説明

インソール

【解決手段】空隙率が50〜80%の連続気孔を有する高分子多孔質体により形成された足裏と接する面をなす表皮材と、熱可塑性樹脂、熱可塑性エラストマー及びゴムから選ばれる高分子材料により形成された靴の内底面と接する面をなす基材とが積層され、表皮材の硬さより基材の硬さが硬いインソール。
【効果】通気性、体圧分散性に優れ、履き心地(フィット性)が良好であると共に、長期使用において皺になりにくい形状安定性に優れたものである。特に、基材を発泡体高分子材料で構成したものでは、更に良好なクッション性が得られ、連続気孔を有する発泡体高分子材料を用いれば、更に良好な通気性も得られる。また、基材をその熱成形と共に表皮材に接着すること、又は表皮材と基材とを熱融着により接着することにより積層すれば、表皮材と基材との接着に接着剤等を用いずに簡略化した製造工程で製造が可能であり、安全面、衛生面にも優れたものとなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通気性、体圧分散性に優れ、履き心地(フィット性)が良好であると共に、長期使用において皺になりにくい形状安定性に優れたインソールに関する。
【背景技術】
【0002】
人間の足は個人差が大きく、足の形状やサイズは千差万別である。既成靴は万人にフィットするものではないため、既成靴と個々人の足との差を補う手段として、インソール(中敷き)が用いられている。靴内にインソールを用いる場合、靴の内底部に代わってインソールの上面部が足を直接サポートすることになるため、インソール自体にも体圧分散性や履き心地(フィット性)が要求される。また、インソール自体が靴の中で撚れたり、皺になったりすると、インソールとしての機能を果たさなくなるだけでなく、靴擦れ等を引き起こす原因となってしまう。
【0003】
体圧分散性やフィット性を求めれば、インソールの材質にはある程度柔らかい材料が必要である反面、形状安定性を求めれば、逆に硬い材料が必要である。また、インソール自体の厚さを厚くすれば、形状安定性を高めることが可能ではあるが、インソールとして許容される厚さには、靴内部の足を収容する容積や履き心地の観点から自ずと上限は決まるため、インソールを厚くすることには限界がある。
【0004】
足へのフィット性のよいインソールとして、特開2003−38204号公報(特許文献1)には、連続気泡多孔性材料で全体が構成されたインソールが示されているが、このインソールでは、インソールが撚れたり皺になったりする変形が、特に厚さが薄い場合には避けられず、形状を長期間の使用に亘って安定に保つことが難しいものであった。
【0005】
なお、この発明に関する先行技術文献情報としては以下のものがある。
【0006】
【特許文献1】特開2003−38204号公報
【特許文献2】特開2004−166810号公報
【特許文献3】特開2004−277633号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記問題を解決するためになされたもので、通気性、体圧分散性に優れ、履き心地(フィット性)が良好であると共に、長期使用において皺になりにくい形状安定性に優れたインソールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
インソールには、上述したような体圧分散性や履き心地と共に、靴内での蒸れを防止するために通気性が要求される。インソールに通気性を与えるためには、インソールを通気性を有する材料で構成することが必要であるが、靴内の湿度上昇を安定的に抑えるためには、通気性を与えるインソールが変形して靴内の所定位置からずれることがないようにすることも重要である。
【0009】
そこで、本発明者は、上記目的を達成するため鋭意検討を重ねた結果、インソールを、空隙率が50〜80%の連続気孔を有する高分子多孔質体により形成された表皮材と、熱可塑性樹脂、熱可塑性エラストマー及びゴムから選ばれる高分子材料により形成された基材とを積層して構成し、表皮材を足裏と接する側、基材を靴の内底面と接する側とすると共に、基材の硬さを表皮材の硬さより高くすることにより、高分子多孔質体により体圧分散性や履き心地を確保しつつインソールの形状安定性が向上して、長期間に亘って変形しにくいものとなり、更に、高分子多孔質体による通気性を長期間に亘って安定的に維持することができることを知見した。
【0010】
また、基材を発泡体高分子材料で構成することにより、更に良好なクッション性が得られ、連続気孔を有する発泡体高分子材料を用いれば、更に良好な通気性も得られること、更には、基材をその熱成形と共に表皮材に接着、又は表皮材と基材とを熱融着により接着することにより積層すれば、表皮材と基材との接着に接着剤等を用いる必要がなく、製造工程が簡略化できると共に、接着剤由来のVOC(揮発性有機物質)も発生しないため、安全面、衛生面にも優れたものとなることを知見し、本発明をなすに至った。
【0011】
即ち、本発明は、以下のインソールを提供する。
[1] 空隙率が50〜80%の連続気孔を有する高分子多孔質体により形成された足裏と接する面をなす表皮材と、熱可塑性樹脂、熱可塑性エラストマー及びゴムから選ばれる高分子材料により形成された靴の内底面と接する面をなす基材とが積層されてなり、上記表皮材の硬さより上記基材の硬さが硬いことを特徴とするインソール。
[2] 上記基材を構成する高分子材料が発泡体であることを特徴とする[1]記載のインソール。
[3] 上記発泡体が連続気孔を有する発泡体であることを特徴とする[2]記載のインソール。
[4] 上記基材が、該基材の熱成形と共に上記表皮材に接着されてなることを特徴とする[1]乃至[3]のいずれかに記載のインソール。
