説明

エンジン作業機

【課題】防油堤としての機能を損なうことなく、燃料タンクの外面と防油堤の内面との間に形成される隙間に物品が落下することを防止することができるエンジン作業機を提供する。
【解決手段】作業機とエンジンとを収容したケーシング12の下部に燃料タンク15を収容した防油堤14を連設したエンジン作業機11において、防油堤14の内面又はケーシング下部の架台13の内面と燃料タンクの外面との間に形成した隙間A,Bの上部に、通液性を有する隙間覆い部材16を配置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジン作業機に関し、詳しくは、エンジン及び作業機を収容するケーシングの下部に、外部への油分の漏洩を遮断するための防油堤を設けるとともに、該防油堤の内部に燃料タンクを収容したエンジン作業機に関する。
【背景技術】
【0002】
建築や土木工事などの現場あるいは災害時の現場や避難所では、発電機、コンプレッサ、油圧ユニットなどの各種作業機をディーゼルエンジンで駆動する可搬式のエンジン作業機が多く用いられている。このようなエンジン作業機として、防音構造を有するケーシングの下部に設けられた架台上に作業機と該作業機を駆動するエンジンとを配置し、前記ケーシングの下部に、燃料タンクを収容するとともにエンジンや燃料タンクから燃料や潤滑油が漏洩したとしても、これらの油分が外部へ流出することを防止するための防油堤(オイルガードや下フレームとも呼ばれている。)を連設したエンジン作業機が知られている。防油堤は、一般に、上方が開口した有底の箱形で液密に形成されており、収容した燃料タンクの外面と防油堤の内面との間には、衝撃吸収用の隙間を設けるようにしている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−69759号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
防油堤内に大容量の燃料タンクを収容したものでは、燃料タンクの外面と防油堤の内面との間に形成される隙間の上部開口幅が数cm程度しかなく、防油堤の深さによっては、防油堤の内部を目視で確認することが困難であり、また、手を入れるスペースもほとんどない。このため、エンジンの整備などの作業中に部品や工具などの物品を落下させると、落下した物品が隙間から防油堤の内部に入り込んでしまうので、物品を防油堤内から取り出すことは極めて困難である。
【0005】
そこで本発明は、防油堤としての機能を損なうことなく、燃料タンクの外面と防油堤の内面との間に形成される隙間に物品が落下することを防止できるエンジン作業機を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明のエンジン作業機は、ケーシングの下部に設けられた架台上に作業機と該作業機を駆動するエンジンとを配置し、前記ケーシングの下部に燃料タンクを収容した防油堤を連設したエンジン作業機において、前記防油堤の内面又は前記架台の内面と前記燃料タンクの外面との間に形成した隙間の上部に、通液性を有する隙間覆い部材を配置したことを特徴としている。
【0007】
また、本発明のエンジン作業機における前記隙間覆い部材が、前記隙間の開口幅寸法より大きな幅寸法を有する板状又は棒状に形成されていること、前記隙間覆い部材が、多数の通孔又は多数のスリットを有する板状部材、例えば金属多孔板で形成されていること、前記隙間覆い部材が、柔軟性を有するスポンジ、布又は網で形成されていることを特徴としている。
【0008】
さらに、前記隙間覆い部材が、前記防油堤の内面又は前記架台の内面に固着された取付部材に着脱可能に設けられていることを特徴としている。また、前記隙間覆い部材が、前記防油堤の内面又は前記架台の内面に基部側が固着された非通液性の板状体と、該板状体の先端側と前記燃料タンクの外面との間に挟着された通液性を有する通液体とで形成されていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0009】
本発明のエンジン作業機によれば、隙間の上部に隙間覆い部材を配置したので、作業中に部品や工具などの物品を落としてしまっても、物品が隙間を通って防油堤の底部に落下することを防止できる。また、隙間覆い部材には通液性を有するものを使用しているので、エンジンから燃料やオイルなどの油分が漏れ出した場合でも、これらの油分は、隙間覆い部材を通過して防油堤内に流下し、エンジン作業機の外部に流出することはない。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の第1形態例を示すエンジン作業機の正面図である。
【図2】図1のII−II断面図である。
【図3】本発明の第2形態例を示すエンジン作業機の要部断面図である。
【図4】第2形態例で用いた隙間覆い部材の平面図である。
