトにて解析し、結晶径を求めた。そして、この結晶径を複数測定して、平均を取ることにより平均粒径とした。
【0023】
また、このアルミナセラミックは、セラミック全体におけるバリウムとシリカとのモル比が、
Ba/Si=8/1〜8/32
であることが、波長300〜400nmの光に対して、より優れた反射特性を有することができる観点から好ましい。さらに、セラミック全体におけるバリウムとシリカとのモル比が、
Ba/Si=8/3〜8/32
であることが、波長300〜400nmの光に対して、さらに優れた反射特性を有することができる観点からより好ましい。
【0024】
さらに、このセラミックは、Ba0.808Al1.71Si2.29相を含有するアルミナセラミック粒子におけるバリウムとシリカとのモル比が、
Ba/Si=10/15〜10/27
であることが、より優れた反射特性を有することができる観点から好ましく、さらに
Ba/Si=10/18〜10/24
であることが、さらに優れた反射特性を有することができる観点から好ましい。
【0025】
このようにセラミック全体に分散された、Ba0.808Al1.71Si2.29相を含有するアルミナセラミック粒子と、Baを含む相を含有しないアルミナセラミック粒子との波長589nmの光における屈折率差が、0.1〜0.3であることが、それぞれの粒子間の界面において、適切な屈折率差となり、波長300nm〜400nmの光に対する優れた反射特性を有する観点から好ましい。
【0026】
以上のように、本実施形態におけるアルミナセラミックによれば、優れた光の反射特性を得ることができる。このようなアルミナセラミックにおいては、Ba0.808Al1.71Si2.29相を含有するアルミナセラミック粒子と、Baを含む相を含有しないアルミナセラミック粒子とが分散しており、Ba0.808Al1.71Si2.29相を含有するアルミナセラミック粒子は、Baを含む相を含有しないアルミナセラミック粒子よりも屈折率が高いことが知られている。従って屈折率の高いBa0.808Al1.71Si2.29相を含有するアルミナセラミック粒子と、屈折率の低いBaを含む相を含有しないアルミナセラミック粒子とが分散していることにより、全体的に、屈折率の高い粒子と、この粒子よりも屈折率の低い粒子とが隣接する界面ができる。このように隣接する粒子同士の屈折率差が大きい界面においては、光の反射が大きいため、優れた光の反射特性を有することができる。
【0027】
次に、このようなアルミナセラミック、及び、発光素子搭載用基板1の製造方法について説明する。
【0028】
図2は、アルミナセラミック、及び、発光素子搭載用基板1の製造方法の手順を示すフローチャートである。図2に示すように、発光素子搭載用基板1の製造方法は、バリウム化合物、アルミナ、シリカを含む原料粉末を準備して、これらの原料粉末を混合後に成形する準備工程P1、Ba0.808Al1.71Si2.29相を含有するフリットを焼成する第1焼成工程P2と、このフリットを粉砕して、Ba0.808Al1.71Si2.29相を含有するアルミナセラミック粒子を含むフリット粉末とする粉砕工程P3と、少なくとも、フリット粉末と、アルミナを含有するアルミナ粉末と、シリカを含有するシリカ粉末とを混合し、混合材料とする混合工程P4と、混合材料を成形する成形工程P5と、成形された混合材料を焼結する第2焼成工程P6とを、主な工程として備える。
【0029】
(準備工程P1)
まず、バリウム化合物、アルミナ、シリカを準備して、準備したバリウム化合物、アルミナ、シリカを粉末化して混合する。
【0030】
なお、混合時にバリウム化合物、アルミナ、シリカをボールミル等に投入して、それぞれのバリウム化合物、アルミナ、シリカを粉砕して粉末化しつつ混合しても良い。このとき、分散剤や可塑剤や染料をそれぞれの材料と共にボールミル等に投入しても良い。こうして、バリウム化合物粉末、アルミナ粉末、シリカ粉末の混合材料を得る。
【0031】
バリウム化合物の材料としては、特に限定されないが、水素化バリウム、フッ化バリウム、水酸化バリウム、酸化バリウム、塩化バリウム、炭酸バリウム、硫酸バリウム、硝酸バリウム等を挙げることができ、中でも酸化バリウム、炭酸バリウムが好ましく、特に炭酸バリウムが、原料純度が高く価格が安いという観点から好ましい。また、バリウム化合物粉末、アルミナ粉末、シリカ粉末が混合された状態におけるバリウム化合物粉末の平均粒径は、1.0〜2.0μmであることが、バリウム化合物粉末を充分に分散させることができる観点から好ましい。
【0032】