[5] 上記表皮材及び基材が熱融着により接着されていることを特徴とする[1]乃至[3]のいずれかに記載のインソール。
[6] 上記表皮材側から測定したインソールのデュロメータタイプE硬さが10〜100であり、かつ上記表皮材のデュロメータタイプE硬さより高いことを特徴とする[1]乃至[5]のいずれかに記載のインソール。
[7] 上記表皮材のデュロメータタイプE硬さが8〜80であることを特徴とする[6]記載のインソール。
[8] 上記基材のデュロメータタイプE硬さが10〜100であることを特徴とする[6]又は[7]記載のインソール。
[9] インソールの最薄部における上記表皮材の厚さが0.5〜6mm、上記基材の厚さが1〜5mmであり、かつ上記最薄部におけるインソールの厚さが1.5〜11mmであることを特徴とする[1]乃至[8]のいずれかに記載のインソール。
[10] 上記高分子多孔質体が、熱可塑性樹脂及び/又は熱可塑性エラストマーからなる高分子材料と気孔形成剤とを混合分散させた充実成形体から、上記気孔形成剤を、上記熱可塑性樹脂及び/又は熱可塑性エラストマーは溶解しないが上記気孔形成剤は溶解する溶媒で溶出させることにより連続気孔を形成したものであることを特徴とする[1]乃至[9]のいずれかに記載のインソール。
[11] 上記高分子多孔質体を構成する高分子材料がスチレン系エラストマーとポリプロピレンとを含み、かつ上記気孔形成剤がペンタエリスリトールを含むことを特徴とする[1]乃至[10]のいずれか1項記載のインソール。
[12] 足裏全面をサポートするフルインソールであることを特徴とする[1]乃至[11]のいずれか1項記載のインソール。
【発明の効果】
【0012】
本発明のインソールは、通気性、体圧分散性に優れ、履き心地(フィット性)が良好であると共に、長期使用において皺になりにくい形状安定性に優れたものである。特に、基材を発泡体高分子材料で構成したものでは、更に良好なクッション性が得られ、連続気孔を有する発泡体高分子材料を用いれば、更に良好な通気性も得られる。また、基材をその熱成形と共に表皮材に接着すること、又は表皮材と基材とを熱融着により接着することにより積層すれば、表皮材と基材との接着に接着剤等を用いずに簡略化した製造工程で製造が可能であり、安全面、衛生面にも優れたものとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明について更に詳しく説明する。
本発明のインソールは、例えば、図1に示されるようなインソール1が挙げられ、このインソール1は、基材12上に表皮材11が例えば熱融着により接着されて積層されたものや、図2に示されるようなインソール1、即ち、基材12上に接着層13を介して表皮材11が積層されたものが挙げられ、図示されるような、足裏全面をサポートするフルインソールとして特に好適である。
【0014】
本発明において、インソールは、空隙率が50〜80%の連続気孔を有する高分子多孔質体により形成された足裏と接する面をなす表皮材と、熱可塑性樹脂、熱可塑性エラストマー及びゴムから選ばれる高分子材料により形成された靴の内底面と接する面をなす基材とが積層され、基材の硬さは表皮材の硬さより高くなっている。
【0015】
本発明の表皮材は、空隙率が50〜80%の連続気孔を有する高分子多孔質体で構成され、この高分子多孔質体が良好な通気性を与え、この通気性を有する表皮材が足裏に接するようになっている。空隙率が50%未満では固い感触となって足裏とのフィット性が低下し、80%を超えると形状安定性が低下し、また、基材の固さが直接足裏に伝わるようになって、フィット性も悪くなる。
【0016】
特に、この高分子多孔質体を、熱可塑性樹脂及び/又は熱可塑性エラストマーからなる高分子材料と気孔形成剤とを混合分散させた充実成形体から、上記気孔形成剤を、上記熱可塑性樹脂及び/又は熱可塑性エラストマーは溶解しないが上記気孔形成剤は溶解する溶媒で溶出させることにより連続気孔を形成したものとすれば、この材料は良好な粘弾性を与えることから、特に体圧分散性やフィット性がよく、履き心地が更に良好なものとなる。また、この場合、足と直接接する表皮材を化学発泡剤や加硫剤などを含まない材料で構成することができるため、衛生性もよい。
【0017】
一方、この表皮材のみでは十分な厚さがあるとよいが、表皮材の厚さが薄い場合、皺になってインソールとミッドソールと間でずれが生じやすい。そこで、表皮材を、熱可塑性樹脂、熱可塑性エラストマー及びゴムから選ばれる高分子材料により形成された、表皮材より硬さの高い基材と積層し、この基材を靴の内底面に接するように構成する。これにより、本発明のインソールは、表皮材の上述した特性を有効に機能させつつ、インソール全体の厚さを厚くすることなく、長期間の使用においても形状を安定的に保つことができる。
【0018】
本発明においては、基材を表皮材より硬さが硬いものとして構成するが、表皮材側から測定したインソールのデュロメータタイプE硬さ(JIS K 6253による(以下同じ))が、表皮材のデュロメータタイプE硬さより高いことが好ましく、1〜90、更に2〜50、特に5〜30高いことが好ましい。また、インソールのデュロメータタイプE硬さは10〜100、特に20〜90であることが好ましい。この場合、インソールの硬さは、表皮材と基材とが積層されたインソールに対して、デュロメータの押針を表皮材側からインソールの厚さ方向に押しあてて測定したときの硬さであり、表皮材の硬さは、表皮材のみについて、デュロメータの押針を表皮材の厚さ方向に押しあてて測定したときの硬さである。
【0019】
