説明

エンボスインキ、部分マットハードコート転写シートと部分マットハードコート成形品の製造方法

【課題】マット層形成インキ(以下「エンボスインキ」と表現する)を用いて部分マットハードコート転写シートを作成するとき、版胴に形成された不要なインキをドクター刃で完全に除去しきれず転写シートに地汚れが生じる点である。
【解決手段】転写シートにグラビア印刷により印刷し、マット形状を形成するために用いるフィラーとビヒクルからなるエンボスインキである。フィラーは吸油量が100以上300ml/100g以下であり、ビヒクルはOH価が70mgKOH/g以下の樹脂である。ビヒクル1重量部とフィラーを0.05重量部以上0.10重量部以下混合した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、転写シートに印刷により形成しマット(艶消し)部分を形成するために用いるエンボスインキ、部分的にマット部分を有しかつ表面強度の高い成形品を得るために用いる部分マットハードコート転写シートと部分マットハードコート成形品の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
表面強度が高く、表面が部分的にマット形状の装飾成形品を得るための転写シートとして、基体シート上に部分的にグラビア印刷法によりマット層を形成し、その上にハードコート層を形成し、さらにその上に図柄層、接着層などを形成したものがある。
【0003】
上記部分的なマット層は、以下の(1)〜(4)の工程で印刷される。図2はグラビア印刷法の説明図であり、図2を参照しつつ説明する。
(1) インキタンク21からインキローラ23にインキ22を写し取る工程、
(2) インキローラ23に写し取ったインキを版胴24にさらに写し取る工程、
(3 ) 版胴24に写し取ったインキのうち、版胴に形成された凹部分のみにインキが載った状態にするために、ドクター刃25で不要なインキを除去する工程、
(4) 版胴の凹部分に形成されたインキを基体シート1に印刷する工程。
【0004】
マット層はハードコート層に凹凸形状を付与するものであり、マット層を形成するインキはフィラーとビヒクルの混合物である。
【0005】
従来のマット層形成インキ(以下「エンボスインキ」と表現する)は、フィラーとしてシリカ、アルミナなどの微粒子を用い、ビヒクルとしてエポキシ系樹脂、メラミン系樹脂、またはこれらの共重合樹脂や混合物からなる(例えば特許文献1参照)。特に、フィラーとしてシリカ粒子、ビヒクルとしてエポキシメラミン樹脂とアミノアルキッド樹脂の混合物が多用される。
【0006】
しかし、従来のインキを用いてグラビア印刷法で基体シートに部分的にマット層を形成すると上記(3)の工程において、版胴に形成された不要なインキをドクター刃で除去しきれず、マット層形成を意図する場所以外にも余分なマット層(以下転写シートに関して「地汚れ」と表現し、成形品に関し「不要マット層」と表現する)が形成されてしまう欠点があった。このため、所望の位置のみにマット層を形成することができない問題点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2000−85299号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
解決しようとする問題点は、版胴に形成された不要なインキをドクター刃で完全に除去しきれない点である。また、解決しようとする問題点は、部分マットハードコート転写シートに地汚れが生じる点である。さらに、解決しようとする問題点は、部分マットハードコート転写シートを転写して製造する成形品において、マット層に由来するつや消し部分と光沢部分のコントラストが不明瞭となる点である。
【0009】
本発明のその他の課題は、本発明の説明により明らかになる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
発明者らは、従来のエンボスインキとその印刷における挙動を観察し、以下の知見を得た。
【0011】
従来のエンボスインキであるシリカ微粒子並びに、エポキシメラミン樹脂及びアミノアルキッド樹脂の混合物はフィラーとビヒクルが均一に分散していない。従来のエンボスインキを静置保存するとエンボスインキは上層と下層に2分する。
【0012】
上層の上澄み部には樹脂成分が集まり、下層の沈降部にはシリカと樹脂の混合物が集まる。さらに、沈降部に存在するシリカと樹脂は、シリカの割合が多いなどの理由により、シリカと樹脂のゲル状混合物となっている。
【0013】
シリカと樹脂の当該ゲル状混合物が版胴に付着するとドクター刃で完全に除去されず、除去されなかったインキが基体シート上に印刷され、地汚れと不要マット層の原因となる。
【0014】
