説明

エルビウムドープシリコンナノ結晶を含むシリコン酸化物導波路およびその製造方法、並びにそれを備えた集積回路

【課題】低温プロセスにより製造でき、1540nmで機能するErドープシリコンナノ結晶を含むシリコン酸化物導波路およびその製造方法を提供する。
【解決手段】本発明の導波路の製造方法は、最下部層を形成し、その最下部層を覆うErドープシリコンナノ結晶を含むシリコン酸化膜を形成し(約1540nmで最小光減衰を示す)、そのErドープシリコン酸化膜を覆う最上部層を形成する。Erドープシリコン酸化膜は、高密度プラズマ化学気相堆積法によるSRSO膜の形成およびそのSRSO膜のアニーリグによって形成する。Erイオン注入後、Erドープシリコン酸化膜を、再度アニーリングする。Erドープシリコンナノ結晶を含むシリコン酸化膜は、1.46を越え、2.30以下の第1屈折率(n)を有する。最上部層および最下部層は、第1屈折率未満の第2屈折率を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に集積回路(IC)の製造に関し、より詳細には、シリコン(Si)ナノ結晶を含むシリコン酸化物(SiOx)に、エルビウム(Er)がドープされたシリコン酸化物導波路およびその製造方法、並びにその導波路を備えた集積回路に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の半導体産業の発展は、金属(銅合金およびアルミニウム合金)薄膜が電気信号通信の相互接続に用いられる、ICデバイスの小型化によってもたらされてきた。しかし、積極的な小型化が進むにつれ、金属相互接続は、ICデバイスの処理速度および消費電力の高まりに、歩調を合わせなければならないという問題に直面している。この問題の解決策の1つは、チップとチップとのチップ間通信を、電子ではなく光子により行う光相互接続を利用することである。ガラス基板上に最初に形成されるフラットパネルディスプレイも、ガラス基板上に種々の機能および素子がますます付加されるにつれ、同様の問題に直面している。さらに、フラットディスプレイパネル産業は、第8世代を超えて発展し続けるにつれ、パネル内を金属相互接続したときの問題に直面する。光相互接続を使用すれば、相互接続の遅延および消費電力を低減することができる上、ICデバイスおよびフラットパネルディスプレイのデバイススピードを向上させることができる。
【0003】
長距離通信を行うために、エルビウムドープ光ファイバ増幅器(EDFA)により光信号を増幅させる活性媒体として、光ファイバを用いることが知られている。しかし、光ファイバは、従来のプロセスを用いて、ICに統合することができない。一方、外部光源は、シリコンベースのICデバイスに適用されるIII族〜V族化合物半導体用いて形成することができる。しかし、このような半導体を適用するためには、従来の製造工程にはない余計な工程が必要になる。このため、ハイブリッド・アセンブリは、SiベースのICデバイスに光電デバイスを接続するために、依然として光電アセンブリプロセスを強いられる。
【0004】
二酸化シリコン(SiO)が最小減衰を示すのは、長距離光通信の波長として最も広く用いられる1540nm付近である。このため、二酸化シリコンは、導光板を構成する物質として利用できる可能性がある。二酸化シリコン導波路は、広範囲に利用できる従来のSi互換プロセス(Si-compatible process)を用いて、シリコンウエハおよびガラス表示パネル上に形成することができる。二酸化シリコンの別の魅力的特性は、いったん適切なレベルにエルビウムイオン(Er)がドープされると、二酸化シリコン媒体が光信号の最小減衰を示す波長と同一である1540nmの波長の光に変換できることである。従って、この波長帯の光信号を、光源からさらに送信することにより、あるいは、二酸化シリコン導波路と同波長とすることにより、低電力での送信が可能となる。
【0005】
しかし、間接遷移形半導体シリコンは、長い間、低発光物質とみなされてきた。近年、シリコンナノ結晶(Si−nc)を含むシリコンを豊富に含むシリコン酸化物(シリコンリッチシリコン酸化物:SRSO)が、有望な発光特性を示すことが見出されてきた。シリコンナノ結晶を含むSRSOの最適な発光波長は、従来法によれば、概ね600nm〜900nmである。シリコンナノ結晶を含むSRSO膜にエルビウムイオンがドープされると、その発光波長は、900nm付近から1540nmに変化し、発光の量子効果が顕著に高まる。このとき、シリコンナノ結晶粒子は、シリコン酸化物マトリックス内でErイオンを励起するための増感剤として機能する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2004/105201号パンフレット
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Y. Hibino : Silica-based planar lightwave circuits and their applications, MRS Bulletin, May 2003, p.365.