また、表皮材及び基材の硬さは特に限定されるものではないが、表皮材のデュロメータタイプE硬さは8〜80、特に10〜70であることが好ましく、基材のデュロメータタイプE硬さは10〜100、特に20〜100であることが好ましい。なお、基材の硬さは、基材のみについて、デュロメータの押針を基材の厚さ方向に押しあてて測定したときの硬さである。
【0020】
本発明のインソールの厚さは、各々の硬さによって適宜選定され、特に限定されるものではないが、インソール使用時の変形に対して最も弱い部分であるインソールの最薄部において、その厚さが1.5〜11mm、特に3〜10mmであることが好ましい。この場合、インソールの上記厚さ範囲内において、表皮材の厚さを0.5〜6mm、特に1〜5mmとし、基材の厚さを1〜5mm、特に2〜5mmとすることができる。
【0021】
本発明のインソールにおいて、表皮材は、空隙率が50〜80%の連続気孔を有する高分子多孔質体で形成される。この高分子多孔質体は、例えば、熱可塑性樹脂及び/又は熱可塑性エラストマーからなる高分子材料と気孔形成剤とを混合分散させた充実成形体から、上記気孔形成剤を、上記熱可塑性樹脂及び/又は熱可塑性エラストマーは溶解しないが上記気孔形成剤は溶解する溶媒で溶出させることにより形成したものが好ましい。
【0022】
この場合、熱可塑性樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリオキシメチレン、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、AS樹脂、ABS樹脂、EVA樹脂、ポリメタクリル酸メチル、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニリデン、エチレン−α−オレフィン共重合体、ナイロン6、ナイロン6,6等のポリアミド、ポリカーボネート、テトラフルオロエチレンとヘキサフルオロプロピレンとビニリデンフロライドとの共重合体等のフッ素樹脂などが挙げられる。これらの熱可塑性樹脂の中でも、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリオキシメチレン、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレンが特に好ましい。熱可塑性樹脂は、1種類だけで用いても2種類以上をブレンドして用いてもよい。
【0023】
一方、熱可塑性エラストマーとしては、例えば、スチレン系エラストマー、オレフィン系エラストマー、ウレタン系エラストマー、エステル系エラストマー、フッ素系エラストマー、シリコーン系エラストマー、ポリアミド系エラストマーなどが挙げられる。
【0024】
具体的には、スチレン系エラストマーとして、ブタジエンとスチレンとの共重合体やイソプレンとスチレンとの共重合体など、オレフィン系エラストマーとして、エチレン・プロピレン・ジエン(EPDM)とポリプロピレンとの共重合体など、ウレタン系エラストマーとして、短鎖グリコールが結合したジイソシアナートと長鎖ポリオールが結合したジイソシアナートとの共重合体など、エステル系エラストマーとして、ポリエチレンテレフタレートと高分子量ポリエチレンエーテルグリコールとの共重合体やポリブチレンテレフタレートと高分子量ポリアルキレンエーテルグリコールとの共重合体など、ポリアミド系エラストマーとしてナイロン6とポリエーテルとの共重合体などの親水性のものを使用することができるが、吸水膨潤抑制の観点から、これらの中でも水と接した場合において膨潤性の低いもの、例えば、スチレン系エラストマー、オレフィン系エラストマーが好ましい。これらの熱可塑性エラストマーは、1種類だけで用いても2種類以上をブレンドして用いてもよい。
【0025】
上記高分子材料としては、特に、スチレン系エラストマーなどの熱可塑性エラストマーとポリプロピレンなどの熱可塑性樹脂との混合物が好ましい。この場合、それらの混合比はクッション性に富むソフトタイプのものとするため、熱可塑性エラストマー:熱可塑性樹脂=99:1〜40:60(質量比)、特に熱可塑性エラストマー:熱可塑性樹脂=98:2〜60:40(質量比)の比で用いることが好ましい。
【0026】
本発明において気孔形成剤は、高分子多孔質体の気孔を形成するためのものであり、気孔形成剤は、常温で固体であって、成形温度で融解するものを含んでいることが好ましい。このような気孔形成剤の融点は、高分子多孔質体の骨格部分を形成する高分子材料の種類により成形温度が異なるため一概には言えないが、40〜300℃、特に150〜300℃であることが好ましい。また、気孔形成剤としては、成形時にその一部のみが融解する(固体部分が残存する)融点のものを用いることが好ましい。このようなものを用いることにより、得られる高分子多孔質体シートの気孔形状が一定となり、気孔を再現性よく形成することができる。
【0027】
更に、充実成形体中の気孔形成剤は、高分子材料は溶解しないが気孔形成剤は溶解する溶媒で溶出させるため、気孔形成剤を溶解させる溶媒に対する高分子材料及び気孔形成剤の溶解性を考慮して選択する必要がある。
【0028】
このような気孔形成剤としては、ペンタエリスリトール、L−エリスリトール、D−エリスリトール、meso−エリスリトール、ピナコール等の炭素数2〜5程度の多価アルコールや尿素などが挙げられる。これらのうちでは、多価アルコールが好ましく、特にペンタエリスリトールを主成分とする多価アルコールが好ましい。多価アルコールを用いることにより、洗浄工程に用いる溶媒として水を選択することが可能となる。
【0029】
また、ペンタエリスリトール自体の融点は250℃であるが、一般にペンタエリスリトールとして市販されているものは、2量体、3量体等の不純物を含んでいるため、その融点は180〜250℃程度の範囲で幅を有しており、広い成形温度範囲を設定することができる。従って、このようなペンタエリスリトールを用いることにより、高分子材料の選択範囲を広くでき、しかも成形後の固化が速いので、充実成形体の冷却時間が短くなり、生産性が優れたものとなるため好適である。