バリウム化合物粉末、アルミナ粉末、シリカ粉末が混合された状態におけるアルミナ粉末の平均粒径は、5μm以下であることが、第1焼結工程P2により、より均一に焼結したフリットを得ることができる観点から好ましい。また、製造後のアルミナセラミックの光反射性能や、可撓性、製造時の焼結性等を考慮すると、バリウム化合物粉末、アルミナ粉末、シリカ粉末が混合された状態におけるアルミナ粉末の平均粒径は、0.1μm〜3μmであることが特に好ましい。
【0033】
また、アルミナ粉末においては、上述の光反射性能や、可撓性、焼結性を調整するために、異なる平均粒径を有するアルミナ粉末を混合して用いることができる。例えば、平均粒径の異なる2種類のアルミナ粉末の粒径の組み合わせとしては、特に限定されないが、3μmと0.2μm、3μmと0.3μm、3μmと0.4μm、3μmと0.5μm、3μmと0.6μm、2μmと0.2μm、2μmと0.3μm、2μmと0.4μm、2μmと0.5μm、2μmと0.6μm等を挙ることができる。また、互いに平均粒径が異なる2種類のアルミナ粉末の組み合わせに限らず、互いに平均粒径が異なる3種類以上のアルミナ粉末を組み合わせても良い。平均粒径の異なる2種のアルミナを使用する場合、(大粒径のアルミナ粉末)/(小粒径のアルミナ粉末)の重量部数による配合比は、100/1〜60/40であることが好ましい。特に、異なる平均粒径のアルミナ粉末を混合したことにより、優れた光反射性能や、可撓性、焼結性を得るためには、(大粒径のアルミナ粉末)/(小粒径のアルミナ粉末)の重量部数による配合比が、85/15〜65/35であることが好ましく、80/20〜70/30がより好ましい。
【0034】
また、バリウム化合物粉末、アルミナ粉末、シリカ粉末が混合された状態におけるシリカ粉末の平均粒径は、1μm以下であることが、製造後のアルミナセラミックの吸湿性を低くする観点から好ましく、0.1〜0.7μmであることがより好ましく、0.3〜0.6μmであることがさらに好ましい。
【0035】
また、バリウム化合物粉末、アルミナ粉末、シリカ粉末が混合された状態におけるアルミナ、シリカ、バリウム化合物の重量部数による配合比は、バリウム化合物の重量部数をBaOで換算する場合に、
4/96<(BaO+SiO)/(Al)<24/76
であることが好ましい。このように混合することで、高い反射特性を有しつつ高い基板強度を有することができるアルミナセラミックとすることができる。
【0036】
また、バリウム化合物粉末、アルミナ粉末、シリカ粉末が混合された状態におけるバリウム化合物(BaO換算)とシリカ(SiO)の配合モル比は、
BaO/SiO=8/1〜8/32
であることが好ましい。このように混合することで、高い反射特性を有しつつ基板の吸湿性を抑えることができるアルミナセラミックとすることができる。
【0037】
次に、バリウム化合物粉末、アルミナ粉末、シリカ粉末が混合された混合材料を成形する。成形においては、この混合材料を粉体成形法やグリーンシート法により成形すれば良い。
【0038】
粉体形成法により成形する場合は、バリウム化合物粉末、アルミナ粉末、シリカ粉末の混合材料を金型等の成形体により厚密して成形する。具体的には、バリウム化合物粉末、アルミナ粉末、シリカ粉末の混合材料と、バインダーと、滑剤と、溶媒とを混合してスラリー状にする。そして、スラリー状にされた混合材料をスプレードライヤー等を用いて造粒する。このとき、造粒粒子の直径は、25μm〜200μmであることが好ましく、30μm〜15μmであることがより好ましい。なお、造粒後においては、造粒粒子を篩い等を使用して分級することが好ましい。これは、粒子の成形体への充填性を良くし、かつ、成形体のクリアランス等に入り込んでバリ等が発生することを抑制するためである。
【0039】
このときに用いるバインダーとしては、特に制限されないが、例えばアクリル系、PVA(ポリビニルアルコール)系等を挙げることができる。また、スラリーの固形分中に対するバインダー樹脂の含有量は、0.5質量%〜5.0質量%であることが好ましく、1.5質量%〜3.5質量%であることがさらに好ましい。
【0040】
また、滑剤としては、特に制限されないが、例えばステアリン酸エマルジョンを挙げることができ、固形分中の含有量は、0.05質量%〜0.5質量%であることが好ましく、0.1質量%〜0.3質量%であることがさらに好ましい。
【0041】
また、溶媒としては、特に限定されないが、上述の様な溶媒を使用する場合には、水を挙げることができる。溶媒の量は、特に制限されないが、例えば、バリウム化合物粉末、アルミナ粉末、シリカ粉末の総量に対して、20質量%〜80質量%であることが好ましく、40質量%〜60質量%であることがより好ましい。
