説明

インプリント装置

【課題】被転写基板の局所的な突起に追従して微細パターンの転写不良領域を縮減することができると共に、微細構造体の破損を防止することができるインプリント装置を提供する。
【解決手段】微細構造体111を有するヘッド部101が、微細な凹凸形状が形成された微細パターン形成層102と、微細パターン形成層102の凹凸形状が形成された面の反対側の面に配置された樹脂層104と、樹脂層104の微細パターン形成層102に接する面と反対側の面に配置された第一加圧基材106と、第一加圧基材106の樹脂層104と反対側の面に配置された第二加圧基材108とを有するインプリント装置であって、樹脂層104の弾性率が微細パターン形成層102の弾性率よりも小さく、第一加圧基材106の弾性率が、樹脂層104の弾性率よりも小さいことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被転写体の表面に微細構造体の微細な凹凸形状を転写するインプリント装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体デバイスなどで必要とされる微細パターンを加工する技術として、フォトリソグラフィ技術が多く用いられてきた。しかし、パターンの微細化が進み、要求される加工寸法が露光に用いられる光の波長程度まで小さくなるとフォトリソグラフィ技術での対応が困難となったため、これに代わって、荷電粒子線装置の一種である電子線描画装置が用いられるようになった。この電子線を用いたパターン形成は、i線、エキシマレーザー等の光源を用いたパターン形成における一括露光方法と異なり、マスクパターンを直接描画する方法をとる。よって、描画するパターンが多いほど露光(描画)時間が増加し、パターン完成までに時間がかかるという欠点があり、半導体集積回路の集積度が高まるにつれて、パターン形成に必要な時間が増大して、スループットが低下することが懸念される。そこで、電子線描画装置の高速化を図るために各種形状のマスクを組み合わせて、それらに一括して電子ビームを照射することで、マスクの組み合わせに対応した複雑な形状の電子ビームを形成する、一括図形照射法の開発が進められている。しかし、パターンの微細化が進む一方で、電子線描画装置の大型化や、マスク位置の高精度制御など、装置コストが高くなるという欠点があった。これに対し、高精度なパターン形成を低コストで行うための技術として、ナノインプリント技術が知られている。このナノインプリント技術は、形成しようとするパターンの凹凸に対応する凹凸(表面形状)が形成されたスタンパを、例えば所定の基板上に樹脂層を形成して得られる被転写体に型押しするものであり、微細パターンを被転写体の樹脂層に形成することができる。そして、このナノインプリント技術は、大容量記録媒体における記録ビットのパターンの形成や、半導体集積回路のパターンの形成への応用が検討されている。
【0003】
ここで参照する図11(a)から(c)は、ナノインプリント技術による微細パターンの従来の形成方法の一例を模式的に示す工程図である。
この形成方法では、図11(a)に示すように、微細構造体201の微細パターン201aと、被転写体207の被転写基板205上に形成された被転写樹脂203とが向き合うように配置される。そして、この形成方法は、図11(b)に示すように、微細構造体201の微細パターン201aを被転写体207の被転写樹脂203に押し当てた後に、被転写樹脂203を硬化させる。その後、図11(c)に示すように、被転写体207から微細構造体201を剥離することで、微細パターン201aが転写された被転写体207が得られる。このようなナノインプリント技術においては、高精度に微細パターン201aを転写するために、石英等の硬質な微細構造体201を用いる方法が知られている(例えば、特許文献1)。
【特許文献1】特開2000−194142号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、被転写基板205の表面には、微細な突起(直径又は高さが数十nmから数μm)や異物が局所的に存在する場合がある。
このとき、微細構造体201や被転写基板205の材料として非可撓性のものを用いると、微細構造体201が突起や異物に追従せずに、突起や異物の周辺でパターン転写不良領域、すなわち微細パターン201aの転写が不完全な領域や微細パターン201aが転写されない領域が生じるという問題がある。また、この局所的な突起や異物の周辺に過剰な圧力がかかって、微細構造体201が破損するという問題がある。そして、破損した微細構造体201は通常再利用することができない。
【0005】
そこで、本発明は、被転写基板の局所的な突起に追従して微細パターンの転写不良領域を縮減することができると共に、微細構造体の破損を防止することができるインプリント装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決する本発明は、表面に微細な凹凸形状が形成された微細構造体を被転写体に接触させて、前記凹凸形状を前記被転写体に転写するインプリント装置において、 前記微細構造体を有するヘッド部と、前記被転写体を保持するためのステージ部と、を有し、前記ヘッド部が、微細な前記凹凸形状が形成された微細パターン形成層と、前記微細パターン形成層の前記凹凸形状が形成された面の反対側の面に配置された樹脂層と、前記樹脂層の前記微細パターン形成層に接する面と反対側の面に配置された第一加圧基材と、前記第一加圧基材の前記樹脂層と反対側の面に配置された第二加圧基材と、を有し、前記樹脂層の弾性率が前記微細パターン形成層の弾性率よりも小さく、前記第一加圧基材の弾性率が、前記樹脂層の弾性率よりも小さいことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、被転写基板の局所的な突起に追従して微細パターンの転写不良領域を縮減することができると共に、微細構造体の破損を防止することができるインプリント装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下に、本発明のインプリント装置の実施形態について詳細に説明する。参照する図面において、図1は、本実施形態に係るインプリント装置の構成説明図である。図2は、インプリント装置のヘッド部付近の部分拡大図である。
