エアバッグ装置
【課題】簡便にかつ低コストでディフューザを補強するとともに、ディフューザの周りのエアバッグを保護する。
【解決手段】エアバッグ装置1は、エアバッグ10と、インフレータ2と、ディフューザ50とを備えている。エアバッグ10は、ガスにより膨張する膨張部30を有する。インフレータ2は、エアバッグ10内でガスを発生する。ディフューザ50は、インフレータ2を囲んで配置されて、ガスを膨張部30内で放出する。保護部材3が、エアバッグ10内で、ディフューザ50の外面の一部を覆う。
【解決手段】エアバッグ装置1は、エアバッグ10と、インフレータ2と、ディフューザ50とを備えている。エアバッグ10は、ガスにより膨張する膨張部30を有する。インフレータ2は、エアバッグ10内でガスを発生する。ディフューザ50は、インフレータ2を囲んで配置されて、ガスを膨張部30内で放出する。保護部材3が、エアバッグ10内で、ディフューザ50の外面の一部を覆う。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両内でエアバッグを膨張展開させて、エアバッグにより乗員を保護するエアバッグ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の緊急時や衝突時に乗員を保護するため、エアバッグ装置が使用されている。エアバッグ装置は、インフレータが発生するガスによりエアバッグを膨張展開させる。乗員は、エアバッグにより受け止められて保護される。従来、ディフューザにより、ガスをエアバッグの膨張部へ案内等して、エアバッグを適宜展開させるエアバッグ装置が知られている。
【0003】
ディフューザは、エアバッグ内で、インフレータを囲んで配置される。インフレータは、ディフューザ内でガスを発生する。ディフューザは、ガスを膨張部内で所定方向に放出して、膨張部にガスを供給する。その際、ディフューザは、ガスの熱や衝撃により、ダメージを受けることがある。ディフューザがガスで破損した場合には、ガスがエアバッグに直接当たる虞がある。また、ディフューザが破損しないときでも、ガスの熱により、ディフューザの周りのエアバッグがダメージを受ける虞がある。
【0004】
これに対し、従来、保護布により、インナーチューブの縫合部を保護するエアバッグ装置が知られている(特許文献1参照)。
インナーチューブは、ディフューザと同様に、エアバッグ内でインフレータを囲む。インフレータは、インナーチューブ内でガスを発生する。保護布は、インナーチューブの内面に縫い付けられて、縫合部を覆う。インフレータがガスを発生するときに、保護布により、ガスが縫合部に当たるのを防止する。
【0005】
ところが、従来の保護布は、インナーチューブ内に設けられるため、保護布とインナーチューブの縫製には、手間と時間がかかる。そのため、この保護布よりディフューザを補強してエアバッグを保護する場合には、面倒な作業を要する。また、作業効率も低くなるため、コストも増加することがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−254057号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、このような従来の問題に鑑みなされたもので、その目的は、簡便にかつ低コストでディフューザを補強するとともに、ディフューザの周りのエアバッグを保護することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、ガスにより膨張する膨張部を有するエアバッグと、エアバッグ内でガスを発生するインフレータと、インフレータを囲んで配置されてガスを膨張部内で放出するディフューザとを備えたエアバッグ装置であって、エアバッグ内でディフューザの外面の一部を覆う保護部材を備えたエアバッグ装置である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、簡便にかつ低コストでディフューザを補強できる。また、ディフューザの周りのエアバッグを保護することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本実施形態のエアバッグ装置を示す図である。
【図2】展開したエアバッグを示す正面図である。
【図3】ディフューザと保護部材を示す図である。
【図4】ディフューザと保護部材を示す図である。
【図5】ディフューザを組み付けたエアバッグを示す図である。
【図6】インフレータを示す側面図である。
【図7】インフレータを組み付けたエアバッグを示す図である。
【図8】膨張展開したエアバッグを示す正面図である。
【図9】図8のディフューザ付近を示す拡大図である。
【図10】保護部材と他の実施形態のディフューザを示す図である。
【図11】保護部材と他の実施形態のディフューザを示す図である。
【図12】形成前のエアバッグを示す正面図である。
【図13】形成後のエアバッグを示す正面図である。
【図14】インフレータを組み付けたエアバッグを示す図である。
【図15】膨張展開したエアバッグを示す正面図である。
【図16】図15のディフューザ付近を示す拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明のエアバッグ装置の一実施形態について図面を参照して説明する。
本実施形態では、車両内でエアバッグをカーテン状に展開させるカーテンエアバッグ装置(以下、単にエアバッグ装置という)を例に採り説明する。エアバッグ装置は、車両内に搭載されて、膨張展開するエアバッグにより乗員を受け止めて保護する。
【0012】
図1は、本実施形態のエアバッグ装置を示す図である。図1では、車両90に搭載したエアバッグ装置1を車室内から見て示している。また、車両90の側壁91とエアバッグ装置1を、車両90の後方側を省略して、かつ、車両90の幅方向から見て模式的に示している。エアバッグ装置1は、車両90の内面を透視して示している。
なお、本発明では、車両90における前方と後方を単に前方と後方といい、車両90における前後方向を単に前後方向という。また、車両90における上方と下方を単に上方と下方といい、車両90における上下方向を単に上下方向という。
【0013】
車両90は、図示のように、車室内の側壁91に、上方のルーフレール92、前方のフロントピラー(Aピラー)93、センターピラー(Bピラー)94、及び、後方のリアピラー(Cピラー)(図示せず)を有する。また、車両90は、前部ドア95と、後部ドア96と、ドア95、96に設けられた窓部97、98とを備えている。
【0014】
エアバッグ装置1は、エアバッグ(カーテンエアバッグ)10と、筒状のインフレータ2とを備えている。エアバッグ装置1は、車体に取り付けられたトリムとヘッドライニング(図示せず)の内部に配置される。エアバッグ10は、膨張展開できるように折り畳まれて、車両90内に取り付けられる。また、エアバッグ10は、細長く折り畳まれて、側壁91の上部に沿って配置される。エアバッグ10は、前後方向に沿ってルーフレール92に取り付けられて、リアピラーからフロントピラー93まで配置される。折り畳まれたエアバッグ10は、固定手段(図示せず)により、車体に固定される。エアバッグ10の前方部11は、フロントピラー93に取り付けられる。
【0015】
インフレータ2は、シリンダタイプのガス発生装置である。インフレータ2は、エアバッグ10内に挿入されて、エアバッグ10内でガスを発生する。また、インフレータ2は、センターピラー94の上方に配置されて、ルーフレール92に取り付けられる。インフレータ2は、固定手段(図示せず)により、車体に固定される。車両緊急時や衝撃検知時に、インフレータ2は、ガスを発生して、エアバッグ10にガスを供給する。このガスにより、エアバッグ10を、側壁91の上部から下方に向かってカーテン状に膨張展開させる。
【0016】
図2は、展開したエアバッグ10を示す正面図である。
エアバッグ10は、図示のように、矩形状の袋体であり、例えば、樹脂を被覆した布からなる基布により製造される。ここでは、エアバッグ10は、乗員側の表基布(表パネル)12と、側壁91側の裏基布(裏パネル)13とを有する。また、エアバッグ10は、連結ベルト20と、複数(図2では、6つ)の固定布21〜26と、筒状の挿入部40とを有する。挿入部40内には、インフレータ2(図2では図示せず)が挿入される。
【0017】
エアバッグ10の前方端は、連結ベルト20によりフロントピラー93に連結される。複数の固定布21〜26は、矩形状をなし、エアバッグ10の上方の縁(上縁という)に一体に形成されている。連結ベルト20と固定布21〜26は、ボルト等からなる固定手段(図示せず)により、フロントピラー93とルーフレール92に固定される。
【0018】
表基布12と裏基布13は、同じ形状に形成され、重ね合わせて、外縁接合部15に沿って接合される。外縁接合部15は、エアバッグ10を区画して、基布12、13の間に膨張部30を形成する。膨張部30は、インフレータ2が発生するガスにより膨張する。外縁接合部15は、膨張部30の外縁形状を規定する。基布12、13は、外縁接合部15で、縫製のみ、もしくは、縫製及び接着、等により接合される。即ち、基布12、13が、外縁接合部15に沿って、1周又は複数周縫製される、もしくは、1周又は複数周縫製した部分が接着剤によりシールされる、等により、基布12、13は、外縁接合部15で気密状に接合される。
【0019】
エアバッグ10には、外縁接合部15により、前膨張部31、後膨張部32、及び、連結膨張部33が形成される。膨張部31〜33は、それぞれ矩形状をなし、全体としてエアバッグ10の膨張部30を構成する。前膨張部31は、膨張部31〜33中で前後方向に最も長く形成されて、エアバッグ10内で前方に配置される。前膨張部31は、前部ドア95の窓部97とセンターピラー94の側方で膨張して、主に前席の乗員を受け止める。
【0020】
後膨張部32は、前膨張部31よりも前後方向に短く形成されて、エアバッグ10内で後方に配置される。後膨張部32は、後部ドア96の上方で膨張して、主に後席の乗員を受け止める。連結膨張部33は、他の膨張部31、32よりも上下方向に狭く形成される。連結膨張部33は、エアバッグ10の上縁で、前膨張部31と後膨張部32の間に設けられて、膨張部31、32を連結する。3つの膨張部31〜33の間には、非膨張部34が、エアバッグ10の下方の縁(下縁という)から上方に向かって形成される。非膨張部34は、膨張部30の外に設けられる。
【0021】
エアバッグ10は、膨張部30内に、第1〜第4の内部接合部16〜19を有する。基布12、13は、複数の内部接合部16〜19で、縫製及び接着により接合される。内部接合部16〜19の先端は、膨張部30内で環状(環状部16A〜19A)に接合される。複数の内部接合部16〜19は、前後方向に離して配置され、膨張部30内にガスの流通部と気室を形成する。第1と第2の内部接合部16、17は、前膨張部31に第1と第2の気室35、36を形成する。第4の内部接合部19は、後膨張部32に第3の気室37を形成する。
【0022】
挿入部40は、エアバッグ10内にガスを供給するための開口部(ガス供給部)である。挿入部40は、エアバッグ10の前後方向の中間に形成され、前膨張部31の後方端に開口する。基布12、13は、挿入部40において、エアバッグ10の上縁から斜め上方に突出する。基布12、13の縁部は、先端の挿入口41を除いて、外縁接合部15から連続して接合される。これにより、挿入部40は、両端が開口した筒状に形成され、エアバッグ10の上縁に一体に設けられる。
【0023】