【0042】
また、造粒粒子を金型等の成形体により厚密して成形するとき、造粒粒子を金型の中に充填し、常温にて圧力をかけて成型すれば良い。このとき、造粒粒子に加える圧力は、0.5t/cm〜2.0t/cmであることが好ましく、0.7t/cm〜1.5t/cmであることが更に好ましい。
【0043】
こうして、成形されたバリウム化合物粉末、アルミナ粉末、シリカ粉末が混合された材料を得る。
【0044】
グリーンシート法により成形する場合は、バリウム化合物粉末、アルミナ粉末、シリカ粉末の混合材料に溶剤、バインダー樹脂、分散剤、可塑剤等を加え混練することによりスラリーを得る。
【0045】
バインダー樹脂としては、例えばアクリル系、PVB(ポリビニルブチラール)系等のバインダー樹脂を挙げることができる。また、スラリーの固形分に対するバインダー樹脂の含有量は、4.0質量%〜20質量%であることが好ましく、6.0質量%〜8.0質量%であることが更に好ましい。
【0046】
また、分散剤としては、界面活性剤を使用することができ、固形分に対しての含有率は、0.1質量%〜1.0質量%が好ましく、0.3質量%〜0.5質量%であることが更に好ましい。
【0047】
また、可塑剤としては、例えば、DOP(Dioctyl Phthalate)、DBP(Dibutyl Phthalate)等が使用することができ、固形分中の含有量は、3.0質量%〜15質量%であることが好ましく、4.0質量〜6.0質量%であることがより好ましい。
【0048】
溶剤としては、例えばアルコールやトルエン等を使用することができ、固形分の総合が70質量%〜80質量%となることが好ましい。また、スラリーの粘度は、3,000cps〜30,000cpsとすることが好ましく、10,000cps〜20,000cpsとすることがさらに好ましい。
【0049】
次いで、得られたスラリーを離型剤が塗布されたフィルムに流し込み、乾燥によって溶剤を蒸発させる。このとき、乾燥温度を80℃〜130℃とすることが好ましく、100℃〜120℃とすることがより好ましい。また、乾燥速度は、0.2m/min〜2.0m/minとすることが好ましい。
【0050】
この後、フィルムを剥離することでグリーンシートを生成する。このグリーンシートを、所望の形状にプレス成型機にて打ち抜いて、成形されたバリウム化合物粉末、アルミナ粉末、シリカ粉末が混合された材料を得る。
【0051】
(第1焼成工程P2)
次に、成形されたバリウム化合物粉末、アルミナ粉末、シリカ粉末が混合された材料を焼成する。このときの焼成温度は、1400℃〜1600℃であることが、十分にBa0.808Al1.71Si2.29相を含有するフリットを得る観点から好ましく、1500℃〜1600℃であることがより好ましい。こうして、Ba0.808Al1.71Si2.29相を含有するフリットが焼成される。
【0052】
(粉砕工程P3)
次に、得られたフリットを粉砕する。粉砕においては、得られたフリットを、適当な方法により、例えば、2mm四方程度に粉砕した後、溶媒と共にボールミルに投入して、さらに粉砕する方法が挙げられる。この場合、ボールミルによりフリットを粉砕してフリット粉末とした後、溶媒と共にフリット粉末を取り出して、乾燥させることにより溶媒を除去する。こうして、フリット粉末を得る。
【0053】
(混合工程P4)
次に、アルミナ粉末と、シリカ粉末とを準備して、先に得られたフリット粉末と、アルミナ粉末と、シリカ粉末とを少なくとも混合して、混合材料とする。混合工程P4においては、粉砕工程P3において、所望の粒径にされたそれぞれの粉末を準備して、それぞれの粉末を混合すれば良い。このとき、分散剤や可塑剤や染料等をそれぞれの粉末と共に混合しても良い。
【0054】
なお、粉砕工程P3の少なくとも1部と、混合工程P4の少なくとも1部とを同時に行っても良い。すなわち、それぞれの適当な大きさまで粉砕されたフリットと、アルミナと、シリカとを、例えばボールミルに投入して、それぞれの材料を粉砕しつつ混合しても良い。このとき、分散剤や可塑剤や染料をそれぞれの材料と共に混合する場合においては、分散剤や可塑剤や染料をそれぞれの材料と共にボールミルに投入すれば良い。
【0055】
フリット粉末とアルミナ粉末とシリカ粉末とが混合された状態におけるフリット粉末の平均粒径は、2.0μm〜3.0μmであることが、より高い反射特性を有するアルミナセラミックを得る観点から好ましい。従って、上述のようにフリットと、アルミナと、シリカとを、粉砕しつつ混合する場合においては、準備するフリットの粒径を、上記の粒径よりも大きな粒径とする。一方、所望の粒径にされたそれぞれの粉末を準備して、これ以上粉砕せずに混合する場合においては、粉砕工程P3において、フリット粉末の粒径が、上記の粒径となるように粉砕する。