上記の知見に基づき以下の課題を解決するための手段に想到した。
【0015】
本発明の一の態様にかかるエンボスインキは、
転写シートにグラビア印刷により印刷し、マット形状を付与するために用いる、フィラーとビヒクルからなるエンボスインキにおいて、
フィラーは吸油量が100ml/100g以上300ml/100g以下であり、
ビヒクルはOH価が70mgKOH/g以下の樹脂であり、
前記ビヒクル1重量部と前記フィラーを0.05重量部以上0.10重量部以下混合したことを特徴とする。
【0016】
本発明の好ましい実施態様にかかるエンボスインキにあって、
前記ビヒクルがエポキシメラミン樹脂とアクリル樹脂の混合物であってもよい。
【0017】
本発明の他の好ましい実施態様にかかるエンボスインキにあって、
前記フィラーがシリカであってもよい。
【0018】
本発明の他の態様にかかる部分マットハードコート転写シートは、
剥離性を有する基体シート上に、少なくとも部分マット層、ハードコート層、接着層が積層された部分マットハードコート転写シートにおいて、
前記部分マット層は、本発明にかかるエンボスインキを用いるグラビア印刷により形成されることを特徴とする。
【0019】
本発明のその他の態様にかかる部分マットハードコート成形品の製造方法は、
本発明にかかる部分マットハードコート転写シートを射出成形用金型内に挟み込み、キャビティ内に成形樹脂を射出し、射出成形品を得るのと同時にその表面に前記部分マットハードコート転写シートを接着し、前記射出成形用金型を型開きして部分マット層とともに基体シートを剥離することを特徴とする。
【0020】
以上説明した本発明、本発明の好ましい実施態様、これらに含まれる構成要素は可能な限り組み合わせて実施することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明にかかるエンボスインキは、フィラーとビヒクルの相溶性が良い等の理由から混合後に静置しても、2層に分離することがない。このため、フィラーとビヒクルのゲル状混合物は生じない。よって、本発明にかかるエンボスインキを用いてグラビア印刷を行うと、意図する領域にのみマット層が印刷される。また、本発明にかかるエンボスインキは、フィラーの割合を増やすことができる。このため、より一層凹凸のマット層を形成することができる。
【0022】
本発明にかかる部分マットハードコート転写シートは地汚れが形成されない。
【0023】
本発明にかかる部分マットハードコート成形品の製造方法によれば、つや消し部分と光沢部分のコントラストが明瞭な成形品を得ることができる。さらに、当該成形品は、単一マット領域内において、また、複数のマット領域相互間において、マット感にムラが生ぜず、マット感が一律になるという利点を有する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】図1は部分マットハードコート転写シートの断面説明図である。
【図2】図2はグラビア印刷法の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を参照して本発明の実施例にかかるエンボスインキ、部分マットハードコート転写シートと部分マットハードコート成形品の製造方法をさらに説明する。本明細書において参照する各図は、本発明の理解を容易にするため、一部の構成要素を誇張して表すなど模式的に表しているものがある。このため、構成要素間の寸法や比率などは実物と異なっている場合がある。また、本発明の実施例に記載した部材や部分の寸法、材質、形状、その相対位置などは、とくに特定的な記載のない限りは、この発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではなく、単なる説明例にすぎない。
【0026】
エンボスインキはフィラーとビヒクルから構成される。フィラーは、印刷面にマット形状を形成するものである。
【0027】
フィラーの吸油量は通常100ml/100g以上300ml/100g以下であり、好ましくは100ml/100g以上250ml/100g以下である。従来のエンボスインキに使用されている親水性の強いフィラーに比較して疎水性の強いフィラーを使用する。フィラーはシリカ、アルミナ、酸化チタン、カーボンブラック、沈降性バリウム、炭酸カルシウム、酸化カルシウム、タルク等を成分とする無機顔料微粒子や、フタロシアン、ジオキサジン、アントラキノン系などの有機顔料微粒子や樹脂ビーズなどである。これらの中でシリカが好適に使用できる。シリカはビヒクルと混合後、時間が経過しても粒子径が一定している。
【0028】
ビヒクルとフィラーの混合割合については、フィラー混合量の下限値がビヒクル1重量部とフィラー0.05重量部である。フィラー混合量の上限値はビヒクル1重量部とフィラー0.10重量部である。換言すれば、ビヒクル1重量部とフィラーを0.05重量部以上0.10重量部以下混合する。この範囲にあれば、フィラーはビヒクルと十分混合され、また、印刷面に十分なマット形状が形成される。