【非特許文献2】W. Skorupa, J. M. Sun, S. Prucnal, et al : Rare earth ion implantation for silicon based light emission : from infrared to ultraviolet, Mater. Res. Soc. Symp. Proc., Vol.866, 2005, p.105.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、約650℃以上に加熱できないガラス等の温度感応性基板上に、シリコンナノ結晶を含むSRSO膜を形成する方法は、知られていない。
【0009】
このため、シリコンベースのIC製造プロセスのような低温プロセスにより、1540nmで機能する導光板(導波路)を製造することができれば、有利である。
【0010】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、低温プロセスにより製造でき、1540nmで機能するErドープシリコンナノ結晶を含むシリコン酸化物導波路およびその製造方法、並びにその導波路を備えた集積回路を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の導波路の製造方法は、上記の課題を解決するために、エルビウム(Er)がドープされた、シリコン(Si)ナノ結晶を含むシリコン酸化物(SiOx)導波路の製造方法であって、最下部層を形成する工程、上記最下部層を覆うように、1540nmで最低光減衰を示すErドープシリコンナノ結晶を含むシリコン酸化膜を形成する工程、および、上記Erドープシリコンナノ結晶を含むシリコン酸化膜を覆うように最上部層を形成する工程を含むことを特徴としている。
【0012】
上記の発明によれば、エルビウムイオンを励起するための増感剤として機能するシリコンナノ結晶を含むシリコン酸化物に、エルビウムがドープされた、シリコン酸化物導波路が形成される。このため、シリコンベースのIC材料から導波路を構成できると共に、シリコンベースのIC製造プロセスにより導波路を製造することができる。従って、低温プロセスにより製造でき、1540nmで機能するシリコン酸化物導波路を製造することができる。
【0013】
なお、「1540nmで最低光減衰を示す」とは、最低光減衰を示す波長が1540nmのみを意味するものではなく、その波長が1540nm付近であること、すなわち、約1540nmであればよいことを意味する。
【0014】
本発明の導波路の製造方法では、上記Erドープシリコンナノ結晶を含むシリコン酸化膜導波路を形成する工程は、高密度プラズマ化学気相堆積法(HDPCVD)により、シリコンを豊富に含むシリコン酸化膜(SRSO膜)を堆積する工程、上記SRSO膜をアニーリングする工程、上記SRSO膜にErイオンを注入する工程、および、上記Erイオンの注入によって形成されたErドープシリコン酸化膜をアニーリングする工程を含んでいてもよい。
【0015】
本発明の導波路の製造方法では、上記SRSO膜を堆積する工程では、厚さ100〜10000nmのSRSO膜を堆積してもよい。なお、SRSO膜の厚さは、約100nm以上、100000nm以下であればよい。
【0016】
本発明の導波路の製造方法では、上記SRSO膜をアニーリングする工程は、600℃〜1100℃で、5分〜5時間行ってもよい。なお、反応条件は、約600℃以上、約1100℃以下で、約5分以上、約5時間以下であればよい。
【0017】
本発明の導波路の製造方法では、上記Erイオンを注入する工程は、100keVのエネルギー、Erドープシリコン酸化膜の厚さの中間部に対し、5×1015〜1×1017cm−2のドーズ量で、Erイオンを注入してもよい。なお、反応条件は、約100keVのエネルギーで、約5×1015cm−2以上、1×1017cm−2以下のドーズ量で、Erイオンを注入することができる。
【0018】
本発明の導波路の製造方法では、上記Erドープシリコン酸化膜をアニーリングする工程は、600〜1000℃で、約5分〜60分行ってもよい。なお、反応条件は、約600℃以上、約1000℃以下で、約5分以上、約60分以下であればよい。
【0019】
本発明の導波路の製造方法では、上記Erドープシリコンナノ結晶を含むシリコン酸化膜導波路を形成する工程は、1.46を越え、2.30以下の第1屈折率(n)を有するErドープシリコン酸化膜を形成してもよい。なお、第1屈折率(n)は、約1.46を越え、約2.30以下であればよい。
【0020】
本発明の導波路の製造方法では、上記最上部層を形成する工程は、第1屈折率未満の第2屈折率を有する最上部層を形成し、上記最下部層を形成する工程は、第1屈折率未満の第2屈折率を有する最下部層を形成してもよい。
【0021】
本発明の導波路の製造方法では、上記最上部層を形成する工程、および、上記最下部層を形成する工程は、第2屈折率が1.46である二酸化シリコンからなる最上部層および最下部層を形成してもよい。なお、第2屈折率は、第1屈折率未満であって、約1.46であればよい。
【0022】
本発明の導波路の製造方法では、さらに、上記Erドープシリコンナノ結晶を含むシリコン酸化膜導波路をパターニングし導波路端部を形成する工程と、反応性イオンエッチング(RIE)により、上記導波路端部をエッチングし、ミラー光学面を形成する工程とを含んでいてもよい。
【0023】
本発明の導波路は、上記の課題を解決するために、エルビウム(Er)がドープされたシリコンナノ結晶を含むシリコン酸化物(SiOx)導波路であって、最下部層、上記最下部層を覆うErドープシリコンナノ結晶を含むシリコン酸化膜、上記Erドープシリコンナノ結晶を含むシリコン酸化膜を覆う最上部層、第1波長帯の光を受容する入力光学面、および、第2波長帯の光を供給する出力光学面を備えることを特徴としている。
【0024】
上記の発明によれば、エルビウムイオンを励起するための増感剤として機能するシリコンナノ結晶を含むシリコン酸化物に、エルビウムがドープされた、シリコン酸化物導波路が構成される。このため、シリコンベースのIC材料から導波路を構成できると共に、シリコンベースのIC製造プロセスにより導波路を製造することができる。従って、低温プロセスにより製造でき、1540nmで機能するシリコン酸化物導波路を提供することができる。
