説明

エンジン作業機

【課題】ブレーキの摩耗や発熱を抑え、長寿命の、自動でブレーキを掛けることのできるエンジン作業機を提供する。
【解決手段】エンジンの出力軸の回転数に応じてエンジンの出力軸と工具が取り付けられた従動軸との間で駆動力を断続する遠心クラッチと、エンジンの駆動状態を制御するエンジン制御スイッチ5と、工具の駆動を停止させる電磁ブレーキ11と、エンジン制御スイッチ5の出力に基づいて遠心クラッチが接続状態から遮断状態になったか否かを判別するクラッチ状態判別手段32と、クラッチ状態判別手段32の出力に基づいて遠心クラッチが接続状態から遮断状態になったと判別された場合にブレーキ手段を駆動するコントローラ7とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はエンジン作業機、特に刈払機、ヘッジトリマ、チェンソー等に好適なブレーキを備えた携帯用エンジン作業機に関する。
【背景技術】
【0002】
ブレーキを備えた刈払機には、例えば、特許文献1に示すものがある。この刈払機は、エンジンの出力軸と回転刃駆動軸との間に遠心クラッチを備えるとともに、回転刃駆動軸に連結されたクラッチドラムに揺動可能に取り付けられた遠心式のブレーキ揺動子がクラッチケースと一体に形成したブレーキドラム部に押し付け可能に取り付けた遠心ブレーキ機構を備えている。
【0003】
エンジン回転数が高い状態では、遠心クラッチが接続されるとともにブレーキ揺動子はブレーキドラム部から離れてブレーキが解除され、回転刃が駆動される。この状態からエンジン回転数が低くなると、遠心クラッチが切れてエンジンの出力軸と回転刃駆動軸とを切り離すとともに、ブレーキ揺動子がブレーキドラム部に押付けられて回転刃駆動軸が停止する。
【0004】
【特許文献1】特開2002−176822号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、この機構で用いられている遠心クラッチおよび遠心ブレーキはいずれもバネと遠心力との釣り合いにより制御される。このため、どちらかあるいは両方のバネが経時変化等で特性が変化すると、エンジン回転数が高回転から低回転に移行する段階でまだ遠心クラッチが接続している時に遠心ブレーキが作動する可能性がある。そして、遠心クラッチが接続中に遠心ブレーキが作動すると、遠心クラッチや遠心ブレーキの摩耗や摩擦による発熱が生じ、故障の原因となる。
【0006】
また、エンジンの回転数をアイドリング回転数から上げていく場合、遠心クラッチが接続して回転刃駆動軸の回転数が十分上昇するまでは、回転刃矩同軸は遠心ブレーキが作動したまま回転する。このため、遠心ブレーキの摩耗や摩擦による発熱が生じ、故障の原因となる。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、ブレーキの摩耗や発熱を抑え、長寿命の、自動でブレーキを掛けることのできるエンジン作業機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明に係るエンジン作業機は、エンジンの出力軸の回転数に応じて前記エンジンの出力軸と工具が取り付けられた従動軸との間で駆動力を断続するクラッチと、前記エンジンの駆動状態を制御するエンジン制御手段と、前記工具の駆動を停止させるブレーキ手段と、前記エンジン制御手段の出力に基づいて前記クラッチが接続状態から遮断状態になったか否かを判別するクラッチ状態判別手段と、前記クラッチ状態判別手段の出力に基づいて前記クラッチが接続状態から遮断状態になったと判別された場合に前記ブレーキ手段を駆動する制御手段とを備えることを特徴とする。
【0009】
また、前記エンジン制御手段は、前記エンジンの回転数を制御し、前記クラッチは、前記エンジンの回転数が第1の所定回転数以上になると接続し、前記クラッチ状態判別手段は、前記エンジン制御手段により前記エンジンの回転数を前記第1の所定回転数より高い回転数から前記第1の所定回転数より低い回転数に低下させる制御後に第1の所定時間が経過すると、前記クラッチが接続状態から遮断状態になったと判別することが好ましい。
【0010】
さらに、前記エンジンの回転数を検出するエンジン回転数センサをさらに備え、前記クラッチは、前記エンジンの回転数が前記第1の所定回転数以上になると接続し、前記クラッチ状態判別手段は、前記エンジン制御手段により前記エンジンの回転数を低下させる際、前記エンジン回転数センサにより前記エンジンの回転数が前記第1の所定回転数より小さい回転数あるいは前記第1の所定回転数近傍の回転数であることが検出されると、前記クラッチが接続状態から遮断状態になったと判別してもよい。