【図5】本発明の第3形態例を示すエンジン作業機の要部断面図である。
【図6】本発明の第4形態例を示すエンジン作業機の要部断面図である。
【図7】本発明の第5形態例を示すエンジン作業機の要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
まず、図1及び図2において、本形態例に示すエンジン作業機11は、防音構造を有するケーシング12の下部に設けられている架台13の上に、発電機やコンプレッサ、油圧ユニットなどの作業機や、該作業機を駆動するディーゼルエンジンなどの機器を収容するとともに、前記架台13の下部に、底板14aと前後一対の側壁14bと左右一対の側壁14cとによって上方が開口した有底の箱形で液密に形成した防油堤14を連設し、該防油堤14の内部に燃料タンク15を収容している。また、ケーシング12の側壁の一部には、エンジンなどの保守作業を行うための点検扉12aが設けられている。
【0012】
燃料タンク15は、前後方向の寸法が防油堤14の前後の側壁14b間の寸法及び架台13の前後の枠13a間の寸法より僅かに小さく形成されており、燃料タンク15の前後の外面15aと防油堤14の前後の側壁14bの内面との間及び燃料タンク15の底面15bと防油堤14の底板14aの上面との間には、衝撃吸収用の隙間Aがそれぞれ形成され、架台13の枠13aの内面と燃料タンク15の上角部15cの外面との間にも、隙間Aの上方に連続する隙間Bが形成されている。
【0013】
そして、防油堤14の内面又は架台13の内面と燃料タンク15の外面との間に形成した隙間A,Bの最上部、すなわち、架台13の枠13aの内面と燃料タンク15の上角部15cの外面との間の隙間Bの上部に、通液性を有する隙間覆い部材16が配置されている。この隙間覆い部材16は、連続気孔を有する合成樹脂や金属のように通液性を有する材料、好ましくは、耐油性、耐水性、耐熱性なども有する材料からなるものであって、本形態例では、隙間Bの開口幅寸法(ケーシング12の前後方向)より大きな幅寸法を有する断面四角形の棒状に形成し、隙間Bの長手方向(ケーシング12の左右方向)に配置して隙間Bの上部を覆うようにしている。この隙間覆い部材16は、単に載置しておくだけでもよいが、必要に応じて接着、溶着、ボルト止めなどの適宜な固定手段で固定しておくことが好ましい。また、断面が偏平な四角形、円形、長円形などに形成した棒状乃至板状部材を使用することもできる。
【0014】
このような隙間覆い部材16を隙間A,Bの上部に配置することにより、例えば、図2に示すボルトのような物品17を作業中に落としてしまっても、隙間覆い部材16によって物品17が隙間A,Bを通って防油堤14の内部に落下することを確実に防止することができる。また、隙間覆い部材16として通液性を有する材料を使用しているので、エンジンなどから漏れた油やケーシング12の内部に浸入した雨水などの液体18は、隙間覆い部材16を通過して下部の防油堤14内に流下するため、燃料タンク15の上面15dに液体18が溜まって外部に流出することはない。
【0015】
図3及び図4は、本発明のエンジン作業機の第2形態例を示すものである。なお、以下の説明において、前記第1形態例に示したエンジン作業機の構成要素と同一の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0016】
本形態例では、隙間A,Bの上部に配置する隙間覆い部材21として、板状部材に多数の通孔22aが形成されている金属製の多孔板22を用いており、多孔板22の一側に屈曲形成した取付片22bを架台13の枠13aにボルト23にて固定している。多孔板22としては、通液性を有するとともに、耐油性、耐水性、耐熱性なども有するパンチングメタルを使用することができるが、通孔22aの直径は、油滴や水滴が通過できる大きさにする必要があり、通孔22aの形状を四角形などの角形にすることもできる。さらに、多数の通孔22aを有する多孔板22に代えて、適当な間隔で多数のスリットを形成した板材、スリットによって櫛歯状に形成した板材などを使用することもできる。
【0017】
図5は、本発明のエンジン作業機の第3形態例を示すもので、本形態例では、架台13の枠13aに取付部材25を固着し、この取付部材25に隙間覆い部材26を着脱可能に取り付けて先端を上角部15cに当接させることにより、隙間覆い部材26を隙間A,Bの上部に配置している。本形態例における隙間覆い部材26としては、連続気孔を有する軟質合成樹脂、例えば通液性を有するスポンジなどを使用することができ、隙間覆い部材26を取付部材25に着脱可能に取り付けることにより、隙間覆い部材26が劣化したような場合でも、容易に新しい隙間覆い部材26に交換することができる。
【0018】