【0030】
なお、成形材料中の気孔形成剤の配合量は、製造しようとする高分子多孔質体の空隙率に応じて適宜選定することができ、配合する気孔形成剤の含有量により空隙率を制御することができる。例えば、空隙率を50%とするには、全成形材料中の気孔形成剤の割合を約50容量%とすればよいが、連続気孔の高分子多孔質体を得るためには、全成形材料中の気孔形成剤の割合を50容量%以上、特に60容量%以上とすることが好ましく、これにより空隙率が50容量%以上、特に60容量%以上の連続気孔を有する高分子多孔質体を得ることができる。また、全成形材料中の気孔形成剤の割合は、80容量%以下、特に75容量%以下とすることが好ましく、これにより空隙率を80容量%以下、特に75容量%以下とすることができる。
【0031】
また、成形材料中には、高分子材料と気孔形成剤との他に、アクリル変性ポリテトラフルオロエチレン等の高分子改質剤を配合することができる。このアクリル変性ポリテトラフルオロエチレンとしては、メタブレンA3000(三菱レイヨン社製)等の市販品を使用し得、例えば、高分子材料100質量部に対して2〜50質量部、特に5〜15質量部程度配合することができる。
【0032】
更に、必要に応じて、滑剤、加工助剤、老化防止剤、可塑剤、熱安定剤、増粘剤、難燃剤、抗酸化剤(酸化防止剤)、紫外線吸収剤、着色剤、帯電防止剤、強化材などの添加剤を添加してもよい。なお、このような添加剤は、上記高分子材料100質量部に対して50質量部以下の範囲で添加することが好ましい。
【0033】
本発明において、高分子多孔質体は、高分子材料、気孔形成剤、必要に応じて添加される高分子改質剤、添加剤などを混合分散させて得た成形材料(コンパウンド)を射出成形、押出成形、圧縮成形、注型成形などの方法で所定の形状(例えば、靴の内底面に相当する足形)に成形して充実成形体を得、この充実成形体中の気孔形成剤を溶媒で溶出させることにより得ることができる。また、シート状の充実成形体を成形して、気孔成形剤の溶出前又は溶出後のいずれかに所定の形状に切り出してもよい。
【0034】
上記成形材料中の各成分の混合分散は、オープンロール、ニーダー、インテンシブミキサー、単軸スクリュー押出機、二軸スクリュー押出機などの装置を使用して、混練、混合して分散させることが好ましい。また、混練に先立ち、各構成成分を、ヘンシェルミキサー、V字型混合機、ボールミル、リボンブレンダー、タンブルミキサー等の混合機を用いて予め混合してもよい。
【0035】
次に、以上のようにして成形された充実成形体を、高分子材料は溶解しないが気孔形成剤は溶解する溶媒で溶出させることにより高分子多孔質体が得られる。
【0036】
上記溶媒としては、高分子材料及び気孔形成剤の種類によって適宜選択され、例えば水、グリコール、グリコールエーテル、高分子量アルコール、脂肪酸、脂肪酸エステル、グリコールエステル、鉱油、石油、アルコールエトキシレート、ポリオキシエチレンエステル、グリセロール、グリセロールエステルなどを挙げることができる。溶媒として有機溶剤などを使用した場合、後処理などの付帯設備が必要となるので、そのような設備が不要となる水を溶媒として使用できるような高分子材料と気孔形成剤の組み合わせを選ぶのが望ましい。気孔形成剤として、多価アルコールを用いた場合、溶媒として水が好適に使用できる。
【0037】
このような溶媒を用い、例えば、充実成形体を溶媒に浸漬して洗浄することにより、充実成形体に含まれていた気孔形成剤が溶媒に溶解して溶出し、個々の気孔が微小な連続気孔を有する高分子多孔質体が得られる。
【0038】
本発明においては、高分子多孔質体は、その比重(見かけ密度)が0.1〜0.5g/cm3のものが好適である。
【0039】
一方、本発明において、基材は、熱可塑性樹脂、熱可塑性エラストマー及びゴムから選ばれる表皮材より硬さが硬い高分子材料(同種のものでも異種のものでもよい)により形成される。この場合、熱可塑性樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリオキシメチレン、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、AS樹脂、ABS樹脂、EVA樹脂、ポリメタクリル酸メチル、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニリデン、エチレン−α−オレフィン共重合体、ナイロン6、ナイロン6,6、ナイロン12等のポリアミド、ポリカーボネート、テトラフルオロエチレンとヘキサフルオロプロピレンとビニリデンフロライドとの共重合体等のフッ素樹脂など、熱可塑性エラストマーとしては、スチレン系エラストマー、オレフィン系エラストマー、ウレタン系エラストマー、エステル系エラストマー、フッ素系エラストマー、シリコーン系エラストマー、ポリアミド系エラストマー、1,2ポリブタジエンなど、ゴムとしては、天然ゴム、イソプレンゴム、スチレンブタジエンゴム、ブタジエンゴム、エチレンプロピレンゴム、クロロプレンゴム、クロロスルホン化ポリエチレン、ウレタンゴム、アクリロニトリルブタジエンゴム、多硫化ゴム、アクリルゴム、エピクロルヒドリンゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴムなどを挙げることができる。
【0040】