【0025】
本発明の導波路では、上記入力光学面は、600nm以上1540nm未満の第1波長帯を受容し、上記出力光学面は、1540nmの第2波長帯の光を供給するものであってもよい。なお、入力光学面は、約600nm以上、約1540nm未満の第1波長帯を受容し、上記出力光学面は、約1540nmの第2波長帯の光を供給するものであってもよい。
【0026】
本発明の導波路では、上記Erドープシリコンナノ結晶を含むシリコン酸化膜は、1540nmで最低光減衰を示すものであってもよい。なお、上述のように、最低光減衰を示す波長は、1540nmのみを意味するものではなく、その波長が1540nm付近であること、すなわち、約1540nmであればよい。
【0027】
本発明の導波路では、上記Erドープシリコンナノ結晶を含むシリコン酸化膜は、1.46を越え、2.30以下の第1屈折率(n)を有するものであってもよい。なお、上述のように、第1屈折率(n)は、約1.46を越え、約2.30以下であればよい。
【0028】
本発明の導波路では、上記最上部層および最下部層は、いずれも、第1屈折率未満の第2屈折率を有するものであってもよい。
【0029】
本発明の導波路では、上記最上部層および最下部層は、いずれも、第2屈折率が1.46である二酸化シリコンからなるものであってもよい。なお、第2屈折率は、第1屈折率未満であって、約1.46であればよい。
【0030】
本発明の導波路では、上記入力光学面は、傾斜ミラー光学面であってもよい。
【0031】
本発明の導波路では、上記最上部層は、上記傾斜ミラー光学面を覆う界面を有していてもよい。
【0032】
本発明の導波路では、さらに、最上部層の少なくとも一部に形成された、電気式ポンプ光源を備えており、上記電気式ポンプ光源は、傾斜ミラー光学面を覆う出力部を有していてもよい。
【0033】
本発明の導波路では、さらに、最上部層の少なくとも一部に形成された光検出器を備えており、上記光検出器は、傾斜ミラー光学面を覆う入力部を有していてもよい。
【0034】
本発明の集積回路は、前記いずれかの導波路を備えていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0035】
本発明の導波路の製造方法は、以上のように、最下部層を形成する工程、上記最下部層を覆うように、1540nmで最低光減衰を示すErドープシリコンナノ結晶を含むシリコン酸化膜導波路を形成する工程、および、上記ErドープErドープシリコンナノ結晶を含むシリコン酸化膜導波路を覆うように最上部層を形成する工程を含んでいる。また、本発明の導波路は、最下部層、上記最下部層を覆うErドープシリコンナノ結晶を含むシリコン酸化膜、上記Erドープシリコンナノ結晶を含むシリコン酸化膜を覆う最上部層、第1波長帯の光を受容する入力光学面、および、第2波長帯の光を供給する出力光学面を備える構成である。それゆえ、低温プロセスにより製造でき、1540nmで機能するErドープシリコンナノ結晶を含むシリコン酸化物導波路を実現できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】Erドープシリコンナノ結晶を含むシリコン酸化物導波路を示す部分断面図である。
【図2】図1の導波路の第1変形例を示す部分断面図である。
【図3】図1の導波路の第2変形例を示す部分断面図である。
【図4A】Erイオンドープシリコンナノ結晶を含むSRSO膜、および、Erイオン非ドープシリコンナノ結晶を含むSRSO膜における、600nm〜1100nmのフォトルミネセンス(PL)発光スペクトルを示すグラフである。
【図4B】Erイオンドープシリコンナノ結晶を含むSRSO膜、および、Erイオン非ドープシリコンナノ結晶を含むSRSO膜における、1300nm〜1800nmのフォトルミネセンス(PL)発光スペクトルを示すグラフである。
【図5】第2アニーリングの温度および時間が異なるErドープシリコンナノ結晶により増感されたSRSO膜のフォトルミネセンス測定結果を示すグラフである。
【図6】図1の導波路の第4変形例を示す部分断面図である。
【図7】導波路システムを示す部分断面図である。
【図8】Erドープシリコンナノ結晶を含むシリコン酸化膜導波路の製造工程を示すフローチャートである。
【図9】Erドープシリコンナノ結晶を含むシリコン酸化膜導波路の別の製造工程を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0037】
本発明は、シリコンナノ結晶とErとをSRSO膜にドープすることにより、ガラスパネル上に形成されたICデバイスおよびフラットパネルディスプレイでの光相互接続用の導波路(光学利得媒体)を実現することにある。このアプローチの利点は、全ての物質および全てのプロセスが、シリコンベースの製造プロセスに基づく点である。さらに、このような導波路は、コストのかかるIII族〜V族化合物半導体を備えた980nmポンプレーザを必要としない。Erドープシリコンナノ結晶を含むシリコン酸化物(SiOx)導波路は、導波路と光検出器/受光器とを用いた発光機能の統合も可能になる。本発明は、光信号送信に限らず、ICデバイス内およびICデバイス間の増幅、または、フラットパネルディスプレイ内およびフラットディスプレイ間の増幅にさえ利用される、導波路(光学利得媒体)としての、Erドープシリコンナノ結晶により増感されたシリコン酸化物の利用方法に関するものである。
【0038】
また、本発明によれば、エルビウムドープシリコンナノ結晶を含むシリコン酸化物導波路の製造方法を提供することができる。本発明の導波路の製造方法は、最下部層(bottom layer)を準備し、その最下部層を覆うように、Erドープシリコンナノ結晶を含むシリコン酸化膜導波路を形成する。これにより、この導波路は、約1540nmで最小減衰を示すようになる。次に、上記Erドープシリコンナノ結晶を含むシリコン酸化膜を覆うように、最上部層(top layer)を形成する。Erドープシリコン酸化膜は、例えば、高密度プラズマ化学気相堆積法(HDPCVD)を用いて、シリコンを豊富に含むシリコン酸化膜(SRSO膜)を堆積させ、そのSRSO膜をアニーリングすることにより形成することができる。そして、エルビウムイオン(Er)の注入後、Erドープシリコン酸化膜を再度アニールする。
