説明

インバータ装置

【課題】端子台カバーを筐体に保持したまま開閉位置に移動して配線,点検作業を行うことができ、また端子台カバーを開いた状態ではインバータが運転モードに入らないようにして安全性の確保が図れるように端子台カバーの取付け構造を改良する。
【解決手段】パワーモジュールなどの基幹部品を内蔵した筐体1の上部前面に操作パネル2を配置するとともに、筐体下部に搭載した端子台3,4を覆って筐体1の前面に端子台カバー5を装備したインバータ装置において、端子台カバー5をスライド式として筐体1に案内支持するようにし、また端子台カバー5は開放位置で操作パネル2のキーを覆うよう設定するとともに、該カバーの上端部には開放位置で操作パネル2の停止キーを押圧してインバータを強制停止させる押込み突起片を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、汎用のインバータ装置に関し、詳しくはその端子台を覆って筐体の前面に装着した端子台カバーの取付け構造に係わる。
【背景技術】
【0002】
従来におけるインバータ装置は、パワーモジュール,プリント基板,パワーデバイスの放熱フィンなどの基幹部品を内蔵した筐体の前面側に外部接続用の主回路端子台,制御回路端子台を配置した上で、この端子台を覆って筐体の前面に端子台カバーを着脱可能に取付けた構造が一般的である(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、小容量の汎用インバータ装置として、筐体の上部前面にタッチパネル式の操作パネルを配備するとともに、筐体の下部に搭載した外部接続用の端子台を覆って筐体の前面に着脱式の端子台カバーを装備した製品も知られている(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
上記構成のインバータ装置を使用先現場に設置した状態で配線作業,ないし配線の保守点検を行う場合には、その作業手順として最初にインバータを運転停止し、この状態で筐体から端子カバーを取り外して必要な作業を行い、作業終了後は取り外した端子台カバーを再び筐体に取付けた上でインバータを運転開始するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平5−62724号公報
【特許文献2】特開平11−41951号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、前記した従来の筐体構造では、インバータ装置の設置現場で配線,点検作業を行う場合に安全性確保の面で次記のような問題点がある。
すなわち、端子台カバーを取り外して筐体に組み込まれている端子台の配線,点検作業を行う場合には、インバータを運転停止してから配線,点検作業を行うことが原則であるが、従来構造ではインバータの運転,停止に関係なく端子台カバーを自由に取り外すことが可能である。このために、作業者がインバータの停止操作をうっかり忘れ、インバータを運転したまま端子台カバーを取り外して配線の付替え,点検などの作業を行うと、作業中に不測な運転トラブルを引き起こすおそれがある。また、筐体の前面に操作パネルを配したインバータ装置(特許文献2参照)では、事前にインバータの停止を確認しても、配線,点検作業中に操作パネルのキーに手が触れるなどしてインバータが運転モードに入ると前記と同様なトラブル発生のおそれがある。
【0007】
そのほか、従来構造では筐体から一旦取り外した端子台カバーを配線作業後に付け忘れたり、端子台カバーの取付けが不完全であると運転中に端子台カバーが脱落するおそれもある。
【0008】
本発明は上記の点に鑑みなされたものであり、その目的は前記課題を解消して端子台カバーを筐体に保持したまま、該カバーを開閉位置に移動して配線,点検作業を行うことができ、また端子台カバーと操作パネルとをインターロックし、端子台カバーを開いた状態ではインバータが運転モードに入らないようにして不測な運転トラブルの発生を回避できるように端子台カバーの取付け構造を改良した安全性の高いインバータ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、この発明によれば、パワーモジュール,プリント基板,放熱フィンなどの基幹部品を内蔵した筐体の上部前面にタッチパネル式の操作パネルを配置するとともに、筐体の下部に搭載した外部接続用の端子台を覆って筐体の前面に端子台カバーを装備したインバータ装置において、