【0011】
また、前記制御手段は、前記ブレーキ手段が駆動した後に前記エンジン制御手段により前記エンジンの回転数を上昇させる際、前記ブレーキ手段を解除した後に前記エンジン制御手段によるエンジン回転数の制御を行わせてもよい。
【0012】
さらに、前記制御手段は、前記ブレーキ手段が駆動した後、第2の所定時間経過後に前記ブレーキ手段の駆動を解除してもよい。
【0013】
また、前記従動軸または前記工具の回転数を検出する工具回転センサをさらに備え、前記制御手段は、前記工具回転センサが前記従動軸または前記工具の停止または第2の所定回転数以下の回転数を検出した際に、前記ブレーキ手段の駆動を解除してもよい。
【0014】
また、前記ブレーキ手段を作動または解除するブレーキスイッチをさらに備え、前記制御手段は、前記ブレーキスイッチが前記ブレーキ手段を作動するように操作された場合に、前記クラッチ状態判別手段の判別結果にかかわらず、前記ブレーキ手段を作動させてもよい。
【0015】
また、前記制御手段は、前記エンジン制御手段による前記エンジンの回転数を低下させる操作と前記ブレーキスイッチによる前記ブレーキ手段を作動させる操作とが第3の所定時間内に行なわれた場合に、前記クラッチ状態判別手段の判別結果にかかわらず、前記ブレーキ手段を作動させてもよい。
【0016】
さらに、前記エンジン作業機は刈払機であり、前記工具は回転刃であってもよい。
【発明の効果】
【0017】
以上のように本発明によれば、エンジン制御手段の出力に基づいてクラッチが接続状態から遮断状態になったか否かを判別するクラッチ状態判別手段により、クラッチが接続状態から遮断状態になったと判別された場合に、制御手段はブレーキ手段を駆動する。このため、クラッチが遮断された状態でブレーキが作動するので、遠心クラッチやブレーキの摩耗や摩擦による発熱を抑えることができ、エンジン作業機の長寿命化を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明を実施するための最良の形態を添付図面に沿って説明する。図1は本発明を適用した刈払機の斜視図であり、図2はこの刈払機の一部を拡大した断面図である。また、図3は刈払機の要部の構成を示すブロック図であり、図4は刈払機の制御回路図、図5は刈払機のブレーキ制御を示す制御フローチャートである。
【0019】
図1に示すように、本発明の第1の実施形態に係る刈払機1は、中空棒状の操作桿27を備え、操作桿27の一方の端部には回転刃28、他端にはエンジン20が取り付けられている。操作桿27内にはエンジン20からの動力を伝達する回転刃駆動軸(従動軸)23が回転可能に挿通される。回転刃駆動軸23の一端は図示しない傘歯車機構を介して回転刃28に連結され、回転刃駆動軸23の他端は後述する遠心クラッチ22を介してエンジン20の出力軸21に接続される。また、操作桿27には、オンの場合にはエンジン20を動作可能にし、オフの場合にはエンジン20を停止するメインスイッチ3と、作業時のエンジン回転数を所定の回転数に設定する回転数設定スイッチ8とが設けられている。さらに、操作桿27はハンドル26を備えており、ハンドル26には回転数設定スイッチ8で設定された作業用のエンジン回転数と非作業時のアイドリング回転数とを切り替えるエンジン制御スイッチ5が設けられている。
【0020】
図2に示すように、遠心クラッチ22はクラッチケース25内に収容される。遠心クラッチ22は、回転刃駆動軸23に接続されたクラッチドラム29と、クラッチドラム29内に収納されてエンジン出力軸21に接続されたクラッチ揺動子30から構成される。エンジン出力軸21の回転数が所定回転数N1(第1の所定回転数)以上になるとクラッチ揺動子30が揺動してクラッチドラム29に当接し、遠心クラッチ22が接続した状態となる。また、エンジン回転数が所定回転数N1より下がると、クラッチドラム29に当接していたクラッチ揺動子30が揺動してクラッチドラム29から離れ、遠心クラッチ22は遮断状態になる。なお、遠心クラッチ22の遮断回転数を接続回転数(所定回転数N1)より低い回転数としてヒステリシスを設ける構成としてもよい。
【0021】
また、クラッチケース25内には、一方がクラッチケース25に接続され、他方がクラッチドラム29に接続され、回転刃駆動軸23の回転を止めるための電磁ブレーキ(ブレーキ手段)11が設けられている。電磁ブレーキ11は、後述するコントローラ7からの出力信号により電磁ブレーキ駆動回路12を介して駆動される。