【0039】
Erドープシリコンナノ結晶を含むシリコン酸化膜は、1.46を越え、2.30以下の第1屈折率(n)を有する。
【0040】
また、最上部層および最下部層は、第1屈折率未満の第2屈折率を有していてもよい。例えば、最上部層および最下部層は、第2屈折率が約1.46である二酸化シリコンからなるものであってもよい。また、本発明の導波路の製造方法は、上記シリコン酸化膜導波路をパターニングして、導波路端部を形成してもよい。また、本発明の導波路の製造方法では、その後、導波路の端部に、反応性イオンエッチング(RIE)を行い、ミラー光学面を形成してもよい。
【0041】
以下、本発明のErドープシリコンナノ結晶を含むシリコン酸化物導波路およびその製造方法の一実施形態について、図1〜図9に基づいて、詳細に説明する。
【0042】
図1は、シリコン(Si)ナノ結晶を含むシリコン酸化物(SiOx)に、エルビウム(Er)がドープされた導波路(Erドープシリコンナノ結晶含有シリコン酸化物導波路)の部分断面図である。導波路100は、最下部層102、Erドープシリコンナノ結晶を含むシリコン酸化膜(SiOx膜)104、および最上部層106を備えている。最下部層102は、Erドープシリコンナノ結晶を含むシリコン酸化膜104に覆われている。Erドープシリコンナノ結晶を含むシリコン酸化膜104における、シリコン酸化物「SiOx」の「x」は、2以下である。この点を考慮すると、シリコンナノ結晶の直径は、約1〜10nmである。Erドープシリコンナノ結晶を含むシリコン酸化膜104は、約1540nmで最小光減衰を示す。Erドープシリコンナノ結晶を含むシリコン酸化膜104は、最上部層106に覆われている。Erドープシリコンナノ結晶を含むシリコン酸化膜104は、1.46を越え、2.30以下の第1屈折率(n)を有する。最上部層106および最下部層102は、いずれも、第1屈折率未満の第2屈折率を有する。なお、最上部層106および最下部層102は、同じ屈折率でなくてもよい。例えば、最上部層106および最下部層102は、第2屈折率が約1.46である二酸化シリコンから構成することができる。
【0043】
導波路100は、シリコンまたはガラスなどの物質からなる基板114上に形成されている。図1の断面図には示されていないが、導波路100は、二酸化シリコン等の誘電体からなり、第1屈折率未満の屈折率を有する「側面(side)」を有している。この「側面」は、平面視すると(上面または下面からみると)、Erドープシリコンナノ結晶を含むシリコン酸化膜104に隣接している。
【0044】
導波路100は、さらに、入力光学面116および出力光学面118を有する。入力光学面116は、第1波長帯の光を受容する。出力光学面118は、第2波長帯の光を供給する。例えば、入力光学面116は、約600nm〜約1540nm未満の第1波長帯の光を受容する。一方、出力光学面118は、約1540nmの第2波長帯の光を供給する。
【0045】
入力光学面116および出力光学面118は、図示しない導波路の別の部分に接続されており、電気式ポンプ光源等の光源(図示せず)からの光を受容し、フォトダイオード等の光ターゲット(図示せず)に光を供給してもよい。なお、一形態では、導波路100は、2つの端部を有するErドープシリコン酸化膜から構成されており、各端部には、傾斜ミラー光学面が形成されていてもよい。また、別の形態では、導波路100は、このような2つの端部を複数組有するErドープシリコン酸化膜から構成されていてもよい。
【0046】
図2は、図1の導波路の第1変形例を示す部分断面図である。図2の構成では、入力光学面116が、傾斜光学面である。例えば、最上部層106は、傾斜ミラー光学面(入力光学面116)を覆う界面200を有していてもよい。図2の構成では、電気式ポンプ光源(図中では単に「光源」)202は、最上部層106の少なくとも一部に形成されており、傾斜ミラー光学面(入力光学面116)を覆う出力部204を有している。また、図示しないが、電気式ポンプ光源202は、最下部層102または基板114に形成されており、傾斜ミラー光学面(入力光学面116)が、電気式ポンプ光源202からの光を受容できるように傾斜していてもよい。
【0047】
図3は、図1の導波路の第2変形例を示す部分断面図である。図3の構成では、入力光学面116および出力光学面118がいずれも、傾斜ミラー光学面である。図2の構成と同様に、最上部層106は、傾斜ミラー光学面(入力光学面116)を覆う界面200を有している。また、電気式ポンプ光源202は、最上部層106の少なくとも一部に形成されており、傾斜ミラー光学面(入力光学面116)を覆う出力部204を有している。これらの構成に加え、図3の構成では、さらに、界面302を有する最下部層102の少なくとも一部に、光学検波器(optical detector)300が形成されている。光学検波器300は、傾斜ミラー光学面(出力光学面118)の下部に、入力部304を有している。図示しないが、電気式ポンプ光源202が、最下部層102に設けられており、光学検波器300が、最上部層106に設けられていてもよい。また、図示しないが、電気式ポンプ光源202および光学検波器300は、いずれも同一の層に形成されていてもよい。また、図示しないが、電気式ポンプ光源202、光学検波器300、および傾斜ミラー面(入力光学面116および出力光学面118)は、上面視した場合に、Erドープシリコンナノ結晶を含むシリコン酸化膜104の側面に設けられていてもよい。
【0048】
〔機能の説明〕
シリコンを豊富に含むシリコン酸化膜(SRSO膜)は、高密度プラズマ化学気相堆積法(HDPCVD)を用いて、シリコンウエハおよび石英ウエハ上に堆積することができる。堆積条件は、堆積膜の屈折率が1.70〜1.95に収まるように選択する。
【0049】
【表1】