【0009】
図1に示すように、本実施形態に係るインプリント装置Ipは、筐体としての真空チャンバ10内に、昇降機構11で昇降すると共に被転写体107を保持するステージ部12と、後記する微細構造体111(図2参照)を有するヘッド部101とを備えている。
【0010】
本実施形態での昇降機構11は、真空チャンバ10内の底部に支持されており、発生する推力が電空レギュレータ(図示省略)で調整可能となっている。そして、昇降機構11は、発生した推力を、図示しない駆動軸を介してステージ部12に入力することでステージ部12を昇降するようになっている。
【0011】
被転写体107は、被転写基板105と、この被転写基板105の表面に層状に配置された被転写樹脂103とを備えている。
被転写基板105としては、要求される強度と加工精度が実現できれば特に制限はなく、例えば、シリコンウエハ、各種金属材料、ガラス、石英、セラミック、プラスチック等が挙げられる。
本実施形態での被転写樹脂103は、光硬化性樹脂を想定しているが、これに限定されるものではなく、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂等であってもよい。
【0012】
このような被転写体107は、被転写樹脂103がヘッド部101と向き合うように、ステージ部12の上面に保持具12aで保持されている。つまり、昇降機構11でステージ部12が上昇することで、後記するように、被転写体107の被転写樹脂103がヘッド部101に押し当てられることとなる。
【0013】
ヘッド部101は、ステージ部12の上方に配置されて、真空チャンバ10内の天井部に固定ブロック13を介して取り付けられている。さらに具体的には、ヘッド部101は、固定ブロック13の下面に治具13aで取り付けられており、この治具13aを外すことでヘッド部101は交換可能となっている。
なお、この固定ブロック13の内部には、紫外線を照射する光源14が配置されており、この光源14は、ヘッド部101を介して紫外線を被転写体107に照射するように構成されている。ちなみに、本実施形態でのヘッド部101は、後記するように、光透過性、特に、紫外線透過性を有するものを想定している。
【0014】
本実施形態でのヘッド部101は、平面視で円形を呈しているが、この平面形状は特に制限はなく、楕円系、多角形等の他の形状でもよい。また、ヘッド部101には、図示しないが中心穴が形成されていてもよい。
【0015】
ヘッド部101は、図2に示すように、被転写体107の被転写樹脂103と向き合う側から、微細パターン形成層102と、樹脂層104と、第一加圧基材106と、第二加圧基材108とをこの順番で備えている。ちなみに、本実施形態でのヘッド部101は、微細パターン形成層102、樹脂層104及び第一加圧基材106が略同じ径で形成されており、これらよりも第二加圧基材108が大きい径で形成されている。そして、図1に示すように、ヘッド部101は、固定ブロック13に対して第二加圧基材108で支持されることとなる。
【0016】
本実施形態に係るインプリント装置Ipは、樹脂層104の弾性率が微細パターン形成層102の弾性率よりも小さく、第一加圧基材106の弾性率が、樹脂層104の弾性率よりも小さいことを主な特徴とする。
【0017】
微細パターン形成層102は、図2に示すように、被転写体107の被転写樹脂103に転写するための微細構造体111を有しており、この微細構造体111は、ナノメータオーダの微細な凹凸形状である微細パターン111aで構成されている。なお、図2中、微細構造体111の凹凸は、作図の便宜上、拡大して表現している(以下、図3以降の図においても同じ)。
【0018】
この微細パターン形成層102は、転写時の加圧によって表面に形成された凹凸形状に塑性変形が生じないような材料で形成される。
微細パターン形成層102の材料としては、例えば、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、ポリエチレンテレフタレート、不飽和ポリエステル、アルキド樹脂、ビニルエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド、ポリウレタン、ポリカーボネート、ポリスチレン、アクリル樹脂、ポリアミド、ABS樹脂、AS樹脂、AAS樹脂、ポリビニルアルコール、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリアリレート、酢酸セルロース樹脂、ポリプロピレン、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリフェニレンサルファイド、ポリフェニレンオキシド、シクロオレフィンポリマ、ポリ乳酸、シリコーン樹脂、ジアリルフタレート樹脂等が挙げられる。これらの材料は、単独で用いても、これらから適宜に複数選択し、それらを混合して用いてもよい。また、これらの材料は、無機フィラーや有機フィラー等の充填剤を光透過可能な範囲で更に含んでいてもよい。
【0019】