【0029】
従来のエンボスインキにあっては、ビヒクル1重量部とフィラー0.05重量部程度混合している。当該重量部を超えるフィラーを加えても、エンボスインキは均一な溶液にならなかった。対して本発明にかかるエンボスインキは、ビヒクル1重量部にフィラーを0.10重量部まで添加可能である。
【0030】
フィラーであるシリカの平均粒子径は3μm〜8μmである。この範囲にあれば、ほどよいマット形状を形成することができる。
【0031】
ビヒクルはOH価が70mgKOH/g以下の樹脂である。ビヒクル樹脂のOH価の下限値は、通常0mgKOH/gである。入手可能性や他の諸性質の観点から、好ましくは5mgKOH/gである。従来のエンボスインキに使用されるエポキシメラミンとアミノアルキッド系樹脂はOH価が80mgKOH/g〜100mgKOH/g程度である。
【0032】
このようにビヒクルを親油性の強い樹脂に変更してフィラーとの相溶性を向上させた。ここでOH価は、混合樹脂の場合には混合物として測定した値であり、一種の樹脂の場合には一種の樹脂として測定した値である。
【0033】
ビヒクルの具体例としてエポキシメラミン樹脂とアクリル樹脂の混合物、エポキシメラミン樹脂とポリエステル樹脂の混合物、エポキシメラミン樹脂とウレタン樹脂の混合物、エポキシメラミン樹脂とアミノアルキッド系樹脂の混合物などを挙げることができる。
【0034】
次にエンボスインキを用いる部分ハードコート転写シートを説明する。
【0035】
図1は部分マットハードコート転写シート100の断面説明図である。部分マットハードコート転写シート100は基体シート1を含む。基体シート1の一方の面は剥離性を有する。当該剥離性を有する面は部分マット層3やハードコート層4を形成する面である。
【0036】
基体シート1の材質としては、ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂などの樹脂シート、アルミニウム箔、銅箔などの金属箔、グラシン紙、コート紙、セロハンなどのセルロース系シート、あるいは以上の各シートの複合体などを使用することができる。基体シート1の剥離性を向上させるために、基体シート1の表面に離型層を設けてもよい。離型層の材質としては、メラミン系樹脂、シリコーン系樹脂、フッ素系樹脂、セルロース誘導体、尿素系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、パラフィン系樹脂およびこれらの複合物などを用いることができる。離型層の形成方法としては、ロールコート法、スプレーコート法などのコート法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法などの印刷法があげられる。
【0037】
次に、基体シート1の一方の表面上に部分マット層3を形成する。部分マット層3は、基体シート1の表面に接して形成する。基体シートの表面に離型層を形成した場合には、部分マット層3は離型層に接して形成される。
【0038】
部分マット層3は転写後に、基体シート1とともに成形品から剥離することで、部分マット層3のマット形状、すなわち微細な凹凸形状、をハードコート層4の一部に写し取らせるものである。
【0039】
部分マット層3は本発明にかかるエンボスインキを用いて、印刷により形成される。印刷方法はグラビア印刷法である。もっとも、スクリーン印刷法、オフセット印刷法を採用してもよい。また、コート法により塗布してもよい。コータは例えば、バーコーターが使用できる。
【0040】
部分マット層3の厚さは、通常0.5μm〜30μm、より好ましくは0.5μm〜5μmである。この範囲にあれば、二次元や三次元形状に成形同時転写する際に基体シート1が伸ばされても、部分マット層3が剪断されることを防止でき、また、基体シート1の伸びに追随できず部分マット層3自体にクラックを生じることを防止できるからである。
【0041】
基体シート1、または部分マット層3の上に全面的にハードコート層4が形成されている。ハードコート層4は一定以上の硬度を有し、転写後に基体シート1を剥離した際に、基体シート1から剥離して転写層の最上層となる層である。ハードコート層4は、紫外線硬化性樹脂などの光硬化性樹脂、電子線硬化性樹脂などの放射線硬化性樹脂などに代表される紫外線や電子線等で硬化する活性エネルギー線硬化性樹脂からなる。
【0042】