【0050】
表1は、堆積条件と、堆積SRSO膜の屈折率および減衰係数の測定結果を示したものである。具体的には、表1は、高密度プラズマ化学気相堆積法(HDPCVD)の堆積条件、堆積されたSRSO膜の屈折率および減衰係数の測定結果を示している。サンプル22および32は、従来型の水平炉により、1100℃で3時間アニールした。一方、サンプル42はアニール時間を5時間とした。高温アニーリングの間に、SRSO膜表面近傍のシリコンナノ結晶粒子の酸化を防止または低減するため、アニール前に、SRSO膜サンプルを厚さ9nmのSiNxキャップ層で被覆した。その結果、全てのSRSO膜が、第1アニーリング後、900nm付近を中心とする、強いPL発光を示した。第1アニーリング後、1E15/cm,100keVの注入条件で、各サンプルにErイオンを注入した。Erイオン注入後、700℃〜1000℃で、15分〜60分、第2アニーリング(活性化アニーリング)を行った。
【0051】
図1〜図3は、Erドープシリコンナノ結晶を含むシリコン酸化物導波路(光学利得媒体)を示している。これらの導波路(光学利得媒体)は、ICデバイスおよびフラットパネルディスプレイの光源と統合することができる。上記光源および導波路(導光板)は、ICデバイス内またはフラットディスプレイ内の光信号、および、複数のICデバイス間または複数のフラットディスプレイ間の光信号を送信する光相互接続システムの構成要素とすることができる。
【0052】
シリコン酸化物マトリックス中のErイオンは、Erイオンにエネルギーを伝達するシリコンナノ結晶内部に、光学的に正孔対を生成することによって、間接的に励起させることが可能である。シリコンナノ結晶は、その過程で、増感剤として機能する。シリコンナノ結晶を含むシリコン酸化物は、下記(1)および(2)の2つの重要な特徴を有する。
(1)直接励起されたErイオンよりも、ポンプ吸収断面積が桁違いに大きい。
(2)650nm〜950nmの広範な発光波長を有する。
適切なレベルのErイオンがドープされた、シリコンナノ結晶を含むシリコン酸化物は、光学利得媒体(導波路)としても、シリコンベースICデバイスおよびフラットパネルディスプレイ内に集積できる光増幅器としてさえも利用できる。さらに、これらの導波路は、希土類元素がドープされた同種のSRSO膜または希土類元素がドープされていない同種のSRSO膜を備えたデバイス等の低電力および低コストの光源を用いて、励起することができる。このようなアプローチにより、III族〜V族化合物半導体を用いた従来のレーザデバイスを、低コストの光源に置き換えることが可能となる。
【0053】
図4Aおよび図4Bは、Erイオンがドープされた、シリコンナノ結晶を含むSRSO膜、および、Erイオンがドープされていない、シリコンナノ結晶を含むSRSO膜のフォトルミネセンス(PL)発光スペクトルを示すグラフである。図4Aは、600nm〜1100nmのPL発光スペクトルであり、図4Bは、1300〜1800nmのPL発光スペクトルである。Er注入前後のサンプル32および42は、図4Aのような600nm〜1100nmのPL発光スペクトル、および、図4Bのような1100nm〜1800nmのPL発光スペクトルを示している。具体的には、Erイオン注入前のSRSO膜は、900nm付近を中心とする強い発光を示すが、1536nmまたはその付近では、発光を示さない。これに対し、Erイオン注入時および注入後のアニーリングを行ったSRSO膜は、1536nmを中心とする新たな発光が生じると共に、900nm付近の発光は著しく減少する。このような結果は、Erをドープすることにより、900nm付近を中心とする発光が、1536nmを中心とする発光に「転移する(transfer)」ことを示している。シリコン酸化物マトリックス中のErイオンは、Erイオンにエネルギーを伝達するシリコンナノ結晶内部に、光学的に正孔対を生成することによって、間接的に励起される。つまり、シリコンナノ結晶は、この過程で、増感剤として機能する。
【0054】
SRSO膜の膜厚は、約200nmである。このSRSO膜の堆積後、1100℃で5時間アニールし、さらに、Erイオン注入後、SRSO膜を800℃で60分、活性化アニーリングした。Erイオンの注入条件は、100keV,1E15/cmとした。
【0055】
【表2】

【0056】
表2は、Erイオン注入前後のSRSO膜のフォトルミネセンス波長およびピーク高さ、シリコンナノ結晶の結晶サイズおよび密度を示したものである。サンプル32は、サンプル42(NO=53sccm)よりも低いNOガス気流下(NO=41sccm)で堆積したものの、サンプル32のシリコンナノ結晶の密度(2.0E+11/cm)は、サンプル42のシリコンナノ結晶の密度(1.5E+11/cm)よりも高密度となった。しかし、サンプル32は、サンプル42よりも低いPL発光を示しており、希土類イオン注入前後に、最大PL発光を示す最適シリコンナノ結晶密度が存在することを示している。
【0057】
図5は、第2アニーリングの温度および時間が異なるErドープシリコンナノ結晶により増感されたSRSO膜のフォトルミネセンスの測定結果を示すグラフである。図5は、膜厚200nmのSRSO膜のアニーリング温度を示している。SRSO膜の堆積後、1100℃で5時間アニーリングし、Erイオン注入後、種々の温度で、2回目のアニーリングを行った。Erイオン注入条件は、100keV,1E15/cmである。
【0058】
図6は、図1の導波路の第4変形例を示す部分断面図である。図6の導波路は、ガラス基板上に形成された、シリコンベースICデバイスまたはフラットパネルディスプレイに内蔵された光相互接続システムである。図6の光相互接続システムは、希土類元素がドープされたまたはドープされていないSRSO膜を備えた電気式ポンプ光源装置600、Erドープシリコンナノ結晶により増感されたシリコン酸化物(Erドープシリコンナノ結晶を含むシリコン酸化膜104)を備えた導波路(光学利得媒体)、および、光検知器/受光器602を備えている。電気式ポンプ光源装置600から放出された通常980nm未満の波長を有する信号は、導波路(光学利得媒体)に導かれ、1540nmの波長の信号に「変換」される。Erドープ光ファイバ増幅器(EDFA)により光が増幅されるのと同様に、1540nmの信号は、電気的または光学的に励起される内部光源または外部光源604(通常980nm未満の波長を有する)により、さらに増幅することができる。