微細パターン形成層102の厚さは、微細パターンの凸部における最大厚さで、100nm以上、10μm以下であることが望ましい。この厚さを100nm以上とすることで、転写時の耐加圧性がより確実に優れることとなる。また、この厚さを10μm以下とすることで、突起への追従性がより確実に良好となり、後記する転写不良領域Lc(図4参照)がより確実に縮小する。
【0020】
また、微細パターン形成層102の表面には、被転写樹脂103とヘッド部101との剥離を促進するために、フッ素系、シリコーン系などの離型処理を施すことができる。また、微細パターン形成層102の表面には、金属化合物など薄膜を剥離層として形成することもできる。
【0021】
樹脂層104は、微細パターン形成層102と次に説明する第一加圧基材106との間に形成される弾性層であって、微細パターン形成層102と比較して弾性率が小さく、室温での弾性変形域が広い材料で構成される。ちなみに、ここでの「弾性率」は、ヤング率を意味する。
【0022】
この樹脂層104の材料は、微細パターン形成層102の弾性率よりも樹脂層104の弾性率が小さくなるような材料が次に挙げる樹脂から選択される。
樹脂層104の材料としては、例えば、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、ポリエチレンテレフタレート、不飽和ポリエステル、アルキド樹脂、ビニルエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド、ポリウレタン、ポリカーボネート、ポリスチレン、アクリル樹脂、ポリアミド、ABS樹脂、AS樹脂、AAS樹脂、ポリビニルアルコール、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリアリレート、酢酸セルロース樹脂、ポリプロピレン、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリフェニレンサルファイド、ポリフェニレンオキシド、シクロオレフィンポリマ、ポリ乳酸、シリコン樹脂、ジアリルフタレート樹脂、ニトリルゴム、ポリブタジエンゴム、アクリルゴム、シリコーンゴム等が挙げられる。これらの材料は、単独で用いても、これらから適宜に複数選択し、それらを混合して用いてもよい。また、これらの材料は、無機フィラーや有機フィラー等の充填剤を光透過可能な範囲で更に含んでいてもよい。
【0023】
第一加圧基材106は、樹脂層104と次に説明する第二加圧基材108との間に形成される弾性層であって、樹脂層104と比較して弾性率が小さい。第一加圧基材106は、樹脂層104の弾性率よりも第一加圧基材106の弾性率が小さくなるような材料が選択されて形成される。第一加圧基材106の材料は、前記した樹脂層104の材料から選択してもよいが、粘弾性体が望ましい。このような粘弾性体としては、例えば、シリコーンゲル、シリコーンオイル等が挙げられる。ちなみに、第一加圧基材106の材料が流動体である場合には所定の封入容器に封入して使用され、この材料の「弾性率」は体積弾性率を意味する。
【0024】
第二加圧基材108は、前記したように、固定ブロック13に固定されるものであって、第一加圧基材106よりも弾性率が大きい。つまり、第二加圧基材108は、インプリント時の加圧調整と、インプリント工程におけるアライメントや搬送等に適するよう、第一加圧基材106の材料よりも弾性率が大きい材料で形成されている。
ちなみに、第二加圧基材108の弾性率は、樹脂層104の弾性率よりも大きいことが望ましい。
この第二加圧基材108の材料としては、例えば、ガラス、樹脂等が挙げられる。また、第二加圧基材108は、2種以上の材料が積層された多層構造体であってもよく、その表面には光透過可能な厚さで、金属層、樹脂層、酸化膜層等が更に形成されたものであってもよい。
【0025】
以上のようなヘッド部101は、前記したように、光透過性を有するものを想定しているが、被転写体107の被転写樹脂103が、前記した光硬化性樹脂でないもの、つまり熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂等である場合には、光透過性でないものであっても良い。このようなヘッド部101においては、微細パターン形成層102の材料としては、可撓性を付与することが可能な金属であっても良い。このような金属の具体例としては、銅、鉄、ニッケルの他、ニッケル・リン、ニッケル・マンガン、ニッケル・鉄、ニッケル・コバルト、コバルト・モリブデン、コバルト・タングステン、ニッケル・モリブデン、ニッケル・タングステン等の合金等が挙げられる。
そして、光透過性でないヘッド部101においては、前記した第二加圧基材108の材料は、シリコン、アルミニウム等の金属であっても良い。
【0026】
次に、本実施形態に係るインプリント装置Ipを使用した転写方法を説明しながら、このインプリント装置Ipの作用効果について説明する。ここで参照する図3(a)から(d)は、本実施形態に係るインプリント装置を使用した転写方法を模式的に示す工程図である。
【0027】
図3(a)に示すように、ヘッド部101が有する微細構造体111の微細パターン111aを、被転写体107の被転写樹脂103に転写する前においては、微細パターン111aと被転写樹脂103とは離間している。そして、微細パターン111aが形成された微細パターン形成層102の上方には、樹脂層104、第一加圧基材106及び第二加圧基材108がこの順番で積層されており、前記したように、微細パターン形成層102、樹脂層104及び第一加圧基材106の順番で弾性率が小さくなっている。