挿入部40は、膨張部30から直線状に突出するとともに、エアバッグ10の長手方向に対して所定の角度αで傾斜する。角度αは、エアバッグ10を平面上に拡げた状態で、挿入部40の延びる方向とエアバッグ10の長手方向との間の角度である。ここでは、挿入部40の角度αは、30度〜60度の角度に設定される。挿入部40の内部は、一端の挿入口41でエアバッグ10の外部に繋がり、他端で膨張部30の内部と繋がる。インフレータ2は、挿入口41から挿入部40に挿入されて、エアバッグ10内に配置される。ただし、挿入部40には、ディフューザ50と保護部材3が予め配置される。ディフューザ50と保護部材3は、挿入口41から挿入部40に挿入されて、エアバッグ10内に配置される。
【0024】
図3、図4にディフューザ50と保護部材3を示す。図3Aは、形成前のディフューザ50と保護部材3の展開図である。図3B、図4A、図4Bに、ディフューザ50の形成過程を示す。図4Cは、図4Bの矢視X1−X1線で見たディフューザ50と保護部材3の断面図である。
ディフューザ50は、インフレータ2が発生するガスを整流する整流部材であり、直線状に延びる筒状部材からなる。ディフューザ50は、可撓性を有する部材、又は、変形自在な部材からなる。本実施形態では、ディフューザ50は、図3、図4に示すように、変形自在な基布51からなる。ディフューザ50は、折り返した基布51を縫製により接合して形成される。ディフューザ50の外面52には、布状の保護部材3が取り付けられる。
【0025】
ディフューザ50用の基布51(図3A参照)は、所定の折り返し線L1で折り返される。その際、基布51は、幅方向(図3では上下方向)の中心線で折り返される。折り返し線L1の両側の基布51A、51Bは、それぞれ細長い矩形状に形成され、縁を揃えて重ね合わされる。ただし、一方の基布51Aは、他方の基布51Bよりも長くなっている。基布51の長手方向の一端(図3では左端)は、三角形状に形成される。
【0026】
基布51A、51B(図3B、図4参照)は、重ね合わせた後、縁に沿う2箇所の接合部53A、53Bで接合される。第1の接合部53Aは、ディフューザ50の先端に位置する。第2の接合部53Bは、ディフューザ50の側縁に位置する。接合部53A、53Bは、基布51A、51Bの間を塞ぐ。ディフューザ50は、重ね合わせた基布51を接合して筒状に形成される。その際、基布51は、第1の接合部53Aで接合した後、第2の接合部53Bで接合する。ディフューザ50は、挿入部40の形状に対応して直線形状に、かつ、細長い矩形状に形成される。ディフューザ50の先端は、次第に細くなる楔状に形成される。
【0027】
保護部材3は、ディフューザ50の周りのエアバッグ10を保護するための部材である。また、保護部材3は、ディフューザ50を補強する補強部材でもある。保護部材3は、ディフューザ50とエアバッグ10の間に配置される。保護部材3(図3A参照)は、矩形状の基布からなる保護布(補強布)であり、所定の折り返し線L2で折り返される。保護部材3の長さH1は、ディフューザ50の幅H2と同じ寸法になっている。ディフューザ50を第1の接合部53Aで接合した後(図3B参照)、保護部材3を、長手方向の中心線で折り返して、ディフューザ50の外面52に配置する。
【0028】
保護部材3(図4A参照)は、ディフューザ50の一部を包むように配置されて、外面52の一部に重なる。また、保護部材3は、ディフューザ50の幅方向に沿って、ディフューザ50に1周巻き付けるように配置される。ディフューザ50は、保護部材3の間に挟まれる。保護部材3の折り曲げた部分(折り返し線L2の折り目)は、ディフューザ50の一方の側縁に接する。保護部材3の先端は、ディフューザ50の他方の側縁に合わせる。保護部材3は、ディフューザ50の外面52に隙間なく接する。
【0029】
ディフューザ50の基布51を第2の接合部53Bで接合するときに(図4B参照)、保護部材3が、第2の接合部53Bでディフューザ50に接合される。これにより、ディフューザ50の両面(図4C参照)で、保護部材3の先端の全体が、ディフューザ50に接合される。保護部材3は、第2の接合部53Bでディフューザ50に縫い合わされて、ディフューザ50と一体になる。
【0030】
ディフューザ50は、ガス流路54と、インフレータ2の挿入口55と、複数(図4Bでは2つ)のガス放出口56A、56Bとを有する。ガス流路54は、ディフューザ50の内部空間、及び、インフレータ2の挿入部である。ガス流路54は、ディフューザ50の内部に筒状に形成される。保護部材3は、ガス流路54の途中部分で、ディフューザ50の外面52を覆う。挿入口55は、ガス流路54の一端に設けられた開口である。インフレータ2は、挿入口55からディフューザ50内(ガス流路54)に挿入される。
【0031】
インフレータ2がディフューザ50内でガスを発生すると、ガスは、ガス流路54を通って、ガス放出口56A、56Bから放出される。ガス放出口56A、56Bは、ディフューザ50内のガスをエアバッグ10内に放出する。第1のガス放出口56Aは、基布51にスリット状に形成された開口(図3A参照)からなり、ディフューザ50の先端に設けられる。第2のガス放出口56Bは、接合部53A、53Bの間に設けられた非接合部からなる。第2のガス放出口56Bは、ディフューザ50の先端で、第1のガス放出口56Aの逆側に設けられる。ガスは、複数のガス放出口56A、56Bから、相異なる所定方向(ここでは、逆方向)に向かって放出される。
【0032】
挿入部40とディフューザ50(図2参照)は、それぞれ2つの連結孔42、57を有する。挿入部40とディフューザ50は、後述するように、連結孔42、57によりインフレータ2と連結する。連結孔42、57は、挿入部40とディフューザ50の端部に、円形状に形成されている。ディフューザ50の2つの連結孔57は、ディフューザ50の長手方向に沿って配置されている。挿入部40の2つの連結孔42は、ディフューザ50の2つの連結孔57と同じ間隔に配置されている。ディフューザ50は、ガス放出口56A、56Bが設けられた先端から、挿入部40内に挿入される。その際、ディフューザ50を、挿入口41から挿入部40の内部に挿入して、挿入部40内に配置する。これにより、ディフューザ50を挿入部40に組み付ける。
【0033】
図5は、ディフューザ50を組み付けたエアバッグ10を示す図である。
ディフューザ50は、図示のように、挿入口41から膨張部30まで、挿入部40に沿って真っ直ぐに挿入される。ディフューザ50は、膨張部30内の所定位置まで挿入されて、挿入部40から膨張部30まで直線状に配置される。その際、ディフューザ50の端部を、挿入部40の端部に合わせる。また、ディフューザ50の連結孔57と挿入部40の連結孔42の位置を合わせる。連結孔57と連結孔42は、重ねて配置されて、ディフューザ50と挿入部40を貫通する。ディフューザ50は、下方の第3の内部接合部18から離れた位置に配置される。ガス放出口56A、56Bは、膨張部30内に配置される。
【0034】
ディフューザ50と挿入部40は、接合部43、44で縫製により接合される。接合部43、44で、ディフューザ50と挿入部40は、ディフューザ50の幅方向に沿って縫い合わされる。また、ディフューザ50と挿入部40は、2つの連結孔57の間の部分(接合部43)において接合される。これにより、ディフューザ50が、挿入部40に設けられた挿入口41で、挿入部40に接合される。ディフューザ50と挿入部40は、接合部43、44での接合により、挿入口41の周囲で一体になる。また、ディフューザ50と挿入部40は、一体化して補強される。ディフューザ50と挿入部40は、外力を単独で受けずに、共同して外力を受ける。その結果、ディフューザ50と挿入部40は、外力に対する強度が高くなり、破れ難くなる。このように、接合部43、44は、ディフューザ50と挿入部40を補強する補強部(補強縫製)である。
【0035】
保護部材3は、ディフューザ50とともに挿入部40に挿入される。保護部材3は、挿入部40内で、ディフューザ50とエアバッグ10の間に配置される。その後、ディフューザ50の挿入口55を開いて、インフレータ2を挿入口55からディフューザ50内に挿入する。インフレータ2は、ディフューザ50とともにエアバッグ10に組み付けられる。
【0036】
図6は、インフレータ2を示す側面図である。
インフレータ2は、図示のように、複数のガスの噴出口2Aと、2つの連結部材2Bとを有する。インフレータ2の長手方向の一端部は、噴出口2Aが設けられたガス噴出部2C(ガス発生部)である。噴出口2Aは、ガス噴出部2Cの外周全体に配置されている。インフレータ2(図6A参照)は、複数の噴出口2Aからガスを放射状に噴出する。2つの連結部材2Bは、インフレータ2の長手方向に離して配置されて、インフレータ2に固定されている。連結部材2Bは、ボルトであり、インフレータ2の側方に突出する。例えば、連結部材2Bは、溶接によりインフレータ2に一体に固定される。上記した連結孔42、57は、連結部材2Bの間隔と同じ間隔で形成されている。
【0037】
インフレータ2(図6B参照)には、案内筒4が取り付けられる。案内筒4は、筒状をなし、ディフューザ50内のインフレータ2を囲む。案内筒4は、ガス噴出部2Cの周りに配置されて、インフレータ2が発生するガスをディフューザ50内へ向けて案内する。案内筒4は、基布により帯状に形成された布状部材4Aからなる。布状部材4Aは、インフレータ2の外周に複数周巻き付けられて筒状をなす。布状部材4Aは、ガス噴出部2Cから突出するように配置されて、一端の開口からガスを放出する。ガスは、案内筒4により整流されて、案内筒4から所定方向に向かって供給される。
【0038】
案内筒4は、布状部材4Aに形成された複数の連結孔4Bを有する。布状部材4Aには、2つの連結孔4Bが、連結部材2Bの間隔と同じ間隔で形成されている。また、2つの連結孔4Bが、布状部材4Aに所定間隔で形成されている。複数の連結孔4Bは、布状部材4Aをインフレータ2に巻き付ける際に、連結部材2Bに順次挿入される。布状部材4Aは、連結孔4Bに連結部材2Bを通しながら、インフレータ2に巻き付けられる。2つの連結孔4Bが、布状部材4Aをインフレータ2に1周巻き付ける毎に2つの連結部材2Bに挿入される。これにより、布状部材4Aが、インフレータ2に仮止めされる。連結部材2Bは、布状部材4A(案内筒4)をインフレータ2に連結する。インフレータ2は、案内筒4とともにディフューザ50に挿入される。
【0039】
図7は、インフレータ2を組み付けたエアバッグ10を示す図である。
インフレータ2は、図示のように、少なくとも噴出口2Aがディフューザ50内に位置するように、ディフューザ50に挿入される。これにより、インフレータ2のガス噴出部2Cを含む所定範囲を、ディフューザ50内に配置する。案内筒4は、インフレータ2とディフューザ50の間に配置される。
【0040】
ディフューザ50と挿入部40は、インフレータ2に巻き付けられる。その際、インフレータ2の連結部材2Bを、ディフューザ50と挿入部40を貫通する連結孔42、57に挿入する。連結部材2Bは、インフレータ2をディフューザ50と挿入部40に連結する。ディフューザ50と挿入部40でインフレータ2を包んだ後、バンド5を挿入部40の外周に配置する。挿入部40、ディフューザ50、及び、案内筒4は、バンド5で締め付けられて、インフレータ2に気密状に固定される。これにより、インフレータ2が、ディフューザ50及び挿入部40に組み付けられる。
【0041】
ディフューザ50は、インフレータ2のガス噴出部2Cと案内筒4を囲む。保護部材3は、エアバッグ10内で、ディフューザ50の外面52の一部(所定部分)を覆い、ディフューザ50を部分的に補強する。ガス噴出部2Cと案内筒4は、エアバッグ10内で、ディフューザ50の保護部材3に覆われた部分に配置される。保護部材3は、ガス噴出部2Cの全体を囲む。ガス噴出部2Cと案内筒4は、保護部材3の内部に配置される。その後、エアバッグ装置1は、車両90に搭載される。エアバッグ装置1は、作動信号を受信したときにインフレータ2を作動させて、エアバッグ10を膨張展開させる。
