説明

ウェハ保持体

【課題】 導電回路と電極部材との接続部の信頼性を高めた封止講造を有するウェハ保持体を提供する。
【解決手段】本発明のウェハ保持体は、ウェハ保持体の内部に埋設された導電回路と該導電回路に給電するための電極部材との電気的接続部を、環状部材と封止部材とによって封止する構造であって、該環状部材の内径が環状部材の厚み方向に一定ではないことを特徴とする。前記環状部材の最小内径は、該環状部材の厚み方向のウェハ保持体のセラミックス基板側にはないことが好ましい。また、前記環状部材のウェハ保持体側の内径は、前記電極部材の外径より0.2mm以上0.5mm以下大きく、前期環状部材の最小内径は、前記電極部材の外径より0.05mm以上0.2mm以下大きいことが好ましい

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラズマCVD、減圧CVD、メタルCVDなどの半導体基板に所定の処理を行うための半導体製造装置に用いられるウェハ保持体に関し、特にウェハ保持体の導電回路と導電回路に給電するための電極部材との接続部分の封止に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体製造における成膜などの工程では、従来から被処理物であるシリコンウェハなどの基板を保持し加熱する目的で、ウェハ保持体が用いられている。このウェハ保持体として、従来からセラミックスが検討されてきた。例えば、引用文献1では、セラミックスとして窒化珪素、酸窒化アルミニウム、窒化アルミニウムが提案されている。
【0003】
このウェハ保持体には、その表面に基板を載置するための基板載置面が設けられ、その内部に導電回路が設けられている。導電回路は、例えば、加熱するための抵抗発熱体であったり、静電チャックとして使用するための静電チャック用電極であったり、プラズマを発生させるための高周波発生用電極(RF電極)であったりする。
【0004】
これらの導電回路へ給電するために、導電回路には電極部材が接続される。電極部材は、セラミックスとの熱膨張係数差の少ない金属、例えばタングステン、モリブデン、タンタルなどの高融点金属が用いられてきた。しかし、熱膨張係数を完全に一致させることは不可能であるので、接続構造に関して様々な提案がなされてきた。
【0005】
例えば、特許文献1では、ウェハ保持体に埋設された電気回路とモリブデン等の電極端子とを、銀や銅等のロウ材で接続し、中間挿入材を備えることによって、熱膨張係数差による応力を緩和する提案がなされている。しかし、ロウ材を用いるので、長期の信頼性に劣るという問題がある。
【0006】
また、特許文献2では、導電回路と端子側電極線との接続部を、ガラス等の封止部材で覆うことにより、導電回路と端子側電極線との接続部が外周側の空間に露出しない構造が提案されている。露出しないことにより、外部からの大気等を含む腐食性ガスの侵入を防止し、接続部の信頼性を向上させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2000−344584号公報
【特許文献2】特開2003−160874号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献2のように、ガラス等の封止部材で接続部を覆えば、信頼性は向上するが、ガラスはセラミックス材料に比べて強度が低い。そのため、接続部を覆うガラスの厚みが均一でない場合は、部分的に応力集中が発生して、ガラスに亀裂などが入り外部からの腐食性ガスが侵入し、接続部や電極線が劣化して信頼性が損なわれるという問題があった。
【0009】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものである。すなわち、本発明は、導電回路と電極部材との接続部の信頼性を高めた封止構造を有するウェハ保持体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のウェハ保持体は、ウェハ保持体の内部に埋設された導電回路と該導電回路に給電するための電極部材との電気的接続部を、環状部材と封止部材とによって封止する構造であって、該環状部材の内径が環状部材の厚み方向に一定ではないことを特徴とする。
【0011】