なお、図3(a)中、符号105は、被転写基板であり、符号Pは、この例において、被転写基板105上で被転写樹脂103に埋没するように不可避に存在した突起である。
【0028】
図3(b)に示すように、ヘッド部101に被転写体107を押し当てて、微細パターン111a(図3(a)参照)を被転写樹脂103に転写する加圧・転写時においては、突起Pの形状に倣うようにヘッド部101の形状は追従して変形する。この変形は、樹脂層104の弾性率が微細パターン形成層102の弾性率が小さく、かつ第一加圧基材106の弾性率が樹脂層104の弾性率よりも更に小さくなっていることによって生じる。更に具体的には、微細パターン形成層102よりも弾性に富む(弾性率が小さい)樹脂層104が突起Pの形状に倣って変形する際に、この樹脂層104よりも更に弾性に富む(弾性率が小さい)第一加圧基材106がその自重で突起P周りをその上方から押圧することで、突起Pの形状にヘッド部101の形状は追従する。つまり、流動性をも併せ持つ第一加圧基材106の材料としての前記シリコーンオイル及びシリコーンゲルは、その静水圧の効果によって追従性がより良好となるので特に望ましい。
そして、被転写体107にヘッド部101が押し当てられたままで(加圧されたままで)、光源14(図1参照)から紫外線が被転写樹脂103に照射されて、光硬化性樹脂からなる被転写樹脂103は硬化する。その結果、被転写樹脂103に微細パターン111aが転写される。
【0029】
次に、この転写方法では、図1に示す昇降機構11でステージ部12が降下すると、被転写体107は、ヘッド部101から離反する。そして、図3(c)に示すように、ヘッド部101の微細パターン形成層102から被転写体107の被転写樹脂103が離型する離型状態においては、ヘッド部101の形状が突起Pに倣った形状となって凹んでいる。
【0030】
図3(d)に示すように、ヘッド部101から被転写体107が離反した後に所定の時間経過した平坦性復元時においては、図3(c)に示す凹んだヘッド部101の形状が、微細パターン形成層102、樹脂層104及び第二加圧基材108の弾性力によって従前の平坦な形状に復元する。
【0031】
そして、この転写方法では、前記したように、ヘッド部101の形状が突起Pの形状に倣うように追従して変形することで、微細パターン111a(図3(c)参照)は、突起Pの表面及びその周囲に配置された被転写樹脂103においても形成されることとなる。つまり、被転写体107において、微細パターン111aの転写不良領域が縮減される。図4は、転写不良領域を説明する模式図である。
【0032】
図4に示すように、転写不良領域Lcは、突起P周りで微細パターン111aが形成されない略円形の領域を意味し、突起Pの端から前記略円形の外周までの距離で表される。この転写不良領域Lcは、図3(b)に示す加圧・転写時に、突起Pの形状にヘッド部101の形状が十分に追従しない場合に主に生じる。そして、ヘッド部101の形状が突起Pの形状に追従しない場合に、図4に示す転写不良領域Lcは、突起Pの周辺で微細パターン形成層102(図3(a)参照)の表面が、被転写樹脂103(図3(a)参照)の表面に届かないために生ずることとなる。
【0033】
これに対して、本実施形態でのヘッド部101は、図3(b)に示すように、突起Pの形状に倣うようにヘッド部101の形状は追従して変形するので、転写不良領域Lcの発生を最小限に抑えることができる。
【0034】
以上のように、ヘッド部101を備えるインプリント装置Ipは、被転写基板105上の局所的な突起Pに追従して微細パターン111aの転写不良領域Lcを縮減することができると共に、微細構造体111の破損を防止することができる。
【0035】
そして、このインプリント装置Ipによれば、転写不良領域Lcの発生を最小限に抑えることができるので、微細構造体111が転写された被転写体107は、磁気記録媒体や光記録媒体等の情報記録媒体に適用することができる。また、この被転写体107は、大規模集積回路部品や、レンズ、偏光板、波長フィルタ、発光素子、光集積回路等の光学部品、免疫分析、DNA分離、細胞培養等のバイオデバイスに適用することができる。
【0036】
以上、本実施形態について説明したが、本発明は前記実施形態に限定されず種々の形態で実施することができる。以下に他の実施形態について図面を参照しながら説明する。図5乃至図8は、他の実施形態に係るヘッド部を説明するための模式図である。なお、ここで参照する図5乃至図8において、前記実施形態と同様の構成要素には同じ符号を付してその詳細な説明は省略する。
【0037】
図5に示すように、この他の実施形態に係るヘッド部101aは、枠体109を備えている。この枠体109は、平面形状が円形である樹脂層104の外径と略等しい外径を有するリング状の部材であって、樹脂層104と第二加圧基材108との間に配置されている。枠体109の材料としては、特に制限はないが、シリコーンゴム等の弾性体が望ましい。
【0038】
そして、第一加圧基材106が枠体109の内側に配置されることによって、このヘッド部101aは、微細パターン形成層102上に、樹脂層104、第一加圧基材106及び第二加圧基材108がこの順番で積層されて形成されている。
なお、この枠体109の内側に配置される第一加圧基材106は、固体のものの外、前記したシリコーンオイルのような流動性を示すものであってもよい。そして、流動性を有する第一加圧基材106を使用する場合の枠体109は、前記した封入容器に相当する。
【0039】
図6(a)に示すように、この実施形態に係るヘッド部101bは、第一加圧基材106と第二加圧基材108との間に、交換層110を備えている。この交換層110は、第一加圧基材106と第二加圧基材108とを分離可能に接合している。この交換層110の材料としては、例えば、樹脂、金属等が挙げられる。