ハードコート層4は熱硬化性かつ活性エネルギー線硬化性の樹脂であってもよい。活性エネルギー線硬化性樹脂は、例えば、ウレタンアクリレート系樹脂やシアノアクリレート系樹脂である。熱硬化性かつ活性エネルギー線硬化性の樹脂は、例えば、ウレタンアクリレート系樹脂やシアノアクリレート系樹脂にイソシアネートなどの添加剤を加えた樹脂である。熱硬化性かつ活性エネルギー線硬化性の樹脂は加熱することにより、樹脂中のモノマーやオリゴマーの一部が架橋され半硬化状態になる。半硬化状態のハードコート層は、さらに紫外線などの活性エネルギー線を照射すれば硬化状態となる。
【0043】
ハードコート層4はグラビア印刷法又は液体コーティング法で形成する。液体コーティング法として、グラビアコート法、ロールコート法、コンマコート法、リップコート法などを例示できる。ハードコート層4の厚さは、通常2μm以上40μm以下であり、より好ましくは2μm以上10μm以下である。上記の厚さ範囲にすれば、本発明の製造方法で作成した部分マットハードコート転写シート100を用いて得られる樹脂成形品の表面は厚いハードコート層が転移するから、表面硬度に優れたものとすることができる。
【0044】
ハードコート層4として熱硬化性かつ活性エネルギー線硬化性の樹脂を選択する場合には、ハードコート層を形成した後に、加熱して半硬化状態とする。
【0045】
ハードコート層の上に図柄層9を形成してもよい。図柄層9は設けない場合もある。 図柄層9はハードコート層4の上に全面または一部の面に形成する。図柄層9の材質は、ポリビニル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリアクリル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリビニルアセタール系樹脂、ポリエステルウレタン系樹脂、セルロースエステル系樹脂、アルキッド樹脂などの樹脂をバインダーとし、適切な色の顔料または染料を着色剤として含有する着色インキを用いるとよい。
【0046】
図柄層9の形成方法としては、オフセット印刷法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法などの通常の印刷法などを用いるとよい。図柄層9は金属薄膜からなるもの、あるいは印刷膜と金属薄膜との組み合わせからなるものでもよい。金属薄膜は真空蒸着法、スパッターリング法、イオンプレーティング法、鍍金法などで形成する。
【0047】
図柄層9の上に必要に応じて接着層5を形成してもよい。接着層5は、被加飾面に上記の各層を接着するものである。接着層5としては、被加飾の素材に適した感熱性あるいは感圧性の樹脂を適宜使用する。接着層5の形成方法としては、グラビアコート法、ロールコート法、コンマコート法などのコート法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法などの印刷法がある。
【0048】
また、必要に応じて図柄層9とハードコート層4との間や、図柄層9と接着層5との間に各層の層間密着性を向上させるアンカー層を形成してもよい。
【0049】
部分マットハードコート転写シート100を使用する成形同時成形品の製造工程の一例を説明する。
【0050】
製造にはA金型とB金型からなる射出成形用金型を使用する。A金型とB金型を開いて、その間に部分マットハードコート転写シート100を送り込む。A金型とB金型を型締めし、キャビティ内に溶融樹脂を射出する。溶融樹脂の射出に起因する圧熱により、接着層5とハードコート層4が溶融樹脂側に転写される。
【0051】
その後、冷却あるいは自然放冷すれば溶融樹脂が固化して固化樹脂となり、中間成形品が作られる。次に、中間成形品から基体シート1を取り除く。このとき、部分マット層3も基体シート1に付着した状態で取り除かれる。
【0052】
次いで、活性エネルギー線を照射してハードコート層4を架橋硬化させる。活性エネルギー線として紫外線などを用い、400〜4000mJ/cm程度の条件で照射するとよい。このようにして、ハードコート樹脂成形品が得られる。表面に転写され硬化したハードコート層の一部領域はマット(艶消し)領域である。
【0053】
部分マットハードコート転写シートは、ロール転写機、アップダウン転写機などを用いて、被転写物面に転写してもよい。
【実施例1】
【0054】
エンボスインキを使用して部分マットハードコート転写シートを作成した。
【0055】
作成した部分マットハードコート転写シートは、基体シートの一方表面に剥離層、部分マット層、ハードコート層、図柄層、接着層を形成したものである。
【0056】
340mm×600mm、厚さ38μmの2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフイルムの片面に、グラビア印刷法にて全面に剥離層を印刷し、次に、グラビア印刷法にてエンボスインキを部分的に印刷しマット層を形成した。マット層領域の数は50箇所であり、当該基体シートの全面積に対してマット層領域の総面積が95%を占めていた。