【0042】
図8は、膨張展開したエアバッグ10を示す正面図である。図8では、エアバッグ10内のガスの流れを矢印で示している。図9は、図8のディフューザ50付近を示す拡大図である。
インフレータ2は、図示のように、前後方向に沿うように車体に取り付けられる。これに伴い、挿入部40とディフューザ50が曲げられる。インフレータ2は、ディフューザ50内でガスを発生して、エアバッグ10内にガスを供給する。供給されるガスにより、膨張部30が膨張して、エアバッグ10が、折り畳み形状を解消しつつカーテン状に展開する。
【0043】
ディフューザ50は、エアバッグ10内でインフレータ2を囲んで配置されており、最初に膨張を開始する。また、ディフューザ50は、インフレータ2が発生するガスを内面の一部で受けてから、ガスを膨張部30へ向けて案内する。保護部材3は、ディフューザ50のガスを受ける部分(ガス受け部分Y1)に配置されて、ディフューザ50を外部から部分的に覆う。挿入部40とディフューザ50が、途中で曲げられているため、ガスは、案内筒4から噴出してディフューザ50の所定部分に当たる。そのため、ディフューザ50のガス受け部分Y1は、案内筒4に案内されたガスが直接当たる部分である。
【0044】
保護部材3は、少なくともガス受け部分Y1の外面52を覆う。また、保護部材3の折り曲げた部分(折り返し線L2)が、ガス受け部分Y1内に位置する。保護部材3は、ガス受け部分Y1の反対側(第2の接合部53B)で、ディフューザ50に接合される。即ち、保護部材3は、ガス受け部分Y1を外れた位置で、ディフューザ50に接合される。ガス受け部分Y1は、保護部材3の連続した面で覆われる。
【0045】
ディフューザ50は、インフレータ2が発生するガスを、膨張部30内でガス放出口56A、56Bから放出する。ディフューザ50は、ガスを膨張部30へ流出して、膨張部30へガスを連続して供給する。その際、ガス放出口56A、56Bは、膨張部30内で、ガスを所定方向へ向かって放出する。ディフューザ50は、ガス放出口56A、56Bによりガスを分配する。インフレータ2が発生するガスは、ディフューザ50を通って分岐して、前後方向に分配される。ガスは、前膨張部31へ供給されるとともに、連結膨張部33を通って後膨張部32へ供給される。これにより、エアバッグ10(図1参照)が、側壁91を覆うように膨張展開して、窓部97、98を塞ぐ。エアバッグ10は、前席と後席の乗員を受け止めて、乗員の頭部を中心に保護する。
【0046】
上記したように、エアバッグ10は、ディフューザ50内のガスの熱でダメージを受ける虞がある。特に、インフレータ2と車体の間の隙間では、熱がこもって温度が上昇する傾向があるため、エアバッグ10がダメージを受け易い。これに対し、本実施形態では、保護部材3によりディフューザ50の外面52の一部を覆うことで、ディフューザ50の必要な部分を補強できる。エアバッグ10は、ディフューザ50と保護部材3によりガスの熱から保護される。保護部材3により熱の伝達を抑制できるため、インフレータ2と車体の間の隙間でも、温度の上昇を抑制できる。その結果、エアバッグ10の熱によるダメージを軽減できる。
【0047】
ディフューザ50の破損し易い部分を保護部材3で予め覆うことで、ディフューザ50の必要な部分を補強できる。仮に、ディフューザ50がガスの影響で破損したとしても、保護部材3により、エアバッグ10を保護できる。また、ディフューザ50は、ガスの圧力で保護部材3に押し付けられる。ディフューザ50に孔が開いた場合には、ディフューザ50の孔は、保護部材3に押し付けられて塞がれる。その結果、孔からのガス漏れが抑制されるため、ディフューザ50から漏れるガスの量を少なくできる。ガスが、エアバッグ10に直接、又は、勢いよく当たるのを防止することもできる。従って、ディフューザ50の周りのエアバッグ10を保護できる。エアバッグ10の破損を防止できるため、エアバッグ10からガスが漏れるのを防止することもできる。
【0048】
保護部材3はディフューザ50の外面52に設けるため、保護部材3をディフューザ50に容易に取り付けることができる。保護部材3とディフューザ50の接合も簡単に行える。そのため、エアバッグ10の製造の手間と時間を削減できるとともに、作業効率を高くできる。保護部材3によりディフューザ50の一部のみを覆うため、保護部材3を比較的小さくできる。このように、保護部材3により、ディフューザ50を簡便かつ低コストで補強できる。
【0049】
インフレータ2が発生するガスは、ディフューザ50のガス受け部分Y1に当たるため、ディフューザ50の周囲の温度は、ガス受け部分Y1で高くなる。また、ガス受け部分Y1は、ガスにより破損し易い。従って、保護部材3によりガス受け部分Y1を覆うことで、エアバッグ10を効果的に保護できる。
【0050】
保護部材3とディフューザ50の接合部は、ガスによるダメージを受け易い。そのため、保護部材3は、ディフューザ50のガス受け部分Y1以外の位置で接合するのが好ましい。これにより、接合部がダメージを受けるのを防止できる。ガス受け部分Y1を覆う保護部材3は、破損せずに、エアバッグ10を保護する。また、ディフューザ50自体の接合部をガス受け部分Y1に設けないことで、ディフューザ50のダメージも軽減できる。その際、ガス受け部分Y1は、ディフューザ50と保護部材3が重なる状態でガスを受けるため、ガスに対する強度が高くなる。保護部材3は、基布51の接合時に第2の接合部53Bでディフューザ50に接合するため、保護部材3の接合の手間を削減できる。即ち、ディフューザ50の形成と同時に、保護部材3をディフューザ50に接合できる。
【0051】
インフレータ2に設けた案内筒4により、インフレータ2が発生するガスを整流してディフューザ50内に案内できる。また、案内筒4によりガスを一旦受けるため、ディフューザ50が受ける衝撃を緩和できる。案内筒4により、ディフューザ50とエアバッグ10を保護することもできる。案内筒4の布状部材4Aをインフレータ2に巻き付ける際には、布状部材4Aの連結孔4Bをインフレータ2の連結部材2Bに順次挿入する。連結部材2Bと連結孔4Bにより、布状部材4Aをインフレータ2に仮止めできるため、布状部材4Aをインフレータ2に容易に、かつ、精度よく巻き付けることができる。
【0052】
案内筒4を設けたときには、ディフューザ50のガス受け部分Y1は、案内筒4により案内されたガスが直接当たる部分になる。このガス受け部分Y1を保護部材3で覆うことで、ディフューザ50を適切に補強できる。エアバッグ10のダメージを確実に軽減することもできる。本実施形態では、ガス受け部分Y1で、ディフューザ50と車体との間の隙間が特に狭くなる。即ち、ガス受け部分Y1は、熱によりエアバッグ10にダメージが生じ易い箇所に位置する。そのため、ガス受け部分Y1を保護部材3で覆うことで、エアバッグ10を保護する効果が高くなる。
【0053】
ディフューザ50は、直線状かつ筒状に形成される。このディフューザ50を、直線状に突出する挿入部40に挿入して、膨張部30まで配置する。そのため、ディフューザ50を、挿入部40からエアバッグ10に容易に挿入できる。また、ディフューザ50を膨張部30内に確実に配置できる。ディフューザ50の挿入に要する手間や時間を削減できるため、エアバッグ装置1の生産性を向上させることもできる。
【0054】
なお、ディフューザ50には、1つのガス放出口56、又は、3つ以上のガス放出口56を設けるようにしてもよい。ディフューザ50の複数のガス放出口56は、同じ大きさに形成してもよく、異なる大きさに形成してもよい。ディフューザ50は、エアバッグ10と同じ素材で作製してもよく、エアバッグ10とは異なる素材で作製してもよい。本実施形態のディフューザ50は、エアバッグ10の基布12、13よりも耐熱性が高い基布51からなる。例えば、ディフューザ50の基布51は、エアバッグ10の基布12、13よりも厚くする。また、基布51に被覆するシリコーンの量を、基布12、13に被覆するシリコーンの量よりも多くする。これにより、ディフューザ50の耐熱性を高くして、エアバッグ10を、インフレータ2が発生するガスや熱から保護する。
【0055】
保護部材3は、エアバッグ10やディフューザ50と同じ素材で作製してもよく、エアバッグ10やディフューザ50とは異なる素材で作製してもよい。本実施形態の保護部材3は、ディフューザ50の基布51と同じ基布からなる。ただし、保護部材3に、より高い耐熱性が必要なときには、保護部材3を、基布51よりも高い耐熱性を有する基布で作製する。その際、保護部材3を、ディフューザ50の必要な部分のみを覆う大きさにすることで、保護部材3を小さくできる。これにより、保護部材3のコストを抑えつつ、保護部材3の耐熱性を高くできる。
【0056】
次に、保護部材3を設けた他の実施形態のディフューザについて説明する。
図10、図11に、保護部材3と他の実施形態のディフューザ60を示す。図10Aは、形成前のディフューザ60と保護部材3の展開図である。図10B、図11Aに、ディフューザ60の形成過程を示す。図11Bは、図11Aの矢視X2−X2線で見たディフューザ60と保護部材3の断面図である。
ディフューザ60は、既に説明したディフューザ50に替えて、エアバッグ装置1のエアバッグ10内に配置される。以下では、ディフューザ60について、ディフューザ50と異なる点を説明する。
【0057】
ディフューザ60は、図示のように、複数に分岐した筒状部材からなる。ディフューザ60は、折り返した基布61を縫製により接合して形成される。基布61(図10A参照)は、矩形状の中央部61Aと、傾斜した一対の翼状部61Bと、接合片62A、62Bからなる。一対の翼状部61Bは、中央部61Aの側縁に一体に形成され、中央部61Aから逆方向に突出する。基布61は、所定の折り返し線L3で折り返される。
【0058】
折り返し線L3の両側の基布61C、61Dは、縁を揃えて重ね合わされる。翼状部61Bは、一方の基布61Cで他方の基布61Dよりも長く形成されている。接合片62A、62Bは、それぞれ矩形状に形成されたタブである。接合片62A、62Bは、基布61C、61Dの長手方向の両端部に設けられる。また、接合片62A、62Bは、折り返し線L3の両側で、基布61C、61Dの縁から突出する。基布61C、61Dを重ね合わせたときに、接合片62A、62Bが、それぞれ重なる。
【0059】
基布61C、61D(図10B、図11A参照)は、重ね合わせた後、縁に沿う2箇所の接合部61E、61Fで接合される。ディフューザ60は、重ね合わせた基布61を接合して筒状に形成される。その際、基布61は、第1の接合部61Eで接合した後、第2の接合部61Fで接合する。接合により、ディフューザ60内に、ガス流路63が形成される。また、ディフューザ60は、インフレータ2の収容部64と、複数(図11では2つ)のガス放出部65A、65Bと、ガス放出口66A、66Bと、2つの連結孔67とを有する。
【0060】
収容部64は、一対の翼状部61Bを接合して筒状に形成される。連結孔67は、収容部64の端部に形成されている。収容部64の一端には、インフレータ2の挿入口64Aが設けられる。インフレータ2は、挿入口64Aからディフューザ60内(収容部64)に挿入される。収容部64は、インフレータ2の先端部を収容する。ガス流路63は、ディフューザ60の内部空間であり、収容部64からガス放出部65A、65Bまで形成される。ガス流路63は、ディフューザ60内で分岐して、複数のガス放出部65A、65Bに繋がる。
【0061】
第1と第2のガス放出部65A、65Bは、折り返した中央部61Aの両端部に設けられる。ガス流路63は、2つのガス放出部65A、65Bに向かって2つに分岐して、ガスをガス放出部65A、65Bへ案内する。ガス放出口66A、66Bは、ガス放出部65A、65Bの端部に位置する開口である。ガス放出口66A、66Bは、ディフューザ60の前後方向の端部で、逆方向に向かって開放している。接合片62A、62Bは、それぞれ2つの矩形状片が重なる状態で、ガス放出部65A、65Bの端部に一体に形成される。接合片62A、62Bは、ガス放出部65A、65Bの端部で同じ方向に突出する。