前記環状部材の最小内径は、該環状部材の厚み方向のウェハ保持体のセラミックス基板側にはないことが好ましい。
【0012】
また、前記環状部材のウェハ保持体側の内径は、前記電極部材の外径より0.2mm以上0.5mm以下大きく、前期環状部材の最小内径は、前記電極部材の外径より0.05mm以上0.2mm以下大きいことが好ましい。
【0013】
以上のようなウェハ保持体を搭載した半導体製造装置は信頼性に優れたものとなる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、導電回路と電極部材との接続部の信頼性を高めた封止構造を有するので、ウェハ保持体は非常に信頼性に優れたものとなる。
【0015】
このようなウェハ保持体を搭載した半導体製造装置は信頼性に優れたものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施形態の接続部の断面図
【図2】本発明の一実施形態の組立図
【図3】本発明の他の実施形態における環状部材の断面図
【図4】比較例における環状部材の断面図
【図5】他の比較例における環状部材の断面図
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明のウェハ保持体の材質は、アルミナ、窒化珪素、窒化アルミニウム、酸窒化アルミニウム、炭化珪素などのセラミックスとすることができる。これらのセラミックスの内部に導電回路が形成される。
【0018】
導電回路の種類は、抵抗発熱体、静電チャック用電極、高周波発生用(RF)電極などであり、これらの導電回路の内、ひとつあるいは複数の導電回路が形成されている。
【0019】
導電回路の形成は、例えば、セラミックス基板の表面に、金属粉末のペーストをスクリーン印刷によって塗布し、焼成することで焼き付ける方法や、CVDや蒸着、スパッタなどの薄膜法で形成することができる。導電回路を形成したセラミックス基板と導電回路を形成していないセラミックス基板を接合することにより、導電回路が埋設されたウェハ保持体とすることができる。
【0020】
あるいは、高融点金属のワイヤーあるいはメッシュをセラミックス粉末、あるいは造粒したセラミックス顆粒の中に埋設し、ホットプレスなどの方法によって焼成することもできる。
【0021】
図1に示すように、セラミックス基板1に埋設された導電回路2に給電するための電極部材3が接続される。電極部材3は、セラミックス基板1に形成されたザグリ穴に固定される。
【0022】
固定方法は、特に制約はないが、例えば、電極部材3の先端部10に雄ネジ加工を施し、セラミックス基板のザグリ穴先端部に雌ネジ加工を施して、螺合する方法がある。また、セラミックス基板に形成されたザグリ穴にTi等を含有する活性金属ロウにより、電極部材を直接セラミックス基板に固定することもできる。但し、セラミックス基板と活性金属ロウとの熱膨張係数差により、固定部に応力が働くことがあるので、ネジ等で機械的に固定する方が信頼性が高く好ましい。
【0023】
電極部材はセラミックスとの熱膨張係数差の少ないタングステンやモリブデン、タンタルなどが用いられる。これらの高融点金属は比較的高価であるので、必要最小限の大きさにして、外部への取り出しには、比較的安価なニッケルなどを用いる。
【0024】
また、導電回路のザグリ穴に露出した部分に金属層4を形成して、電極部材3と導電回路2の接触面積を増やして、電気的接続の信頼性を向上させることができる。この場合、接触部分の接触面積が増えるので、接続部が発熱することを防ぐこともできる。
【0025】
金属層4の材質は、例えば、タングステン、モリブデン、銀、金、ニッケルなどを用いることができる。但し、電極部材と同様、セラミックスとの熱膨張係数差の少ない方が好ましいので、タングステンやモリブデン、タンタルが好ましい。金属層4の形成は、ペーストを塗布して焼き付ける方法や、薄膜法にて膜形成する方法、金属箔を設置する方法等がある。
【0026】
以上のように、セラミックス基板1に電極部材3を固定した後、図2に示すように、環状部材5と封止部材6をセットして、非酸化性雰囲気中で加熱することにより、封止部材6を溶融させて、環状部材5と電極部材3並びにセラミックス基板1との隙間に封止部材6を行き渡らせ導電回路と電極部材との接続部を封止する。