【0056】
また、アルミナは、上述の準備工程P1において用いたアルミナと同様のアルミナを用いればよい。そして、それぞれの粉末が混合された状態におけるアルミナ粉末の粒径は、準備工程P1において、バリウム化合物粉末、アルミナ粉末、シリカ粉末が混合された状態におけるアルミナ粉末と同様とすればよい。
【0057】
また、シリカは、上述の準備工程P1において用いたシリカと同様のシリカを用いればよい。そして、それぞれの粉末が混合された状態におけるシリカ粉末の粒径は、準備工程P1において、バリウム化合物粉末、アルミナ粉末、シリカ粉末が混合された状態におけるシリカ粉末と同様とすればよい。
【0058】
また、フリット粉末、アルミナ粉末、シリカ粉末の混合後におけるアルミナ、シリカ、バリウム化合物の重量部数による配合比は、バリウム化合物の重量部数をBaOで換算する場合に、
4/96<(BaO+SiO)/(Al)<24/76
であることが好ましい。このように混合することで、より高い反射特性を有しつつ高い基板強度を保つことができるアルミナセラミックとすることができる。
【0059】
また、それぞれの粉末が混合された状態におけるバリウム化合物(BaO換算)とシリカ(SiO)の配合モル比は、
BaO/SiO=8/1〜8/32
であることが好ましい。このように混合することで、より高い反射特性を有しつつ基板の吸湿性を抑えることができるアルミナセラミックとすることができる。
【0060】
さらに、波長300〜400nmの光の反射率に優れたアルミナセラミックを作製するためには、焼結後のアルミナセラミック中のBaとSiのモル比が8/1〜8/32となるようにフリット粉末およびシリカ粉末を配合することが好ましく、8/3〜8/32とすることがより好ましい。
【0061】
(成形工程P5)
次に、フリット粉末、アルミナ粉末、シリカ粉末が混合された材料を成形する。成形においては、図1に示す発光素子搭載用基板1の原型を含むように成形する。例えば、発光素子搭載用基板1の原型が複数連なった形状に成形する。
【0062】
この成形においては、フリット粉末、アルミナ粉末、シリカ粉末が混合された材料を金型等の成形体に厚密して成形する粉体形成法により、粉末が混合された材料を成形すれば良い。この場合においては、フリット粉末、アルミナ粉末、シリカ粉末と、バインダーと、滑剤と、溶媒とを混合してスラリー状にする。そして、スラリー状にされた材料をスプレードライヤー等を用いて造粒する。このとき、造粒された粒子の直径は、25μm〜200μmであることが好ましく、30μm〜15μmであることがより好ましい。なお、造粒後においては、得られた造粒された粒子を準備工程P1において、造粒された粒子を分級したのと同様の理由、手段より、分級することが好ましい。
【0063】
また、このときに用いるバインダーとしては、特に制限されないが、準備工程P1と同様のバインダーを同様の量用いれば良く、滑剤としては、特に制限されないが、準備工程P1と同様の滑剤を同様の量用いれば良く、溶媒としては、特に限定されないが、準備工程P1と同様の溶媒を同様の量用いれば良い。
【0064】
また、造粒されたフリット粉末、アルミナ粉末、シリカ粉末が混合された材料を金型等の成形体により厚密するときにおいては、準備工程P1において、バリウム化合物粉末、アルミナ粉末、シリカ粉末が混合された材料を厚密したのと同様に行えばよい。
【0065】
こうして、成形されたフリット粉末、アルミナ粉末、シリカ粉末の混合材料を得る。
【0066】
(第2焼成工程P6)
次に、成形されたフリット粉末、アルミナ粉末、シリカ粉末の混合材料を焼成する。この時の焼成温度は、第1焼成温度よりも低く、1450℃〜1600℃であることが好ましく、さらに1520℃〜1590℃であることがより好ましい。
【0067】
こうして、図1に示す発光素子搭載用基板1を含むアルミナセラミックを得る。
【0068】
次に得られたアルミナセラミックの不要部分を削ったり、複数の発光素子搭載用基板1に分割する。こうして図1に示す発光素子搭載用基板1を得る。
【0069】