【0062】
インフレータ2が収容部64内でガスを発生すると、ガスは、ガス流路63により複数のガス放出部65A、65Bへ案内される。ガスは、ガス流路63を通って、ガス放出部65A、65Bのガス放出口66A、66Bから放出される。ガス放出部65A、65Bは、ディフューザ60内のガスをエアバッグ10内に放出する。ガスは、複数のガス放出部65A、65Bから、相異なる所定方向(ここでは、逆方向)に向かって放出される。
【0063】
ディフューザ60を第1の接合部61Eで接合した後(図10参照)、保護部材3は、折り返し線L2で折り返されて、ディフューザ60の外面68に配置される。保護部材3(図11A参照)は、収容部64を包むように、外面68の一部に配置される。保護部材3の配置の仕方は、上記したディフューザ50の保護部材3と同様である。ディフューザ60の基布61を第2の接合部61Fで接合するときに、保護部材3が、第2の接合部61Fでディフューザ60に接合される。これにより、ディフューザ60の両面(図11B参照)で、保護部材3の先端の全体が、ディフューザ60に接合される。
【0064】
次に、ディフューザ60を備えたエアバッグ10の形成手順を説明する。
図12は、形成前のエアバッグ10を示す正面図である。図13は、形成後のエアバッグ10を示す正面図である。
まず、図12に示すように、エアバッグ10用の基布12、13を重ね合わせる。ディフューザ60は、基布12、13の間に挟み込む。次に、図13に示すように、対向する基布12、13を外縁接合部15で縫製により接合して、基布12、13間に膨張部30を形成する。また、基布12、13を内部接合部16〜19で縫製し、連結ベルト20をエアバッグ10に取り付ける。ディフューザ60は、外縁接合部15での接合に伴い、エアバッグ10に組み付けられる。以下、ディフューザ60の組み付けについて、詳しく説明する。
【0065】
基布12、13の接合前に、ディフューザ60を、基布12、13の間の所定位置に配置する。その際、連結孔67、42の位置を合わせる。ディフューザ60の収容部64は、挿入部40の位置に配置する。ディフューザ60のガス放出部65A、65Bは、膨張部30の位置に配置する。その後、基布12、13を外縁接合部15で接合する。基布12、13は、ディフューザ60の縁に沿って接合される。これにより、収容部64が、エアバッグ10の挿入部40内に配置される。ガス放出部65A、65Bとガス放出口66A、66Bは、エアバッグ10の膨張部30内に配置される。保護部材3は、挿入部40内で、ディフューザ60とエアバッグ10の間に配置される。
【0066】
外縁接合部15は、ディフューザ60に重ならないように、ディフューザ60の外側に設けられる。ただし、ディフューザ60の接合片62A、62Bのみが、外縁接合部15の位置に配置される。基布12、13を接合するときに、接合片62A、62Bは、外縁接合部15でエアバッグ10(基布12、13)に接合される。接合片62A、62Bは、基布12、13間で、基布12、13とともに接合される。即ち、接合片62A、62Bは、基布12、13の縫製と同時に、外縁接合部15で基布12、13に縫い合わされる。
【0067】
接合片62A、62Bは、エアバッグ10に接合されて、ガス放出部65A、65Bをエアバッグ10に連結する。接合片62A、62Bにより、ガス放出部65A、65Bの端部が、エアバッグ10に取り付けられる。ガス放出部65A、65Bは、接合片62A、62Bにより、エアバッグ10に留められて、エアバッグ10と一体になる。次に、ディフューザ60と挿入部40を、接合部43、44で縫製により接合する。これにより、ディフューザ60がエアバッグ10に組み付けられる。続いて、案内筒4を有するインフレータ2を、ディフューザ60に挿入する。
【0068】
図14は、インフレータ2を組み付けたエアバッグ10を示す図である。
インフレータ2と案内筒4は、ディフューザ60の収容部64(ガス流路63)に挿入される。インフレータ2は、上記と同様に、バンド5により、ディフューザ60及び挿入部40に組み付けられる。案内筒4は、インフレータ2とディフューザ60の間に配置される。保護部材3は、エアバッグ10内で、ディフューザ60の外面68の一部を覆う。ガス噴出部2Cと案内筒4は、保護部材3の内部に配置される。
【0069】
図15は、膨張展開したエアバッグ10を示す正面図である。図15では、エアバッグ10内のガスの流れを矢印で示している。図16は、図15のディフューザ60付近を示す拡大図である。
ディフューザ60は、インフレータ2が発生するガスを内面の一部で受けて、ガスを膨張部30へ向けて案内する。保護部材3は、ディフューザ60のガスを受ける部分(ガス受け部分Y2)を外部から覆う。挿入部40とディフューザ60が曲げられているため、ガスは、案内筒4により案内されてガス受け部分Y2に当たる。
【0070】
保護部材3は、ガス受け部分Y2でディフューザ60の外面68を覆う。保護部材3の折り曲げた部分(折り返し線L2)は、ガス受け部分Y2内に位置する。保護部材3は、ガス受け部分Y2の反対側(第2の接合部61F)で、ディフューザ60に接合される。また、保護部材3は、ガス受け部分Y2で、ディフューザ60のダメージを受け易い第1の接合部61Eを補強する。
【0071】
ディフューザ60は、インフレータ2が発生するガスを、膨張部30内でガス放出部65A、65Bから放出する。その際、ガス放出部65A、65Bは、膨張部30内で、ガスをガス放出口66A、66Bから所定方向へ向かって放出する。ディフューザ60は、複数のガス放出部65A、65Bにより、ガスを膨張部30内で複数方向に分配する。これにより、エアバッグ10が、膨張展開する。その際、保護部材3は、ディフューザ60を補強してエアバッグ10を保護する。
【0072】
このディフューザ60では、接合片62A、62Bを、ガス放出部65A、65Bに設けて、エアバッグ10に接合する。これにより、ガス放出部65A、65Bをエアバッグ10に連結できるとともに、ガス放出部65A、65Bとエアバッグ10を一体にできる。ガス放出部65A、65Bからガスが放出されるときには、ガス放出部65A、65Bの動きを抑制できる。ガス放出部65A、65Bの位置を膨張部30内の所定位置に維持することもできる。ガス放出部65A、65Bが激しく動くのを防止できるため、ガスの放出方向の変動を小さくできる。その結果、エアバッグ10の展開時に、ディフューザ60から膨張部30内に安定してガスを放出させることができる。また、ガス放出部65A、65Bによりエアバッグ10がダメージを受けるのを防止できる。接合片62A、62Bを外縁接合部15で基布12、13に接合するため、基布12、13と接合片62A、62Bを同時に接合できる。
【0073】
なお、ガス放出部65及びガス放出口66は、ディフューザ60に1つ、又は、3つ以上設けるようにしてもよい。ディフューザ60が、ガスを膨張部30内で分配する複数のガス放出部65を有するときには、接合片62は、複数のガス放出部65の全部に設けてもよく、一部に設けるようにしてもよい。ディフューザ60の複数のガス放出口66は、同じ大きさに形成してもよく、異なる大きさに形成してもよい。
【0074】
以上説明したディフューザ50、60は、基布を縫製して形成してもよく、ジャカード織により形成してもよい。また、インフレータ2は、案内筒4を設けずに、ディフューザ50、60内に配置してもよい。この場合には、ディフューザ50、60は、インフレータ2が発生したガスを直接受ける。保護部材3は、ディフューザ50、60のガスを受ける部分を覆うように配置する。保護部材3は、ディフューザ50、60に限定されず、エアバッグ10内でインフレータ2を囲む種々のディフューザに設けることができる。
【符号の説明】
【0075】
1・・・エアバッグ装置、2・・・インフレータ、2A・・・噴出口、2B・・・連結部材、2C・・・ガス噴出部、3・・・保護部材、4・・・案内筒、4A・・・布状部材、4B・・・連結孔、5・・・バンド、10・・・エアバッグ、11・・・前方部、12・・・表基布、13・・・裏基布、15・・・外縁接合部、16〜19・・・内部接合部、20・・・連結ベルト、21〜26・・・固定布、30・・・膨張部、31・・・前膨張部、32・・・後膨張部、33・・・連結膨張部、34・・・非膨張部、35〜37・・・気室、40・・・挿入部、41・・・挿入口、42・・・連結孔、43、44・・・接合部、50・・・ディフューザ、51・・・基布、52・・・外面、53・・・接合部、54・・・ガス流路、55・・・挿入口、56・・・ガス放出口、57・・・連結孔、60・・・ディフューザ、61・・・基布、62・・・接合片、63・・・ガス流路、64・・・収容部、64A・・・挿入口、65・・・ガス放出部、66・・・ガス放出口、67・・・連結孔、68・・・外面、90・・・車両、91・・・側壁、92・・・ルーフレール、93・・・フロントピラー、94・・・センターピラー、95・・・前部ドア、96・・・後部ドア、97、98・・・窓部。
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両内でエアバッグを膨張展開させて、エアバッグにより乗員を保護するエアバッグ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の緊急時や衝突時に乗員を保護するため、エアバッグ装置が使用されている。エアバッグ装置は、インフレータが発生するガスによりエアバッグを膨張展開させる。乗員は、エアバッグにより受け止められて保護される。従来、ディフューザにより、ガスをエアバッグの膨張部へ案内等して、エアバッグを適宜展開させるエアバッグ装置が知られている。
【0003】
ディフューザは、エアバッグ内で、インフレータを囲んで配置される。インフレータは、ディフューザ内でガスを発生する。ディフューザは、ガスを膨張部内で所定方向に放出して、膨張部にガスを供給する。その際、ディフューザは、ガスの熱や衝撃により、ダメージを受けることがある。ディフューザがガスで破損した場合には、ガスがエアバッグに直接当たる虞がある。また、ディフューザが破損しないときでも、ガスの熱により、ディフューザの周りのエアバッグがダメージを受ける虞がある。
【0004】
これに対し、従来、保護布により、インナーチューブの縫合部を保護するエアバッグ装置が知られている(特許文献1参照)。
インナーチューブは、ディフューザと同様に、エアバッグ内でインフレータを囲む。インフレータは、インナーチューブ内でガスを発生する。保護布は、インナーチューブの内面に縫い付けられて、縫合部を覆う。インフレータがガスを発生するときに、保護布により、ガスが縫合部に当たるのを防止する。
【0005】
ところが、従来の保護布は、インナーチューブ内に設けられるため、保護布とインナーチューブの縫製には、手間と時間がかかる。そのため、この保護布よりディフューザを補強してエアバッグを保護する場合には、面倒な作業を要する。また、作業効率も低くなるため、コストも増加することがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−254057号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、このような従来の問題に鑑みなされたもので、その目的は、簡便にかつ低コストでディフューザを補強するとともに、ディフューザの周りのエアバッグを保護することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、ガスにより膨張する膨張部を有するエアバッグと、エアバッグ内でガスを発生するインフレータと、インフレータを囲んで配置されてガスを膨張部内で放出するディフューザとを備えたエアバッグ装置であって、エアバッグ内でディフューザの外面の一部を覆う保護部材を備えたエアバッグ装置である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、簡便にかつ低コストでディフューザを補強できる。また、ディフューザの周りのエアバッグを保護することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本実施形態のエアバッグ装置を示す図である。