【0022】
また、エンジン20に混合気を供給するキャブレター31には、キャブレター31のスロットルバルブを回動するスロットル制御モータ9が設けられている。スロットル制御モータ9は後述するコントローラ7からの出力信号によりモータ駆動回路10を介して駆動される。
【0023】
図3に示すように、コントローラ7は、メインスイッチ3、エンジン制御スイッチ5、回転数設定スイッチ8、スロットル制御モータ9、電磁ブレーキ11と接続される。コントローラ7は、メインスイッチ3、エンジン制御スイッチ5、回転数設定スイッチ8からの入力信号を処理して出力信号を生成してスロットル制御モータ9を駆動することでエンジン20の回転数の制御や停止を行なっており、これらはエンジン制御手段を構成する。また、コントローラ7はクラッチ状態判別手段32を有している。クラッチ状態判別手段32はメインスイッチ3、エンジン制御スイッチ5、回転数設定スイッチ8からの入力信号、あるいはスロットル制御モータ9への出力信号を処理して遠心クラッチ22が接続状態であるか遮断状態であるかを判別する。また、コントローラ7はメインスイッチ3、エンジン制御スイッチ5、回転数設定スイッチ8からの入力信号、あるいはスロットル制御モータ9への出力信号と、クラッチ状態判別手段32の出力信号を処理して出力信号を生成し、電磁ブレーキ11を制御(作動または解除)する。
【0024】
図4に示すように、制御回路2のメインスイッチ3がオフの場合には、接点3aが開き図示しないイグニッションコイルから図示しない電圧安定回路を経て制御回路2への電源供給を遮断するとともに、接点3bが閉じられる。接点3bは図示しないイグニッションコイルに接続されており、接点3bが閉じると図示しないイグニッションコイルが短絡されエンジン20は停止する。また、メインスイッチ3がオンの場合には接点3bが開きエンジン20が始動可能になるとともに、接点3aが閉じ図示しないイグニッションコイルが図示しない電圧安定回路を経て制御回路2に接続される。メインスイッチ3がオンになると、DC/DCコンバータ4はコントローラ7等に電力を供給し、制御回路2が動作を開始する。
【0025】
また、エンジン制御スイッチ5はオンオフスイッチであり、オンの間はエンジン20の回転数が後述する回転数設定スイッチ8で設定された回転数に制御される。またエンジン制御スイッチ5がオフになるとエンジン20の回転数を低下させアイドリング状態にする。コントローラ7はマイコンであり、図示しないCPU、ROM、RAM、タイマ、A/D変換器等を内蔵している。回転数設定スイッチ8は可変抵抗器8a、抵抗8b、コンデンサ8cから構成され、可変抵抗器8aの抵抗を変更することによりエンジン制御スイッチ5がオンの場合のエンジン回転数を所定の範囲で変更する。
【0026】
スロットル制御モータ9は、正転逆転の切替が容易で、回転角が回転角検出回路なしで制御可能で、かつ静止時のトルクが大きいステッピングモータである。スロットル制御モータ9は、コントローラ7の出力信号によりモータ駆動回路10を介して正逆に駆動されキャブレター31のスロットルバルブを所定の位置に保持することでエンジン回転数を制御する。また、電磁ブレーキ11はコントローラ7からの出力信号により電磁ブレーキ駆動回路12を介して駆動される。
【0027】
なお、上述の制御回路2は図示しないイグニッションコイルの出力を電源として用いているが、図6に示すように電源として電池パック15を用い、ダイオード16を介して電池パック15の出力電圧を制御回路2に供給してもよい。この場合充電制御回路18を介して電池パック15をイグニッションコイルの出力から充電することも可能である。
【0028】
次に図5のフローチャートを用いて刈払機1の制御動作を説明する。エンジン20が始動されると図示しないイグニッションコイルの電圧が図示しない電圧安定回路を経て制御回路2に供給されることでコントローラ7が動作を開始する。ステップS301においては、初期設定処理が行われ、ポート設定等の処理を行うとともにエンジン20の回転数をアイドリング状態に保持する。ステップS302において回転数設定スイッチ8からの電圧をA/D変換し回転数指令値として読み取る。ステップS303においてエンジン制御スイッチ5の状態を確認しコントローラ7内の図示しないメモリに最新の状態判別値として記憶するとともに前回の状態判別値はメモリの別のエリアに前回状態判別値として記憶する。
【0029】