以上説明したように、本実施形態のアルミナセラミックの製造方法によれば、一旦、第1焼成工程P2において、Ba0.808Al1.71Si2.29相を含有するフリットを焼成する。このとき、バリウム化合物に起因するガスが発生し、フリット内にボイド等が生じる場合があるが、このフリットは、第1焼成工程P2後の粉砕工程P3において粉砕されるため、ボイド等が発生しても問題とならない。そして、混合工程P4において、フリットを粉砕したフリット粉末に、アルミナ粉末、シリカ粉末を混合し、成形工程P5において成形して、第2焼成工程P6において、成形した混合材料を焼成して、アルミナセラミック得る。この第2焼成工程P6においては、第1焼成工程P2において、既にバリウム化合物に起因するガスが発生しているため、新たなガスの発生を抑制することができる。従って、第2焼成工程P6において、ボイドや不要のポーラスな部分が生じることを抑制して、所望の空隙率を有するアルミナセラミックを得ることができる。従って、ソリや抗折強度の低下が抑制されたアルミナセラミックを得ることができる。
【0070】
さらに第2焼成工程P6は、Ba0.808Al1.71Si2.29相を含有するフリット粉末が混合された混合材料を焼成するため、従来のようにバリウム化合物粉末と、アルミナ粉末と、シリカ粉末とが混合された混合粉末を焼成してBa0.808Al1.71Si2.29相を含有するアルミナセラミックを得る場合よりも、焼成温度を低くすることができる。これに対して、第1焼成工程P2は、上記の従来のアルミナセラミックの焼成温度と同様とされ、一般に高価である高温炉を必要する。しかし、第1焼成工程P2において、従来のアルミナセラミックを製造する場合と同じ規模の高温炉を使用して、従来のアルミナセラミックと同量のフリットを焼成することにより、最終的に従来のアルミナセラミックよりも量の多いアルミナセラミックを製造することができる。別言すれば、従来と同量のアルミナセラミックを製造する場合において、規模の小さい高温炉とすることができ、安価にBa0.808Al1.71Si2.29相を含有するアルミナセラミックを製造することができる。
【0071】
また、このアルミナセラミックの製造方法により、Ba0.808Al1.71Si2.29相を含有するアルミナセラミック粒子と、Baを含む相を含有しないアルミナセラミック粒子とが分散しているアルミナセラミックを得ることができ、このようなアルミナセラミックによれば、上述のように、優れた光の反射特性を得ることができる。
【0072】
以上、本発明について、実施形態を例に説明したが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0073】
例えば、上記実施形態においては、成形工程P5において、図1に示す発光素子搭載用基板1の原型を含むように、フリット粉末、アルミナ粉末、シリカ粉末が混合された材料を成形するものとしたが、アルミナセラミックを発光素子搭載用基板1として用いない場合には、他の形状に成型しても良い。例えば、成形工程P5において、フリット粉末、アルミナ粉末、シリカ粉末が混合された材料をシート状に成形することを挙げることができる。このように材料とシート状に成形する場合においては、準備工程P1において、バリウム化合物粉末、アルミナ粉末、シリカ粉末が混合された材料をシート状に成形したのと同様にして成形すれば良い。
【実施例】
【0074】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明の内容をより具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものでは無い。
【0075】
<実施例1>
まず、フリットの原料として、高純度の炭酸バリウム(製品名:LSR、日本化学工業株式会社製)を31.0重量部(52.7kg)、低ソーダアルミナ(製品名:HQ−C、住友化学株式会社製)を48.0重量部(81.6kg)、及び、合成球状シリカ(製品名:アドマファインSO−C2、株式会社アドマテックス製)を21.0重量部(35.7kg)準備した。次に、炭酸バリウム、低ソーダアルミナ、合成球状シリカを容量が200リットルのアルミナライナーのボールミルに投入した。このとき上記材料と共に、分散剤としてソルビタンセスキオレエート(製品名:ソルゲン30、第一工業薬品株式会社製)を0.4重量部(0.68kg)、可塑剤(DOP)を5.0重量部(8.5kg)、染料(製品名:アミニールブルーE−2GL、田岡化学工業株式会社製)を0.02重量部(0.035kg)、及び、溶媒として混合有機溶剤(トルエン50重量%、エタノール50重量%)を33.2重量部(56.5kg)投入した。そして、毎分26回転で24時間混合した。
【0076】
次にポリビニルブチラール(製品名:エスレックBL−S、及び、BM−SZの混合物、積水化学工業株式会社製)を10.0重量部(17.0kg)投入し、毎分26回転で更に24時間混合して、青色の懸濁体を得た。