第一加圧基材106及び第二加圧基材108に対する交換層110の接合方法としては、分離可能な接合方法であれば特に制限はなく、接着剤、粘着剤等を介して相互に接合する方法、ボルト、クリップ等の締結具を使用して相互に接合する方法等が挙げられる。
なお、この交換層110の材料は、例えば接着性樹脂、粘着性樹脂等のように、それ自体で第一加圧基材106と第二加圧基材108とを接続可能な材料であってもよい。
【0040】
このような交換層110を備えるヘッド部101bは、図6(b)に示すように、第一加圧基材106と第二加圧基材108とが分離可能となることで、前記したように、固定ブロック13に固定された第二加圧基材108を取り外すことなく、微細パターン形成層102の交換を行うことができる。つまり、微細パターン形成層102から交換層110までが交換可能となっている。
なお、図6(b)に示すように、第二加圧基材108から交換層110を離反させるもののみならず、このヘッド部101bは、例えば、粘着性樹脂からなる交換層110を所定回数の再利用に供するために、第二加圧基材108側に交換層110を残したままで、第二加圧基材108から第一加圧基材106を離反させるものであってもよい。つまり、ここでの「微細パターン形成層102から交換層110までが交換可能」とは、交換層110を所定回数の再利用した後に、将来的に交換する可能性がある場合を含む。
【0041】
図7(a)に示すように、この実施形態に係るヘッド部101cは、図6(a)に示すヘッド部101bと同様に、第一加圧基材106と第二加圧基材108との間に、交換層110を備えている。そして、このヘッド部101cは、ヘッド部101bと異なって、固定ブロック13と第二加圧基材108との間に保持部材112を更に備えている。この保持部材112は、固定ブロック13に固定されていると共に、第二加圧基材108を着脱自在に接合している。
この保持部材112の材料としては、例えば、樹脂、金属等のように、所定の強度を有するものであれば特に制限はない。
第二加圧基材108に対する保持部材112の接合方法としては、分離可能な接合方法であれば特に制限はなく、接着剤、粘着剤等を介して相互に接合する方法、ボルト、クリップ等の締結具を使用して相互に接合する方法等が挙げられる。
【0042】
このような保持部材112を備えるヘッド部101cは、図7(b)に示すように、第二加圧基材108と保持部材112とが分離可能となることで、微細パターン形成層102の交換を行うことができる。
【0043】
図8に示すように、この実施形態に係るヘッド部101dは、枠体109の内側に配置された第一加圧基材106と第二加圧基材108との間に、交換層110を備えている以外は、図5に示すヘッド部101aと同様に構成されている。この交換層110は、図6(a)に示す交換層110と同様のものである。
【0044】
このような交換層110を備えるヘッド部101dは、第一加圧基材106と第二加圧基材108とが分離可能となることで、前記したように、固定ブロック13に固定された第二加圧基材108を取り外すことなく、微細パターン形成層102の交換を行うことができる。
【0045】
また、前記実施形態では、被転写体107の被転写樹脂103が光硬化性樹脂であり、ヘッド部101が光透過性を有しているもので構成されているが、本発明は被転写樹脂103が熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂等の光硬化性樹脂以外の樹脂であってもよい。そして、被転写樹脂103が光硬化性樹脂以外の樹脂である場合には、前記実施形態のヘッド部101は、光透過性を有していなくてもよい。
【0046】
そして、被転写樹脂103が熱硬化性樹脂又熱可塑性樹脂である場合には、前記した光源14に代えて被転写体107を加熱する熱源を有するインプリント装置Ipが望ましい。
このインプリント装置Ipでは、熱硬化性樹脂からなる被転写樹脂103をヘッド部101に押し当てた後、被転写樹脂103を熱源が加熱することで、被転写樹脂103が硬化して微細パターンが転写されることとなる。
また、熱可塑性樹脂を被転写樹脂103として使用するインプリント装置Ipでは、熱源が熱可塑性樹脂を、そのガラス転移温度(Tg)を超える温度で加熱する。その結果、被転写樹脂103は可塑化すると共に、ヘッド部101が押し当てられることで、この被転写樹脂103には微細パターンが転写されることとなる。
このような熱源の配置位置としては、被転写体107が配置されるステージ部12が望ましい。また、熱源は、ヘッド部101が配置される固定ブロック13に併設されてもよい。
そして、このようなインプリント装置Ipでは、熱源によって加熱された被転写樹脂103を冷却する冷却機構を更に備えていてもよい。
【0047】
また、前記実施形態では、昇降機構11によってステージ部12を上昇させることでヘッド部101に被転写体107を押し当てるように構成されているが、本発明は固定ブロック13側を所定の駆動機構で降下させることで被転写体107にヘッド部101を押し当てるように構成したものであってもよい。
【実施例】
【0048】
次に、実施例を示しながら本発明をさらに具体的に説明する。
(実施例1)
この実施例1では、図5に示すヘッド部101aを備えたインプリント装置を使用して被転写体に微細パターンを転写する方法について説明する。
【0049】
ここでは、まず、幅50nm、深さ80nm、ピッチ100nmの溝パターン(微細パターン)を有する円盤状のシリコン製のマスターモールド(直径100mm)上に、光硬化性の不飽和ポリエステルがスピンコート法で塗布された。この不飽和ポリエステルを紫外線で硬化させることで、マスターモールド上に厚さ1μmでマスターモールドと略同径の微細パターン形成層102が得られた。この微細パターン形成層102の弾性率(ヤング率)は、2.4GPaであった。