ステップS304においてエンジン制御スイッチ5の最新の状態判別値が前回の状態判別値と異ならない場合はステップS302に戻り、前回の状態判別値と異なる場合すなわちエンジン制御スイッチ5が操作された場合はステップS305に進む。
【0030】
ステップS305においてエンジン制御スイッチ5の最新の状態判別値がオンであればステップS309に進み電磁ブレーキ11をオフした後、ステップS310に進み回転数指令値の値に応じてモータ駆動回路10に駆動信号を出力しスロットル制御モータ9を駆動しエンジン20の回転数が回転数設定スイッチ8で設定された作業用回転数になるよう制御し、ステップS302に戻る。また、ステップS305において、エンジン制御スイッチ5の状態判別値がオフの場合はステップS306に進みモータ駆動回路10を介してスロットル制御モータ9を駆動してエンジン20をアイドリング状態にする。
【0031】
次にステップS307に進み、所定時間T1(第1の所定時間)待機してクラッチ状態判別手段32により遠心クラッチ22が接続状態から遮断状態になったと判別されると、ステップS308に進む。なお、所定時間T1はエンジン回転数が遠心クラッチ22の遮断回転数(所定回転数N1)以下に低下するのに十分な時間である。そして、ステップS308において、電磁ブレーキ駆動回路12に駆動信号を出力し電磁ブレーキ11を駆動し回転刃駆動軸23を停止させ、ステップS302に戻る。
【0032】
上述の刈払機1によれば、エンジン回転数を作業用の回転数からアイドリング回転数に低下させる際には、遠心クラッチ22が遮断状態になった後に電磁ブレーキ11を作動させる。このため、エンジン20の駆動力が回転刃駆動軸23または回転刃28に作用している間に電磁ブレーキ11が作動することがない。したがって、電磁ブレーキ11の摩耗や発熱を抑えることができるうえ、電磁ブレーキ11作動時にエンジン20や遠心クラッチ22等に過負荷を与えることも無く、刈払機1の長寿命化が実現できる。さらに、遠心クラッチ22の状態を検出するセンサを要さないため、低コストで上述の効果を得ることができる。
【0033】
また、電磁ブレーキ11が作動している間にエンジン回転数をアイドリング回転数から作業回転数に上昇させる際には、電磁ブレーキ11を解除した後にエンジン回転数を上昇させる。このため、電磁ブレーキ11が作動した状態で遠心クラッチ22が接続することが無く、エンジン20に過負荷を与えることが無くなり、遠心クラッチ22や電磁ブレーキ11の摩耗を抑えることができ、刈払機1を長寿命化することができる。
【0034】
次に、本発明に係る刈払機の第2の実施形態について、図7乃至10を用いて説明する。第1の実施形態のものと同一構成要素には同一符号を付して説明は省略する。図7の刈払機201の斜視図および図8のブロック図に示すように、本実施形態の刈払機201にはブレーキスイッチ6が追加されており、ブレーキスイッチ6はハンドル26のエンジン制御スイッチ5の近傍に設けられる。作業者がハンドル26のブレーキスイッチ6を握った状態でエンジン制御スイッチ5をオン操作するとエンジン回転数が設定回転数に上昇する。作業者がハンドル26のブレーキスイッチ6を握ると図9に示す回路図のブレーキスイッチ6はオンとなり、ブレーキスイッチ6から手を離すとブレーキスイッチ6はオフとなる。
【0035】
次に図10のフローチャートを用いて動作を説明する。
エンジン20が始動するとイグニッションコイルの電圧が制御回路2に供給されてコントローラ7が動作を開始する。ステップS401は初期設定処理であり、ポート設定等の処理を行うとともにエンジン20の回転数をアイドリング状態に保持する。ステップS402において回転数設定スイッチ8からの電圧をA/D変換し回転数指令値として読み取る。ステップS403においてブレーキスイッチ6の状態を確認し、ブレーキスイッチ6の状態がオフであればステップS407に進み、ブレーキスイッチ6の状態がオンであれば作業者がハンドル26を握って作業開始準備状態になったと判断しステップS404に進む。
【0036】
ステップS404においてエンジン制御スイッチ5の状態を確認しコントローラ7内の図示しないメモリに最新の状態判別値として記憶するとともに前回の状態判別値はメモリの別のエリアに前回状態判別値として記憶する。そして、ステップS405においてエンジン制御スイッチ5の最新の状態判別値が前回の状態判別値と異ならない場合はステップS402に戻り、前回の状態判別値と異なる場合すなわちエンジン制御スイッチ5が操作された場合はステップS406に進む。
【0037】