【図2】展開したエアバッグを示す正面図である。
【図3】ディフューザと保護部材を示す図である。
【図4】ディフューザと保護部材を示す図である。
【図5】ディフューザを組み付けたエアバッグを示す図である。
【図6】インフレータを示す側面図である。
【図7】インフレータを組み付けたエアバッグを示す図である。
【図8】膨張展開したエアバッグを示す正面図である。
【図9】図8のディフューザ付近を示す拡大図である。
【図10】保護部材と他の実施形態のディフューザを示す図である。
【図11】保護部材と他の実施形態のディフューザを示す図である。
【図12】形成前のエアバッグを示す正面図である。
【図13】形成後のエアバッグを示す正面図である。
【図14】インフレータを組み付けたエアバッグを示す図である。
【図15】膨張展開したエアバッグを示す正面図である。
【図16】図15のディフューザ付近を示す拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明のエアバッグ装置の一実施形態について図面を参照して説明する。
本実施形態では、車両内でエアバッグをカーテン状に展開させるカーテンエアバッグ装置(以下、単にエアバッグ装置という)を例に採り説明する。エアバッグ装置は、車両内に搭載されて、膨張展開するエアバッグにより乗員を受け止めて保護する。
【0012】
図1は、本実施形態のエアバッグ装置を示す図である。図1では、車両90に搭載したエアバッグ装置1を車室内から見て示している。また、車両90の側壁91とエアバッグ装置1を、車両90の後方側を省略して、かつ、車両90の幅方向から見て模式的に示している。エアバッグ装置1は、車両90の内面を透視して示している。
なお、本発明では、車両90における前方と後方を単に前方と後方といい、車両90における前後方向を単に前後方向という。また、車両90における上方と下方を単に上方と下方といい、車両90における上下方向を単に上下方向という。
【0013】
車両90は、図示のように、車室内の側壁91に、上方のルーフレール92、前方のフロントピラー(Aピラー)93、センターピラー(Bピラー)94、及び、後方のリアピラー(Cピラー)(図示せず)を有する。また、車両90は、前部ドア95と、後部ドア96と、ドア95、96に設けられた窓部97、98とを備えている。
【0014】
エアバッグ装置1は、エアバッグ(カーテンエアバッグ)10と、筒状のインフレータ2とを備えている。エアバッグ装置1は、車体に取り付けられたトリムとヘッドライニング(図示せず)の内部に配置される。エアバッグ10は、膨張展開できるように折り畳まれて、車両90内に取り付けられる。また、エアバッグ10は、細長く折り畳まれて、側壁91の上部に沿って配置される。エアバッグ10は、前後方向に沿ってルーフレール92に取り付けられて、リアピラーからフロントピラー93まで配置される。折り畳まれたエアバッグ10は、固定手段(図示せず)により、車体に固定される。エアバッグ10の前方部11は、フロントピラー93に取り付けられる。
【0015】
インフレータ2は、シリンダタイプのガス発生装置である。インフレータ2は、エアバッグ10内に挿入されて、エアバッグ10内でガスを発生する。また、インフレータ2は、センターピラー94の上方に配置されて、ルーフレール92に取り付けられる。インフレータ2は、固定手段(図示せず)により、車体に固定される。車両緊急時や衝撃検知時に、インフレータ2は、ガスを発生して、エアバッグ10にガスを供給する。このガスにより、エアバッグ10を、側壁91の上部から下方に向かってカーテン状に膨張展開させる。
【0016】
図2は、展開したエアバッグ10を示す正面図である。
エアバッグ10は、図示のように、矩形状の袋体であり、例えば、樹脂を被覆した布からなる基布により製造される。ここでは、エアバッグ10は、乗員側の表基布(表パネル)12と、側壁91側の裏基布(裏パネル)13とを有する。また、エアバッグ10は、連結ベルト20と、複数(図2では、6つ)の固定布21〜26と、筒状の挿入部40とを有する。挿入部40内には、インフレータ2(図2では図示せず)が挿入される。
【0017】
エアバッグ10の前方端は、連結ベルト20によりフロントピラー93に連結される。複数の固定布21〜26は、矩形状をなし、エアバッグ10の上方の縁(上縁という)に一体に形成されている。連結ベルト20と固定布21〜26は、ボルト等からなる固定手段(図示せず)により、フロントピラー93とルーフレール92に固定される。
【0018】
表基布12と裏基布13は、同じ形状に形成され、重ね合わせて、外縁接合部15に沿って接合される。外縁接合部15は、エアバッグ10を区画して、基布12、13の間に膨張部30を形成する。膨張部30は、インフレータ2が発生するガスにより膨張する。外縁接合部15は、膨張部30の外縁形状を規定する。基布12、13は、外縁接合部15で、縫製のみ、もしくは、縫製及び接着、等により接合される。即ち、基布12、13が、外縁接合部15に沿って、1周又は複数周縫製される、もしくは、1周又は複数周縫製した部分が接着剤によりシールされる、等により、基布12、13は、外縁接合部15で気密状に接合される。
【0019】
エアバッグ10には、外縁接合部15により、前膨張部31、後膨張部32、及び、連結膨張部33が形成される。膨張部31〜33は、それぞれ矩形状をなし、全体としてエアバッグ10の膨張部30を構成する。前膨張部31は、膨張部31〜33中で前後方向に最も長く形成されて、エアバッグ10内で前方に配置される。前膨張部31は、前部ドア95の窓部97とセンターピラー94の側方で膨張して、主に前席の乗員を受け止める。
【0020】
後膨張部32は、前膨張部31よりも前後方向に短く形成されて、エアバッグ10内で後方に配置される。後膨張部32は、後部ドア96の上方で膨張して、主に後席の乗員を受け止める。連結膨張部33は、他の膨張部31、32よりも上下方向に狭く形成される。連結膨張部33は、エアバッグ10の上縁で、前膨張部31と後膨張部32の間に設けられて、膨張部31、32を連結する。3つの膨張部31〜33の間には、非膨張部34が、エアバッグ10の下方の縁(下縁という)から上方に向かって形成される。非膨張部34は、膨張部30の外に設けられる。
【0021】
エアバッグ10は、膨張部30内に、第1〜第4の内部接合部16〜19を有する。基布12、13は、複数の内部接合部16〜19で、縫製及び接着により接合される。内部接合部16〜19の先端は、膨張部30内で環状(環状部16A〜19A)に接合される。複数の内部接合部16〜19は、前後方向に離して配置され、膨張部30内にガスの流通部と気室を形成する。第1と第2の内部接合部16、17は、前膨張部31に第1と第2の気室35、36を形成する。第4の内部接合部19は、後膨張部32に第3の気室37を形成する。
【0022】
挿入部40は、エアバッグ10内にガスを供給するための開口部(ガス供給部)である。挿入部40は、エアバッグ10の前後方向の中間に形成され、前膨張部31の後方端に開口する。基布12、13は、挿入部40において、エアバッグ10の上縁から斜め上方に突出する。基布12、13の縁部は、先端の挿入口41を除いて、外縁接合部15から連続して接合される。これにより、挿入部40は、両端が開口した筒状に形成され、エアバッグ10の上縁に一体に設けられる。
【0023】
挿入部40は、膨張部30から直線状に突出するとともに、エアバッグ10の長手方向に対して所定の角度αで傾斜する。角度αは、エアバッグ10を平面上に拡げた状態で、挿入部40の延びる方向とエアバッグ10の長手方向との間の角度である。ここでは、挿入部40の角度αは、30度〜60度の角度に設定される。挿入部40の内部は、一端の挿入口41でエアバッグ10の外部に繋がり、他端で膨張部30の内部と繋がる。インフレータ2は、挿入口41から挿入部40に挿入されて、エアバッグ10内に配置される。ただし、挿入部40には、ディフューザ50と保護部材3が予め配置される。ディフューザ50と保護部材3は、挿入口41から挿入部40に挿入されて、エアバッグ10内に配置される。
【0024】
図3、図4にディフューザ50と保護部材3を示す。図3Aは、形成前のディフューザ50と保護部材3の展開図である。図3B、図4A、図4Bに、ディフューザ50の形成過程を示す。図4Cは、図4Bの矢視X1−X1線で見たディフューザ50と保護部材3の断面図である。
ディフューザ50は、インフレータ2が発生するガスを整流する整流部材であり、直線状に延びる筒状部材からなる。ディフューザ50は、可撓性を有する部材、又は、変形自在な部材からなる。本実施形態では、ディフューザ50は、図3、図4に示すように、変形自在な基布51からなる。ディフューザ50は、折り返した基布51を縫製により接合して形成される。ディフューザ50の外面52には、布状の保護部材3が取り付けられる。
【0025】
ディフューザ50用の基布51(図3A参照)は、所定の折り返し線L1で折り返される。その際、基布51は、幅方向(図3では上下方向)の中心線で折り返される。折り返し線L1の両側の基布51A、51Bは、それぞれ細長い矩形状に形成され、縁を揃えて重ね合わされる。ただし、一方の基布51Aは、他方の基布51Bよりも長くなっている。基布51の長手方向の一端(図3では左端)は、三角形状に形成される。
【0026】
基布51A、51B(図3B、図4参照)は、重ね合わせた後、縁に沿う2箇所の接合部53A、53Bで接合される。第1の接合部53Aは、ディフューザ50の先端に位置する。第2の接合部53Bは、ディフューザ50の側縁に位置する。接合部53A、53Bは、基布51A、51Bの間を塞ぐ。ディフューザ50は、重ね合わせた基布51を接合して筒状に形成される。その際、基布51は、第1の接合部53Aで接合した後、第2の接合部53Bで接合する。ディフューザ50は、挿入部40の形状に対応して直線形状に、かつ、細長い矩形状に形成される。ディフューザ50の先端は、次第に細くなる楔状に形成される。
【0027】
保護部材3は、ディフューザ50の周りのエアバッグ10を保護するための部材である。また、保護部材3は、ディフューザ50を補強する補強部材でもある。保護部材3は、ディフューザ50とエアバッグ10の間に配置される。保護部材3(図3A参照)は、矩形状の基布からなる保護布(補強布)であり、所定の折り返し線L2で折り返される。保護部材3の長さH1は、ディフューザ50の幅H2と同じ寸法になっている。ディフューザ50を第1の接合部53Aで接合した後(図3B参照)、保護部材3を、長手方向の中心線で折り返して、ディフューザ50の外面52に配置する。
【0028】
保護部材3(図4A参照)は、ディフューザ50の一部を包むように配置されて、外面52の一部に重なる。また、保護部材3は、ディフューザ50の幅方向に沿って、ディフューザ50に1周巻き付けるように配置される。ディフューザ50は、保護部材3の間に挟まれる。保護部材3の折り曲げた部分(折り返し線L2の折り目)は、ディフューザ50の一方の側縁に接する。保護部材3の先端は、ディフューザ50の他方の側縁に合わせる。保護部材3は、ディフューザ50の外面52に隙間なく接する。
【0029】