また、基材を構成する高分子材料としては、発泡体とすることが好ましく、この発泡体は連続気孔を有する発泡体であることが特に好ましい。このようなものとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリオキシメチレン、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、AS樹脂、ABS樹脂、EVA樹脂、ポリメタクリル酸メチル、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニリデン、エチレン−α−オレフィン共重合体、ナイロン6、ナイロン6,6、ナイロン12等のポリアミド、ポリカーボネート、テトラフルオロエチレンとヘキサフルオロプロピレンとビニリデンフロライドとの共重合体等のフッ素樹脂等の熱可塑性樹脂、スチレン系エラストマー、オレフィン系エラストマー、ウレタン系エラストマー、エステル系エラストマー、フッ素系エラストマー、シリコーン系エラストマー、ポリアミド系エラストマー、1,2ポリブタジエン等の熱可塑性エラストマー、天然ゴム、イソプレンゴム、スチレンブタジエンゴム、ブタジエンゴム、エチレンプロピレンゴム、クロロプレンゴム、クロロスルホン化ポリエチレン、ウレタンゴム、アクリロニトリルブタジエンゴム、多硫化ゴム、アクリルゴム、エピクロルヒドリンゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴム等のゴムを挙げることができる。この場合、発泡体の空隙率は50〜98容量%、特に55〜95容量%のものを用いることが好ましい。
【0041】
また、基材には、積層する表皮材より硬さが硬いものであれば、表皮材と同様の方法で得られる連続気孔を有する高分子多孔質体を用いることも可能である。この場合、空隙率を表皮材より低くする、又は高分子多孔質体を構成する材質や割合を選択する(例えば、熱可塑性樹脂と熱可塑性エラストマーとを混合して用いる場合、熱可塑性樹脂の割合を表皮材のものより高くする)などの方法により、基材の硬さを表皮材より硬くすることができる。
【0042】
この場合、基材を構成する高分子材料を射出成形、押出成形、圧縮成形、注型成形などの方法で所定の形状(例えば、靴の内底面に相当する足形)に成形することにより基材を得ることができる。また、シート状に成形した高分子材料から所定の形状に切り出してもよい。
【0043】
本発明においては、表皮材と基材とを積層するための接着は、特に限定されるものではなく、例えば、接着剤や粘着テープを用いて接着することもできるが、基材をその熱成形と共に表皮材に接着したものであることが好ましい。このような方法としては、例えば、二色成形の手法を用いることができる。また、表皮材の上に、未固化又は未硬化(未加硫)の高分子材料を積層してその固化又は硬化と共に接着することもできる。また、基材が熱可塑性樹脂や熱可塑性エラストマーの場合、一旦成形して固化した基材を、表皮材と熱融着することにより接着することも好適である。接着は表皮材と基材との接着面全面を接着してもよいが、両者の接着強度が維持できる程度に接着面の一部を接着してもよい。この場合、接着面の一部を熱融着する方法、粘着テープに通気孔を開ける方法等により、表皮材と基材との通気性を確保することができる。
【0044】
これらの方法によりインソールの表皮材と基材とを接着すれば、表皮材と基材との接着に接着剤等を用いる必要がなく、製造工程が簡略化できると共に、安全面、衛生面にも優れたものとなるため好ましい。
【実施例】
【0045】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
【0046】
[実施例1]
スチレン系熱可塑性エラストマー75質量部、ポリプロピレン25質量部、気孔形成剤としてペンタエリスリトール400質量部、高分子改質剤としてアクリル変性PTFE10質量部、及び酸化防止剤1質量部を配合し、200℃で溶融混合分散させて成形材料を得、この成形材料を成形温度200℃で押出成形して厚さ2mmのシート状充実成形体を作製した。
【0047】
次に、得られたシート状充実成形体から気孔形成剤を温水により溶出させ、高分子多孔質体を得、これを靴の内底面に相当する足形形状に切り出し、表皮材を得た。この表皮材の物性について測定した。結果を表1に示す。なお、各測定方法は下記のとおりである。
【0048】
<空隙率>
上記密度測定で得られた質量と成形材料から気孔形成剤を除いたものの比重から高分子多孔質体の真容積を算出し、見かけ容積と真容積との差分の割合(%)を空隙率とした。
<比重(見かけ密度)>
JIS A 9511に準じて、約200×200mmの試験片を70±5℃で乾燥し、恒量となった後の質量と見かけ容積から算出した。
<硬さ>
JIS K 6253に準拠したデュロメータタイプE硬さを測定した(デュロメータの押針をシートの厚さ方向に押しあてて測定した)。
<通気性(官能評価)>
インソールを靴内に装着し、10日間の日常使用における耐久試験を実施し、そのときに、足裏に感じる蒸れ性を官能的に評価した。
◎:通気性は良好であり、ほとんどむれを感じない ○:通気性はあり、あまり蒸れを感じない △:少し蒸れを感じる
【0049】
一方、EVA発泡体(三福工業社製)をプレス成形により厚さ3mmのシート状に成形し、これを靴の内底面に相当する足形形状(上記表皮材と同形状)に切り出し、基材を得た。この基材について、その硬さを上記表皮材と同様の方法で測定した。結果を表1に示す。
【0050】
次に、得られた表皮材及び基材を、粘着テープ(寺岡製作所社製両面テープ773)を用いて接着、積層してインソールを得た。このインソールについて、その硬さを上記表皮材と同様の方法で測定した。結果を表1に示す。なお、この場合の硬さは、デュロメータの押針を表皮材側からインソールの厚さ方向に押しあてて測定したものである。