ステップS406においてエンジン制御スイッチ5の最新の状態判別値がオンであればステップS411に進み電磁ブレーキ11をオフした後、ステップS412に進み回転数指令値の値に応じてモータ駆動回路10に駆動信号を出力しスロットル制御モータ9を駆動しエンジン20の回転数が回転数設定スイッチ8で設定された作業用回転数になるよう制御し、ステップS402に戻る。また、ステップS406において、エンジン制御スイッチ5の状態判別値がオフの場合はステップS407に進みスロットル制御モータ9を駆動してエンジン20をアイドリング状態にする。次にステップS408に進みブレーキスイッチ6の状態を確認し、ブレーキスイッチ6がオンであればステップS409に進む。ステップS409ではエンジン制御スイッチ5がオフになってからの時間を測定し、所定時間T2(第3の所定時間)が経過していなければステップS408に戻り、所定時間T2が経過すればステップS410に進む。ステップS408において所定時間T2経過前にブレーキスイッチ6がオフになると、エンジン20の回転数あるいは遠心クラッチ22が接続状態から遮断状態になったか否かに関係なくステップS410において、電磁ブレーキ駆動回路12に駆動信号を出力し電磁ブレーキ11を駆動し回転刃駆動軸23および回転刃28を停止させる。その後ステップS402に戻る。
【0038】
なお、上述のエンジン制御スイッチ5と関連して操作されるブレーキスイッチ6に代わって、独立して操作されるブレーキスイッチ6を設けてもよい。この場合には、ブレーキスイッチ6が操作されると、エンジン20の回転数あるいは遠心クラッチ22が接続状態から遮断状態になったか否かに関係なく、電磁ブレーキ駆動回路12に駆動信号を出力し電磁ブレーキ11を駆動し回転刃駆動軸23および回転刃28を停止させる。
【0039】
上述の刈払機201によれば、第1の実施形態と同様に遠心クラッチ22や電磁ブレーキ11の摩耗を抑えることができ、刈払機を長寿命化することができるという効果を得られるうえに、ブレーキスイッチ6が操作された場合には迅速に回転刃28を停止することができる。したがって、作業者の回転刃28を素早く停止させたいという意思を迅速に反映させることができ、操作性をより向上させた刈払機を実現することができる。
【0040】
なお、上述の第1および第2の実施形態ではエンジン回転数を作業用回転数からアイドリング回転数に低下させる操作後に所定時間T1または所定時間T2経過すると電磁ブレーキ11を駆動していたが、これに限られるものでは無い。例えば、図11にブロック図で示すように、エンジン20、回転刃駆動軸23、または回転刃28の回転数を検出する回転数センサ33を設けた構成を用いることもできる。この場合、エンジン回転数を作業用回転数からアイドリング回転数に低下させる際に、エンジン20、回転刃駆動軸23、または回転刃28の回転数が予めコントローラ7に記憶された遠心クラッチ22の遮断回転数近傍の回転数以下になったことが回転数センサ33で検出されると、クラッチ状態判別手段32は遠心クラッチ22が接続状態から遮断状態になったと判別する。そして、コントローラ7は電磁ブレーキ駆動回路12に駆動信号を出力し電磁ブレーキ11を駆動して回転刃駆動軸23を停止させる。
【0041】
この場合も上述の実施形態の場合と同様、遠心クラッチ22が接続状態から遮断状態になったと判別されてから電磁ブレーキ11を駆動するので、遠心クラッチ22や電磁ブレーキ11の摩耗を抑えることができ、刈払機を長寿命化することができる。更に、回転数を直接監視することで、正確に遠心クラッチ22の断続を判別することができる。なお、回転数センサ33としてエンジン回転数を検出する場合には、エンジン回転数をフィードバックしてスロットル制御モータを制御する構成としてもよく、この場合にはエンジンの負荷が変化しても回転数を一定に保つことができ、操作性をより向上させることもできる。また、エンジン回転数の検出には通常エンジンの点火時期の制御に用いている回転数検出装置を併用することができ、これによれば、既設の装置を用いるだけでよいため、コストの上昇を抑えながら上述の効果を得ることができる。なお、クラッチ状態判別手段32として、所定時間T1を用いる実施形態と回転数センサ33を用いる実施形態を別々に記載したが、この両方により遠心クラッチ22の状態を判別するようにしても良く、この場合には一方のクラッチ状態判別手段が故障して動作不能となる事態となっても、電磁ブレーキ11を安定して駆動させることができる。
【0042】