【0077】
得られた懸濁体をドクターブレード法にて塗工し、幅30cm、長さ1m、厚さ約0.34mmのフリット用グリーンシートを複数作製した。こうして得られた複数のグリーンシートをロール状に丸めて、アルミナ製の匣鉢に隙間無く並べ、焼成炉(装置名:HST−30−17F、中外プロックス社製)に設置し、1518℃で40分間、大気焼成してフリットを得た。
【0078】
次に、得られたフリットを適当な道具を用いて、約2mm四方に粗く粉砕して、容量が2リットルのアルミナ製ポットミルに0.4446kg投入した。また、溶媒として混合有機溶剤(トルエン50重量%、エタノール50重量%)を0.2966kg投入し(固形分60%)、毎分50回転で96時間混合粉砕した。その後、ステンレス製のバットに中身を出して溶剤を乾燥させ、フリット粉末を回収した。回収したフリット粉末を、粒度分布測定装置(日機装社製:マイクロトラックMT−3000)で測定したところ、D50は2.6μmであった。
【0079】
次に、先に得られたフリット粉末を25.5重量部(240.0g)、低ソーダアルミナ(製品名:HQ−C、住友化学株式会社製)を73.8重量部(693.5g)、及び、合成球状シリカ(製品名:アドマファインSO−C2、株式会社アドマテックス製)を0.6重量部(6.0g)準備し、容量が2リットルのアルミナ製のポットミルに投入した。このとき分散剤としてソルビタンセスキオレエート(製品名:ソルゲン30、第一工業薬品株式会社製)を0.4重量部(3.8g)、可塑剤(DOP)を2.5重量部(23.5g)、染料(製品名:アミニールブルーE−2GL、田岡化学工業株式会社製)を0.020重量部(0.2g)、及び、溶媒として混合有機溶剤(トルエン50重量%、エタノール50重量%)を31.0重量部(291.0g)投入した。そして、毎分50回転で24時間混合した。
【0080】
次にポリビニルブチラール(製品名:エスレックBL−S、及び、BM−SZの混合物、積水化学工業株式会社製)をそれぞれ5.0重量部(47.0g)投入した。そして、毎分50回転で更に24時間混合して、青色の懸濁体を得た。
【0081】
次に、得られた懸濁体を2リットルのディスカップに取り出し、0.04MPaで10分間攪拌脱泡した。脱泡後の粘度は、B型粘度計を用いて、ローター番号4、ローター回転数6rpm、温度4℃の条件で測定したところ、15,000cpsであった。
【0082】
次に、脱泡した懸濁体をドクターブレード法にて塗工し、グリーンシートとした。このときドクターブレードとキャリアフィルムのギャップを0.850mm、ラインスピードは0.1m/minとし、乾燥温度を第一ゾーンが50℃、第二ゾーンが100℃とし、風量を第一ゾーンが4.0m/秒、第二ゾーンが5.6m/秒とした。塗工したグリーンシートは、キャリアフィルムから注意深く剥離し、約240mmの長さで切断して回収した。グリーンシートの先頭における厚さを計測したところ、約880μmであった。なお、グリーンシート表面には塗工スジおよび気泡などの異常は見られなかった。
【0083】
次に、得られたグリーンシートの厚さを計測し、厚さが640μmから760μmの範囲のグリーンシートを切り出した。そして、切り出したグリーンシートをプレス機にて成形した。成形時においては、打ち抜き外寸を縦72mm、横84mmとした。
【0084】
次に、成形したグリーンシートをアルミナ製の棚板の上に乾燥面とキャリア面が交互に重なるように3枚組みで重ねて、焼成炉(製品名:HST−30−17F、中外プロックス社製)に設置し、1580℃で40分間大気焼成した。こうして、実施例1のアルミナセラミックを得た。このアルミナセラミックにおける、アルミナ、シリカ、バリウムの重量部数による配合比は、バリウムの重量部数をBaOで換算する場合に、Al:SiO:BaO=85.7%:4.1%:10.2%となる。
【0085】
<比較例1>
まず、高純度炭酸バリウム(製品名:LSR、日本化学工業株式会社製)を8.0重量部(80.0g)準備した。そして、容量が2リットルのアルミナ製のポットミルに、この高純度炭酸バリウムを、溶媒として混合有機溶剤(トルエン50重量%、エタノール50重量%)を13.8重量部(138.2g)と共に投入し、毎分50回転で10時間混合した。
【0086】