【0051】
また、このインソールを靴内に装着し、10日間の日常使用における耐久試験を実施したところ、インソールに皺やねじれは発生せず、形状安定性に優れ、なおかつ履き心地も良好であった。
【0052】
[比較例1]
スチレン系熱可塑性エラストマー75質量部、ポリプロピレン25質量部、気孔形成剤としてペンタエリスリトール400質量部、高分子改質剤としてアクリル変性PTFE10質量部、及び酸化防止剤1質量部を配合し、200℃で溶融混合分散させて成形材料を得、この成形材料を成形温度200℃で押出成形して厚さ2mmのシート状充実成形体を作製した。
【0053】
次に、得られたシート状充実成形体から気孔形成剤を温水により溶出させ、高分子多孔質体を得、これを靴の内底面に相当する足形形状に切り出し、この高分子多孔質体のみからなるインソールを得た。この表皮材の物性について測定した。結果を表1に示す。なお、各測定方法は上記実施例1と同様である。
【0054】
また、このインソールを靴内に装着し、10日間の日常使用における耐久試験を実施したところ、2日目にインソールが皺となり、通常の歩行に支障が生じたため、2日目で試験を中止した。
【0055】
[比較例2]
スチレン系熱可塑性エラストマー75質量部、ポリプロピレン25質量部、気孔形成剤としてペンタエリスリトール130質量部、高分子改質剤としてアクリル変性PTFE10質量部、及び酸化防止剤1質量部を配合し、200℃で溶融混合分散させて成形材料を得、この成形材料を成形温度200℃で押出成形して厚さ2mmのシート状充実成形体を作製した。
【0056】
次に、得られたシート状充実成形体から気孔形成剤を温水により溶出させ、高分子多孔質体を得、これを靴の内底面に相当する足形形状に切り出し、表皮材を得た。この表皮材の物性について測定した。結果を表1に示す。なお、各測定方法は上記実施例1と同様である。
【0057】
一方、EVA発泡体(三福工業社製)をプレス成形により厚さ3mmのシート状に成形し、これを靴の内底面に相当する足形形状(上記表皮材と同形状)に切り出し、基材を得た。この基材について、その硬さを上記表皮材と同様の方法で測定した。結果を表1に示す。
【0058】
次に、得られた表皮材及び基材を、粘着テープ(寺岡製作所社製両面テープ773)を用いて接着、積層してインソールを得た。このインソールについて、その硬さを上記表皮材と同様の方法で測定した。結果を表1に示す。なお、この場合の硬さは、デュロメータの押針を表皮材側からインソールの厚さ方向に押しあてて測定したものである。
【0059】
また、このインソールを靴内に装着し、10日間の日常使用における耐久試験を実施したところ、インソールに皺やねじれは発生せず、形状安定性に優れていたが、空隙率が低いために足裏に硬い感触を与え、通気性でも少し蒸れを感じ、履き心地に劣るものであった。
【0060】
[比較例3]
スチレン系熱可塑性エラストマー75質量部、ポリプロピレン25質量部、気孔形成剤としてペンタエリスリトール800質量部、高分子改質剤としてアクリル変性PTFE10質量部、及び酸化防止剤1質量部を配合し、200℃で溶融混合分散させて成形材料を得、この成形材料を成形温度200℃で押出成形して厚さ2mmのシート状充実成形体を作製した。
【0061】
次に、得られたシート状充実成形体から気孔形成剤を温水により溶出させ、高分子多孔質体を得、これを靴の内底面に相当する足形形状に切り出し、表皮材を得た。この表皮材の物性について測定した。結果を表1に示す。なお、各測定方法は上記実施例1と同様である。
【0062】
一方、EVA発泡体(三福工業社製)をプレス成形により厚さ3mmのシート状に成形し、これを靴の内底面に相当する足形形状(上記表皮材と同形状)に切り出し、基材を得た。この基材について、その硬さを上記表皮材と同様の方法で測定した。結果を表1に示す。
【0063】
次に、得られた表皮材及び基材を、粘着テープ(寺岡製作所社製両面テープ773)を用いて接着、積層してインソールを得た。このインソールについて、その硬さを上記表皮材と同様の方法で測定した。結果を表1に示す。なお、この場合の硬さは、デュロメータの押針を表皮材側からインソールの厚さ方向に押しあてて測定したものである。
【0064】
また、このインソールを靴内に装着し、10日間の日常使用における耐久試験を実施したところ、7日目に表皮材が皺となって基材から剥離し、通常の歩行に支障が生じたため、7日目で試験を中止した。また、7日目の耐久試験中、空隙率が高いためにへたって気孔がつぶれ、常に足裏に硬い感触を与え、通気性でも少し蒸れを感じ、履き心地が劣るものであった。
【0065】
[実施例2]
スチレン系熱可塑性エラストマー75質量部、ポリプロピレン25質量部、気孔形成剤としてペンタエリスリトール400質量部、高分子改質剤としてアクリル変性PTFE10質量部、及び酸化防止剤1質量部を配合し、200℃で溶融混合分散させて成形材料を得、この成形材料を成形温度200℃で押出成形して厚さ2mmのシート状充実成形体を作製した。
【0066】
次に、得られたシート状充実成形体から気孔形成剤を温水により溶出させ、高分子多孔質体を得、これを靴の内底面に相当する足形形状に切り出し、表皮材を得た。この表皮材の物性について測定した。結果を表1に示す。なお、各測定方法は上記実施例1と同様である。
【0067】
一方、軟質塩化ビニル樹脂(リケンテクノス社製リケンコンパウンドBVV0545A)を押出成形により厚さ3mmのシート状に成形し、これを靴の内底面に相当する足形形状(上記表皮材と同形状)に切り出し、基材を得た。この基材について、その硬さを上記表皮材と同様の方法で測定した。結果を表1に示す。
【0068】