図6は、本発明のエンジン作業機の第4形態例を示すもので、本形態例では、架台13の枠13aに取付部材31を固着し、この取付部材31に隙間覆い部材32を着脱可能に取り付けている。本形態例における隙間覆い部材32としては、通液性を有するとともに柔軟性を有する布や網などを使用することができる。
【0019】
図7は、本発明のエンジン作業機の第5形態例を示すもので、本形態例では、隙間覆い部材35として、隙間の上部を覆う金属板などの板材からなる非通液性の覆い体36と、液を通過させるための通液体37とを組み合わせたものを使用している。覆い体36は、基部側の取付片36aが架台13の枠13aにボルト38により固着されており、先端側の平板部36bと燃料タンク15の上面15dとの間に通液体37を挟着するようにしている。通液体37には、前述のようなスポンジや不織布などを使用することができる。通液体37は、あらかじめ平板部36bの下面に接着などの手段で一体化しておくこともでき、燃料タンク15の上面に通液体37を敷いて覆い体36で押さえ込み、覆い体36を着脱することで通液体37を交換可能とすることもできる。
【0020】
さらに、本形態例に示す構造の場合、上方のケーシング12から隙間に向けて落下する液体を通液性を持たない覆い体36で受け、この液体を燃料タンク15の上面から通液体37を通して燃料タンク15の側面に沿って流下させることができるので、架台13の下面と防油堤14の上端との接合部39に液体が回り込むことがなく、接合部39に隙間があったとしても、接合部39の隙間を通って外部に液体が漏れ出すことを防止できる。また、他の形態例においても、各隙間覆い部材の燃料タンク15側のみに通液性を有する部材を用いたり、架台側を通液性を持たない部材で覆うことにより、第5形態例と同様に、燃料タンク15の側面に沿って液体を流下させることが可能となり、接合部39からの液漏れを防止できる。
【0021】
なお、各形態例では、架台の内面と燃料タンクの外面との間に隙間覆い部材を配置しているが、燃料タンクの高さが防油堤の上端より低い場合には、防油堤の内面と燃料タンクの外面との間に隙間覆い部材を配置すればよい。また、隙間覆い部材は、物品が落下するおそれがある部分、例えば点検扉の下方部分のみに設けても、十分な効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0022】
11…エンジン作業機、12…ケーシング、12a…点検扉、13…架台、13a…前後の枠、14…防油堤、14a…底板、14b…側壁、14c…側壁、15…燃料タンク、15a…前後の外面、15b…底面、15c…上角部、15d…上面、16…隙間覆い部材、17…物品、18…液体、21…隙間覆い部材、22…多孔板、22a…通孔、22b…取付片、23…ボルト、25…取付部材、26…隙間覆い部材、31…取付部材、32…隙間覆い部材、35…隙間覆い部材、36…覆い体、36a…取付片、36b…平板部、37…通液体、38…ボルト、39…接合部、A,B…隙間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーシングの下部に設けられた架台上に作業機と該作業機を駆動するエンジンとを配置し、前記ケーシングの下部に燃料タンクを収容した防油堤を連設したエンジン作業機において、前記防油堤の内面又は前記架台の内面と前記燃料タンクの外面との間に形成した隙間の上部に、通液性を有する隙間覆い部材を配置したことを特徴とするエンジン作業機。
【請求項2】
前記隙間覆い部材は、前記隙間の開口幅寸法より大きな幅寸法を有する板状又は棒状に形成されていることを特徴とする請求項1記載のエンジン作業機。
【請求項3】
前記隙間覆い部材は、多数の通孔又は多数のスリットを有する板状部材で形成されていることを特徴とする請求項1記載のエンジン作業機。
【請求項4】
前記隙間覆い部材は、柔軟性を有するスポンジ、布又は網で形成されていることを特徴とする請求項1記載のエンジン作業機。
【請求項5】
前記隙間覆い部材は、前記防油堤の内面又は前記架台の内面に固着された取付部材に着脱可能に設けられていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項記載のエンジン作業機。
【請求項6】
前記隙間覆い部材は、前記防油堤の内面又は前記架台の内面に基部側が固着された非通液性の板状体と、該板状体の先端側と前記燃料タンクの外面との間に挟着された通液性を有する通液体とで形成されていることを特徴とする請求項1記載のエンジン作業機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−47048(P2012−47048A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−186849(P2010−186849)
【出願日】平成22年8月24日(2010.8.24)
【出願人】(000004617)日本車輌製造株式会社 (722)
【Fターム(参考)】