前記端子台カバーを上下にスライドして開閉位置に移動するスライド式カバーとして、該カバーを筐体にスライド機構を介して装着するものとし(請求項1)、具体的には次記のような態様で構成する。
(1)前記スライド機構は、筐体の左右側縁に沿って形成したガイド凹溝と、該ガイド凹溝に嵌まり合うよう端子台カバーの左右側縁に形成した鍔部からなり、かつ前記ガイド凹溝には端子台カバーを開放位置に係止保持する係合突起を形成し、端子台カバーの鍔部には前記係合突起が嵌まり合うノッチ溝を形成する(請求項2)。
(2)また、端子台カバーは、その開放位置で筐体の前面上部に配置した操作パネルの操作キーを覆うようにスライド機構を設定する(請求項3)。
(3)さらに、前記端子カバーの上端部に、該カバーの開放位置で操作パネルの停止キーを押圧してインバータの運転を停止させる押込み突起片を設ける(請求項4)。
【発明の効果】
【0010】
上記の構成によれば、次記の効果を奏することができる。
(1)まず、端子台カバーをスライド式カバーとして筐体の前面に装着したことにより、従来構造のように端子台カバーを筐体から取り外さずに、筐体に保持したままの状態で端子台の前面を開放して配線,保守点検作業を行うことができ、これにより端子台カバーの開閉操作が簡単となり、かつ従来のように作業後に端子台カバーの付け忘れも防げる。
(2)端子台カバーの開放位置で筐体の上部前面に配置した操作パネルのキーを覆うように設定したことにより、作業中に手が操作パネルのキーに触れるなどしてインバータが運転モードに入るのを回避することができ、これにより高い安全性を確保できる。
(3)さらに、端子カバーの上端部に、該カバーの開放位置で操作パネルの停止キーを強制的に押圧してインバータの運転を停止させる押込み突起片を設けて端子台カバーと操作パネルの停止キーとをインターロックすることで、作業開始前にインバータを運転停止する操作をうっかり忘れても、安全上問題なく配線,点検作業を遂行できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施例によるインバータ装置の外観斜視図であって、(a),(b)はそれぞれ端子台カバーを閉位置,開位置にスライド移動した状態を表す図である。
【図2】図1の分解斜視図である。
【図3】図1(a)の側面図である。
【図4】図1(a)におけるA部の拡大図である。
【図5】図1における端子台カバーの裏面図である。
【図6】図1(b)におけるB部の部分断面拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、この発明の実施の形態を図1〜図6に示す実施例に基づいて説明する。各図において、1はインバータ装置の筐体、2は筐体1の上部前面に配置したタッチパネル式の操作パネル、3,4は筐体1の下部前面側に搭載した外部接続用の主回路端子台,および制御回路端子台、5は前記端子台3,4の前面を覆って筐体1の前面に装着したスライド式の端子台カバー、6は主回路端子台3に重ねて筐体1に組み付けた主回路の配線カバーである。
【0013】
ここで、前記筐体1は、冷ファン7を備えたヒートシンク1aと、パワーデバイス,プリント基板,コンデンサなどの基幹部品(不図示)を搭載した分割ケース1bと、上部前面に操作パネル2を配備し、かつ下半部に前記端子台3,4を搭載した分割ケース1cとの積層体構造になる。また、筐体1の上部前面に配した操作パネル2のパネル面には、運転キー2a,停止キー2b,プログラムキー/リセットキー2c,ファンクションキー/データ切替キー2d,アップ/ダウンキー2eの各種タッチキー、およびLEDモニター2fを備えている。
【0014】
一方、端子台カバー5は、図5で示すように、カバー板面の左右両側縁が裏側に向けてL字状に屈折したモールド樹脂成形品になり、かつ左右側縁には内側に向けて上下方向に延在する鍔部5aが形成されており、さらにカバー上端の裏面には前記した操作パネル2の停止キー2bに対応する押込み突起片5bが形成されている。
【0015】