【0027】
環状部材の内径は、環状部材の厚み方向に一定でないことが重要である。一定でないとは、図1に示すように段差を設ける方法や、図3に示すようにテーパーを付ける方法等がある。ここで、環状部材の内径の最小部分は、セラミックス基板側にないことも大切である。図4に示すように環状部材の内径が一定である場合、図5に示すように環状部材の内径の最小部分が、セラミックス基板側にある場合は、信頼性に劣る。
【0028】
本発明のように、環状部材の内径が一定ではなく、内径の最小部分がセラミックス基板側にない場合は、電極部材3と環状部材5との隙間がセラミックス基板側で大きくなるので、封止部材6が電極部材3と環状部材5の間に十分回り込むことができる。しかも、最小内径部分で、電極部材3と環状部材5との位置合わせができるので、電極部材3と環状部材5との位置ズレを小さくすることができるので、電極部材3と環状部材5との隙間が円周方向に均一になり、封止部材6も均等に回り込むことになるので、封止の信頼性を高めることができる。
【0029】
環状部材の材質は、セラミックス基板と同一であることが好ましい。材質が異なると、環状部材とセラミックス基板との間に熱膨張係数差に基づく応力が発生し、封止部材に大きな負荷がかかり、封止部材の一部が破損し、リークすることが起こり得る。リークが発生すれば、リークした部分から、大気を含む酸化性あるいは腐食性のガスが進入し、導電回路と電極部材並びにこれらの接続部分が劣化する。
【0030】
封止部材は、セラミックス基板、電極部材、環状部材と熱膨張係数が同じである方が好ましい。また、耐酸化性を有している材質が好ましい。例えば、セラミックス基板が窒化アルミニウムの場合、亜鉛硼珪酸ガラスあるいは結晶化ガラスを挙げることができる。
【0031】
先に説明したように、封止時は図2のようにセットして、耐酸化性雰囲気で加熱して行うが、その際、環状部材に所定の荷重を加えることが好ましい。荷重を加えるには、例えば環状部材の上に重し(図示せず)を乗せることで行うことができる。これは、封止部材に含有される気泡等が、荷重を加えることによって外部に排出されるため。環状部材と電極部材との間並びに環状部材とセラミックス基板との間の封止部材中に気泡等が入らなくなり、密着性が高まるので、封止の信頼性をより高めることができるからである。荷重としては、0.98kPa(100g/cm)以上であれば、良好な密着性を得ることができる。
【0032】
以上のような、封止構造を備えたウェハ保持体を搭載した半導体製造装置は、非常に寿命が長く、信頼性の高いものとなる。
【実施例1】
【0033】
窒化アルミニウム(AlN)粉末97重量部に、酸化イットリウム(Y)を、3重量部添加し、アクリルバインダー、有機溶剤を加え、ボールミルにて24時間混合して、AlNスラリーを作製した。このスラリーを、スプレードライにてAlN顆粒を作製し、焼結後の直径が320mmになるようにプレス体を成形した。プレス体は、焼結後の厚みが9mmになるようにしたものを2枚作製した。
【0034】
これらのプレス体を窒素雰囲気中700℃で脱脂し、窒素雰囲気中1850℃で焼結し、AlN焼結体を作製した。AlN焼結体に両面研磨加工を行い、厚みを8mmとした。厚み8mmのAlN焼結体の1枚の片面に導電回路としてヒータ回路を、タングステンペーストをスクリーン印刷して形成し、700℃窒素雰囲気中で脱脂後、1800℃窒素雰囲気中で焼成した。
【0035】
AlN粉末を主成分とするセラミックスペーストを作製した。このセラミックスペーストを、前記AlN焼結体のヒータ回路を形成した面に、スクリーン印刷にて塗布し、乾燥後窒素雰囲気中700℃で脱脂した。この面に、厚さ8mmのAlN焼結体を設置し、ホットプレスにて、0.98MPaの圧力、1750℃の温度で接合した。接合後、電極部材を取り付ける位置に座グリ加工を施し、ヒータ回路を露出させた。なお、ザグリの先端部は、ネジ加工を施した。
【0036】
ヒータ回路が露出した部分に、図1に示すように金属層4を形成した。具体的には、タングステンペーストを塗布し、窒素雰囲気中1700℃で焼成した。
【0037】
また、前記AlN顆粒を用いて、外径80mm、内径72mm、長さ200mmで端部にフランジ加工されたAlN筒状体を準備し、AlN粉末を主成分とするペーストをフランジ部に塗布し、1700℃窒素雰囲気中で、前記AlN焼結体に接合した。