また、上述の第1、第2の実施形態およびその変形例では、電磁ブレーキ11の駆動後、エンジン制御スイッチ5が再びオフからオンになると電磁ブレーキ11を解除している。しかし、この構成に限られるものでは無く、ステップS308で電磁ブレーキ11を駆動した後、所定時間T3(第2の所定時間)経過後に電磁ブレーキ11を解除するようにしても良い。なお、所定時間T3は回転刃が停止または十分低い回転数以下になるのに十分な時間である。この場合、所定時間T3経過後にエンジン回転数をアイドリング回転数から再び作業回転数に上昇させる際には、電磁ブレーキ11は解除された状態にある。したがって、上述の場合と同様に、電磁ブレーキ11が作動した状態で遠心クラッチ22が接続することが無く、エンジン20に過負荷を与えることが無くなり、遠心クラッチ22や電磁ブレーキ11の摩耗を抑えることができ、刈払機を長寿命化することができる。また、回転数が十分に低下する時間だけブレーキを駆動することで、必要以上のブレーキの磨耗や、ブレーキの駆動に要する動力のロスを抑えることができる。
【0043】
さらに、図12に示すように、回転刃駆動軸23または回転刃28の回転数を検出する回転刃回転数センサ34を設けてもよい。この場合には、上述の所定時間経過後に電磁ブレーキ11を解除する代わりに、回転刃駆動軸23または回転刃28が所定の回転数N2(第2の所定回転数)以下または停止するとブレーキを解除することで、上述の場合と同様の効果を得ることができる。また、直接従動軸側の回転数を監視することで、正確なタイミングで電磁ブレーキ11を解除することができ、電磁ブレーキ11の磨耗や動力のロスを抑えることができる。
【0044】
なお、上述の各実施形態ではキャブレター31のスロットルバルブをスロットル制御モータ9で駆動することによりエンジン20の回転数を制御していた。しかし、キャブレター31のスロットルバルブをワイヤを介してハンドル26に設けたスロットルレバーで操作することでエンジン回転数を制御する方式でも良い。この場合、エンジン回転数制御手段としてのスロットルレバーの位置またはスロットルバルブの開度を検出する位置センサ、あるいはエンジン20または回転刃駆動軸23の回転数を検出する回転センサを設ける。そして、位置センサあるいは回転センサにより、エンジン20が作業回転数からアイドリング回転数に低下されたこと、あるいはエンジン20の回転数が遠心クラッチ22の接続回転数から遮断回転数に低下したことを検出する。そして、検出された情報に基づいて、遠心クラッチ22が接続状態であるか遮断状態であるかを判別することで、上述のスロットル制御モータ9を用いた場合と同じブレーキの制御を行うことができ、同じ効果を得ることができる。
【0045】
また、上述の実施形態では、電磁ブレーキ11を用いていたが、電磁ブレーキ11に代えて、油圧ブレーキ等他の方式のブレーキを使用しても良い。さらに、遠心クラッチ22の代わりに同様の特性を有する電磁クラッチ等を用いてもよい。
【0046】
なお、本発明は刈払機への適用に限定されるものでは無く、エンジンの動力を遠心クラッチを用いて回転刃や往復刃の駆動に用いるチェンソーやヘッジトリマ等のエンジン作業機にも適用することができる。この場合、刈払機1、201のハンドル26に設けられていたスロットル制御スイッチ、ブレーキスイッチをチェンソーやヘッジトリマの操作ハンドル部分に設ける等、刈払機に設けられていた構成を適宜設ければよい。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の第1実施形態に係る刈払機の斜視図である。
【図2】図1の刈払機の一部を拡大した断面図である。
【図3】図1の刈払機の要部の構成を示すブロック図である。
【図4】図1の刈払機の制御回路を示す回路図である。
【図5】図1の刈払機のブレーキの制御を示す制御フローチャートである。
【図6】図4の制御回路の変形例を示す回路図である。
【図7】本発明の第2実施形態に係る刈払機の斜視図である。
【図8】図7の刈払機の要部の構成を示すブロック図である。
【図9】図7の刈払機の制御回路を示す回路図である。
【図10】図7の刈払機のブレーキ制御を示す制御フローチャートである。
【図11】本発明の別の実施形態に係る刈払機の要部の構成を示すブロック図である。
【図12】本発明のさらに別の実施形態に係る刈払機の要部の構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0048】
1 刈払機
3 メインスイッチ
5 エンジン制御スイッチ
7 コントローラ
8 回転数設定スイッチ
9 スロットル制御モータ