ディフューザ50の基布51を第2の接合部53Bで接合するときに(図4B参照)、保護部材3が、第2の接合部53Bでディフューザ50に接合される。これにより、ディフューザ50の両面(図4C参照)で、保護部材3の先端の全体が、ディフューザ50に接合される。保護部材3は、第2の接合部53Bでディフューザ50に縫い合わされて、ディフューザ50と一体になる。
【0030】
ディフューザ50は、ガス流路54と、インフレータ2の挿入口55と、複数(図4Bでは2つ)のガス放出口56A、56Bとを有する。ガス流路54は、ディフューザ50の内部空間、及び、インフレータ2の挿入部である。ガス流路54は、ディフューザ50の内部に筒状に形成される。保護部材3は、ガス流路54の途中部分で、ディフューザ50の外面52を覆う。挿入口55は、ガス流路54の一端に設けられた開口である。インフレータ2は、挿入口55からディフューザ50内(ガス流路54)に挿入される。
【0031】
インフレータ2がディフューザ50内でガスを発生すると、ガスは、ガス流路54を通って、ガス放出口56A、56Bから放出される。ガス放出口56A、56Bは、ディフューザ50内のガスをエアバッグ10内に放出する。第1のガス放出口56Aは、基布51にスリット状に形成された開口(図3A参照)からなり、ディフューザ50の先端に設けられる。第2のガス放出口56Bは、接合部53A、53Bの間に設けられた非接合部からなる。第2のガス放出口56Bは、ディフューザ50の先端で、第1のガス放出口56Aの逆側に設けられる。ガスは、複数のガス放出口56A、56Bから、相異なる所定方向(ここでは、逆方向)に向かって放出される。
【0032】
挿入部40とディフューザ50(図2参照)は、それぞれ2つの連結孔42、57を有する。挿入部40とディフューザ50は、後述するように、連結孔42、57によりインフレータ2と連結する。連結孔42、57は、挿入部40とディフューザ50の端部に、円形状に形成されている。ディフューザ50の2つの連結孔57は、ディフューザ50の長手方向に沿って配置されている。挿入部40の2つの連結孔42は、ディフューザ50の2つの連結孔57と同じ間隔に配置されている。ディフューザ50は、ガス放出口56A、56Bが設けられた先端から、挿入部40内に挿入される。その際、ディフューザ50を、挿入口41から挿入部40の内部に挿入して、挿入部40内に配置する。これにより、ディフューザ50を挿入部40に組み付ける。
【0033】
図5は、ディフューザ50を組み付けたエアバッグ10を示す図である。
ディフューザ50は、図示のように、挿入口41から膨張部30まで、挿入部40に沿って真っ直ぐに挿入される。ディフューザ50は、膨張部30内の所定位置まで挿入されて、挿入部40から膨張部30まで直線状に配置される。その際、ディフューザ50の端部を、挿入部40の端部に合わせる。また、ディフューザ50の連結孔57と挿入部40の連結孔42の位置を合わせる。連結孔57と連結孔42は、重ねて配置されて、ディフューザ50と挿入部40を貫通する。ディフューザ50は、下方の第3の内部接合部18から離れた位置に配置される。ガス放出口56A、56Bは、膨張部30内に配置される。
【0034】
ディフューザ50と挿入部40は、接合部43、44で縫製により接合される。接合部43、44で、ディフューザ50と挿入部40は、ディフューザ50の幅方向に沿って縫い合わされる。また、ディフューザ50と挿入部40は、2つの連結孔57の間の部分(接合部43)において接合される。これにより、ディフューザ50が、挿入部40に設けられた挿入口41で、挿入部40に接合される。ディフューザ50と挿入部40は、接合部43、44での接合により、挿入口41の周囲で一体になる。また、ディフューザ50と挿入部40は、一体化して補強される。ディフューザ50と挿入部40は、外力を単独で受けずに、共同して外力を受ける。その結果、ディフューザ50と挿入部40は、外力に対する強度が高くなり、破れ難くなる。このように、接合部43、44は、ディフューザ50と挿入部40を補強する補強部(補強縫製)である。
【0035】
保護部材3は、ディフューザ50とともに挿入部40に挿入される。保護部材3は、挿入部40内で、ディフューザ50とエアバッグ10の間に配置される。その後、ディフューザ50の挿入口55を開いて、インフレータ2を挿入口55からディフューザ50内に挿入する。インフレータ2は、ディフューザ50とともにエアバッグ10に組み付けられる。
【0036】
図6は、インフレータ2を示す側面図である。
インフレータ2は、図示のように、複数のガスの噴出口2Aと、2つの連結部材2Bとを有する。インフレータ2の長手方向の一端部は、噴出口2Aが設けられたガス噴出部2C(ガス発生部)である。噴出口2Aは、ガス噴出部2Cの外周全体に配置されている。インフレータ2(図6A参照)は、複数の噴出口2Aからガスを放射状に噴出する。2つの連結部材2Bは、インフレータ2の長手方向に離して配置されて、インフレータ2に固定されている。連結部材2Bは、ボルトであり、インフレータ2の側方に突出する。例えば、連結部材2Bは、溶接によりインフレータ2に一体に固定される。上記した連結孔42、57は、連結部材2Bの間隔と同じ間隔で形成されている。
【0037】
インフレータ2(図6B参照)には、案内筒4が取り付けられる。案内筒4は、筒状をなし、ディフューザ50内のインフレータ2を囲む。案内筒4は、ガス噴出部2Cの周りに配置されて、インフレータ2が発生するガスをディフューザ50内へ向けて案内する。案内筒4は、基布により帯状に形成された布状部材4Aからなる。布状部材4Aは、インフレータ2の外周に複数周巻き付けられて筒状をなす。布状部材4Aは、ガス噴出部2Cから突出するように配置されて、一端の開口からガスを放出する。ガスは、案内筒4により整流されて、案内筒4から所定方向に向かって供給される。
【0038】
案内筒4は、布状部材4Aに形成された複数の連結孔4Bを有する。布状部材4Aには、2つの連結孔4Bが、連結部材2Bの間隔と同じ間隔で形成されている。また、2つの連結孔4Bが、布状部材4Aに所定間隔で形成されている。複数の連結孔4Bは、布状部材4Aをインフレータ2に巻き付ける際に、連結部材2Bに順次挿入される。布状部材4Aは、連結孔4Bに連結部材2Bを通しながら、インフレータ2に巻き付けられる。2つの連結孔4Bが、布状部材4Aをインフレータ2に1周巻き付ける毎に2つの連結部材2Bに挿入される。これにより、布状部材4Aが、インフレータ2に仮止めされる。連結部材2Bは、布状部材4A(案内筒4)をインフレータ2に連結する。インフレータ2は、案内筒4とともにディフューザ50に挿入される。
【0039】
図7は、インフレータ2を組み付けたエアバッグ10を示す図である。
インフレータ2は、図示のように、少なくとも噴出口2Aがディフューザ50内に位置するように、ディフューザ50に挿入される。これにより、インフレータ2のガス噴出部2Cを含む所定範囲を、ディフューザ50内に配置する。案内筒4は、インフレータ2とディフューザ50の間に配置される。
【0040】
ディフューザ50と挿入部40は、インフレータ2に巻き付けられる。その際、インフレータ2の連結部材2Bを、ディフューザ50と挿入部40を貫通する連結孔42、57に挿入する。連結部材2Bは、インフレータ2をディフューザ50と挿入部40に連結する。ディフューザ50と挿入部40でインフレータ2を包んだ後、バンド5を挿入部40の外周に配置する。挿入部40、ディフューザ50、及び、案内筒4は、バンド5で締め付けられて、インフレータ2に気密状に固定される。これにより、インフレータ2が、ディフューザ50及び挿入部40に組み付けられる。
【0041】
ディフューザ50は、インフレータ2のガス噴出部2Cと案内筒4を囲む。保護部材3は、エアバッグ10内で、ディフューザ50の外面52の一部(所定部分)を覆い、ディフューザ50を部分的に補強する。ガス噴出部2Cと案内筒4は、エアバッグ10内で、ディフューザ50の保護部材3に覆われた部分に配置される。保護部材3は、ガス噴出部2Cの全体を囲む。ガス噴出部2Cと案内筒4は、保護部材3の内部に配置される。その後、エアバッグ装置1は、車両90に搭載される。エアバッグ装置1は、作動信号を受信したときにインフレータ2を作動させて、エアバッグ10を膨張展開させる。
【0042】
図8は、膨張展開したエアバッグ10を示す正面図である。図8では、エアバッグ10内のガスの流れを矢印で示している。図9は、図8のディフューザ50付近を示す拡大図である。
インフレータ2は、図示のように、前後方向に沿うように車体に取り付けられる。これに伴い、挿入部40とディフューザ50が曲げられる。インフレータ2は、ディフューザ50内でガスを発生して、エアバッグ10内にガスを供給する。供給されるガスにより、膨張部30が膨張して、エアバッグ10が、折り畳み形状を解消しつつカーテン状に展開する。
【0043】
ディフューザ50は、エアバッグ10内でインフレータ2を囲んで配置されており、最初に膨張を開始する。また、ディフューザ50は、インフレータ2が発生するガスを内面の一部で受けてから、ガスを膨張部30へ向けて案内する。保護部材3は、ディフューザ50のガスを受ける部分(ガス受け部分Y1)に配置されて、ディフューザ50を外部から部分的に覆う。挿入部40とディフューザ50が、途中で曲げられているため、ガスは、案内筒4から噴出してディフューザ50の所定部分に当たる。そのため、ディフューザ50のガス受け部分Y1は、案内筒4に案内されたガスが直接当たる部分である。
【0044】
保護部材3は、少なくともガス受け部分Y1の外面52を覆う。また、保護部材3の折り曲げた部分(折り返し線L2)が、ガス受け部分Y1内に位置する。保護部材3は、ガス受け部分Y1の反対側(第2の接合部53B)で、ディフューザ50に接合される。即ち、保護部材3は、ガス受け部分Y1を外れた位置で、ディフューザ50に接合される。ガス受け部分Y1は、保護部材3の連続した面で覆われる。
【0045】
ディフューザ50は、インフレータ2が発生するガスを、膨張部30内でガス放出口56A、56Bから放出する。ディフューザ50は、ガスを膨張部30へ流出して、膨張部30へガスを連続して供給する。その際、ガス放出口56A、56Bは、膨張部30内で、ガスを所定方向へ向かって放出する。ディフューザ50は、ガス放出口56A、56Bによりガスを分配する。インフレータ2が発生するガスは、ディフューザ50を通って分岐して、前後方向に分配される。ガスは、前膨張部31へ供給されるとともに、連結膨張部33を通って後膨張部32へ供給される。これにより、エアバッグ10(図1参照)が、側壁91を覆うように膨張展開して、窓部97、98を塞ぐ。エアバッグ10は、前席と後席の乗員を受け止めて、乗員の頭部を中心に保護する。
【0046】
上記したように、エアバッグ10は、ディフューザ50内のガスの熱でダメージを受ける虞がある。特に、インフレータ2と車体の間の隙間では、熱がこもって温度が上昇する傾向があるため、エアバッグ10がダメージを受け易い。これに対し、本実施形態では、保護部材3によりディフューザ50の外面52の一部を覆うことで、ディフューザ50の必要な部分を補強できる。エアバッグ10は、ディフューザ50と保護部材3によりガスの熱から保護される。保護部材3により熱の伝達を抑制できるため、インフレータ2と車体の間の隙間でも、温度の上昇を抑制できる。その結果、エアバッグ10の熱によるダメージを軽減できる。
【0047】
ディフューザ50の破損し易い部分を保護部材3で予め覆うことで、ディフューザ50の必要な部分を補強できる。仮に、ディフューザ50がガスの影響で破損したとしても、保護部材3により、エアバッグ10を保護できる。また、ディフューザ50は、ガスの圧力で保護部材3に押し付けられる。ディフューザ50に孔が開いた場合には、ディフューザ50の孔は、保護部材3に押し付けられて塞がれる。その結果、孔からのガス漏れが抑制されるため、ディフューザ50から漏れるガスの量を少なくできる。ガスが、エアバッグ10に直接、又は、勢いよく当たるのを防止することもできる。従って、ディフューザ50の周りのエアバッグ10を保護できる。エアバッグ10の破損を防止できるため、エアバッグ10からガスが漏れるのを防止することもできる。