【0038】
図1に示すように、M3の雄ネジ加工を両端に施しフランジ部を形成したタングステン(W)部品3を電極部品として用意した。このW部品には、ニッケルメッキを施した。なお、W部品のフランジ部の直径は7mm、中央部の直径は5mmである。このW部品を前記ザグリ部にねじ込んだ。
【0039】
表1に示すような各種内径の環状部材5を用意し、図2に示すように、封止部材6と共にセットし、荷重1kgを加え、窒素雰囲気中800℃で封止した。なお、封止部材は、亜鉛硼珪酸ガラスを用いた。なお、環状部材の内径以外は共通で、外径10mm、厚さ5mm、内径は厚さ2.5mmの部分で段差を設けた。
【0040】
このようにして作製したウェハ保持体を大気中500℃の温度で、1000時間キープし、発熱体の抵抗値の変化を評価した。その結果を、表1に示す。ウェハ保持体は、各20個作製した。1000時間キープ後に、抵抗値に変化がなかったものを◎、抵抗値の変化が5%未満のものを○、抵抗値の変化が5%以上のものを不良とし、20個中の数で表1に示す。
【0041】
なお、環状部材の内径の最小値を、電極外径と同じ5mmとしたものは、封止できなかった。
【0042】
【表1】

【0043】
表1から判るように、環状部材のセラミックス基板側の内径は、電極部材の外径より、0.2mm以上0.5mm以下大きく、最小内径が電極部材の外径より0.05mm以上0.2mm以下大きい場合が、抵抗値の変化がなく、信頼性に優れたウェハ保持体とすることができる。
【実施例2】
【0044】
環状部材の内径の形状を図3に示すように、テーパー状としたこと以外は、実施例1と同様にして、ウェハ保持体を作製し、同様に評価した。その結果を表2に示す。なお、テーパー形状は、厚み方向2.5mmまでを最小内径とし、厚み方向2.5mmからセラミックス基板側にテーパーを設けた。
【0045】
【表2】

【0046】
段差ではなく、テーパー形状の場合も、環状部材のセラミックス基板側の内径は、電極部材の外径より、0.2mm以上0.5mm以下大きく、最小内径が電極部材の外径より0.05mm以上0.2mm以下大きい場合が、抵抗値の変化がなく、信頼性に優れたウェハ保持体とすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明によれば、導電回路と電極部材との接続部の信頼性を高めた封止構造を有するので、ウェハ保持体は非常に信頼性に優れたものとなる。このようなウェハ保持体を備えた半導体製造装置は、非常に信頼性の高いものとすることができる。
【符号の説明】
【0048】
1 セラミックス基板
2 導電回路
3 電極部材
4 金属層
5 環状部材
6 封止部材
10 先端部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウェハ保持体の内部に埋設された導電回路と該導電回路に給電するための電極部材との電気的接続部を、環状部材と封止部材とによって封止する構造であって、該環状部材の内径が環状部材の厚み方向に一定ではないことを特徴とするウェハ保持体。
【請求項2】
前記環状部材の最小内径は、該環状部材の厚み方向のウェハ保持体側にはないことを特徴とする請求項1に記載のウェハ保持体。
【請求項3】
前記環状部材のウェハ保持体側の内径は、前記電極部材の外径より0.2mm以上0.5mm以下大きく、前期環状部材の最小内径は、前記電極部材の外径より0.05mm以上0.2mm以下大きいことを特徴とする請求項1または2に記載のウェハ保持体。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載のウェハ保持体を搭載したことを特徴とする半導体製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−204497(P2012−204497A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−66215(P2011−66215)
【出願日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】