【0050】
次に、マスターモールド上の微細パターン形成層102に、光硬化性の低弾性エポキシ樹脂がスピンコート法で塗布された。この低弾性エポキシ樹脂を紫外線で硬化させることで、微細パターン形成層102上に厚さ5μmでマスターモールドと略同径の樹脂層104が得られた。この樹脂層104の弾性率(ヤング率)は、10MPaであった。
【0051】
次に、樹脂層104上に、リング状でシリコーンゴム製の枠体109が接着された。この枠体109の外径は、樹脂層104の外径と略同じであり、枠体109の内径は、80mmであり、枠体109の厚さは、100μmであった。この枠体109の内側には、シリコーンゲルが流し込まれた。そして、流し込まれシリコーンゲルが70℃で30分加熱されて硬化することで厚さ100μmの第一加圧基材106が形成された。この第一加圧基材106の弾性率(ヤング率)は、3kPaであった。
【0052】
次に、第一加圧基材106上に石英ガラス板を配置し、この石英ガラス板と枠体109とを接着することで、第一加圧基材106上には石英ガラス板からなる第二加圧基材108が形成された。この第二加圧基材108の弾性率(ヤング率)は、72GPaであった。そして、微細パターン形成層102からマスターモールドを剥離することで、図5に示すヘッド部101aが得られた。
【0053】
次に、図1において、ヘッド部101として本実施例1のヘッド部101a(図5参照)が組み込まれたインプリント装置Ipを使用して、被転写体107にヘッド部101aの前記した溝パターン(微細パターン)が転写された。
被転写体107には、20mm×20mm、厚さ1mmであって、シリコン製の被転写基板105上に、光硬化性の被転写樹脂103が塗布されたものが用いられた。
また、この被転写基板105上には、高さ1μmの突起(図3(a)参照)が存在していた。
【0054】
そして、このようなインプリント装置Ipを使用して、ヘッド部101a(図5参照)に被転写体107の被転写樹脂103を押し付けると共に、この被転写樹脂103を前記したように光源14(図1参照)からの紫外線で硬化することで、図4に示すように、被転写樹脂103に微細パターン111aが転写された被転写体107が得られた。
得られた被転写体107の転写不良領域Lc(図4参照)を測定した結果、このLcは17μmであった。また、微細パターン111aの転写後に、このヘッド部101aの微細パターン形成層102(図5参照)の表面を観察したところ、破損は見られなかった。
これらの結果を表1に示す。
なお、ヘッド部101aの破損が見られなかったことについて、表1中、「○」と記している。
【0055】
【表1】

【0056】
(実施例2)
この実施例2では、図5に示すヘッド部101aにおいて、枠体109の内側に配置する第一加圧基材106としての硬化させたシリコーンゲルに代えて、シリコーンオイルを使用した以外は実施例1と同様にヘッド部101aが形成された。この第一加圧基材106の弾性率(体積弾性率)は、2.2GPaであった。
【0057】
次に、図1において、ヘッド部101として本実施例2のヘッド部101a(図5参照)が組み込まれたインプリント装置Ipを使用して、実施例1と同様の被転写体107にヘッド部101aの前記した溝パターン(微細パターン)が転写された。
微細パターン111aが転写された被転写体107の転写不良領域Lc(図4参照)を測定した結果、このLcは15μmであった。また、微細パターン111aの転写後に、このヘッド部101aの微細パターン形成層102(図5参照)の表面を観察したところ、破損は見られなかった。
これらの結果を表1に示す。
【0058】
(比較例1)
この比較例1では、前記したヘッド部101aに代えて、次に説明するヘッド部301aを使用した以外は、実施例1と同様の被転写体107に溝パターン(微細パターン)が転写された。ここで参照する図9は、比較例1で使用したヘッド部を説明するための模式図である。
図9に示すように、比較例1で使用したヘッド部301aは、直径100μm、厚さ10μmの石英ガラスに微細パターン201aが形成されたもの(以下の表2において微細パターン形成部という)である。この微細パターン201aは、幅50nm、深さ80nm、ピッチ100nmの溝パターンである。この微細パターン形成部の弾性率(ヤング率)は、72GPaであった。
【0059】
次に、図1において、ヘッド部101として本比較例1のヘッド部301a(図9参照)が組み込まれたインプリント装置Ipを使用して、実施例1と同様の被転写体107にヘッド部301aの前記した微細パターン201aが転写された。
微細パターン201aが転写された被転写体107の転写不良領域Lc(図4参照)を測定した結果、このLcは200μmであった。また、微細パターン201aの転写後に、このヘッド部301aのパターン形成部の表面を観察したところ、微細パターン201aに破損が見られた。
これらの結果を表2に示す。
なお、ヘッド部301aの破損が見られなかったことについて、表1中、「×」と記している。
【0060】
【表2】

【0061】
(比較例2)
この比較例2では、前記したヘッド部101aに代えて、次に説明するヘッド部301bを使用した以外は、実施例1と同様の被転写体107に溝パターン(微細パターン)が転写された。ここで参照する図10は、比較例2で使用したヘッド部を説明するための模式図である。