そして、この端子台カバー5は、筐体1に対して次記のように上下にスライドして開閉位置に移動できるように案内支持されている。すなわち、図4で示すように筐体1(分割ケース1c)の左右側壁面には、前記端子台カバー5に両側縁に形成した鍔部5a(図5参照)が嵌入するガイド凹溝8が上下方向に沿って刻設されている。また、このガイド凹溝5aには上下一対の係合突起8が筐体の上部側に形成され、この係合突起8に対応して端子台カバー5の鍔部5aには係合突起8と係合し合う一対のノッチ溝5a−1が形成されている。
【0016】
上記構成で、端子台カバー5は、左右の鍔部5aを前記ガイド凹溝8に嵌入して筐体1の前面に上下スライド可能に保持される。ここで、図1(a)のように端子台カバー5を図示矢印方向に引き下ろした閉位置では、端子台カバー5が端子台3,4の前面を覆っている。なお、端子台カバー5の閉位置では、該カバーの下部コーナーが先記配線カバー6の左右端に突出し形成したコーナー壁部6aに突き当って下方に脱落しないように保持される。
【0017】
一方、端子台カバー5を図1(b)のように上方に引き上げると端子台3,4が露呈するようになるので、このカバー開放位置で端子台3,4にアクセスして配線,点検作業を行うことができる。なお、この端子台カバー5の開放位置では、鍔部5aに形成したノッチ溝5a−1(図5参照)に筐体1のガイド凹溝8に形成した係合突起8a(図4参照)が嵌まり込んでカバーがこの開放位置に係止保持される。
【0018】
また、端子台カバー5を開放位置に向けて上方にスライド移動すると、図1(b)および図6で表すように端子台カバー5の上部板面が筐体1の上部前面に配した操作パネル2の各種タッチキーを覆うとともに、端子台カバー5の上端に設けた押込み突起片5b(図5参照)が操作パネル2の停止キー2bを押し込んでインバータの運転を強制的に停止させる。
【0019】
したがって、作業者が事前にインバータを停止するのを忘れて端子台カバー5を開いた場合でも、インバータを強制停止して端子の配線,点検作業を安全に行うことができる。また、端子台カバー5を開いた状態では、操作パネル2のタッチキーに誤って手が触れたり、タッチキーを操作することができないので、作業中にインバータが運転モードに入るのを確実に防止でき、これにより端子の配線,点検作業を安全に遂行できる。
【0020】
しかも、端子台の配線,点検作業を実施する際には、従来構造のように端子台カバー5をその都度筐体1から取り外し、作業後には付け直したりする面倒な手間が必要なく、したがって従来構造のようにカバーの取付け忘れも回避できる利便性が得られる。
【符号の説明】
【0021】
1 筐体
2 操作パネル
2a〜2e タッチキー
3 主回路端子台
4 制御回路端子台
5 端子台カバー
5a 鍔部
5a−1 ノッチ溝
5b 押込み突起片
6 主回路の配線カバー
8 ガイド凹溝
8a 係合突起


【特許請求の範囲】
【請求項1】
パワーモジュール,プリント基板,放熱フィンなどの基幹部品を内蔵した筐体の上部前面にタッチパネル式の操作パネルを配置するとともに、筐体の下部に搭載した外部接続用の端子台を覆って筐体の前面に端子台カバーを配備したインバータ装置において、
前記端子台カバーを上下にスライドして開閉位置に移動するスライド式カバーとして、該カバーを筐体にスライド機構を介して装着したことを特徴とするインバータ装置。
【請求項2】
請求項1に記載のインバータ装置において、スライド機構が、筐体の左右側縁に沿って形成したガイド凹溝と、該ガイド凹溝に嵌まり合うよう端子台カバーの左右側縁に形成した鍔部からなり、かつ前記ガイド凹溝には端子台カバーを開放位置に係止保持する係合突起を形成し、端子台カバーの鍔部には前記係合突起が嵌まり合うノッチ溝を形成したことを特徴とするインバータ装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載のインバータ装置において、端子台カバーは、その開放位置で操作パネルの操作キーを覆うようにスライド機構を設定したことを特徴とするインバータ装置。
【請求項4】
請求項3に記載のインバータ装置において、端子カバーの上端部に、該カバーの開放位置で操作パネルの停止キーを押圧する押込み突起状を設けたことを特徴とするインバータ装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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