【0059】
図7は、導波路システムの部分断面図である。図7は、ガラス基板(図中AおよびB)上に形成された、2つのシリコンベースデバイスまたは2つのフラットパネルディスプレイとして構成された光相互接続システムを示している。電気式ポンプ光源装置600は、希土類元素がドープされたSRSO膜、または、希土類がドープされていないSRSO膜を備えており、ガラス基板Aに形成されている。Erドープシリコンナノ結晶により増感されたシリコン酸化物(Erドープシリコンナノ結晶を含むシリコン酸化膜104)を備えた導波路(光学利得媒体)は、ガラス基板Aおよびガラス基板Bのいずれにも形成されている。光検知器/受光器602は、ガラス基板Bに形成されている。ガラス基板Aおよびガラス基板Bには、任意に(内部または外部に)、電気的または光学的に励起される光ポンプ源604aおよび光ポンプ源604bが形成されていてもよい。光検知器/受光器602は、ガラス基板Bに形成されている。
【0060】
図8は、Erドープシリコンナノ結晶を含むシリコン酸化膜導波路の製造工程を示すフローチャートである。S802では、希土類がドープされたシリコンナノ結晶により増感されたシリコン酸化物、または、希土類がドープされたシリコンナノ結晶により増感されたシリコン酸化物を備えた光源デバイスを形成する。S804では、通常屈折率が1.46である二酸化シリコン層を堆積する。S806では、二酸化シリコンの成長/堆積、および、その後のSiイオン注入により、SRSO膜を形成する。また、S806では、高密度プラズマ化学気相堆積法(HDPCVD)、プラズマ化学気相堆積法(PECVD)、スパッタリング、または、スピンコートにより、in situErドープされたSRSO膜、または、in situ ErドープされていないSRSO膜を直接堆積する。SRSO膜の屈折率は、1.46を越え、2.30以内に収まるが、SRSO膜内に過剰のSiを過剰に存在させることにより、周囲の二酸化シリコン層の屈折率より大きくなっている。SRSOの膜厚は、0.1〜10μmに収める。S808では、レーザアニーリングまたはパルス熱アニーリング(RTA)により、シリコン酸化物中にシリコンナノ結晶を形成する。なお、S808におけるナノ結晶形成方法の詳細は、特に限定されるものではない。S810では、S806において、最初のin situドープを行っていない場合、Erイオン注入より注入されたErイオンを有するSRSO膜を堆積する。S812では、熱アニーリング、パルス熱アニーリング(RTA)、レーザアニーリング等により、Erイオンをアニールおよび活性化する。S814では、光学利得媒体(導波路)をパターニングおよびエッチングする。S816では、反応性イオンエッチング(RIE)によるエッチングにより、ErドープSRSO膜上にミラーを形成する。S818では、Erドープシリコンナノ結晶を含むシリコン酸化膜を覆うように、二酸化シリコン層を堆積する。
【0061】
図9は、Erドープシリコンナノ結晶を含むシリコン酸化膜導波路の別の製造工程を示すフローチャートである。図9に示す製造方法は、明確にするため、各工程に通し番号を付しているが、付された番号は工程の順番を示すものではない。つまり、当然のことながら、図中の工程のうち、一部の工程を省略してもよいし、同時に行ってもよいし、正確な順序を維持せずに行ってもよい。図9の製造方法は、S900から開始する。
【0062】
まず、S902では、最下部層を準備(形成)する。次に、S904では、最下部層を覆うように、Erドープシリコンナノ結晶を含むシリコン酸化膜導波路を形成する。これにより、この導波路は、約1540nmで最低光減衰を示すようになる。S904では、例えば、1.46を越え、2.30以下の第1屈折率(n)を有するErドープシリコン酸化膜を形成してもよい。S906では、Erドープシリコン酸化膜を覆うように、最上部層を形成する。S902およびS906では、第1屈折率未満の第2屈折率を有する最上部層および最下部層を形成する。例えば、最上部層および最下部層は、第2屈折率が約1.46である二酸化シリコンであってもよい。
【0063】
また、Erドープシリコン酸化膜を形成するS904において、サブステップを含んでいてもよい。具体的には、S904aでは、高密度プラズマ化学気相堆積法(HDPCVD)により、SRSO膜を堆積する。通常、そのSRSO膜の厚さは、約100〜10000nmである。S904bでは、SRSO膜をアニールする。例えば、このアニーリングは、約600〜1100℃で、約5分〜5時間行ってもよい。S904cでは、アニール後のSRSO膜に、Erイオンを注入し、Erドープシリコン酸化膜を形成する。例えば、Erイオン注入は、約100keVのエネルギー、Erドープシリコン酸化膜の厚さ方向の中間部に対し、5×1015〜1×1017cm−2のドーズ量で行うことができる。S904dでは、形成されたErドープシリコン酸化膜をアニールする。例えば、このアニーリングは、約600〜1000℃で、約5分〜60分間行ってもよい。
【0064】
また、S905aで、シリコン酸化膜導波路の端部をパターニングより形成し、さらに、S905bで、形成したシリコン酸化膜導波路の端部を、反応性イオンエッチング(RIE)によりエッチングし、その端部にミラー光学面を形成してもよい。
【0065】
エルビウム(Er)ドープシリコン(Si)ナノ結晶を含むシリコン酸化物(SiOx)導波路およびその製造方法は、上述の通りである。上記導波路の構造の細部、および、製造工程の詳細は、本発明を説明するための例示である。しかし、本発明は、上述の例に何ら限定されるものではない。例えば、Erドーピングの詳細は述べていないが、他の希土類元素を本発明に適用することもできる。また、当業者であれば、別の変形例および形態を想起するであろう。
【0066】
本発明は、以下のように表現することもできる。