【0048】
保護部材3はディフューザ50の外面52に設けるため、保護部材3をディフューザ50に容易に取り付けることができる。保護部材3とディフューザ50の接合も簡単に行える。そのため、エアバッグ10の製造の手間と時間を削減できるとともに、作業効率を高くできる。保護部材3によりディフューザ50の一部のみを覆うため、保護部材3を比較的小さくできる。このように、保護部材3により、ディフューザ50を簡便かつ低コストで補強できる。
【0049】
インフレータ2が発生するガスは、ディフューザ50のガス受け部分Y1に当たるため、ディフューザ50の周囲の温度は、ガス受け部分Y1で高くなる。また、ガス受け部分Y1は、ガスにより破損し易い。従って、保護部材3によりガス受け部分Y1を覆うことで、エアバッグ10を効果的に保護できる。
【0050】
保護部材3とディフューザ50の接合部は、ガスによるダメージを受け易い。そのため、保護部材3は、ディフューザ50のガス受け部分Y1以外の位置で接合するのが好ましい。これにより、接合部がダメージを受けるのを防止できる。ガス受け部分Y1を覆う保護部材3は、破損せずに、エアバッグ10を保護する。また、ディフューザ50自体の接合部をガス受け部分Y1に設けないことで、ディフューザ50のダメージも軽減できる。その際、ガス受け部分Y1は、ディフューザ50と保護部材3が重なる状態でガスを受けるため、ガスに対する強度が高くなる。保護部材3は、基布51の接合時に第2の接合部53Bでディフューザ50に接合するため、保護部材3の接合の手間を削減できる。即ち、ディフューザ50の形成と同時に、保護部材3をディフューザ50に接合できる。
【0051】
インフレータ2に設けた案内筒4により、インフレータ2が発生するガスを整流してディフューザ50内に案内できる。また、案内筒4によりガスを一旦受けるため、ディフューザ50が受ける衝撃を緩和できる。案内筒4により、ディフューザ50とエアバッグ10を保護することもできる。案内筒4の布状部材4Aをインフレータ2に巻き付ける際には、布状部材4Aの連結孔4Bをインフレータ2の連結部材2Bに順次挿入する。連結部材2Bと連結孔4Bにより、布状部材4Aをインフレータ2に仮止めできるため、布状部材4Aをインフレータ2に容易に、かつ、精度よく巻き付けることができる。
【0052】
案内筒4を設けたときには、ディフューザ50のガス受け部分Y1は、案内筒4により案内されたガスが直接当たる部分になる。このガス受け部分Y1を保護部材3で覆うことで、ディフューザ50を適切に補強できる。エアバッグ10のダメージを確実に軽減することもできる。本実施形態では、ガス受け部分Y1で、ディフューザ50と車体との間の隙間が特に狭くなる。即ち、ガス受け部分Y1は、熱によりエアバッグ10にダメージが生じ易い箇所に位置する。そのため、ガス受け部分Y1を保護部材3で覆うことで、エアバッグ10を保護する効果が高くなる。
【0053】
ディフューザ50は、直線状かつ筒状に形成される。このディフューザ50を、直線状に突出する挿入部40に挿入して、膨張部30まで配置する。そのため、ディフューザ50を、挿入部40からエアバッグ10に容易に挿入できる。また、ディフューザ50を膨張部30内に確実に配置できる。ディフューザ50の挿入に要する手間や時間を削減できるため、エアバッグ装置1の生産性を向上させることもできる。
【0054】
なお、ディフューザ50には、1つのガス放出口56、又は、3つ以上のガス放出口56を設けるようにしてもよい。ディフューザ50の複数のガス放出口56は、同じ大きさに形成してもよく、異なる大きさに形成してもよい。ディフューザ50は、エアバッグ10と同じ素材で作製してもよく、エアバッグ10とは異なる素材で作製してもよい。本実施形態のディフューザ50は、エアバッグ10の基布12、13よりも耐熱性が高い基布51からなる。例えば、ディフューザ50の基布51は、エアバッグ10の基布12、13よりも厚くする。また、基布51に被覆するシリコーンの量を、基布12、13に被覆するシリコーンの量よりも多くする。これにより、ディフューザ50の耐熱性を高くして、エアバッグ10を、インフレータ2が発生するガスや熱から保護する。
【0055】
保護部材3は、エアバッグ10やディフューザ50と同じ素材で作製してもよく、エアバッグ10やディフューザ50とは異なる素材で作製してもよい。本実施形態の保護部材3は、ディフューザ50の基布51と同じ基布からなる。ただし、保護部材3に、より高い耐熱性が必要なときには、保護部材3を、基布51よりも高い耐熱性を有する基布で作製する。その際、保護部材3を、ディフューザ50の必要な部分のみを覆う大きさにすることで、保護部材3を小さくできる。これにより、保護部材3のコストを抑えつつ、保護部材3の耐熱性を高くできる。
【0056】
次に、保護部材3を設けた他の実施形態のディフューザについて説明する。
図10、図11に、保護部材3と他の実施形態のディフューザ60を示す。図10Aは、形成前のディフューザ60と保護部材3の展開図である。図10B、図11Aに、ディフューザ60の形成過程を示す。図11Bは、図11Aの矢視X2−X2線で見たディフューザ60と保護部材3の断面図である。
ディフューザ60は、既に説明したディフューザ50に替えて、エアバッグ装置1のエアバッグ10内に配置される。以下では、ディフューザ60について、ディフューザ50と異なる点を説明する。
【0057】
ディフューザ60は、図示のように、複数に分岐した筒状部材からなる。ディフューザ60は、折り返した基布61を縫製により接合して形成される。基布61(図10A参照)は、矩形状の中央部61Aと、傾斜した一対の翼状部61Bと、接合片62A、62Bからなる。一対の翼状部61Bは、中央部61Aの側縁に一体に形成され、中央部61Aから逆方向に突出する。基布61は、所定の折り返し線L3で折り返される。
【0058】
折り返し線L3の両側の基布61C、61Dは、縁を揃えて重ね合わされる。翼状部61Bは、一方の基布61Cで他方の基布61Dよりも長く形成されている。接合片62A、62Bは、それぞれ矩形状に形成されたタブである。接合片62A、62Bは、基布61C、61Dの長手方向の両端部に設けられる。また、接合片62A、62Bは、折り返し線L3の両側で、基布61C、61Dの縁から突出する。基布61C、61Dを重ね合わせたときに、接合片62A、62Bが、それぞれ重なる。
【0059】
基布61C、61D(図10B、図11A参照)は、重ね合わせた後、縁に沿う2箇所の接合部61E、61Fで接合される。ディフューザ60は、重ね合わせた基布61を接合して筒状に形成される。その際、基布61は、第1の接合部61Eで接合した後、第2の接合部61Fで接合する。接合により、ディフューザ60内に、ガス流路63が形成される。また、ディフューザ60は、インフレータ2の収容部64と、複数(図11では2つ)のガス放出部65A、65Bと、ガス放出口66A、66Bと、2つの連結孔67とを有する。
【0060】
収容部64は、一対の翼状部61Bを接合して筒状に形成される。連結孔67は、収容部64の端部に形成されている。収容部64の一端には、インフレータ2の挿入口64Aが設けられる。インフレータ2は、挿入口64Aからディフューザ60内(収容部64)に挿入される。収容部64は、インフレータ2の先端部を収容する。ガス流路63は、ディフューザ60の内部空間であり、収容部64からガス放出部65A、65Bまで形成される。ガス流路63は、ディフューザ60内で分岐して、複数のガス放出部65A、65Bに繋がる。
【0061】
第1と第2のガス放出部65A、65Bは、折り返した中央部61Aの両端部に設けられる。ガス流路63は、2つのガス放出部65A、65Bに向かって2つに分岐して、ガスをガス放出部65A、65Bへ案内する。ガス放出口66A、66Bは、ガス放出部65A、65Bの端部に位置する開口である。ガス放出口66A、66Bは、ディフューザ60の前後方向の端部で、逆方向に向かって開放している。接合片62A、62Bは、それぞれ2つの矩形状片が重なる状態で、ガス放出部65A、65Bの端部に一体に形成される。接合片62A、62Bは、ガス放出部65A、65Bの端部で同じ方向に突出する。
【0062】
インフレータ2が収容部64内でガスを発生すると、ガスは、ガス流路63により複数のガス放出部65A、65Bへ案内される。ガスは、ガス流路63を通って、ガス放出部65A、65Bのガス放出口66A、66Bから放出される。ガス放出部65A、65Bは、ディフューザ60内のガスをエアバッグ10内に放出する。ガスは、複数のガス放出部65A、65Bから、相異なる所定方向(ここでは、逆方向)に向かって放出される。
【0063】
ディフューザ60を第1の接合部61Eで接合した後(図10参照)、保護部材3は、折り返し線L2で折り返されて、ディフューザ60の外面68に配置される。保護部材3(図11A参照)は、収容部64を包むように、外面68の一部に配置される。保護部材3の配置の仕方は、上記したディフューザ50の保護部材3と同様である。ディフューザ60の基布61を第2の接合部61Fで接合するときに、保護部材3が、第2の接合部61Fでディフューザ60に接合される。これにより、ディフューザ60の両面(図11B参照)で、保護部材3の先端の全体が、ディフューザ60に接合される。
【0064】
次に、ディフューザ60を備えたエアバッグ10の形成手順を説明する。
図12は、形成前のエアバッグ10を示す正面図である。図13は、形成後のエアバッグ10を示す正面図である。
まず、図12に示すように、エアバッグ10用の基布12、13を重ね合わせる。ディフューザ60は、基布12、13の間に挟み込む。次に、図13に示すように、対向する基布12、13を外縁接合部15で縫製により接合して、基布12、13間に膨張部30を形成する。また、基布12、13を内部接合部16〜19で縫製し、連結ベルト20をエアバッグ10に取り付ける。ディフューザ60は、外縁接合部15での接合に伴い、エアバッグ10に組み付けられる。以下、ディフューザ60の組み付けについて、詳しく説明する。
【0065】
基布12、13の接合前に、ディフューザ60を、基布12、13の間の所定位置に配置する。その際、連結孔67、42の位置を合わせる。ディフューザ60の収容部64は、挿入部40の位置に配置する。ディフューザ60のガス放出部65A、65Bは、膨張部30の位置に配置する。その後、基布12、13を外縁接合部15で接合する。基布12、13は、ディフューザ60の縁に沿って接合される。これにより、収容部64が、エアバッグ10の挿入部40内に配置される。ガス放出部65A、65Bとガス放出口66A、66Bは、エアバッグ10の膨張部30内に配置される。保護部材3は、挿入部40内で、ディフューザ60とエアバッグ10の間に配置される。
【0066】
外縁接合部15は、ディフューザ60に重ならないように、ディフューザ60の外側に設けられる。ただし、ディフューザ60の接合片62A、62Bのみが、外縁接合部15の位置に配置される。基布12、13を接合するときに、接合片62A、62Bは、外縁接合部15でエアバッグ10(基布12、13)に接合される。接合片62A、62Bは、基布12、13間で、基布12、13とともに接合される。即ち、接合片62A、62Bは、基布12、13の縫製と同時に、外縁接合部15で基布12、13に縫い合わされる。
【0067】