図10に示すように、比較例2で使用したヘッド部301bは、直径100μm、厚さ10μmの石英ガラスからなる基材208の表面に、硬化したポリビニルアルコールからなる厚さ3μmの微細パターン形成部202が形成されたものである。この微細パターン形成部202には、幅50nm、深さ80nm、ピッチ100nmの溝パターンである微細パターン201aが形成されている。
なお、基材208の弾性率(ヤング率)は72GPaであり、微細パターン形成部202の弾性率は1.6GPaであった。
【0062】
次に、図1において、ヘッド部101として本比較例2のヘッド部301b(図10参照)が組み込まれたインプリント装置Ipを使用して、実施例1と同様の被転写体107にヘッド部301bの前記した微細パターン201aが転写された。
微細パターン201aが転写された被転写体107の転写不良領域Lc(図4参照)を測定した結果、このLcは196μmであった。また、微細パターン201aの転写後に、このヘッド部301aのパターン形成部の表面を観察したところ、微細パターン201aに破損が見られた。
これらの結果を表2に示す。
【0063】
(実施例及び比較例でのインプリント装置の評価)
実施例1及び実施例2におけるインプリント装置では、微細パターン形成層102、樹脂層104、第一加圧基材106、及び第二加圧基材108がこの順番で積層されたヘッド部101aを備えており、表1に示すように、微細パターン形成層102、樹脂層104、及び第一加圧基材106の順番で弾性率が小さくなっているので、微小な突起Pを有する被転写体107に対してもその突起Pの形状にヘッド部101aの形状が倣うように追従して変形する。
これに対して、比較例1及び比較例2におけるインプリント装置では、表2に示すように、実施例1及び実施例2のような微細パターン形成層102、樹脂層104、及び第一加圧基材106を、ヘッド部301a,301bが有していないので、突起Pの形状にヘッド部101aの形状が倣うように追従して変形できない。
したがって、実施例1及び実施例2におけるインプリント装置では、比較例1及び比較例2におけるインプリント装置と異なって、ヘッド部101aの形状が被転写体107の突起Pの形状にヘッド部101aの形状が倣うように追従して変形するので、微細パターンの転写不良領域Lcを縮減することができると共に、微細構造体111の破損を防止することができる。
【0064】
(実施例3)
この実施例3では、図1において、ヘッド部101として前記したヘッド部101d(図8参照)が組み込まれたインプリント装置Ipを使用して、被転写体107にヘッド部101dの前記した溝パターン(微細パターン)が転写された。
本実施例3におけるヘッド部101d(図8参照)の微細パターン形成層102、樹脂層104、枠体109、及び第一加圧基材106は、前記した実施例1におけるヘッド部101a(図5参照)と同様に形成した。ちなみに、微細パターン形成層102の弾性率(ヤング率)は、2.4GPaであり、樹脂層104の弾性率(ヤング率)は、10MPaであり、第一加圧基材106の弾性率(ヤング率)は、で3kPaあった。
【0065】
本実施例3においては、第一加圧基材106(図8参照)上に、交換層110(図8参照)となる50μmのPETシートを、硬化したシリコーンゲルの接着力で密着固定し、その上に第二加圧基材108(図8参照)となる石英ガラス板を、光硬化性樹脂からなる接着剤を使用して接着した後に、実施例1と同様に微細パターン形成層102からマスターモールドを剥離することで、ヘッド部101dが作製された。
なお、本実施例3での第二加圧基材108の弾性率(ヤング率)は、72GPaであった。
【0066】
次に、図1において、ヘッド部101として本実施例3のヘッド部101d(図8参照)が組み込まれたインプリント装置Ipを使用して、実施例1と同様の被転写体107にヘッド部101dの前記した溝パターン(微細パターン)が転写された。この際、ヘッド部101dに対して被転写体107は、0.1MPaで加圧された。
微細パターン111aが転写された被転写体107の転写不良領域Lc(図4参照)を測定した結果、このLcは27μmであった。また、微細パターン111aの転写後に、このヘッド部101dの微細パターン形成層102(図8参照)の表面を観察したところ、破損は見られなかった。
【0067】
次に、本実施例3では、前記したように、被転写体107にヘッド部101dの前記した溝パターン(微細パターン)を転写した後に、図6(b)に示すように、前記した接着剤で密着している交換層110と第二加圧基材108とが分離された。つまり、図8に示す微細パターン形成層102、樹脂層104、枠体109、第一加圧基材106、及び交換層110が、第二加圧基材108から分離された。
その後、別途準備された新たな微細パターン形成層102、樹脂層104、枠体109、第一加圧基材106、及び交換層110が、第二加圧基材108に接着剤で接着されることで、ヘッド部101dの第二加圧基材108を除く他の部分が交換された。
【0068】
(実施例4)
この実施例4では、実施例3のヘッド部101d(図8参照)において、第二加圧基材108の上側の面、つまり交換層110が設けられる面と反対側の面に、次の保持部材112(図7(a)参照)を更に設けたヘッド部101c(図7(a)参照)が作製された。本実施例4での保持部材112は、ガラスで形成されており、光透過性を有している。この保持部材112は、図1に示すインプリント装置Ipにおいて、固定ブロック13と第二加圧基材108との間に配置されている。具体的には、本実施例4の保持部材112は、固定ブロック13に対してボルト(図示省略)で固定されている。そして、保持部材112は、第二加圧基材108を真空チャックすると共に、第二加圧基材108の側面をつかむ形で保持している。