〔1〕本発明の導波路の製造方法は、エルビウム(Er)がドープされた、シリコン(Si)ナノ結晶を含むシリコン酸化物(SiOx)導波路の製造方法であって、
最下部層を形成する工程、
上記最下部層を覆うように、約1540nmで最低光減衰を示すErドープシリコンナノ結晶を含むシリコン酸化膜導波路を形成する工程、および、
上記Erドープシリコン酸化膜を覆うように最上部層を形成する工程を含むことを特徴とする導波路の製造方法。
〔2〕上記Erドープシリコンナノ結晶を含むシリコン酸化膜を形成する工程は、高密度プラズマ化学気相堆積法(HDPCVD)により、シリコンを豊富に含むシリコン酸化物(SRSO)膜を堆積する工程、
上記SRSO膜をアニーリングする工程、
上記SRSO膜にErイオンを注入する工程、および、
上記Erドープシリコン酸化膜をアニーリングする工程を含む上記〔1〕に記載の導波路の製造方法。
〔3〕上記SRSO膜を堆積する工程では、厚さ約100〜10000nmの範囲のSRSOを堆積する上記〔2〕に記載の導波路の製造方法。
〔4〕上記SRSO膜をアニーリングする工程は、約600℃〜1100℃で、約5分〜5時間行う上記〔2〕に記載の導波路の製造方法。
〔5〕上記Erイオンを注入する工程工程は、約100keVのエネルギー、Erドープシリコン酸化膜の厚さの中間部に対し、約5×1015〜1×1017cm−2のドーズ量(dose)で、Erイオンを注入する上記〔2〕に記載の導波路の製造方法。
〔6〕上記Erドープシリコン酸化膜をアニーリングする工程は、約600〜1000℃で、約5分〜60分行う上記〔2〕に記載の導波路の製造方法。
〔7〕上記Erドープシリコンナノ結晶を含むシリコン酸化膜を形成する工程は、1.46を越え、2.30以下の第1屈折率(n)を有するErドープシリコン酸化膜を形成する上記〔1〕に記載の導波路の製造方法。
〔8〕上記最上部層を形成する工程は、第1屈折率未満の第2屈折率を有する最上部層を形成し、
上記最下部層を形成する工程は、第1屈折率未満の第2屈折率を有する最下部層を形成する上記〔7〕に記載の導波路の製造方法。
〔9〕上記最上部層を形成する工程、および、上記最下部層を形成する工程は、第2屈折率が約1.46である二酸化シリコンからなる最上部層および最下部層を形成することを特徴とする上記〔8〕に記載の導波路の製造方法。
〔10〕上記シリコン酸化膜導波路をパターニングし導波路端部を形成する工程と、
反応性イオンエッチング(RIE)により、上記導波路の端部をエッチングし、ミラー光学面を形成する工程とを含む上記〔1〕に記載の導波路の製造方法。
〔11〕Erドープシリコンナノ結晶を含むシリコン酸化物(SiOx)導波路であって、
最下部層、上記最下部層を覆うErドープシリコンナノ結晶を含むシリコン酸化膜、上記Erドープシリコン酸化膜を覆う最上部層、第1波長帯の光を受容する入力光学面、および、第2波長帯の光を供給する出力光学面を備える導波路。
〔12〕上記入力光学面は、約600nm以上、約1540nm未満の第1波長帯を受容し、
上記出力光学面は、約1540nmの第2波長帯の光を供給する上記〔11〕に記載の導波路。
〔13〕上記Erドープシリコンナノ結晶を含むシリコン酸化膜は、約1540nmで最低光減衰を示すことを特徴とする上記〔11〕に記載の導波路。
〔14〕上記Erドープシリコンナノ結晶を含むシリコン酸化膜は、1.46を越え、2.30以下の第1屈折率(n)を有する上記〔11〕に記載の導波路。
〔15〕上記最上部層および最下部層は、いずれも、第1屈折率未満の第2屈折率を有する上記〔14〕に記載の導波路。
〔16〕上記最上部層および最下部層は、いずれも、第2屈折率が約1.46である二酸化シリコンからなる上記〔15〕に記載の導波路。
〔17〕上記入力光学面は、傾斜ミラー光学面である上記〔11〕に記載の導波路。
〔18〕上記最上部層は、上記傾斜ミラー光学面を覆う界面を有する上記〔17〕に記載の導波路。
〔19〕さらに、最上部層の少なくとも一部に形成された電気式ポンプ光源を備えており、
上記電気式ポンプ光源は、傾斜ミラー光学面を覆う出力部(output)を有する〔17〕に記載の導波路。
〔20〕さらに、最上部層の少なくとも一部に形成された光検出器を備えており、
上記光検出器は、上記傾斜ミラー光学面を覆う入力部(input)を有する上記〔17〕に記載の導波路。
〔21〕上記〔11〕〜〔20〕のいずれか1つに記載の導波路を備えた集積回路。
【0067】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【0068】
〔関連出願〕
本願は、Pooran Joshi等により発明されたにファイルされた米国特許出願第11/418,273(2006年1月6日出願)の一部継続出願(CIP出願)である。米国特許出願第11/418,273は、以下の出願の一部継続出願である。
・Pooran Joshi等により発明された米国特許出願第11/327,612(2006年1月6日出願,薄膜酸化プロセスの促進)。
・Pooran Joshi等により発明された米国特許出願第11/013,605(2004年12月15日出願,高密度プラズマ水素化)。
・Pooran Joshi等により発明された米国特許出願第10/801,377(2004年3月15日出願,酸素結合を改善した酸化物の堆積:米国特許第7122487号)。
・Pooran Joshi等により発明された米国特許出願第11/139,726(2005年5月26日出願,ゲート酸化物の高濃度プラズマ酸化の促進)。
・Pooran Joshi等により発明された米国特許出願第10/871,939(2004年6月17日出願,シリコン薄膜のための高濃度プラズマプロセス:米国特許第7186663号)。
Pooran Joshi等により発明された米国特許出願第10/801,374(2004年3月15日出願,酸化物薄膜の製造方法:米国特許第7,087,537号)。
上述の全ての出願が、本願の参考文献として援用される。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明は、シリコンベースのIC製造工程のような低温プロセスにより、シリコン酸化膜導波路を製造することができる。本発明は、例えば、光相互接続用の光学利得媒体、光増幅器、導光板、集積回路(IC)、SiベースのICデバイス等の製造に好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0070】