次に、得られた表皮材及び基材を、粘着テープ(寺岡製作所社製両面テープ773)を用いて接着、積層してインソールを得た。このインソールについて、その硬さを上記表皮材と同様の方法で測定した。結果を表1に示す。なお、この場合の硬さは、デュロメータの押針を表皮材側からインソールの厚さ方向に押しあてて測定したものである。
【0069】
また、このインソールを靴内に装着し、10日間の日常使用における耐久試験を実施したところ、インソールに皺やねじれは発生せず、形状安定性に優れ、なおかつ履き心地も良好であった。
【0070】
[実施例3]
スチレン系熱可塑性エラストマー75質量部、ポリプロピレン25質量部、気孔形成剤としてペンタエリスリトール400質量部、高分子改質剤としてアクリル変性PTFE10質量部、及び酸化防止剤1質量部を配合し、200℃で溶融混合分散させて成形材料を得、この成形材料を成形温度200℃で押出成形して厚さ2mmのシート状充実成形体を作製した。
【0071】
次に、得られたシート状充実成形体から気孔形成剤を温水により溶出させ、高分子多孔質体を得、これを靴の内底面に相当する足形形状に切り出し、表皮材を得た。この表皮材の物性について測定した。結果を表1に示す。なお、各測定方法は上記実施例1と同様である。
【0072】
一方、シリコーンゴム組成物(東レ・ダウコーニング社製SH−851U 100質量部、RC−4 50P 0.6質量部を配合し、2本ロールで混練りしたコンパウンド)をプレス成形により厚さ3mmのシート状に成形し、これを靴の内底面に相当する足形形状(上記表皮材と同形状)に切り出し、基材を得た。この基材について、その硬さを上記表皮材と同様の方法で測定した。結果を表1に示す。
【0073】
次に、得られた表皮材及び基材を、粘着テープ(寺岡製作所社製両面テープ770K)を用いて接着、積層してインソールを得た。このインソールについて、その硬さを上記表皮材と同様の方法で測定した。結果を表1に示す。なお、この場合の硬さは、デュロメータの押針を表皮材側からインソールの厚さ方向に押しあてて測定したものである。
【0074】
また、このインソールを靴内に装着し、10日間の日常使用における耐久試験を実施したところ、インソールに皺やねじれは発生せず、形状安定性に優れ、なおかつ履き心地も良好であった。
【0075】
[実施例4] 成形時に接着(熱圧着)する場合(二色成形)
1,2ポリブタジエン(JSR社製RB−810)を射出成形により靴の内底面に相当する足形(最薄部厚さ3mm)に成形し、基材を得た。この基材について、その硬さを上記表皮材と同様の方法で測定した。結果を表1に示す。
【0076】
次に、スチレン系熱可塑性エラストマー75質量部、ポリプロピレン25質量部、気孔形成剤としてペンタエリスリトール400質量部、高分子改質剤としてアクリル変性PTFE10質量部、及び酸化防止剤1質量部を配合し、200℃で溶融混合分散させて成形材料を得、この成形材料を、予め成形してある基材の表層に、成形温度200℃で射出成形して厚さ2mmのシート状充実成形体を作製した。
【0077】
次に、得られたシート状充実成形体を含む複合体(インソール)から気孔形成剤を温水により溶出させ、高分子多孔質体を得、インソールを得た。このインソールについて、その硬さを上記表皮材と同様の方法で測定した。結果を表1に示す。なお、この場合の硬さは、デュロメータの押針を表皮材側からインソールの厚さ方向に押しあてて測定したものである。
【0078】
また、このインソールを靴内に装着し、10日間の日常使用における耐久試験を実施したところ、インソールに皺やねじれは発生せず、形状安定性に優れ、なおかつ履き心地も良好であった。
【0079】
[実施例5] 熱融着により接着する場合
スチレン系熱可塑性エラストマー75質量部、ポリプロピレン25質量部、気孔形成剤としてペンタエリスリトール400質量部、高分子改質剤としてアクリル変性PTFE10質量部、及び酸化防止剤1質量部を配合し、200℃で溶融混合分散させて成形材料を得、この成形材料を成形温度200℃で押出成形して厚さ2mmのシート状充実成形体を作製した。
【0080】
次に、得られたシート状充実成形体から気孔形成剤を温水により溶出させ、高分子多孔質体を得、これを靴の内底面に相当する足形形状に切り出し、表皮材を得た。この表皮材の物性について測定した。結果を表1に示す。なお、各測定方法は下記のとおりである。
【0081】
一方、EVA発泡体(三福工業社製)をプレス成形により厚さ3mmのシート状に成形し、これを靴の内底面に相当する足形形状(上記表皮材と同形状)に切り出し、基材を得た。この基材について、その硬さを上記表皮材と同様の方法で測定した。結果を表1に示す。
【0082】
次に、この基材と先に得られた表皮材とを、熱融着により接着し、インソールを得た。このインソールについて、その硬さを上記表皮材と同様の方法で測定した。結果を表1に示す。なお、この場合の硬さは、デュロメータの押針を表皮材側からインソールの厚さ方向に押しあてて測定したものである。
【0083】
また、このインソールを靴内に装着し、10日間の日常使用における耐久試験を実施したところ、インソールに皺やねじれは発生せず、形状安定性に優れ、なおかつ履き心地も良好であった。
【0084】
[実施例6]
スチレン系熱可塑性エラストマー75質量部、ポリプロピレン25質量部、気孔形成剤としてペンタエリスリトール400質量部、高分子改質剤としてアクリル変性PTFE10質量部、及び酸化防止剤1質量部を配合し、200℃で溶融混合分散させて成形材料を得、この成形材料を成形温度200℃で押出成形して厚さ2mmのシート状充実成形体を作製した。
【0085】