なお、この実施例4でのヘッド部101c(図7(a)参照)においては、微細パターン形成層102の弾性率(ヤング率)は、2.4GPaであり、樹脂層104の弾性率(ヤング率)は、10MPaであり、第一加圧基材106の弾性率(ヤング率)は、で3kPaあった。
【0069】
次に、図1において、ヘッド部101として本実施例4のヘッド部101c(図7(a)参照)が組み込まれたインプリント装置Ipを使用して、実施例1と同様の被転写体107にヘッド部101cの前記した微細パターンが転写された。この際、ヘッド部101dに対して被転写体107は、0.1MPaで加圧された。
微細パターン111aが転写された被転写体107の転写不良領域Lc(図4参照)を測定した結果、このLcは27μmであった。また、微細パターン111aの転写後に、このヘッド部101cの微細パターン形成層102(図8参照)の表面を観察したところ、破損は見られなかった。
【0070】
次に、本実施例4では、前記したように、被転写体107にヘッド部101cの前記した溝パターン(微細パターン)を転写した後に、図7(b)に示すように、保持部材112と第二加圧基材108とが分離された。
その後、新たな微細パターン形成層102、樹脂層104、第一加圧基材106、交換層110、及び第二加圧基材108が別途に準備されると共に、前記したと同様に、第二加圧基材108が保持部材112に対して接着剤及びボルトで固定されることで、ヘッド部101cの保持部材112を除く他の部分が交換された。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】実施形態に係るインプリント装置の構成説明図である。
【図2】実施形態に係るインプリント装置のヘッド部付近の部分拡大図である。
【図3】(a)から(d)は、実施形態に係るインプリント装置を使用した転写方法を模式的に示す工程図である。
【図4】転写不良領域Lcを説明する模式図である。
【図5】他の実施形態に係るヘッド部を説明するための模式図である。
【図6】(a)及び(b)は、他の実施形態に係るヘッド部を説明するための模式図である。
【図7】(a)及び(b)は、他の実施形態に係るヘッド部を説明するための模式図である。
【図8】他の実施形態に係るヘッド部を説明するための模式図である。
【図9】比較例1で使用したヘッド部を説明するための模式図である。
【図10】比較例2で使用したヘッド部を説明するための模式図である。
【図11】(a)から(c)は、ナノインプリント技術による微細パターンの従来の形成方法の一例を模式的に示す工程図である。
【符号の説明】
【0072】
12 ステージ部
14 光源
101 ヘッド部
101a ヘッド部
101b ヘッド部
101c ヘッド部
101d ヘッド部
102 微細パターン形成層
103 被転写樹脂
104 樹脂層
105 被転写基板
106 第一加圧基材
107 被転写体
108 第二加圧基材
110 交換層
111 微細構造体
111a 微細パターン
Ip インプリント装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に微細な凹凸形状が形成された微細構造体を被転写体に接触させて、前記凹凸形状を前記被転写体に転写するインプリント装置において、
前記微細構造体を有するヘッド部と、
前記被転写体を保持するためのステージ部と、
を有し、
前記ヘッド部が、微細な前記凹凸形状が形成された微細パターン形成層と、
前記微細パターン形成層の前記凹凸形状が形成された面の反対側の面に配置された樹脂層と、
前記樹脂層の前記微細パターン形成層に接する面と反対側の面に配置された第一加圧基材と、
前記第一加圧基材の前記樹脂層と反対側の面に配置された第二加圧基材と、
を有し、
前記樹脂層の弾性率が前記微細パターン形成層の弾性率よりも小さく、前記第一加圧基材の弾性率が、前記樹脂層の弾性率よりも小さいことを特徴とするインプリント装置。
【請求項2】
前記第一加圧基材が粘弾性体であることを特徴とする請求項1に記載のインプリント装置。
【請求項3】
前記第二加圧基材の弾性率が前記第一加圧基材の弾性率よりも大きいことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のインプリント装置。
【請求項4】
前記ヘッド部が光透過性を有しており、前記ヘッド部の前記凹凸形状が形成された面の反対側から前記被転写体側に光を照射する光源を更に備えることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のインプリント装置。
【請求項5】
前記被転写体を加熱する熱源を更に備えることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のインプリント装置。
【請求項6】
前記ヘッド部が紫外光透過性であることを特徴とする請求項4に記載のインプリント装置。
【請求項7】
前記ヘッド部に交換層を更に有し、前記微細パターン形成層から前記交換層までが分離・交換可能となっていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のインプリント装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2010−99848(P2010−99848A)
【公開日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−270747(P2008−270747)
【出願日】平成20年10月21日(2008.10.21)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】