【0057】
次に、160℃にて30秒間熱処理を行った。続いて、バーコーター#16にて厚さ12μmのハードコート層を形成し、150℃にて30秒間熱処理を施した。次にバーコート法にてアンカー層、絵柄層、接着層を順に形成し、部分マットハードコート転写シートを得た。得られた転写シートを用いて成形同時転写を行ったところ、部分的にマット調である成形品を得た。
【0058】
実施例1〜6と比較例1〜4にかかるエンボスインキの詳細は表1のとおりである。実施例1〜6と比較例1〜4にあって、フィラーはシリカを使用した。
【0059】
それぞれのビヒクルにシリカを入れた後、撹拌器で10分間撹拌し、その後1週間放置した。放置後エンボスインキの分散性を評価した。
【0060】
分散性は、
○ ビヒクルとシリカとが分離していない
△ シリカのみが沈降
× ビヒクルとシリカのゲル状物が沈降
の3段階で評価した。
【0061】
また、それぞれのエンボスインキを用いて作成した部分マットハードコート転写シートの地汚れを評価した。評価は、基体シート側から蛍光灯を使った白色光を照射し、30cmの距離から地汚れの有無を目視にておこなった。
【0062】
地汚れは、
○ 転写シートに地汚れが確認されない
△ 転写シートにうっすら地汚れがある
× 転写シートに地汚れが確認された
の3段階で評価した。
【0063】
さらに、それぞれのエンボスインキを用いて作成した部分マットハードコート転写シートの光沢ムラを評価した。評価は、基体シート側から蛍光灯を使った白色光を照射し、20cmの距離から光沢ムラの有無を目視にておこなった。
【0064】
光沢ムラは、
○ 50箇所中、光沢ムラが確認されない
△ 50箇所中、5個以下の光沢ムラを確認した
× 50箇所中、6個以上の光沢ムラを確認した
の3段階で評価した。
【0065】
表1にその結果を示した。
【表1】

【0066】
表1中で、EPMはエポキシメラミン樹脂を表し、AmAlkはアミノアルキッド樹脂を表している。また、フィラー混合量は、ビヒクル1重量部と混合したフィラーを重量部で示している。さらに、平均粒子径はフィラーであるシリカの平均粒子径である。
【0067】
実施例1〜6、特に1〜5では、エンボスインキの分散性が良好であり、これを用いて作成した部分マットハードコート転写シートに地汚れが確認されず、マット層相互間に光沢ムラが観察されなかった。
【0068】
さらに、当該転写シートを用いて作成した成形品は、不要マット層が確認されず、マット層相互間に光沢ムラがなかった。
【符号の説明】
【0069】
1 基体シート
3 部分マット層
4 ハードコート層
5 接着層
9 図柄層
21 インキタンク
22 インキ
23 インキローラ
24 版胴
25 ドクター刃
100 部分マットハードコート転写シート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
転写シートにグラビア印刷により印刷し、マット形状を付与するために用いる、フィラーとビヒクルからなるエンボスインキにおいて、
フィラーは吸油量が100ml/100g以上300ml/100g以下であり、
ビヒクルはOH価が70mgKOH/g以下の樹脂であり、
前記ビヒクル1重量部と前記フィラーを0.05重量部以上0.10重量部以下混合したことを特徴とするエンボスインキ。
【請求項2】
前記ビヒクルがエポキシメラミン樹脂とアクリル樹脂の混合物であることを特徴とする請求項1に記載したエンボスインキ。
【請求項3】
前記フィラーがシリカであることを特徴とする請求項1乃至2いずれかに記載したエンボスインキ。
【請求項4】
剥離性を有する基体シート上に、少なくとも部分マット層、ハードコート層、接着層が積層された部分マットハードコート転写シートにおいて、
前記部分マット層は、請求項1乃至3いずれかに記載したエンボスインキを用いるグラビア印刷により形成される部分マットハードコート転写シート。
【請求項5】
請求項4に記載した部分マットハードコート転写シートを射出成形用金型内に挟み込み、キャビティ内に溶融状態の成形樹脂を射出し、射出成形品を得るのと同時にその表面に前記部分マットハードコート転写シートを接着し、前記射出成形用金型を型開きして部分マット層とともに基体シートを剥離する部分マットハードコート成形品の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−231254(P2011−231254A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−104217(P2010−104217)
【出願日】平成22年4月28日(2010.4.28)
【出願人】(000231361)日本写真印刷株式会社 (477)
【Fターム(参考)】