11 電磁ブレーキ
20 エンジン
22 遠心クラッチ
23 回転刃駆動軸
31 キャブレター

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンの出力軸の回転数に応じて前記エンジンの出力軸と工具が取り付けられた従動軸との間で駆動力を断続するクラッチと、
前記エンジンの駆動状態を制御するエンジン制御手段と、
前記工具の駆動を停止させるブレーキ手段と、
前記エンジン制御手段の出力に基づいて前記クラッチが接続状態から遮断状態になったか否かを判別するクラッチ状態判別手段と、
前記クラッチ状態判別手段の出力に基づいて前記クラッチが接続状態から遮断状態になったと判別された場合に前記ブレーキ手段を駆動する制御手段とを備えることを特徴とするエンジン作業機。
【請求項2】
前記エンジン制御手段は、前記エンジンの回転数を制御し、
前記クラッチは、前記エンジンの回転数が第1の所定回転数以上になると接続し、
前記クラッチ状態判別手段は、前記エンジン制御手段により前記エンジンの回転数を前記第1の所定回転数より高い回転数から前記第1の所定回転数より低い回転数に低下させる制御後に第1の所定時間が経過すると、前記クラッチが接続状態から遮断状態になったと判別することを特徴とする請求項1に記載のエンジン作業機。
【請求項3】
前記エンジンの回転数を検出するエンジン回転数センサをさらに備え、
前記クラッチは、前記エンジンの回転数が前記第1の所定回転数以上になると接続し、
前記クラッチ状態判別手段は、前記エンジン制御手段により前記エンジンの回転数を低下させる際、前記エンジン回転数センサにより前記エンジンの回転数が前記第1の所定回転数より小さい回転数あるいは前記第1の所定回転数近傍の回転数であることが検出されると、前記クラッチが接続状態から遮断状態になったと判別することを特徴とする請求項1若しくは請求項2に記載のエンジン作業機。
【請求項4】
前記制御手段は、前記ブレーキ手段が駆動した後に前記エンジン制御手段により前記エンジンの回転数を上昇させる際、前記ブレーキ手段を解除した後に前記エンジン制御手段によるエンジン回転数の制御を行わせることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のエンジン作業機。
【請求項5】
前記制御手段は、前記ブレーキ手段が駆動した後、第2の所定時間経過後に前記ブレーキ手段の駆動を解除することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のエンジン作業機。
【請求項6】
前記従動軸または前記工具の回転数を検出する工具回転センサをさらに備え、
前記制御手段は、前記工具回転センサが前記従動軸または前記工具の停止または第2の所定回転数以下の回転数を検出した際に、前記ブレーキ手段の駆動を解除することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のエンジン作業機。
【請求項7】
前記ブレーキ手段を作動または解除するブレーキスイッチをさらに備え、
前記制御手段は、前記ブレーキスイッチが前記ブレーキ手段を作動するように操作された場合に、前記クラッチ状態判別手段の判別結果にかかわらず、前記ブレーキ手段を作動させることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載のエンジン作業機。
【請求項8】
前記制御手段は、前記エンジン制御手段による前記エンジンの回転数を低下させる操作と前記ブレーキスイッチによる前記ブレーキ手段を作動させる操作とが第3の所定時間内に行なわれた場合に、前記クラッチ状態判別手段の判別結果にかかわらず、前記ブレーキ手段を作動させることを特徴とする請求項7に記載のエンジン作業機。
【請求項9】
前記エンジン作業機は刈払機であり、前記工具は回転刃であることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載のエンジン作業機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2010−124700(P2010−124700A)
【公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−299317(P2008−299317)
【出願日】平成20年11月25日(2008.11.25)
【出願人】(000005094)日立工機株式会社 (1,861)
【Fターム(参考)】