接合片62A、62Bは、エアバッグ10に接合されて、ガス放出部65A、65Bをエアバッグ10に連結する。接合片62A、62Bにより、ガス放出部65A、65Bの端部が、エアバッグ10に取り付けられる。ガス放出部65A、65Bは、接合片62A、62Bにより、エアバッグ10に留められて、エアバッグ10と一体になる。次に、ディフューザ60と挿入部40を、接合部43、44で縫製により接合する。これにより、ディフューザ60がエアバッグ10に組み付けられる。続いて、案内筒4を有するインフレータ2を、ディフューザ60に挿入する。
【0068】
図14は、インフレータ2を組み付けたエアバッグ10を示す図である。
インフレータ2と案内筒4は、ディフューザ60の収容部64(ガス流路63)に挿入される。インフレータ2は、上記と同様に、バンド5により、ディフューザ60及び挿入部40に組み付けられる。案内筒4は、インフレータ2とディフューザ60の間に配置される。保護部材3は、エアバッグ10内で、ディフューザ60の外面68の一部を覆う。ガス噴出部2Cと案内筒4は、保護部材3の内部に配置される。
【0069】
図15は、膨張展開したエアバッグ10を示す正面図である。図15では、エアバッグ10内のガスの流れを矢印で示している。図16は、図15のディフューザ60付近を示す拡大図である。
ディフューザ60は、インフレータ2が発生するガスを内面の一部で受けて、ガスを膨張部30へ向けて案内する。保護部材3は、ディフューザ60のガスを受ける部分(ガス受け部分Y2)を外部から覆う。挿入部40とディフューザ60が曲げられているため、ガスは、案内筒4により案内されてガス受け部分Y2に当たる。
【0070】
保護部材3は、ガス受け部分Y2でディフューザ60の外面68を覆う。保護部材3の折り曲げた部分(折り返し線L2)は、ガス受け部分Y2内に位置する。保護部材3は、ガス受け部分Y2の反対側(第2の接合部61F)で、ディフューザ60に接合される。また、保護部材3は、ガス受け部分Y2で、ディフューザ60のダメージを受け易い第1の接合部61Eを補強する。
【0071】
ディフューザ60は、インフレータ2が発生するガスを、膨張部30内でガス放出部65A、65Bから放出する。その際、ガス放出部65A、65Bは、膨張部30内で、ガスをガス放出口66A、66Bから所定方向へ向かって放出する。ディフューザ60は、複数のガス放出部65A、65Bにより、ガスを膨張部30内で複数方向に分配する。これにより、エアバッグ10が、膨張展開する。その際、保護部材3は、ディフューザ60を補強してエアバッグ10を保護する。
【0072】
このディフューザ60では、接合片62A、62Bを、ガス放出部65A、65Bに設けて、エアバッグ10に接合する。これにより、ガス放出部65A、65Bをエアバッグ10に連結できるとともに、ガス放出部65A、65Bとエアバッグ10を一体にできる。ガス放出部65A、65Bからガスが放出されるときには、ガス放出部65A、65Bの動きを抑制できる。ガス放出部65A、65Bの位置を膨張部30内の所定位置に維持することもできる。ガス放出部65A、65Bが激しく動くのを防止できるため、ガスの放出方向の変動を小さくできる。その結果、エアバッグ10の展開時に、ディフューザ60から膨張部30内に安定してガスを放出させることができる。また、ガス放出部65A、65Bによりエアバッグ10がダメージを受けるのを防止できる。接合片62A、62Bを外縁接合部15で基布12、13に接合するため、基布12、13と接合片62A、62Bを同時に接合できる。
【0073】
なお、ガス放出部65及びガス放出口66は、ディフューザ60に1つ、又は、3つ以上設けるようにしてもよい。ディフューザ60が、ガスを膨張部30内で分配する複数のガス放出部65を有するときには、接合片62は、複数のガス放出部65の全部に設けてもよく、一部に設けるようにしてもよい。ディフューザ60の複数のガス放出口66は、同じ大きさに形成してもよく、異なる大きさに形成してもよい。
【0074】
以上説明したディフューザ50、60は、基布を縫製して形成してもよく、ジャカード織により形成してもよい。また、インフレータ2は、案内筒4を設けずに、ディフューザ50、60内に配置してもよい。この場合には、ディフューザ50、60は、インフレータ2が発生したガスを直接受ける。保護部材3は、ディフューザ50、60のガスを受ける部分を覆うように配置する。保護部材3は、ディフューザ50、60に限定されず、エアバッグ10内でインフレータ2を囲む種々のディフューザに設けることができる。
【符号の説明】
【0075】
1・・・エアバッグ装置、2・・・インフレータ、2A・・・噴出口、2B・・・連結部材、2C・・・ガス噴出部、3・・・保護部材、4・・・案内筒、4A・・・布状部材、4B・・・連結孔、5・・・バンド、10・・・エアバッグ、11・・・前方部、12・・・表基布、13・・・裏基布、15・・・外縁接合部、16〜19・・・内部接合部、20・・・連結ベルト、21〜26・・・固定布、30・・・膨張部、31・・・前膨張部、32・・・後膨張部、33・・・連結膨張部、34・・・非膨張部、35〜37・・・気室、40・・・挿入部、41・・・挿入口、42・・・連結孔、43、44・・・接合部、50・・・ディフューザ、51・・・基布、52・・・外面、53・・・接合部、54・・・ガス流路、55・・・挿入口、56・・・ガス放出口、57・・・連結孔、60・・・ディフューザ、61・・・基布、62・・・接合片、63・・・ガス流路、64・・・収容部、64A・・・挿入口、65・・・ガス放出部、66・・・ガス放出口、67・・・連結孔、68・・・外面、90・・・車両、91・・・側壁、92・・・ルーフレール、93・・・フロントピラー、94・・・センターピラー、95・・・前部ドア、96・・・後部ドア、97、98・・・窓部。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスにより膨張する膨張部を有するエアバッグと、エアバッグ内でガスを発生するインフレータと、インフレータを囲んで配置されてガスを膨張部内で放出するディフューザとを備えたエアバッグ装置であって、
エアバッグ内でディフューザの外面の一部を覆う保護部材を備えたエアバッグ装置。
【請求項2】
請求項1に記載されたエアバッグ装置において、
ディフューザが、インフレータが発生するガスを内面の一部で受けて膨張部へ向けて案内し、
保護部材が、ディフューザのガスを受ける部分を覆うエアバッグ装置。
【請求項3】
請求項2に記載されたエアバッグ装置において、
保護部材が、ディフューザのガスを受ける部分を外れた位置でディフューザに接合されたエアバッグ装置。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかに記載されたエアバッグ装置において、
保護部材が、ディフューザの外面の一部に重なる保護布からなるエアバッグ装置。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかに記載されたエアバッグ装置において、
ディフューザが、重ね合わせた基布を接合部で接合して形成され、
保護部材が、ディフューザの基布を接合するときに接合部でディフューザに接合されたエアバッグ装置。
【請求項6】
請求項2に記載されたエアバッグ装置において、
ディフューザ内のインフレータを囲い、インフレータが発生するガスをディフューザ内へ向けて案内する案内筒を備え、
ディフューザのガスを受ける部分が、案内筒により案内されたガスが直接当たる部分であるエアバッグ装置。
【請求項7】
請求項6に記載されたエアバッグ装置において、
インフレータが、案内筒をインフレータに連結する連結部材を有し、
案内筒が、インフレータに複数周巻き付けられて筒状をなす布状部材と、布状部材に形成され、布状部材をインフレータに巻き付ける際に連結部材に順次挿入された複数の連結孔とを有するエアバッグ装置。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれかに記載されたエアバッグ装置において、
エアバッグが、膨張部から直線状に突出し、ディフューザとインフレータが挿入される筒状の挿入部を有し、
ディフューザが、挿入部から膨張部まで直線状に配置される筒状に形成されたエアバッグ装置。
【請求項9】
請求項1ないし7のいずれかに記載されたエアバッグ装置において、
ディフューザが、膨張部内に配置されたガス放出部と、ガス放出部に設けられてエアバッグに接合された接合片とを有するエアバッグ装置。
【請求項1】
ガスにより膨張する膨張部を有するエアバッグと、エアバッグ内でガスを発生するインフレータと、インフレータを囲んで配置されてガスを膨張部内で放出するディフューザとを備えたエアバッグ装置であって、
エアバッグ内でディフューザの外面の一部を覆う保護部材を備えたエアバッグ装置。
【請求項2】
請求項1に記載されたエアバッグ装置において、
ディフューザが、インフレータが発生するガスを内面の一部で受けて膨張部へ向けて案内し、
保護部材が、ディフューザのガスを受ける部分を覆うエアバッグ装置。
【請求項3】
請求項2に記載されたエアバッグ装置において、
保護部材が、ディフューザのガスを受ける部分を外れた位置でディフューザに接合されたエアバッグ装置。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかに記載されたエアバッグ装置において、
保護部材が、ディフューザの外面の一部に重なる保護布からなるエアバッグ装置。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかに記載されたエアバッグ装置において、
ディフューザが、重ね合わせた基布を接合部で接合して形成され、
保護部材が、ディフューザの基布を接合するときに接合部でディフューザに接合されたエアバッグ装置。
【請求項6】
請求項2に記載されたエアバッグ装置において、
ディフューザ内のインフレータを囲い、インフレータが発生するガスをディフューザ内へ向けて案内する案内筒を備え、
ディフューザのガスを受ける部分が、案内筒により案内されたガスが直接当たる部分であるエアバッグ装置。
【請求項7】
請求項6に記載されたエアバッグ装置において、
インフレータが、案内筒をインフレータに連結する連結部材を有し、
案内筒が、インフレータに複数周巻き付けられて筒状をなす布状部材と、布状部材に形成され、布状部材をインフレータに巻き付ける際に連結部材に順次挿入された複数の連結孔とを有するエアバッグ装置。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれかに記載されたエアバッグ装置において、
エアバッグが、膨張部から直線状に突出し、ディフューザとインフレータが挿入される筒状の挿入部を有し、
ディフューザが、挿入部から膨張部まで直線状に配置される筒状に形成されたエアバッグ装置。
【請求項9】
請求項1ないし7のいずれかに記載されたエアバッグ装置において、
ディフューザが、膨張部内に配置されたガス放出部と、ガス放出部に設けられてエアバッグに接合された接合片とを有するエアバッグ装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2012−250598(P2012−250598A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−123778(P2011−123778)
【出願日】平成23年6月1日(2011.6.1)
【出願人】(000117135)芦森工業株式会社 (447)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年6月1日(2011.6.1)
【出願人】(000117135)芦森工業株式会社 (447)
【Fターム(参考)】
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