次に、低ソーダアルミナ(製品名:HQ−C、住友化学株式会社製)を68.8重量部(688.2g)、微粒子アルミナ(製品名:AES−12、住友化学株式会社製)を17.2重量部(171.8g)、及び、合成球状シリカ(製品名:アドマファインSO−C2、株式会社アドマテックス製)を6.0重量部(60.0g)準備した。そして、準備した低ソーダアルミナ、微粒子アルミナ、及び、合成球状シリカと共に、分散剤としてソルビタンセスキオレエート(製品名:ソルゲン30、第一工業薬品株式会社製)を0.4重量部(4.0g)と、可塑剤としてビス(2−エチルヘキサン酸)トリエチレングリコール(製品名:G−260、住友化学株式会社製)を5.0重量部(50.0g)、染料(製品名:アミニールブルーE−2GL、田岡化学工業株式会社製)を0.020重量部(0.2g)、及び、溶媒として混合有機溶剤(トルエン50重量%、エタノール50重量%)を20.7重量部(207.4g)ポットミルに投入し、毎分50回転で15時間混合した。
【0087】
次に、ポリビニルブチラール(製品名:エスレックBL−S、及び、BM−SZの混合物、何れも積水化学工業株式会社製)を9.0重量部(90.0g)投入し、毎分50回転で24時間更に混合して、青色の懸濁体を得た。
【0088】
得られた懸濁体は、容量が2リットルのディスカップに取り出し、0.04MPaで10分間攪拌脱泡した。脱泡後の粘度は、B型粘度計を用いて、ローター番号4、ローター回転数6rpm、泥漿温度11℃の条件で測定したところ、20,500cpsであった。
【0089】
次に脱泡した懸濁体をドクターブレード法にて塗工し、グリーンシートとした。このとき、ドクターブレードとキャリアフィルムのギャップは1.200mm、ラインスピードは0.1m/min、乾燥温度は第一ゾーンが50℃、第二ゾーンが100℃、風量は第一ゾーンが4.0m/秒、第二ゾーンが5.6m/秒とした。そして、塗工したグリーンシートをキャリアフィルムから注意深く剥離し、約240mmの長さで切断して回収した。このグリーンシートの先頭の厚さを計測したところ、約970μmであった。このグリーンシートの表面には塗工スジおよび気泡などの異常は見られなかった。
【0090】
次に、得られたグリーンシートを実施例1と同様に成形した。そして、焼成温度が1615℃であることを除き、実施例1と同様にグリーンシートを焼成した。こうして、比較例1のアルミナセラミックを得た。このアルミナセラミックにおける、アルミナ、シリカ、バリウムの重量部数による配合比は、バリウムの重量部数をBaOで換算する場合に、実施例1と同様にして、Al:SiO:BaO=85.7%:4.1%:10.2%となる。
【0091】
<吸水率測定>
吸水率測定は、電気絶縁用セラミック材料試験であるJIS C2141(2002)の吸水率試験として定められた手順に準じて、次の手順により行った。
【0092】
まず、実施例1、比較例1のアルミナセラミックを110℃に設定した恒温槽中で乾燥し、恒量に達したときに恒温槽から取り出し、デシケータに入れて室温に戻した後、はかりで質量を量り、乾燥重量mとする。
【0093】
次に、乾燥、恒量したアルミナセラミックを水の入った金属容器の中に入れ30分間煮沸する。このとき、水はアルミナセラミックを充分に浸せるだけの量とする。また、アルミナセラミックが金属容器の底から1cm程度上に位置するように、適当な治具を用いる。
【0094】
次に、アルミナセラミックを水中から取り出し、湿ったガーゼで手早く表面の水滴をぬぐった後、質量を量り、飽水試験基板の質量mとする。
【0095】
吸水率(%)は、{(m−m)/m}×100を計算して求める。
【0096】
この結果、実施例1のアルミナセラミックの吸水率は、0.001%であり、比較例1のアルミナセラミックの吸水率は、0.004%であり、実施例1、比較例1のアルミナセラミックに大きな吸水率の差はなかった。
【0097】
<反射率評価>
実施例1及び比較例1で得られたアルミナセラミックの反射率の測定を行った。反射率の測定には、日立製作所社製の分光光度計U−4000を用い、250nm〜800nmの波長領域の光に対する反射率を測定した。このとき測定条件として、バンドパスを5nmとし、スキャンスピードを300nm/minとした。
【0098】
その結果を図3に示す。図3は、各波長における実施例1及び比較例1の反射率を示す図である。なお、図3において、反射率を示す数値は、硫酸バリウムから成る標準白板の反射率を100とした場合の相対値を示す。図3に示す通り、実施例1のアルミナセラミックと比較例1のアルミナセラミックは、上記のように、吸水率がさほど変わらないにもかかわらず、実施例1のアルミナセラミックは、比較例1のアルミナセラミックと比べて、測定した全ての波長領域において、高い反射率を示した。
【0099】
<抗折強度測定>