100 導波路(エルビウムがドープされた、シリコンナノ結晶を含むシリコン酸化物導波路)
102 最下部層
104 Erドープシリコンナノ結晶を含むシリコン酸化膜
106 最上部層
116 入力光学面
118 出力光学面
200 界面
202 電気式ポンプ光源
300 光学検波器(光検出器)
302 界面
304 入力部
600 電気式ポンプ光源装置(電気式ポンプ光源)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エルビウム(Er)がドープされた、シリコン(Si)ナノ結晶を含むシリコン酸化物(SiOx)導波路の製造方法であって、
最下部層を形成する工程、
上記最下部層を覆うように、1540nmで最低光減衰を示すErドープシリコンナノ結晶を含むシリコン酸化膜を形成する工程、および、
上記Erドープシリコンナノ結晶を含むシリコン酸化膜を覆うように最上部層を形成する工程を含むことを特徴とする導波路の製造方法。
【請求項2】
上記Erドープシリコンナノ結晶を含むシリコン酸化膜を形成する工程は、
高密度プラズマ化学気相堆積法(HDPCVD)により、シリコンを豊富に含むシリコン酸化膜(SRSO膜)を堆積する工程、
上記SRSO膜をアニーリングする工程、
上記SRSO膜にErイオンを注入する工程、および、
上記Erイオンの注入によって形成されたErドープシリコン酸化膜をアニーリングする工程を含む請求項1に記載の導波路の製造方法。
【請求項3】
上記SRSO膜を堆積する工程では、厚さ100〜10000nmのSRSO膜を堆積することを特徴とする請求項2に記載の導波路の製造方法。
【請求項4】
上記SRSO膜をアニーリングする工程は、600℃〜1100℃で、5分〜5時間行うことを特徴とする請求項2に記載の導波路の製造方法。
【請求項5】
上記Erイオンを注入する工程は、100keVのエネルギー、Erドープシリコン酸化膜の厚さの中間部に対し、5×1015〜1×1017cm−2のドーズ量で、Erイオンを注入することを特徴とする請求項2に記載の導波路の製造方法。
【請求項6】
上記Erドープシリコン酸化膜をアニーリングする工程は、600〜1000℃で、約5分〜60分行うことを特徴とする請求項2に記載の導波路の製造方法。
【請求項7】
上記Erドープシリコンナノ結晶を含むシリコン酸化膜を形成する工程は、1.46を越え、2.30以下の第1屈折率(n)を有するErドープシリコン酸化膜を形成することを特徴とする請求項1に記載の導波路の製造方法。
【請求項8】
上記最上部層を形成する工程は、第1屈折率未満の第2屈折率を有する最上部層を形成し、
上記最下部層を形成する工程は、第1屈折率未満の第2屈折率を有する最下部層を形成することを特徴とする請求項7に記載の導波路の製造方法。
【請求項9】
上記最上部層を形成する工程、および、上記最下部層を形成する工程は、第2屈折率が1.46である二酸化シリコンからなる最上部層および最下部層を形成することを特徴とする請求項8に記載の導波路の製造方法。
【請求項10】
さらに、上記Erドープシリコンナノ結晶を含むシリコン酸化膜導波路をパターニングし導波路端部を形成する工程と、
反応性イオンエッチング(RIE)により、上記導波路端部をエッチングし、ミラー光学面を形成する工程とを含むことを特徴とする請求項1に記載の導波路の製造方法。
【請求項11】
エルビウム(Er)がドープされたシリコンナノ結晶を含むシリコン酸化物(SiOx)導波路であって、
最下部層、上記最下部層を覆うErドープシリコンナノ結晶を含むシリコン酸化膜、上記Erドープシリコンナノ結晶を含むシリコン酸化膜を覆う最上部層、第1波長帯の光を受容する入力光学面、および、第2波長帯の光を供給する出力光学面を備えることを特徴とする導波路。
【請求項12】
上記入力光学面は、600nm以上、1540nm未満の第1波長帯を受容し、
上記出力光学面は、1540nmの第2波長帯の光を供給することを特徴とする請求項11に記載の導波路。
【請求項13】
上記Erドープシリコンナノ結晶を含むシリコン酸化膜は、1540nmで最低光減衰を示すことを特徴とする請求項11に記載の導波路。
【請求項14】
上記Erドープシリコンナノ結晶を含むシリコン酸化膜は、1.46を越え、2.30以下の第1屈折率(n)を有することを特徴とする請求項11に記載の導波路。
【請求項15】
上記最上部層および最下部層は、いずれも、第1屈折率未満の第2屈折率を有することを特徴とする請求項14に記載の導波路。
【請求項16】
上記最上部層および最下部層は、いずれも、第2屈折率が1.46である二酸化シリコンからなることを特徴とする請求項15に記載の導波路。
【請求項17】
上記入力光学面は、傾斜ミラー光学面であることを特徴とする請求項11に記載の導波路。
【請求項18】
上記最上部層は、上記傾斜ミラー光学面を覆う界面を有することを特徴とする請求項17に記載の導波路。
【請求項19】
さらに、最上部層の少なくとも一部に形成された、電気式ポンプ光源を備えており、
上記電気式ポンプ光源は、傾斜ミラー光学面を覆う出力部を有することを特徴とする請求項17に記載の導波路。
【請求項20】
さらに、最上部層の少なくとも一部に形成された光検出器を備えており、
上記光検出器は、傾斜ミラー光学面を覆う入力部を有することを特徴とする請求項17に記載の導波路。
【請求項21】
請求項11〜20のいずれか1項に記載の導波路を備えた集積回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−272614(P2009−272614A)
【公開日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−52596(P2009−52596)
【出願日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】