次に、得られたシート状充実成形体から気孔形成剤を温水により溶出させ、高分子多孔質体を得、これを靴の内底面に相当する足形形状に切り出し、表皮材を得た。この表皮材の物性について測定した。結果を表1に示す。なお、各測定方法は上記実施例1と同様である。
【0086】
一方、スチレン系熱可塑性エラストマー40質量部、ポリプロピレン60質量部、気孔形成剤としてペンタエリスリトール350質量部、及び酸化防止剤1質量部を配合し、200℃で溶融混合分散させて成形材料を得、この成形材料を成形温度200℃で射出成形して靴の内底面に相当する足形(最薄部厚さ3mm)の充実成形体を作製した。
【0087】
次に、得られた充実成形体から気孔形成剤を温水により溶出させ、高分子多孔質体を得、基材を得た。この基材について、その硬さを上記表皮材と同様の方法で測定した。結果を表1に示す。
【0088】
次に、この基材と先に得られた表皮材とを、熱融着により接着し、インソールを得た。このインソールについて、その硬さを上記表皮材と同様の方法で測定した。結果を表1に示す。なお、この場合の硬さは、デュロメータの押針を表皮材側からインソールの厚さ方向に押しあてて測定したものである。
【0089】
また、このインソールを靴内に装着し、10日間の日常使用における耐久試験を実施したところ、インソールに皺やねじれは発生せず、形状安定性に優れ、なおかつ履き心地も良好であった。更に、このインソールは基材が連続気孔を有する高分子多孔質体であるので、通気性が良好で衛生面においても優れたものであった。
【0090】
【表1】

【0091】
スチレン系熱可塑性エラストマー:クラレ社製「ハイブラー7125」
ポリプロピレン:三井住友ポリオレフィン社製「三井住友ポリプロS−131」
アクリル変性PTFE(ポリテトラフルオロエチレン):三菱レイヨン社製「メタブレンA3000」
酸化防止剤:チバスペシャリティーケミカルズ社製「イルガノックス1010」
ペンタエリスリトール:広栄化学社製「ペンタリット」
【図面の簡単な説明】
【0092】
【図1】本発明のインソールの一例を示す図であり、(A)は平面図、(B)は拡大断面図である。
【図2】本発明のインソールの他の例を示す図であり、(A)は平面図、(B)は拡大断面図である。
【符号の説明】
【0093】
1 インソール
11 表皮材
12 基材
13 接着層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
空隙率が50〜80%の連続気孔を有する高分子多孔質体により形成された足裏と接する面をなす表皮材と、熱可塑性樹脂、熱可塑性エラストマー及びゴムから選ばれる高分子材料により形成された靴の内底面と接する面をなす基材とが積層されてなり、上記表皮材の硬さより上記基材の硬さが硬いことを特徴とするインソール。
【請求項2】
上記基材を構成する高分子材料が発泡体であることを特徴とする請求項1記載のインソール。
【請求項3】
上記発泡体が連続気孔を有する発泡体であることを特徴とする請求項2記載のインソール。
【請求項4】
上記基材が、該基材の熱成形と共に上記表皮材に接着されてなることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載のインソール。
【請求項5】
上記表皮材及び基材が熱融着により接着されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載のインソール。
【請求項6】
上記表皮材側から測定したインソールのデュロメータタイプE硬さが10〜100であり、かつ上記表皮材のデュロメータタイプE硬さより高いことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項記載のインソール。
【請求項7】
上記表皮材のデュロメータタイプE硬さが8〜80であることを特徴とする請求項6記載のインソール。
【請求項8】
上記基材のデュロメータタイプE硬さが10〜100であることを特徴とする請求項6又は7記載のインソール。
【請求項9】
インソールの最薄部における上記表皮材の厚さが0.5〜6mm、上記基材の厚さが1〜5mmであり、かつ上記最薄部におけるインソールの厚さが1.5〜11mmであることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項記載のインソール。
【請求項10】
上記高分子多孔質体が、熱可塑性樹脂及び/又は熱可塑性エラストマーからなる高分子材料と気孔形成剤とを混合分散させた充実成形体から、上記気孔形成剤を、上記熱可塑性樹脂及び/又は熱可塑性エラストマーは溶解しないが上記気孔形成剤は溶解する溶媒で溶出させることにより連続気孔を形成したものであることを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1項記載のインソール。
【請求項11】
上記高分子多孔質体を構成する高分子材料がスチレン系エラストマーとポリプロピレンとを含み、かつ上記気孔形成剤がペンタエリスリトールを含むことを特徴とする請求項1乃至10のいずれか1項記載のインソール。
【請求項12】
足裏全面をサポートするフルインソールであることを特徴とする請求項1乃至11のいずれか1項記載のインソール。


【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−319356(P2007−319356A)
【公開日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−152087(P2006−152087)
【出願日】平成18年5月31日(2006.5.31)
【出願人】(597096161)株式会社朝日ラバー (74)
【Fターム(参考)】