オリエンテック製卓上型材料試験機STA−1225にて3点曲げ指示具を用いて測定した。測定条件としては、試験速度を0.5mm/min、荷重フルスケール50N、支点間距離30mmとした。
【0100】
その結果、実施例1の抗折強度は、303.5MPaとなり、比較例1の抗折強度は、284.1MPaとなり、実施例1のアルミナセラミックと比較例1のアルミナセラミックは、上記のように、吸水率がさほど変わらないにもかかわらず、実施例1のアルミナセラミックは、比較例1のアルミナセラミックよりも高い抗折強度であることが分かった。これは、比較例1のアルミナセラミックにおいては、焼成時に発生するガスにより、抗折強度に影響するボイドが生じているためであると考えられる。
【0101】
<ソリの測定>
東京精密社製の測定装置(商品名:E−RC−S01B)を用いて実施例1及び比較例1のアルミナセラミックのソリを測定した。測定部位は、左右の端部からそれぞれ7mmにおける縦方向のソリ、アルミナセラミックの縦方向における上端部、下端部からそれぞれ7mmにおける横方向のソリを、アルミナセラミックの表面側、裏面側について測定した。その結果を表1に示す。
【表1】

【0102】
表1に示すように、実施例1のアルミナセラミックは、比較例1のアルミナセラミックよりもソリが小さく、設計値に近い外形となることが分かった。
【0103】
以上より、本発明のアルミナセラミックによれば、従来のアルミナセラミックよりも反射率が高いことが確認できた。これは、実施例1のアルミナセラミックは、全体的にBa0.808Al1.71Si2.29相を含有するアルミナセラミック粒子と、Baを含む相を含有しないアルミナセラミック粒子とが分散しているためであると考えられる。さらに、実施例1のアルミナセラミックは、抗折強度が高く、ソリが小さいことが確認できた。これは、実施例1のアルミナセラミックの製造方法によれば、内部に意図しないボイドが生じることを抑制できるためと考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0104】
本発明によれば、内部にボイドが生じにくい、Ba0.808Al1.71Si2.29相を含有するアルミナセラミックの製造方法が提供される。
【符号の説明】
【0105】
1・・・発光素子搭載用基板
11・・・基台
12・・・枠体
13・・・開口
P1・・・準備工程
P2・・・焼成工程
P3・・・粉砕工程
P4・・・混合工程
P5・・・成形工程
P6・・・焼成工程

【特許請求の範囲】
【請求項1】
Ba0.808Al1.71Si2.29相を含有するフリットを焼成する第1焼成工程と、
前記フリットを粉砕して、Ba0.808Al1.71Si2.29相を含有するアルミナセラミック粒子を含むフリット粉末とする粉砕工程と、
少なくとも、前記フリット粉末と、アルミナを含有するアルミナ粉末と、シリカを含有するシリカ粉末とを混合し、混合材料とする混合工程と、
前記混合材料を成形する成形工程と、
成形された前記混合材料を焼結する第2焼成工程と、
を備えることを特徴とするアルミナセラミックの製造方法。
【請求項2】
前記第1焼成工程は、少なくとも、アルミナと、シリカと、バリウム化合物とを含有する混合材料を焼成し、前記第1焼成工程に用いられる前記混合材料における、前記アルミナ、前記シリカ、前記バリウム化合物の重量部数による配合比が、前記バリウム化合物の重量部数をBaOで換算する場合に、
(BaO+SiO)/(Al)=10/18〜10/22
であることを特徴とする請求項1に記載のアルミナセラミックの製造方法。
【請求項3】
前記第1焼成工程に用いられる前記混合材料における、前記シリカ、前記バリウム化合物の重量部数による配合比が、前記バリウム化合物の重量部数をBaOで換算する場合に、
(BaO/SiO)=8/1〜8/12
であることを特徴とする請求項2に記載のアルミナセラミックの製造方法。
【請求項4】
前記バリウム化合物が炭酸バリウムであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のアルミナセラミックの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−25623(P2012−25623A)
【公開日】平成24年2月9日(2012.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−165824(P2010−165824)
【出願日】平成22年7月23日(2010.7.23)
【出願人】(000004592)日本カーバイド工業株式会社 (165)
【Fターム(参考)】